説明

道路標識柱及びその製造方法

【課題】反射性能が良好であって夜間の視認性に優れ、しかも車両によって繰返し踏みつけられても夜間の視認性の低下が抑制された道路標識柱並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】基台部16及び基台部16に立設された熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなるポール12とを備え、ポール12の外周面の少なくとも一部に反射塗膜層が形成されており、反射塗膜層は、球状ガラス粒子24と高反射性球状粒子26とを含有し、無黄変ポリウレタン樹脂又はアクリルウレタン樹脂をバインダー22とするものである道路標識柱10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に反射塗膜層が形成され、弾性変形可能なポールを備えた、主として道路に設置される道路標識柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路標識柱は、上下車道の中央分離線や、車道と歩道の境界線標示用、公園や街路等の車止め仕切り等の標示用として使用されるものである。係る道路標識柱は、夜間においても視認性が必要であり、そのため、一般的にはポールの上部にヘッドライトの光を反射する反射テープが巻回されている。しかし、反射テープは幅が狭いために夜間の視認性が充分ではない。
【0003】
係る問題を解決し、ポール全体に反射塗膜層を形成した道路標識柱が公知である(例えば特許文献1、2など)。特許文献1に開示された反射塗膜層は、金属粉を含有する透明樹脂層の上にガラスビーズを含む透明樹脂層の2層構造を有するものである。
【0004】
特許文献2に開示された発明は、ポールを押出成形により成形すると同時に該ポールの外周面に透光性の被覆層を押出成形により形成し、該被覆層にガラスビーズを付着させて反射塗膜層を形成した道路標識柱に関するものである。
【0005】
【特許文献1】特開2000−160522号公報
【特許文献2】特開2005−90155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された道路標識柱は、ポール基材に必要に応じて下塗り層を形成し、その上に金属粉を含有する透明樹脂層を形成した後にさらにガラスビーズを固定する定着層を塗布し、該定着層の塗料が所定粘度になったときにガラスビーズを付着させて形成された反射層を有するものであり、製造工程の数が多く、製造が煩雑であってコストの高いものである。
【0007】
特許文献2に開示の道路標識柱は、先に押出成形したポールの表面に熱可塑性樹脂を押し出し、その直後であって熱可塑性樹脂が冷却硬化する前にガラスビーズを付着させて反射層を形成するものであるため、ガラスビーズの接着力が充分ではなく、道路標識柱が大型トラックなどに繰返し踏みつけられた場合にガラスビーズが脱落して視認性が低下するという問題を有する。また、特許文献2に開示の技術は、ポールを押出成形する円柱状の道路標識柱に限定され、基台部側の直径が大きく、基台との固定が安定なポールの道路標識柱には適用できないという問題も有する。
【0008】
本発明は、上記公知技術の問題点に鑑みて、反射性能が良好であって夜間の視認性に優れ、しかも車両によって繰返し踏みつけられても夜間の視認性の低下が抑制された道路標識柱並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の道路標識柱は、基台部及び前記基台部に立設された熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなるポールとを備え、
前記ポールの表面の少なくとも一部に反射塗膜層が形成されており、
前記反射塗膜層は、球状ガラス粒子と高反射性球状粒子とを含有する塗料用透明樹脂バインダーとからなるものであることを特徴とする。
【0010】
係る構成の道路標識柱は、反射性能が良好であって夜間の視認性に優れ、しかも車両によって繰返し踏みつけられた場合において球状ガラス粒子と高反射性球状粒子の脱落による夜間の視認性の低下が抑制されたものである。
【0011】
上述の道路標識柱においては、前記反射塗膜層は、さらに乳白色半透明のセラミック球状粒子を含有することが好ましい。
【0012】
乳白色半透明のセラミック球状粒子は屈折率がガラス粒子と異なるため、上記構成の反射塗膜層は、波長により屈折率が異なるという光の性質により、ヘッドライトの光等の波長分布を有する光を効率よく再帰反射し、夜間の視認性がより優れた道路標識柱となる。
【0013】
上述の道路標識柱においては、さらに前記ポールと反射塗膜層との間にポリウレタン樹脂層を有することが好ましい。
