説明

過電流防止式電源装置及びそれを用いた照明器具

【課題】定電圧ユニットからの電圧を受けて駆動される定電流ユニットにより照明負荷を点灯する過電流防止式電源装置において、定電圧ユニットによる電圧供給開始後の定電流ユニットの起動に伴う過電流により定電圧ユニットの制御動作が停止することを防止する。
【解決手段】電源装置1は一定電圧を出力する定電圧ユニット2と、定電流ユニット3と、定電圧ユニット2による電圧供給開始後の経過時間を計測するタイマ4とを備える。タイマ4は、各ユニット2、3の動作開始までの時間を計測し、それそれの経過時間が予め定められた時間に達したとき、それぞれに動作開始信号Sb、Saを送る。この動作開始信号Sb、Saにより、定電圧ユニット2の定電圧制御動作前に定電流ユニット3の動作を開始させる。これにより、定電流ユニット3の動作開始の起動による過電流により、定電圧ユニット2の制御動作が停止されることを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過電流防止式電源装置とそれを用いた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、この種の電源装置を用いた照明器具の例を図12(例えば、特許文献1参照)に示す。この照明器具は、光源部である照明負荷11と点灯装置12からなり、点灯装置12は、整流回路部13と、PFC(力率改善)回路部(定電圧ユニットに相当)14と、電流出力部(定電流ユニットに相当)15と、調光回路部16とを備える。
【0003】
PFC回路部14は、チョークコイルL1、FETからなるスイッチング素子Q1、ソース抵抗R1、ダイオードD1、及びコンデンサC1から成る昇圧チョッパ回路と、PFC制御部17とからなり、定電圧を電流出力部15に出力する定電圧源となっている。
【0004】
電流出力部15は、スイッチング素子Q1、チョークコイルL3、ダイオードD2、及びコンデンサC2から成る降圧チョッパ回路と、電流検出用の抵抗R6と、電流制御部18とからなり、照明負荷11に定電流を出力する定電流源となっている。調光回路部16は調光制御部19によってスイッチング素子Q3を駆動し照明負荷11を調光する。
【0005】
上記照明器具においては、交流電源(AC)から給電されたPFC回路部14からの出力電圧を基に電流出力部15が定電流動作して一定電流を照明負荷に供給する。このとき、PFC回路部14と電流出力部15との動作状態が合わないと、起動時に流れる過電流によって、起動不良を起したり、ときにはPFC回路部14等の各回路素子にそれらの定格以上の電流、電圧のストレスが掛かり、回路素子が損傷する場合がある。
【0006】
以下にその動作を説明する。交流電源の投入直後は、PFC回路部14のコンデンサC1が充電されていないし、電流出力部15のコイルL3にも電流が流れていない。従って、交流電源(AC)の投入直後は、図13(a)に示すように、コンデンサC1の電圧Vは、時間t1で整流回路部13からの電圧V1により充電された後に、PCF制御部17が動作開始する時間t3から上昇が始まり、時間経過と共に、PFC制御部17で定める所望の電圧Voまで昇圧しようとする。電圧V1は、交流電源のピーク値電圧であり、AC100ボルト(V)の場合は、約141V程度である。
【0007】
電流制御部18は、抵抗R6による電流検出電圧を基に、電流出力部15の出力が所望の定格電流になるように制御する。このため、電流制御部18がコンデンサC1の電圧が低い領域において定電流制御を開始すると、ピーク値の大きい過電流を電源となるコンデンサC1から引き出すことになる。
【0008】
例えば、図13(b)に示すように、PFC回路部14が動作を開始しているときの時間tpで、電流出力部15が定電流動作が開始すると、そのピーク電流Ipeakによって、コンデンサC1から過電流が引き出され、PFC制御部17のフィードバック検出量が急激に大きくなって、制御の許容範囲を超えるようになる。このため、PFC制御部17の動作自体が機能せず異常状態となり、IC回路による異常検出機能等によってPFC回路部14のチョッパ回路動作が停止してしまう場合が生じる。また、このチョッパ回路動作の停止により、時間tp以降は再び電圧V1に戻って昇圧できなくなる。
【0009】
このとき、時間t4以降、電流出力部15への入力供給電圧が電圧V1に固定されてしまい、本来なら定格の電流値Io2に低減させたいにも拘らず、高い電流Io1を維持したままとなり、各素子へのストレスが大きくなる。そのため、IC回路等の異常検出機能により電流出力部15そのものを強制的に停止させることができるが、点線で示すように、出力電流Iがゼロに低下するので照明負荷11を点灯できなくなる。
