説明

過給アシスト制御システム

【課題】 加速要求に対する実過給圧の追従性および加速応答性の向上と目標過給圧に対する実過給圧の収束性の向上とを両立させることを課題とする。
【解決手段】 ドライバーによって急加速要求が成されていると判定された時点で直ぐに、ドライバーによる急加速要求に対する実過給圧の追従性および加速応答性を向上させるための過給アシスト量(A)に基づいてアシストモータによる過給アシストを行う「第1過給アシスト制御」を所定時間(T)が経過するまでの期間(加速初期時)実行し、その後に、目標過給圧に対する実過給圧の収束性を向上させるための過給アシスト量(B)に基づいてアシストモータによる過給アシストを行う「第2過給アシスト制御」を実行している。これにより、ドライバーによる加速要求に対する実過給圧の追従性および加速応答性の向上と目標過給圧に対する実過給圧の収束性の向上とが両立する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機の過給動作をモータによりアシストして実過給圧を増大させる過給アシスト制御システムに関するもので、特にターボ過給機のコンプレッサを電動駆動(モータリング)することが可能な電動機に供給する電力を調整して電動機の回転速度を制御することで電動機への供給電力に対応した所定の過給アシスト量を得るようにした電動機付ターボチャージャー制御装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来より、自動車等の車両には、高出力化または低燃費化を図るという目的で、エンジンの気筒内に吸入される吸入空気をターボ過給機(ターボチャージャー)で過給するようにした過給機付エンジンが搭載されている。ここで、ターボ過給機は、エンジンより流出する排気ガスの排気エネルギー(排気圧)を利用してタービンを回し、このタービンに同軸的に設けられたコンプレッサを駆動して吸入空気を過給する過給機である。このため、エンジンの低回転域の過給圧の応答性が悪く、実過給圧が低い値となるので充填効率が低下し、エンジン出力の向上が不十分となるという不具合がある。
【0003】
この不具合を解消する目的で、ターボ過給機のタービン軸に電動機を取り付け、ターボ過給機のタービン軸を電動駆動(モータリング)するようにした電動機付ターボチャージャー制御装置(過給アシスト制御システム)が開発されている。これは、目標過給圧と実過給圧との偏差に基づいて、電動機に供給する電力(供給電力:kW)を求め、この求めた供給電力を電動機に与えて電動機の回転速度を制御することで、電動機への供給電力に対応した所定の過給アシスト量を得るようにしたシステムである。したがって、エンジンのトルクアップを必要とする時には、ターボ過給機のコンプレッサの過給動作を電動機によりアシストして実過給圧を早期に増大させることが可能となる。
【0004】
[従来の技術の不具合]
従来の過給アシスト制御システムにおいては、ドライバーによってアクセルペダルが踏み込まれて加速要求が成された際に、ドライバーがアクセルペダルを踏み込んでから実際に電動機による過給アシストが開始されるまでに、次のような過程をとる。それは、図11に示したように、「先ずアクセルペダルの踏み込み量(単位時間当たりのアクセル開度の変化量:アクセル開度変化率)を認識し、次にエンジン回転数とアクセル開度とに対応して燃料噴射量(目標噴射量)を決定し、次にエンジン回転数と目標噴射量とに対応して目標過給圧を決定し、次に過給圧センサより出力される電気信号に基づいて実過給圧を認識し、次に目標過給圧と実過給圧との偏差を認識し、次に目標過給圧と実過給圧との偏差に基づいて、過給アシスト量を決定し、次に過給アシスト量に対応した電動機への供給電力を決定する。」という過程をとってエンジン出力(例えばエンジントルクまたはエンジン回転数等)を増大させるようにしている。このため、加速要求が成されてから実際に電動機により過給アシストが開始されるまでにタイムラグ(応答遅れ)があり、ドライバーはターボ過給機に電動機が装着されているにも拘らず、ターボラグを感じるという問題があった。
【0005】
そこで、「ドライバーの加速要求時における応答遅れに起因する、加速要求に対する加速応答性の悪化を回避する」という目的で、アクセルペダル踏込位置を検出する踏込位置検出手段と、アクセルペダル踏込速度を検出する踏込速度検出手段とを設けて、アクセルペダル踏込速度が速い時に加速要求が成されたと判断して、電動機への供給電力を最大値に設定して、加速要求に対する加速応答性を向上させるようにした電動機付ターボチャージャー制御装置(過給アシスト制御システム)が開発されている(例えば、特許文献1参照)。しかるに、この制御方法においては、アクセルペダルの最大踏み込み時に、最大過給圧に達するまで電動機による過給アシスト量(電動機への供給電力)を最大値(最大過給アシスト量)としているが、最大過給圧に達した後にどのようにして実過給圧を目標過給圧に収束させるかについて何も記載されておらず、目標過給圧に対する実過給圧の収束性を悪化させる可能性がある。
【0006】
また、アクセル開度変化量(率)が所定値以上の時に加速要求が成されたと判断して、電動機への通電開始初期に最大通電量を通電量として決定し、この求めた最大通電量を実過給圧が目標過給圧を超えるまでの期間、電動機に与えて、電動機による過給アシスト時における実過給圧の立ち上がりの応答性を向上させるようにした電動機付ターボチャージャー制御装置(過給アシスト制御システム)が開発されている(例えば、特許文献2参照)。しかるに、この制御方法においては、最大通電量を実過給圧が目標過給圧を超えるまでの期間、電動機に与えるようにしているので、実過給圧が目標過給圧よりも過大となる方向にオーバーシュートする。これにより、目標過給圧に対する実過給圧の収束性を悪化させる可能性がある。
【0007】
したがって、特許文献1及び特許文献2に記載の過給アシスト制御システムでは、ドライバーの加速要求に伴う、エンジンの運転状態の急激な変化に基づいて直ちに高い値に設定される目標過給圧に対して実過給圧を早期に追従させるようにする、「加速要求に対する実過給圧の追従性および加速応答性」と、実過給圧が目標過給圧よりも過大となる方向にオーバーシュートすることなく、滑らかに速やかに実過給圧を目標過給圧に収束させるようにする、「目標過給圧に対する実過給圧の収束性」とを両立させることができないという問題が生じている。
【特許文献1】特開平1−117931号公報(第1−4頁、第1−2図)
【特許文献2】特開2004−169629号公報(第1−9頁、図1−図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、加速要求に対する実過給圧の追従性および加速応答性の向上と目標過給圧に対する実過給圧の収束性の向上とを両立させることのできる過給アシスト制御システムを提供することにある。また、ドライバーがアクセルペダルを踏み込んだ時点から直ちにモータによる過給アシストを開始して加速性能を更に向上させることのできる過給アシスト制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、加速要求が成されていると判定された際に、加速要求に対する実過給圧の追従性および加速応答性を向上させるための過給アシスト量に基づいてモータによる過給アシストを行う第1過給アシスト制御と、目標過給圧に対する実過給圧の収束性を向上させるための過給アシスト量に基づいてモータによる過給アシストを行う第2過給アシスト制御とを、エンジンの運転状態の単位時間当たりの変化量、あるいは実過給圧と目標過給圧との偏差、あるいは加速要求が成された時点から経過した時間に基づいて選択的に切り替えることにより、加速要求に対する実過給圧の追従性および加速応答性の向上と目標過給圧に対する実過給圧の収束性の向上とを両立させることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、アクセルペダル踏込速度あるいはアクセル開度変化率または目標噴射量変化率または目標燃料圧力変化率が所定値以上の際に、加速要求判定手段によって加速要求が成されていると判定するようにしても良い。