説明

遠心式ポンプ装置

【課題】必要なモータトルクを確保し、アキシアル吸引力を下げることが可能な小型の遠心式ポンプを提供する。
【解決手段】この遠心式血液ポンプ装置では、血液室7内のインペラ10に複数の永久磁石17を設け、モータ室8内に複数のコイル20を設け、各コイル20内に磁性体18を設ける。磁性体18をコイル20よりも短くして、磁性体18とインペラ10の永久磁石17との吸引力を下げ、磁性体18および永久磁石17間のギャップを大きく設定する。これにより、必要トルクを満足しつつ、アキシアル方向の吸引力および負の剛性を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は遠心式ポンプ装置に関し、特に、回転時の遠心力によって液体を送るインペラを備えた遠心式ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、隔壁によってモータ駆動室とロータ室とに分離した構造のキャンドモータが多く用いられている。このようなモータは、たとえば、粉塵をきらう環境下で使用される半導体製造ラインの純水輸送用ポンプや、生体液を輸送するポンプに使用されている。生体液を輸送するポンプとしては、血液室内のインペラに直接トルクを伝達するダイレクト駆動モータを用いた遠心式血液ポンプ装置がある。この遠心式血液ポンプ装置は、外部と血液室との物理的な連通を排除することができ、細菌などの血液への侵入を防止することができるので、人工心臓として用いられる。人工心臓はバッテリからの電力によって駆動されるので、モータの効率向上は大変重要である。
【0003】
特許文献1の遠心式血液ポンプは、第1および第2の隔壁によって仕切られた第1〜第3の室を含むハウジングと、第2の室(血液室)内に回転可能に設けられたインペラと、インペラの一方面に設けられた磁性体と、インペラの一方面に対向して第1の室内に設けられた電磁石と、インペラの他方面に設けられた永久磁石と、第3の室内に設けられたロータおよびモータと、インペラの他方面に対向してロータに設けられた永久磁石とを備える。インペラの他方面に対向する第2の隔壁の表面には、動圧溝が形成されている。電磁石からインペラの一方面に作用する吸引力と、ロータの永久磁石からインペラの他方面に作用する吸引力と、動圧溝の動圧軸受効果により、インペラは第2の室の内壁から離れ、非接触状態で回転する。
【0004】
また、特許文献2の遠心式血液ポンプは、第1および第2の隔壁によって仕切られた第1〜第3の室を含むハウジングと、第2の室(血液室)内に回転可能に設けられたインペラと、インペラの一方面に設けられた磁性体と、インペラの一方面に対向して第1の室内に設けられた第1の永久磁石と、インペラの他方面に設けられた第2の永久磁石と、第3の室内に設けられたロータおよびモータと、インペラの他方面に対向してロータに設けられた第3の永久磁石とを備える。インペラの一方面に対向する第1の隔壁の表面には第1の動圧溝が形成され、インペラの他方面に対向する第2の隔壁の表面には第2の動圧溝が形成されている。第1の永久磁石からインペラの一方面に作用する吸引力と、ロータの第3の永久磁石からインペラの他方面に作用する吸引力と、第1および第2の動圧溝の動圧軸受効果により、インペラは第2の室の内壁から離れ、非接触状態で回転する。
【0005】
また、特許文献3の図8および図9のターボ形ポンプは、ハウジングと、ハウジング内に回転可能に設けられたインペラと、インペラの一方面に設けられた第1の永久磁石と、ハウジングの外部に設けられたロータと、インペラの一方面に対向してロータに設けられた第2の永久磁石と、インペラの他方面に設けられた第3の永久磁石と、インペラの他方面に対向してハウジングに設けられた磁性体とを備えている。また、インペラの一方面には第1の動圧溝が形成され、インペラの他方面には第2の動圧溝が形成されている。ロータの第2の永久磁石からインペラの一方面に作用する吸引力と、ハウジングの磁性体からインペラの他方面に作用する吸引力と、第1および第2の動圧溝の動圧軸受効果により、インペラはハウジングの内壁から離れ、非接触状態で回転する。
【0006】
さらに、特許文献4のクリーンポンプは、ケーシングと、ケーシング内に回転可能に設けられたインペラと、インペラの一方面に設けられた第1の永久磁石と、ケーシングの外部に設けられたロータと、インペラの一方面に対向してロータに設けられた第2の永久磁石と、インペラの他方面に設けられた磁性体と、インペラの他方面に対向してハウジング外に設けられた電磁石とを備えている。また、インペラの一方面には動圧溝が形成されている。インペラの回転数が所定の回転数よりも低い場合は電磁石を作動させ、インペラの回転数が所定の回転数を超えた場合は電磁石への通電を停止する。ロータの第2の永久磁石からインペラの一方面に作用する吸引力と、動圧溝の動圧軸受効果により、インペラはハウジングの内壁から離れ、非接触状態で回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2004−209240号公報
【特許文献2】特開平2006−167173号公報
【特許文献3】特開平4−91396号公報
【特許文献4】実開平6−53790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ステータとロータ間に隔壁を設けたキャンドモータでは、ステータとロータ間の隙間が大きくなるため、高トルク化や高効率化が難しいという課題がある。特に、小型モータの場合、寸法の制約などにより設計自由度が低く、局所的な磁気飽和の影響を受け易いため高効率化が難しい。そのため高効率化のために磁路には珪素鋼板の積層構造を用いて鉄損の低減を図っている。さらにコアの形状の工夫によってコイルの占積率を向上させることで効率向上を図ることができる。
【0009】
また、上記特許文献1〜4のポンプは、インペラとハウジングの対向部に形成された動圧溝によってインペラのアキシアル方向の支持を行ない、インペラに設けられた永久磁石とハウジング外に設けられた永久磁石との吸引力によってインペラのラジアル方向の支持を行なっている点で共通する。
【0010】
動圧溝の支持剛性は、インペラの回転数に比例する。したがって、ポンプに外乱が印加された状態でも、インペラがハウジングに接触することなく安定して回転するためには、ポンプの常用回転数域を上げてインペラのアキシアル方向の剛性を高める必要がある。しかし、上記特許文献1〜4のポンプでは、ラジアル方向を永久磁石の吸引力を利用して支持しているので、その支持剛性は低く、インペラを高速に回転させることができないという問題がある。
【0011】
このラジアル方向の剛性を高める方法としては、インペラ内の永久磁石とハウジングの外部に配した永久磁石もしくは固定子との吸引力を強める方法がある。しかし、その吸引力を強めると、インペラのアキシアル方向への負の剛性値が大きくなり(すなわち、インペラがアキシアル方向に動けば、動いただけその吸引力が大きくなり)、動圧によるインペラの支持性能およびインペラ−ハウジング間に作用する吸引力が大きくなり、インペラのスムーズな回転駆動が難しくなるという問題がある。
【0012】
また、インペラのアキシアル方向への負の剛性値が動圧による正の剛性より大きい場合は安定回転ができないという問題も生じる。ラジアル方向を永久磁石による受動型磁気軸受で支持する場合は、ラジアル方向の剛性はアキシアル方向の負の剛性値によって決定される。よって、安定回転を実現するための条件ではラジアル方向の剛性を向上させることが難しく、インペラをハウジングに接触することなく回転させるためにはインペラ質量を増加させてはならない。
【0013】