【0014】
係る構成の道路標識柱は、とりわけトラックなどの重量の大きな車両の通過においてポールが踏みつぶされるような変形を受けた場合でも、夜間の視認性の低下が抑制されたものである。
【0015】
別の本発明は基台部及び前記基台部に立設された熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなるポールとを備え、前記ポールの外周面の少なくとも一部に反射塗膜層が形成された道路標識柱の製造方法であって、
熱可塑性ポリウレタンエラストマーにてポールを成形するポール成形工程、前記ポールの表面に球状ガラス粒子、高反射性球状粒子及び塗料用透明樹脂バインダーとを含有する塗料を塗装して前記反射塗膜層を形成する反射塗料塗装工程を有することを特徴とする。
【0016】
係る構成の製造方法によれば、反射性能が良好であって夜間の視認性に優れ、しかも車両によって繰返し踏みつけられた場合において球状ガラス粒子と高反射性球状粒子の脱落による夜間の視認性の低下が抑制された道路標識柱を製造することができる。
【0017】
上述の道路標識柱の製造方法においては、前記塗料は、さらに乳白色半透明のセラミック球状粒子を含有することが好ましい。
【0018】
上記構成の道路標識柱の製造方法によれば、乳白色半透明のセラミック球状粒子は屈折率がガラス粒子と異なるため、上記構成の反射塗膜層は波長により屈折率が異なるという光の性質により、ヘッドライトの光等の波長分布を有する光を効率よく再帰反射し、夜間の視認性がより優れた道路標識柱を製造することができる。
【0019】
上述の道路標識柱の製造方法においては、さらに前記反射塗料塗装工程の前に前記ポールの表面にポリウレタン樹脂層を形成する下塗り工程を有することが好ましい。
【0020】
係る構成の製造方法によれば、とりわけトラックなどの重量の大きな車両の通過においてポールが踏みつぶされるような変形を受けた場合でも、夜間の視認性の低下が抑制された道路標識柱を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の道路標識柱のポールは熱可塑性ポリウレタンエラストマーにて形成する。熱可塑性ポリウレタンエラストマーとしては、ポリエーテル系又はポリカーボネート系の熱可塑性ポリウレタンエラストマーの使用が好ましい。
【0022】
熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、硬度がJIS−A硬度にて90以下であることが好ましく、85以下であることがより好ましい。硬度が高すぎると繰返しの屈曲により破損する場合が生じる。熱可塑性ポリウレタンエラストマーの硬度は、通常JIS−A硬度にて50以上である。
【0023】
ポール表面の反射塗膜層は、球状ガラス粒子、高反射性球状粒子及び塗料用透明樹脂バインダーとを含有する。係る構成の反射塗膜層は、ヘッドライト等の光が高反射性球状粒子表面や内面で反射され、その結果球状ガラス粒子から反射される光が多くなって視認性が向上する。
【0024】
塗料用透明樹脂バインダーとして公知の無黄変樹脂バインダーが限定なく使用できる。具体的にはアクリル樹脂、無黄変ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂などが例示される。これらの中でもポールないし下塗りポリウレタン樹脂との接着性と可とう性に優れ、車両により踏みつけられても亀裂を発生しないことから無黄変ポリウレタン樹脂又はアクリルウレタン樹脂の使用が好ましい。
【0025】
球状ガラス粒子を構成するガラス材料としては、ケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス等の一般的なガラス、NaO−CaO−SiO、BaO−TiO−SiO、BaO−ZnO−SiO、BaO−ZnO−TiO等の高屈折率ガラス材料などが例示できる。これらの中でも、反射効率に優れ、塗料用透明樹脂バインダーとの屈折率の差が大きく、反射率の高い反射塗膜層が得られる観点より、屈折率が1.5以上、より好ましくは1.6以上、さらに好ましくは1.7以上の高屈折率ガラス材料からなる球状ガラス粒子の使用が好ましい。球状ガラス粒子の粒子径は、5〜150μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましく、20〜80μmであることがさらに好ましい。
【0026】