ここで、車両を一定速度で走行させている定常走行から加速走行に移行する際に、アクセルペダル踏込速度あるいはアクセル開度変化率または目標噴射量変化率または目標燃料圧力変化率が第1所定値以上であれば緩加速要求が成されていると判定し、定常走行から加速走行に移行する際に、アクセルペダル踏込速度あるいはアクセル開度変化率または目標噴射量変化率または目標燃料圧力変化率が第1所定値よりも大きい第2所定値以上であれば急加速要求が成されていると判定するようにしても良い。そして、緩加速要求時には、第2過給アシスト制御のみを実行し、急加速要求時には、第1過給アシスト制御と第2過給アシスト制御とを併用するようにしても良い。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、踏込位置記憶手段によって記憶されたアクセルペダル踏込位置の前回値と踏込位置検出手段によって検出したアクセルペダル踏込位置の今回値との偏差に基づいて過給アシスト量を設定することにより、加速要求に対する実過給圧の追従性および加速応答性を向上させることができる。また、請求項4に記載の発明によれば、実過給圧と目標過給圧との偏差に基づいて過給アシスト量を設定することにより、目標過給圧に対する実過給圧の収束性を向上させることができる。
【0012】
請求項5に記載の発明によれば、加速要求判定手段によって加速要求が成されていると判定された時点から直ちに第1過給アシスト制御を実行することにより、ドライバーがアクセルペダルを踏み込んだ時点から直ちにモータによる過給アシストを開始することができるので、加速性能を更に向上させることができる。また、請求項6に記載の発明によれば、加速初期には、第1アシスト量決定手段によって決定された過給アシスト量と第2アシスト量決定手段によって決定された過給アシスト量とのうちで大きい方の値を、過給アシスト量の最大値として認定し、過給アシスト量の最大値に基づいてモータによる過給アシストを行うことにより、加速要求に対する実過給圧の追従性および加速応答性を向上させることができる。
【0013】
請求項7に記載の発明によれば、加速初期には、第1過給アシスト制御を第2過給アシスト制御よりも優先して実行し、加速後期には、第2過給アシスト制御を第1過給アシスト制御よりも優先して実行することにより、加速要求に対する実過給圧の追従性および加速応答性と目標過給圧に対する実過給圧の収束性とを両立させることができる。また、請求項8に記載の発明によれば、加速初期から加速後期への移行中に、第1過給アシスト制御と第2過給アシスト制御とを併用するようにしても良い。
【0014】
請求項9に記載の発明によれば、加速初期とは、加速要求が成されていると判定された時点から所定時間が経過するまでの期間である。そして、加速要求が成された時点から所定時間が経過するまでの期間、過給アシスト量の最大値、あるいは第1アシスト量決定手段または第2アシスト量決定手段によって決定された過給アシスト量に基づいてモータによる過給アシストを行う場合には、仮にモータへの供給電力を最大値にしたとしても、エンジンの運転状態の単位時間当たりの変化量、あるいは実過給圧と目標過給圧との偏差が大きい程、モータへの電力の供給を開始してから実過給圧が目標過給圧に収束するまでの期間が長くなる。そこで、エンジンの運転状態の単位時間当たりの変化量、あるいは実過給圧と目標過給圧との偏差が大きい程、上記の所定時間を長くする。
【0015】
請求項10に記載の発明によれば、第1過給アシスト制御から第2過給アシスト制御に移行する移行期間中に、第1アシスト量決定手段によって決定される過給アシスト量を徐々に減少させながら、第2アシスト量決定手段によって決定される過給アシスト量に移行させるアシスト量徐変制御を行うようにしても良い。この場合には、「例えば過給アシスト量の最大値から、それよりも少ない実過給圧と目標過給圧との偏差に対応した過給アシスト量まで一気に下げると、モータの回転速度が急変動して、過給アシスト力に段差ができ、エンジン出力が急変動する」ことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態は、加速要求に対する実過給圧の追従性および加速応答性の向上と目標過給圧に対する実過給圧の収束性の向上とを両立させるという目的を、加速要求が成されていると判定された際に、加速要求に対する実過給圧の追従性および加速応答性を向上させるための過給アシスト量に基づいてモータによる過給アシストを行う第1過給アシスト制御と、目標過給圧に対する実過給圧の収束性を向上させるための過給アシスト量に基づいてモータによる過給アシストを行う第2過給アシスト制御とを併用することで実現した。また、ドライバーがアクセルペダルを踏み込んだ時点から直ちにモータによる過給アシストを開始して加速性能を更に向上させるという目的を、加速要求判定手段によって加速要求が成されていると判定された時点から直ちに第1過給アシスト制御を実行することで実現した。
【実施例1】
【0017】
[実施例1の構成]
図1ないし図6は本発明の実施例1を示したもので、図1はターボ過給機付エンジン制御システムの全体構成を示した図で、図2はターボ過給機付エンジン制御システムの制御系を示した図である。
【0018】
本実施例のターボ過給機付エンジン制御システムは、例えば自動車等の車両に搭載されるターボチャージャー付ディーゼルエンジン等の内燃機関(ターボ過給機付エンジン:以下エンジンと呼ぶ)1より流出する排気ガスの排気エネルギーを利用して、エンジン1の各気筒(シリンダ)の燃焼室(図示せず)内に吸入される吸入空気を過給するターボ過給機(ターボチャージャー)4と、このターボ過給機4を電動駆動(モータリング)することで過給アシストを行う電動発電機(以下アシストモータと呼ぶ)5と、このアシストモータ5への供給電力を調整してアシストモータ5の回転速度を制御するモータ制御装置を内蔵したエンジン制御ユニット(以下ECUと言う)10とを備えている。
【0019】
エンジン1は、燃料が直接燃焼室内に噴射供給される直接噴射式ディーゼルエンジンであって、エンジン1の各気筒の燃焼室に連通するエンジン吸気管2およびエンジン排気管3を備えている。このエンジン1には、吸気ポートを開閉する吸気バルブ(図示せず)、および排気ポートを開閉する排気バルブ(図示せず)が取り付けられている。そして、エンジン1の吸気ポートは、インテークマニホールド(吸気多岐管)を含むエンジン吸気管2内に形成される吸気通路を経て吸入空気が供給されるように構成されている。また、エンジン1の排気ポートは、エキゾーストマニホールド(排気多岐管)を含むエンジン排気管3内に形成される排気通路に排気ガスを排出するように構成されている。
【0020】
なお、ターボ過給機付エンジン制御システムには、エンジン1の各気筒の燃焼室内に高圧燃料を噴射供給するコモンレール式燃料噴射装置(図示せず)が設けられている。このコモンレール式燃料噴射装置は、燃料の噴射圧力に相当する高圧燃料を蓄圧するコモンレール(図示せず)と、アクチュエータとしての吸入調量弁(SCV:図示せず)を経て加圧室に吸入した燃料を加圧して高圧化し、この高圧燃料をコモンレールに圧送供給するサプライポンプ(燃料噴射ポンプ:図示せず)と、コモンレール内に蓄圧された高圧燃料を、エンジン1の各気筒の燃焼室内に噴射供給する複数のインジェクタ(INJ:図示せず)とを備えている。なお、複数のインジェクタには、ノズルニードル(弁体)を開弁方向に駆動する電磁弁等のアクチュエータが設けられている。
【0021】
ターボ過給機4は、エンジン吸気管2の途中に設けられたコンプレッサ11と、エンジン排気管3の途中に設けられたタービン12とを備えている。このタービン12は、ロータシャフト(タービン軸)13を介してコンプレッサ11と一体的に回転する。ここで、エンジン吸気管2の途中には、ターボ過給機4のコンプレッサ11によって圧縮(過給)されて昇温した吸入空気を冷却するための空冷式または水冷式のインタークーラ14が設置されている。なお、エンジン吸気管2の最上流側に設置されたエアクリーナケース(図示せず)内には、吸入空気中の異物を捕捉するための濾過エレメント(エアフィルタ)が収容されている。
【0022】