特に、特許文献2の図39で示されるように、インペラを外部のモータコイルとインペラに配した永久磁石の磁気的相互作用で回転させる場合は、特許文献2の図3に示されるようなインペラを永久磁石間の磁気カップリングで回転駆動させる場合に比べて起動トルクが小さいので、インペラのスムーズな回転駆動が難しい。これは、本遠心式血液ポンプが、第1および第2の隔壁によって仕切られた第1〜第3の室を含むハウジングに対し、第2の室(血液室)内に回転可能に設けられたインペラを、モータによって回転させるキャンドモータ構造となり、モータギャップが広いためである。よって起動トルクを発生させるために大きな電流を必要とする。モータ効率を改善することは起動時の電流低減や定格回転時の消費電力低減に必要であり、特にバッテリ駆動の場合には大変重要である。
【0014】
ここで、更なるモータの小型化を図る場合、可能な限りモータギャップを縮めトルク定数を上げる方法もある。しかし、本ポンプの構造で小型化を図る場合、モータギャップを縮めることによるアキシアル吸引力の増加と負の剛性値の増加は、インペラの安定回転を困難にする。さらにポンプの小型化によって動圧軸受面積が小さくなり、発生動圧力(正の剛性)は極めて小さくなるため、本ポンプ構造は小型化するほど、アキシアル方向の吸引力と負の剛性値とを下げなければならない。
【0015】
つまり、本ポンプを小型化する場合、必要なモータトルクを確保しつつ、かつアキシアル方向の吸引力と負の剛性値を下げることの両立が困難であった。
【0016】
それゆえに、この発明の主たる目的は、必要なモータトルクを確保し、アキシアル吸引力を下げることが可能な小型の遠心式ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明に係る遠心式ポンプは、隔壁で仕切られた第1および第2の室を含むハウジングと、第1の室内において隔壁に沿って回転可能に設けられ、回転時の遠心力によって液体を送るインペラと、第2の室内に設けられ、隔壁を介してインペラを回転駆動させる駆動部とを備えた遠心式ポンプ装置であって、インペラの一方面に設けられた第1の磁性体と、インペラの一方面に対向する第1の室の内壁に設けられ、第1の磁性体を吸引する第2の磁性体と、インペラの他方面に設けられてインペラの回転方向に配列され、駆動部によって吸引される複数の第3の磁性体とを備えたものである。駆動部は、複数の第3の磁性体に対向して設けられ、回転磁界を生成するための複数のコイルと、それぞれ複数のコイルに対応して設けられ、各々が対応のコイルに挿入された複数の第4の磁性体とを含み、インペラの中心軸方向において各第4の磁性体は対応のコイルよりも短い。インペラの回転中において、第1および第2の磁性体間の第1の吸引力と複数の第3の磁性体および複数の第4の磁性体間の第2の吸引力とは、第1の室内におけるインペラの可動範囲の略中央で釣り合う。インペラの一方面またはそれに対向する第1の室の内壁に第1の動圧溝が形成され、インペラの他方面またはそれに対向する隔壁に第2の動圧溝が形成されている。
【0018】
したがって、駆動部の第4の磁性体とインペラの第3の磁性体との磁気的結合によって得られる回転トルクと、第4の磁性体よりも突出したコイルと第3の磁性体との磁気的結合によって得られる回転トルクとにより、インペラを高速で回転させることができ、また、ポンプサイズを小型化しながら、必要な回転トルクを発生することができる。
【0019】
また、第4の磁性体をコイルよりも短くしたので、第3および第4の磁性体間のギャップを大きく設定し、第3および第4の磁性体間の吸引力を下げることができる。したがって、必要トルクを満足しつつ、アキシアル方向の吸引力および負の剛性を下げることができる。
【0020】
好ましくは、駆動部は、さらに、円板状の第5の磁性体を含む。複数のコイルは隔壁と第5の磁性体との間に設けられ、複数の第4の磁性体は第5の磁性体に接合されている。
【0021】
また好ましくは、各隣接する2つの第4の磁性体の互いに対向する面は略平行に設けられている。この場合は、コイル用の大きなスペースを確保することができ、コイルの巻数を大きくすることができる。また、コイルの径方向長さを大きくすることができるため、ローレンツ力を大きくすることができる。
【0022】
また好ましくは、各第4の磁性体は円柱状に形成されている。この場合は、コイル用の大きなスペースを確保することができ、コイルの巻数を大きくすることができる。したがって、モータコイルで発生する銅損を軽減することができ、インペラの回転駆動におけるエネルギ効率を高めることができる。
【0023】
また好ましくは、各第4の磁性体は、インペラの回転方向に積層された複数の鋼板を含む。この場合は、第4の磁性体内で発生する渦電流損失を軽減することができ、インペラの回転駆動におけるエネルギ効率を高めることができる。
【0024】
また好ましくは、各第4の磁性体は、インペラの径方向に積層された複数の鋼板を含む。この場合は、第4の磁性体内で発生する渦電流損失を軽減することができ、インペラの回転駆動におけるエネルギ効率を高めることができる。
【0025】
また好ましくは、各第4の磁性体は、純鉄、軟鉄または珪素鉄で形成されている。この場合は、第4の磁性体内の鉄損を軽減することができ、インペラの回転駆動におけるエネルギ効率を高めることができる。
【0026】
また好ましくは、各第4の磁性体は、純鉄、軟鉄または珪素鉄の粉末で形成されている。この場合は、第4の磁性体内の鉄損をさらに軽減することができ、インペラの回転駆動におけるエネルギ効率を高めることができる。
【0027】
また好ましくは、各第4の磁性体は、中心線の周りに複数回巻回された帯状の磁性鋼板を含む。この場合は、第4の磁性体内の鉄損を軽減することができ、インペラの回転駆動におけるエネルギ効率を高めることができる。
【0028】
また、この発明に係る他の遠心式ポンプは、隔壁で仕切られた第1および第2の室を含むハウジングと、第1の室内において隔壁に沿って回転可能に設けられ、回転時の遠心力によって液体を送るインペラと、第2の室内に設けられ、隔壁を介してインペラを回転駆動させる駆動部とを備えた遠心式ポンプ装置であって、インペラに設けられてインペラの回転方向に配列され、駆動部によって吸引される複数の第1の磁性体を備えたものである。駆動部は、複数の第1の磁性体に対向して設けられ、回転磁界を生成するための複数のコイルと、それぞれ複数のコイルに対応して設けられ、各々が対応のコイルに挿入された複数の第2の磁性体とを含み、インペラの中心軸方向において各第2の磁性体は対応のコイルよりも短い。インペラの一方面またはそれに対向する第1の室の内壁に第1の動圧溝が形成され、インペラの他方面またはそれに対向する隔壁に第2の動圧溝が形成されている。インペラの回転中において、第1の動圧溝によって発生する定格回転時の動圧力と複数の第1の磁性体および複数の第2の磁性体間の吸引力との和の力と、第2の動圧溝によって発生する定格回転時の動圧力とは、第1の室内におけるインペラの可動範囲の略中央で釣り合う。
【0029】
好ましくは、駆動部は、さらに、円板状の第3の磁性体を含む。複数のコイルは隔壁と第3の磁性体との間に設けられ、複数の第2の磁性体は第3の磁性体に接合されている。
【0030】
また好ましくは、インペラの外周面またはそれに対向する第1の室の内周面に第3の動圧溝が形成されている。
【0031】
