説明

過敏症および過反応症の治療用医薬の調製のためのオレアノール酸およびウルソル酸を含む組成物の使用

30から80重量%のウルソル酸、2から25重量%のオレアノール酸、および、1から68重量%のウルソル酸またはオレアノール酸以外のトリテルペン酸、またはこれらの酸のいずれかの誘導体を含む材料であって、前記割合が前記酸または誘導体の総重量に基づき、前記酸または誘導体の割合が合計100%である材料を、過敏症および/または過反応症の予防または治療に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過敏症および/または過反応症の予防または治療のための特定の材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
過敏症は、増強したまたは不適切な形態で生じ、炎症反応および組織損傷を引き起こしうる適応免疫応答を示すのに使用されている用語である。過敏症は、通常は、特定の抗原との最初の曝露では生じないが、その後の曝露で生じる。過敏症は、4つの型(I型、II型、III型およびIV型)に分類されている。最初の3つの型は、抗体が媒介し、4番目の型は、主として、T細胞およびマクロファージによって媒介される。IgE応答が、花粉およびイエダニなどの環境性抗原を認識し、喘息または鼻炎などの症状を伴う急性炎症反応を誘導しうる場合に、I型過敏症が生じる。
【0003】
過反応症は、多くの炎症性肺疾患に特徴的であり、極端に気道が狭くなる(Blease et al, Respir Res. 2000;1(1)54-61) 。過反応症は、低濃度の吸引したヒスタミンまたはメタコリンに対する増強した非-免疫性気管支収縮応答として定義することができる。このタイプの気管支過敏性は、ほとんど恒常的に喘息の兆候をしめす(American Academy of Asthma and Allergy, Asthma and Immunology, In The news 2003, Mechanisms in bronchial hyper-reactivity)。
【0004】
Dai Y et al, Zhongguo Yao Li Xue Bao. 1988 Nov9(6)62-5には、オレアノール酸(oleanolic acid)による過敏性反応の阻害について開示されている。JP-A-3287530(Snow Brand Milk Prod Co Ltd)には、活性成分としての、ウルソル酸(ursolic acid)またはケトウルソル酸を含む免疫抑制剤について開示されている。
【0005】
Raphael et al, Phytomedicine, 10, 483-499, 2003には、免疫系へのグリシルリジン酸、ウルソル酸、オレアノール酸およびノミリンの効果について開示されている。これらの化合物は、抗体産生を増大すると開示されている一方で、ウルソル酸、オレアノール酸およびノミリンが、遅延型過敏反応を阻害すると開示されている。
【0006】
ウルソル酸およびオレアノール酸の健康に関する効果が開示されている他のリファレンスには、US 4752606、JP 09/040 689、JP 09/067 249、JP 09/020 674、CN 1085 748、JP 1 039 973、JP 03/287 531、JP 03/287 43、EP 774 255、JP 07/258 098、JP 07/048 260、JP 01/132 531、FR 2 535 203およびJP 1 207 262を含む。
【0007】
EP-A-1161879には、1:99から99:1の重量比のウルソル酸およびオレアノール酸を含む混合物であって、ウルソル酸およびオレアノール酸の天然抽出物に存在する非極性のおよび/または低分子量の成分を20wt%未満含む混合物が開示されている。
【0008】
EP-A-1123659には、ウルソル酸およびオレアノール酸を含む組成物と脂肪のブレンドが開示されている。この組成物は、速い晶析速度を呈する。
【特許文献1】JP-A-3287530
【特許文献2】US 4752606
【特許文献3】JP 09/040 689
【特許文献4】JP 09/067 249
【特許文献5】JP 09/020 674
【特許文献6】CN 1085 748
【特許文献7】JP 1 039 973
【特許文献8】JP 03/287 531
【特許文献9】JP 03/287 43
【特許文献10】EP 774 255
【特許文献11】JP 07/258 098
