説明

過給装置

本発明は、特に内燃機関(10)に過給するための過給装置(20)に関する。内燃機関(10)の排気通路(12)内に、作動媒体のサイクル(54)の少なくとも1つの熱交換器(18)が収納されている。少なくとも1つの排気熱交換器(18)の上流に、作動媒体のサイクル(54)内に圧送アセンブリ(36)が接続されている。作動媒体のサイクル(54)は、少なくとも1つのタービン部(22)を含み、少なくとも1つのタービン部(22)を介して、内燃機関(10)の吸気通路(14)内に配置された少なくとも1つのコンプレッサ部(24)が駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の出力は、内燃機関の個々のシリンダ内での燃焼行程に必要な空気量を増加することによって、高めることが可能である。内燃機関のシリンダに運ばれる空気量の増加は、2つの異なる構想によって実現される。一方では、駆動のために内燃機関の排気に残るエンタルピーを利用する排気ターボチャージャ、を使用することが可能である。他方では、内燃機関のクランクシャフトによって直接駆動されるコンプレッサ、を使用することが可能である。
【0003】
排気ターボチャージャとしての性質を有する内燃機関のための過給装置は、少なくとも1つの排気タービン部を含んでいる。これは、過給される内燃機関の排気流にさらされ、これを介して駆動される。排気ターボチャージャのタービン部は、シャフトを介して、内燃機関の吸気通路内に配置されているコンプレッサ部と接続されている。タービン部は、内燃機関の排気流によって回転させられ、その結果コンプレッサ部を駆動する。コンプレッサ部は、内燃機関の吸気通路内の圧力を高めるので、内燃機関の吸気通路では、自然吸気エンジンのシリンダ内に達する空気量に比較して、より大きい燃焼のために必要な空気量がシリンダに到達する。従って、この形態で過給される内燃機関の場合、内燃機関のシリンダごとに、適切により大きい燃料量を燃焼するためのより多くの酸素が提供される。従って、一方では、内燃機関のミディアムプレッシャ、及び、内燃機関のトルクが上がる。これは、内燃機関の出力向上を意味する。
【0004】
代替的なコンセプトの場合、すなわちコンプレッサを使用する場合には、スーパーチャージャーに相当するコンプレッサを駆動するために必要なエネルギーが、機械的エネルギーとして、内燃機関のクランクシャフトによって伝達される。排気ターボチャージャとして構成される過給装置の場合には、排気に含まれるエンタルピーが内燃機関の性能向上のために利用される一方、コンプレッサを利用する場合には、コンプレッサは過給される内燃機関のクランクシャフトによって直接駆動される。すなわち、コンプレッサに対して出力される機械的エネルギーは、車両のドライブトレインのための駆動出力としては、もはや提供されないことを意味する。
【0005】
排気ターボチャージャとしての性質を有する過給装置の場合、排気通路内の排気カウンタプレッシャーが、過給装置のタービン部によって高められる。排気カウンタプレッシャーの上昇によって、著しいエンジン出力の損失が生じる。代替案、すなわち、コンプレッサの駆動においては、内燃機関から分岐される機械的エネルギーによって、内燃機関の効率、及び、内燃機関により出力される有効出力が悪化する。
【0006】
「車両エンジンとスポーツ(Auto Motor und Sport)」、第10巻、26ページ(2005)には、論文「性能向上のために廃熱を利用するBMW4気筒エンジン − タービン付きエンジン(BMW-Vierzylinder nutzt Abwaerme fuer Leistungssteigerung−Moter mit Turbine)」が開示されている。本論文によれば、内燃機関は、燃料に含まれるエネルギーの約3分の2を廃熱に変換する。廃熱は、内燃機関の冷却システムによって取り込まれるか、又は、内燃機関の排気通路を通して排出される。従来では利用されない廃熱が、15%まで効率を高めるために内燃機関で利用可能である。そのために、1、8Lの4気筒エンジンは、1、8Lの4気筒エンジンのクランクシャフトに対して作用する、2段に構成された蒸気タービンと接続される。過熱蒸気は、内燃機関の排気ライン内の排気パイプの近傍に収納されている熱交換器によって生成される。水循環によって、内燃機関の冷却サイクルから、冷却液が分岐する。クランクシャフトの駆動によって、出力及びトルクが高められるか、又は、特別な電力消費量が下げられることが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、エネルギー消費を削減することが可能な過給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に基づいて、排気ラインに組み込まれた排気熱交換器によって、内燃機関内で発生する排気を導くことが提案される。