また、この発明に係るさらに他の遠心式ポンプ装置は、第1および第2の隔壁とそれらの間の液体室を含むハウジングと、液体室内において第1および第2の隔壁に沿って回転可能に設けられ、回転時の遠心力によって液体を送るインペラと、液体室外に設けられ、それぞれ第1および第2の隔壁を介してインペラを回転駆動させる第1および第2の駆動部とを備えた遠心式ポンプ装置であって、インペラに設けられてインペラの回転方向に配列され、第1および第2の駆動部によって吸引される複数の第1の磁性体を備えたものである。第1および第2の駆動部の各々は、複数の第1の磁性体に対向して設けられ、回転磁界を生成するための複数のコイルと、それぞれ複数のコイルに対応して設けられ、各々が対応のコイルに挿入された複数の第2の磁性体とを含み、インペラの中心軸方向において各第2の磁性体は対応のコイルよりも短い。インペラの回転中において、複数の第1の磁性体および第1の駆動部の複数の第2の磁性体間の第1の吸引力と、複数の第1の磁性体および第2の駆動部の複数の第2の磁性体間の第2の吸引力とは、液体室内におけるインペラの可動範囲の略中央で釣り合う。インペラの一方面またはそれに対向する第1の隔壁に第1の動圧溝が形成され、インペラの他方面またはそれに対向する第2の隔壁に第2の動圧溝が形成されている。
【0032】
好ましくは、第1および第2の駆動部の各々は、さらに、円板状の第3の磁性体を含む。第1の駆動部の複数のコイルは、第1の隔壁と第1の駆動部の第3の磁性体との間に設けられる。第2の駆動部の複数のコイルは、第2の隔壁と第2の駆動部の第3の磁性体との間に設けられる。第1および第2の駆動部の各々において複数の第2の磁性体は第3の磁性体に接合されている。
【0033】
また好ましくは、インペラの外周面またはそれに対向する液体室の内周面に第3の動圧溝が形成されている。
【0034】
また好ましくは、液体は血液であり、遠心式ポンプ装置は血液を循環させるために使用される。この場合は、インペラがスムーズに回転起動し、インペラとハウジング間の距離が確保されるので、溶血の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0035】
以上のように、この発明によれば、ポンプサイズを小型にしても、インペラを高速で回転させることができ、インペラの回転起動力を大きくすることができる。また、インペラを回転駆動させるためのトルクを維持しながら、インペラに働くアキシアル方向の吸引力を抑えることができる。また、インペラの回転駆動におけるエネルギ効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の実施の形態1による遠心式血液ポンプ装置のポンプ部の外観を示す正面図である。
【図2】図1に示したポンプ部の側面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3のIV−IV線断面図からインペラを取り外した状態を示す断面図である。
【図6】図3のVI−VI線断面図からインペラを取り外した状態を示す断面図である。
【図7】図3のVII−VII線断面図である。
【図8】図7に示した磁性体およびコイルの構成を示す図である。
【図9】図8に示したx/Lと発生トルクおよびアキシアル吸引力との関係を示す図である。
【図10】図7に示した複数のコイルに印加する電圧を例示するタイムチャートである。
【図11】図3に示したインペラの浮上位置を説明するための図である。
【図12】図3に示したインペラの浮上位置を説明するための他の図である。
【図13】図1〜図7に示したポンプ部を制御するコントローラの構成を示すブロック図である。
【図14】図13に示したコントローラの動作を示すタイムチャートである。
【図15】実施の形態1の変更例を示す図である。
【図16】実施の形態1の他の変更例を示す図である。
【図17】実施の形態1のさらに他の変更例を示す図である。
【図18】実施の形態1のさらに他の変更例を示す図である。
【図19】実施の形態1のさらに他の変更例を示す図である。
【図20】実施の形態1のさらに他の変更例を示す図である。
【図21】実施の形態1のさらに他の変更例を示す図である。
【図22】実施の形態1のさらに他の変更例を示す図である。
【図23】実施の形態1のさらに他の変更例を示す図である。
【図24】実施の形態1のさらに他の変更例を示す図である。
【図25】実施の形態1のさらに他の変更例を示す図である。
【図26】実施の形態1のさらに他の変更例を示す図である。
【図27】図26に示した永久磁石17,42の極性を示す図である。
【図28】この発明の実施の形態2による遠心式血液ポンプ装置の動圧溝を示す図である。
【図29】図28に示した遠心式血液ポンプ装置の他の動圧溝を示す図である。
【図30】図28に示した動圧溝21,22の深さを示す断面図である。
【図31】インペラの浮上位置と図30に示した動圧溝21によって発生する動圧力との関係を示す図である。
【図32】インペラの浮上位置と図30に示した動圧溝22によって発生する動圧力との関係を示す図である。
【図33】図31と図32を合成した図である。
【図34】動圧溝22,21(または動圧溝24,23)の深さの比と動圧力との関係を示す図である。
【図35】動圧溝22の幅と動圧溝21の間隔(または動圧溝24の幅と動圧溝23の間隔)との比と動圧力との関係を示す図である。
【図36】この発明の実施の形態3による遠心式血液ポンプ装置の動圧溝を示す図である。
【図37】図36に示した永久磁石の構成を示す図である。
【図38】この発明の実施の形態4による遠心式血液ポンプ装置の構成を示す断面図である。
【図39】図36に示した動圧溝の構成を例示する図である。
【図40】実施の形態4の変更例を示す図である。
【図41】実施の形態4の他の変更例を示す図である。
【図42】実施の形態4のさらに他の変更例を示す図である。
【図43】実施の形態4のさらに他の変更例を示す図である。
【図44】実施の形態4のさらに他の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[実施の形態1]
図1〜図7において、この遠心式血液ポンプ装置のポンプ部1は、非磁性材料で形成されたハウジング2を備える。ハウジング2は、円柱状の本体部3と、本体部3の一方の端面の中央に立設された円筒状の血液流入ポート4と、本体部3の外周面に設けられた円筒状の血液流出ポート5とを含む。血液流出ポート5は、本体部3の外周面の接線方向に延在している。
【0038】
ハウジング2内には、図3に示すように、隔壁6によって仕切られた血液室7およびモータ室8が設けられている。血液室7内には、図3および図4に示すように、中央に貫通孔10aを有する円板状のインペラ10が回転可能に設けられている。インペラ10は、ドーナツ板状の2枚のシュラウド11,12と、2枚のシュラウド11,12間に形成された複数(たとえば6つ)のベーン13とを含む。シュラウド11は血液流入ポート4側に配置され、シュラウド12は隔壁6側に配置される。シュラウド11,12およびベーン13は、非磁性材料で形成されている。
【0039】
2枚のシュラウド11,12の間には、複数のベーン13で仕切られた複数(この場合は6つ)の血液通路14が形成されている。血液通路14は、図4に示すように、インペラ10の中央の貫通孔10aと連通しており、インペラ10の貫通孔10aを始端とし、外周縁まで徐々に幅が広がるように延びている。換言すれば、隣接する2つの血液通路14間にベーン13が形成されている。なお、この実施の形態1では、複数のベーン13は等角度間隔で設けられ、かつ同じ形状に形成されている。したがって、複数の血液通路14は等角度間隔で設けられ、かつ同じ形状に形成されている。
【0040】
インペラ10が回転駆動されると、血液流入ポート4から流入した血液は、遠心力によって貫通孔10aから血液通路14を介してインペラ10の外周部に送られ、血液流出ポート5から流出する。
