説明

道路地図データ管理システム

【課題】より信頼性の高い地図データを配信することができる道路地図データ管理システムを提供する。
【解決手段】道路地図DB111から配信地図データ122を作成して外部に配信する道路地図データ管理システムであって、道路地図DB111に同じ道路に対する道路データが複数ある場合、各道路データの信頼度を算出する。そして、その信頼度に基づいて、同じ道路に対する複数の道路データから1つの道路データを選択して配信地図データ122を作成する。そのため、より信頼性の高い地図データを配信することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路地図データ管理システムに関し、特に、記憶装置に記憶している道路地図データベースから配信地図データを作成して配信することができる道路地図データ管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
記憶装置に記憶している道路地図データベースから配信地図データを作成し、その配信地図データを、車両に搭載されたナビゲーション装置などの外部装置へ配信する道路地図データ管理システムが知られている。
【0003】
また、地図データベースが、地図上に表される地物毎に用意された地物データと、その地物データに対応付けられた時間情報とを備えているものも知られている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−330360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
道路地図データ管理システムには、車両からのプローブ情報に基づいて道路データを学習することができるものも存在する。このように、プローブ情報に基づいて道路データを学習することができる場合、学習した道路データが、記憶装置に記憶している道路地図データベースに含まれる道路と同じ道路に対する道路データである可能性がある。この場合、どちらの道路データに基づいて配信地図データを作成すればよいかが問題となる。
【0006】
ここで、特許文献1の地図データベースでは、時間情報を備えている。配信地図データを作成する道路地図データ管理システムの道路地図データベースにも、この特許文献1記載のデータベース構造を採用して時間情報を持たせ、時間が新しい道路データを採用して配信地図データを作成することが考えられる。
【0007】
しかし、新しいデータが必ずしも信頼性があるとは限らない。たとえば、プローブ情報から道路データを作成する場合、少ないデータ数から作成した道路データは信頼性が十分でない可能性もある。そのため、時間情報のみを用いてどちらの道路データを採用するかを決定してしまうと、信頼性の高い地図データを配信できない可能性がある。
【0008】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、より信頼性の高い地図データを配信することができる道路地図データ管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
その目的を達成するための請求項1記載の発明は、道路地図データベースを記憶する記憶装置を備え、その記憶装置に記憶されている道路地図データベースから配信地図データを作成して外部に配信する道路地図データ管理システムであって、車両のプローブ情報に基づいて作成された道路データまたはそのプローブ情報を学習データとして取得する学習データ取得手段と、その学習データに基づいて定まる道路データが、前記記憶装置に記憶されている道路地図データベースに含まれる道路と同じ道路に対する道路データであるか否かを判定する判定手段と、その判定手段で同じ道路に対する道路データであると判定された道路データのそれぞれの信頼度に基づいて、同じ道路に対する複数の道路データから1つの道路データを選択する道路データ選択手段と、選択した道路データに基づいて配信地図データを作成する配信データ作成手段とを含むことを特徴とする。
【0010】
このように、本発明では、同じ道路に対する道路データが複数あると判定した場合、各道路データの信頼度に基づいて、同じ道路に対する複数の道路データから1つの道路データを選択して配信地図データを作成する。そのため、より信頼性の高い地図データを配信することができる。
【0011】
請求項2は、前記信頼度が、道路データの情報元の信頼性が高いほど高くなることを特徴とする。このようにすれば、道路データの情報元の信頼性が高いほど、その情報元の情報に基づく道路データが選択されやすくなるので、信頼性の高い配信地図データを作成することができる。
【0012】