【0010】
特に、PFC制御の場合は、突入電流を防止するために、コンデンサC1への充電を徐々に行うソフトスタート機能などが採用される場合が多いため、電流出力部15が充電途中などに、より低電圧で起動し、過電流が発生し易くなる。
【0011】
また、点灯装置が交流電源、整流回路部13、及びPFC回路部14からなる定電圧ユニットと、電流出力部15及び調光回路部16からなる定電流ユニットとに分かれて接続されるような場合には、定電流ユニット内の各制御回路用電源は、定電圧ユニットの出力電圧を利用して形成される。このとき、起動のシーケンスがPFC制御部17、電流制御部18の順となり、上記のピーク電流による定電圧動作停止等の問題が顕著になる。
【0012】
また、定電圧ユニットと定電流ユニットが別々の場合に、1つの定電圧ユニットに複数の定電流ユニットが接続される場合は、コンデンサC1から流れる過電流が更に増大することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−80995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記問題を解消するもので、定電圧ユニットからの電圧を受けて駆動される定電流ユニットにより照明負荷を点灯する過電流防止式電源装置において、定電圧ユニットによる電圧供給開始後の定電流ユニットの起動に伴う過電流により定電圧ユニットの制御動作が停止されることを防止する過電流防止式電源装置及び照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明の過電流防止式電源装置は、一定電圧を出力する定電圧ユニットと、前記定電圧ユニットからの電圧を受けて駆動される定電流ユニットと、前記定電圧ユニットによる電圧供給開始後の経過時間を計測するためのタイマと、を備え、前記定電流ユニットは、前記タイマにより計測される経過時間が予め定められた一定時間を経過する前に動作を開始することを特徴とする。
【0016】
この過電流防止式電源装置において、タイマを複数有し、タイマは、定電圧ユニット内に発生する電圧または電流で動作を開始すると共に、予め定める時間の経過後に、定電流ユニットと定電圧ユニットとに、それぞれの動作開始のための信号を伝達することが好ましい。
【0017】
この過電流防止式電源装置において、定電圧ユニットは、入力電圧を昇圧する昇圧チョッパ回路と、昇圧チョッパ回路を駆動するための制御回路とを有し、制御回路は、昇圧チョッパ回路の動作開始時間を、定電流ユニットの動作開始時間より遅くすることが好ましい。
【0018】
本発明の照明器具は、上記のような過電流防止式電源装置と、照明負荷と、電源装置と照明負荷とを接続する接続部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の過電流防止式電源装置によれば、タイマを用い、予め定められた一定時間を定電圧ユニットが動作開始するまでの時間として、定電流ユニットが一定時間前に動作開始するようにできる。従って、定電流ユニットの動作開始時のピーク電流による過電流の影響により定電圧ユニットの定電圧動作が停止されることを防止することができ、回路全体を起動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る過電流防止式電源装置を用いた照明器具の構成図。
【図2】同実施形態の装置における定電圧ユニットの回路図。
【図3】同実施形態の装置における定電流ユニットの回路図。
【図4】(a)は同定電圧ユニットの出力電圧波形を示す図、(b)は同定電流ユニットの出力電流波形を示す図、(c)はタイマにおけるカウンタの出力電圧波形を示す図、(d)はタイマにおける他のカウンタの出力電圧波形を示す図。
【図5】同実施形態の変形例における定電圧ユニットの構成図。
【図6】同定電圧ユニットの回路図。
【図7】(a)は同定電圧ユニットの昇圧チョッパ部の出力波形を示す図、(b)は同定電圧ユニットの降圧チョッパ部の出力波形を示す図、(c)は同定電流ユニットの出力電流波形を示す図。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る装置における定電圧ユニットの回路図。
【図9】同実施形態の装置における定電流ユニットの回路図。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る装置を用いた照明器具の構成図。
【図11】同照明器具の他の形態を示す斜視図。
【図12】従来の照明器具の構成図。
【図13】(a)は同照明器具におけるPFC回路部の出力電圧波形を示す図、(b)は同照明器具における電流出力部の出力電流波形を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