【特許文献12】JP 07/048 260
【特許文献13】JP 01/132 531
【特許文献14】FR 2 535 203
【特許文献15】JP 1 207 262
【特許文献16】EP-A-1161879
【特許文献17】EP-A-1123659
【特許文献18】WO97/18320
【非特許文献1】Blease et al, Respir Res. 2000;1(1)54-61
【非特許文献2】American Academy of Asthma and Allergy, Asthma and Immunology, In The news 2003, Mechanisms in bronchial hyper-reactivity
【非特許文献3】Dai Y et al, Zhongguo Yao Li Xue Bao. 1988 Nov9(6)62-5
【非特許文献4】Raphael et al, Phytomedicine, 10, 483-499, 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
天然物からの抽出物として得ることができる、他のトリテルペン酸(triterpenoic acid)(時にはtriterpenic acidと称する)と共に、ウルソル酸およびオレアノール酸を含む組成物が、過敏症および/または過反応症の治療および/または予防に使用することができることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第一の態様の発明に従って、過敏症および/または過反応症の予防または治療用の組成物の製造における、約30から約80重量%のウルソル酸、約2から約25重量%のオレアノール酸、および、約1から約68重量%のウルソル酸またはオレアノール酸以外のトリテルペン酸、またはこれらの酸のいずれかの誘導体を含む材料の使用であって、前記割合が前記酸または誘導体の総重量に基づき、前記酸または誘導体の割合が合計100%である使用。本発明は、また、過敏症および/または過反応症の予防または治療における使用のための材料を意図する。
【0011】
本発明の他の態様は、過敏症および/または過反応症の予防または治療が必要な対象に、約30から約80重量%のウルソル酸、約2から約25重量%のオレアノール酸、および、約1から約68重量%のウルソル酸またはオレアノール酸以外のトリテルペン酸、またはこれらの酸のいずれかの誘導体を含む材料を有効量提供する工程を含む、過敏症および/または過反応症の予防または治療方法であって、前記割合が前記酸または誘導体の総重量に基づき、前記酸または誘導体の割合が合計100%である予防または治療方法。
【0012】
本発明によって意図されるのは、また、約30から約80重量%のウルソル酸、約2から約25重量%のオレアノール酸、および、約1から約68重量%のウルソル酸またはオレアノール酸以外のトリテルペン酸、またはこれらの酸のいずれかの誘導体を含み、対象による摂取のための材料を有効量対象に提供する工程を含む、IgEのレベルを下げる方法であって、前記割合が前記酸または誘導体の総重量に基づき、前記酸または誘導体の割合が合計100%である、IgEのレベルを下げる方法。それゆえ、1つの実施態様においては、本発明は、対象におけるIgEのレベルを下げることによる、過敏症および/または過反応症の治療を含む。
【0013】
本発明の更なる態様は、過反応症の予防または治療用の組成物の製造における、ウルソル酸もしくはその誘導体、または、オレアノール酸もしくはその誘導体、または、その混合物の使用である。また、本発明によって想定されるのは、過反応性の予防または治療における使用のための、ウルソル酸もしくはその誘導体、または、オレアノール酸もしくはその誘導体、または、その混合物である。
【0014】
また、本発明によって提供されるのは、過反応症の予防または治療が必要な対象に、有効量のウルソル酸もしくはその誘導体、または、オレアノール酸もしくはその誘導体、または、その混合物を提供する工程を含む、過反応症の予防または治療方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
過敏症は、典型的にはアレルギーである。前記材料は、対象(好ましくは哺乳類、より好ましくはヒト)に摂取されたときに、IgEのレベルを下げる効果を有することが望ましい。このIgEの低下は少なくとも部分的には過反応症の低減に関与すると考えられる。
【0016】
