過給機付き内燃機関の制御装置
【課題】電動機等の動力アシスト装置を有する過給機を備えた内燃機関において、動力アシスト装置による動力アシストを過不足無く適正に制御する。
【解決手段】トルクベース制御部70では、アクセル開度とエンジン回転速度とに基づいて目標トルクを算出し、更にその目標トルクに基づいて目標空気量の算出、目標吸気圧の算出、目標過給圧の算出を実施する。そして、目標空気量、目標吸気圧、目標過給圧、実過給圧及びスロットル通過吸気温に基づいて目標スロットル開度を算出する。また、アシスト制御部80では、トルクベース制御部70で算出した目標空気量と目標過給圧とに基づいて目標タービン動力を算出すると共に、排気情報に基づいて実タービン動力を算出する。そして、目標タービン動力と実タービン動力との動力差に基づいて、ターボチャージャに付設したモータのアシスト動力を算出する。
【解決手段】トルクベース制御部70では、アクセル開度とエンジン回転速度とに基づいて目標トルクを算出し、更にその目標トルクに基づいて目標空気量の算出、目標吸気圧の算出、目標過給圧の算出を実施する。そして、目標空気量、目標吸気圧、目標過給圧、実過給圧及びスロットル通過吸気温に基づいて目標スロットル開度を算出する。また、アシスト制御部80では、トルクベース制御部70で算出した目標空気量と目標過給圧とに基づいて目標タービン動力を算出すると共に、排気情報に基づいて実タービン動力を算出する。そして、目標タービン動力と実タービン動力との動力差に基づいて、ターボチャージャに付設したモータのアシスト動力を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャ等の過給機を備えた内燃機関に適用され、過給機に対するアシスト動力を好適に制御するための制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排気動力を用いて吸入空気を過給する過給機としてターボチャージャが一般に知られている。また近年では、ターボチャージャの回転軸に電動機等を取り付け、内燃機関の運転状態に応じて排気動力をアシストする電動アシスト式のターボチャージャが開発されている。この場合、電動機等による動力アシストを実施することで、ターボチャージャの過給が助勢され過給効果が向上する。こうした電動アシスト式ターボチャージャの制御装置として、例えば特許文献1,2,3の先行技術があり、電動機への通電電流等を制御することでアシスト量を制御するようにしている。
【0003】
すなわち、特許文献1の制御装置では、アクセル踏込量やその踏込速度に基づいて電動機への通電電流を制御し、これにより、ターボチャージャの過給動作を早めるようにしている。また、特許文献2の制御装置では、アクセル開度の変化量に応じて、スロットル開度の開き速度と電動機への通電電流とを制御する一方、機関回転速度や負荷値に応じて補助動力量を補正する。そしてこれにより、運転者のアクセル動作に応じた過給圧を実現し、運転性を向上させるようにしている。また、特許文献3の制御装置では、目標過給圧と電動機への供給電力との関係を予め規定したマップ等の電力決定基準に基づいて電動機への供給電力を決定することとし、更に電動機への供給電力に対する実際の過給圧変動に基づいて電力決定基準を補正する。そしてこれにより、常に最適な過給圧制御を実施することができるようにしている。
【0004】
しかしながら、上記従来の各手法では、何れもオープンループ的な制御を実施しており、アシスト量を過不足無く制御することは困難であった。この場合、アシスト量が不要に大きくなると、燃費の悪化が生じるおそれがあった。また、加速時等において運転者が意図する過給性能(加速性能)が得られず、ドライバビリティの悪化が生じるおそれがあった。
【特許文献1】特開平1−117933号公報
【特許文献2】特開平11−280510号公報
【特許文献3】特開2003−239754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電動機等の動力アシスト装置を有する過給機を備えた内燃機関において、動力アシスト装置による動力アシストを過不足無く適正に制御することができる過給機付き内燃機関の制御装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の制御装置は、排気動力により吸入空気を過給する過給機と、該過給機に取り付けられ過給機の動力を直接アシストする動力アシスト装置とを有する内燃機関に適用されることを前提としており、その内燃機関において、空気量調整手段により吸入空気量が調整されることで当該内燃機関の出力トルクが制御される。そして特に、空気量情報に基づいて過給機の目標動力を算出すると共に、過給機の実動力(実際の過給機動力)を算出する。また、それら目標動力と実動力とに基づいて動力アシスト装置のアシスト量を算出し、該算出したアシスト量により動力アシスト装置を制御する。例えば、目標動力と実動力とを比較してその動力差に基づいてアシスト量を算出すると良い。
【0007】
要するに、過給機の目標動力と実動力とを比較すれば、本来必要な過給機動力としてどれだけの動力が不足しているかが把握でき、その不足分に応じたアシスト量にて動力アシスト装置を駆動することができる。例えば、目標動力と実動力との差を求め、その動力差を基に算出したアシスト量により動力アシスト装置を制御する。かかる場合、目標動力に対する不足分をアシスト量とすることにより、無駄なく効率的に過給機動力をアシストすることができる。また、動力の比較によりアシスト量を算出するため、過給圧等、他のパラメータを用いてアシスト量を算出する場合よりも直接的で且つ応答性に優れたアシスト制御が可能となる。例えば過給圧の挙動はアシスト制御の結果であり、それを基にアシスト制御した場合、制御に遅れが生じるが、こうした不都合が解消できる。以上により、動力アシスト装置による動力アシストを適正に制御することができ、ひいては燃費の向上やドライバビリティの改善等を図ることができる。
【0008】
因みに、「空気量情報」は、都度の空気量制御の状態を把握できるものであれば良く、実際には、目標空気量や実空気量を含むものである。
【0009】
また、内燃機関のトルク制御手法として、運転者の要求に対応する目標トルクに基づいて目標空気量を算出すると共に、該算出した目標空気量に基づいて空気量調整手段(スロットルバルブ等)による空気量制御を実施する手法がある。かかる場合において、目標空気量に基づいて過給機の目標動力を算出すると良い。これにより、空気量調整手段と動力アシスト装置とが連携して制御されることとなり、空気量制御(トルク制御)の精度が向上する。従って、ドライバビリティ等の更なる改善が可能となる。
【0010】
また、空気量調整手段による空気量制御に際し、吸気通路を実際に流れる実空気量を推定又は計測により求め、その実空気量に基づいて過給機の目標動力を算出するようにしても良い。要するに、実空気量は目標空気量に対して遅れて変化する。そのため、実空気量を基に目標動力を算出する場合には、目標空気量を基に目標動力を算出する場合に比べて目標動力と実動力との動力差が小さくなる。従って、目標動力と実動力との比較(動力差)に基づいて算出されるアシスト量が小さくなり、動力アシスト装置の作動に伴うエネルギー消費(例えばモータ使用時におけるバッテリ電力の消費量)を低減することができる。なお、アシスト量が低減される分は、空気量制御による空気量増量分で補われ、加速性能が確保される。
【0011】
過給機の動力は、その都度の空気量と過給圧とに応じて制御されるのが望ましい。従って、目標トルクに基づいて目標過給圧を算出すると共に、空気量情報(目標空気量又は実空気量)と目標過給圧とに基づいて過給機の目標動力を算出すると良い。これにより、過給圧の制御精度が向上する。なお、目標過給圧は、目標トルクから算出した目標空気量に基づいて算出されても良い。
【0012】
また一方で、本発明は、吸入空気量の調整によるトルク制御を必ずしも要件とするものでない。かかる場合、排気動力により吸入空気を過給する過給機と、該過給機に取り付けられ過給機の動力を直接アシストする動力アシスト装置とを有する内燃機関に適用されることを前提とし、内燃機関の運転状態に基づいて過給機の目標動力を算出すると共に、過給機の実動力を算出する。また、過給機の目標動力と実動力とに基づいて動力アシスト装置によるアシスト量を算出し、該算出したアシスト量により動力アシスト装置を制御する。
【0013】
本構成においても、前記同様(空気量によるトルク制御を要件とする場合と同様)、目標動力に対する不足分をアシスト量とすることにより、無駄なく効率的に過給機動力をアシストすることができる。また、動力の比較によりアシスト量を算出するため、過給圧等、他のパラメータを用いてアシスト量を算出する場合よりも直接的で且つ応答性に優れたアシスト制御が可能となる。その結果、動力アシスト装置による動力アシストを適正に制御することができ、ひいては燃費の向上やドライバビリティの改善等を図ることができる。
【0014】
実際の過給機動力は、内燃機関から排出される排気の状態に応じて変化する。そこで、排気流量、排気圧力、排気温度等の排気パラメータを推定又は計測により取得し、その排気パラメータに基づいて過給機の実動力を算出すると良い。これにより、過給機の実動力を適正に求めることができる。
【0015】
過給機として、タービンホイール、シャフト及びコンプレッサインペラよりなるターボチャージャを用いる構成では、タービンホイールからコンプレッサインペラに至る動力の流れをターボチャージャの構成要素毎にモデル化しターボモデルとして表すことができる。この場合、ターボモデルのうち少なくともタービンホイールをモデル化したタービンモデルにより過給機の実動力を算出すると共に、同ターボモデルのうち少なくともコンプレッサインペラをモデル化したコンプレッサモデルにより過給機の目標動力を算出する。これにより、実動力や目標動力を精度良く算出することができる。
【0016】
因みに、動力の流れを基本としてその動力を統一のパラメータとしてターボモデルを構築することにより、例えばモデルを再利用する際の利便性(再利用性)を高めることができる。これにより、一度構築したモデルを他のシステムに適用することも容易となる。
【0017】
ここで特に、排気情報を入力パラメータとしてターボモデルの順方向の計算により過給機の実動力を算出すると共に、過給圧情報と吸気情報とを入力パラメータとしてターボモデルの逆方向の計算により過給機の目標動力を算出すると良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態は、内燃機関である車載多気筒ガソリンエンジンを対象にエンジン制御システムを構築するものであり、当該制御システムのエンジンには過給機として電動アシスト式のターボチャージャ(以下、電動ターボチャージャとも言う)が設けられている。先ずは、図1を用いてエンジン制御システムの全体概略構成図を説明する。
【0019】
図1に示すエンジン10において、吸気管11には、DCモータ等のスロットルアクチュエータ15によって開度調節される空気量調整手段としてのスロットルバルブ14が設けられている。スロットルアクチュエータ15には、スロットル開度を検出するためのスロットル開度センサが内蔵されている。スロットルバルブ14の上流側には、スロットル上流側の圧力(後述するターボチャージャによる過給圧)を検出する過給圧センサ12と、スロットル上流側の吸気温を検出する吸気温センサ13とが設けられている。
【0020】
スロットルバルブ14の下流側にはサージタンク16が設けられ、このサージタンク16にはスロットル下流側の吸気圧を検出する吸気圧センサ17(吸気管圧力検出手段)が設けられている。また、サージタンク16には、エンジン10の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド18が接続されており、吸気マニホールド18において各気筒の吸気ポート近傍には燃料を噴射供給する電磁駆動式の燃料噴射弁19が取り付けられている。
【0021】
エンジン10の吸気ポート及び排気ポートにはそれぞれ吸気バルブ21及び排気バルブ22が設けられており、吸気バルブ21の開動作により空気と燃料との混合気が燃焼室23内に導入され、排気バルブ22の開動作により燃焼後の排ガスが排気管24に排出される。エンジン10のシリンダヘッドには気筒毎に点火プラグ25が取り付けられており、点火プラグ25には、点火コイル等よりなる図示しない点火装置を通じて、所望とする点火時期において高電圧が印加される。この高電圧の印加により、各点火プラグ25の対向電極間に火花放電が発生し、燃焼室23内に導入した混合気が着火され燃焼に供される。
【0022】
エンジン10のシリンダブロックには、エンジン10の回転に伴い所定クランク角毎に(例えば30°CA周期で)矩形状のクランク角信号を出力するクランク角度センサ26が取り付けられている。
【0023】