本発明の実施形態に係る過電流防止式電源装置について図1乃至図4を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態の過電流防止式電源装置1(以下、電源装置という)は、交流電源(AC)から給電されて一定電圧を出力する定電圧ユニット2と、定電圧ユニット2からの電圧を受けて照明負荷5を点灯駆動する定電流ユニット3と、タイマ4とを備える。タイマ4は、定電圧ユニット2による電圧供給開始後の経過時間を計測する。ここでは、電源装置1と照明負荷5とは、照明器具を構成する。定電流ユニット3と照明負荷5とを一体としたものを灯具6とし、定電圧ユニット2と灯具6とを分離して配線する照明器具の形態も可能である。タイマ4は定電圧ユニット2または定電流ユニット3に内蔵することができる。
【0022】
照明負荷5は、有機EL発光素子を用いているが、LED発光素子などの他の固体発光素子を含め、直流で点灯する光源であればよい。
【0023】
図2に示すように、定電圧ユニット2は、入力部(接続部)20と、ローパスフィルタ(LPF)21と、整流回路部22と、制御電源回路23と、昇圧チョッパ部(昇圧チョッパ回路)24と、出力部(接続部)25とを有する。入力部20は交流電源(AC)に接続され、LPF21は、入力部20からの交流電圧を正弦波状にするため、その高周波成分を除去する。整流回路部22は、ダイオードブリッジ(DB)を用いてLPF21からの交流電圧を全波整流する。制御電源回路23は、整流回路部22の出力両端子に抵抗R4、R5の直列回路を接続し、抵抗R5に並行にツエナーダイオードZD1を接続し、制御回路に供給する定電圧源Vccを生成するための回路であり、昇圧チョッパ部24等に電源供給する。
【0024】
昇圧チョッパ部24は、チョークコイルL1と、nチャンネル型のMOSFETからなるスイッチング素子Q1と、ダイオードD1と、スイッチング素子Q1を駆動する駆動回路26と、論理積回路AND1と、駆動回路26を制御する定電圧制御部(制御回路)27とを有する。チョークコイルL1は、ダイオードD1と直列回路を成して整流回路部22の出力と出力用コネクタを有する出力部25間に接続され、チョークコイルL1とダイオードD1の接続点は、スイッチング素子Q1と抵抗R1との直列回路を介して接地される。
【0025】
このスイッチング素子Q1と抵抗R1との直列回路に並列に、ダイオードD1と電界コンデンサC1の直列回路が接続される。また、コンデンサC1の両端は、抵抗R2とR3との直列回路が並列に接続されると共に、出力部25に接続される。チョークコイルL1に結合される二次側コイルL2は、その一端が定電圧制御部27に接続され、他端が接地され、チョークコイルL1に発生する電圧を検出して、定電圧制御部27に制御電源電圧供給を行う。スイッチング素子Q1は、定電圧制御部27からの制御信号を基に生成される駆動回路26からの出力信号により駆動される。
【0026】
駆動回路26は、論理積回路AND1の出力と接続される。論理積回路AND1は、定電圧制御部27からの電圧制御信号と、タイマ4からの制御信号とが入力され、それらの論理積を駆動回路26に出力する。
【0027】
AND1は、タイマ4のカウンタ42(後述)からの入力がハイ(H)レベルのときに、定電圧制御部27からの電圧制御信号をそのまま駆動回路26に印加する。このとき、スイッチング素子Q1は、定電圧制御部27からの電圧制御信号を基に生成される駆動回路26からの出力信号により駆動される。また、カウンタ42からの入力がロー(L)レベルのときは、駆動回路26の出力はゼロとなり、スイッチング素子Q1は停止される。
【0028】
抵抗R2、R3は、出力電圧Vを検出するための検出抵抗であり、コンデンサC1の両端の分圧し、抵抗R3の電圧を検出電圧とする。それら抵抗R2とR3との接続点は、出力電圧Vをフィードバック制御するために定電圧制御部27に接続されている。
【0029】
定電圧制御部27は、抵抗R3からの検出電圧がフィードバック制御信号として入力され、この検出電圧を基にコンデンサC1の出力電圧Vを所望の電圧値Voにするための電圧制御信号を発生して、駆動回路26及びスイッチング素子Q1を制御する。この電圧制御信号は、PWM制御信号により形成され、駆動回路26を制御し、駆動回路26はPWM信号でスイッチング素子Q1をパルス駆動する。スイッチング素子Q1の出力はコンデンサC1に充電され、一定電圧Voとなる直流の出力電圧Vが得られる。なお、PWMのスイッチンング周波数は、数10KHzから数MHzである。
【0030】