本発明の材料の好ましい効果は、気管支の収縮を阻害または防止すること、例えば、喘息の治療である。前記材料は、吸引した刺激因子およびウイルスだけでなく温度の変化に対する気道の過応答性を減少させることができる。
【0017】
本発明は、過敏症および/または過反応症の治療および/または予防を含みうる。本発明によって予防および/または治療することができる症状は、喘息、咳(空咳、厄介な咳および喀痰を伴う咳)、喘鳴および鼻水を含む。
【0018】
本発明は、好ましくは、前記材料および/または組成物の経口投与または摂取を含む。前記材料および/または組成物は、それ故、好ましくは、経口投与に適する。
【0019】
前記材料は、例えば、医薬組成物、食品、食品サプリメントを含む、多くの異なる製品形態で調製することができる。好ましくは、医薬組成物、食品、食品サプリメントは、一日当り総量0.02gから20gの投与量のウルソル酸およびオレアノール酸を含む。組成物は、過敏症または過反応症の治療および/または予防に有効な1つまたは複数の更なる成分を含むことができる。
【0020】
本発明の組成物は、また、共役リノール酸(CLA)、魚油、共役トリエン酸およびそれらの混合物から選択される1つまたは複数の更なる成分を含むことができる。
【0021】
本発明の好ましい組成物は、食品である。食品は、液体(例えば飲料)および固体を含む。適したことには、食品は実装されており、食品としてラベルされている。一般的な食品は、本発明の材料を適した量で導入することができる。
【0022】
医薬組成物は、また、例えば、タブレット、ピル、カプセル、顆粒、ビーズ、ペレットおよびミクロカプセル化粒子を含む微粒子、粉体、エリキシル、シロップ、懸濁液、エマルジョンおよび溶液の形態とすることができる。好ましい製品形態は、タブレット、カプセル、溶液およびエマルジョンである。医薬組成物は、医薬的に許容可能は希釈剤または担体を含む。医薬組成物は、好ましくは、非経口投与に適する(例えば、経口)。経口投与可能な組成物は、固体または液体形態とすることができ、タブレット、粉体、懸濁液およびシロップの形態をとることができる。場合によっては、組成物は、1つまたは複数の香味料および/または着色剤を含む。このような組成物の使用に適した医薬的に許容可能な担体は、医薬業界において既知である。本発明の医薬組成物は、0.1-99重量%の本発明の材料を含むことができる。本発明の医薬組成物は、一般的に、単位用量形態で調製する。
【0023】
本発明の組成物の更なる例は、柔らかいゲル、または、ゼラチン、デンプン、加工デンプン、デンプン誘導体(例えばグルコース、スクロース、ラクトースおよびフルクトースなど)からなる群から選択されるカプセル化材料を含む硬いカプセルの形態のような食品サプリメントである。カプセル化材料は、場合によっては、架橋または重合化剤、安定化剤、抗酸化剤、光感受性充填剤を保護するための光吸収剤、防腐剤等を含みうる。好ましくは、食品サプリメントにおける、本発明の組成物の単位用量は、1mgから1000mg(より好ましくは100mgから750mg)である。
【0024】
好ましい食品は、マーガリン、脂肪性連続相または水性連続相または両性連続相のスプレッド、低脂肪スプレッド、菓子製品、例えば、チョコレートまたはチョコレートコーティングまたはチョコレートフィリングまたはベーカリーフィリング、アイスクリーム、アイスクリームコーティング、アイスクリームインクルージョン、ドレッシング、マヨネーズ、チーズ、クリーム代替物、ドライスープ、飲料、シリアルバー、ソース、スナックバー、乳製品、臨床用栄養製品および幼児用調製物からなる群から選択される食品を含む。食品は、好ましくは、0.001重量%から5重量%(より好ましくは0.01重量%から4重量%、更により好ましくは0.1重量%から3重量%、最も好ましくは0.1重量%から2重量%または0.1重量%から1重量%)の本発明の材料を含む。
【0025】
本発明の使用に特に好ましい食品製品は、他の成分とのブレンドの形態、特に、グリセリド、好ましくはトリグリセリドとのブレンドとしての材料を含む。ブレンドは、好ましくは1から99重量%の、より好ましくは5から80重量%の1つまたは複数の、モノ-、ジ-、およびトリグリセリドから選択される成分を含む。このブレンドのグリセリド部分は、好ましくは、指定した温度での非-安定化脂肪へのパルスNMRによって測定される固体脂肪含量について、5℃で5から90、20℃で2から80、そして35℃で15、好ましくは10未満を示す。
【0026】
