説明

遠心分離用デバイス

【課題】不潔野にある遠心分離装置を用いて遠心分離処理を行っても、容易且つ低コストで遠心分離容器を清潔状態に保持することのできる遠心分離用デバイスを提供する。
【解決手段】複数成分を含む溶液を遠心分離処理することで目的成分を採取するための遠心分離用デバイス1であって、溶液を収容する筒状体12と、筒状体を密栓する栓14と、を有して、溶液を密閉状態で収容する内容器10と、筒状体を着脱自在に収容する支持体22と、内容器の一部を露出させて内容器の着脱を可能にする取り出し部24と、を有して、内容器を密閉状態で収容する外容器20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容器の滅菌状態を保持しながら、血液等の複数成分を含む液体中から目的成分を遠心分離処理を行うための遠心分離用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
血液凝固抑制剤を添加して遠心分離処理を行った血液は、大きくは、赤血球層と白血球層と血漿層との三層に分離される。分離された各層に含まれる各成分は、生体にとって非常に有用であるために、様々な治療法に利用されている。
【0003】
血漿層中に含まれる血小板は、血液凝固反応の過程で脱顆粒により血小板由来増殖因子(PDGF)を初めとする様々なサイトカインを放出することが知られている。そのため、血小板を高濃度で含んだ血漿(多血小板血漿 Platele-Rich-Plasma:PRP)を再生医療療法に使用することが試みられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
PRPを採取する方法として様々な検討がなされているが、具体的には、採取した血液をまず比較的遠心力の弱い一次遠心分離処理を行う。各成分の比重の関係から赤血球が回転遠心側に偏在し、血漿が回転中心側に存在することになり、両者の境界部分には白血球と血小板とを含有する血漿が存在する。血小板の層を含めて、上清部分に該当する血漿を他の遠心分離用容器に移し替える。次に、比較的遠心力の強い二次遠心分離処理を行って、PRP層と血小板濃度の低い血漿(少血小板血漿 Platele-Poor-Plasma:PPP)層とに分離し、上清部分であるPPP層を取り除くことにより、PRP層を回収するという2回遠心分離法が、遠心分離処理後の状態が良いために多用されている。この回収方法を用いてPRPを容易に回収する方法が、様々に検討されている(例えば、特許文献2,3を参照)。
【0005】
さらに、遠心分離処理の対象液体を血液とする代わりに、幹細胞を含む、骨髄液及び臍帯血を遠心分離処理を行うことによっても目的の細胞種に応じて細胞を分画することができる。これも再生医療療法に利用されている。
【特許文献1】特開2006−122518号公報
【特許文献2】特開平09−103707号公報
【特許文献3】特開2006−78428号公報
【0006】
各成分を容易に遠心分離処理するために、様々なデバイスが検討されており、当然ながら、滅菌処理が施され、遠心分離処理された成分を治療に使用することを前提として検討されている。しかしながら、上記方法を用いて採取を行おうとすると、全てのデバイスは遠心分離器にセットされて使用されなければならず、滅菌処理されていない遠心分離器のロータにセットされる際には、デバイスの外気側は不潔な状態になってしまう。どの手術においても、術者は手術の始めから終わりまで清潔状態を維持しておく必要があるため、採取した成分を使用するためには、使用時に術者以外の不潔野にいる補助員が必要となり、不潔野にいる補助員や外気側が不潔野に存するデバイスが患者の患部に近づくことによって、材料を埋植するような手術においては、感染のリスクを高める要因となる。したがって、手術の種類によっては、遠心分離処理の使用が回避される状況が発生する。
【0007】