請求項3は、前記信頼度が、道路データの経過日数が長いほど低くなることを特徴とする。信頼度をこのようにするのは、経過日数が長いほど、道路形状が変更になっている可能性が高くなるからである。
【0013】
また、信頼度は、請求項4のように、学習データの母集団数が大きいほど高くし、請求項5のように、学習データの分散値が大きいほど低くし、請求項6のように、学習データの相関係数が大きいほど高くすることが好ましい。
【0014】
請求項7は、請求項2乃至6記載の特徴をすべて反映させたものである。すなわち、請求項7は、前記信頼度が、信頼度係数αと母集団数との積を、前記道路データの経過日数で割った値として算出され、前記信頼度係数αが、道路データの情報元の信頼性が高いほど高くなる第1項と、前記学習データの分散値が大きいほど小さくなる第2項と、前記学習データの相関係数が大きいほど大きくなる第3項との和から算出されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】発明が適用された地図データ管理システム100、およびこのシステムに関連する構成を示す全体構成図である。
【図2】配信地図データ122が情報センタ120に登録されるまでの処理を示すフローチャートである。
【図3】プローブデータ311が電波航法によって検出した現在位置を示す場合の学習データ121の作成方法を説明する図である。
【図4】プローブデータ311がハイブリッド航法によって検出した現在位置を示す場合の学習データ121の作成方法を説明する図である。
【図5】図2のステップS6の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図6】図5のステップS53の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図7】ナビゲーション装置304が新たな地図データを要求する際の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明が適用された道路地図データ管理システム100、およびこのシステムに関連する構成を示す全体構成図である。
【0017】
地図データ管理システム100は、データベースセンタ(以下、DBセンタ)110と情報センタ120とによって構成される。
【0018】
DBセンタ110には、コンピュータおよび記憶装置が備えられており、その記憶装置に道路地図データベース(以下、道路地図DB)111が格納されている。この道路地図DB111には、地図サプライヤ(地図製作会社)200が作成した道路地図データ(以下、サプライヤデータ)201が格納されている。加えて、道路地図DB111には、情報センタ120においてプローブ情報に基づいて作成された道路データである学習データ121も格納される。
【0019】
道路地図DB111は、サプライヤデータ201と学習データ121とを区別して格納しており、また、道路地図DB111においてサプライヤデータ201と学習データ121にはそれぞれ異なるIDが付与してあり、このIDによってサプライヤデータ201と学習データ121とを識別することができるようになっている。
【0020】
また、上記IDに代えて、個々のデータに対しデータ属性として「入手元」属性を設定し、この属性を、データの入手元に応じて設定することにより、サプライヤデータ201と学習データ121とを識別してもよい。また、道路地図DB111においてサプライヤデータ201と学習データ121には、データ作成日(データ調査日やデータ収集日でもよい)、母集団の数が付加情報として設定されている。
【0021】
母集団の数は、サプライヤデータ201や学習データ121の作成に利用した生データの数を意味し、学習データ121の場合、母集団の数は車の走行台数や走行履歴数であり、これらの数は情報センタ120から提供される。また、サプライヤデータ201については地図サプライヤ200から母集団の数が提供される。なお、地図サプライヤ200は、高精度GPS受信機、3軸ジャイロスコープ、3軸Gセンサ、車速センサ、ステレオカメラ等の道路地図データ計測用の専用機器を備えた計測車と呼ばれる専用車両を走行させて得た情報から道路地図データを作成することが一般的である。この計測車は、通常、各道路を1回だけ走行する。そのため、母集団の数は通常は1である。
【0022】
情報センタ120とDBセンタ110とは通信回線によって接続されており、学習データ121はこの通信回線によって送信される。なお、地図サプライヤ200が作成した道路地図データ201は、通信回線によってDBセンタ110に送信されてもよいし、記憶媒体に格納されてDBセンタ110へ搬送されてもよい。
【0023】