吸気管11と排気管24との間にはターボチャージャ30が配設されている。ターボチャージャ30は、吸気管11に設けられたコンプレッサインペラ31と、排気管24に設けられたタービンホイール32とを有し、それらがシャフト33にて連結されている。また、シャフト33には、動力アシスト装置としてのモータ(電動機)34が設けられており、モータ34はバッテリ(図示せず)から供給される電力により作動しシャフト33の回転をアシストする。モータ34には、モータ温度を検出するための温度センサ35が設けられている。
【0024】
ターボチャージャ30では、排気管24を流れる排気によってタービンホイール32が回転し、その回転力がシャフト33を介してコンプレッサインペラ31に伝達される。そして、コンプレッサインペラ31により、吸気管11内を流れる吸入空気が圧縮されて過給が行われる。ターボチャージャ30にて過給された空気は、インタークーラ37によって冷却された後、その下流側に給送される。インタークーラ37によって吸入空気が冷却されることで、吸入空気の充填効率が高められる。
【0025】
吸気管11の最上流部には図示しないエアクリーナが設けられ、このエアクリーナの下流側には吸入空気量を検出するエアフロメータ41が設けられている。その他、本制御システムでは、アクセルペダルの踏み込み操作量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ43や、大気圧を検出する大気圧センサ44が設けられている。
【0026】
エンジンECU(電子制御ユニット)50は、周知の通りCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、その都度のエンジン運転状態に応じてエンジン10の各種制御を実施する。すなわち、エンジンECU50には、前述した各種センサから各々検出信号が入力される。そして、エンジンECU50は、随時入力される各種の検出信号に基づいて燃料噴射量や点火時期等を演算し、燃料噴射弁19や点火プラグ25の駆動を制御する。
【0027】
また本実施の形態では、いわゆるトルクベース制御による電子スロットル制御を実施することとしており、エンジン10で生じるトルクを基準にしてスロットル開度を目標値に制御する。簡単に説明すると、エンジンECU50は、アクセル開度センサ43の検出信号に基づいて目標トルク(要求トルク)を演算すると共に該目標トルクを満足する目標空気量を演算し、目標空気量、その都度のスロットル上流側及び下流側の圧力、吸気温度に基づいて目標スロットル開度を算出する。そして、エンジンECU50は、目標スロットル開度に基づく制御指令信号によりスロットルアクチュエータ15を制御し、スロットル開度を目標スロットル開度に制御する。
【0028】
また、エンジンECU50は、トルクベース制御に連動してターボチャージャ30のモータ34の制御量を決定する。これにより、車両加速時においてターボチャージャ30にアシスト動力(補助動力)を付加し、所望の過給圧がいち早く得られるようにしている。すなわち、エンジンECU50は、目標トルクに応じて算出される目標空気量や目標過給圧を基に、目標とするアシスト動力や動力アシストタイミングなどを演算し、それら演算結果をモータECU60に出力する。モータECU60は、エンジンECU50からの信号を入力し、モータ効率等を考慮して所定の演算処理を行い、モータ34への供給電力を制御する。
【0029】
次に、本実施の形態におけるエンジンECU50の制御の概要を図2に基づいて説明する。図2は、エンジンECU50の機能を説明するための制御ブロック図である。
【0030】
図2に示す本システムでは、主要な機能として、運転者が要求する目標トルクを基に目標スロットル開度を算出するトルクベース制御部70と、モータECU60に指令するモータ34のアシスト動力を算出するアシスト制御部80とを備える。以下、各制御部70,80について詳細を説明する。
【0031】
トルクベース制御部70において、目標トルク算出部71は、アクセル開度とエンジン回転速度とに基づいて目標トルクを算出し、目標空気量算出部72は、目標トルクとエンジン回転速度とに基づいて目標空気量を算出する。この目標空気量が、運転者が要求する目標トルクを実現するために要する空気量に相当する。また、目標吸気圧算出部73は、目標空気量とエンジン回転速度とに基づいて目標吸気圧(目標とするスロットル下流側の圧力)を算出し、目標過給圧算出部74は、目標空気量とエンジン回転速度とに基づいて目標過給圧(目標とするスロットル上流側の圧力)を算出する。そして、目標スロットル開度算出部75は、目標空気量、目標吸気圧、目標過給圧、実過給圧及びスロットル通過吸気温に基づいて目標スロットル開度を算出する。但しこの場合、目標吸気圧と目標過給圧の算出には目標空気量[g/rev]が用いられ、目標スロットル開度の算出には、目標空気量[g/rev]をエンジン回転速度により換算した単位時間当たりの目標空気量[g/sec]が用いられる。
【0032】
なお、実過給圧は、過給圧センサ12により検出される過給圧(スロットル上流圧)であり、スロットル通過吸気温は、吸気温センサ13により検出されるスロットル上流側の吸気温である。
【0033】
かかる場合、スロットル通過空気量Gaを算出するための次の基礎式をもとに目標スロットル開度が算出される。
【0034】
Ga=f(Thr)×Pb/√T×f(Pm/Pb)
上式において、Thrはスロットル開度、Pbはスロットル上流圧、Pmはスロットル下流圧、Tは吸気温である。本実施の形態では、前記基礎式のスロットル通過空気量Gaを目標空気量に、スロットル開度Thrを目標スロットル開度に、スロットル上流圧Pbを実過給圧に、スロットル下流圧Pmを目標吸気圧にそれぞれ置き換えており、目標空気量、実過給圧、目標吸気圧等を基に目標スロットル開度が算出される。
【0035】
一方、アシスト制御部80において、目標タービン動力算出部81は、前記トルクベース制御部70で算出した目標空気量と目標過給圧とに基づいて目標タービン動力を算出する。また、実タービン動力算出部82は、排気情報に基づいて実際のタービン動力(実タービン動力)を算出する。動力差算出部83は、目標タービン動力と実タービン動力との動力差を算出する。そして、アシスト動力算出部84は、前記算出した動力差を基にアシスト動力を算出し、そのアシスト動力をモータECU60に出力する。
【0036】
かかる場合、モータ34のアシスト動力は、目標タービン動力に対する実タービン動力の不足分として算出される。つまり、タービン動力の不足分がモータアシストにより補われるようになっている。アシスト制御部80では、動力を統一のパラメータとしてモータアシスト量も動力で算出することとしている。このとき、現存する電動ターボシステムのモータECU60の指令値はモータ出力であるため、モータアシスト量を動力で算出するのが望ましいと考えられる。
【0037】
なお、アシスト動力の算出時には、モータ34の性能や作動状態、エンジン運転状態等に基づいてアシスト動力を補正したり、上限ガードを設定したりするのが望ましい。本実施の形態では、モータ温度(温度センサ35による検出値)をパラメータとしてアシスト動力の上限値を設定し、その上限値によりアシスト動力を上限ガードするようにしている。
【0038】
ここで、電動ターボチャージャのアシスト制御の概要を図3を用いて説明する。
【0039】
図3の(a)のようにアクセル開度が変化し加速が開始されると、(b)のように加速要求に応じて目標タービン動力が増加し、実タービン動力(排気動力)は目標タービン動力に対して遅れて立ち上がる。そのため、(d)に示すように実過給圧の立ち上がりが目標過給圧に対して遅れることとなる。そこで本実施の形態では、タービン動力の不足時にアシスト動力を(c)のように加え、タービン動力をアシストする。このとき、アシスト動力は目標タービン動力と実タービン動力との差に基づいて算出される(詳細は後述)。つまりこの場合、排気によりタービンホイール32を回す動力(実タービン動力)にモータ34によるアシスト動力が加えられ、これら動力の和(実タービン動力+アシスト動力)によってシャフト33を介してコンプレッサインペラ31が回転駆動される。これにより、(d)に示すように過給圧が早期に立ち上げられる。
【0040】
ところで、本実施の形態では、アシスト制御部80におけるタービン動力(目標タービン動力、実タービン動力)の算出を電動ターボモデルを用いて行うこととしており、以下にその詳細を説明する。図4は電動ターボモデルM10を示す制御ブロック図であり、同図ではターボチャージャ30に付随して設けられるモータ34とインタークーラ37も併せて電動ターボモデルとしている。
【0041】
図4では、タービンホイール32、シャフト33、コンプレッサインペラ31、モータ34及びインタークーラ37をそれぞれモデル化してタービンモデルM11、シャフトモデルM12、コンプレッサモデルM13、モータモデルM14、インタークーラモデルM15としており、それらターボチャージャの各パーツモデルに加え、排気の遅れなどを考慮した排気管モデルM16と、吸気の遅れなどを考慮した吸気管モデルM17とを備える。
【0042】
因みに、本電動ターボモデルM10では、タービンモデルM11、シャフトモデルM12、コンプレッサモデルM13及びモータモデルM14において、過給の原理に基づいてエネルギー(動力)の流れを統一のパラメータとしてモデルを構築しており、それによりモデルを再利用する際の利便性(再利用性)を高めるようにしている。すなわち、一度構築したモデルを他のシステムに容易に適用することが可能となる。また、本モデルをベースにすれば、冗長性も高く、電動化した過給機のモデル化なども容易に行え、汎用性の高いモデルが実現できるようになっている。
【0043】
タービンモデルM11では、排気管モデルM16にて算出したエンジン10の排気パラメータ(排気流量mg、タービン上流圧Ptb_in、タービン下流圧Ptb_out、タービン上流温Ttb_in、タービン断熱効率ηg)から式(1)を用いてタービン動力Ltを算出する。
【0044】
【数1】
ここで、cgは排気の比熱、κgは比熱比である。
【0045】
エンジン10の排気パラメータである温度や圧力、流量は、センサ等による実測値でもモデルやマップによる推定値でも良い。一例として本実施の形態では、排気流量mgをエアフロメータ41の実測値と噴射信号(又は空燃比)とから算出すると共に、予め作成しておいたテーブルを用いて排気流量mgからタービン上下流圧Ptbとタービン上下流温Ttbを算出するものとする。
【0046】
なお、実際のターボシステムでは多くの遅れ要素が存在し、例えば排気流量mgをエアフロメータ41の実測値を基に算出する構成において吸入空気量の計測時から実際にタービンでの排気流量に反映されるまでに遅れが生じる。そのため、排気管モデルM16では、排気管24の体積(排気ポートからタービンまでの排気管体積)や圧力、エンジン回転速度に起因する遅れ要素等を考慮して排気流量mgを算出することとしている。
【0047】
また、モータモデルM14では、アシスト動力Leを算出する。そして、タービンモデルM11で算出したタービン動力Ltと、モータモデルM14で算出したアシスト動力Leとを加算した動力Ltcが次のシャフトモデルM12の入力とされる。
【0048】
シャフトモデルM12では、式(2)によって動力Ltcをコンプレッサ動力Lcに変換し出力する。ηtは動力変換効率である。
【0049】
【数2】
式(2)で求めたコンプレッサ動力LcがコンプレッサモデルM13の入力とされる。
【0050】
コンプレッサモデルM13では、コンプレッサ動力Lcとコンプレッサ効率ηcとから過給エネルギーを算出する(式(3))。また、式(3)を変形することによって式(4)が得られ、過給エネルギーの算出値と吸気パラメータ(吸入空気量Ga、コンプレッサ上流圧(コンプレッサ入口圧)Pc_in、吸気温Tc_in)を用いてコンプレッサ下流圧(コンプレッサ出口圧)Pc_outを算出する(式(4))。ここで、caは吸気の比熱、κaは比熱比である。吸入空気量Gaはエアフロメータ41の検出信号から、コンプレッサ上流圧Pc_inは大気圧センサ44の検出信号から、吸気温Tc_inは吸気温センサ(例えばエアフロメータに付設した温度センサ)の検出信号から、それぞれ算出される。
【0051】
【数3】
【0052】
【数4】
なお、エンジン10の吸気パラメータである空気量や圧力は、吸気管モデルM17において、吸気管11の体積(コンプレッサからスロットルまでの吸気管体積)や圧力等に起因する輸送遅れ等を考慮した値として算出されるようになっている。
【0053】
上記式(1)〜(3)で用いる効率はそれぞれ入力の動力(エネルギー)に対するテーブルもしくは、計算から求められる。効率ηgとηcは、温度、圧力から求められる断熱効率を用いて求めることができる。動力Ltc→コンプレッサ動力Lcの動力変換効率ηt(式(2)参照)は、各断熱効率を求めた後、モデルを同定する際に、実際に過給に必要なエネルギーとその時の動力LtcからLc/Ltcを求めて決定する。この逆モデル的な方法を用いることで、実際のターボチャージャの変換効率(機械効率など)が分からなくてもモデルを組むことができ、実機の定常値をモデルで再現することができる。
