説明

過渡クリアランス測定のための時間表示摩擦ピン及び関連する方法

【課題】固定及び回転部品間の最小クリアランスを判定する過渡クリアランス測定装置を提供する。
【解決手段】本装置は、固定部品(22、24)に固定されかつ回転部品(12)の表面に向かって突出した少なくとも1つの摩擦ピン(36)を含む。少なくとも1つの摩擦ピン(36)は、電気回路を完成した1以上の埋込みワイヤ(54)を有していて、使用中に、回転部品の表面が該少なくとも1つの摩擦ピンに摩擦した時に、電気回路が破断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的には回転機械技術に関し、より具体的には、蒸気タービン、圧縮機又はその他の回転機械の固定及び回転部品間のクリアランスの測定に関する。
【背景技術】
【0002】
広範な異種用途において2つの対象物間の距離を測定するために、様々なタイプのセンサが使用さてきた。例えば、蒸気タービンは、ホイール(タービン「段」に対応する)が形成されたロータを有し、ホイールの各々には、回転バケット又はブレードの列が取付けられ、それら回転バケット又はブレードの外側先端は、それぞれの固定ステータ部品に半径方向に隣接して配置される。ロータホイールの回転バケットとステータとの間のクリアランスは、温度の変化、バケット先端の酸化などのような作動条件に基づいて変化する。蒸気タービンの運転時には回転バケットとステータ部品との間の最小間隙又はクリアランスを維持して、漏洩を最少にしかつ性能を最大にすることが望ましい。
【0003】
クリアランスを測定するために使用する1つの既存のセンサは、マルチチップ静電容量センサであり、このマルチチップ静電容量センサは、静電容量を測定する複数プローブ先端を備えており、固定及び回転部品間の半径方向クリアランス(又は、センサの位置に応じて軸方向クリアランス)を該センサのプローブ先端の全てからの信号のゲインの関数として評価することができる。うず電流変換器及びマイクロ波センサもまた、クリアランスを測定するために使用されてきた。
【0004】
クリアランスはまた、摩擦ピンの使用により機械的に測定されてきた。摩擦ピンは一般的に、軟質金属又その他の材料で製作されかつクリアランスのステータ側に設置される。ピンは、例えばロータホイール及び該ロータホイールのバケット又はブレードのような回転部品が接触した時に、摩擦され或いは摩滅される。運転後におけるピンの残りの長さの測定は、最小クリアランス、つまりタービン(或いは、圧縮機又はその他の回転機械)の運転の間に受けたクリアランスの減少の量を示すことになる。現在のまた従来のシステムでは、機械を分解して摩擦ピンへのアクセスを可能にしかつ該摩擦ピンの残りの長さを測定した場合にのみ、クリアランスデータが取得可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7108107号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、機械を分解する必要なしにクリアランスデータを収集できるような摩擦ピン構造の改良に対する必要性が依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの例示的だが非限定的な態様では、本発明は、固定及び回転部品間の最小クリアランスを判定する過渡クリアランス測定装置に関し、本装置は、固定部品に固定されかつ回転部品の表面に向かって突出した少なくとも1つの摩擦ピンを含み、少なくとも1つの摩擦ピンは、電気回路を完成した1以上の埋込みワイヤを有していて、使用中に、回転部品の表面が該少なくとも1つの摩擦ピンに摩擦した時に、該電気回路が破断される。
【0008】
別の態様では、本発明は、固定及び回転部品間のクリアランスを測定するのに使用する摩擦ピンに関し、本摩擦ピンは、電気回路を完成した1以上のワイヤをその中に有するアブレイダブルピン本体を含み、1以上のワイヤは、ピン本体の露出端部表面とほぼ同一平面状態で設置されて、使用中に、回転部品が該ピン本体に摩擦した時に、電気回路が破断される。
【0009】
さらに別の態様では、本発明は、固定及び回転部品間の過渡クリアランスを追跡する方法に関し、本方法は、回転部品の表面に近接近して固定部品内に少なくとも1つの摩擦ピンを取付けるステップと、回転部品の表面との摩擦ピンの接触により、所定の量の材料が該摩擦ピンから取去られた時に、電気信号を発生させるステップと、時間の関数としてクリアランスの減少を追跡するステップとを含む。
【0010】