また、定電圧制御部27は抵抗R1に発生する電圧を利用して、スイッチング素子Q1に流れる電流が予め定めるピーク値に達した場合に、強制的にオフさせるようにできる。また、コイルL2による巻線電圧を利用して電流がゼロになるタイミングを検出して、強制的にスイッチング素子Q1をオンすることができる。
【0031】
この定電圧ユニット2は、出力電圧Vを定電圧制御部27へフィードバックすることにより、抵抗R3に発生する電圧が所望の値になるようにスイッチング素子Q1のオン、オフを繰り返すことにより、入力電流の歪を改善しつつ、出力電圧Vを一定電圧Voにすることができる。
【0032】
タイマ4は、複数のカウンタ41、42と、定電圧ユニット2の整流回路部22の出力に並列に接続される抵抗Ra、Rbの直列回路と、抵抗Rbに並列接続されるコンデンサCaとを備える。タイマ4は、定電圧ユニット2内に発生する電圧または電流で動作を開始し、予め定められた時間の経過後に、定電流ユニット3と定電圧ユニット2とに、それぞれ動作開始のための信号を伝達する。ここでは、抵抗Ra、抵抗Rbの直列回路が各カウンタ41、42が計測開始のタイミングを検出するための電圧検出回路となる。なお、タイマ4は、複数のカウンタ41、42を制御するためのマイコンなどによる制御部(不図示)を有している。
【0033】
カウンタ41、カウンタ42は、抵抗Raと抵抗Rbとの接続点とそれぞれ接続され、抵抗Rbの電圧を基に時間計測をスタートし、定電圧ユニット2による電圧供給開始後の経過時間を計測し、定電圧ユニット2と定電流ユニット3に動作開始信号Sb、Saをそれぞれ出力する。また、カウンタ41、42はそれぞれ計測開始から一定時間経過の後に出力をLレベルからHレベルに変化させるように動作する。このとき、カウンタ41の出力の動作開始信号Saは後述の定電流ユニット3の論理和回路AND2に入力され、カウンタ41の出力の動作開始信号Sbは定電圧ユニット2におけるAND1の入力の一方となる。
【0034】
カウンタ41、42は、時間計測をスタートすると、予め設定され一定時間の経過後に、それぞれ動作開始信号Sa、Sbを出力する。ここでは、カウンタ41、42は、カウンタ41によって計時される時間をtc1、カウンタ42によって計時される時間をtc2として、tc1<tc2となるように設定されている。なお、各カウンタ41、42のスタート信号として、抵抗Rb端の電圧を利用したが、これに限ったものではなく、例えば、抵抗R3端に発生する電圧を利用してもよい。そうすることで、時間計測開始の電圧検出回路を兼用でき、回路の部品点数を少なくすることができる。また、電圧値ではなく電流値で検出する形態であってもよい。
【0035】
図3に示すように、定電流ユニット3は、入力部(接続部)30と、制御電源回路31と、DC−DC変換部32と、出力部(接続部)33と、定電流制御部34と、電流検出部35とを有する。
【0036】
入力部30は、定電圧ユニット2の出力部25からの出力電圧Vが定電流ユニット3への入力電圧Vとなって供給される。制御電源回路31は、定電圧ユニット2の制御電源回路23と同様の構成を成し、DC−DC変換部32、定電流制御部34、及び電流検出部35など、定電流ユニット3内の各回路に定電圧源Vccを供給する。
【0037】
DC−DC変換部32は、駆動回路36と、この駆動回路36により駆動されるスイッチング素子Q2と、駆動回路36への入力信号を切り換える論理和回路AND2と、回生用のダイオードD2と、チョークコイルL3と、コンデンサC2とを有する。スイッチング素子Q2はチョークコイルL3と直列回路を成して整流回路部22の出力と出力部33間に接続される。ダイオードD2は、スイッチング素子Q2とチョークコイルL3との接続点と接地間に逆方向接続される。チョークコイルL3の出力側はコンデンサC2を介して接地される。コンデンサC2は、照明負荷5と電流検知用の抵抗R6との直列回路と並列に接続され、照明負荷5と抵抗R6の接続点は電流検出部35に接続され、抵抗R6の他端は接地されている。AND2は、カウンタ41からの動作開始信号Saと、定電流制御部34からの電流制御信号とが入力される。
【0038】
このDC−DC変換部32は、降圧チョッパ回路を成し、定電流制御部34からの電流制御信号によりスイッチング素子Q2を高周波でスイッチングすることにより、入力電圧Vを照明負荷5に必要な電圧に変換し出力部33から出力し、照明負荷5を点灯する。
【0039】
AND2は、カウンタ41からの動作開始信号SaがHレベルのときは、定電流制御部34からのオン・オフ制御信号からなる電流制御信号をそのまま出力し、このオン・オフ制御信号を基に駆動回路36でスイッチング素子Q2を駆動し、DC−DC変換部32の定電流動作が維持される。また、AND2はカウンタ41からの動作開始信号SaがLレベルのときは、定電流制御部34からの電流制御信号に関わらず、その出力もLレベルとなる。このとき、駆動回路36へは電流制御信号が入力されないので、スイッチング素子Q2は動作しないため、DC−DC変換部32の定電流動作は、停止状態に維持される。