固体脂肪含量を、安定でない脂肪における既知のパルスNMR手法によって測定する。このことは、以下の処理に供した脂肪で測定を行うことを意味する:80℃で溶解し、15分間80℃で保ち、0℃に冷却し、30分間0℃で保ち、測定温度に加熱し、30分間この温度で保ち、この温度でN-値を測定する。
【0027】
好ましいブレンドは、成分A、BおよびCを含むブレンドであり:
Aは、本発明による材料であり、
Bは、20より大きい、好ましくは45より大きい、最も好ましくは60より大きいN20を有する固体脂肪であり、
Cは、少なくとも40重量%の、18のC原子と1から3の二重結合を有する脂肪である。
【0028】
Aは、典型的には、0.1重量%より多い、好ましくは0.1から20重量%の、最も好ましくは0.2重量%から10重量%の量で存在する。Bは、8から90重量%で、好ましくは25から75重量%で、最も好ましくは40から70重量%の量で存在することができる。Cは、0から85重量%、好ましくは15から65重量%、最も好ましくは20から50重量%で存在することができる。
【0029】
これらのブレンドにおいては、脂肪成分Bは、好ましくは、ヤシ油;ヤシ油フラクション、カカオバター代用脂;パーム核油;パーム核油のフラクション;硬化パーム油などの硬化植物油;パーム油の硬化フラクション;硬化大豆油;硬化ひまわり油;硬化菜種油;大豆油の硬化フラクション;菜種油の硬化フラクション;ひまわり油の硬化フラクション;これらの油の1つまたは複数の混合物およびそれらのエステル交換混合物からなる群から選択される。
【0030】
脂肪成分Cは、一般的に、液体油であり、好ましくは、ひまわり油;オリーブ油;大豆油;菜種油;パーム油オレイン;綿実油;植物油に由来するオレインフラクション;HOSF(=高オレイン酸ひまわり油)またはHORP(=高オレイン酸菜種油) などの高オレイン植物油;魚油;魚油濃縮物;共役リノール酸(CLA)-グリセリドからなる群から選択される。
【0031】
前記成分A、BおよびCを含むブレンドが、脂肪相を含む食品製品への適用について優れた特性を有する。
【0032】
ブレンドは、また、防腐剤、着色剤、安定化剤、ビタミンおよびミネラルなどの他の既知の添加剤も含みうる。
【0033】
本発明の材料は、ウルソル酸、オレアノール酸および他のトリテルペン酸、またはこれらの酸のいずれかの誘導体を含み、そして、酸の混合物が、単独で使用した対応する酸に対して利点を有すると考えられる。本発明の材料は、約30から約80重量%のウルソル酸、約2から約25重量%のオレアノール酸、および、約1から約68重量%のウルソル酸またはオレアノール酸以外のトリテルペン酸、またはこれらの酸のいずれかの誘導体を含む。ウルソル酸およびオレアノール酸以外のトリテルペン酸は、マスリン酸(maslinic acid)を含む。好ましくは、本発明の材料は、約40から約80重量%(40から70重量%など)のウルソル酸、約5から約15重量%のオレアノール酸、および、約10から約50重量%(25から50重量%など)のウルソル酸またはオレアノール酸以外のトリテルペン酸、またはこれらの酸のいずれかの誘導体を含む。より好ましくは、本発明の材料は、約45から約65重量%のウルソル酸、約5から約15重量%のオレアノール酸、および、約15から約50重量%のウルソル酸またはオレアノール酸以外のトリテルペン酸、またはこれらの酸のいずれかの誘導体を含む。更により好ましくは、本発明の材料は、約50から約60重量%のウルソル酸、約8から約12重量%のオレアノール酸、および、約30から約40重量%のウルソル酸またはオレアノール酸以外のトリテルペン酸、またはこれらの酸のいずれかの誘導体を含む。これらの割合は、材料中のこれらの酸の総重量に基づく。材料の総重量に基づいて、材料は、好ましくは、約30重量%から100重量%、より好ましくは30重量%から95重量%、更により好ましくは30重量%から90重量%の量で、例えば30重量%から70重量%または約40重量%から60重量%の量で、ウルソル酸、オレアノール酸および他のトリテルペン酸(またはその誘導体)を含む。材料の他の成分としては、トリグリセリド、極性物質および微量成分を含みうる。
【0034】
ウルソル酸、オレアノール酸および他のトリテルペン酸の、本発明の使用に適した誘導体としては、使用するレベルでは非毒性であり、前記酸の活性を阻害しない酸から誘導される塩および化合物を含む。適した誘導体には、エステル(例えば、C1からC6アルキルエステルなどの、1から22の炭素原子を含むアルコールとのエステル)および塩(例えば、ナトリウムまたはカリウム塩)を含む。好ましくは、しかしながら、材料は、遊離酸の形態の酸を含む。場合によっては遊離酸の混合物における、ウルソル酸、オレアノール酸および他のトリテルペン酸のナトリウム塩も好ましい。