【0041】
また、シュラウド11には永久磁石15が埋設されており、シュラウド11に対向する血液室7の内壁には、永久磁石15を吸引する永久磁石16が埋設されている。永久磁石15,16は、インペラ10をモータ室8と反対側、換言すれば血液流入ポート4側に吸引(換言すれば、付勢)するために設けられている。
【0042】
なお、シュラウド11および血液室7の内壁にそれぞれ永久磁石15,16を設ける代わりに、シュラウド11および血液室7の内壁の一方に永久磁石を設け、他方に磁性体を設けてもよい。また、シュラウド11自体を永久磁石15または磁性体で形成してもよい。また、磁性体としては軟質磁性体と硬質磁性体のいずれを使用してもよい。
【0043】
また、永久磁石16は、1つでもよいし、複数でもよい。永久磁石16が1つの場合は、永久磁石16はリング状に形成される。また、永久磁石16が複数の場合は、複数の永久磁石16は等角度間隔で同一の円に沿って配置される。永久磁石15も、永久磁石16と同様であり、1つでもよいし、複数でもよい。
【0044】
また、図4に示すように、シュラウド12には複数(たとえば9個)の永久磁石17が埋設されている。複数の永久磁石17は、隣接する磁極が互いに異なるようにして、等角度間隔で同一の円に沿って隙間を設けて配置される。換言すれば、モータ室8側にN極を向けた永久磁石17と、モータ室8側にS極を向けた永久磁石17とが等角度間隔で隙間を設けて同一の円に沿って交互に配置されている。
【0045】
また、図3および図7に示すように、モータ室8内には、複数(たとえば9個)の磁性体18が設けられている。複数の磁性体18は、インペラ10の複数の永久磁石17に対向して、等角度間隔で同一の円に沿って配置される。複数の磁性体18の基端は、円板状の1つの磁性体19に接合されている。各磁性体18には、コイル20が巻回されている。インペラ10の中心軸方向において、磁性体18の長さはコイル20よりも短い。すなわち図8に示すように、円板状の磁性体19の表面を基準として磁性体18の軸方向長さをxとし、コイル20の軸方向長さをLとすると、0<x<Lの関係を満たしている。
【0046】
また図9の横軸はコイル20の高さLに対する磁性体18の高さxの比率x/Lを示し、左側の縦軸は発生トルク(Nm)を示し、右側の縦軸はアキシアル吸引力(N)を示している。図9から分かるように、x/Lを0から1まで増加させると、発生トルクとアキシアル吸引力は両方とも指数関数的に増加する。発生トルクの増加率はアキシアル吸引力の増加率よりも小さい。図9では、x/Lの値がある範囲内にある場合は、発生トルクの変化量に比べて、アキシアル吸引力の変化量の方が大きいことが示されている。つまり、遠心式血液ポンプ装置では、必要となるトルクを満足しつつ、アキシアル吸引力を低くすることが重要であるが、x/LおよびLを最適値に設定することにより、その条件を満たすことができる。これにより、遠心式血液ポンプ装置において高効率とインペラの安定回転との両立が可能となる。
【0047】
図7に戻って、複数の磁性体18の周囲にはコイル20を巻回するためのスペースが均等に確保され、各隣接する2つの磁性体18の互いに対向する面は略平行に設けられている。このため、コイル20用の大きなスペースを確保することができ、コイル20の巻数を大きくすることができる。したがって、インペラ10を回転駆動させるための大きなトルクを発生することができる。また、コイル20で発生する銅損を軽減することができ、インペラ10の回転駆動におけるエネルギ効率を高めることができる。また、複数の磁性体18は円柱形状でもよい。この場合、コイル20の周方向長さを最小にすることができ、コイル20で発生する銅損を軽減することができ、インペラ10の回転駆動におけるエネルギ効率を高めることができる。
【0048】
なお、複数の磁性体18を囲む外形面(図7では、複数の磁性体18の外周を囲む円)は、複数の永久磁石17を囲む外形面(図4では、複数の磁性体18の外周を囲む円)に一致していてもよいし、複数の磁性体18を囲む外形面が複数の永久磁石17を囲む外形面よりも大きくてもよい。また、磁性体18は、ポンプ1の最大定格(インペラ10の回転駆動トルクが最大の条件)において、磁気的な飽和がないように設計することが好ましい。
【0049】
9個のコイル20には、たとえば120度通電方式で電圧が印加される。すなわち、9個のコイル20は、3個ずつグループ化される。各グループの第1〜第3のコイル20には、図10に示すような電圧VU,VV,VWが印加される。第1のコイル20には、0〜120度の期間に正電圧が印加され、120〜180度の期間に0Vが印加され、180〜300度の期間に負電圧が印加され、300〜360度の期間に0Vが印加される。したがって、第1のコイル20が巻回された磁性体18の先端面(インペラ10側の端面)は、0〜120度の期間にN極になり、180〜300度の期間にS極になる。電圧VVの位相は電圧VUよりも120度遅れており、電圧VWの位相は電圧VVよりも120度遅れている。したがって、第1〜第3のコイル20にそれぞれ電圧VU,VV,VWを印加することにより、回転磁界を形成することができ、複数の磁性体18とインペラ10の複数の永久磁石17との吸引力および反発力により、インペラ10を回転させることができる。
【0050】
ここで、インペラ10が定格回転数で回転している場合は、永久磁石15,16間の吸引力と複数の永久磁石17および複数の磁性体18間の吸引力とは、血液室7内におけるインペラ10の可動範囲の略中央付近で釣り合うようにされている。このため、インペラ10のいかなる可動範囲においてもインペラ10への吸引力による作用力は非常に小さい。その結果、インペラ10の回転起動時に発生するインペラ10とハウジング2との相対すべり時の摩擦抵抗を小さくすることができる。また、相対すべり時におけるインペラ10とハウジング2の内壁の表面の損傷(表面の凹凸)はなく、さらに低速回転時の動圧力が小さい場合にもインペラ10はハウジング2から浮上し易くなり、非接触の状態となる。したがって、インペラ10とハウジング2との相対すべりによって溶血・血栓が発生したり、相対すべり時に発生したわずかな表面損傷(凹凸)によって血栓が発生することもない。
【0051】
また、インペラ10のシュラウド12に対向する隔壁6の表面には複数の動圧溝21が形成され、シュラウド11に対向する血液室7の内壁には複数の動圧溝22が形成されている。インペラ10の回転数が所定の回転数を超えると、動圧溝21,22の各々とインペラ10との間に動圧軸受効果が発生する。これにより、動圧溝21,22の各々からインペラ10に対して抗力が発生し、インペラ10は血液室7内で非接触状態で回転する。
【0052】
詳しく説明すると、複数の動圧溝21は、図5に示すように、インペラ10のシュラウド12に対応する大きさに形成されている。各動圧溝21は、隔壁6の中心から若干離間した円形部分の周縁(円周)上に一端を有し、渦状に(換言すれば、湾曲して)隔壁6の外縁付近まで、幅が徐々に広がるように延びている。また、複数の動圧溝21は略同じ形状であり、かつ略同じ間隔に配置されている。動圧溝21は凹部であり、動圧溝21の深さは0.005〜0.4mm程度であることが好ましい。動圧溝21の数は、6〜36個程度であることが好ましい。
【0053】
図5では、10個の動圧溝21がインペラ10の中心軸に対して等角度で配置されている。動圧溝21は、いわゆる内向スパイラル溝形状となっているので、インペラ10が時計方向に回転すると、動圧溝21の外径部から内径部に向けて液体の圧力が高くなる。このため、インペラ10と隔壁6の間に反発力が発生し、これが動圧力となる。