このような状況下でも遠心分離処理を行うためには、デバイスの外気側も清潔な状態を保持しておく必要がある。そのための方法として、ロール紙等の滅菌バッグを使用する方法も考えられるが、その強度不足の点から、遠心分離処理を行う際に滅菌バッグが破れてしまう危険性が高いという問題がある。また、遠心分離器のロータを滅菌処理する方法も考えられるが、大きなサイズの遠心分離器のロータを手術毎に滅菌処理を行うことは多大な負担となるという問題がある。さらに、自動化遠心分離器等を用いて無菌環境下で自動的に遠心分離処理を行う方法も考えられるが、コストが非常に高くなるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、不潔野にある遠心分離装置を用いて遠心分離処理を行っても、容易且つ低コストで遠心分離容器を清潔状態に保持することのできる遠心分離用デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段および作用・効果】
【0009】
上記技術的課題を解決するために、本発明によれば、以下の遠心分離用デバイスが提供される。
【0010】
すなわち、本発明に係る遠心分離用デバイスは、複数成分を含む溶液を遠心分離処理することで目的成分を採取するための遠心分離用デバイスであって、
前記溶液を収容する筒状体と、該筒状体を密栓する栓と、を有して、溶液を密閉状態で収容する内容器と、
前記筒状体を着脱自在に収容する支持体と、内容器の一部を露出させて内容器の着脱を可能にする取り出し部と、を有して、内容器を密閉状態で収容する外容器と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、清潔な状態に保たれた内容器が外容器に密閉状態で収容されているので、内容器を収容した外容器を不潔野で遠心分離処理を行っても、不潔な状態が内容器に及ぶことはなく、内容器は清潔な状態に保たれる。遠心分離処理の後に不潔野にいる補助員が外容器を開けて、清潔野にいる術者が清潔な状態に保たれた内容器を取り扱うことで、内容器の清潔な状態が保たれる。
【0012】
術者や補助者は、包装容器の蓋部を左右に引き離すことによって内容物を取り出すという作業に慣れている。したがって、取り出し部は、その下端部が支持体に固着され、下端部から上端部にかけて支持体の長手方向に二分割されていることで左右に開閉可能なヒンジ構造を形成していることが好ましい。
【0013】
外容器の取り出し部を左右に引き離す代わりに、外容器の取り出し部を上下方向に引き離す形態とすることも可能である。すなわち、取り出し部は、支持体とは別体で構成されていて、支持体に対して係着可能である。
【0014】
支持体は一つの内容器を収容するだけでなく、支持体は、並列配置された複数の内容器を収容することも可能である。
【0015】
遠心分離処理の際には大きな遠心力が外容器に作用するので、外容器が遠心力に対しても変形・破損しないように構成しておくことが必要である。変形・破損の防止のために外容器の側壁部の厚みを厚くすることも有効であるが、外容器のサイズが大きくなってしまう。そこで、外容器は、遠心力に対しても変形しない自己保形性を備えた材料から構成されていることが好ましい。
【0016】
本願発明は、幹細胞を含む、骨髄液及び臍帯血にも適用可能であるが、溶液が血液である場合に適用可能である。さらに、脂肪、皮膚、各種臓器に含まれる幹細胞を他の細胞と分離するのにも適用可能である。
【0017】
対象溶液が血液である場合、目的成分が多血小板血漿である。また、対象溶液が骨髄液の場合、目的成分が幹細胞である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明に係る遠心分離用デバイス1の第一実施形態を、図1乃至5を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の第一実施形態に係る遠心分離用デバイス1を模式的に示した斜視図である。ここで、(A)は開閉扉部24が閉じた状態を示しており、(B)は開閉扉部24が開いた状態を示している。図2は、血液中から多血小板血漿を採取するときに本発明に係る遠心分離用デバイス1を適用したときの遠心分離プロセスのフローチャートである。図3は、血液中から多血小板血漿を採取するときに本発明に係る遠心分離用デバイス1を適用したときの別の遠心分離プロセスのフローチャートである。図4は、図3に示した遠心分離プロセスを模式的に示した説明図である。図5は、骨髄液中から骨髄細胞を採取するときに本発明に係る遠心分離用デバイス1を適用したときのさらに別の遠心分離プロセスのフローチャートである。