排気熱交換器は、コンプレッサを駆動する役目を果たす。これに関連して、排気ターボチャージャの場合に使用されるタービン部の代わりに蒸気タービンを含む、内燃機関のための過給装置が創出される。蒸気タービンによって、内燃機関に過給するための過給装置のコンプレッサ・ホイールを駆動することが可能である。そのために必要な蒸気は、内燃機関の排気通路内に配置されている排気熱交換器内で生成される。排気ターボチャージャ等のタービン部が存在しないので、これに対応して排気カウンタプレッシャーが下がる。さらに、本発明に基づき提案された解決によって、少なくとも1つの蒸気タービン部を使用して消費削減が達成される。すなわち、排気カウンタプレッシャーが下がるので、内燃機関のガス交換のために必要な動作又は内燃機関のガス交換のために行なわれる動作が削減されるからである。さらに、有利な方法で、本発明に基づき提案された解決によって、排気ターボチャージャとして構成される過給装置の場合には、従来「ターボラグ」が生じるために行なわれていない内燃機関のより迅速な応答が実現される。さらに、本発明に基づき提案される解決により、車両での発電のためにより小さな発電機を使用することができるか、又は、理想的な場合にはこれを完全に省略することが達成される。
【0009】
本発明に基づき提案される提案によれば、蒸気は、少なくとも1つの排気熱交換器内で生成され、そこからタービンを通って流れる。タービンでは、蒸気が膨張し、機械的な動作が行なわれ、蒸気の気温が下がる。引き続いて、膨張された蒸気は、熱交換器内で凝縮し、ポンプによって再び排気熱交換器内へと送り返される。このポンプは、タービンによって機械的に駆動される。追加的に、このポンプは、内燃機関の始動時に内燃機関の電池から供給される電気機械と接続されている。これは、システム内で十分な蒸気圧が形成され、その結果閉システム内部で循環が生じるまで、行なわれる。駆動中に、電気機械は、例えば制御可能な発電機として駆動される。制御可能な発電機を介して、過給装置の出力制御が行なわれる。この駆動状態において、ドライブトレイン内も含めて、必要とされるより多くのエネルギーが存在する場合に、電気機械は、車両の電気系統に電力を供給し、内燃機関に設けられている発電機に対する負荷を軽減する。従って、排気ライン内で利用可能ではないエネルギーを、電力として車両の電気系統に供給することが可能である。場合によっては、対応する構成において、従来内燃機関で使用される発電機を完全に省略することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】内燃機関の、蒸気タービンにより駆動されている過給装置ためのサイクル図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、以下、添付の図を用いてより詳細に記載される。
図には、内燃機関10が示されている。内燃機関10の吸入(インレット)側は符号46で示され、内燃機関の排気(アウトレット)側は符号48で識別される。内燃機関10のアウトレット側48から、排気通路12が延びている。排気通路12内には、排気マニフォールド16が配置されている。排気マニフォールド16を介して、内燃機関10の大量の排気流が、少なくとも1つの触媒コンバータ、及び、少なくとも1つのマフラーを介して戸外(外部)へと導かれる。内燃機関10の排気通路12内には、少なくとも1つの排気熱交換器18が存在する。
【0012】
少なくとも1つの排気熱交換器18は、符号54で識別される蒸気サイクルの構成要素である。蒸気サイクル54の構成要素は、図では破線で強調されており、循環している様子が示されている。4気筒エンジンとして図に示される内燃機関10の吸入側46には、吸入通路14が存在する。吸入通路14内には、過給装置20のコンプレッサ部24が配置されている。コンプレッサ部24の上流にはエアフィルタ28が接続され、コンプレッサ部24の下流には吸気冷却器30が接続されている。吸入空気は、エアフィルタ28を介して内燃機関10の吸入通路14内に達し、コンレッサ部24によって圧縮され、予備圧縮された吸入空気として吸気冷却器30に供給される。予備圧縮され吸気冷却器内で冷やされた空気は、そこから、過給される内燃機関10の個々のシリンダへと導入される。
【0013】
破線で強調された、水等の作動媒体のサイクル54は、排気通路12内に配置されている少なくとも1つの熱交換器18の他に、タービン部22を含んでいる。熱交換器18内で生成された過熱蒸気は、タービン部22内で減圧される。過給装置20のタービン部22の下流に向かって、ラインが水等の作動媒体のサイクル54内で走っている。サイクル54内では、凝縮状態において気相52の状態にある蒸気が、補助冷却器32へと流入する。補助冷却器32は、復水器に相当する。水等の循環する作動媒体は、液相50の状態で復水器を出て、液相50の状態で、ポンプの形態をした圧送アセンブリ36へと流入する。ポンプ36によって、液体の凝縮状態50にある作動媒体が圧送され、内燃機関の排気通路12内の少なくとも1つの熱交換器18へと導入される。排気に内在する熱によって、液相50の状態で少なくとも1つの排気熱交換器18に入る作動媒体の気化、及び、気相52への作動媒体の転換が行なわれる。作動媒体は蒸気として、少なくとも1つの熱交換器18を出て、既に言及した過給装置20のタービン部22へと流れ込む。