【0054】
ここで、コンプレッサ効率ηcは式(5)のように表される。
【0055】
【数5】
式(5)は、次の式(6)のように変形でき、コンプレッサ効率ηc、コンプレッサ上流圧力Pc_in、コンプレッサ下流圧Pc_out、吸気温Tc_inが既知であれば、式(6)からコンプレッサ下流温Tc_outが算出できる。
【0056】
【数6】
以上の流れにより、コンプレッサ下流圧Pc_out及びコンプレッサ下流温Tc_outが算出され、これらPc_out及びTc_outが次のインタークーラモデルM15の入力とされる。
【0057】
インタークーラモデルM15は、インタークーラ37での圧力損失を算出する圧力損失モデル部分と、冷却効果(温度降下)を算出する冷却効果モデル部分とに分かれており、前者の構成を図5に、後者の構成を図6に示す。圧力損失と冷却効果はインタークーラ単体特性を基に構築され、その単体特性は次のとおり規定されている。
【0058】
まず、基準となる外気温Ta_base、大気圧Pa_base、コンプレッサ下流圧Pb_base、コンプレッサ下流温Tb_baseを定める。これらの値は、モデルを構築する上で、ターボチャージャ付エンジンにおける任意に決めた基準の運転条件値である。この基準の運転条件下で、インタークーラ流入量に対する圧力損失特性としての圧力損失ΔPと冷却効果特性(温度降下特性)としての温度降下量ΔTとを求める。圧力損失ΔPはインタークーラ入口圧力と出口圧力の差であり、温度降下量ΔTはインタークーラ入口温度と出口温度の差である。これが基準のモデルとなる。
【0059】
ここで、インタークーラ37における圧力損失と冷却効果は、インタークーラ入口の圧力(コンプレッサ下流圧Pc_out)、温度(コンプレッサ下流温Tc_out)、外気温Ta、及びインタークーラ37を通過する風速(すなわち車速)をパラメータとして変化する。そこで、これら各パラメータを基に、基準条件下での算出値に補正を加えることとしている。この場合、コンプレッサ下流圧Pc_outやコンプレッサ下流温Tc_outの上昇又は風速の増加に伴い圧力損失が減少する。また、コンプレッサ下流温Tc_outの上昇又は風速の増加に伴い冷却効果(温度降下)が増加する。
【0060】
図5に示す圧力損失モデルでは、外気温Ta_base、コンプレッサ下流圧Pb_base及びコンプレッサ下流温Tb_baseを基準値(例えば、Ta_base=25℃、Pb_base=0kPa、Tb_base=75℃)として作成した特性マップを用い、その都度の吸入空気量Gaと車速SPDとに基づいて基準圧力損失ΔPbaseを算出する。
【0061】
また、式(7)を用い、コンプレッサ下流圧Pc_outに基づいて圧力補正係数を算出すると共に、式(8)を用い、コンプレッサ下流温Tc_outと外気温Taに基づいて温度補正係数を算出する。ρ(T)は、任意の温度での空気の密度である。
【0062】
【数7】
【0063】
【数8】
なお、式(8)による温度補正は外気温と過給温の差の影響を考慮して行われ、外気温Taの変化に伴う温度補正は式(8)に含まれている(後述する式(10)による温度補正も同様)。
【0064】
そして、次の式(9)により過給圧Pth(スロットル上流圧)を算出する。
【0065】
【数9】
また、図6に示す冷却効果モデルでは、前記図5の圧力損失モデルと同様、外気温Ta_base、コンプレッサ下流圧Pb_base及びコンプレッサ下流温Tb_baseを基準値(例えば、Ta_base=25℃、Pb_base=0kPa、Tb_base=75℃)として作成した特性マップを用い、その都度の吸入空気量Gaと車速SPDとに基づいて基準温度降下量ΔTbaseを算出する。
【0066】
また、式(10)を用い、コンプレッサ下流温Tc_outと外気温Taに基づいて温度補正係数を算出する。
【0067】
【数10】
なお、前述したとおりコンプレッサ下流圧Pc_outが変化しても、インタークーラ37に流入する質量流量は変化しないため、冷却効果(温度降下)に対する圧力補正は実施しない。
【0068】
そして、次の式(11)により過給温Tth(スロットル上流温)を算出する。
【0069】
【数11】
以上のようにして、インタークーラモデルM15の出力である過給圧Pth(スロットル上流圧)と過給温Tth(スロットル上流温)とが算出される。
【0070】
前記図2のアシスト制御部80における目標タービン動力算出部81と実タービン動力算出部82は、上記の電動ターボモデルM10を基に構築されており、その概要を図7に制御ブロック図として示す。ここで、目標タービン動力算出部81では、電動ターボモデルM10の逆計算(逆モデル)により目標タービン動力Lt_tを算出し、実タービン動力算出部82では、同電動ターボモデルM10の順計算(順モデル)により実タービン動力Lt_rを算出する。なお、目標タービン動力Lt_tは、前記図4においてシャフトモデルM12の入力に相当し、実際にはタービン動力とアシスト動力の和(すなわちターボチャージャ30の目標動力)である。
【0071】
要するに、目標タービン動力算出部81では、前記図4におけるシャフトモデルM12、コンプレッサモデルM13及びインタークーラモデルM15の各々の逆モデルを用い、目標過給圧Pth_t(目標スロットル上流圧)と目標空気量Ga_tとを主たる演算パラメータとして目標タービン動力Lt_tを算出する。かかる場合詳しくは、インタークーラ逆モデルでは、実機データに基づいたマップ(図8)を用い、目標過給圧Pth_tに基づいて目標過給温Tth_tを算出する。そして、図5(インタークーラの圧力損失モデル)、図6(冷却効果モデル)の逆モデルを用いて逆算式を組み立てることにより、目標過給圧Pth_t(目標スロットル上流圧)、目標過給温Tth_t(目標スロットル上流温)やその他目標空気量Ga_t、外気温Ta(コンプレッサ上流温)、大気圧Pa(コンプレッサ上流圧)に基づいて目標コンプレッサ下流圧Pc_out_tを算出する。
【0072】
次に、コンプレッサの逆モデルでは、次の式(12)を用い、目標コンプレッサ下流圧Pc_out_t、目標空気量Ga_t、外気温Ta、大気圧Paから目標過給エネルギーWc_tを算出する。ここで、caは空気の比熱、κaは空気の比熱比である。
【0073】
【数12】
更に、目標過給エネルギーWc_tをパラメータとして図9に示す効率マップからコンプレッサ効率ηc_tを算出すると共に、次の式(13)により目標コンプレッサ動力Lc_tを算出する。
【0074】
【数13】
また、シャフトの逆モデルでは、次の式(14)を用い、目標コンプレッサ動力Lc_tを目標タービン動力Lt_tに変換する。ηtは動力変換効率である。
【0075】
【数14】
なお、目標タービン動力算出部81において、タービンイナーシャ逆モデル(タービンのイナーシャの1次遅れの逆モデル)を追加しても良い。このタービンイナーシャ逆モデルの追加により、目標タービン動力の算出精度向上が可能となる。
【0076】
また、実タービン動力算出部82では、上述したターボモデルの計算順と同様に、排気管モデル、タービンモデル(順モデル)を介して排気による実タービン動力Lt_rを算出する。すなわち、排気管モデルにて算出したエンジン10の排気パラメータ(排気流量mg、タービン上流圧Ptb_in、タービン下流圧Ptb_out、タービン上流温Ttb_in、タービン断熱効率ηg)から上述の式(1)を用いて実タービン動力Lt_rを算出する。
【0077】
動力差算出部83では、上記の如く算出した目標タービン動力Lt_tと実タービン動力Lt_rとの動力差を算出し(動力差=Lt_t−Lt_r)、その動力差から要求アシスト動力Waを算出する。そして、この要求アシスト動力Waに対して上限ガード等が適宜施され、その後、アシスト動力信号(モータ指令値)がモータECU60に出力される。
【0078】
次に、エンジンECU50による目標スロットル開度及びアシスト動力の算出処理の流れを図10〜図15のフローチャートに基づいて説明する。図10は、ベースルーチンを示すフローチャートであり、本ルーチンはエンジンECU50により例えば4msec毎に実行される。そして、図10のベースルーチンにおいて、図11〜図15のサブルーチンが適宜実行される。なお以下に説明する処理の流れは、基本的に前記図2の制御ブロック図に準ずるものであり、重複する説明については一部簡略化する。
【0079】
図10に示すように、ベースルーチンは、目標スロットル開度算出ルーチン(ステップS100)、アシスト動力算出ルーチン(ステップS200)を有してなり、図11に目標スロットル開度算出ルーチンの詳細を、図12にアシスト動力算出ルーチンの詳細を示している。
【0080】
図11に示す目標スロットル開度算出ルーチンでは、先ずアクセル開度の検出値を読み込み(ステップS101)、次にアクセル開度とエンジン回転速度とに基づいて目標トルクを算出する(ステップS102)。また、目標トルクとエンジン回転速度とに基づいて目標空気量を算出すると共に(ステップS103)、目標空気量とエンジン回転速度とに基づいて目標吸気圧(目標スロットル下流圧)、目標過給圧(目標スロットル上流圧)を算出する(ステップS104,S105)。そして最後に、目標空気量、目標吸気圧、目標過給圧、実過給圧及びスロットル通過吸気温に基づいて目標スロットル開度を算出する(ステップS106)。
【0081】
また、図12に示すアシスト動力算出ルーチンでは、先ず、後述する図13のサブルーチンを用い、ターボモデルの逆モデルに基づいて目標タービン動力を算出し(ステップS210)、次に、後述する図14のサブルーチンを用い、同ターボモデルの順モデルに基づいて実タービン動力を算出する(ステップS220)。また、目標タービン動力から実タービン動力を減算して動力差を算出する(ステップS230)。そして、後述する図15のサブルーチンを用い、動力アシストの実施の可否を判定する(ステップS240)。
【0082】
ここで、図13に示す目標タービン動力の算出サブルーチンでは、目標過給圧と目標空気量とを読み込み(ステップS211)、続いて例えば図8の関係を用い目標過給圧に基づいて目標過給温を算出する(ステップS212)。その後、インタークーラの逆モデルを用い、インタークーラでの圧力損失と冷却効果とを考慮しつつ目標コンプレッサ下流圧を算出する(ステップS213,S214)。また、コンプレッサの逆モデルを用いて目標過給エネルギーを算出すると共に、例えば図9の関係を用いてコンプレッサ効率を算出する(ステップS215,S216)。そして、目標過給エネルギーとコンプレッサ効率とから目標コンプレッサ動力を算出し(ステップS217)、更にシャフトの逆モデルを用いて目標タービン動力を算出する(ステップS218)。
【0083】
次に、図14に示す実タービン動力の算出サブルーチンは、排気管モデル部とタービンモデル部とからなり、排気管モデル部では、エアフロメータ41による空気量計測時からタービンでの排気流量として反映されるまでの遅れ等を考慮して排気流量を算出すると共に(ステップS221)、その排気流量に基づいて排気特性(タービン上流及び下流の圧力と温度)を算出する(ステップS222)。そして、タービンモデル部では、タービン断熱効率ηgを算出すると共に(ステップS223)、排気流量、排気圧力、排気温度等の排気パラメータとタービン断熱効率ηgとに基づいて実タービン動力を算出する(ステップS224)。
【0084】
次に、図15に示すアシスト判定ルーチンでは、前記図12のステップS230で算出した動力差に基づいてアシスト動力Waを算出する(ステップS241)。このとき、モータ特性やモータ温度に基づく上限ガードが適宜施されてアシスト動力Waが算出される。そしてその後、アシスト動力Waが所定値Wa_thよりも大きいか否かを判定し(ステップS242)、Wa>Wa_thであればアシスト許可フラグFaに1を、Wa≦Wa_thであればアシスト許可フラグFaに0をセットする(ステップS243,S244)。これにより、Wa>Wa_thの場合(アシスト許可フラグFa=1の場合)にモータ34による動力アシストが実行され、Wa≦Wa_thの場合(アシスト許可フラグFa=0の場合)にモータ34による動力アシストが停止される。
【0085】
図16は、本実施の形態におけるアシスト制御を用いた場合の各種挙動を示すタイムチャートである。なお図16では、比較対象として、加速要求時にアクセル要求を基にアシスト動力を付与するようにした従来技術を併記しており、その挙動を(b)〜(d)、(f)に一点鎖線にて示している。
【0086】