高反射性球状粒子としては、アルミニウム球状粒子などの金属球状粒子やアルミニウムを蒸着したガラス球状粒子などの無機粒子の表面に金属被覆した粒子等が例示され、これらの中でもアルミニウムを蒸着したガラス球状粒子の使用が低コストであり、好ましい。アルミニウムを蒸着したガラス球状粒子において、アルミニウムの蒸着はガラス球状粒子の全面に施されていてもよいが、部分的、好ましくは表面の30〜60%に施されていることも好ましい。球状ガラス粒子の表面の30〜60%にアルミニウム蒸着が施されている高反射性球状粒子を添加すると、反射塗膜層中に特に反射効率が高い金属蒸着面の凹面が外面に向かう粒子が存在することになり、反射効率がより高い反射塗膜層が形成される。高反射性球状粒子の粒子径も5〜150μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましく、20〜80μmであることがさらに好ましい。ガラス球状粒子の表面に金属被覆した高反射性球状粒子としては市販品を使用することもでき、例えば済南華明微珠材料有限責任公司(中国)から販売されている。
【0027】
反射塗膜層の球状ガラス粒子、高反射性球状粒子の含有率は、(球状粒子合計)/(球状粒子合計+塗料用透明樹脂)が40重量%〜95重量%、より好ましくは40〜80重量%である。球状粒子の含有率が高すぎると反射塗膜層の強度が低下し、低すぎると反射効果が低下する。また球状ガラス粒子/高反射性球状粒子の比率は100/1〜0.5/1であることが好ましく、20/1〜1/1であることがより好ましく、6/1〜2/1であることがさらに好ましい。
【0028】
ポール表面の反射塗膜層において、さらに添加が好ましい乳白色半透明のセラミック球状粒子としては、例えばジルコニア/シリカ系粒子(Zirbrast;SEPR社)、球状アルミナ(昭和電工)、球状シリカ(電気化学工業)などが例示される。乳白色半透明のセラミック球状粒子の粒子径は好ましくは10〜150μm、より好ましくは20〜100μmである。
【0029】
反射塗膜層に乳白色半透明のセラミック球状粒子を含有させる場合、球状ガラス粒子の一部をセラミック球状粒子に置換することが好ましい。球状ガラス粒子/セラミック球状粒子の重量比は、6/1〜1/6であることが好ましく、5/1〜1/1であることがより好ましく、4/1〜2/1であることがさらに好ましい。
【0030】
下塗り層であるポリウレタン樹脂層構成材料は、可とう性と接着性に優れたポリウレタン樹脂を使用する。ポリウレタン樹脂層構成材料としては市販品を使用することも好ましく、デュラネートN(旭化成)、コロネートL(日本ポリウレタン)などのポリイソシアネート硬化剤を使用する2液型下塗り剤を使用することも好適である。下塗り層であるポリウレタン樹脂層の厚さは、10〜50μmであることが好ましい。
【0031】
本発明の道路標識柱の基台部は注型タイプのポリウレタン樹脂、熱可塑性樹脂等の公知の材料にて構成する。熱可塑性樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を限定なく使用可能である。具体的にはPET,PBT等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタン樹脂、PFA等のフッ素系樹脂、ABS樹脂、PP等のポリオレフィン樹脂等並びにこれらの樹脂から選択される樹脂のブレンド樹脂、ポリマーアロイ等が例示される。
【実施例1】
【0032】
図1に本発明の道路標識柱の好適な態様を正面図と部分拡大断面図にて示した。道路標識柱10はポール12と基台部16とからなり、ポールの上部には再帰反射テープ14が巻回貼着されている。ポール基材層18の表面にはポリウレタン樹脂層(下塗り層)20が積層され、その上に球状ガラス粒子24と高反射性球状粒子26とを含有する無黄変ポリウレタン樹脂又はアクリルウレタン樹脂からなるバインダー層22が積層され、反射塗膜層を構成している。図1においては、球状ガラス粒子を使用した例を示したが、球状ガラス粒子24の一部を乳白色半透明のセラミック球状粒子に置換することとも好適な態様である。反射塗膜層は、ポール12の全面に形成してもよく、部分的に形成してもよい。
【実施例2】
【0033】
(実施例1)
市販のポリオキシテトラメチレングリコールをポリオール成分とした硬度がJIS−Aにて70の熱可塑性ポリウレタンエラストマーを使用してポールを作製した。このポール表面にイソシアネート化合物を硬化剤とする2液型ポリウレタン樹脂溶液(シールプライマー:大東ペイント)を、乾燥後の皮膜厚さが30μmとなるように塗布、乾燥した。
【0034】
ポリウレタン樹脂層の上に、平均粒子径が50μmのBaO−TiO−SiO球状ガラス粒子、平均粒子径が60μmのジルコニア/シリカ系セラミック球状粒子、及び平均粒子径が50μmの高反射性球状粒子(球状ガラス粒子の半球面にアルミニウムを蒸着した粒子)とを含むポリイソシアネート硬化型アクリルウレタン樹脂塗料(ガラス球状粒子/セラミック球状粒子/高反射性球状粒子=2.5/1/1(重量比)、固形分中の酸化チタン球状粒子+高反射性球状粒子の含有率=65重量%)を乾燥後の皮膜厚さが80μmとなるように塗布・乾燥した。得られたポールに基台部を装着固定して道路標識柱を作製した。