【0035】
本発明の材料は、好ましくは、果皮から抽出可能であり、または、他の方法で得ることができ、好ましくは、天然の果皮に存在するのと実質的に同じオレアノール酸に対するウルソル酸の比率を有する。果皮は、適切に、リンゴ、クランベリー、オリーブ、ブドウおよびこれらの混合物から選択される果実に由来する。材料は、味覚特性を改良するために、EP-A-1161879に記載されているように処理することができる。本発明の材料中のトリテルペン酸は、それゆえ、好ましくは、果皮から得ることができる。
【0036】
本発明の材料は、好ましくは、果皮(場合によっては、乾燥させた果皮、ならびに、場合によっては、水および/または25℃において等モルで水と非混和性の溶媒(ヘキサンなど)で洗浄した果皮)を、有機溶媒(好ましくは、アセトンまたはアセトンと水の混合物)で処理する工程、抽出物から溶媒を除去する工程、場合によっては乾燥させる工程、および、場合によっては更に乾燥させた抽出物を精製する工程を含む方法によって得ることができる。更なる精製工程には、例えば:乾燥抽出物をアセトンで溶解し、得られた溶液をろ過し、その後、溶媒を除去する工程;乾燥させた抽出物を水(例えば、40から90℃などの高い温度で)洗浄する工程を含む。
【0037】
酸の誘導体は、相当するように調製することができる。例えば、ウルソル酸、オレアノール酸および他のトリテルペン酸のナトリウム塩を含む材料は、適切な濃度(0.1から1Mなど、好ましくは0.4から0.6M)の塩基性ナトリウム塩の存在下で、果皮(場合によっては、乾燥させた果皮、および、場合によっては水および/または25℃において等モルで水と非混和性の溶媒(ヘキサンなど)で洗浄した果皮)を、有機溶媒(好ましくは、アセトンまたはアセトンと水の混合物)で処理する工程によって調製することができる。得られた混合物から固体を取り除き(例えば、ろ過によって)、溶媒を除去し(例えば、真空下で、好ましくは約60℃で)、スラリー状態にする。得られたスラリーを再度ろ過し、場合によっては、水で洗浄することによって、残渣として、ナトリウム塩混合物を形成することができ、この残渣は、乾燥させ、場合によっては更に精製することができる。
【0038】
全ての出版物、特許および特許出願は、本明細書に参照によって挿入される。前記明細書においては、本発明を、特定の好ましい実施態様に関して記載し、多くの詳細な事項は例示の目的で説明してきたが、本発明が更なる実施態様をとることが可能であり、本明細書に記載した特定の詳細な事項が本発明の基本的な原理を逸脱することなく大幅に変更することができることは、当業者にとっては、明白であろう。
【0039】
以下の非制限な実施例は、本発明を例証するものであり、如何なる方法であってもその範囲を制限するものではない。実施例において、および、本明細書を通して、全ての割合、部分および比率は、特に指示がない限り、重量を示す。
【0040】
実施例は、添付の図面を参照する。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
約25000kgのリンゴの搾りかす(ほとんどが皮と芯)を、100-150℃においてオーブンで乾燥させ、水分が10重量%未満の約6000kgの乾燥させた搾りかすを調製した。乾燥させた搾りかすを、20mmのふるいに通して細かくし、大部分の無傷の種を取り除いた。
【0042】
乾燥し/細かくした搾りかすの抽出を、熱アセトンを用いて50-55℃で、95%より多い抽出可能アセトンが除去されるまで10段向流抽出機内で行った。アセトンを、真空下、一組の薄層蒸発装置を用いて除去した。同時に精製水を加え、トリテルペノイドを含む非極性化合物の水性懸濁液を調製した。
【0043】
5から15%の固体を含む得られた水性懸濁液を冷却し、その後、遠心分離して大部分の存在する水を除去して、ウェットケーキを得た。更なる精製熱水を用いてケーキを洗浄して、糖を含む大部分の残存する極性化合物を除去した。
【0044】
ウェットケーキを、精製水で懸濁して、ポンプ送液を可能とし、その後でスプレードライすることによって、細かい乾燥粉末を産生した(水分0.5%未満)。フィルターバッグから得られた細塵を、残りの製品と再び混合した。この結果、617kgの乾燥リンゴ抽出物が得られた。
【0045】