コンプレッサ11は、ロータシャフト13の中心軸線方向(軸方向)の一端部に取り付けられて、複数のコンプレッサブレードを有するコンプレッサホイールを備えている。このコンプレッサホイールは、エンジン吸気管2内を流れる吸入空気を過給するように、コンプレッサハウジング内に回転自在に収容されている。なお、コンプレッサハウジング内に形成される吸入空気供給経路は、コンプレッサホイールの外周を囲むように、そのコンプレッサホイールの回転方向に沿って渦巻き状に形成されている。
【0023】
タービン12は、ロータシャフト13の軸方向の他端部に取り付けられて、複数のタービンブレードを有するタービンホイールを備えている。このタービンホイールは、エンジン排気管3内を流れる排気ガスによって回転するように、タービンハウジング内に回転自在に収容されている。なお、タービンハウジング内に形成される排気ガス排出経路は、タービンホイールの外周を囲むように、そのタービンホイールの回転方向に沿って渦巻き状に形成されている。また、本実施例のコンプレッサ11とタービン12との間、しかもロータシャフト13の軸方向の中央部には、アシストモータ5が取り付けられている。
【0024】
アシストモータ5は、ロータシャフト13を回転させてコンプレッサ11およびタービン12を回転駆動することで過給アシストを行う電動機としての機能と、エンジン1の排気エネルギーによって回転駆動されることで回生発電を行う発電機としての機能とを兼ね備えた電動発電機である。このアシストモータ5は、ロータシャフト13に一体化されたロータ、およびこのロータの外周側に対向配置されたステータよりなる三相誘導電動発電機等の交流(AC)モータであって、ロータには、永久磁石(マグネット)を有するロータコアが設けられ、また、ステータには、三相のステータコイルが巻回されたステータコアが設けられている。なお、アシストモータ5は、アシスト過給が必要な時に電動機として機能する。このとき、アシストモータ5は、電力変換部(以下コントローラと呼ぶ)6を介してECU10に電気的に接続される。また、アシストモータ5は、アシスト過給が不要な時に発電機として機能する。このとき、アシストモータ5は、コントローラ6を介して車両に搭載されたバッテリ17やその他の電気装置に電気的に接続される。
【0025】
ここで、ECU10には、図2に示したように、制御処理や演算処理を行うCPU、制御プログラムまたは制御ロジックやデータを保存する記憶装置(SRAM、DRAM等の揮発性メモリ、EPROM、EEPROMまたはフラッシュ・メモリ等の不揮発性メモリ)、入力回路、出力回路、電源回路等の機能を含んで構成される周知の構造のマイクロコンピュータが設けられている。そして、ECU10は、イグニッションスイッチがオン(IG・ON)すると、メモリ内に格納されている制御プログラムまたは制御ロジックに基づいて、例えばコモンレール内の燃料圧力(コモンレール圧力)、実過給圧(実吸気圧)等が各々制御指令値となるようにフィードバック制御するように構成されている。
【0026】
また、ECU10と各システムのアクチュエータとの間には、サプライポンプの吸入調量弁へSCV駆動電流を印加するポンプ駆動回路と、インジェクタの電磁弁にINJ駆動電流を印加するインジェクタ駆動回路とが設けられている。また、ECU10とターボ過給機4のアシストモータ5との間には、コントローラ6が設けられている。なお、コントローラ6は、バッテリ17からの直流電力を昇圧するDC−DCコンバータと、昇圧された直流電力を所定の周波数の交流電力に変換してアシストモータ5の回転速度を可変制御するインバータと、アシストモータ5の三相のステータコイルから出力される交流電流を整流して直流電流にする整流回路とを備えている。
【0027】
なお、DC−DCコンバータは、整流回路より出力される直流電圧を降圧した後に平滑して安定したバッテリ電圧を得ることもできる。また、インバータは、ECU10からの制御信号に基づいてアシストモータ5の三相のステータコイルへの供給電力(例えば駆動電流値=インバータの出力電流値)を可変することで、アシストモータ5のロータシャフト13の回転速度を制御する回転速度制御手段である。また、コントローラ6は、アシストモータ5の三相のステータコイルへの供給電力に基づいて、ターボ過給機4(またはアシストモータ5)のロータシャフト13の回転速度を算出する機能を有している。なお、ターボ過給機4(またはアシストモータ5)のロータシャフト13の回転速度を電気信号に変換して出力する回転速度センサを設けても良い。
【0028】
そして、ECU10は、エンジン1のクランクシャフト回転角度を検出するクランク角度センサ21、エンジン冷却水温を検出する冷却水温センサ22、燃料温度を検出する燃料温度センサ23等の各種センサ信号がA/D変換器によってA/D変換された後に、ECU10に内蔵されたマイクロコンピュータに入力されるように構成されている。なお、クランク角度センサ21は、エンジン1のクランクシャフト回転角度を電気信号に変換するピックアップコイルよりなり、例えば30°CA(クランク角度)毎にNEパルス信号が出力される。そして、ECU10は、クランク角度センサ21より出力されたNEパルス信号の間隔時間を計測することによってエンジン回転速度(以下エンジン回転数と言う:NE)を検出するための回転速度検出手段として機能する。
【0029】
また、ECU10には、ドライバーによるアクセル操作量(アクセルペダルの踏み込み量)を電気信号(アクセル開度信号)に変換し、ECU10へどれだけアクセルペダルが踏み込まれているかを出力するアクセル開度センサ24が接続されている。このアクセル開度センサ24から出力される電気信号(アクセル開度信号)は、他のセンサと同様に、A/D変換器によってA/D変換された後にマイクロコンピュータに入力される。また、ECU10には、ターボ過給機4によって過給された吸入空気の過給圧、つまりターボ過給機4によってエンジン吸気管2内に生成された実過給圧を検出する過給圧センサ25が接続されている。この過給圧センサ25から出力される電気信号(センサ信号)は、他のセンサと同様に、A/D変換器によってA/D変換された後にマイクロコンピュータに入力される。なお、過給圧センサ25は、エンジン吸気管2内の吸気圧力(実過給圧、実吸気圧)を電気信号に変換して出力する。
【0030】
そして、ECU10は、エンジン回転数(NE)とアクセル開度(ACCP)とに対応して設定された基本噴射量(Q)に、エンジン冷却水温や燃料温度等を考慮した噴射量補正量を加味して指令噴射量(目標噴射量:QFIN)を算出する機能(噴射量設定手段)と、エンジン回転数(NE)と目標噴射量(QFIN)とによって指令噴射時期(TFIN)を算出する機能(噴射時期設定手段)と、目標噴射量(QFIN)とコモンレールに設置された燃料圧力センサ(図示せず)によって検出されるコモンレール内の燃料圧力(コモンレール圧力:PC)とによってインジェクタの電磁弁への通電時間に相当する噴射指令パルス長さ(=噴射量指令値、指令噴射期間:TQFIN)を算出する機能(噴射期間設定手段)とを有している。
【0031】
また、ECU10は、エンジン1の運転状態に応じた最適な燃料の噴射圧力を演算し、ポンプ駆動回路を介してサプライポンプの吸入調量弁を駆動する燃料圧力制御手段を有している。これは、目標噴射量(QFIN)とエンジン回転数(NE)とによって目標燃料圧力(PFIN)を算出する機能(燃料圧力設定手段)を有し、目標燃料圧力(PFIN)を達成するために、吸入調量弁に印加するポンプ駆動電流を調整して、サプライポンプより吐出される燃料吐出量をフィードバック制御するように構成されている。
【0032】
[実施例1の制御方法]
次に、本実施例のターボ過給機付エンジン制御システムの制御方法を図1ないし図6に基づいて簡単に説明する。ここで、図3はターボ過給機付エンジン制御システムの制御方法を示したフローチャートである。この図3の制御ルーチンは、イグニッションスイッチがONとなった後に、所定の制御周期毎に繰り返される。
【0033】
先ず、エンジン1の運転状態または運転条件を算出するのに必要な各種センサ信号、エンジン運転情報および各システム運転情報を入力する(ステップS1)。具体的には、エンジン回転数等を読み込む。ここで、エンジン回転数は、クランク角度センサ21より出力されたNEパルス信号の間隔時間を計測することによって検出される。次に、アクセル開度センサ24から出力される電気信号(アクセル開度信号)、つまりアクセル開度からアクセルペダル踏込位置の今回値(ACCP(n))を検出する(ステップS2)。このアクセル開度をステップS1で取り込むようにすれば、ステップS2の検出処理を廃止できる。