次に、以下に特定する図面に関して、本発明を一層詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の例示的であるが非限定的な実施形態による、回転及び固定タービン部品間の半径方向及び軸方向クリアランスを測定するように構成された摩擦ピンを示す、蒸気タービンの部分断面図。
【図2】例示的な摩擦ピン構造の拡大詳細図。
【図3】本発明のさらに別の例示的であるが非限定的な実施形態による、時間の関数として半径方向クリアランスを測定するように構成された複数の摩擦ピンの構成を示す図。
【図4】本発明のさらに別の例示的であるが非限定的な実施形態による、時間の関数として軸方向クリアランスを測定するように構成された複数の摩擦ピンの構成を示す図。
【図5】本発明の別の例示的であるが非限定的な実施形態による、軸方向クリアランスを測定する円周方向に間隔を置いて配置された摩擦ピンの構成を示す図。
【図6】図5と同様であるが、摩擦ピン間隔の変動を示す図。
【図7】図5及び図6と同様であるが、円周方向に間隔を置いた位置における摩擦ピン配置の別の変動を示す図。
【図8】本発明の例示的であるが非限定的な実施形態によるねじ込みタイプの摩擦ピンを示す図。
【図9】本発明の別の例示的であるが非限定的な実施形態による摩擦ピンの側面透視図。
【図10】本発明のさらに別の例示的であるが非限定的な実施形態による摩擦ピンの側面透視図。
【図11】図10から取ったものであるが、さらに回転部品を備えた摩擦ピンを拡大して示す拡大詳細図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照すると、蒸気タービン10は、その一部として、軸方向に間隔を置いて配置されたホイール14、16(2つのみを図示しているが、ホイールの数は、タービン「段」の数に対応していることを理解されたい。)が設けられたロータ12を含み、各ホイールには、それぞれ複数の円周方向に配置されたバケット又はブレード18、20が取付けられる。各ロータホイール間には、ステータダイアフラム22、24が配置され、それらステータダイアフラムは、それぞれ固定ノズル又はベーン26、28の円周方向列を支持している。矢印30で示すように、蒸気経路が軸方向に延びており、またブレード18、20の半径方向外側先端における過剰な漏洩を防止することが重要であり、この点に関して、一般的には参照符号32、34で示すシールのようなシールを採用して、バケット又はブレードの半径方向外側先端とステータの隣接する部分との間の漏洩を最少にしている。例えば、バケット又はブレードの基部とステータの軸方向に隣接した表面とに近接した境界面における漏洩を最少にするために、その他のシールが設置される。参照符号35で、1つのそのようなシールを示している。多様な理由から、タービン運転時にロータとステータとの間の過渡半径方向及び軸方向間隔を知ることは、有益である。
【0013】
図1はまた、バケット18に半径方向に及び軸方向に隣接して様々なステータ表面上に設置された複数の摩擦ピン36、38、40を示している。摩擦ピンの全ては、ほぼ同様に作動するので、摩擦ピン36のみについて、詳細に説明することにする。摩擦ピン36は、バケット18の外側先端カバー又はシュラウド44に半径方向に隣接してかつ一対のシール46、48の軸方向間においてステータ部分42内に取付けられる。摩擦ピン36は、先端カバー又はシュラウド44に向かって半径方向に延びて、該先端カバー又はシュラウド44との間に所定の間隙50を備える。
【0014】
図2で最も良く分るように、1つの例示的だが非限定的な実施形態における摩擦ピン36は、ほぼ円筒形の剛体本体52を含むことができ、本体52には、該本体52の端部表面56と同一表面状態で熱電対54が取付けられる。互いに結合させた2つの異種ワイヤによって形成された熱電対は、タービンデータ収集システム58(図1)に配線することができる。タービン運転時に、バケット先端カバー又はシュラウド44がピン36に摩擦した場合には、熱電対が故障することになり、その情報がデータ収集システム58に伝達される。そのデータはまた、始動時におけるバケット先端カバー又はシュラウド44との間の固有の又は所定のクリアランスが、少なくともその特定のクリアランスだけ減少することになってしまったことを示している。付加的データを収集してクリアランスの全体程度を判定することは有利である可能性があるので、複数の異なる長さのピンを採用することができる。図3は、先端カバー又はシュラウド44に近接した摩擦ピン60、62及び64の構成を示している。ピンは、軸方向に間隔を置いて配置されるが、バケットの半径方向外側部分に限定されており、各摩擦ピンは、徐々に増大する半径方向間隙を有するように構成される。次に、間隙閉鎖は、所定の円周方向位置について時間の関数として測定することができる。この点に関して、回路には、データ収集システム58と同期させた状態でタイマ又はクロック65(図1)を組入れることができて、事象発生の時点をその他の運転データと整合させて、摩擦の時点における運転状態についての情報を推定することができる。