【0040】
電流検出部35は、照明負荷5の電流により抵抗R6に発生する電圧が入力されて、出力部33から照明負荷5に流れる出力電流を検出し、その検出値を定電流制御部34へ入力する。定電流制御部34は、この検出値を基にDC−DC変換部32から出力される電流Iが所望の一定値に保たれるように、スイッチング素子Q2をオン、オフ制御する。なお、電流検出部35は、増幅回路を含んでもよい。また、定電流制御部34からのオン・オフ制御信号のスイッチング周波数は数10KHzから数MHzである。
【0041】
ここで、カウンタ41、42により制御される各ユニット2、3の動作時の電圧、電流波形について図4(a)〜(d)を参照して説明する。図4(a)は定電圧ユニット2の動作時におけるコンデンサC1の出力電圧Vの波形を、図4(b)は定電流ユニット3の動作時におけるコイルL3の出力電流Iの波形を示す。図4(c)はカウンタ41からの動作開始信号Saの波形を、図4(d)はカウンタ42からの動作開始信号Sbの波形を示す。前述のように、カウンタ41によって所望の経過時間が計時される時間(tc1)は、カウンタ42によって経過時間が計時される時間(tc2)より短く設定されるので、カウンタ41からの動作開始信号Saのオンする時間t2は、カウンタ42からの動作開始信号Sbのオンする時間t3より短くなっている。
【0042】
図4(a)に示すように、定電圧ユニット2の出力電圧Vは、交流電源が投入された時間をt=0とすると、整流回路部22の出力が増加し、時間t1で交流電圧のピークの電圧V1まで上昇し、昇圧チョッパ部24が動作を開始する時間t3まで電圧V1が出力される。電圧V1はAC電源のピーク値電圧であり、AC100(V)の場合は、約141V程度である。ここでは、時間t1〜t3の期間に、定電圧制御部27及び駆動回路26は制御電源回路23から供給されており、カウンタ42からの動作開始信号Sbの発生により昇圧チョッパ部24がいつでも動作開始できるようにスタンバイされている。
【0043】
時間t3〜t4の電圧Vは、時間t3から定電圧制御部27のチョッパ動作が開始することにより、出力電圧Vは昇圧チョッパ部24で昇圧されて電圧V1から、時間t4で予め定める一定電圧Voまで上昇する。時間t4以降は、定電圧制御部27のフィードバック制御により、定電圧ユニット2のコンデンサC1の出力電圧Vは一定電圧Voに維持される。
【0044】
図4(b)に示すように、定電流ユニット3のDC−DC変換部32は、カウンタ41で定められた時間t2に達するまでは駆動しないため、チョークコイルL3に電流は流れない。ただし、時間t2に達するまでに、定電流制御部34および電流検出部35の制御電源は十分供給できる電圧に設定されているため、時間t2経過した点から、速やかに動作を開始できる。
【0045】
時間t2〜t3において、定電流制御部34は出力電圧V1を電源として動作を開始する。このとき、定格電流よりは大きいピーク電流Ipeakが流れることになるが、この期間では、まだ定電圧ユニット2の昇圧チョッパ部24は動作を開始していないので、過電流により定電圧制御のフィードバック検出量が急激に大きくならない。従って、定電圧制御部27はその制御の許容量を超え、フィードバック制御が外れて回路動作が不能になることはなく、出力電流Iは電源電圧V1に応じた一定値Io1に収束する。
【0046】
時間t3〜t4においては、時間t3で定電圧ユニット2の昇圧チョッパ部24が動作を開始するので、出力電圧Vの上昇に伴い、徐々に電流Iは減少していき、やがて所望の電流値Io2に維持される。時間t4以降は、定電流制御部34のフィードバック制御が継続されることになる。
【0047】
カウンタ41は、抵抗Rb端の電圧でタイマ動作を開始し、予め設定された経過時間に達する時間t2まではLレベルが維持される。カウンタ41は時間t2を経過すると、動作開始信号SaがHレベルになり、カウンタ42より早く始動する。この動作開始信号Saが定電流制御のAND2への入力されると、時間t2から定電流ユニット3のDC−DC変換部32が動作を開始することになり、出力電流Iが立ち上がる。
【0048】
カウンタ42は、時間t2より長い経過時間の時間t3までは、Lレベルが維持され、時間t3経過すると、その動作開始信号SbがHレベルになる。この動作開始信号Sbが定電圧制御のAND1回路へ入力されると、時間t3から定電圧ユニット2の昇圧チョッパ部24が動作を開始し、出力電圧VがV1から昇圧され、Voに一定制御されるようになる。これにより、定電圧ユニット2の起動のタイミングは、定電流ユニット3の起動のタイミングから離されることになる。
