説明

遠心圧縮機

【課題】氷による遠心圧縮機の破損を抑制することが可能な遠心圧縮機を提供すること。
【解決手段】本発明は、ディフューザ流路16に設けられた可動式のベーン20と、ベーン20の凍結している可能性を判定する凍結判定部60と、凍結判定部60によりベーン20が凍結している可能性があると判定された場合、ベーン20の駆動を停止する駆動停止部62と、を具備するコンプレッサ11である。本発明によれば、氷による遠心圧縮機の破損を抑制することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠心圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インペラとスクロールとの間に設けられ、インペラで増速された流体を減速加圧するディフューザ翼(ベーン)をディフューザ部に設けた遠心圧縮機が知られている。ベーンは、ディフューザ部のディフューザ流路に設けられ、圧縮効率を最適化する。例えば特許文献1には、回転可能なベーンを備える発明が記載されている。特許文献2には、ディフューザ流路に突出可能なベーンを備える発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−180110号公報
【特許文献2】特開2001−329996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば低温環境化において遠心圧縮機を使用した場合等には、ベーンが凍結することがある。ベーンから剥がれた氷により遠心圧縮機が破損することがある。本発明は上記課題に鑑み、氷による遠心圧縮機の破損を抑制することが可能な遠心圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ディフューザ流路に設けられた可動式のベーンと、前記ベーンが凍結している可能性を判定する凍結判定部と、前記凍結判定部により前記ベーンが凍結している可能性があると判定された場合、前記ベーンの駆動を停止する駆動停止部と、を具備する遠心圧縮機である。本発明によれば、氷による遠心圧縮機の破損を抑制することができる。
【0006】
上記構成において、前記ディフューザ流路に流入する空気流量を測定する空気流量測定部を具備し、前記空気流量測定部により測定された空気流量が閾値以上である場合、前記駆動停止部は前記ベーンの駆動停止を解除する構成とすることができる。この構成によれば、遠心圧縮機の破損は抑制され、かつ遠心圧縮機の圧縮効率を高めることができる。
【0007】
上記構成において、前記遠心圧縮機の出口における温度を取得する温度取得部を具備し、前記温度取得部により取得された温度が閾値以上である場合、前記駆動停止部は前記ベーンの駆動停止を解除する構成とすることができる。この構成によれば、遠心圧縮機の破損は抑制され、かつ遠心圧縮機の圧縮効率を高めることができる。
【0008】
上記構成において、前記ベーンは、ディフューザ流路を開閉するように回転可能な回転式ベーン、又はディフューザ流路に突出可能な突没式ベーンである構成とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、氷による遠心圧縮機の破損を抑制することが可能な遠心圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例1に係るコンプレッサを備えるエンジンシステムを例示する概略図である。
【図2】図2は、実施例1に係るコンプレッサを例示する概略図である。
【図3】図3は、回転式ベーンを例示する正面図である。
【図4】図4は、実施例1に係るコンプレッサが備えるECUの構成を例示する機能ブロック図である。
【図5】図5は、実施例1に係るコンプレッサの制御を例示するフローチャートである。
【図6】図6(a)及び図6(b)は、突没式ベーンを例示する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を用いて、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、実施例1に係るコンプレッサを備えるエンジンシステムを例示する概略図である。図1に示すように、エンジンシステム100は、ECU(Engine Control Unit)10、コンプレッサ11(遠心圧縮機)、タービン30、エアフローメータ31、吸気温度計32、過給圧センサ33、時計34、EGRバルブ35、EGR(Exhaust Gas Recirculation:排出ガス循環)クーラ36、吸気圧センサ37、インタークーラ38、エンジン40(内燃機関)、水温計42を備える。