【0020】
まず、図1を参照しながら遠心分離用デバイス1の構成について説明する。
【0021】
遠心分離用デバイス1は、目的成分を含んだ試料溶液を密閉状態で収容する試料管(内容器)10と、試料管10を密閉状態で収容するアダプタ容器(外容器)20と、から構成されている。
【0022】
内容器としての試料管10は、上部には開口部を有するとともに下部に先細の有底部を有して、血液や骨髄液や臍帯血等の試料溶液を収容する筒状体12と、上部の開口部に嵌合して該筒状体12を密栓する栓14と、を備えている。試料管10は、滅菌処理されている。
【0023】
外容器としてのアダプタ容器20は、遠心分離器に装着可能に構成されているとともに、支持体22と、開閉扉部(取り出し部)24と、を備えている。アダプタ容器20の支持体22は、上部には開口部を有するとともに下部に先細の有底部を有して、挿入穴23を介して筒状体12を着脱自在に収容する。アダプタ容器20の開閉扉部(取り出し部)24は、試料管10の一部を露出させて試料管10の着脱を可能にする。試料管10がアダプタ容器20に収容された状態では、試料管10の栓14の全部と、筒状体12の全長に対して30%乃至70%の上方部分とが露出している。
【0024】
取り出し部としての開閉扉部24は、その下端部が薄肉に構成されたヒンジ部26を介して支持体22のフランジ部25に固着され、下端部から上端部にかけて支持体22の長手方向、すなわち軸方向に沿って二分割されていることで、左右に開閉可能なヒンジ構造を形成している。左右の開閉扉部24の側面にはつまみ部28がそれぞれ設けられている。補助者等がつまみ部28を把持することを容易にするために、つまみ部28には凹凸や溝等の滑り止めを備えていてもよい。また、補助者等がつまみ部28の存在を容易に視認することができるように、つまみ部28に他の部位とは異なった色付けを行ってもよい。また、左右の開閉扉部24は、左右均等に分割したり、左右不均等に分割することができる。
【0025】
アダプタ容器20の取り扱いの際や遠心分離処理の際に開閉扉部24が不用意に開くことのないように、左右の開閉扉部24は、互いに係着可能な係着構造を備えている。このような係着構造としては、様々な公知のものを用いることができ、例えば、互いに嵌合する凸部及び凹部、ネジ止め、弾性的に変形する爪が凹部や溝に嵌合するもの、互いに引き合う磁石対の埋設等がある。したがって、図1の(A)に示すように、遠心分離処理の際には、係着構造が機能することによって、開閉扉部24が閉じた状態にあり、図1の(B)に示すように、試料管10の取り出しの際には、係着構造が解除されることによって、開閉扉部24が開いた状態になる。
【0026】
アダプタ容器20は、遠心分離処理の際の遠心力にも耐えることができるように構成されている。遠心分離器内のスペース上の制約があるので、アダプタ容器20をロール紙等で構成して、その肉厚を厚くすることは好ましくない。肉厚をあまり厚くしなくても遠心分離処理の際の遠心力にも耐えることのできる自己保形性のある材料として、樹脂材料や金属材料が好適である。具体的には、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性樹脂が使用可能である。また、ステンレス、銅、アルミニウム等が使用可能である。
【0027】
開閉扉部24の密閉状態を高めるために、ポリウレタン樹脂やポリエチレン樹脂等の発泡樹脂、及びシリコーンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム等の弾性材料を使用することができる。
【0028】
次に、図2乃至5を参照しながら、上記遠心分離用デバイス1の使用形態について説明する。
【0029】