さて、(a)のようにアクセル開度が変化し加速が開始されると、(b)、(c)のように加速要求に応じてトルクと過給圧の目標値が増加する。また、(e)のように目標タービン動力が増加し、実タービン動力は目標タービン動力に対して遅れて立ち上がる。かかる場合、目標タービン動力と実タービン動力との動力差((e)の斜線部分)が算出されると共に、この動力差がモータ34のアシスト動力とされる。このようにアシスト制御を実施することにより、実際のトルクと過給圧が目標値に追従するように増加し、加速性の向上が実現される。そしてその後、実タービン動力が目標タービン動力に対して十分増加すると、アシスト動力が0とされ、モータ34による動力アシストが停止される。また、スロットル開度も定常値に落ち着く。
【0087】
またこのとき、スロットル開度は、目標吸気圧と実過給圧との圧力比(=目標吸気圧/実過給圧、スロットル下流圧と上流圧の比に相当)、及び目標空気量から算出されるようになっており、過渡時の実過給圧が定常値よりも低い場合は圧力比が定常値よりも小さくなるために、過給圧の不足分を補うためにスロットル開度が大きくされ、加速性能(過渡応答性)の向上が図られる。また、実過給圧が定常値に近づくと、スロットル開度も自動的に定常状態の値に収束する。
【0088】
因みに、従来制御では、目標タービン動力と実タービン動力との比較などは行われず、アクセル開度やその増加率を基にアシスト動力が算出される。そのためアシスト動力はほぼアクセル要求に連動したものとなり、このアシスト動力では十分な加速性が得られない上に、過給圧の増加に伴いアシスト動力を減少させていくような手段はなく、実質上不要なアシスト動力が付与された状態が継続される。また、スロットル開度に関しては、開度速度の制御を行うものはあるものの(d)の一点鎖線に示すようにスロットル開度をオーバーシュートさせて加速性を向上させるというような制御はなくアクセル開度に連動するのみである。従って、(b)の一点鎖線に示すようにトルクの立ち上がりは遅く過渡特性の十分な向上が得られない上に、(c)の点線で示すように過給圧のオーバーシュートの危険性もあった。
【0089】
以上詳述した本実施の形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0090】
ターボチャージャ30において目標タービン動力と実タービン動力との動力差に基づいてアシスト動力を算出し、該算出したアシスト動力によりモータ34の動力アシストを制御するようにしたため、目標タービン動力に対する不足分をアシスト量として、無駄の無い効率的なアシスト制御を実施することができる。また、動力の比較によりアシスト動力を算出するため、過給圧等、他のパラメータを用いてアシスト動力を算出する場合よりも直接的で且つ応答性に優れたアシスト制御が可能となる。以上により、シャフト33に付設したモータ34による動力アシストを適正に制御することができ、ひいては燃費の向上やドライバビリティの改善等を図ることができる。
【0091】
また、エンジンのトルク制御(空気量制御)に用いる目標空気量に基づいて目標タービン動力を算出するようにしたため、スロットルバルブ14(空気量調整手段)とモータ34(動力アシスト装置)とが連携して制御されることとなり、トルク制御の精度が向上する。従って、エンジン出力の過不足等が解消され、ドライバビリティの更なる改善が可能となる。
【0092】
ターボチャージャ30における動力の流れを表した物理モデルである電動ターボモデルM10を用い、同ターボモデルの逆モデル(インタークーラ、コンプレッサ、シャフトの各逆モデル)により目標タービン動力を算出すると共に、同ターボモデルの順モデル(タービンの順モデル)により実タービン動力を算出するようにしたため、目標タービン動力や実タービン動力を精度良く算出することができ、動力アシスト制御の精度向上が可能となる。
【0093】
なお、本発明は上記実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施しても良い。
【0094】
上記実施の形態では、目標過給圧と目標空気量とに基づいて目標タービン動力を算出したが(図2参照)、目標空気量に代えて実空気量を用い、目標過給圧と実空気量に基づいて目標タービン動力を算出しても良い。すなわちこの場合、図2に示す制御ブロック図において、目標タービン動力算出部81には、目標過給圧と実空気量が入力される。実空気量は、実際にコンプレッサインペラを通過する空気量(実コンプレッサ通過空気量)であり、エアフロメータ41の検出値を基に算出されればよい。但しその他、適合等に基づき予め作成したマップを用い、その都度のエンジン運転条件に基づいて実空気量を推定したり、モデルを用いて実空気量を推定したりすることも可能である。
【0095】
図17は、実空気量を用いて目標タービン動力を算出した場合における制御の挙動を示すタイムチャートである。なお図17の(b)〜(d)には、比較のために、目標空気量を用いた場合の目標タービン動力、アシスト動力、スロットル開度の挙動(上記実施の形態での制御の挙動)を一点鎖線で示している。
【0096】
図17において、(a)のように実空気量は目標空気量に対して遅れて変化する。そのため、実空気量を基に目標タービン動力を算出する場合には、目標空気量を基に目標タービン動力を算出する場合に比べて目標タービン動力と実タービン動力との動力差が小さくなる(図17の(b))。従って、動力差が小さくなった分、アシスト動力が小さくなり、動力アシスト時のエネルギー消費(モータ駆動によるバッテリ電力の消費量)を低減することができる。なお、アシスト動力が低減される分は、空気量制御による空気量増量分で補われ、加速性能(過給特性)が確保される。
【0097】
上記実施の形態では、ターボチャージャ30の目標タービン動力と実タービン動力との動力差を算出し、その動力差に基づいてモータアシスト量を算出したが、この構成を変更し、ターボチャージャ30の目標コンプレッサ動力と実コンプレッサ動力との動力差を算出し、その動力差に基づいてモータアシスト量を算出するようにしても良い。
【0098】
上記実施の形態では、モータ34によるアシスト量としてアシスト動力を算出し、そのアシスト動力を実現するようにモータ34を駆動したが、これに代えて、同アシスト量としてタービン回転数を算出し、そのタービン回転数を実現するようにモータ34の駆動を制御する構成としても良い。
【0099】
上記実施の形態では、アシスト制御部80におけるタービン動力(目標タービン動力、実タービン動力)の算出を電動ターボモデルを用いて行ったが、他の手法に変更しても良い。例えば、マップ演算により目標タービン動力や実タービン動力を算出するようにしても良い。
【0100】
上記実施の形態では、トルクベース制御部70(図2)において、目標トルクから算出した目標空気量に基づいて目標過給圧を算出したが、これに代えて、目標トルクから直接目標過給圧を算出するようにしても良い。
【0101】
上記実施の形態では、過給圧センサ12により検出した検出値から実過給圧を求め、この実過給圧を用いて目標スロットル開度を算出したが、これを変更し、推定演算により実過給圧を求め、この推定値を用いて目標スロットル開度を算出しても良い。具体的には、前記図4で説明したターボモデルを用い、当該モデルの出力として得られる過給圧を実過給圧の推定値とすると良い。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】発明の実施の形態におけるエンジン制御システムの概略を示す構成図である。
【図2】エンジンECUの機能を説明するための制御ブロック図である。
【図3】電動ターボチャージャのアシスト制御の概要を示すタイムチャートである。
【図4】電動ターボモデルを示す制御ブロック図である。
【図5】インタークーラモデルの圧力損失モデルを示す図である。
【図6】インタークーラモデルの冷却効果モデルを示す図である。
【図7】アシスト制御部における目標タービン動力算出部、実タービン動力算出部の詳細を示す制御ブロック図である。
【図8】過給圧と過給温との関係を示す図である。
【図9】過給エネルギーとコンプレッサ効率との関係を示す図である。
【図10】エンジンECUによるベースルーチンを示すフローチャートである。
【図11】目標スロットル開度の算出ルーチンを示すフローチャートである。
【図12】アシスト動力の算出ルーチンを示すフローチャートである。
【図13】目標タービン動力の算出ルーチンを示すフローチャートである。
【図14】実タービン動力の算出ルーチンを示すフローチャートである。
【図15】アシスト判定ルーチンを示すフローチャートである。
【図16】実施の形態におけるアシスト制御時の各種挙動を示すタイムチャートである。
【図17】別の形態におけるアシスト制御時の各種挙動を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0103】
10…エンジン、11…吸気管、14…スロットルバルブ、24…排気管、30…ターボチャージャ、31…コンプレッサインペラ、32…タービンホイール、33…シャフト、34…モータ、37…インタークーラ、50…エンジンECU。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャ等の過給機を備えた内燃機関に適用され、過給機に対するアシスト動力を好適に制御するための制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排気動力を用いて吸入空気を過給する過給機としてターボチャージャが一般に知られている。また近年では、ターボチャージャの回転軸に電動機等を取り付け、内燃機関の運転状態に応じて排気動力をアシストする電動アシスト式のターボチャージャが開発されている。この場合、電動機等による動力アシストを実施することで、ターボチャージャの過給が助勢され過給効果が向上する。こうした電動アシスト式ターボチャージャの制御装置として、例えば特許文献1,2,3の先行技術があり、電動機への通電電流等を制御することでアシスト量を制御するようにしている。
【0003】
すなわち、特許文献1の制御装置では、アクセル踏込量やその踏込速度に基づいて電動機への通電電流を制御し、これにより、ターボチャージャの過給動作を早めるようにしている。また、特許文献2の制御装置では、アクセル開度の変化量に応じて、スロットル開度の開き速度と電動機への通電電流とを制御する一方、機関回転速度や負荷値に応じて補助動力量を補正する。そしてこれにより、運転者のアクセル動作に応じた過給圧を実現し、運転性を向上させるようにしている。また、特許文献3の制御装置では、目標過給圧と電動機への供給電力との関係を予め規定したマップ等の電力決定基準に基づいて電動機への供給電力を決定することとし、更に電動機への供給電力に対する実際の過給圧変動に基づいて電力決定基準を補正する。そしてこれにより、常に最適な過給圧制御を実施することができるようにしている。
【0004】
しかしながら、上記従来の各手法では、何れもオープンループ的な制御を実施しており、アシスト量を過不足無く制御することは困難であった。この場合、アシスト量が不要に大きくなると、燃費の悪化が生じるおそれがあった。また、加速時等において運転者が意図する過給性能(加速性能)が得られず、ドライバビリティの悪化が生じるおそれがあった。
【特許文献1】特開平1−117933号公報
【特許文献2】特開平11−280510号公報
【特許文献3】特開2003−239754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電動機等の動力アシスト装置を有する過給機を備えた内燃機関において、動力アシスト装置による動力アシストを過不足無く適正に制御することができる過給機付き内燃機関の制御装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の制御装置は、排気動力により吸入空気を過給する過給機と、該過給機に取り付けられ過給機の動力を直接アシストする動力アシスト装置とを有する内燃機関に適用されることを前提としており、その内燃機関において、空気量調整手段により吸入空気量が調整されることで当該内燃機関の出力トルクが制御される。そして特に、空気量情報に基づいて過給機の目標動力を算出すると共に、過給機の実動力(実際の過給機動力)を算出する。また、それら目標動力と実動力とに基づいて動力アシスト装置のアシスト量を算出し、該算出したアシスト量により動力アシスト装置を制御する。例えば、目標動力と実動力とを比較してその動力差に基づいてアシスト量を算出すると良い。
【0007】
要するに、過給機の目標動力と実動力とを比較すれば、本来必要な過給機動力としてどれだけの動力が不足しているかが把握でき、その不足分に応じたアシスト量にて動力アシスト装置を駆動することができる。例えば、目標動力と実動力との差を求め、その動力差を基に算出したアシスト量により動力アシスト装置を制御する。かかる場合、目標動力に対する不足分をアシスト量とすることにより、無駄なく効率的に過給機動力をアシストすることができる。また、動力の比較によりアシスト量を算出するため、過給圧等、他のパラメータを用いてアシスト量を算出する場合よりも直接的で且つ応答性に優れたアシスト制御が可能となる。例えば過給圧の挙動はアシスト制御の結果であり、それを基にアシスト制御した場合、制御に遅れが生じるが、こうした不都合が解消できる。以上により、動力アシスト装置による動力アシストを適正に制御することができ、ひいては燃費の向上やドライバビリティの改善等を図ることができる。