【0054】
なお、動圧溝21を隔壁6に設ける代わりに、動圧溝21をインペラ10のシュラウド12の表面に設けてもよい。
【0055】
このように、インペラ10と複数の動圧溝21の間に形成される動圧軸受効果により、インペラ10は隔壁6から離れ、非接触状態で回転する。このため、インペラ10と隔壁6の間に血液流路が確保され、両者間での血液滞留およびそれに起因する血栓の発生が防止される。さらに、通常状態において、動圧溝21が、インペラ10と隔壁6の間において撹拌作用を発揮するので、両者間における部分的な血液滞留の発生を防止することができる。
【0056】
また、動圧溝21の角の部分は、少なくとも0.05mm以上のRを持つように丸められていることが好ましい。これにより、溶血の発生をより少なくすることができる。
【0057】
また、複数の動圧溝22は、図6に示すように、複数の動圧溝21と同様、インペラ10のシュラウド11に対応する大きさに形成されている。各動圧溝22は、血液室7の内壁の中心から若干離間した円形部分の周縁(円周)上に一端を有し、渦状に(換言すれば、湾曲して)血液室7の内壁の外縁付近まで、幅が徐々に広がるように延びている。また、複数の動圧溝22は、略同じ形状であり、かつ略同じ間隔で配置されている。動圧溝22は凹部であり、動圧溝22の深さは0.005〜0.4mm程度があることが好ましい。動圧溝22の数は、6〜36個程度であることが好ましい。図6では、10個の動圧溝22がインペラ10の中心軸に対して等角度に配置されている。
【0058】
なお、動圧溝22は、血液室7の内壁側ではなく、インペラ10のシュラウド11の表面に設けてもよい。また、動圧溝22の角となる部分は、少なくとも0.05mm以上のRを持つように丸められていることが好ましい。これにより、溶血の発生をより少なくすることができる。
【0059】
このように、インペラ10と複数の動圧溝22の間に形成される動圧軸受効果により、インペラ10は血液室7の内壁から離れ、非接触状態で回転する。また、ポンプ部1が外的衝撃を受けたときや、動圧溝21による動圧力が過剰となったときに、インペラ10の血液室7の内壁への密着を防止することができる。動圧溝21によって発生する動圧力と動圧溝22によって発生する動圧力は異なるものとなっていてもよい。
【0060】
インペラ10のシュラウド12と隔壁6との隙間と、インペラ10のシュラウド11と血液室7の内壁との隙間とが略同じ状態でインペラ10が回転することが好ましい。インペラ10に作用する流体力などの外乱が大きく、一方の隙間が狭くなる場合には、その狭くなる側の動圧溝による動圧力を他方の動圧溝による動圧力よりも大きくし、両隙間を略同じにするため、動圧溝21と22の形状を異ならせることが好ましい。
【0061】
なお、図5および図6では、動圧溝21,22の各々を内向スパイラル溝形状としたが、他の形状の動圧溝21,22を使用することも可能である。ただし、血液を循環させる場合は、血液をスムーズに流すことが可能な内向スパイラル溝形状の動圧溝21,22を採用することが好ましい。
【0062】
図11は、永久磁石15,16間の吸引力F1と永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2との合力の大きさが、インペラ10の血液室7内の可動範囲の中央位置以外の位置P1でゼロとなるように調整した場合にインペラ10に作用する力を示す図である。ただし、インペラ10の回転数は定格値に保たれている。
【0063】
すなわち、永久磁石15,16間の吸引力F1が永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2よりも小さく設定され、それらの合力がゼロとなるインペラ10の浮上位置はインペラ可動範囲の中間よりも隔壁6側にあるものとする。動圧溝21,22の形状は同じである。
【0064】
図11の横軸はインペラ10の位置(図中の左側が隔壁6側)を示し、縦軸はインペラ10に対する作用力を示している。インペラ10への作用力が隔壁6側に働くとき、その作用力をマイナスとしている。インペラ10に対する作用力としては、永久磁石15,16間の吸引力F1と、永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2と、動圧溝21の動圧力F3と、動圧溝22の動圧力F4と、それらの合力である「インペラに作用する正味の力F5」を示した。
【0065】
図11から分かるように、インペラ10に作用する正味の力F5がゼロとなる位置で、インペラ10の浮上位置はインペラ10の可動範囲の中央位置から大きくずれている。その結果、回転中のインペラ10と隔壁6の間の距離は狭まり、インペラ10に対して小さな外乱力が作用してもインペラ10は隔壁6に接触してしまう。
【0066】
これに対して図12は、永久磁石15,16間の吸引力F1と永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2との合力の大きさが、インペラ10の血液室7内の可動範囲の中央位置P0でゼロとなるように調整した場合にインペラ10に作用する力を示す図である。この場合も、インペラ10の回転数は定格値に保たれている。
【0067】
すなわち、永久磁石15,16間の吸引力F1と永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2とは略同じに設定されている。また、動圧溝21,22の形状は同じにされている。この場合は、図11の場合と比較して、インペラ10の浮上位置に対する支持剛性が高くなる。また、インペラ10に作用する正味の力F5は可動範囲の中央でゼロとなっているので、インペラ10に対し外乱力が作用しない場合にはインペラ10は中央位置で浮上する。
【0068】
このように、インペラ10の浮上位置は、永久磁石15,16間の吸引力F1と、永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2と、インペラ10の回転時に動圧溝21,22で発生する動圧力F3,F4との釣り合いで決まる。F1とF2を略同じにし、動圧溝21,22の形状を同じにすることにより、インペラ10の回転時にインペラ10を血液室7の略中央部で浮上させることが可能となる。図3および図4に示すように、インペラ10は2つのディスク間に羽根を形成した形状を有するので、ハウジング2の内壁に対向する2つの面を同一形状および同一寸法にすることができる。したがって、略同一の動圧性能を有する動圧溝21,22をインペラ10の両側に設けることは可能である。
【0069】
この場合、インペラ10は血液室7の中央位置で浮上するので、インペラ10はハウジング2の内壁から最も離れた位置に保持される。その結果、インペラ10の浮上時にインペラ10に外乱力が印加されて、インペラ10の浮上位置が変化しても、インペラ10とハウジング2の内壁とが接触する可能性が小さくなり、それらの接触によって血栓や溶血が発生する可能性も低くなる。
【0070】
なお、図11および図12の例では、2つの動圧溝21,22の形状は同じであるとしたが、動圧溝21,22の形状を異なるものとし、動圧溝21,22の動圧性能を異なるものとしてもよい。たとえば、ポンピングの際に流体力などによってインペラ10に対して常に一方方向の外乱が作用する場合には、その外乱の方向にある動圧溝の性能を他方の動圧溝の性能より高めておくことにより、インペラ10をハウジング2の中央位置で浮上回転させることが可能となる。この結果、インペラ10とハウジング2との接触確率を低く抑えることができ、インペラ10の安定した浮上性能を得ることができる。