DBセンタ110のコンピュータは、情報センタ120から送信されてきた学習データ121や、地図サプライヤ200から提供された道路地図データ201を道路地図DBに格納する処理を行なう。また、この道路地図DB111から配信地図データ122を作成して、情報センタ120へ送信する。情報センンタ120は、DBセンタ110から送信された配信地図データ122を、配信可能な地図データとして登録する。
【0024】
上記配信地図データ122は、道路地図DB111に格納されている地域の一部または全部に対する道路地図データである。この配信地図データ122の作成タイミングは、たとえば、新たな学習データ121または新たなサプライヤデータ201を取得したときである。また、情報センタ120からの作成要求に応じて作成するようになっていてもよい。
【0025】
次に、車載装置300を説明する。車載装置300において、地図データ記憶媒体301は、道路地図データを記憶している記憶媒体である。GPS受信機302は、衛星からの位置計測用電波を受信する。ジャイロスコープ303は、このジャイロスコープ303が搭載されている車両の角度および速度を検出する。これらGPS受信機302およびジャイロスコープ303は、車両の現在位置を検出するために用いる位置検出器である。
【0026】
GPS受信機302は電波航法によって車両の現在位置を決定するための位置検出器であり、ジャイロスコープ303は、推測航法によって車両の現在位置を決定するための位置検出器である。すなわち、この位置検出器は、電波航法と推測航法とを併用するハイブリッド航法により現在位置を検出する。
【0027】
ただし、必ずしもハイブリッド航法を用いる必要はなく、電波航法のみ、すなわち、GPS受信機302のみによって車両の現在位置を検出することもできる。また、推測航法には、ジャイロスコープ303に代えて、または、ジャイロスコープ303に加えて、他の推測航法用センサ、たとえば、加速度センサ等を用いることもできる。
【0028】
ナビゲーション装置304は、制御回路320、メモリ321等を備えている。制御回路320は、CPU、RAM、ROM等を備えたコンピュータであり、地図データ記憶媒体301に記憶されている道路地図データ、位置検出器(GPS受信機302、ジャイロスコープ303)によって検出される現在位置等、他の車載装置300からの情報を利用して、現在位置表示機能、経路案内機能等を実行する。
【0029】
通信機器306は、パケット通信可能な機器であり、パケット通信網400を利用して情報センタ120と通信を行う。メモリスロット307は、記憶媒体が挿入される差込口である。前述の地図データ記憶媒体301には、たとえばハードディスクドライブに装着されて着脱不可能な記憶媒体が用いられるが、このメモリスロット307に挿入する記憶媒体を前述の地図データ記憶媒体301として用いてもよい。
【0030】
表示器308は道路地図が表示されるものであり、センターコンソールなど、運転席から視認可能な場所に設置される。操作器309は、ユーザが、ナビゲーション装置304等の車載装置300に対して各種の操作指示を入力するためのものであり、メカニカルスイッチおよび表示器308の表示面に重ねられたタッチスイッチから構成される。ECU310は、CPU、RAM、ROM等を備えたコンピュータであり、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することで各種処理を実行する。
【0031】
ナビゲーション装置304の制御回路320は、前述した機能に加え、車両の走行中に、逐次、プローブデータ311を生成し、生成したプローブデータ311をプローブデータ記憶媒体312またはメモリ305に記憶する。このプローブデータ311とは、車両の現在位置を示すデータ、または、車両の走行軌跡を示すデータを含む車両データである。また、本実施形態においては、このプローブデータ311として、電波航法によって現在位置を検出したか、ハイブリッド航法によって現在位置を検出したかについての情報も含まれる。そして、生成したプローブデータ311を、通信機器306からパケット通信網400を介して情報センタ120へ送信する。
【0032】
なお、プローブデータ記憶媒体312に記憶されたプローブデータ311が自宅コンピュータ(自宅PC)500に複製または移動され、自宅PC500から情報センタ120へプローブデータ311が送信されてもよい。ナビゲーション装置304から自宅PC500へのプローブデータ311の複製または移動は、メモリスロット307に差し込まれる記憶媒体を介して行われてもよいし、無線通信によって行われてもよい。
【0033】