【0013】
コンプレッサ11とタービン30とはシャフト14により連結されている。後述するコンプレッサ11のインペラ13、及びタービン30はシャフト14を軸として回転可能である。このようにエンジンシステム100は、ターボチャージャを備えるシステムである。
【0014】
コンプレッサ11には、ガス通路50の一端、及びガス通路51の一端が接続されている。ガス通路50の他端は、例えばコンプレッサ11が搭載される車両の外部と接続されている。タービン30には、ガス通路52の一端、及びガス通路53の一端が接続されている。ガス通路53の他端は、例えばコンプレッサ11が搭載される車両の外部と接続されている。エンジン40には、ガス通路51の他端、及びガス通路52の他端が接続されている。ガス通路55の一端は、ガス通路51に接続されている。ガス通路54の一端は、ガス通路52に接続されている。EGRクーラ36には、ガス通路55の他端、及びガス通路54の他端が接続されている。
【0015】
コンプレッサ11は、ガス通路50から流入した空気を圧縮し、ガス通路51を通じてエンジン40に供給する。タービン30は、ガス通路52を通じて流入するエンジン40の排気を、ガス通路53を通じて排出する。なお図示は省略するが、ガス通路50には空気を浄化するエアクリーナが設けられ、またガス通路53には排気を浄化する触媒が設けられることがある。エンジン40から排出される排気の一部は、ガス通路54を通じてEGRクーラ36に流入する。EGRクーラ36は、流入した排気(EGRガス)を冷却し、ガス通路55に排出する。EGRガスはガス通路55を通じてエンジン40に流入する。このようにエンジンシステム100は、高圧EGRシステムを利用するシステムである。なおエンジンシステム100は、例えば低圧EGRシステムを利用してもよいし、EGRシステムを利用しなくてもよい。
【0016】
ガス通路50に設けられたエアフローメータ31(空気流量測定部)は、ガス通路50を通じてコンプレッサ11に流入する空気の流量(空気流量)を測定する。ガス通路50に設けられた吸気温度計32は、コンプレッサ11に流入する空気(吸気)の温度(吸気温度)を測定する。ガス通路50に設けられた吸気圧センサ37は、コンプレッサ11に流入する空気の圧力(吸気圧)を測定する。ガス通路55に設けられたEGRバルブ35は、EGRガスの流量を調整するためのバルブである。ガス通路51に設けられたインタークーラ38は、コンプレッサ11が送り出す空気を冷却する。ガス通路51に設けられた過給圧センサ33は、コンプレッサ11からエンジン40に送り込まれるガスの圧力(過給圧)を測定する。エンジン40に設けられた水温計42は、エンジン40の冷却水の温度を測定する。時計34は時間を測定する。
【0017】
ECU10は、エアフローメータ31により測定された空気流量、吸気温度計32により測定された吸気温度、吸気圧センサ37により測定された吸気圧、及び過給圧センサ33により測定された過給圧を取得する。ECU10は、EGRバルブ35の開閉状態を制御して、EGRガスの流量を調整することができる。また、ECU10はコンプレッサ11が備えるベーン20を制御することにより、コンプレッサ11の圧縮効率を調整することができる。詳しくは後述する。ECU10は、水温計42により測定された冷却水の温度、及び時計34により測定された時間を取得する。これにより、ECU10は、水温計42により測定された冷却水の温度が継続した時間を取得することができる。次に、コンプレッサ11について説明する。
【0018】
図2は、実施例1に係るコンプレッサを例示する概略図である。図2に示すように、コンプレッサ11は、コンプレッサハウジング12、インペラ13、ベーン20、ディフューザプレート21、回転軸22、及びアクチュエータ23、を備える。
【0019】