【0008】
因みに、「空気量情報」は、都度の空気量制御の状態を把握できるものであれば良く、実際には、目標空気量や実空気量を含むものである。
【0009】
また、内燃機関のトルク制御手法として、運転者の要求に対応する目標トルクに基づいて目標空気量を算出すると共に、該算出した目標空気量に基づいて空気量調整手段(スロットルバルブ等)による空気量制御を実施する手法がある。かかる場合において、目標空気量に基づいて過給機の目標動力を算出すると良い。これにより、空気量調整手段と動力アシスト装置とが連携して制御されることとなり、空気量制御(トルク制御)の精度が向上する。従って、ドライバビリティ等の更なる改善が可能となる。
【0010】
また、空気量調整手段による空気量制御に際し、吸気通路を実際に流れる実空気量を推定又は計測により求め、その実空気量に基づいて過給機の目標動力を算出するようにしても良い。要するに、実空気量は目標空気量に対して遅れて変化する。そのため、実空気量を基に目標動力を算出する場合には、目標空気量を基に目標動力を算出する場合に比べて目標動力と実動力との動力差が小さくなる。従って、目標動力と実動力との比較(動力差)に基づいて算出されるアシスト量が小さくなり、動力アシスト装置の作動に伴うエネルギー消費(例えばモータ使用時におけるバッテリ電力の消費量)を低減することができる。なお、アシスト量が低減される分は、空気量制御による空気量増量分で補われ、加速性能が確保される。
【0011】
過給機の動力は、その都度の空気量と過給圧とに応じて制御されるのが望ましい。従って、目標トルクに基づいて目標過給圧を算出すると共に、空気量情報(目標空気量又は実空気量)と目標過給圧とに基づいて過給機の目標動力を算出すると良い。これにより、過給圧の制御精度が向上する。なお、目標過給圧は、目標トルクから算出した目標空気量に基づいて算出されても良い。
【0012】
また一方で、本発明は、吸入空気量の調整によるトルク制御を必ずしも要件とするものでない。かかる場合、排気動力により吸入空気を過給する過給機と、該過給機に取り付けられ過給機の動力を直接アシストする動力アシスト装置とを有する内燃機関に適用されることを前提とし、内燃機関の運転状態に基づいて過給機の目標動力を算出すると共に、過給機の実動力を算出する。また、過給機の目標動力と実動力とに基づいて動力アシスト装置によるアシスト量を算出し、該算出したアシスト量により動力アシスト装置を制御する。
【0013】
本構成においても、前記同様(空気量によるトルク制御を要件とする場合と同様)、目標動力に対する不足分をアシスト量とすることにより、無駄なく効率的に過給機動力をアシストすることができる。また、動力の比較によりアシスト量を算出するため、過給圧等、他のパラメータを用いてアシスト量を算出する場合よりも直接的で且つ応答性に優れたアシスト制御が可能となる。その結果、動力アシスト装置による動力アシストを適正に制御することができ、ひいては燃費の向上やドライバビリティの改善等を図ることができる。
【0014】
実際の過給機動力は、内燃機関から排出される排気の状態に応じて変化する。そこで、排気流量、排気圧力、排気温度等の排気パラメータを推定又は計測により取得し、その排気パラメータに基づいて過給機の実動力を算出すると良い。これにより、過給機の実動力を適正に求めることができる。
【0015】
過給機として、タービンホイール、シャフト及びコンプレッサインペラよりなるターボチャージャを用いる構成では、タービンホイールからコンプレッサインペラに至る動力の流れをターボチャージャの構成要素毎にモデル化しターボモデルとして表すことができる。この場合、ターボモデルのうち少なくともタービンホイールをモデル化したタービンモデルにより過給機の実動力を算出すると共に、同ターボモデルのうち少なくともコンプレッサインペラをモデル化したコンプレッサモデルにより過給機の目標動力を算出する。これにより、実動力や目標動力を精度良く算出することができる。
【0016】
因みに、動力の流れを基本としてその動力を統一のパラメータとしてターボモデルを構築することにより、例えばモデルを再利用する際の利便性(再利用性)を高めることができる。これにより、一度構築したモデルを他のシステムに適用することも容易となる。
【0017】
ここで特に、排気情報を入力パラメータとしてターボモデルの順方向の計算により過給機の実動力を算出すると共に、過給圧情報と吸気情報とを入力パラメータとしてターボモデルの逆方向の計算により過給機の目標動力を算出すると良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態は、内燃機関である車載多気筒ガソリンエンジンを対象にエンジン制御システムを構築するものであり、当該制御システムのエンジンには過給機として電動アシスト式のターボチャージャ(以下、電動ターボチャージャとも言う)が設けられている。先ずは、図1を用いてエンジン制御システムの全体概略構成図を説明する。
【0019】
図1に示すエンジン10において、吸気管11には、DCモータ等のスロットルアクチュエータ15によって開度調節される空気量調整手段としてのスロットルバルブ14が設けられている。スロットルアクチュエータ15には、スロットル開度を検出するためのスロットル開度センサが内蔵されている。スロットルバルブ14の上流側には、スロットル上流側の圧力(後述するターボチャージャによる過給圧)を検出する過給圧センサ12と、スロットル上流側の吸気温を検出する吸気温センサ13とが設けられている。
【0020】
スロットルバルブ14の下流側にはサージタンク16が設けられ、このサージタンク16にはスロットル下流側の吸気圧を検出する吸気圧センサ17(吸気管圧力検出手段)が設けられている。また、サージタンク16には、エンジン10の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド18が接続されており、吸気マニホールド18において各気筒の吸気ポート近傍には燃料を噴射供給する電磁駆動式の燃料噴射弁19が取り付けられている。
【0021】
エンジン10の吸気ポート及び排気ポートにはそれぞれ吸気バルブ21及び排気バルブ22が設けられており、吸気バルブ21の開動作により空気と燃料との混合気が燃焼室23内に導入され、排気バルブ22の開動作により燃焼後の排ガスが排気管24に排出される。エンジン10のシリンダヘッドには気筒毎に点火プラグ25が取り付けられており、点火プラグ25には、点火コイル等よりなる図示しない点火装置を通じて、所望とする点火時期において高電圧が印加される。この高電圧の印加により、各点火プラグ25の対向電極間に火花放電が発生し、燃焼室23内に導入した混合気が着火され燃焼に供される。
【0022】
エンジン10のシリンダブロックには、エンジン10の回転に伴い所定クランク角毎に(例えば30°CA周期で)矩形状のクランク角信号を出力するクランク角度センサ26が取り付けられている。
【0023】
吸気管11と排気管24との間にはターボチャージャ30が配設されている。ターボチャージャ30は、吸気管11に設けられたコンプレッサインペラ31と、排気管24に設けられたタービンホイール32とを有し、それらがシャフト33にて連結されている。また、シャフト33には、動力アシスト装置としてのモータ(電動機)34が設けられており、モータ34はバッテリ(図示せず)から供給される電力により作動しシャフト33の回転をアシストする。モータ34には、モータ温度を検出するための温度センサ35が設けられている。
【0024】
ターボチャージャ30では、排気管24を流れる排気によってタービンホイール32が回転し、その回転力がシャフト33を介してコンプレッサインペラ31に伝達される。そして、コンプレッサインペラ31により、吸気管11内を流れる吸入空気が圧縮されて過給が行われる。ターボチャージャ30にて過給された空気は、インタークーラ37によって冷却された後、その下流側に給送される。インタークーラ37によって吸入空気が冷却されることで、吸入空気の充填効率が高められる。
【0025】
吸気管11の最上流部には図示しないエアクリーナが設けられ、このエアクリーナの下流側には吸入空気量を検出するエアフロメータ41が設けられている。その他、本制御システムでは、アクセルペダルの踏み込み操作量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ43や、大気圧を検出する大気圧センサ44が設けられている。
【0026】
エンジンECU(電子制御ユニット)50は、周知の通りCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、その都度のエンジン運転状態に応じてエンジン10の各種制御を実施する。すなわち、エンジンECU50には、前述した各種センサから各々検出信号が入力される。そして、エンジンECU50は、随時入力される各種の検出信号に基づいて燃料噴射量や点火時期等を演算し、燃料噴射弁19や点火プラグ25の駆動を制御する。
【0027】
また本実施の形態では、いわゆるトルクベース制御による電子スロットル制御を実施することとしており、エンジン10で生じるトルクを基準にしてスロットル開度を目標値に制御する。簡単に説明すると、エンジンECU50は、アクセル開度センサ43の検出信号に基づいて目標トルク(要求トルク)を演算すると共に該目標トルクを満足する目標空気量を演算し、目標空気量、その都度のスロットル上流側及び下流側の圧力、吸気温度に基づいて目標スロットル開度を算出する。そして、エンジンECU50は、目標スロットル開度に基づく制御指令信号によりスロットルアクチュエータ15を制御し、スロットル開度を目標スロットル開度に制御する。
【0028】
また、エンジンECU50は、トルクベース制御に連動してターボチャージャ30のモータ34の制御量を決定する。これにより、車両加速時においてターボチャージャ30にアシスト動力(補助動力)を付加し、所望の過給圧がいち早く得られるようにしている。すなわち、エンジンECU50は、目標トルクに応じて算出される目標空気量や目標過給圧を基に、目標とするアシスト動力や動力アシストタイミングなどを演算し、それら演算結果をモータECU60に出力する。モータECU60は、エンジンECU50からの信号を入力し、モータ効率等を考慮して所定の演算処理を行い、モータ34への供給電力を制御する。
【0029】
次に、本実施の形態におけるエンジンECU50の制御の概要を図2に基づいて説明する。図2は、エンジンECU50の機能を説明するための制御ブロック図である。
【0030】
図2に示す本システムでは、主要な機能として、運転者が要求する目標トルクを基に目標スロットル開度を算出するトルクベース制御部70と、モータECU60に指令するモータ34のアシスト動力を算出するアシスト制御部80とを備える。以下、各制御部70,80について詳細を説明する。
【0031】
トルクベース制御部70において、目標トルク算出部71は、アクセル開度とエンジン回転速度とに基づいて目標トルクを算出し、目標空気量算出部72は、目標トルクとエンジン回転速度とに基づいて目標空気量を算出する。この目標空気量が、運転者が要求する目標トルクを実現するために要する空気量に相当する。また、目標吸気圧算出部73は、目標空気量とエンジン回転速度とに基づいて目標吸気圧(目標とするスロットル下流側の圧力)を算出し、目標過給圧算出部74は、目標空気量とエンジン回転速度とに基づいて目標過給圧(目標とするスロットル上流側の圧力)を算出する。そして、目標スロットル開度算出部75は、目標空気量、目標吸気圧、目標過給圧、実過給圧及びスロットル通過吸気温に基づいて目標スロットル開度を算出する。但しこの場合、目標吸気圧と目標過給圧の算出には目標空気量[g/rev]が用いられ、目標スロットル開度の算出には、目標空気量[g/rev]をエンジン回転速度により換算した単位時間当たりの目標空気量[g/sec]が用いられる。
【0032】
なお、実過給圧は、過給圧センサ12により検出される過給圧(スロットル上流圧)であり、スロットル通過吸気温は、吸気温センサ13により検出されるスロットル上流側の吸気温である。
【0033】
かかる場合、スロットル通過空気量Gaを算出するための次の基礎式をもとに目標スロットル開度が算出される。
【0034】
Ga=f(Thr)×Pb/√T×f(Pm/Pb)
上式において、Thrはスロットル開度、Pbはスロットル上流圧、Pmはスロットル下流圧、Tは吸気温である。本実施の形態では、前記基礎式のスロットル通過空気量Gaを目標空気量に、スロットル開度Thrを目標スロットル開度に、スロットル上流圧Pbを実過給圧に、スロットル下流圧Pmを目標吸気圧にそれぞれ置き換えており、目標空気量、実過給圧、目標吸気圧等を基に目標スロットル開度が算出される。