次に、配信地図データ122が情報センタ120に登録されるまでの処理を図2に示すフローチャートを用いて説明する。ステップS1、S2はナビゲーション装置304における処理である。ナビゲーション装置304は、プローブデータ311をメモリ305またはプローブデータ記憶媒体312に逐次蓄積する(ステップS1)。そして、蓄積したプローブデータ311を通信機器306を用いて情報センタ120へ送信する(ステップS2)。なお、通信機器306を用いる代わりに、前述のように、プローブデータ311を自宅PC500へ複製または移動し、自宅PC500から情報センタ120へプローブデータ311を送信してもよい。
【0034】
続くステップS3、S4は情報センタ120における処理である。情報センタ120は、ナビゲーション装置304から直接または間接的に送信されたプローブデータ311を解析する(ステップS3)。そして、周知の解析方法を用いて学習データ121を作成する(ステップS4)。なお、ステップS3の処理が請求項の学習データ取得手段に相当する。
【0035】
学習データ121の作成は、まず、第1処理として、既存道路との接続点決定処理を行う。次いで第2処理として道路形状決定処理を行なう。ただし、これら第1、2処理の具体的内容は、プローブデータ311が、電波航法によって検出した現在位置を示す場合と、ハイブリッド航法によって検出した現在位置を示す場合とで異なる。前者の場合の学習データ121の作成方法を図3を用いて説明する。
【0036】
まず、第1処理、すなわち、既存道路600との接続点(交差点位置)の決定処理では、各プローブデータ311が示す車両位置Pのうち、既存道路の周辺にあるものを除いて接続点決定用の新規道路(図3には図示せず)の形状を決定する。そして、この接続点決定用の新規道路と既存道路600との交点を重心点決定用の基準点に決定する。次いで、この基準点からの距離が所定距離以内の車両位置Pの重心点を算出する。図3の例では、領域Aに含まれる4つの車両位置Pの重心点、および、領域Bに含まれる3つの車両位置Pの重心点を算出することになる。次いで、この算出した重心点から既存道路600に対して垂線を引き、この垂線と既存道路600との交点を、既存道路600と新規道路610との接続点(交差点位置)に決定する。そして、第2処理では、この接続点と、接続点間に存在する車両位置Pとを用いて近似曲線を作成し、この近似曲線を新規道路610の形状として決定する。このようにして決定した接続点の位置と、接続点間の道路形状とが学習データ121となる。
【0037】
次に、プローブデータ311がハイブリッド航法によって検出した現在位置を示す場合における学習データ121の作成方法を図4を用いて説明する。図4において各車両位置Pから延びる矢印で示すように、ハイブリッド航法の場合、各測定点すなわち車両位置Pにおける進行方向を示すデータがプローブデータ311に存在する。そのため、第1処理では、プローブデータ311に含まれる進行方向を示すデータが、既存道路600の方向と異なることをもって接続点(交差点位置)と判定する。第2処理においても、プローブデータ311に含まれる進行方向を示すデータから新規道路610の各車両位置Pにおける形状を決定する。従って、1台の車両からのプローブデータ311によって学習データ121を作成できるが、プローブデータ311がハイブリッド航法によって検出した現在位置を示す場合でも、複数台の車両からのプローブデータ311が得られる場合には、統計処理して学習データ121を作成する。
【0038】
図2に戻り、情報センタ120で作成した学習データ121は、DBセンタ110に送信される。また、この学習データ121には、前述のように、付加情報として、データ作成日等と母集団の数とが付加される。
【0039】
DBセンタ110のコンピュータは、情報センタ120から送信された学習データ121を道路地図DB111に格納する(ステップS5)。そして、道路地図DB111を用いて配信地図データ122を作成する(ステップS6)。
【0040】
図5は、図2のステップS6の処理を詳しく示すフローチャートである。DBセンタ110のコンピュータは、道路地図DB111を取得する(ステップS51)。次いで、取得した道路地図DB111に、現実の同一の道路に対して複数のデータが存在するか否かを判断する(ステップS52)。なお、このステップS52が請求項の判定手段に相当する。現実の同一の道路に対するデータか否かは、次の(1)(2)のいずれか一方、または両方から判断する。(1)接続点が他方のデータの接続点付近か(所定距離以内か)、(2)データが示す互いの道路形状が相関があると認められる程度に近似しているか。
【0041】
このステップS52の判断が否定判断の場合には、ステップS55へ進み、地図DB111を用いて、更新時期、エリア等の所定の条件に基づいて配信地図データ122を作成する。