図2は、血液中から多血小板血漿(PRP)を採取するときの遠心分離プロセスを示している。図2において、実線で囲った部分は、作業が一般環境で手袋を着用した状態(すなわち、不潔野にある状態)で行われることを示している。また、一点鎖線で囲った部分は、作業が滅菌環境で手袋を着用した状態(すなわち、清潔野にある状態)で行われることを示している。また、内容器+外容器を二重線で囲っている部分は、試料管10がアダプタ容器20に組み込まれている状態を示しており、内容器を一重線で囲っている部分は、試料管10が単独で使用されている状態を示している。
【0030】
患者から採血すると、滅菌処理された試料管10の栓14を開けて、採血された血液が不潔野にあるアダプタ容器20内の試料管10に入れたあと、試料管10の栓14を閉じて、アダプタ容器20の開閉扉部24を閉じて試料管10をアダプタ容器20内に密封した状態で遠心分離工程に受け渡される。
【0031】
遠心分離工程は、不潔野で行われるが、試料管10がアダプタ容器20に密閉された状態で遠心分離処理を行うので、試料管10の汚染が防止されている。遠心分離処理が終わると、不潔野に曝されているアダプタ容器20のつまみ部28を、不潔野に存する補助者等が把持して、アダプタ容器20の開閉扉部24を開ける。アダプタ容器20から露出した試料管10だけが術者に受け渡される。
【0032】
清潔野にいる術者は、露出した試料管10を把持して、試料管10の栓14を開けて、遠心分離処理された血液から赤血球及び少血小板血漿(PPP)を除去して、目的とする多血小板血漿(PRP)を採取し、患者に適用する。採取された多血小板血漿(PRP)は、血小板の自然治癒力によって体のさまざまな部位の腱および靭帯の修復や、創傷治療、骨の再生などに利用される。
【0033】
次に、図3及び4を参照しながら、別の遠心分離プロセスについて説明する。図3は、血液中から多血小板血漿(PRP)を二段階の遠心分離処理で採取するときの別の遠心分離プロセスを示している。図4は、図3に示した遠心分離プロセスを模式的に図示している。
【0034】
患者から採血すると、滅菌処理された試料管10の栓14を開けて、採血された血液が不潔野にあるアダプタ容器20内の試料管10に入れたあと、試料管10の栓14を閉じて、アダプタ容器20の開閉扉部24を閉じて試料管10をアダプタ容器20内に密封した状態で一次遠心分離工程に受け渡される。
【0035】
一次遠心分離工程は、不潔野で行われるが、試料管10がアダプタ容器20内に密閉された状態で一次遠心分離処理を行うので、試料管10の汚染が防止されている。遠心分離処理が終わると、不潔野に曝されているアダプタ容器20のつまみ部28を、不潔野に存する補助者等が把持して、アダプタ容器20の開閉扉部24を開ける。アダプタ容器20から露出した試料管10だけが術者に受け渡される。
【0036】
清潔野にいる術者は、露出した試料管10を把持して、試料管10の栓14を開けて、遠心分離処理された血液から赤血球を除去する。赤血球を除去した血液を滅菌処理された別の試料管10に移し替えられ、試料管10の栓14を閉じて、アダプタ容器20の開閉扉部24を閉じて試料管10をアダプタ容器20内に密封した状態で二次遠心分離工程に受け渡される。
【0037】
二次遠心分離工程は、不潔野で行われるが、試料管10がアダプタ容器20内に密閉された状態で二次遠心分離処理を行うので、試料管10の汚染が防止されている。二次遠心分離処理が終わると、不潔野に曝されているアダプタ容器20のつまみ部28を、不潔野に存する補助者等が把持して、アダプタ容器20の開閉扉部24を開ける。アダプタ容器20から露出した試料管10だけが術者に受け渡される。
【0038】
清潔野にいる術者は、露出した試料管10を把持して、試料管10の栓14を開けて、遠心分離処理された血液から少血小板血漿(PPP)を除去して、目的とする多血小板血漿(PRP)を採取し、患者に適用する。
【0039】
次に、図5を参照しながら、さらに別の遠心分離プロセスについて説明する。図5は、骨髄液中から骨髄細胞を遠心分離処理で採取するときの遠心分離プロセスを示している。
【0040】