【0035】
(比較例1)
(実施例1)において得られたポールに反射塗膜層を形成することなく道路標識柱として評価した。
【0036】
(比較例2)
(実施例1)において得られたポールに、ガラス球状粒子と高反射性球状粒子を含まない塗料を塗布し、塗膜の乾燥前に透明無機粒子と高反射性球状粒子を吹き付けて反射塗膜層を形成した。この反射塗膜層は、手でこすっただけで粒子が脱落するものであったので、反射性能の評価は行わなかった。
【0037】
(評価)
<反射性能>
図2に示した方法にて再帰反射係数を測定した。この測定方法はJIS Z 9117に準拠したものである。反射性能は、ポールから縦方向に21cm,周方向に15cmのサンプルを切り出し、距離d離れた位置から投光器36にて白色光を照射し、反射光の照度を同じ距離d離れた受光器38にて測定し、次式により求めた。
再帰反射係数R=(Er×d)/(Es×A)
Erは受光器で測定した照度(lux)、Esは反射シート面の照度(lux)、Aはサンプルの面積(m)である。測定結果は表1に示した。
【0038】
<耐久性>
(道路標識柱のポールの製造例)にて作製した道路標識柱をアスファルト路面に設置し、総重量20tのトラックを速度80km/hにて走行させて10回踏みつけた後に上記の測定法により反射性能を測定した。測定結果は表1に示した。
【0039】
【表1】

【0040】
表1の結果より、本発明の道路標識柱は重量車両による繰返しの踏みつけ後においても視認性の低下のないものであった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の道路標識柱の好適な形態を例示した正面図と部分拡大断面図
【図2】本発明の道路標識柱の再帰反射係数の測定方法を示した正面図
【符号の説明】
【0042】
10 道路標識柱
12 ポール
14 再帰反射テープ
16 基台部
20 ポリウレタン樹脂層
22 バインダー
24 球状ガラス粒子
26 高反射性球状粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台部及び前記基台部に立設された熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなるポールとを備え、
前記ポールの表面の少なくとも一部に反射塗膜層が形成されており、
前記反射塗膜層は、球状ガラス粒子と高反射性球状粒子とを含有する塗料用透明樹脂バインダーとからなることを特徴とする道路標識柱。
【請求項2】
前記反射塗膜層は、さらに乳白色半透明のセラミック球状粒子を含有することを特徴とする請求項1に記載の道路標識柱。
【請求項3】
前記ポールと反射塗膜層との間にさらにポリウレタン樹脂層を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の道路標識柱。
【請求項4】
基台部及び前記基台部に立設された熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなるポールとを備え、前記ポールの外周面の少なくとも一部に反射塗膜層が形成された道路標識柱の製造方法であって、
熱可塑性ポリウレタンエラストマーにてポールを成形するポール成形工程、前記ポールの表面に球状ガラス粒子、高反射性球状粒子及び塗料用透明樹脂バインダーとを含有する塗料を塗装して前記反射塗膜層を形成する反射塗料塗装工程を有することを特徴とする道路標識柱の製造方法。
【請求項5】
前記塗料は、さらに乳白色半透明のセラミック球状粒子を含有することを特徴とする請求項4に記載の道路標識柱の製造方法。
【請求項6】
さらに前記反射塗料塗装工程の前に前記ポールの表面にポリウレタン樹脂層を形成する下塗り工程を有することを特徴とする請求項4又は5に記載の道路標識柱の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−284952(P2007−284952A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112077(P2006−112077)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【特許番号】特許第3925814号(P3925814)
【特許公報発行日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【出願人】(000107158)シンロイヒ株式会社 (13)
【出願人】(504297559)堺商事株式会社 (2)
【Fターム(参考)】