【0071】
また、永久磁石15,16間の吸引力F1と、永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2とによって構成されるインペラ10のアキシアル方向への負の支持剛性値の絶対値をKaとし、ラジアル方向の正の剛性値の絶対値をKrとし、インペラ10が回転する常用回転数領域において2つの動圧溝21,22で得られる正の剛性値の絶対値をKgとすると、Kg>Ka+Krの関係を満たすことが好ましい。
【0072】
具体的には、アキシアル方向の負の剛性値の絶対値Kaを20000N/mとし、ラジアル方向の正の剛性値の絶対値Krを10000N/mとした場合、インペラ10が通常回転する回転数領域で2つの動圧溝21,22によって得られる正の剛性値の絶対値Kgは30000N/mを超える値に設定される。
【0073】
インペラ10のアキシアル支持剛性は動圧溝21,22で発生する動圧力に起因する剛性から磁性体間の吸引力などによる負の剛性を引いた値であるから、Kg>Ka+Krの関係を持つことで、インペラ10のラジアル方向の支持剛性よりもアキシアル方向の支持剛性を高めることができる。このように設定することにより、インペラ10に対して外乱力が作用した場合に、インペラ10のラジアル方向への動きよりもアキシアル方向への動きを抑制することができ、動圧溝21の形成部でのインペラ10とハウジング2との機械的な接触を避けることができる。
【0074】
特に、動圧溝21,22は、図5および図6で示したように平面に凹設されているので、インペラ10の回転中にこの部分でハウジング2とインペラ10との機械的接触があると、インペラ10およびハウジング2の内壁のいずれか一方または両方の表面に傷(表面の凹凸)が生じてしまい、この部位を血液が通過すると、血栓及び溶血の原因となる可能性もあった。この動圧溝21,22での機械的接触を防ぎ、血栓及び溶血を抑制するために、ラジアル方向の剛性よりもアキシアル方向の剛性を高める効果は高い。
【0075】
また、インペラ10にアンバランスがあると回転時にインペラ10に振れ回りが生ずるが、この振れ回りはインペラ10の質量とインペラ10の支持剛性値で決定される固有振動数とインペラ10の回転数が一致した場合に最大となる。
【0076】
このポンプ部1では、インペラ10のアキシアル方向の支持剛性よりもラジアル方向の支持剛性を小さくしているので、インペラ10の最高回転数をラジアル方向の固有振動数以下に設定することが好ましい。そこで、インペラ10とハウジング2との機械的接触を防ぐため、永久磁石15,16間の吸引力F1と永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2によって構成されるインペラ10のラジアル剛性値をKr(N/m)とし、インペラ10の質量をm(kg)とし、インペラの回転数をω(rad/s)とした場合、ω<(Kr/m)0.5の関係を満たすことが好ましい。
【0077】
具体的には、インペラ10の質量が0.03kgであり、ラジアル剛性値が2000N/mである場合、インペラ10の最高回転数は258rad/s(2465rpm)以下に設定される。逆に、インペラ10の最高回転数を366rad/s(3500rpm)と設定した場合には、ラジアル剛性は4018N/m以上に設定される。
【0078】
さらに、このωの80%以下にインペラ10の最高回転数を設定することが好ましい。具体的には、インペラ10の質量が0.03kgであり、ラジアル剛性値が2000N/mである場合には、その最高回転数は206.4rad/s(1971rpm)以下に設定される。逆に、インペラ10の最高回転数を366rad/s(3500rpm)としたい場合には、ラジアル剛性値が6279N/m以上に設定される。このようにインペラ10の最高回転数を設定することで、インペラ10の回転中におけるインペラ10とハウジング2の接触を抑えることができる。
【0079】
また、永久磁石15,16間の吸引力F1と、永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2とによって構成されるインペラ10のアキシアル方向の負の剛性値よりも動圧溝21,22の動圧力による剛性が大きくなった場合にインペラ10とハウジング2は非接触の状態となる。したがって、この負の剛性値を極力小さくすることが好ましい。そこで、この負の剛性値を小さく抑えるため、永久磁石15,16の対向面のサイズを異ならせることが好ましい。たとえば、永久磁石16のサイズを永久磁石15よりも小さくすることにより、両者間の距離によって変化する吸引力の変化割合、すなわち負の剛性を小さく抑えることができ、インペラ支持剛性の低下を防ぐことができる。
【0080】
また、インペラ10の回転起動前に、インペラ10が隔壁6に接触していることを確認してから、インペラ10を回転起動させることが好ましい。
【0081】
すなわち、インペラ10の非回転時では、動圧溝21,22による非接触支持はされず、さらに、永久磁石15,16間の吸引力F1と、永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2によってインペラ10とハウジング2とは高い面圧で接触している。また、このポンプ部1のように、インペラ10をモータ室8内のコイル20および磁性体18とインペラ10の永久磁石17との磁気的相互作用で回転させる場合は、特許文献2の図3に示すようなインペラを永久磁石間の磁気カップリングで回転駆動させる場合に比べて、起動トルクが小さい。したがって、インペラ10をスムーズに回転起動させることは難しい。
【0082】
しかし、インペラ10のシュラウド12が隔壁6と接触している場合は、インペラ10のシュラウド11が血液室7の内壁に接触している場合に比べ、インペラ10の永久磁石17とモータ室8内の磁性体18とが近接しているので、インペラ10の起動時の回転トルクを高めることができ、インペラ10をスムーズに回転起動させることができる。
【0083】
ところが、上述の通り、インペラ10の回転時には、永久磁石15,16間の吸引力F1と、永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2とは、インペラ10の位置がインペラ10の可動範囲の中央付近にて釣り合うように設定されているので、インペラ10の停止時にインペラ10が必ずしも隔壁6に接触しているとは限らない。
【0084】
そこで、この遠心式血液ポンプ装置では、インペラ10を回転起動させる前にインペラ10を隔壁6側に移動させる手段が設けられる。具体的には、永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2が大きくなるように複数のコイル20に電流を流し、インペラ10を隔壁6側に移動させる。
【0085】
図13は、ポンプ部1を制御するコントローラ25の構成を示すブロック図である。図13において、コントローラ25は、モータ制御回路26およびパワーアンプ27を含む。モータ制御回路26は、たとえば120度通電方式の3相の制御信号を出力する。パワーアンプ27は、モータ制御回路26からの3相の制御信号を増幅して、図10で示した3相電圧VU,VV,VWを生成する。3相電圧VU,VV,VWは、図7および図10で説明した第1〜第3のコイル20にそれぞれ印加される。通常の運転時は、これにより、インペラ10が可動範囲の中央位置で所定の回転数で回転する。
【0086】