【0034】
次に、前回の制御周期までにDRAM等の揮発性メモリまたはEEPROM等の不揮発性メモリに記憶保持されたアクセルペダル踏込位置の前回値(ACCP(n−1))を取り込み、アクセルペダル踏込位置の今回値(ACCP(n))とアクセルペダル踏込位置の前回値(ACCP(n−1))との偏差(ΔACCP)を求める。あるいはアクセル開度センサ24から出力される電気信号(アクセル開度信号)、つまりアクセル開度からアクセル開度変化率を算出する(ステップS3)。ここで、アクセル開度変化率は、アクセル開度センサ24によって検出したアクセル開度の単位時間当たりの変化量(アクセル開度変化量)から求められる。
【0035】
次に、ドライバーによって加速要求が成されているか否かを判定するという目的で、ドライバーによってアクセルペダルが踏み込まれているか否かを判定する。具体的には、アクセルペダル踏込位置の今回値(ACCP(n))とアクセルペダル踏込位置の前回値(ACCP(n−1))との偏差(ΔACCP)が第1所定値以上か否かを判定する。あるいはアクセル開度変化率が第1所定値以上か否かを判定する(加速要求判定手段:ステップS4)。なお、ステップS4の判定処理において、過給アシストが必要であるか否かを判定するという目的で、エンジン回転数が低速回転域であるか高速回転域であるかを判定するようにしても良い。
【0036】
このステップS4の判定結果がNOの場合には、ドライバーによって加速要求が成されておらず、過給アシストが不要な定常状態および減速状態と判断できるので、アシストモータ5をターボ過給機4によって回転駆動する回生発電モードに切り替える(ステップS5)。ここで、ステップS5にて回生発電モードフラグを立て(ONし)、過給アシストモードフラグを倒す(OFFする)ようにしても良い。
【0037】
すなわち、前回の制御周期までアシストモータ5の三相のステータコイルを通電(ON)していた場合には、アシストモータ5の三相のステータコイルへの通電を停止(OFF)する。また、前回の制御周期までに、アシストモータ5の三相のステータコイルへの通電を停止(OFF)していた場合には、アシストモータ5の三相のステータコイルの通電停止(OFF)状態を継続する。その後に、ステップS10の処理に進む。
【0038】
これによって、アシストモータ5により回生発電された電力が、コントローラ6の整流回路やDC−DCコンバータ等を介してバッテリ17に返還され、この返還された電力を各種の電気装置の消費電力の一部を賄うものとして有効に活用するようにすれば、各種の電気装置の電気負荷を大幅に軽減することができる。このため、エンジン1により回転駆動されるエンジン補機であるオルタネータの駆動負荷が、アシストモータ5により回生発電された電力分だけ軽くなるので、燃費を向上させることがきる。なお、この回生発電モード時には、ターボ過給機4がエンジン1より流出する排気ガスの排気エネルギーのみを利用した通常のターボチャージャーとして機能する。
【0039】
また、ステップS4の判定結果がYESの場合には、ドライバーによって加速要求が成されており、過給アシストが必要な加速状態と判断できるので、ターボ過給機4のコンプレッサ11およびタービン12をアシストモータ5によって回転駆動する過給アシストモードに切り替える(ステップS6)。ここで、ステップS6にて過給アシストモードフラグを立て(ONし)、回生発電モードフラグを倒す(OFFする)ようにしても良い。また、ステップS6の制御処理を廃止しても良い。
【0040】
次に、ドライバーによって急加速要求が成されているか否かを判定するという目的で、ドライバーによってアクセルペダルが踏み込まれているか否かを判定する。具体的には、アクセルペダル踏込位置の今回値(ACCP(n))とアクセルペダル踏込位置の前回値(ACCP(n−1))との偏差(ΔACCP)が第1所定値よりも大きい値の第2所定値以上か否かを判定する。あるいはアクセル開度変化率が第1所定値よりも大きい値の第2所定値以上か否かを判定する(加速要求判定手段:ステップS7)。
【0041】
このステップS7の判定結果がYESの場合には、ドライバーによって急加速要求が成されていると判断できる。例えばドライバーによってアクセルペダルが大きく踏み込まれて、目標過給圧が現在の実過給圧よりも非常に高い値に設定され、ターボ過給機4のみでは目標過給圧に対する実過給圧の不足分が非常に多い場合であると判断できるので、図4の制御ルーチン(第1過給アシスト制御)を実行する(ステップS8)。その後に、ステップS10の処理に進む。
【0042】
また、ステップS7の判定結果がNOの場合には、ドライバーによって緩加速要求が成されていると判断できる。例えばドライバーによってアクセルペダルが小さく踏み込まれて、目標過給圧が現在の実過給圧よりもあまり高くない値に設定され、ターボ過給機4のみでは目標過給圧に対する実過給圧の不足分が少ない場合であると判断できるので、図5の制御ルーチン(第2過給アシスト制御)を実行する(ステップS9)。次に、ステップS2で検出したアクセルペダル踏込位置の今回値(ACCP(n))を、アクセルペダル踏込位置の前回値(ACCP(n−1))に変換して、DRAM等の揮発性メモリまたはEEPROM等の不揮発性メモリに更新して記憶する(ステップS10)。その後に、図3の制御ルーチンを抜ける。
【0043】
ここで、図4は、加速要求に対する実過給圧の追従性および加速応答性を向上させるための過給アシスト量(A)に基づいてアシストモータ5による過給アシストを行う第1過給アシスト制御方法を示したフローチャートである。この図4の制御ルーチンは、ドライバーによる急加速要求時に、所定時間が経過するまで実行される。
【0044】
先ず、アクセルペダル踏込位置の今回値(ACCP(n))とアクセルペダル踏込位置の前回値(ACCP(n−1))との偏差(ΔACCP)、あるいはアクセル開度変化率に基づいて過給アシスト量(A)を設定する(第1アシスト量決定手段:ステップS11)。この過給アシスト量(A)は、ドライバーによる急加速要求に対する実過給圧の追従性および加速応答性を向上させるための過給アシスト量として算出される。
【0045】
次に、ステップS11で算出した過給アシスト量(A)に対応した目標回転速度を設定する(ステップS12)。次に、アシストモータ5のモータスピード(実回転速度)を目標回転速度に略一致させるのに必要な、アシストモータ5の三相のステータコイルへの最大供給電力(供給電力の最大値=駆動電流値の最大値=インバータの出力電流値の最大値)を算出する(ステップS13)。次に、ECU10からコントローラ6へ最大電力供給指令を出力する(ステップS14)。
【0046】
これにより、コントローラ6は、ステップS13で算出したアシストモータ5の三相のステータコイルへの最大供給電力を、アシストモータ5の三相のステータコイルに供給する。すなわち、アシストモータ5の三相のステータコイルへの電力供給(通電)を開始(ON)することで、過給アシスト量(A)に基づいてアシストモータ5による過給アシストが行われる。よって、「第1過給アシスト制御」が実行される(ステップS15)。
【0047】
これによって、アクセルペダル踏込位置の今回値(ACCP(n))とアクセルペダル踏込位置の前回値(ACCP(n−1))との偏差(ΔACCP)、あるいはアクセル開度変化率が大きい程、過給アシスト量(A)が多くなり、また、過給アシスト量(A)が多くなる程、アシストモータ5の三相のステータコイルへの供給電力が大きくなり、更に、アシストモータ5の三相のステータコイルへの供給電力が大きくなる程、アシストモータ5の回転速度が増速される。このため、仮にエンジン回転数が低回転域であっても、実過給圧の不足分をアシストモータ5による過給アシストによって補うことで、目標過給圧に対する実過給圧の立ち上がり特性が改善されると同時に、ドライバーによる急加速要求に対する実過給圧の追従性および加速応答性が向上する。
【0048】