【0014】
図の記載から、過給装置20がカップリング26を有することが分かる。カップリング26は、少なくとも1つのタービン部22と、過給される内燃機関10の吸入通路14内に配置されているコンプレッサ24と、を機械的に接続する。図で太く記載されたカップリング26の代わりに、少なくとも1つの排気熱交換器18内で生成された蒸気が内部で減圧される少なくとも1つのタービン部22と、過給装置20のコンプレッサ部24との間に、1つ又は複数のクラッチを備えるカップリングが設けられてもよい。さらに、過給装置20のタービン部22は、駆動軸42を介して圧送アセンブリ36と接続されている。作動媒体は、圧送アセンブリ36を介して圧縮され、少なくとも1つの排気熱交換器18へと送り込まれる。
【0015】
さらに、直接的にタービン部22のタービン軸と接続されるか、又は、間接的に圧送アセンブリ36を介して駆動されることにより、駆動軸44が、過給装置20のタービン部22から電気機械38へと延びている。電気機械38においては、特に、発電機モード及びエンジン駆動モードで駆動可能な機械が関わっている。
【0016】
過給される内燃機関10の起動時に、電気機械38は、作動媒体のサイクル54内で十分な蒸気圧が形成され作動媒体のサイクル54内部で循環が始まるまで、車両電池等のエネルギー貯蔵部40を介して供給される。電気機械38は、制御可能な発電機として駆動される。制御可能な発電機を介して、過給装置20の圧送出力制御が実現される。電気機械が例えば発電機モードで駆動される場合には、過給装置20での過給圧が下がる。しかし、電気機械38がエンジンモードで駆動される場合には、過給装置20では過給圧の上昇が達成される。
【0017】
作動媒体のサイクル54の駆動中に、電気機械38は、車両の電気系統に電力を供給し、従って、内燃機関10に設けられている発電機の負荷を軽減する。電気機械38の構成に従って、内燃機関10に割り当てられた発電機は、基本的により小さい寸法が定められるか又は完全に省略することが可能である。発電機モードで駆動可能な電気機械38によって、内燃機関10の排気マニフォールド内では、利用されていない過剰なエネルギーが電力に変換され、車両の電気系統へと供給されることが可能である。
【0018】
電気機械38は、圧送アセンブリと相互接続されて駆動軸44を介して、又は、図示されていない駆動軸を直接的に介して、過給装置20のタービン部22によって駆動されており、かつ、過給装置20の出力制御の役目を果たすので、電気機械38の対応する構成において、過給される内燃機関10で本来なら使用される発電機を省略することが可能である。
【0019】
図の記載から、作動媒体のサイクル54は、基本的に、少なくとも1つの排気熱交換器18、過給装置20のタービン部22、補助冷却機32、及び圧送アセンブリ36を含むことが分かる。さらに、従来技術で公知の解決に比較して、少なくとも1つの排気熱交換器18により伝達された過熱蒸気が当たりこれを膨張させる過給装置20のタービン部22は、過給される内燃機関10のクランクシャフトに対して直接的に作用する代わりに、内燃機関14の吸気通路内に収容された単段式又は多段式で構成可能な過給装置20のコンプレッサ部24を駆動することが、図の記載から分かる。これに加えて、コンプレッサ部22の機械的な出力が、圧送アセンブリ36を駆動するため、及び、発電機駆動モードで電気機械38を駆動するために分配される。このことは、本来なら排気ターボチャージャの排気通路12に設けられるタービンの省略により、過給される内燃機関10のガス交換動作の削減を許容し、従って、排気カウンタプレッシャーを下げることができる。さらに、内燃機関に設けられている発電機の大きさをより小さく定めること、又は、これを省略することを許容する。
【0020】
図示されている排気熱交換器18の代わりに、生成される蒸気量を作動媒体のサイクル54内で増加させるために、提供される設置空間に従って、過給される内燃機関10の排気通路12内に、1つ又は複数の更なる別の排気熱交換器18を収容することが可能である。作動媒体のサイクル54内に設けられている圧送アセンブリ36の代わりに、更なる別のポンプの形態による更なる別の圧送アセンブリが設けられることも可能である。図に示される過給装置20は、コンプレッサ部24と、過熱蒸気が当たるタービン部22と、を含んでいる。タービン部22内では、過熱蒸気が膨張される。図に単段式で示される過給装置20の代わりに、これは、二段式又は多段式であってもよい。さらに、高圧段が低圧段を制御するか又は低圧段が高圧段を制御するレジスタ過給装置(Register-Aufladeeinrichtung)として、過給装置20を構成することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(10)の排気通路(12)内に作動媒体のサイクル(54)の少なくとも1つの排気熱交換器(18)が収納され、前記少なくとも1つの排気熱交換器(18)の上流における前記作動媒体の前記サイクル(54)内に圧送アセンブリ(36)が接続されている、特に内燃機関に過給するための過給装置(20)において、