更なる精製のために、120kgの抽出物を9600kgのアセトンに40℃で溶解した。その後、7.2kgのNorit SA4活性炭(9kg)を加え、混合物を、47から53℃で6時間攪拌した。活性炭を、2つの1-3μmのフィルタープレートを連続して組み合わせて、Arbocel 00フィルターを用いて取り除いた。
【0046】
アセトンを、真空下で、一組の薄層蒸発装置を用いて除去した。同時に、精製水を加えて、トリテルペノイドを含む非極性化合物の水性懸濁液を調製した。
【0047】
その後、スプレードライに供し、細かい乾燥粉体を調製した(<0.5%水分)。フィルターバッグから得られた細塵を、残りの製品と再び混合した。全体で、67.2kgの精製抽出物を得た。
【0048】
得られた生成物は、約55重量%のウルソル酸、約10重量%のオレアノール酸および約35重量%の他のトリテルペン酸(材料中のこれらの酸の総重量に基づく)を含んでいた。トリテルペン酸は、材料の総重量に基づいて、生成物の約49重量%を形成していた。
【0049】
(実施例2)
アレルギー性喘息に罹患した患者は、アレルゲン特異的なIgE抗体の存在および非特異的な気道過反応の存在によって特徴づけされる。2匹のマウスモデルを使用して、ウルソル酸を含むリンゴ搾りかす抽出物の、IgEレベルに及ぼす効果(実施例3)およびメタコリンに対する気道過反応の発達に及ぼす効果(実施例2)を試験した。
【0050】
BALB/cByJIcoマウスを入手した。入手後、マウスの体重を量り、記録した。プロトコールの開始前7-4日に、マウスに活性成分を含む餌を与えた。
【0051】
プロトコール1:気道過反応に及ぼす効果
マウス(グループ毎にn=14)に、以下のいずれかを混合させた餌を与えた。
グループ1:添加物なし
グループ2:0.75%の投与量でのウルソル酸およびオレアノール酸のナトリウム塩
グループ3:2.5%の実施例1の抽出物
グループ4:4%の実施例1の抽出物

0-14日目:2日おきに7回、10μgのオボアルブミン(OVA)を用いて腹腔内注入。
27日目:OVA-特異的イムノグロブリンを求めるために、血液を回収。
31日目:メタコリンに対する基底気道の反応性の評価。
38-45日目:8日間で2日おきに、2mg OVA/ml生理食塩水を用いた吸引によるアレルギー誘発。
46日目:メタコリンに対する基底気道の反応性の評価。
【0052】
結果を図1に示す。
【0053】
barometric whole-body plethysmographyを使用し、気道収縮の指数としての呼吸抵抗指数(Penh)の増加を求めることによって、気道の反応性を評価した。図1の結果から、コントロールマウス(グループ1)は、メタコリンの投与量が増加するにつれて、気道過反応を発達させたことは明らかである。更にその上、高純度のウルソル酸塩での処理(グループ2)ならびに2.5%および4%の抽出物処理(それぞれグループ3および4)によって、気道の過反応性の発達が強力に阻害されたことは極めて明らかである。
【0054】
本実施例によって、本発明の抽出物が、マウスの喘息モデルにおいて、気道の過反応性を減少させることが示された。
【0055】
(実施例3)
抽出物の、アレルゲン特異的なIgEレベルに及ぼす効果を研究した。
【0056】
6週齢のSPF-雌BALB/cマウスを使用した。以下の4つのグループを研究に使用した:
i)コントロール
ii)0.5%UA抽出物の餌
iii)1%UA抽出物の餌
iv)2.5%UA抽出物の餌
【0057】
以下のプロトコールを使用した:
0-7日目:OVA(アレルゲン)+ミョウバンを用いたi.p.感作
20日目:アレルギー誘発前のIgE測定
21、24、27日目:3日間で3回OVA-エアロゾルまたは生理食塩水を用いたアレルギー誘発
28日目:アレルギー誘発後のIgE測定
【0058】
結果を図2に示す。
【0059】
図2から、OVAを用いたアレルギー誘発後、特異的なIgEが、全てのグループにおいて誘導されたことは明らかである(アレルギー誘発前と誘発後で差異を有する)。しかしながら、餌を介したウルソル酸の摂取によって、用量依存的なIgEレベルの減少がもたらされたことも明らかである。
【0060】
本実施例によって、本発明の抽出物が、モデルマウスにおいて、IgEレベルを減少させたことが示された。
【0061】
(実施例4)
以下は、本発明によるゼラチン充填カプセルの例である。実施例1によって得られた抽出物を、業界の既知の方法に従ってゼラチンカプセルに封入した。得られたカプセル化製品は、500mgの抽出混合物を含み、1つのタブレットは、大人のヒトについて、一日に四回まで摂取することができる。
【0062】
(実施例5)