次に、ステップS15にて「第1過給アシスト制御」を開始してから所定時間(T)が経過しているか否かを判定する(ステップS16)。この判定結果がNOの場合、すなわち、「第1過給アシスト制御」を開始してから所定時間(T)が経過していない場合には、ステップS16の判定処理を繰り返す。また、ステップS16の判定結果がYESの場合、すなわち、「第1過給アシスト制御」を開始してから所定時間(T)が経過した場合には、図5の制御ルーチンを実行する。
【0049】
なお、所定時間(T)は、予めアクセルペダル踏込位置の今回値(ACCP(n))とアクセルペダル踏込位置の前回値(ACCP(n−1))との偏差(ΔACCP)、あるいはアクセル開度変化率に対して実過給圧が目標過給圧に到達する時間を実験等によって測定して定めた固定値であっても良いが、所定時間(T)が長過ぎると、実過給圧が目標過給圧よりも過大となる方向にオーバーシュートする可能性がある。
【0050】
そこで、アクセルペダル踏込位置の今回値(ACCP(n))とアクセルペダル踏込位置の前回値(ACCP(n−1))との偏差(ΔACCP)、あるいはアクセル開度変化率、あるいは実過給圧と目標過給圧との偏差が大きい程、所定時間(T)を長くしたり、また、アクセルペダル踏込位置の今回値(ACCP(n))とアクセルペダル踏込位置の前回値(ACCP(n−1))との偏差(ΔACCP)、あるいはアクセル開度変化率、あるいは実過給圧と目標過給圧との偏差が小さい程、所定時間(T)を短くしたりして、所定時間(T)を可変値としても良い。
【0051】
また、アシストモータ5の三相のステータコイル等のモータ巻線部(発熱部品)に長期間継続して最大供給電力(供給電力の最大値)を供給すると、モータ巻線部の過熱による故障の要因となる。そこで、モータ巻線部の温度(またはモータ周囲の環境温度)を検出または推定して、モータ巻線部の温度(またはモータ周囲の環境温度)が高い程、所定時間(T)を短くしたり、また、モータ巻線部の温度(またはモータ周囲の環境温度)が低い程、所定時間(T)を長くしたりして、所定時間(T)を可変値としても良い。
【0052】
また、過給アシスト量(A)から、この過給アシスト量(A)よりも低い値に設定される過給アシスト量(B)まで一気に下げると、アシストモータ5の回転速度が急変動して、過給アシスト力に段差ができ、エンジン出力が急変動する問題が生じる可能性がある。そこで、「第1過給アシスト制御」を開始してから所定時間(T)が経過するまでの期間(加速初期段階)の後半部(例えば所定時間(T)が終了する一定時間前から所定時間(T)が終了するまでの期間)、すなわち、「第1過給アシスト制御」から「第2過給アシスト制御」に移行する移行期間中に、過給アシスト量(A)を徐々に減少させる「アシスト量徐変制御」を実施するようにしても良い。この「アシスト量徐変制御」を実施すると、過給アシスト量(A)から過給アシスト量(B)にスムーズに過給アシスト量を移行させることができるので、上記の問題を解消することができる。
【0053】
ここで、図5は、目標過給圧に対する実過給圧の収束性を向上させるための過給アシスト量(B)に基づいてアシストモータ5による過給アシストを行う第2過給アシスト制御方法を示したフローチャートである。この図5の制御ルーチンは、ドライバーによる緩加速要求時に、所定の制御周期毎に繰り返される。
【0054】
先ず、エンジン回転数とアクセル開度とに対応して設定された基本噴射量に、燃料温度やエンジン冷却水温等を考慮した噴射量補正量を加味して目標噴射量を算出する(ステップS21)。この目標噴射量は、これらの関係を予め実験等により測定して作成したマップから読み取るようにしても良い。また、目標噴射量は、インジェクタ噴射量制御においても演算されるので、インジェクタ噴射量制御にて算出れた値を、ステップS1にて取り込むようにしても良い。この場合には、ステップS21の演算処理を廃止できる。次に、過給圧センサ25より出力される電気信号を入力して実過給圧を検出する(過給圧検出手段:ステップS22)。
【0055】
次に、エンジン回転数と目標噴射量(またはアクセル開度)とから、目標過給圧を算出する(過給圧決定手段:ステップS23)。この目標過給圧は、これらの関係を予め実験等により測定して作成したマップから読み取るようにしても良い。次に、過給圧センサ25によって検出した実過給圧と目標過給圧との偏差を求める(ステップS24)。次に、実過給圧と目標過給圧との偏差に基づいて過給アシスト量(B)を設定する(第2アシスト量決定手段:ステップS25)。この過給アシスト量(B)は、目標過給圧に対する実過給圧の収束性を向上させるための過給アシスト量として算出される。なお、過給アシスト量を、今回の制御周期における目標回転速度として算出しても良い。
【0056】
次に、ステップS25で算出した過給アシスト量(B)に対応した目標回転速度を設定する(ステップS26)。次に、アシストモータ5のモータスピード(実回転速度)を目標回転速度に略一致させるのに必要な、アシストモータ5の三相のステータコイルへの基本供給電力を算出する(ステップS27)。次に、ECU10からコントローラ6へ基本電力供給指令を出力する(ステップS28)。
【0057】
これにより、コントローラ6は、ステップS27で算出した基本供給電力(モータパワー:POWER)を、アシストモータ5の三相のステータコイルに供給する。すなわち、アシストモータ5のモータスピード(実回転速度)を目標回転速度に略一致させるように、アシストモータ5の三相のステータコイルへの電力供給(通電)を実施(ON)することで、過給アシスト量(B)に基づいてアシストモータ5による過給アシストが行われる。よって、「第2過給アシスト制御」が実行される(ステップS29)。
【0058】
これによって、目標過給圧と実過給圧との偏差が大きい程、過給アシスト量(B)が多くなり、また、過給アシスト量(B)が多くなる程、アシストモータ5の三相のステータコイルへの供給電力が大きくなり、更に、アシストモータ5の三相のステータコイルへの供給電力が大きくなる程、アシストモータ5の回転速度が増速される。また、目標過給圧と実過給圧との偏差が小さい程、過給アシスト量(B)が少なくなり、また、過給アシスト量(B)が少なくなる程、アシストモータ5の三相のステータコイルへの供給電力が小さくなり、更に、アシストモータ5の三相のステータコイルへの供給電力が小さくなる程、アシストモータ5の回転速度が減速される。このため、仮にエンジン回転数が低回転域であっても、実過給圧の不足分をアシストモータ5による過給アシストによって補うことで、目標過給圧に対する実過給圧の立ち上がり特性が改善されると同時に、目標過給圧に対する実過給圧の収束性が向上する。
【0059】
[実施例1の効果]
以上のように、本実施例のターボ過給機付エンジン制御システムにおいては、ドライバーによって急加速要求が成されていると判定された時点で直ぐに、ドライバーによる急加速要求に対する実過給圧の追従性および加速応答性を向上させるための過給アシスト量(A)に基づいてアシストモータ5による過給アシストを行う「第1過給アシスト制御」を所定時間(T)が経過するまでの期間(加速初期時)実行し、その後に、目標過給圧に対する実過給圧の収束性を向上させるための過給アシスト量(B)に基づいてアシストモータ5による過給アシストを行う「第2過給アシスト制御」を実行している。
【0060】
すなわち、ドライバーがアクセルペダルを大きく踏み込んで急加速要求が成された時に、急加速を開始(アシストモータ5をON)してから所定時間(T)が経過するまでの期間(加速初期段階)では、「第1過給アシスト制御」を「第2過給アシスト制御」よりも優先して実行し、所定時間(T)経過後の加速後期段階では、「第2過給アシスト制御」を「第1過給アシスト制御」よりも優先して実行することにより、図6のタイミングチャートに示したように、ドライバーの加速要求(アクセルペダル踏込位置の変化)に伴う、エンジン1の運転状態の急激な変化(例えばアクセルペダル踏込位置の今回値と前回値との偏差、あるいはアクセル開度変化率が第1、第2所定値以上に変化)に基づいて直ちに高い値に設定される目標過給圧に対して実過給圧を早期に追従させるようにする、「加速要求に対する実過給圧の追従性および加速応答性」と、実過給圧が目標過給圧よりも過大となる方向にオーバーシュートすることなく、滑らかに速やかに実過給圧を目標過給圧に収束させるようにする、「目標過給圧に対する実過給圧の収束性」とを両立させることができる。