【0035】
一方、アシスト制御部80において、目標タービン動力算出部81は、前記トルクベース制御部70で算出した目標空気量と目標過給圧とに基づいて目標タービン動力を算出する。また、実タービン動力算出部82は、排気情報に基づいて実際のタービン動力(実タービン動力)を算出する。動力差算出部83は、目標タービン動力と実タービン動力との動力差を算出する。そして、アシスト動力算出部84は、前記算出した動力差を基にアシスト動力を算出し、そのアシスト動力をモータECU60に出力する。
【0036】
かかる場合、モータ34のアシスト動力は、目標タービン動力に対する実タービン動力の不足分として算出される。つまり、タービン動力の不足分がモータアシストにより補われるようになっている。アシスト制御部80では、動力を統一のパラメータとしてモータアシスト量も動力で算出することとしている。このとき、現存する電動ターボシステムのモータECU60の指令値はモータ出力であるため、モータアシスト量を動力で算出するのが望ましいと考えられる。
【0037】
なお、アシスト動力の算出時には、モータ34の性能や作動状態、エンジン運転状態等に基づいてアシスト動力を補正したり、上限ガードを設定したりするのが望ましい。本実施の形態では、モータ温度(温度センサ35による検出値)をパラメータとしてアシスト動力の上限値を設定し、その上限値によりアシスト動力を上限ガードするようにしている。
【0038】
ここで、電動ターボチャージャのアシスト制御の概要を図3を用いて説明する。
【0039】
図3の(a)のようにアクセル開度が変化し加速が開始されると、(b)のように加速要求に応じて目標タービン動力が増加し、実タービン動力(排気動力)は目標タービン動力に対して遅れて立ち上がる。そのため、(d)に示すように実過給圧の立ち上がりが目標過給圧に対して遅れることとなる。そこで本実施の形態では、タービン動力の不足時にアシスト動力を(c)のように加え、タービン動力をアシストする。このとき、アシスト動力は目標タービン動力と実タービン動力との差に基づいて算出される(詳細は後述)。つまりこの場合、排気によりタービンホイール32を回す動力(実タービン動力)にモータ34によるアシスト動力が加えられ、これら動力の和(実タービン動力+アシスト動力)によってシャフト33を介してコンプレッサインペラ31が回転駆動される。これにより、(d)に示すように過給圧が早期に立ち上げられる。
【0040】
ところで、本実施の形態では、アシスト制御部80におけるタービン動力(目標タービン動力、実タービン動力)の算出を電動ターボモデルを用いて行うこととしており、以下にその詳細を説明する。図4は電動ターボモデルM10を示す制御ブロック図であり、同図ではターボチャージャ30に付随して設けられるモータ34とインタークーラ37も併せて電動ターボモデルとしている。
【0041】
図4では、タービンホイール32、シャフト33、コンプレッサインペラ31、モータ34及びインタークーラ37をそれぞれモデル化してタービンモデルM11、シャフトモデルM12、コンプレッサモデルM13、モータモデルM14、インタークーラモデルM15としており、それらターボチャージャの各パーツモデルに加え、排気の遅れなどを考慮した排気管モデルM16と、吸気の遅れなどを考慮した吸気管モデルM17とを備える。
【0042】
因みに、本電動ターボモデルM10では、タービンモデルM11、シャフトモデルM12、コンプレッサモデルM13及びモータモデルM14において、過給の原理に基づいてエネルギー(動力)の流れを統一のパラメータとしてモデルを構築しており、それによりモデルを再利用する際の利便性(再利用性)を高めるようにしている。すなわち、一度構築したモデルを他のシステムに容易に適用することが可能となる。また、本モデルをベースにすれば、冗長性も高く、電動化した過給機のモデル化なども容易に行え、汎用性の高いモデルが実現できるようになっている。
【0043】
タービンモデルM11では、排気管モデルM16にて算出したエンジン10の排気パラメータ(排気流量mg、タービン上流圧Ptb_in、タービン下流圧Ptb_out、タービン上流温Ttb_in、タービン断熱効率ηg)から式(1)を用いてタービン動力Ltを算出する。
【0044】
【数1】
ここで、cgは排気の比熱、κgは比熱比である。
【0045】
エンジン10の排気パラメータである温度や圧力、流量は、センサ等による実測値でもモデルやマップによる推定値でも良い。一例として本実施の形態では、排気流量mgをエアフロメータ41の実測値と噴射信号(又は空燃比)とから算出すると共に、予め作成しておいたテーブルを用いて排気流量mgからタービン上下流圧Ptbとタービン上下流温Ttbを算出するものとする。
【0046】
なお、実際のターボシステムでは多くの遅れ要素が存在し、例えば排気流量mgをエアフロメータ41の実測値を基に算出する構成において吸入空気量の計測時から実際にタービンでの排気流量に反映されるまでに遅れが生じる。そのため、排気管モデルM16では、排気管24の体積(排気ポートからタービンまでの排気管体積)や圧力、エンジン回転速度に起因する遅れ要素等を考慮して排気流量mgを算出することとしている。
【0047】
また、モータモデルM14では、アシスト動力Leを算出する。そして、タービンモデルM11で算出したタービン動力Ltと、モータモデルM14で算出したアシスト動力Leとを加算した動力Ltcが次のシャフトモデルM12の入力とされる。
【0048】
シャフトモデルM12では、式(2)によって動力Ltcをコンプレッサ動力Lcに変換し出力する。ηtは動力変換効率である。
【0049】
【数2】
式(2)で求めたコンプレッサ動力LcがコンプレッサモデルM13の入力とされる。
【0050】
コンプレッサモデルM13では、コンプレッサ動力Lcとコンプレッサ効率ηcとから過給エネルギーを算出する(式(3))。また、式(3)を変形することによって式(4)が得られ、過給エネルギーの算出値と吸気パラメータ(吸入空気量Ga、コンプレッサ上流圧(コンプレッサ入口圧)Pc_in、吸気温Tc_in)を用いてコンプレッサ下流圧(コンプレッサ出口圧)Pc_outを算出する(式(4))。ここで、caは吸気の比熱、κaは比熱比である。吸入空気量Gaはエアフロメータ41の検出信号から、コンプレッサ上流圧Pc_inは大気圧センサ44の検出信号から、吸気温Tc_inは吸気温センサ(例えばエアフロメータに付設した温度センサ)の検出信号から、それぞれ算出される。
【0051】
【数3】
【0052】
【数4】
なお、エンジン10の吸気パラメータである空気量や圧力は、吸気管モデルM17において、吸気管11の体積(コンプレッサからスロットルまでの吸気管体積)や圧力等に起因する輸送遅れ等を考慮した値として算出されるようになっている。
【0053】
上記式(1)〜(3)で用いる効率はそれぞれ入力の動力(エネルギー)に対するテーブルもしくは、計算から求められる。効率ηgとηcは、温度、圧力から求められる断熱効率を用いて求めることができる。動力Ltc→コンプレッサ動力Lcの動力変換効率ηt(式(2)参照)は、各断熱効率を求めた後、モデルを同定する際に、実際に過給に必要なエネルギーとその時の動力LtcからLc/Ltcを求めて決定する。この逆モデル的な方法を用いることで、実際のターボチャージャの変換効率(機械効率など)が分からなくてもモデルを組むことができ、実機の定常値をモデルで再現することができる。
【0054】
ここで、コンプレッサ効率ηcは式(5)のように表される。
【0055】
【数5】
式(5)は、次の式(6)のように変形でき、コンプレッサ効率ηc、コンプレッサ上流圧力Pc_in、コンプレッサ下流圧Pc_out、吸気温Tc_inが既知であれば、式(6)からコンプレッサ下流温Tc_outが算出できる。
【0056】
【数6】
以上の流れにより、コンプレッサ下流圧Pc_out及びコンプレッサ下流温Tc_outが算出され、これらPc_out及びTc_outが次のインタークーラモデルM15の入力とされる。
【0057】
インタークーラモデルM15は、インタークーラ37での圧力損失を算出する圧力損失モデル部分と、冷却効果(温度降下)を算出する冷却効果モデル部分とに分かれており、前者の構成を図5に、後者の構成を図6に示す。圧力損失と冷却効果はインタークーラ単体特性を基に構築され、その単体特性は次のとおり規定されている。
【0058】
まず、基準となる外気温Ta_base、大気圧Pa_base、コンプレッサ下流圧Pb_base、コンプレッサ下流温Tb_baseを定める。これらの値は、モデルを構築する上で、ターボチャージャ付エンジンにおける任意に決めた基準の運転条件値である。この基準の運転条件下で、インタークーラ流入量に対する圧力損失特性としての圧力損失ΔPと冷却効果特性(温度降下特性)としての温度降下量ΔTとを求める。圧力損失ΔPはインタークーラ入口圧力と出口圧力の差であり、温度降下量ΔTはインタークーラ入口温度と出口温度の差である。これが基準のモデルとなる。
【0059】
ここで、インタークーラ37における圧力損失と冷却効果は、インタークーラ入口の圧力(コンプレッサ下流圧Pc_out)、温度(コンプレッサ下流温Tc_out)、外気温Ta、及びインタークーラ37を通過する風速(すなわち車速)をパラメータとして変化する。そこで、これら各パラメータを基に、基準条件下での算出値に補正を加えることとしている。この場合、コンプレッサ下流圧Pc_outやコンプレッサ下流温Tc_outの上昇又は風速の増加に伴い圧力損失が減少する。また、コンプレッサ下流温Tc_outの上昇又は風速の増加に伴い冷却効果(温度降下)が増加する。
【0060】
図5に示す圧力損失モデルでは、外気温Ta_base、コンプレッサ下流圧Pb_base及びコンプレッサ下流温Tb_baseを基準値(例えば、Ta_base=25℃、Pb_base=0kPa、Tb_base=75℃)として作成した特性マップを用い、その都度の吸入空気量Gaと車速SPDとに基づいて基準圧力損失ΔPbaseを算出する。
【0061】
また、式(7)を用い、コンプレッサ下流圧Pc_outに基づいて圧力補正係数を算出すると共に、式(8)を用い、コンプレッサ下流温Tc_outと外気温Taに基づいて温度補正係数を算出する。ρ(T)は、任意の温度での空気の密度である。
【0062】
【数7】
【0063】
【数8】
なお、式(8)による温度補正は外気温と過給温の差の影響を考慮して行われ、外気温Taの変化に伴う温度補正は式(8)に含まれている(後述する式(10)による温度補正も同様)。
【0064】
そして、次の式(9)により過給圧Pth(スロットル上流圧)を算出する。
【0065】
【数9】
また、図6に示す冷却効果モデルでは、前記図5の圧力損失モデルと同様、外気温Ta_base、コンプレッサ下流圧Pb_base及びコンプレッサ下流温Tb_baseを基準値(例えば、Ta_base=25℃、Pb_base=0kPa、Tb_base=75℃)として作成した特性マップを用い、その都度の吸入空気量Gaと車速SPDとに基づいて基準温度降下量ΔTbaseを算出する。
【0066】
また、式(10)を用い、コンプレッサ下流温Tc_outと外気温Taに基づいて温度補正係数を算出する。
【0067】
【数10】
なお、前述したとおりコンプレッサ下流圧Pc_outが変化しても、インタークーラ37に流入する質量流量は変化しないため、冷却効果(温度降下)に対する圧力補正は実施しない。
【0068】
そして、次の式(11)により過給温Tth(スロットル上流温)を算出する。
【0069】
【数11】
以上のようにして、インタークーラモデルM15の出力である過給圧Pth(スロットル上流圧)と過給温Tth(スロットル上流温)とが算出される。
【0070】
前記図2のアシスト制御部80における目標タービン動力算出部81と実タービン動力算出部82は、上記の電動ターボモデルM10を基に構築されており、その概要を図7に制御ブロック図として示す。ここで、目標タービン動力算出部81では、電動ターボモデルM10の逆計算(逆モデル)により目標タービン動力Lt_tを算出し、実タービン動力算出部82では、同電動ターボモデルM10の順計算(順モデル)により実タービン動力Lt_rを算出する。なお、目標タービン動力Lt_tは、前記図4においてシャフトモデルM12の入力に相当し、実際にはタービン動力とアシスト動力の和(すなわちターボチャージャ30の目標動力)である。
【0071】