以下は、本発明によるマーガリンタイプのスプレッドの例である。このスプレッドは、WO97/18320の実施例14に記載された方法に従って調製することができる。
【0063】
【表1】

【0064】
(実施例6)
(トリテルペン酸のナトリウム塩の調製)
ヘキサンで洗浄した40gのリンゴの搾りかすを、室温で400mlのアセトンで完全に可溶化させた。290mlの0.5M NaOHを約10分間で加え、混合物を約20分間攪拌した。反応溶液をろ紙上でろ過し、アセトンを真空下60℃で除去した。得られたスラリーをブフナー漏斗上で用いてろ過し、フィルターケーキを蒸留冷水で洗浄し、室温で乾燥させた。
【0065】
(実施例7)
(動物での効果試験)
アレルギー性喘息に罹患した患者は、アレルゲン特異的なIgE抗体、気道の過反応の存在、および沢山の好酸求を伴う気道の慢性的な炎症の存在によって特徴づけされる。喘息患者と類似の特徴を有する十分に特徴付けられたマウスモデル(BALB/c)を開発した。
【0066】
1日目から13日目まで、2日おきに7回腹腔内注入を行って、マウスを、如何なるアジュバントを用いることなしにオボアルブミン(OVA)で感作した。その後、33日目から40日目まで、これらの感作したマウスを、OVAを含むエアロゾルに曝露することによってアレルギー誘発した。41日目にマウスを犠牲にした。41日目にメタコリンによる気管支過敏性を評価した。
【0067】
本実験は、グループ当り14匹のマウスを有する7つの治療グループからなる。抽出物を餌とともに混合し、0日目から実験が終了するまで餌を与えた。
【0068】
以下のグループを試験した:
グループA1:リンゴ抽出物のナトリウム塩、0.85%のトリテルペン酸を餌中に含む
グループA2:リンゴ抽出物のナトリウム塩、0.24%のトリテルペン酸を餌中に含む
グループA3:リンゴ抽出物のナトリウム塩、0.085%のトリテルペン酸を餌中に含む
グループA4:リンゴ抽出物のナトリウム塩、0.05%のトリテルペン酸を餌中に含む
グループB1:ウルソル酸およびオレアノール酸を含む市販のナトリウム塩(Selco)、0.85%のトリテルペン酸を餌中に含む
グループC1:リンゴ抽出物、0.85%のトリテルペン酸を餌中に含む
グループD:コントロール
【0069】
グループA1からA4の組成物を、実施例6にしたがって調製した。
【0070】
以下の表は、使用した組成物中のトリテルペン酸のレベルを示す。
【0071】
【表2】

【0072】
図3は、本実施例の結果を示す。図3により、リンゴ抽出物のナトリウム塩(グループA1)がコントロール(グループD)と比較して、メタコリンに対する気管支過敏性を減少することが示された。抽出物A1が最も有効であり、リンゴ抽出物(C1)、市販の塩材料(B1)が続く。グループA1からA4については、明確な用量応答関係が見られる。トリテルペン酸の組み合わせを含む餌中の0.85%の投与量での、塩を形成したリンゴ抽出物および塩を形成していないリンゴ抽出物の両方は、主にウルソル酸およびオレアノール酸を含む市販のナトリウム塩よりも、より活性である。(Penh値を、気道の反応性について測定し、メタコリンは気管支収縮剤である。)データにより、グループA1によって例示される本発明の組成物は、異なるレベルのウルソル酸およびオレアノール酸および/またはより低いレベルのトリテルペン酸を有する密接に関連した組成物より優れていることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、本発明による、処理の前後におけるグループでの様々な濃度のメタコリンに対する、barometric whole-body plethysmographyと呼吸抵抗指数のプロットである。
【図2】図2は、4つの異なるグループ(1つはコントロールで、3つは本発明)での、オボアルブミン(OVA)を用いたアレルギー誘発前後における血清IgEレベルを示す棒グラフである。
【図3】図3は、リンゴ抽出物のナトリウム塩の形態である本発明による材料の、コントロールと比較した、メタコリンに対する気管支過敏性を減少させる効果を示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過敏症および/または過反応症の予防または治療用の組成物の製造における、30から80重量%のウルソル酸、2から25重量%のオレアノール酸、および、1から68重量%のウルソル酸またはオレアノール酸以外のトリテルペン酸、またはこれらの酸のいずれかの誘導体を含む材料の使用であって、前記割合が前記酸または誘導体の総重量に基づき、前記酸または誘導体の割合が合計100%である使用。