コンプレッサハウジング12はコンプレッサ11の筐体をなしている。コンプレッサハウジング12はインペラ収容部12aを備えている。インペラ収容部12aにはインペラ13が収容されている。インペラ13はシャフト14により回転駆動される。既述したように、シャフト14は図1に示したタービン30と連結されている。
【0020】
コンプレッサハウジング12内には、吸入口12bから流体が吸入される。流体とは、例えば外気等である。吸入された流体はインペラ13に向かって流通し、インペラ13の回転により外側に向けて送り出される。インペラ13の外側にはスクロール部15が設けられている。インペラ13により外側に向けて送り出された流体は、スクロール部15を介して例えばエンジン40の吸気マニホルド等に供給される。インペラ13とスクロール部15との間には、ディフューザ流路16が設けられている。ディフューザ流路16は、シュラウド側壁17とハブ側壁18とが対向して形成され、インペラ13の周囲に隣接して設けられている。ディフューザプレート21の側壁は、ハブ側壁18の一部を形成する。ディフューザ流路16は、インペラ13が送り出す流体の運動エネルギを圧力に変換する。ベーン20は、ディフューザプレート21に設けられ、ディフューザ流路16内に配置されている。次にベーン20について説明する。
【0021】
図3は、ベーンを例示する正面図である。なお、図3ではディフューザプレート21の上半分を図示しており、またベーン20の数は例示であり変更可能である。図3に示すように、複数のベーン20は、ディフューザプレート21に設けられている。矢印で示すように、ベーン20は回転軸22を軸として、ディフューザ流路16を開閉するように回転可能である。回転方向のうち、Oを開方向、Cを閉方向とする。例えば、実線で示すように、高空気流量時には、ベーン20は開方向に回転する。このとき、ベーン20間の隙間は広くなる。ベーン20間の隙間は流体が通過する流路となる。このように高空気流量時には、ディフューザ流路16の流路断面積を大きくすることで、空気とベーン20との衝突による圧力ロスを抑制し、コンプレッサ11の圧縮効率を高めることができる。点線で示すように、低空気流量時には、ベーン20は閉方向に回転する。このとき、ベーン20間の隙間は狭くなる。このように低空気流量時には、ディフューザ流路16の流路断面積を小さくして、コンプレッサ11の圧縮効率を高めることができる。以上のように、ベーン20は回転式ベーンである。コンプレッサ11では、空気流量に応じてベーン20が開閉することで、圧縮効率を最適化することができる。図2に示したアクチュエータ23は、例えばモータ等でありベーン20を駆動する。ECU10は、アクチュエータ23を制御して、ベーン20の開閉状態を調整することができる。
【0022】
しかしながら、ベーン20は凍結することがある。凍結したベーン20が回転すると、ベーン20の表面に付着した氷がベーン20から剥がれることがある。剥がれた氷は、ディフューザ流路16を落下し、例えば図2に示したインペラ13等に衝突することがある。ベーン20から剥離した氷との衝突によりコンプレッサ11が破損することがある。特に、インペラ13は厚さが小さく、例えばアルミニウム等のように強度の低い材質により形成される場合がある。このためインペラ13は、氷との衝突により破損する可能性が高い。
【0023】
ベーン20から剥離した氷は、コンプレッサ11に流入する流体から力を受ける。流体が氷に加える力(流体力)が大きい場合、コンプレッサ11の外部、より詳しくはインペラ13の上流方向に放出されることがある。この場合、氷はインペラ13に衝突しない。しかしながら、例えば低負荷運転時には、空気流量及び過給圧が小さい。従って、流体力が小さくなる。その結果、氷に加わる重力が流体力よりも大きくなり、氷がディフューザ流路16を落下し、インペラ13等に衝突する可能性が高くなる。また、コンプレッサ11は例えばタービン30と比較して温度が低いため、氷は融解しにくい。氷がコンプレッサ11外部に放出されず、かつ融解しない場合、氷によるコンプレッサ11の破損が発生する恐れがある。
【0024】
ベーン20の凍結は、コンプレッサ11内に混入する凝縮水等がベーン20に付着、凍結することで発生する。凝縮水は、例えばコンプレッサ11に流入する外気、又はEGRガス等に含まれる水分が凝縮した水である。寒冷地、特に冷間始動時にはコンプレッサ11の温度が低下しているためベーン20の凍結が発生しやすい。
【0025】