要するに、目標タービン動力算出部81では、前記図4におけるシャフトモデルM12、コンプレッサモデルM13及びインタークーラモデルM15の各々の逆モデルを用い、目標過給圧Pth_t(目標スロットル上流圧)と目標空気量Ga_tとを主たる演算パラメータとして目標タービン動力Lt_tを算出する。かかる場合詳しくは、インタークーラ逆モデルでは、実機データに基づいたマップ(図8)を用い、目標過給圧Pth_tに基づいて目標過給温Tth_tを算出する。そして、図5(インタークーラの圧力損失モデル)、図6(冷却効果モデル)の逆モデルを用いて逆算式を組み立てることにより、目標過給圧Pth_t(目標スロットル上流圧)、目標過給温Tth_t(目標スロットル上流温)やその他目標空気量Ga_t、外気温Ta(コンプレッサ上流温)、大気圧Pa(コンプレッサ上流圧)に基づいて目標コンプレッサ下流圧Pc_out_tを算出する。
【0072】
次に、コンプレッサの逆モデルでは、次の式(12)を用い、目標コンプレッサ下流圧Pc_out_t、目標空気量Ga_t、外気温Ta、大気圧Paから目標過給エネルギーWc_tを算出する。ここで、caは空気の比熱、κaは空気の比熱比である。
【0073】
【数12】
更に、目標過給エネルギーWc_tをパラメータとして図9に示す効率マップからコンプレッサ効率ηc_tを算出すると共に、次の式(13)により目標コンプレッサ動力Lc_tを算出する。
【0074】
【数13】
また、シャフトの逆モデルでは、次の式(14)を用い、目標コンプレッサ動力Lc_tを目標タービン動力Lt_tに変換する。ηtは動力変換効率である。
【0075】
【数14】
なお、目標タービン動力算出部81において、タービンイナーシャ逆モデル(タービンのイナーシャの1次遅れの逆モデル)を追加しても良い。このタービンイナーシャ逆モデルの追加により、目標タービン動力の算出精度向上が可能となる。
【0076】
また、実タービン動力算出部82では、上述したターボモデルの計算順と同様に、排気管モデル、タービンモデル(順モデル)を介して排気による実タービン動力Lt_rを算出する。すなわち、排気管モデルにて算出したエンジン10の排気パラメータ(排気流量mg、タービン上流圧Ptb_in、タービン下流圧Ptb_out、タービン上流温Ttb_in、タービン断熱効率ηg)から上述の式(1)を用いて実タービン動力Lt_rを算出する。
【0077】
動力差算出部83では、上記の如く算出した目標タービン動力Lt_tと実タービン動力Lt_rとの動力差を算出し(動力差=Lt_t−Lt_r)、その動力差から要求アシスト動力Waを算出する。そして、この要求アシスト動力Waに対して上限ガード等が適宜施され、その後、アシスト動力信号(モータ指令値)がモータECU60に出力される。
【0078】
次に、エンジンECU50による目標スロットル開度及びアシスト動力の算出処理の流れを図10〜図15のフローチャートに基づいて説明する。図10は、ベースルーチンを示すフローチャートであり、本ルーチンはエンジンECU50により例えば4msec毎に実行される。そして、図10のベースルーチンにおいて、図11〜図15のサブルーチンが適宜実行される。なお以下に説明する処理の流れは、基本的に前記図2の制御ブロック図に準ずるものであり、重複する説明については一部簡略化する。
【0079】
図10に示すように、ベースルーチンは、目標スロットル開度算出ルーチン(ステップS100)、アシスト動力算出ルーチン(ステップS200)を有してなり、図11に目標スロットル開度算出ルーチンの詳細を、図12にアシスト動力算出ルーチンの詳細を示している。
【0080】
図11に示す目標スロットル開度算出ルーチンでは、先ずアクセル開度の検出値を読み込み(ステップS101)、次にアクセル開度とエンジン回転速度とに基づいて目標トルクを算出する(ステップS102)。また、目標トルクとエンジン回転速度とに基づいて目標空気量を算出すると共に(ステップS103)、目標空気量とエンジン回転速度とに基づいて目標吸気圧(目標スロットル下流圧)、目標過給圧(目標スロットル上流圧)を算出する(ステップS104,S105)。そして最後に、目標空気量、目標吸気圧、目標過給圧、実過給圧及びスロットル通過吸気温に基づいて目標スロットル開度を算出する(ステップS106)。
【0081】
また、図12に示すアシスト動力算出ルーチンでは、先ず、後述する図13のサブルーチンを用い、ターボモデルの逆モデルに基づいて目標タービン動力を算出し(ステップS210)、次に、後述する図14のサブルーチンを用い、同ターボモデルの順モデルに基づいて実タービン動力を算出する(ステップS220)。また、目標タービン動力から実タービン動力を減算して動力差を算出する(ステップS230)。そして、後述する図15のサブルーチンを用い、動力アシストの実施の可否を判定する(ステップS240)。
【0082】
ここで、図13に示す目標タービン動力の算出サブルーチンでは、目標過給圧と目標空気量とを読み込み(ステップS211)、続いて例えば図8の関係を用い目標過給圧に基づいて目標過給温を算出する(ステップS212)。その後、インタークーラの逆モデルを用い、インタークーラでの圧力損失と冷却効果とを考慮しつつ目標コンプレッサ下流圧を算出する(ステップS213,S214)。また、コンプレッサの逆モデルを用いて目標過給エネルギーを算出すると共に、例えば図9の関係を用いてコンプレッサ効率を算出する(ステップS215,S216)。そして、目標過給エネルギーとコンプレッサ効率とから目標コンプレッサ動力を算出し(ステップS217)、更にシャフトの逆モデルを用いて目標タービン動力を算出する(ステップS218)。
【0083】
次に、図14に示す実タービン動力の算出サブルーチンは、排気管モデル部とタービンモデル部とからなり、排気管モデル部では、エアフロメータ41による空気量計測時からタービンでの排気流量として反映されるまでの遅れ等を考慮して排気流量を算出すると共に(ステップS221)、その排気流量に基づいて排気特性(タービン上流及び下流の圧力と温度)を算出する(ステップS222)。そして、タービンモデル部では、タービン断熱効率ηgを算出すると共に(ステップS223)、排気流量、排気圧力、排気温度等の排気パラメータとタービン断熱効率ηgとに基づいて実タービン動力を算出する(ステップS224)。
【0084】
次に、図15に示すアシスト判定ルーチンでは、前記図12のステップS230で算出した動力差に基づいてアシスト動力Waを算出する(ステップS241)。このとき、モータ特性やモータ温度に基づく上限ガードが適宜施されてアシスト動力Waが算出される。そしてその後、アシスト動力Waが所定値Wa_thよりも大きいか否かを判定し(ステップS242)、Wa>Wa_thであればアシスト許可フラグFaに1を、Wa≦Wa_thであればアシスト許可フラグFaに0をセットする(ステップS243,S244)。これにより、Wa>Wa_thの場合(アシスト許可フラグFa=1の場合)にモータ34による動力アシストが実行され、Wa≦Wa_thの場合(アシスト許可フラグFa=0の場合)にモータ34による動力アシストが停止される。
【0085】
図16は、本実施の形態におけるアシスト制御を用いた場合の各種挙動を示すタイムチャートである。なお図16では、比較対象として、加速要求時にアクセル要求を基にアシスト動力を付与するようにした従来技術を併記しており、その挙動を(b)〜(d)、(f)に一点鎖線にて示している。
【0086】
さて、(a)のようにアクセル開度が変化し加速が開始されると、(b)、(c)のように加速要求に応じてトルクと過給圧の目標値が増加する。また、(e)のように目標タービン動力が増加し、実タービン動力は目標タービン動力に対して遅れて立ち上がる。かかる場合、目標タービン動力と実タービン動力との動力差((e)の斜線部分)が算出されると共に、この動力差がモータ34のアシスト動力とされる。このようにアシスト制御を実施することにより、実際のトルクと過給圧が目標値に追従するように増加し、加速性の向上が実現される。そしてその後、実タービン動力が目標タービン動力に対して十分増加すると、アシスト動力が0とされ、モータ34による動力アシストが停止される。また、スロットル開度も定常値に落ち着く。
【0087】
またこのとき、スロットル開度は、目標吸気圧と実過給圧との圧力比(=目標吸気圧/実過給圧、スロットル下流圧と上流圧の比に相当)、及び目標空気量から算出されるようになっており、過渡時の実過給圧が定常値よりも低い場合は圧力比が定常値よりも小さくなるために、過給圧の不足分を補うためにスロットル開度が大きくされ、加速性能(過渡応答性)の向上が図られる。また、実過給圧が定常値に近づくと、スロットル開度も自動的に定常状態の値に収束する。
【0088】
因みに、従来制御では、目標タービン動力と実タービン動力との比較などは行われず、アクセル開度やその増加率を基にアシスト動力が算出される。そのためアシスト動力はほぼアクセル要求に連動したものとなり、このアシスト動力では十分な加速性が得られない上に、過給圧の増加に伴いアシスト動力を減少させていくような手段はなく、実質上不要なアシスト動力が付与された状態が継続される。また、スロットル開度に関しては、開度速度の制御を行うものはあるものの(d)の一点鎖線に示すようにスロットル開度をオーバーシュートさせて加速性を向上させるというような制御はなくアクセル開度に連動するのみである。従って、(b)の一点鎖線に示すようにトルクの立ち上がりは遅く過渡特性の十分な向上が得られない上に、(c)の点線で示すように過給圧のオーバーシュートの危険性もあった。
【0089】
以上詳述した本実施の形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0090】
ターボチャージャ30において目標タービン動力と実タービン動力との動力差に基づいてアシスト動力を算出し、該算出したアシスト動力によりモータ34の動力アシストを制御するようにしたため、目標タービン動力に対する不足分をアシスト量として、無駄の無い効率的なアシスト制御を実施することができる。また、動力の比較によりアシスト動力を算出するため、過給圧等、他のパラメータを用いてアシスト動力を算出する場合よりも直接的で且つ応答性に優れたアシスト制御が可能となる。以上により、シャフト33に付設したモータ34による動力アシストを適正に制御することができ、ひいては燃費の向上やドライバビリティの改善等を図ることができる。
【0091】
また、エンジンのトルク制御(空気量制御)に用いる目標空気量に基づいて目標タービン動力を算出するようにしたため、スロットルバルブ14(空気量調整手段)とモータ34(動力アシスト装置)とが連携して制御されることとなり、トルク制御の精度が向上する。従って、エンジン出力の過不足等が解消され、ドライバビリティの更なる改善が可能となる。
【0092】
ターボチャージャ30における動力の流れを表した物理モデルである電動ターボモデルM10を用い、同ターボモデルの逆モデル(インタークーラ、コンプレッサ、シャフトの各逆モデル)により目標タービン動力を算出すると共に、同ターボモデルの順モデル(タービンの順モデル)により実タービン動力を算出するようにしたため、目標タービン動力や実タービン動力を精度良く算出することができ、動力アシスト制御の精度向上が可能となる。
【0093】
なお、本発明は上記実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施しても良い。
【0094】
上記実施の形態では、目標過給圧と目標空気量とに基づいて目標タービン動力を算出したが(図2参照)、目標空気量に代えて実空気量を用い、目標過給圧と実空気量に基づいて目標タービン動力を算出しても良い。すなわちこの場合、図2に示す制御ブロック図において、目標タービン動力算出部81には、目標過給圧と実空気量が入力される。実空気量は、実際にコンプレッサインペラを通過する空気量(実コンプレッサ通過空気量)であり、エアフロメータ41の検出値を基に算出されればよい。但しその他、適合等に基づき予め作成したマップを用い、その都度のエンジン運転条件に基づいて実空気量を推定したり、モデルを用いて実空気量を推定したりすることも可能である。
【0095】
図17は、実空気量を用いて目標タービン動力を算出した場合における制御の挙動を示すタイムチャートである。なお図17の(b)〜(d)には、比較のために、目標空気量を用いた場合の目標タービン動力、アシスト動力、スロットル開度の挙動(上記実施の形態での制御の挙動)を一点鎖線で示している。
【0096】
図17において、(a)のように実空気量は目標空気量に対して遅れて変化する。そのため、実空気量を基に目標タービン動力を算出する場合には、目標空気量を基に目標タービン動力を算出する場合に比べて目標タービン動力と実タービン動力との動力差が小さくなる(図17の(b))。従って、動力差が小さくなった分、アシスト動力が小さくなり、動力アシスト時のエネルギー消費(モータ駆動によるバッテリ電力の消費量)を低減することができる。なお、アシスト動力が低減される分は、空気量制御による空気量増量分で補われ、加速性能(過給特性)が確保される。
【0097】
上記実施の形態では、ターボチャージャ30の目標タービン動力と実タービン動力との動力差を算出し、その動力差に基づいてモータアシスト量を算出したが、この構成を変更し、ターボチャージャ30の目標コンプレッサ動力と実コンプレッサ動力との動力差を算出し、その動力差に基づいてモータアシスト量を算出するようにしても良い。