【請求項2】
前記過敏症がアレルギーである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記組成物がIgEのレベルを下げる、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記組成物が、気管支の収縮を阻害または防止する、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記組成物が、医薬組成物、食物または食品サプリメントである、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記ウルソル酸および/またはオレアノール酸が、ナトリウムまたはカリウム塩の形態である、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記ウルソル酸および/またはオレアノール酸が、2から22の炭素原子を含むアルコールとのエステルの形態である、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記組成物が、一日当り0.02gから20gの投与量のウルソル酸およびオレアノール酸合計量を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記ウルソル酸およびオレアノール酸が、果皮から抽出することができる、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記果皮が、リンゴ、クランベリー、オリーブ、ブドウおよびこれらの混合物から選択される果実に由来する、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記組成物が、マーガリン、脂肪性連続相または水性連続相または両性連続相のスプレッド、低脂肪スプレッド、菓子製品、例えば、チョコレートまたはチョコレートコーティングまたはチョコレートフィリングまたはベーカリーフィリング、アイスクリーム、アイスクリームコーティング、アイスクリームインクルージョン、ドレッシング、マヨネーズ、チーズ、クリーム代替物、ドライスープ、飲料、シリアルバー、ソース、スナックバー、乳製品、臨床用栄養製品および幼児用調製物からなる群から選択される食品である、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記組成物が、タブレット、カプセル、溶液またはエマルジョン形態の医薬組成物である、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記組成物が、柔らかいゲル、または、ゼラチン、デンプン、加工デンプン、デンプン誘導体、例えば、グルコース、スクロース、ラクトースおよびフルクトースからなる群から選択されるカプセル化材料を含む硬いカプセルの形態の食品サプリメントである、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記組成物が、共役リノール酸(CLA)、魚油、共役トリエン酸およびそれらの混合物から選択される1つまたは複数の更なる成分を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
過反応症の予防または治療用の組成物の製造における、ウルソル酸もしくはその誘導体、または、オレアノール酸もしくはその誘導体、または、それらの混合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−514727(P2007−514727A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544564(P2006−544564)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国際出願番号】PCT/GB2004/005453
【国際公開番号】WO2005/058302
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(503352660)リピッド ニュートリション ベスローテン フェンノートシャップ (10)
【氏名又は名称原語表記】Lipid Nutrition B. V.
【住所又は居所原語表記】Hogeweg 1, NL−1521 AZ Wormerveer, Netherlands
【Fターム(参考)】