図4は、実施例1に係るコンプレッサが備えるECUの構成を例示する機能ブロック図である。図4に示すように、ECU10は、凍結判定部60、駆動制御部61、駆動停止部62、及び温度取得部63として機能する。凍結判定部60は、水温計42により測定された冷却水の温度、及び時計34により測定された所定の温度が継続した時間に基づいて、ベーン20が凍結している可能性があるか判定する。判定については後述する。駆動制御部61は、エアフローメータ31により測定された空気流量、及び過給圧センサ33により測定された過給圧に基づいて、アクチュエータ23を制御して、ベーン20を駆動することができる。駆動停止部62は、駆動制御部61に含まれ、ベーン20凍結の可能性があると判定された場合に、ベーン20の駆動を停止する。図3に示した回転式ベーンの例では、駆動制御部61がベーン20の回転を調整し、駆動停止部62はベーン20の回転を停止する。温度取得部63は、吸気温度計32により測定された吸気温度、過給圧センサ33により測定された過給圧、吸気圧センサ37により測定された吸気圧を取得する。温度取得部63は、吸気圧、過給圧、及び吸気温度に基づいて、コンプレッサ11の出口側の温度(出口温度)Tを推定することができる。なおコンプレッサ11の出口温度とは、例えばコンプレッサ11とガス通路51との接続箇所の温度である。
【0026】
次に実施例1に係るコンプレッサ11の制御について説明する。図5は、実施例1に係るコンプレッサの制御を例示するフローチャートである。
【0027】
図5に示すように、まず凍結判定部60は、ベーン20が凍結している可能性があるか判定を行う(ステップS10)。Noの場合、つまりベーン20凍結の可能性がないと判定された場合、制御は終了する。このとき、駆動制御部61は、アクチュエータ23を制御して、ベーン20を駆動することができる。言い換えれば、ベーン20は回転することができる。
【0028】
Yesの場合、つまりベーン20が凍結している可能性があると判定された場合、駆動停止部62は、ベーン20の駆動を停止する(ステップS11)。具体的には、駆動停止部62は、ベーン20を回転させないようにアクチュエータ23を制御する。このときベーン20は回転しない。ステップS11の後、駆動停止部62は、エアフローメータ31により測定された空気流量Fが、空気流量の閾値F0以上であるか判断する(ステップS12)。Yesの場合、駆動停止部62は、ベーン20の駆動停止を解除する(ステップS14)。
【0029】
Noの場合、駆動停止部62は、温度取得部63により推定された出口温度Tが、温度の閾値T0以上であるか判断する(ステップS13)。Yesの場合、駆動停止部62は、ベーン20の駆動停止を解除する(ステップS14)。Noの場合、制御はステップS12に戻る。このとき、ベーン20の駆動の停止は解除されない。言い換えれば、F≧F0又はT≧T0のいずれかの条件が満たされるまで、ベーン20の駆動は停止する。ステップS14の後、制御は終了する。
【0030】
実施例1に係るコンプレッサ11は、可動式のベーン20と、凍結判定部60と、ベーン20が凍結している可能性があると判定された場合、ベーン20の駆動を停止する駆動停止部62と、を備える。図5のステップS11に示すように、駆動停止部62が、ベーン20の駆動を停止するため、ベーン20から氷が剥離することが抑制され、氷が例えばインペラ13等に衝突することも抑制される。従って、コンプレッサ11が氷により破損することは抑制される。
【0031】
凍結の可能性がある場合とは、ベーン20が実際に凍結している場合だけでなく、ベーン20が実際には凍結していなくとも凍結が起こりやすい場合も含まれる。実施例1によれば、凍結の可能性がある場合には、駆動停止部62がベーン20の駆動を停止するため、氷によるコンプレッサ11の破損を未然に抑制することができる。
【0032】
図5のステップS12に示すように、空気流量Fが閾値F0以上である場合、氷に加わる重力よりも、流体力の方が大きくなる。従って、ベーン20から剥離した氷の落下が抑制される。また図5のステップS13に示すように、コンプレッサ11の出口温度Tが閾値T0より大きい場合、氷は融解すると考えられ、氷のインペラ13等への落下は抑制される。このように、F≧F0又はT≧T0の少なくとも一方の場合、氷によるコンプレッサ11の破損は抑制される。このため、駆動停止部62はベーン20の駆動停止を解除する。このとき、駆動制御部61は、ベーン20を駆動することができる。この結果、氷によるコンプレッサ11の破損を抑制し、かつベーン20の駆動により圧縮効率を高めることができる。なお、図5のステップS12及びS13のうち、少なくとも一方のみが行われてもよい。しかし、より精度高くコンプレッサ11の破損を抑制し、かつ圧縮効率を高めるためにはステップS12及びS13の両方が行われることが好ましい。