【0049】
本実施形態によれば、タイマ4を用いて、予め定められた一定時間(時間t3)を定電圧ユニット2が動作開始するまでの時間として、定電流ユニット3が一定時間前に動作開始するようにできる。従って、定電流ユニット3の動作開始時のピーク電流Ipeakによる過電流の影響により定電圧ユニット2の定電圧動作が停止されることを防止することができ、回路全体を起動することできる。
【0050】
また、複数のタイマ4(カウンタ41〜43)を有しているので、任意の経過時間後に各ユニット2、3を動作開始させることができる。これにより、各ユニット2、3内の制御回路の切替時に、出力電流Iの立ち上がりに振動波形が出るような場合は、その振動が収まる十分な安定時間を見てから定電圧ユニット2の昇圧チョッパ部24を動作開始させることができ、安定性が向上する。
【0051】
また、定電圧ユニット2内に、昇圧チョッパ部24と降圧チョッパ部28のように複数の定電圧回路が存在しても、定電流ユニット3の動作開始による過電流の影響を受けないように、各々の定電圧回路を適正な時間経過後に動作開始することができる。このとき、昇圧チョッパ部24を最後に動作するように設定することにより、昇圧チョッパ回路のフィードバック外れを防止することができる。
【0052】
また、タイマ4による計測のスタートとして、定電圧ユニット2および定電流ユニット3とも、定電圧ユニット2の昇圧チョッパ部24への入力電圧の検出を基に行ったが、定電圧ユニット2の動作開始までの時間計測のスタートは、必ずしもこれに限ったものではない。例えば、定電流ユニット3が動作開始した信号やDC−DC変換部32の出力電流Iが一定値に収まってからなどの様々な信号で動作を開始することができる。ここでは、昇圧チョッパ部24の動作開始前にDC−DC変換部32が動作を開始し、定電圧ユニット2の起動時間を定電流ユニット3の起動時間より遅くらせるようにさえすればよい。
【0053】
なお、上記昇圧チョッパ部24の動作開始の時間計測を出力電流Iが一定値に収まってから設定する場合、例えば、時間t2〜t3での出力電流Io1(図4(b)参照)が一定値になるのを検出して、昇圧チョッパ部24の動作を開始すると、タイマ4での回路部品が少なく済むなどの利点を生じる。例えば、出力電流Iの検出は、電流検出部35に接続される電流検出用の抵抗R6を兼用すればよい。
【0054】
(第1の実施形態の変形例)
次に、上記実施形態の変形例について、図5乃至図7を参照して説明する。この変形例においては、定電圧ユニット2は、図5に示すように、昇圧チョッパ部24の後段に、その出力を受けて降圧する降圧チョッパ部28を有し、降圧チョッパ部28からの直流電圧が出力部25から出力される。
【0055】
図6に示すように、降圧チョッパ部28は前述の図3のDC−DC変換部32と同様の構成を成し、スイッチング素子Q3と、スイッチング素子Q3を駆動する駆動回路29と、論理和回路AND3と、ダイオードD3と、チョークコイルL4、電圧検出用の抵抗R7、R8の直列回路と、コンデンサC3とを備える。抵抗R7、R8の接続点の電圧は、定電圧制御部27にフィードバック入力され、コンデンサC3の電圧は定電圧制御部27により定電圧制御され、出力電圧Vとして出力部25から出力される。
【0056】
AND3は、後述のカウンタ43からの動作開始信号Scと、定電流制御部34により出力電圧Vをフィードバック制御するための他の電流制御信号とが入力される。
【0057】
定電流制御部34は、スイッチング素子Q3を一定の周波数、一定のオン時間でオン、オフすることにより、一定の比率で昇圧チョッパ部24からの電圧Vbを降圧し、出力電圧Vを出力部25から出力する。例えば、交流電源ACの入力電圧が100〜242(V)の場合、昇圧チョッパ部24の出力を400(V)程度にしておき、降圧チョッパ部28で24(V)や48(V)のような直流電圧にして、後段の定電流ユニット3で照明負荷5を点灯させることができる。
【0058】
タイマ4は、カウンタ41、42に加え、動作開始信号Scを出力するカウンタ43を、さらに備える。ここでは、カウンタ41、42、および43の各出力の動作開始信号Sa、動作開始信号Sb、動作開始信号Scは、それぞれ定電流ユニット3のAND2、定電圧ユニット2のAND1、AND3にそれぞれ入力される。
【0059】
ここで、カウンタ41、42、及び43により制御される各ユニット2、3の動作時の電圧、電流波形について図7(a)〜(c)を参照して説明する。図7(a)は定電圧ユニット2における昇圧チョッパ部24の出力電圧Vbの波形を、図7(b)は定電圧ユニット2のコンデンサC1から出力される出力電圧Vの波形を、図7(c)は定電流ユニット3の動作時におけるコイルL3の出力電流Iの波形を示す。なお、図7(a)、(b)、(c)で時間軸は一致して表記してある。