図14(a)〜(c)は、インペラ10の回転起動時におけるコイル電流I、インペラ10の位置、およびインペラ10の回転数の時間変化を示すタイムチャートである。図14(a)〜(c)において、初期状態では、インペラ10のシュラウド11が血液室7の内壁に接触しており、インペラ10は位置PAにあるものとする。時刻t0において、予め定められた電流I0がコイル20に流される。これにより、永久磁石17および磁性体18間の吸引力F2が永久磁石15,16間の吸引力F1よりも大きくなり、インペラ10は隔壁6側の位置PBに移動し、インペラ10のシュラウド12は隔壁6に接触する。インペラ10が位置PBに移動したら、電流I0を遮断する(時刻t1)。インペラ10の血液室7内の位置を検出するセンサを設け、インペラ10が隔壁6に接触したことを確認した後に、電流I0を遮断することが好ましい。
【0087】
次に、コイル電流Iを予め定められた定格値まで徐々に上昇させる。このとき、インペラ10は隔壁6に接触しているので、インペラ10はスムーズに回転する。コイル電流Iの上昇に伴って、インペラ10は隔壁6側の位置PBから可動範囲の中央位置に移動する。
【0088】
以上のように、この実施の形態1では、磁性体18をコイル20よりも短くしたので、必要となるトルクを満足しつつ、アキシアル吸引力を低くすることができる。したがって、効率の向上とインペラの安定回転との両立が可能となる。
【0089】
以下、この実施の形態1の種々の変更例について説明する。図15は、この実施の形態1の変更例を示すブロック図である。インペラ回転起動時とそれ以外の場合の電源供給を切り替える構成の一例を示している。図15において、この変更例では、図13のパワーアンプ27がパワーアンプ30,31および切換スイッチ32で置換される。図14の時刻t0〜t1では、モータ制御回路26の出力信号がパワーアンプ30に与えられ、パワーアンプ30の出力電圧が切換スイッチ32を介してコイル20に印加され、コイル20に電流I0が流される。時刻t2以降は、モータ制御回路26の出力信号がパワーアンプ31に与えられ、パワーアンプ31の出力電圧が切換スイッチ32を介してコイル20に印加され、コイル20に電流が流される。
【0090】
また、図16(a)〜(c)は、この実施の形態1の他の変更例を示すタイムチャートである。図16(a)〜(c)において、初期状態では、インペラ10のシュラウド11が血液室7の内壁に接触しており、インペラ10は位置PAにあるものとする。時刻t0において、予め定められた電流I1がコイル20に流される。モータ制御回路26により、たとえば120度通電方式の3相の制御信号を出力する。パワーアンプ27は、モータ制御回路26からの3相の制御信号を増幅して、図10で示した3相電圧VU,VV,VWを生成する。3相電圧VU,VV,VWは、図7で説明した第1〜第3のコイル20にそれぞれ印加される。よって、この電流I1によってインペラ10に回転磁界が印加される。この電流I1は、図14の電流I0よりも大きい電流であり、インペラ10のシュラウド11が血液室7の内壁に接触している場合でもインペラ10を回転起動させることが可能な電流である。回転起動が確認された後、コイル電流Iを低下させ、予め定められた定格値まで徐々に上昇させる。このようにインペラ10が位置PA側にあった場合でも、インペラ10の回転起動時のみにコイル20に過大電流を流すように構成してもよい。
【0091】
また、血液室7の内壁の表面および隔壁6の表面と、インペラ10の表面との少なくとも一方にダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜を形成してもよい。これにより、インペラ10と血液室7の内壁および隔壁6との摩擦力を軽減し、インペラをスムーズに回転起動することが可能になる。また、ダイヤモンドライクカーボン膜以外に、フッ素系樹脂膜、パラキシリレン系樹脂膜などを形成してもよい。
【0092】
また、図17は、この実施の形態1のさらに他の変更例を示す断面図であって、図3と対比される図である。図17において、この変更例では、対向する永久磁石15,16の対向面のサイズが異なる。図3では、永久磁石15,16の対向面のサイズが同じである場合が示されているが、永久磁石15,16の対向面のサイズを異ならせることにより、両者間の距離によって変化する吸引力の変化量、すなわち負の剛性を小さく抑えることができ、インペラ10の支持剛性の低下を防ぐことができる。
【0093】
また、図18は、この実施の形態1のさらに他の変更例を示す断面図であって、図17と対比される図である。図18において、この変更例では、継鉄19が継鉄36で置換され、磁性体18が磁性体37で置換される。継鉄36および磁性体37の各々は、インペラ10の回転軸の長さ方向に積層された複数の鋼板を含む。この変更例では、継鉄36および磁性体37で発生する渦電流損失を軽減することができ、インペラ10の回転駆動におけるエネルギ効率を高めることができる。
【0094】
また、図19に示すように、インペラ10の回転方向に積層された複数の鋼板を含む磁性体38で磁性体37を置換してもよい。また、図20に示すように、インペラ10の径方向に積層された複数の鋼板を含む磁性体39で磁性体37を置換してもよい。これらの場合でも、図18の変更例と同じ効果が得られる。
【0095】
また、図3の継鉄19および磁性体18の各々を、純鉄、軟鉄、または珪素鉄の粉末によって形成してもよい。この場合は、継鉄19および磁性体18の鉄損を軽減することができ、インペラ10の回転駆動におけるエネルギ効率を高めることができる。
【0096】
また、図21の変更例では、各磁性体18は、隔壁6に垂直な中心線L1の周りに複数回巻回された帯状の薄い磁性鋼板18aを含む。帯状の磁性鋼板18aは長さ方向に巻回されており、その幅方向は隔壁6に垂直な方向に向けられている。磁性鋼板18aは、無方向性または方向性の磁気特性を持つ電磁鋼板であってもよいし、アモルファス金属あるいはアモルファス合金で形成されていてもよい。また、磁性鋼板18aの巻き終わりの端部を磁性鋼板18a自体に溶接することによって巻回された磁性鋼板18aを所定の形状に固定してもよいし、磁性鋼板18a全体を樹脂に含浸させ、樹脂を硬化させることによって巻回された磁性鋼板18aを所定の形状に固定してもよい。
【0097】
このように、巻回された帯状の薄い磁性鋼板18aによって磁性体18を形成することにより、磁性体18内の鉄損を低減するとともに、磁性体18内の磁束の透磁率を高めることができ、インペラ10の回転駆動におけるエネルギ効率を高めることができる。また、磁性体18を簡単に形成できるので、装置の小型化、低コスト化、生産性の向上を図ることができる。
【0098】
磁性鋼板18aは、円柱状に巻回してもよいし、三角柱のような角柱状に巻回してもよい。図21では、磁性鋼板18aを中心線L1の周りに円柱状に巻回した状態が示されている。円柱状に形成された磁性体18(すなわち円柱状に巻回された磁性鋼板18a)の円形の端面は、隔壁6を介してインペラ10に対向して配置される。コイル20は、円柱状の磁性体18の外周面(側面)全体を覆うように巻回される。磁性鋼板18aを円柱状に巻回した場合、コイル20の周方向長さを最小にすることができ、コイル20で発生する銅損を軽減することができ、インペラ10の回転駆動におけるエネルギ効率を高めることができる。
【0099】