【0098】
上記実施の形態では、モータ34によるアシスト量としてアシスト動力を算出し、そのアシスト動力を実現するようにモータ34を駆動したが、これに代えて、同アシスト量としてタービン回転数を算出し、そのタービン回転数を実現するようにモータ34の駆動を制御する構成としても良い。
【0099】
上記実施の形態では、アシスト制御部80におけるタービン動力(目標タービン動力、実タービン動力)の算出を電動ターボモデルを用いて行ったが、他の手法に変更しても良い。例えば、マップ演算により目標タービン動力や実タービン動力を算出するようにしても良い。
【0100】
上記実施の形態では、トルクベース制御部70(図2)において、目標トルクから算出した目標空気量に基づいて目標過給圧を算出したが、これに代えて、目標トルクから直接目標過給圧を算出するようにしても良い。
【0101】
上記実施の形態では、過給圧センサ12により検出した検出値から実過給圧を求め、この実過給圧を用いて目標スロットル開度を算出したが、これを変更し、推定演算により実過給圧を求め、この推定値を用いて目標スロットル開度を算出しても良い。具体的には、前記図4で説明したターボモデルを用い、当該モデルの出力として得られる過給圧を実過給圧の推定値とすると良い。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】発明の実施の形態におけるエンジン制御システムの概略を示す構成図である。
【図2】エンジンECUの機能を説明するための制御ブロック図である。
【図3】電動ターボチャージャのアシスト制御の概要を示すタイムチャートである。
【図4】電動ターボモデルを示す制御ブロック図である。
【図5】インタークーラモデルの圧力損失モデルを示す図である。
【図6】インタークーラモデルの冷却効果モデルを示す図である。
【図7】アシスト制御部における目標タービン動力算出部、実タービン動力算出部の詳細を示す制御ブロック図である。
【図8】過給圧と過給温との関係を示す図である。
【図9】過給エネルギーとコンプレッサ効率との関係を示す図である。
【図10】エンジンECUによるベースルーチンを示すフローチャートである。
【図11】目標スロットル開度の算出ルーチンを示すフローチャートである。
【図12】アシスト動力の算出ルーチンを示すフローチャートである。
【図13】目標タービン動力の算出ルーチンを示すフローチャートである。
【図14】実タービン動力の算出ルーチンを示すフローチャートである。
【図15】アシスト判定ルーチンを示すフローチャートである。
【図16】実施の形態におけるアシスト制御時の各種挙動を示すタイムチャートである。
【図17】別の形態におけるアシスト制御時の各種挙動を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0103】
10…エンジン、11…吸気管、14…スロットルバルブ、24…排気管、30…ターボチャージャ、31…コンプレッサインペラ、32…タービンホイール、33…シャフト、34…モータ、37…インタークーラ、50…エンジンECU。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気動力により吸入空気を過給する過給機と、該過給機に取り付けられ過給機の動力を直接アシストする動力アシスト装置とを有する内燃機関に適用され、空気量調整手段により前記内燃機関への吸入空気量を調整することで当該内燃機関の出力トルクを制御する制御装置において、
空気量情報に基づいて前記過給機の目標動力を算出する目標動力算出手段と、
前記過給機の実動力を算出する実動力算出手段と、
前記過給機の目標動力と実動力とに基づいて前記動力アシスト装置によるアシスト量を算出するアシスト量算出手段と、
前記算出したアシスト量により前記動力アシスト装置を制御するアシスト制御手段と、
を備えたことを特徴とする過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項2】
運転者の要求に対応する目標トルクに基づいて目標空気量を算出する手段と、該算出した目標空気量に基づいて前記空気量調整手段による空気量制御を実施する手段とを更に備え、
前記目標動力算出手段は、前記目標空気量に基づいて前記過給機の目標動力を算出することを特徴とする請求項1に記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項3】
運転者の要求に対応する目標トルクに基づいて目標空気量を算出する手段と、該算出した目標空気量に基づいて前記空気量調整手段による空気量制御を実施する手段と、前記空気量調整手段による空気量制御に際し吸気通路を実際に流れる実空気量を推定又は計測により求める手段を更に備え、
前記目標動力算出手段は、前記実空気量に基づいて前記過給機の目標動力を算出することを特徴とする請求項1に記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記目標トルクに基づいて目標過給圧を算出する手段を備え、
前記目標動力算出手段は、前記目標過給圧を演算パラメータに加え前記空気量情報と前記目標過給圧とに基づいて前記過給機の目標動力を算出することを特徴とする請求項2又は3に記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項5】
排気動力により吸入空気を過給する過給機と、該過給機に取り付けられ過給機の動力を直接アシストする動力アシスト装置とを有する内燃機関に適用され、
内燃機関の運転状態に基づいて前記過給機の目標動力を算出する目標動力算出手段と、
前記過給機の実動力を算出する実動力算出手段と、
前記過給機の目標動力と実動力とに基づいて前記動力アシスト装置によるアシスト量を算出するアシスト量算出手段と、
前記算出したアシスト量により前記動力アシスト装置を制御するアシスト制御手段と、
を備えたことを特徴とする過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記内燃機関から排出される排気に関する排気パラメータを推定又は計測により取得する手段を備え、
前記実動力算出手段は、前記排気パラメータに基づいて前記過給機の実動力を算出することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記過給機として、排気動力により回転するタービンホイールと、該タービンホイールにシャフトを介して連結されたコンプレッサインペラとを有するターボチャージャを用いると共に、前記動力アシスト装置として前記シャフトに電動機を付設し、コンプレッサインペラの回転により吸入空気を圧縮して過給を行う内燃機関に適用される制御装置であって、
前記タービンホイールから前記コンプレッサインペラに至る動力の流れを前記ターボチャージャの構成要素毎にモデル化して表したターボモデルを用い、
前記実動力算出手段は、前記ターボモデルのうち少なくとも前記タービンホイールをモデル化したタービンモデルにより前記過給機の実動力を算出し、
前記目標動力算出手段は、前記ターボモデルのうち少なくとも前記コンプレッサインペラをモデル化したコンプレッサモデルにより前記過給機の目標動力を算出することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項8】
前記実動力算出手段は、排気情報を入力パラメータとして前記ターボモデルの順方向の計算により前記過給機の実動力を算出し、前記目標動力算出手段は、過給圧情報と吸気情報とを入力パラメータとして前記ターボモデルの逆方向の計算により前記過給機の目標動力を算出することを特徴とする請求項7に記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項1】
排気動力により吸入空気を過給する過給機と、該過給機に取り付けられ過給機の動力を直接アシストする動力アシスト装置とを有する内燃機関に適用され、空気量調整手段により前記内燃機関への吸入空気量を調整することで当該内燃機関の出力トルクを制御する制御装置において、
空気量情報に基づいて前記過給機の目標動力を算出する目標動力算出手段と、
前記過給機の実動力を算出する実動力算出手段と、
前記過給機の目標動力と実動力とに基づいて前記動力アシスト装置によるアシスト量を算出するアシスト量算出手段と、
前記算出したアシスト量により前記動力アシスト装置を制御するアシスト制御手段と、
を備えたことを特徴とする過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項2】
運転者の要求に対応する目標トルクに基づいて目標空気量を算出する手段と、該算出した目標空気量に基づいて前記空気量調整手段による空気量制御を実施する手段とを更に備え、
前記目標動力算出手段は、前記目標空気量に基づいて前記過給機の目標動力を算出することを特徴とする請求項1に記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項3】
運転者の要求に対応する目標トルクに基づいて目標空気量を算出する手段と、該算出した目標空気量に基づいて前記空気量調整手段による空気量制御を実施する手段と、前記空気量調整手段による空気量制御に際し吸気通路を実際に流れる実空気量を推定又は計測により求める手段を更に備え、
前記目標動力算出手段は、前記実空気量に基づいて前記過給機の目標動力を算出することを特徴とする請求項1に記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記目標トルクに基づいて目標過給圧を算出する手段を備え、
前記目標動力算出手段は、前記目標過給圧を演算パラメータに加え前記空気量情報と前記目標過給圧とに基づいて前記過給機の目標動力を算出することを特徴とする請求項2又は3に記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項5】
排気動力により吸入空気を過給する過給機と、該過給機に取り付けられ過給機の動力を直接アシストする動力アシスト装置とを有する内燃機関に適用され、
内燃機関の運転状態に基づいて前記過給機の目標動力を算出する目標動力算出手段と、
前記過給機の実動力を算出する実動力算出手段と、
前記過給機の目標動力と実動力とに基づいて前記動力アシスト装置によるアシスト量を算出するアシスト量算出手段と、
前記算出したアシスト量により前記動力アシスト装置を制御するアシスト制御手段と、
を備えたことを特徴とする過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記内燃機関から排出される排気に関する排気パラメータを推定又は計測により取得する手段を備え、
前記実動力算出手段は、前記排気パラメータに基づいて前記過給機の実動力を算出することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記過給機として、排気動力により回転するタービンホイールと、該タービンホイールにシャフトを介して連結されたコンプレッサインペラとを有するターボチャージャを用いると共に、前記動力アシスト装置として前記シャフトに電動機を付設し、コンプレッサインペラの回転により吸入空気を圧縮して過給を行う内燃機関に適用される制御装置であって、
前記タービンホイールから前記コンプレッサインペラに至る動力の流れを前記ターボチャージャの構成要素毎にモデル化して表したターボモデルを用い、
前記実動力算出手段は、前記ターボモデルのうち少なくとも前記タービンホイールをモデル化したタービンモデルにより前記過給機の実動力を算出し、
前記目標動力算出手段は、前記ターボモデルのうち少なくとも前記コンプレッサインペラをモデル化したコンプレッサモデルにより前記過給機の目標動力を算出することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項8】
前記実動力算出手段は、排気情報を入力パラメータとして前記ターボモデルの順方向の計算により前記過給機の実動力を算出し、前記目標動力算出手段は、過給圧情報と吸気情報とを入力パラメータとして前記ターボモデルの逆方向の計算により前記過給機の目標動力を算出することを特徴とする請求項7に記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−242062(P2006−242062A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−57568(P2005−57568)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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