前記作動媒体の前記サイクル(54)は、少なくとも1つのタービン部(22)を含み、
前記内燃機関(10)の吸気通路(14)内に配置された少なくとも1つのコンプレッサ部(24)が、前記少なくとも1つのタービン部(22)を介して駆動させられることを特徴とする、特に内燃機関(10)に過給するための過給装置(20)。
【請求項2】
前記過給装置(20)の前記少なくとも1つのタービン部(22)は、カップリング(26)を介して前記少なくとも1つのコンプレッサ部(24)と接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の過給装置(20)。
【請求項3】
前記過給装置(20)の前記少なくとも1つのタービン部(22)は、少なくとも1つの圧送アセンブリ(36)、特にポンプと接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の過給装置(20)。
【請求項4】
前記過給装置(20)の前記少なくとも1つのタービン部(22)は、カップリング(42、44)を介して間接的又は直接的に、少なくとも発電機モードで駆動可能な少なくとも1つの電気機械(38)と接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の過給装置(20)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのタービン部(22)の下流における前記作動媒体の前記サイクル(54)は、蒸気凝縮のための少なくとも1つの補助冷却器(32)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の過給装置(20)。
【請求項6】
前記作動媒体の前記サイクル(54)の前記少なくとも1つのタービン部(22)は、クラッチを含むカップリング(26)を介して、前記内燃機関(10)の前記吸気通路(14)内の前記コンプレッサ部(24)と接続されていることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか、又は、請求項1〜請求項5の複数に記載の過給装置(20)。
【請求項7】
前記作動媒体の前記サイクル(54)内の蒸気の循環の構造に従って、車両の電気系統は、前記過給装置(20)の前記少なくとも1つのタービン部(22)と間接的又は直接的に接続された前記電気機械(38)を介して供給されることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか、又は、請求項1〜請求項6の複数に記載の過給装置(20)。
【請求項8】
前記内燃機関(10)の前記吸気通路(14)内では、前記過給装置(20)の前記コンプレッサ部(24)の下流に、少なくとも1つの熱交換器(30)が吸気冷却器として配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の過給装置(20)。
【請求項9】
前記内燃機関(10)の前記吸気通路(14)内の過給圧が、前記電気機械(38)の駆動によって制御可能であることを特徴とする、請求項4に記載の過給装置(20)。
【請求項10】
前記過給圧は、発電機モードでの前記電気機械(38)の駆動時に降下させられる、又は、
前記過給圧は、エンジンモードでの前記電気機械の駆動時に上昇させられることを特徴とする、請求項9に記載の過給装置(20)。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2010−501785(P2010−501785A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526045(P2009−526045)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058612
【国際公開番号】WO2008/068060
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(501125231)ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (329)
【Fターム(参考)】