【0060】
図7(a)に示すように、電源AC投入後、電圧Vbは電源電圧のピーク値であるVb1まで上昇する。ここで、タイマ4の制御により、動作開始信号Sc(時間t2でオン)、動作開始信号Sa(時間t3でオン)、動作開始信号Sb(時間t4でオン)の順で各AND2(図3)、AND3(図6)、AND1が動作を開始するようにする。このとき、後段の定電流ユニット3のDC−DC変換部32、定電流制御部34、電流検出部35を含む定電流回路部が動作開始する時間t3においては、図7(b)に示すように、降圧チョッパ部28のみが起動(時間t2でオン)している。このため、昇圧チョッパ部24の出力Vb1、降圧チョッパ部28の出力Vo1の電圧で定電流回路部が動作することになる。ここで、出力Vb1は昇圧チョッパ部24が停止しているので、整流回路部22の出力(約141V)と同じになる。
【0061】
このような状態で、定電流ユニット3を起動させ、ピーク値Ipeakの大きい電流を流しておき、定電流ユニット3の出力電流Iが一定値Io1になった後、最後に昇圧チョッパ部24の動作を開始する。これにより、昇圧チョッパの出力はVb1からVb2へ上昇し、それに伴い、降圧チョッパ部28の出力もVo1からVo2へと上昇する。
【0062】
これらの動作により、定電流ユニット3のDC−DC変換部32の出力電流はIo1からIo2へと減少して、定格点灯を維持することになる。このように動作させることにより、ピーク電流Ipeakによる昇圧チョッパ部24の停止を防止することができる。また、昇圧チョッパ部24の起動により、出力電流がIo1からIo2へ減少するため、回路ストレスが低減できる。
【0063】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る過電流防止式電源装置について、図8及び図9を参照して説明する。本実施形態は、定電圧ユニット2内に調光部7aと調光信号送信部7bとを有し、定電流ユニット3内に、そのDC−DC変換部32の出力を受けて動作する調光出力部8を備える。調光出力部8は、定電圧ユニット2側からの調光信号S1によって制御され、照明負荷5を調光制御する。
【0064】
図8に示すように、定電圧ユニット2において、調光部7a及び調光信号送信部7bは、汎用ICの組合せやマイコンなどで構成され、定電圧源Vccから給電されて動作し、調光信号送信部7bからの調光信号S1を出力部25から送出する。
【0065】
調光部7aは、外部からの調光要求を受けて調光指令値に変換し、この調光指令値に基く指令信号を調光信号送信部7bに送る。調光指令値は、例えば、ユーザが抵抗ボリュームを回すことによって抵抗値を可変し、その抵抗値に対応する電圧値をマイコンで発生して形成することができ、また、リモコンからの制御信号を受けて形成することもできる。
【0066】
調光信号送信部7bは、調光部7aからの指令信号を受けて、それに基いてPWM信号などの調光信号S1を生成し、定電流ユニット3へ送出する。PWM信号は、12Vの振幅を成す1kHzのパルス信号とし、そのオン時間が少ないほど調光率を高くするようにしている。なお、定格出力を調光率100%とする場合の調光信号S1は、振幅可変信号としてもよい。また、有線や無線の通信手段で定電流ユニット3側に伝達する場合は、それぞれ対応する通信変換機能を設ければよい。
【0067】
図9に示すように、調光出力部8はスイッチング素子Q4と、スイッチング素子Q4を駆動する駆動回路81とを有し、スイッチング素子Q4はDC−DC変換部32の出力側と出力部33との間に直列に接続される。駆動回路81は調光信号送信部7bからの調光信号S1が入力され、この調光信号S1に基いてスイッチング素子Q4をオン、オフし、その出力は出力部33から照明負荷5に供給される。
【0068】
本実施形態によれば、調光信号送信部7bからの調光信号S1に応じて、有機EL等の照明負荷5の電流を調整して所望のレベルに調光することができると共に、起動時の調光出力部8へのピーク電流が抑制され、調光出力部8の過電流による破損等を防止できる。
【0069】
図10は、上記定電圧ユニット2(過電流防止式電源装置)と、定電圧ユニット2により給電される複数の灯具(照明負荷)6(6a、6b)と、定電圧ユニット2と灯具6を接続する接続部61と、を備えた照明器具の構成例を示す。灯具6は、接続部61と共に、発光素子(照明負荷)5aと、定電流ユニット3と、調光信号受信部9とを有し、コネクタ等よりなる接続部61を介して定電圧ユニット2の出力部と配線接続されている。定電圧ユニット2は、その出力部からの出力電圧Vと調光信号S1とが接地ライン(GND)を共通として灯具6に接続され、それぞれ灯具6内の定電流ユニット3と調光信号受信部9とに供給される。