患者から骨髄液を採取すると、滅菌処理された試料管10の栓14を開けて、採取された骨髄液が不潔野にあるアダプタ容器20内の試料管10に入れたあと、試料管10の栓14を閉じて、アダプタ容器20の開閉扉部24を閉じて試料管10をアダプタ容器20内に密封した状態で遠心分離工程に受け渡される。
【0041】
遠心分離工程は、不潔野で行われるが、試料管10がアダプタ容器20内に密閉された状態で遠心分離処理を行うので、試料管10の汚染が防止されている。遠心分離処理が終わると、不潔野に曝されているアダプタ容器20のつまみ部28を、不潔野に存する補助者等が把持して、アダプタ容器20の開閉扉部24を開ける。アダプタ容器20から露出した試料管10だけが術者に受け渡される。
【0042】
清潔野にいる術者は、露出した試料管10を把持して、試料管10の栓14を開けて、遠心分離処理された骨髄液から赤血球及び血漿等を除去して、目的とする骨髄細胞を採取し、患者に適用する。
【0043】
次に、遠心分離用デバイス1の他の実施形態について説明する。図6は、本発明の第二実施形態に係る遠心分離用デバイス1を模式的に示している。図7は、本発明の第三実施形態に係る遠心分離用デバイス1を模式的に示している。上述した第一実施形態に係る遠心分離用デバイス1との相違点を中心に説明する。
【0044】
図6に示した遠心分離用デバイス1は、アダプタ容器30の上キャップ32を支持体34から上方向に引き離す形態のものである。すなわち、取り出し部としての上キャップ32は、支持体34とは別体で構成されていて、支持体34に対して係着している。
【0045】
外容器としてのアダプタ容器30は、遠心分離器に装着可能に構成されているとともに、支持体34と、上キャップ32と、を備えている。アダプタ容器30の支持体34は、上部には開口部を有するとともに下部に先細の有底部を有して、挿入穴を介して筒状体12を着脱自在に収容する。アダプタ容器30の上キャップ32は、試料管10の一部を露出させて試料管10の着脱を可能にする。試料管10がアダプタ容器30に収容された状態では、試料管10の栓14の全部と、筒状体12の全長に対して30%乃至70%の上方部分とが露出している。
【0046】
アダプタ容器30の取り扱いの際や遠心分離処理の際に上キャップ32が不用意に離脱することのないように、支持体34及び上キャップ32は、互いに係着可能な係着構造を備えている。このような係着構造としては、様々な公知のものを用いることができ、例えば、互いに嵌合する凸部及び凹部、ネジ止め、弾性的に変形する爪が凹部や溝に嵌合するもの、互いに引き合う磁石対の埋設等がある。したがって、図6の(B)に示すように、試料管10の取り出しの際には、係着構造が解除されることによって、上キャップ32が離脱した状態になり、図6の(C)に示すように、遠心分離処理の際には、係着構造が機能することによって、上キャップ32が閉じた状態になる。
【0047】
アダプタ容器30も、遠心分離処理の際の遠心力にも耐えることのできる自己保形性のある樹脂材料や金属材料から構成されている。具体的には、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性樹脂が使用可能である。また、ステンレス、銅、アルミニウム等が使用可能である。
【0048】
上キャップ32の密閉状態を高めるために、ポリウレタン樹脂やポリエチレン樹脂等の発泡樹脂、及びシリコーンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム等の弾性材料を使用することができる。
【0049】
図7に示した遠心分離用デバイス1も、アダプタ容器40の上蓋42を支持体44から上方向に引き離す形態のものであり、複数の試料管10を収容可能に構成されている。すなわち、縦横に整列配置された複数の挿入穴を有するトレイが支持体44に装着されている。外容器としてのアダプタ容器40は、遠心分離器に装着可能に構成されているとともに、支持体44と、上蓋42と、を備えている。取り出し部としての上蓋42は、支持体44とは別体で構成されている。支持体44の係着フック46が上蓋42の係着溝48に係着することで、上蓋42が支持体44に対して係着している。当該係着構造は、上述した係着構造と同様のものを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第一実施形態に係る遠心分離用デバイスを模式的に示した斜視図である。ここで、(A)は開閉扉部が閉じた状態を示しており、(B)は開閉扉部が開いた状態を示している。