【0033】
空気流量Fの代わりに、例えば図1に示したタービン30の回転数を、駆動停止解除のための指標に用いてもよい。具体的には、タービン30の回転数が所定の値より大きい場合、流体力が大きいと判断し、駆動停止部62が駆動停止を解除するとしてもよい。また、図4に示したように、温度取得部63は、吸気温度、吸気圧、及び過給圧に基づいて、出口温度Tを推測する。これ以外に、例えば温度計をコンプレッサ11の出口付近に設け、温度取得部63は温度計により測定された出口温度Tを取得するとしてもよい。
【0034】
次に凍結の可能性の判定について詳しく説明する。水温計42は、例えば一定の周期ごとに、エンジン40の停止から始動までの間における冷却水の温度を測定する。このように、水温計42は、エンジン40の停止から始動までの間に、複数回温度を測定し、水温履歴を取得することができる。また、時計34は、停止から始動までにおいて水温計42により測定された複数の温度ごとに、温度が継続した時間を測定することができる。凍結判定部60は、温度及び時間を用いて凍結を判定する。表を参照して具体例を説明する。
【0035】
表1は、凍結判定部60が作成するデータテーブルの例である。なお、表1では、温度はT1aからT2b、時間はt1aからt2bまで記載しているが、温度及び時間の数は例示である。表中に黒点で示したように、T1a〜T2b以外の温度、及びt1a〜t2b以外の時間が測定されてもよい。
【表1】

表1に示すように、凍結判定部60は、水温計42により測定された冷却水の温度T1a、T2a、T1b、T2b等を取得する。温度のうち、T1a及びT2a等は、例えば水の融点である273.15K以下の温度であり、T1b及びT2b等は、例えば273.15K以上の温度である。なお、273.15K以下の温度を凍結温度、273.15K以上の温度を融解温度とする。時間t1aは温度T1aが継続した時間であり、時間t2aは温度T2aが継続した時間である。時間t1bは温度T1bが継続した時間であり、時間t2bは温度T2bが継続した時間である。表1では省略した温度についても、継続した時間が測定される。
【0036】
凍結判定部60は、温度ごとに、温度と、温度が継続した時間との積を計算する。表1の例では、凍結判定部60がT1a×t1a等を計算する。さらに、凍結判定部60は、凍結温度と、凍結温度が継続した時間との積の合計Aを計算する。また凍結判定部60は、融解温度と、融解温度が継続した時間との積の合計Bを計算する。表1の例では、A=T1a×t1a+T2a×t2a+・・・、及びB=T1b×t1b+T2b×t2b+・・・となる。凍結判定部60はAとBとを比較して、AがBよりも大きい場合、ベーン20が凍結している可能性があると判定する。つまり、凍結判定部60は図5のステップS10においてYesと判定する。その一方、BがAよりも大きい場合、凍結判定部60はベーン20が凍結している可能性がないと判定する。つまり、凍結判定部60は図5のステップS10においてNoと判定する。
【0037】
凍結判定部60は、水温計42により測定された温度と、時計34により測定された時間とに基づいて、凍結の可能性を判定することができる。具体的には表1に示したように、凍結判定部60が、凍結温度と、凍結温度が継続した時間との積の合計Aと、融解温度と、融解温度が継続した時間との積の合計Bとを比較する。このため、精度高く凍結の可能性の判定をすることが可能となる。特に凍結判定部60は、エンジン40の停止から始動までの温度履歴に基づいて、凍結の判定を行うことができる。このため、ベーン20が凍結する可能性が高くなる冷間始動時等において、効果的にコンプレッサ11の破損を抑制することができる。
【実施例2】
【0038】