【0070】
発光素子5aは、入力電流と光出力がほぼ比例の関係にある有機ELやLEDなどの一つまたは複数の固体発光素子から成る。調光信号受信部9は、定電圧ユニット2の調光信号送信部7bからの調光信号S1を受けて元の調光指令値を復元し、それを定電流ユニット3に伝える。定電流ユニット3は、調光機能を有し、調光信号受信部9からの指令値を受けて発光素子5aのPWM調光や振幅調光を行う。なお、調光信号受信部9は、定電流ユニット3内に設けてもよい。
【0071】
この照明器具は、複数の灯具6が定電圧ユニット2に接続されるような場合においても、動作開始時に配線に流れる定電圧ユニット2からのピーク電流を抑制することができる。これにより、過電流による灯具6の回路素子等へのストレスを低減することができると共に、点灯動作後は、電源変動に強い、安定した照明が得られる。また、定電圧ユニット2と各接続部61間の配線により、灯具6と定電圧ユニット2間を任意の長さに調整できる。また、LEDや有機EL素子の発光素子5aを用いたので、面状薄型の照明器具が得られる。
【0072】
図11は、照明器具を複数のモジュールで構成した場合の例を示す。この照明器具は、定電圧ユニット2及び定電流ユニット3をモジュール化した電源ユニット(電源装置)1aと、複数の発光素子5aを一体にしてモジュール化した負荷モジュール5bとにより構成される。これらのモジュール化により、照明器具をコンパクトに形成でき、また、交換修理が容易になる。
【0073】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上記各実施形態において、定電圧ユニット2内に降圧チョッパ部28を複数設け、タイマ4のカウンタを3個以上設けて各チョッパ回路の動作開始を時間シフトさせてもよい。また、スイッチング素子はFETに限らず、バイポーラトランジスタ等、他の半導体素子を用いてもよい。また、1つの電源装置1に照明負荷5を複数接続するときは、それらの照明負荷5の直列、並列、あるいはそれらの組合せであってもよい。また、電流検出に抵抗を用いたが、トランスなどを用いてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 電源装置(過電流防止式電源装置、照明器具)
2 定電圧ユニット
3 定電流ユニット
24 昇圧チョッパ部(昇圧チョッパ回路)
27 定電圧制御部(制御回路)
4 タイマ
41、42、43 カウンタ(タイマ)
5 照明負荷
5a 発光素子(照明負荷、照明器具)
6、6a、6b 灯具(照明器具)
61 接続部(照明器具)
Sa、Sb、Sc 動作開始信号(信号)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定電圧を出力する定電圧ユニットと、
前記定電圧ユニットからの電圧を受けて駆動される定電流ユニットと、
前記定電圧ユニットによる電圧供給開始後の経過時間を計測するためのタイマと、を備え、
前記定電流ユニットは、前記タイマにより計測される経過時間が予め定められた一定時間を経過する前に動作を開始することを特徴とする過電流防止式電源装置。
【請求項2】
前記タイマを複数有し、
前記タイマは、前記定電圧ユニット内に発生する電圧または電流で動作を開始し、予め定められた時間の経過後に、前記定電流ユニットと定電圧ユニットとに、それぞれ動作開始のための信号を伝達することを特徴とする請求項1に記載の過電流防止式電源装置。
【請求項3】
前記定電圧ユニットは、入力電圧を昇圧する昇圧チョッパ回路と、該昇圧チョッパ回路を駆動するための制御回路とを有し、
前記予め設定された一定時間は、前記昇圧チョッパ回路の制御回路が動作を開始するまでの時間よりも短いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の過電流防止式電源装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の過電流防止式電源装置と、照明負荷と、前記電源装置と照明負荷とを接続する接続部と、を備えたことを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−205868(P2011−205868A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73509(P2010−73509)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】