【0061】
ここで、図6中の実線は、ドライバーの加速要求に伴って前回制御周期までの低い値から今回制御周期において高い値に設定される目標過給圧を示し、図6中の破線は、過給アシストを実施しない従来の過給圧制御1による実過給圧の立ち上がり波形を示し、図6中の一点鎖線は、実過給圧と目標過給圧との偏差が略一致するようにフィードバック(F/B)制御する過給アシストを実施する従来の過給圧制御2による実過給圧の立ち上がり波形を示し、図6中の二点鎖線は、実施例1の過給圧制御(第1、第2過給アシスト制御)による実過給圧の立ち上がり波形を示す。この図6から、従来の過給圧制御1および従来の過給圧制御2のいずれと比較しても、本実施例の方が、加速要求に対する実過給圧の追従性および加速応答性に優れ、目標過給圧に対する実過給圧の収束性に優れることが分かる。
【0062】
また、図3のステップS7の判定処理による判定結果がYESと判定された時点、すなわち、ドライバーにより急加速要求が成された時点から「目標噴射量の決定」、「実過給圧の認識」、「目標過給圧の決定」を行うことなく、直ちに「第1過給アシスト制御」を所定時間(T)が経過するまでの期間(初期加速時)実行するようにしている。すなわち、アシストモータ5の三相のステータコイルへの最大供給電力の供給を開始するようにしている。これによって、ドライバーがアクセルペダルを踏み込んだ時点から直ちにアシストモータ5をONすることができる。このため、ドライバーがアクセルペダルを踏み込んで加速要求が成されてから、ターボ過給機4のコンプレッサ11の過給動作をアシストモータ5によりアシストする過給アシストが開始されるまでにタイムラグ(応答遅れ)はない。これにより、ドライバーがターボラグを感じることはなく、ドライバーがアシストモータ5による過給アシスト効果を十分に感じ取ることができ、実過給圧を早期に増大させることが可能となる。その上、アクセルペダル踏込位置の今回値(ACCP(n))とアクセルペダル踏込位置の前回値(ACCP(n−1))との偏差(ΔACCP)が大きい程、つまりアクセル開度変化率が大きい程、エンジン1の各気筒の燃焼室内に噴射供給される実燃料噴射量も増量されるので、加速性能(加速応答性)を更に向上させることができる。
【実施例2】
【0063】
図7ないし図9は本発明の実施例2を示したもので、図7は過給アシスト量(A)、(B)の算出期間を示したタイミングチャートである。ここで、過給アシスト量(A)と過給アシスト量(B)とのうちで大きい方の値を最大値として設定する過給アシスト量算出方法を、図8の制御ロジックに示す。
【0064】
本実施例のECU10は、加速要求に対する実過給圧の追従性および加速応答性を向上させるための過給アシスト量(A)を設定する第1アシスト量決定手段と、目標過給圧に対する実過給圧の収束性を向上させるための過給アシスト量(B)を設定する第2アシスト量決定手段とを有している。ここで、過給アシスト量(A)に基づいてアシストモータ5による過給アシストを行う「第1過給アシスト制御」と、過給アシスト量(B)に基づいてアシストモータ5による過給アシストを行う「第2過給アシスト制御」とが作用する時間経過について、図7(a)〜(c)に示したように3通りある。
【0065】
先ず、図7(a)に示した制御方法1は、ドライバーによって急加速要求が成されていると判定された時点(=時刻t0)から所定時間(T:時刻t0から時刻t2までの経過時間)が経過するまでの期間(加速初期段階)では、過給アシスト量(A)と過給アシスト量(B)とを同時に算出し、所定時間(T)経過後の加速後期段階では、過給アシスト量(B)のみを算出する方法である。この制御方法1の場合、加速を開始してから所定時間(T)が経過するまでの期間(加速初期段階)中に、アシストモータ5に与えられる過給アシスト量は、図8の制御ロジックおよび図9のタイミングチャートに示したように、過給アシスト量(A)と過給アシスト量(B)とのうちのいずれか大きい方の値(以下過給アシスト量の最大値と言う)を採用するのが望ましい。
【0066】
なお、図8中の過給アシスト量(A)は、アクセルペダル踏込位置の今回値(ACCP(n))とアクセルペダル踏込位置の前回値(ACCP(n−1))との偏差(ΔACCP)、あるいはアクセル開度の単位時間当たりの変化量(アクセル開度変化率)、あるいはアクセル開度の単位時間当たりの変化量(アクセル開度変化率)とアクセルペダル踏込位置とに基づいて決定される。また、図8中の過給アシスト量(B)は、目標過給圧と実過給圧との偏差に基づいて決定される。なお、過給アシスト量(A)および過給アシスト量(B)は、予めこれらの関係を測定して作成したマップより読み込んでも良いし、演算式を用いて算出しても良い。
【0067】
ここで、過給アシスト量(A)は、加速初期段階(所定時間(T)=時刻t0から時刻t2までの経過時間)での加速要求に対する実過給圧の追従性および加速応答性を向上させるための過給アシスト量である。このため、過給アシスト量(A:図9中の実線および破線)は、図9のタイミングチャートに示したように、その加速初期(時刻t0から時刻t2までの期間)の前半部分(時刻t0から時刻t1近傍までの期間)においては、少なくとも目標過給圧と実過給圧との偏差に基づいて算出される過給アシスト量(B:図9中の一点鎖線)よりも大きい値となるのが特徴である。したがって、この場合でも、ドライバーによって加速要求が成されていると判定された時点で直ぐに過給アシスト量(A)に基づいてアシストモータ5による過給アシストを行う「第1過給アシスト制御」を時刻t0から時刻t1までの期間実行されることになる。
【0068】
また、図7(b)、(c)に示した制御方法2、3では、アシストモータ5に与えられる過給アシスト量は、図8に示したように、過給アシスト量の最大値、もしくは和として算出される。なお、図7(b)に示した制御方法2は、実施例1の制御方法である。また、これらの制御方法1〜3の場合、「第1過給アシスト制御」を終了してから「第2過給アシスト制御」にスムーズに移行させるためには、過給アシスト量(A)から過給アシスト量(B)への切り替え期間中(「第1過給アシスト制御」から「第2過給アシスト制御」に移行する移行期間中)、つまり加速初期段階の後半の過給アシスト量(A)を徐々に減少させるようにしても良い。
【0069】
これは、過給アシスト量(A)および過給アシスト量(B)のうちの比較的に高い値(大きい値)に設定される過給アシスト量(A)から、過給アシスト量(A)および過給アシスト量(B)のうちの比較的に低い値(小さい値)に設定される過給アシスト量(B)にスムーズに移行させるために、過給アシスト量(A)を、単位時間(制御周期)当たり所定の勾配量で連続的に減少させたり、あるいは単位時間(制御周期)当たり所定のステップ量で段階的に減少させたりするアシスト量徐変制御を時刻t1から時刻t2までの期間(所定時間Tの後半部分)にて行うようにしても良い。
【0070】
この場合には、「過給アシスト量(A)から過給アシスト量(B)まで一気に下げると、アシストモータ5の回転速度が急変動して、過給アシスト力に段差ができ、エンジン出力が急変動する」ことを防止することができる。このアシスト量徐変制御は、図7(c)に示した方法において特に有効な手法である。また、「第2過給アシスト制御」の初期段階において過給アシスト量(B)を徐々に増加させるようにしても良い。このアシスト量徐変制御は、図7(c)に示した方法において特に有効な手法である。
【実施例3】
【0071】
図10は本発明の実施例3を示したもので、図10はターボ過給機付エンジン制御システムの全体構成を示した図である。
【0072】
本実施例では、インタークーラ14の出口とエンジン1のインテークマニホールドとを連通するエンジン吸気管2に略コの字状のバイパス吸気管8を接続し、エンジン吸気管2とバイパス吸気管8との合流部に電磁式切替弁15を設置している。この電磁式切替弁15は、ECU10から出力される制御信号によって駆動されて、バイパス吸気管8のバイパス通路の開口面積を変更する、あるいはエンジン吸気管2の吸入空気通路とバイパス吸気管8のバイパス通路とを選択的に開閉する。