実施例2は、突没式ベーン20を用いる例である。図6(a)及び図6(b)は、突没式ベーンを例示する概略図である。なお図6(a)及び図6(b)においては、コンプレッサ11のディフューザ流路16付近を拡大して図示している。図6(a)及び図6(b)に示した箇所以外の図1及び図2に示した構成は、実施例2においても共通である。
【0039】
図6(a)及び図6(b)に示すように、突没式のベーン20は、ハブ側壁18に設けられたスリット18aを通じて、ディフューザ流路16に突出可能かつハブ側壁18内に没入可能である。駆動制御部61は、アクチュエータ23を制御して、ベーン20を突没するように駆動し、ベーン20の突出量を調整することができる。図6(a)に示すように、例えば低空気流量時において、ベーン20はディフューザ流路16に突出し、例えばシュラウド側壁17に当接する。図6(b)に示すように、例えば高空気流量時において、ベーン20はハブ側壁18内に没入する。これにより、空気流量に応じて、コンプレッサ11の圧縮効率を高めることができる。アクチュエータ23は、例えばダイヤフラム式又はソレノイド式のアクチュエータ等を用いることができる。
【0040】
実施例2に係るコンプレッサの制御は、図5に示したものと同じである。凍結判定部60がベーン20は凍結している可能性があると判定した場合、駆動停止部62は、ベーン20の駆動を停止する(ステップS11)。このとき、ベーン20は、突出及び没入しない。従って、コンプレッサ11が氷により破損することは抑制される。
【0041】
突没式のベーン20では、例えばベーン20をハブ側壁18内に完全に没入させることで、ベーン20の凍結を抑制し、氷によるコンプレッサ11の破損を抑制することができる。しかし、ベーン20が没入している場合、圧縮効率が低下することがある。特に低空気流量時において、圧縮効率は大きく低下する可能性がある。これに対し実施例2では、駆動停止部62がベーン20の駆動を停止するため、例えばベーン20はディフューザ流路16に突出したまま停止してもよい。従って、低空気流量時においても高い圧縮効率を得ることができる。実施例1及び実施例2において説明したように、ベーン20は回転式又は突没式のいずれであってもよく、可動式ベーンであればよい。
【0042】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 ECU
11 コンプレッサ
16 ディフューザ流路
20 ベーン
23 アクチュエータ
31 エアフローメータ
33 過給圧センサ
34 時計
40 エンジン
42 水温計
60 凍結判定部
61 駆動制御部
62 駆動停止部
63 温度取得部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディフューザ流路に設けられた可動式のベーンと、
前記ベーンの凍結している可能性を判定する凍結判定部と、
前記凍結判定部により前記ベーンが凍結している可能性があると判定された場合、前記ベーンの駆動を停止する駆動停止部と、を具備することを特徴とする遠心圧縮機。
【請求項2】
前記ディフューザ流路に流入する空気流量を測定する空気流量測定部を具備し、
前記空気流量測定部により測定された空気流量が閾値以上である場合、前記駆動停止部は前記ベーンの駆動停止を解除することを特徴とする請求項1記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記遠心圧縮機の出口における温度を取得する温度取得部を具備し、
前記温度取得部により取得された温度が閾値以上である場合、前記駆動停止部は前記ベーンの駆動停止を解除することを特徴とする請求項1又は2記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記ベーンは、ディフューザ流路を開閉するように回転可能な回転式ベーン、又はディフューザ流路に突出可能な突没式ベーンであることを特徴とする請求項1から3いずれか一項記載の遠心圧縮機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−207583(P2012−207583A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73469(P2011−73469)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】