【0015】
図4には、複数摩擦ピン66、68、70及び72を軸方向クリアランス構成として示しており、この図4でも同様に、それぞれのピンの長さは、徐々に変化していて、バケット又はブレード76の根元部分74とステータ80の軸方向に隣接する表面78との間の間隙クリアランスデータが時間の関数として得られる。摩擦ピン82、84、86はまた、そのアーク部にわたるあらゆる円周方向変動が無視可能である限り、図5に示すように、ステータ表面80上における小さなアーク部にわたって円周方向に配置することができる。
【0016】
ステータの偏心又は楕円化が予測される場合には、図6に示すように、ステータ表面94に沿ってより大きい円周方向間隔を有していて真円ずれ状態を検出するように、同じ長さの摩擦ピン88、90、92が設置されることになる。ステータの偏心又は楕円化が予測されない場合には、図6の構成を利用するが、異なる長さのピンを使用して時間の経過にわたるクリアランスデータを得ることができる。図6と同様であるが、群98、100、102としてステータ表面96上に設けた摩擦ピンを備えた構成を採用すると、付加的なデータが得られる。
【0017】
摩擦ピンは、実使用温度を考慮した状態で、比較的軟質金属、プラスチック(例えば、ベークライト)又はその他の好適な材料のようなアブレイダブル材料で製作されるのが好ましい。さらに、上記した熱電対に代わるものとして、回路の単線ワイヤを摩擦ピン内に埋込むことができ、ピンの端部表面に対して逆U字形になったワイヤを設けることができ、或いはU字形の基部をピンの表面に平行にかつ該ピンの表面に隣接して又は該ピンの表面と同一表面状態で設置することができる。このようにして、ピンの摩擦により、回路を破断するか又は開放するのに十分なワイヤの摩耗が生じることになる。
【0018】
摩擦ピン設計に対する他の解決法には、例えば複数の異なる長さの摩擦ピンに代わるものとして複数回路を有するテーパ先端を備えるように該ピンの先端を再形成することを含むことができる。設計における別の変形形態は、改造作業において容易に据付けることができるねじ込みタイプの摩擦ピンを利用することにするものである。ねじ込み摩擦ピンはまた、試験室において有用であることが判っている。図8には、ブレード先端108に隣接して先端106を備えたねじ込みタイプのピン104を示している。
【0019】
図9は、別の摩擦ピン110を示しており、この場合には、同一の摩擦ピン内に複数電気回路が内蔵されており、各回路の摩擦ポイントは、所定の距離Δxだけ離れて設置されている。これにより、一群の摩擦ピンと同じ結果(つまり、時間の関数としてクリアランスの減少を監視すること)を達成するが、単一のピンしか使用しない。
【0020】
図10及び図11では、摩擦ピン118内において、1以上のワイヤ116を使用する。ワイヤは、摩擦が発生した時に、瞬時には損傷状態(破断状態)にならないほど十分な厚さになっている。摩擦は、ワイヤの一部を取去って、回転部品122との摩擦ポイント120におけるワイヤ厚さを減少させる。減少したワイヤ厚さにより、一層高い抵抗が生じる。この抵抗は、測定することができ、かつこの抵抗から、摩擦の侵入度を計算することができる。
【0021】
現時点で最も実用的かつ好ましい実施形態であると考えられるものに関して本発明を説明してきたが、本発明は、開示した実施形態に限定されるものではなく、逆に特許請求の範囲の技術思想及び技術的範囲内に含まれる様々な改良及び均等な構成を保護しようとするものであることを理解されたい。
【符号の説明】
【0022】
10 蒸気タービン
12 ロータ
14、16 間隔を置いたホイール
18、20 バケット又はブレード
22、24 ステータダイアフラム
26、28 ノズル又はベーン
30 蒸気経路矢印
32、34 シール
36、38、40 摩擦ピン
42 ステータ部分
44 先端カバー又はシュラウド
46、48 シール
52 円筒形本体
54 熱電対
56 端部表面
58 データ収集システム
60、62、64 摩擦ピン
65 タイマ又はクロック
66、68、70、72 摩擦ピン
74 根元部分
76 バケット又はブレード
78 表面(ステータ)
80 ステータ
82、84、86 摩擦ピン
88、90、92 摩擦ピン
94 ステータ表面
96 ステータ表面
98、100、102 摩擦ピン群
104 ねじ込みピン
106 先端
108 ブレード先端
110 摩擦ピン
112、114 回路
116 ワイヤ
118 摩擦ピン