【図2】血液中から多血小板血漿を採取するときに本発明に係る遠心分離用デバイスを適用したときの遠心分離プロセスのフローチャートである。
【図3】血液中から多血小板血漿を採取するときに本発明に係る遠心分離用デバイスを適用したときの別の遠心分離プロセスのフローチャートである。
【図4】図3に示した遠心分離プロセスを模式的に示した説明図である。
【図5】骨髄液中から骨髄細胞を採取するときに本発明に係る遠心分離用デバイスを適用したときのさらに別の遠心分離プロセスのフローチャートである。
【図6】本発明の第二実施形態に係る遠心分離用デバイスを模式的に示した図である。ここで、(A)は内容器を外容器から完全に取り出した状態を示しており、(B)は内容器を外容器の支持体に収容した状態を示しており、(C)は内容器を外容器内に完全に収容した状態を示しており、(D)は(B)の斜視図である。
【図7】本発明の第三実施形態に係る遠心分離用デバイスを模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0051】
1:遠心分離用デバイス
10:試料管(内容器)
12:筒状体
14:栓
20:アダプタ容器(外容器)
22:支持体
23:挿入穴
24:開閉扉部(取り出し部)
25:フランジ部
26:ヒンジ部
28:つまみ部
30:アダプタ容器(外容器)
32:上キャップ(取り出し部)
34:支持体
40:アダプタ容器(外容器)
42:上蓋(取り出し部)
44:支持体
46:係着フック
48:係着溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数成分を含む溶液を遠心分離処理することで目的成分を採取するための遠心分離用デバイスであって、
前記溶液を収容する筒状体と、該筒状体を密栓する栓と、を有して、溶液を密閉状態で収容する内容器と、
前記筒状体を着脱自在に収容する支持体と、内容器の一部を露出させて内容器の着脱を可能にする取り出し部と、を有して、内容器を密閉状態で収容する外容器と、
を備えることを特徴とする遠心分離用デバイス。
【請求項2】
前記取り出し部は、その下端部が支持体に固着され、下端部から上端部にかけて支持体の長手方向に二分割されていることで左右に開閉可能なヒンジ構造を形成していることを特徴とする、請求項1記載の遠心分離用デバイス。
【請求項3】
前記取り出し部は、支持体とは別体で構成されていて、支持体に対して係着可能であることを特徴とする、請求項1記載の遠心分離用デバイス。
【請求項4】
前記支持体は、並列配置された複数の内容器を収容することを特徴とする、請求項1乃至3記載の遠心分離用デバイス。
【請求項5】
前記外容器は、遠心力に対しても変形しない自己保形性を備えた材料から構成されていることを特徴とする、請求項1乃至4記載の遠心分離用デバイス。
【請求項6】
前記溶液が血液であることを特徴とする、請求項1記載の遠心分離用デバイス。
【請求項7】
前記目的成分が多血小板血漿であることを特徴とする、請求項1記載の遠心分離用デバイス。
【請求項8】
前記溶液が骨髄液であることを特徴とする、請求項1記載の遠心分離用デバイス。
【請求項9】
前記目的成分が幹細胞であることを特徴とする、請求項1記載の遠心分離用デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−237310(P2008−237310A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78891(P2007−78891)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(504418084)日本メディカルマテリアル株式会社 (106)
【Fターム(参考)】