【0073】
また、バイパス吸気管8には、ターボ過給機4のコンプレッサ11と同様な構造の補助コンプレッサ16が設置されている。この補助コンプレッサ16は、アシストモータ5の出力軸(ロータシャフト)18の中心軸線方向(軸方向)の一端部に取り付けられて、複数のコンプレッサブレードを有するコンプレッサホイールを備えている。このコンプレッサホイールは、バイパス吸気管8内を流れる吸入空気を過給するように、コンプレッサハウジング内に回転自在に収容されている。なお、コンプレッサハウジング内に形成される吸入空気供給経路は、コンプレッサホイールの外周を囲むように、そのコンプレッサホイールの回転方向に沿って渦巻き状に形成されている。
【0074】
本実施例では、以上のようなバイパス吸気管8、電磁式切替弁15および補助コンプレッサ16によって電動コンプレッサを構成している。そして、ECU10がアクセル開度変化率等によって過給アシストが必要な加速状態と判断した場合に、電磁式切替弁15を駆動してバイパス吸気管8のバイパス通路を開き、アシストモータ5の三相のステータコイルに電力を供給して、供給電力に対応した所定の過給アシスト量を得るようにしている。これにより、ターボ過給機4のコンプレッサ11によって過給された吸入空気は、補助コンプレッサ16によってアシスト過給されてエンジン1の各気筒の燃焼室内に吸入される。
【0075】
これによって、ドライバーの加速要求に伴って非常に高い値に目標過給圧が設定されても、アクセル開度変化率が大きい程、過給アシスト量が大きい値に設定され、その過給アシスト量に対応してアシストモータ5の回転速度が目標過給圧に対応した目標回転速度に素早く近づくように増速されるため、仮にエンジン回転数が低回転域であっても、実過給圧を目標過給圧に素早く追従させることができる。したがって、加速要求に対する追従性および加速要求に対する実過給圧の追従性および加速応答性の向上と目標過給圧に対する実過給圧の収束性の向上とを両立させることができる。また、ドライバーがアクセルペダルを踏み込んだ時点から直ちにアシストモータ5による過給アシストを開始することができるので、加速性能を更に向上させることができる。
【0076】
[変形例]
本実施例では、ECU10の制御信号(基本電力供給指令、最大電力供給指令)に基づいて、アシストモータ5の三相のステータコイルに供給する供給電力(モータパワー:POWER)を調整して、アシストモータ5の回転速度が、過給アシスト量に対応した目標回転速度に略一致するように制御しているが、ECU10の制御信号(基本電力供給指令、最大電力供給指令)に基づいてインバータより出力される交流電圧、周波数を調整してアシストモータ5の回転速度が、過給アシスト量に対応した目標回転速度に略一致するように制御しても良い。
【0077】
本実施例では、アクセルペダル踏込位置の今回値(ACCP(n))とアクセルペダル踏込位置の前回値(ACCP(n−1))との偏差(ΔACCP)、あるいはアクセル開度変化率が第1所定値以上の時に、ドライバーによってアクセルペダルが踏み込まれた加速要求時と判断して、過給アシストモード(第1過給アシスト制御または第2過給アシスト制御のいずれか、あるいは併用)に切り替えるようにしているが、目標噴射量変化率または目標燃料圧力変化率が第1所定値以上の時に、ドライバーによってアクセルペダルが踏み込まれた加速要求時と判断して、過給アシストモード(第1過給アシスト制御または第2過給アシスト制御のいずれか、あるいは併用)に切り替えるようにしても良い。
【0078】
また、アクセルペダル踏込位置の今回値(ACCP(n))とアクセルペダル踏込位置の前回値(ACCP(n−1))との偏差(ΔACCP)、あるいはアクセル開度変化率が第1所定値よりも大きい第2所定値以上の時に、ドライバーによってアクセルペダルが大きく踏み込まれた急加速要求時と判断して、第1過給アシスト制御に切り替えるようにしているが、目標噴射量変化率または目標燃料圧力変化率が第1所定値よりも大きい第2所定値以上の時に、ドライバーによってアクセルペダルが大きく踏み込まれた急加速要求時と判断して、第1過給アシスト制御に切り替えるようにしても良い。
【0079】
また、アクセル開度変化率が第1所定値よりも小さい第3所定値以下の時に、アクセルペダルが戻された減速状態と判断して、回生発電モードに切り替えるようにしても良い。また、車両の走行する道路状況が上り坂の時に過給アシストモード(第1過給アシスト制御または第2過給アシスト制御のいずれか、あるいは併用)に切り替えるようにしても良い。また、車両の走行する道路状況が下り坂の時に回生発電モードに切り替えるようにしても良い。
【0080】
本実施例では、アシストモータ5として三相誘導電動発電機(巻線形誘導電動機)等の交流(AC)モータを用いた例を説明したが、アシストモータ5としてかご形誘導電動機、ブラシレスDCモータやブラシ付きの直流(DC)モータを用いても良い。この場合には、電動機としての機能のみを備えるものでも良い。また、アシストモータ5の出力軸とロータシャフト(タービン軸)13との間に、アシストモータ5の出力軸の回転速度を所定の減速比となるように減速する歯車減速機構を設けても良い。
【0081】
本実施例では、本発明の過給アシスト制御システムをターボ過給機付エンジン制御システムに適用しているが、本発明の過給アシスト制御システムを内燃機関の過給圧制御装置や電動機付ターボチャージャー制御装置(電動過給機の制御装置)に適用しても良い。また、本実施例では、過給機として、エンジン1の排気エネルギーを利用して、エンジン1の各気筒の燃焼室内に吸入される吸入空気を過給する電動機付ターボ過給機(ターボチャージャー)を採用した例を説明したが、駆動モータの駆動トルクを利用して、エンジン1の各気筒の燃焼室内に吸入される吸入空気を過給する電動機付過給機(スーパーチャージャー)を採用しても良い。
【0082】
本実施例では、過給圧センサ25によって検出した実過給圧と目標過給圧との偏差に基づいて過給アシスト量を算出し、次に過給アシスト量に応じて、今回の制御周期における目標回転速度を算出し、次にアシストモータ5の実回転速度を目標回転速度に略一致させるのに必要な、アシストモータ5の三相のステータコイルへの基本供給電力を算出しているが、実過給圧(または吸気圧)と目標過給圧との偏差、あるいは目標(新規)吸入空気量または吸気圧または吸気温またはエンジン回転数またはアクセル開度変化率または目標過給圧またはドライバー要求トルクに対応した過給アシスト量を算出し、次に過給アシスト量に応じて、今回の制御周期における目標回転速度を算出し、次にアシストモータ5の実回転速度を目標回転速度に略一致させるのに必要な、アシストモータ5の三相のステータコイルへの基本供給電力を算出しても良い。
【0083】
また、過給圧センサ25によって検出した実過給圧と目標過給圧との偏差に基づいて目標過給アシスト量を算出し、次にアシストモータ5の実過給アシスト量を、目標過給アシスト量に略一致させるのに必要な、アシストモータ5の三相のステータコイルへの基本供給電力を算出しても良い。また、ECU10の第1、第2アシスト量決定手段にて過給アシスト量を設定(算出)し、この過給アシスト量を電気信号に変換してコントローラ6に出力し、コントローラ6にてその電気信号を、アシストモータ5の三相のステータコイルへの供給電力に変換して、この供給電力をアシストモータ5の三相のステータコイルに供給するようにしても良い。
【0084】
また、アシストモータ5による過給アシスト制御(過給圧制御)として、実過給圧と目標過給圧との偏差に基づいて過給アシスト量(B)をフィードバック制御しても良く、また、アシストモータ5の実回転速度と目標回転速度との偏差に基づいて過給アシスト量(B)をフィードバック制御しても良く、また、アシストモータ5の三相のステータコイルに供給する実供給電力と基本供給電力との偏差に基づいて過給アシスト量(B)をフィードバック制御しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】ターボ過給機付エンジンおよびその周辺機器を示した概略図である(実施例1)。
【図2】ターボ過給機付エンジン制御システムの制御系を示した構成図である(実施例1)。