【0042】
前述のステップS5において格納した学習データ121が、既に道路地図DB111に格納されているサプライヤデータ201に含まれる道路と同一の道路に対するデータである場合にはこのステップS52が肯定判断となる。この場合にはステップS53へ進む。ステップS53では、現実の同一の道路に対するデータと判定した複数のデータに対し、信頼度をそれぞれ算出する。この信頼度の算出処理を図6に詳しく示す。
【0043】
まず、ステップS61では情報元を判定するとともに、判定した情報元に応じて定まる情報元係数を設定する。この情報元係数は、道路のデータが、プローブデータ311から作成されたもの、すなわち、学習データであって、そのプローブデータ311がGPS情報のみによって現在位置を検出する電波航法のデータである場合には「1」とする。また、道路のデータが学習データであって、プローブデータ311がハイブリッド航法のデータである場合には「20」とする。また、道路のデータがサプライヤデータ201である場合には「1000」とする。
【0044】
続くステップS62では、ステップS61で設定した情報元係数に基づいて、統計処理が必要か否かを判断する。具体的には、ステップS61で設定した情報元係数が1000よりも小さいか否かを判断する。従って、情報元が学習データである場合には、電波航法であってもハイブリッド航法であってもステップS62が肯定判断となり、情報元が地図サプライヤである場合には、ステップS62が否定判断となる。
【0045】
ステップS62が肯定判断の場合にはステップS63にて交差点位置を確定するとともに、交差点位置を確定するために用いた複数の車両位置Pに対して重心点からの距離をそれぞれ算出し、さらに、それらの距離の分散値を算出する。
【0046】
そして、続くステップS64では、プローブデータ311が示す車両位置Pに基づいて、たとえば、最小二乗法等の近似曲線の算出方法を用いて道路形状を推測し、且つ、その推測した道路形状に対して、その道路形状の推測に用いた車両位置Pの相関係数を算出する。
【0047】
続くステップS65では、上記ステップS61〜S64の処理をもとに式1から信頼度係数αを算出する。
(式1) α=情報元係数+1/分散値+相関係数
そして、続くステップS66では、ステップS65で算出した信頼度係数αを用い、式2から信頼度を算出する。なお、式2の経過日数は、学習データ121に付加されているデータ作成日や、サプライヤデータ201の提供日と、このステップS66を実行した日とから算出する。
(式2) 信頼度=(α×母集団)/経過日数
式2から信頼度を算出し、また、式2における信頼度計数αは式1から算出するので、信頼度は、情報元の信頼性が高いほど高くなり、経過日数が長いほど低くなり、母集団の数が大きいほど高くなり、学習データ121の分散値が大きいほど低くなり、学習データ121の相関係数が大きいほど高くなる。
【0048】
図5に戻り、請求項の道路データ選択手段に相当する処理であるステップS54では、ステップS53で計算した信頼度が高いデータを選択する。そして、ステップS54を実行後は、ステップS52を否定判断した場合と同様に、ステップS55を実行して配信地図データ122を作成する。このステップS55が請求項の配信データ作成手段に相当する。
【0049】
このようにして作成した配信地図データ122は、図2に示すように、DBセンタ110から情報センタ120に送信され、情報センタ120において、配信地図データ122として登録される(ステップS7)。
【0050】
図7は、ナビゲーション装置304が新たな地図データを要求する際の処理を示すフローチャートである。まず、ステップS71では、ユーザによって、地図データの要求操作が操作器309から行われる。この要求操作が行われると、ナビゲーション装置304の制御回路320は、地図データ記憶媒体301に記憶されている地図データよりも新しい地図データがあるか否かを問い合わせる問い合わせ要求を、通信機器306から情報センタ120に送信する。
【0051】
情報センタ120では、その問い合わせ要求を受信した場合、配信可能な配信地図データ122が登録されているか否かを確認し、配信可能な配信地図データ122が登録されている場合には、その配信地図データ122をナビゲーション装置304へ送信する。ナビゲーション装置304では、その配信地図データ122を取得し、地図データ記憶媒体301に記憶されている道路地図データを更新する(ステップS73)。
【0052】