120 摩擦ポイント
122 回転部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定(22、24)及び回転(12)部品間の最小クリアランスを判定する過渡クリアランス測定装置であって、
前記固定部品に固定されかつ前記回転部品の表面に向かって突出した少なくとも1つの摩擦ピン(36、38又は40)
を備えており、前記少なくとも1つの摩擦ピンが、電気回路を完成した1以上の埋込みワイヤ(54)を有していて、使用中に、前記回転部品の表面が該少なくとも1つの摩擦ピンに摩擦した時に前記電気回路が破断される、装置。
【請求項2】
前記電気回路がタイマ又はクロック(65)を含み、前記タイマ又はクロックが、前記電気回路が破断された時に停止する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの摩擦ピンが、その各々がそれ自体の電気回路を有する複数の異なる長さの摩擦ピン(60、62、64)を含む、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記電気回路がデータ収集システム(58)に接続されて、時間の関数として作動クリアランスを追跡することができる、請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの摩擦ピンが、ねじ込みタイプのピン(104)を含む、請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記固定部品(22、24)がタービンステータを含み、前記回転部品がタービンロータを含み、前記最小クリアランスが軸方向又は半径方向クリアランスである、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの摩擦ピン(36、38又は40)が、前記回転部品の回転軸線に対して軸方向に又は半径方向に配向される、請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの摩擦ピンが、その各々がそれ自体の電気回路を有する複数の異なる長さの摩擦ピン(60、62、64)を含み、前記タイマ又はクロック(65)が、データ収集システム(58)と同期して、時間の関数として作動クリアランスを追跡することができる、請求項2記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの摩擦ピンが、半径方向又は軸方向クリアランスを追跡するように構成された複数の異なる長さの摩擦ピン(60、62、64又は66、68、70、72)を含む、請求項1記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの摩擦ピンが、前記固定部品の周りで円周方向に間隔を置いて配置された複数の等しい長さの摩擦ピン(82、84、86)を含む、請求項1記載の装置。
【請求項11】
固定及び回転部品間のクリアランスを測定するのに使用する摩擦ピン(36)であって、
電気回路を完成する1以上のワイヤ(54)をその中に有する軟質金属ピン本体(52)を備えており、前記1以上のワイヤ(54)が、前記ピン本体の露出端部表面とほぼ同一平面状態で設置されて、使用中に、前記回転部品が該ピン本体に摩擦した時に、前記電気回路が破断される、摩擦ピン。
【請求項12】
前記1以上のワイヤが単線ワイヤを含む、請求項11記載の摩擦ピン。
【請求項13】
前記1以上のワイヤが、結合して熱電対(54)を形成した2つの異種ワイヤを含む、請求項11記載の摩擦ピン。
【請求項14】
固定及び回転部品間の過渡クリアランスを追跡する方法であって、
前記回転部品の表面(44)に近接近して前記固定部品(22)内に少なくとも1つの摩擦ピン(36)を取付けるステップと、
前記回転部品の表面との前記摩擦ピンの接触により、所定の量の材料が該摩擦ピンから取去られた時に、電気信号を終了させるステップと、
時間の関数としてクリアランスの減少を追跡するステップと
を含む方法。
【請求項15】
前記固定部品(22、24)がタービンステータを含み、前記回転部品がタービンロータ(12)を含み、前記最小クリアランスが軸方向クリアランスである、請求項14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−237208(P2010−237208A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71278(P2010−71278)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】