【図3】ターボ過給機付エンジン制御システムの制御方法を示したフローチャートである(実施例1)。
【図4】第1過給アシスト制御の制御方法を示したフローチャートである(実施例1)。
【図5】第2過給アシスト制御の制御方法を示したフローチャートである(実施例1)。
【図6】加速要求に対する実過給圧の追従性および加速応答性、目標過給圧に対する実過給圧の収束性を示したタイミングチャートである(実施例1)。
【図7】(a)〜(c)は過給アシスト量(A)、(B)の算出期間を示したタイミングチャートである(実施例2)。
【図8】ECUの制御ロジックを示した図である(実施例2)。
【図9】アクセルペダル踏込位置の変化、過給アシスト量の推移を示したタイミングチャートである(実施例2)。
【図10】ターボ過給機付エンジンおよびその周辺機器を示した概略図である(実施例3)。
【図11】アクセルペダル踏込位置、目標噴射量、過給圧、エンジン回転数の各変化を示したタイミングチャートである(従来の技術)。
【符号の説明】
【0086】
1 エンジン
2 エンジン吸気管
3 エンジン排気管
4 ターボ過給機(ターボチャージャー)
5 アシストモータ(駆動モータ、電動発電機)
6 コントローラ(電力変換部)
10 ECU(モータ制御装置、過給圧検出手段、過給圧決定手段、加速要求判定手段、第1アシスト量決定手段、第2アシスト量決定手段、踏込位置検出手段、踏込位置記憶手段)
11 ターボ過給機のコンプレッサ
12 ターボ過給機のタービン
17 バッテリ
24 アクセル開度センサ(踏込位置検出手段)
25 過給圧センサ(過給圧検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エンジンの気筒内に吸入される吸入空気を過給する過給機と、
(b)この過給機を回転駆動するモータと、
(c)前記過給機によってエンジン吸気管内に生成される過給圧を検出する過給圧検出手段と、
(d)前記エンジンの運転状態の変化に対応して目標過給圧を変更する過給圧決定手段を有し、
前記過給圧検出手段によって検出される実過給圧が前記過給圧決定手段によって決定される目標過給圧に略一致するように前記モータに供給する電力を調整して前記モータによる過給アシスト量を制御するモータ制御装置と
を備え、
前記モータ制御装置は、
加速要求が成されているか否かを判定する加速要求判定手段、
加速要求に対する実過給圧の追従性および加速応答性を向上させるための過給アシスト量を設定する第1アシスト量決定手段、
および目標過給圧に対する実過給圧の収束性を向上させるための過給アシスト量を設定する第2アシスト量決定手段を有し、
前記加速要求判定手段によって加速要求が成されていると判定された際に、
前記第1アシスト量決定手段によって決定された過給アシスト量に基づいて前記モータによる過給アシストを行う第1過給アシスト制御と、
前記第2アシスト量決定手段によって決定された過給アシスト量に基づいて前記モータによる過給アシストを行う第2過給アシスト制御とを、
前記エンジンの運転状態の単位時間当たりの変化量、あるいは前記過給圧検出手段によって検出された実過給圧と前記過給圧決定手段によって決定された目標過給圧との偏差、あるいは加速要求が成された時点から経過した時間に基づいて選択的に切り替えることを特徴とする過給アシスト制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の過給アシスト制御システムにおいて、
前記加速要求判定手段は、アクセルペダル踏込速度あるいはアクセル開度変化率または目標噴射量変化率または目標燃料圧力変化率が所定値以上の際に、加速要求が成されていると判定することを特徴とする過給アシスト制御システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の過給アシスト制御システムにおいて、
前記モータ制御装置は、アクセルペダル踏込位置を検出する踏込位置検出手段、およびこの踏込位置検出手段によって検出されたアクセルペダル踏込位置を記憶する踏込位置記憶手段を有し、
前記第1アシスト量決定手段は、前記踏込位置記憶手段によって記憶されたアクセルペダル踏込位置の前回値と前記踏込位置検出手段によって検出したアクセルペダル踏込位置の今回値との偏差に基づいて過給アシスト量を設定することを特徴とする過給アシスト制御システム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載の過給アシスト制御システムにおいて、
前記第2アシスト量決定手段は、前記過給圧検出手段によって検出された実過給圧と前記過給圧決定手段によって決定された目標過給圧との偏差に基づいて過給アシスト量を設定することを特徴とする過給アシスト制御システム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載の過給アシスト制御システムにおいて、
前記モータ制御装置は、
前記加速要求判定手段によって加速要求が成されていると判定された時点から直ちに前記第1過給アシスト制御を実行することを特徴とする過給アシスト制御システム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載の過給アシスト制御システムにおいて、
前記モータ制御装置は、
加速初期には、前記第1アシスト量決定手段によって決定された過給アシスト量と前記第2アシスト量決定手段によって決定された過給アシスト量とのうちで大きい方の値を、過給アシスト量の最大値として認定し、
前記過給アシスト量の最大値に基づいて前記モータによる過給アシストを行うことを特徴とする過給アシスト制御システム。
【請求項7】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載の過給アシスト制御システムにおいて、
前記モータ制御装置は、
加速初期には、前記第1過給アシスト制御を前記第2過給アシスト制御よりも優先して実行し、
加速後期には、前記第2過給アシスト制御を前記第1過給アシスト制御よりも優先して実行することを特徴とする過給アシスト制御システム。
【請求項8】
請求項7に記載の過給アシスト制御システムにおいて、
前記モータ制御装置は、
加速初期から加速後期への移行中には、前記第1過給アシスト制御と前記第2過給アシスト制御とを併用することを特徴とする過給アシスト制御システム。
【請求項9】
請求項6ないし請求項8のうちのいずれか1つに記載の過給アシスト制御システムにおいて、
加速初期とは、前記加速要求判定手段によって加速要求が成されていると判定された時点から所定時間が経過するまでの期間であって、
前記モータ制御装置は、加速要求が成された時点から所定時間が経過するまでの期間、前記過給アシスト量の最大値、あるいは前記第1アシスト量決定手段または前記第2アシスト量決定手段によって決定された過給アシスト量に基づいて前記モータによる過給アシストを行うと共に、
前記エンジンの運転状態の単位時間当たりの変化量、あるいは前記過給圧検出手段によって検出された実過給圧と前記過給圧決定手段によって決定された目標過給圧との偏差が大きい程、前記所定時間を長くすることを特徴とする過給アシスト制御システム。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のうちのいずれか1つに記載の過給アシスト制御システムにおいて、
前記モータ制御装置は、
前記第1過給アシスト制御から前記第2過給アシスト制御に移行する移行期間中に、前記第1アシスト量決定手段によって決定される過給アシスト量を徐々に減少させながら、前記第2アシスト量決定手段によって決定される過給アシスト量に移行させるアシスト量徐変制御を行うことを特徴とする過給アシスト制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−242029(P2006−242029A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−56051(P2005−56051)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】