以上、説明した本実施形態によれば、道路地図DB111に、同じ道路に対する道路データが複数あると判定した場合、各道路データの信頼度に基づいて、同じ道路に対する複数の道路データから1つの道路データを選択して配信地図データ122を作成する。そのため、より信頼性の高い地図データを配信することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0054】
たとえば、前述の式1において、分散値や相関係数の影響を大きくするために、第2項、第3項に1よりも大きい係数β、γを乗じて信頼度係数αを算出してもよい。
【0055】
また、前述の実施形態では、車載装置300はプローブデータ311を情報センタ120に送信しており、情報センタ120において、そのプローブデータ311から学習データ121を作成していたが、車載装置300が自車の走行履歴と地図データ記憶媒体301に記憶している道路地図データとから学習データ121を作成し、この作成した学習データ121を情報センタ120へ送信してもよい。
【符号の説明】
【0056】
100:地図データ管理システム、 110:DBセンタ、 111:道路地図DB、 120:情報センタ、 121:学習データ、 122:配信地図データ、 200:地図サプライヤ、 201:道路地図データ(サプライヤデータ)、 300:車載装置、 301:地図データ記憶媒体、 302:GPS受信機、 303:ジャイロスコープ、 304:ナビゲーション装置、 305:メモリ、 306:通信機器、 307:メモリスロット、 308:表示器、 309:操作器、 310:ECU、 311:プローブデータ、 312:プローブデータ記憶媒体、 320:制御回路、 321:メモリ、 400:パケット通信網、 500:自宅PC、 600:既存道路、 610:学習道路、 P:車両位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路地図データベースを記憶する記憶装置を備え、その記憶装置に記憶されている道路地図データベースから配信地図データを作成して外部に配信する道路地図データ管理システムであって、
車両のプローブ情報に基づいて作成された道路データまたはそのプローブ情報を学習データとして取得する学習データ取得手段と、
その学習データに基づいて定まる道路データが、前記記憶装置に記憶されている道路地図データベースに含まれる道路と同じ道路に対する道路データであるか否かを判定する判定手段と、
その判定手段で同じ道路に対する道路データであると判定された道路データのそれぞれの信頼度に基づいて、同じ道路に対する複数の道路データから1つの道路データを選択する道路データ選択手段と、
選択した道路データに基づいて配信地図データを作成する配信データ作成手段とを含むことを特徴とする道路地図データ管理システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記信頼度が、道路データの情報元の信頼性が高いほど高くなることを特徴とする道路地図データ管理システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記信頼度が、道路データの経過日数が長いほど低くなることを特徴とする道路地図データ管理システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記信頼度が、前記学習データの母集団数が大きいほど高くなることを特徴とする道路地図データ管理システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
前記信頼度が、前記学習データの分散値が大きいほど低くなることを特徴とする道路地図データ管理システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項において、
前記信頼度が、前記学習データの相関係数が大きいほど高くなることを特徴とする道路地図データ管理システム。
【請求項7】
請求項2において、
前記信頼度が、信頼度係数αと母集団数との積を、前記道路データの経過日数で割った値として算出され、
前記信頼度係数αが、道路データの情報元の信頼性が高いほど高くなる第1項と、前記学習データの分散値が大きいほど小さくなる第2項と、前記学習データの相関係数が大きいほど大きくなる第3項との和から算出されることを特徴とする道路地図データ管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−210948(P2010−210948A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57025(P2009−57025)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】