また、磁性鋼板18aを中心線L1の周りに三角柱のような角柱状に巻回することも可能である。三角柱状に形成された磁性体18(すなわち三角柱状に巻回された磁性鋼板18a)の三角形の端面は、隔壁6を介してインペラ10に対向して配置される。コイル20は、三角柱状の磁性体18の側面全体を覆うように巻回される。また、複数の磁性体18の周囲にはコイル20を巻回するためのスペースが均等に確保され、各隣接する2つの磁性体18の互いに対向する面は略平行に設けられている。このため、コイル20用の大きなスペースを確保することができ、コイル20の巻数を大きくすることができる。したがって、インペラ10を回転駆動させるための大きなトルクを発生することができる。また、コイル20で発生する銅損を軽減することができ、インペラ10の回転駆動におけるエネルギ効率を高めることができる。なお、磁性体18は、ポンプ1の最大定格(インペラ10の回転駆動トルクが最大の条件)において、磁気的な飽和がないように設計することが好ましい。
【0100】
また、図22は、この実施の形態1のさらに他の変更例を示す断面図であって、図21と対比される図である。図22において、この変更例では、磁性体18の内周面から外周面にかけて切り欠き部40が形成されている。すなわち、磁性鋼板18aは、中心線L1の周りに複数回巻回されて同心状に配置された複数の筒部材を構成している。切り欠き部40は、中心線L1の一方側(図22では右側)において複数の筒部材の各々を中心線L1と平行な方向に切断している。この変更例では、切り欠き部40を設けたので、磁性体18の鉄損を軽減することができる。
【0101】
また、図23は、この実施の形態1のさらに他の変更例を示す断面図であって、図21と対比される図である。図23において、この変更例では、磁性体18では、軟磁性体である棒状の磁性体41が芯材として使用される。磁性鋼板18aは、磁性体41の周りに複数回巻回されている。磁性鋼板18aの一方端を磁性体41に溶接し、磁性鋼板18aの他方端を磁性鋼板18a自体に溶接することにより、磁性鋼板18aを所定形状に固定することができる。また、磁性体41および磁性鋼板18a全体を樹脂に含浸させ、樹脂を硬化させて所定の形状に固定してもよい。
【0102】
また、図24は、この実施の形態1のさらに他の変更例を示す図である。図24において、この変更例では、各磁性体18は磁性体41および磁性鋼板18aを含む。棒状の磁性体41の長さは、磁性鋼板18aの幅よりも長い。磁性鋼板18aは磁性体41の上端部に巻回されており、磁性体41の下端部は、円柱状に巻回された磁性鋼板18aから突出している。
【0103】
円板状の磁性体19には、各磁性体18に対応して設けられた孔19aが形成されている。磁性体41の下端部は、磁性体19の孔19aに挿嵌される。磁性体41は、孔19aに接着、圧入、あるいは焼きばめによって固定される。円筒状のコイル20の内周部は、磁性体18の外周部に嵌め込まれる。この変更例では、位置決め治具等を用いることなく、磁性体18の組立、磁性体19への固定を容易に行なうことができ、作業性が良好となる。
【0104】
また、図25に示すように、磁性体18と同様に、帯状の磁性鋼板19aを中心線L2の周りに複数回巻回して磁性体19を形成してもよい。この場合は、磁性体19の磁性体内の鉄損を軽減することができ、インペラ10の回転駆動におけるエネルギ効率を高めることができる。無方向性または方向性の磁気特性を持つ磁性鋼板19aを用いれば、磁性体19内の磁束の透磁率を高めることができ、インペラ10の回転駆動におけるエネルギ効率を高めることができる。
【0105】
また、図26の変更例では、シュラウド12に複数の永久磁石17と複数の永久磁石42とが埋設されている。永久磁石42の数は、永久磁石17の数と同じである。永久磁石42は、円周方向(インペラ10の回転方向)に着磁されている。複数の永久磁石17と複数の永久磁石42とは、1つずつ交互に等角度間隔で同一の円に沿ってハルバッハ配列構造で配置されている。
【0106】
換言すると、図27に示すように、隔壁6側にN極を向けた永久磁石17と、隔壁6側にS極を向けた永久磁石17とが等角度間隔で隙間を設けて同一の円に沿って交互に配置されている。各永久磁石42のN極は隔壁6側にN極を向けた永久磁石17に向けて配置され、各永久磁石42のS極は隔壁6側にS極を向けた永久磁石17に向けて配置される。複数の永久磁石17同士の形状は同じであり、複数の永久磁石42同士の形状は同じである。永久磁石17の形状と永久磁石42の形状は、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0107】
この変更例では、永久磁石17と磁性体18との吸引力を抑制するとともに、トルクの起因となる磁束を強めることができるので、最も永久磁石を小型化することができる。つまり、インペラ10を最も軽量化することができ、かつモータギャップが広い場合でもエネルギ効率を高めることができる。
【0108】
[実施の形態2]
図28および図29は、この発明の実施の形態2による遠心式血液ポンプ装置の要部を示す図であって、それぞれ図5および図6と対比される図である。図28および図29において、インペラ10のシュラウド12に対向する隔壁6の表面には複数の動圧溝51および複数の動圧溝52が形成され、シュラウド11に対向する血液室7の内壁には複数の動圧溝53および複数の動圧溝54が形成されている。インペラ10の回転数が所定の回転数を超えると、動圧溝51〜54の各々とインペラ10との間に動圧軸受効果が発生する。これにより、動圧溝51〜54の各々からインペラ10に対して抗力が発生し、インペラ10は血液室7内で非接触状態で回転する。
【0109】
詳しく説明すると、複数の動圧溝51および複数の動圧溝52は、図28に示すように、インペラ10のシュラウド12に対応する大きさに形成されている。複数の動圧溝51および複数の動圧溝52は、インペラ10の回転方向に1つずつ交互に配置されている。動圧溝51,52の各々は、隔壁6の中心から若干離間した円形部分の周縁(円周)上に一端を有し、渦状に(換言すれば、湾曲して)隔壁6の外縁付近まで、幅が徐々に広がるように延びている。複数の動圧溝51は略同じ形状であり、かつインペラ10の回転方向に等角度間隔に配置されている。動圧溝51は凹部であり、動圧溝51の深さは0.005〜0.4mm程度であることが好ましい。動圧溝51の数は、6〜36個程度であることが好ましい。複数の動圧溝52は略同じ形状であり、かつインペラ10の回転方向に等角度間隔に配置されている。動圧溝52は凹部であり、動圧溝52の深さは0.005〜0.3mm程度であることが好ましい。
【0110】
動圧溝52は、図30に示すように、動圧溝51よりも浅い。動圧溝52の深さは動圧溝52の深さの5分の1以下であることが好ましい。また、動圧溝52の幅は2つの動圧溝51の間隔の3分の2以下であることが好ましい。また、動圧溝52の数は動圧溝51の数以下であることが好ましい。
【0111】
図5では、10個の動圧溝51と10個の動圧溝52がインペラ10の中心軸に対して等角度間隔で配置されている。動圧溝51,52の各々は、いわゆる内向スパイラル溝形状となっているので、インペラ10が時計方向に回転すると、動圧溝51,52の外径部から内径部に向けて液体の圧力が高くなる。このため、インペラ10と隔壁6の間に反発力が発生し、これが動圧力となる。
【0112】
図31は、インペラ10を所定の回転数で回転させた場合において、隔壁6の表面から見たインペラ10の浮上位置と、インペラ10が動圧溝51から受ける動圧力との関係を示す図である。図32は、インペラ10を所定の回転数で回転させた場合において、インペラ10および隔壁6間の距離と、動圧溝52からインペラ10が受ける動圧力との関係を示す図である。図33は、図31と図32を合成した図である。
【0113】
図31〜図33から分かるように、動圧溝51は、インペラ10と隔壁6との間の距離が長い場合に動圧溝52よりも大きな動圧力を発生する。また、動圧溝52は、インペラ10と隔壁6との間の距離が短い場合に動圧溝51よりも大きな動圧力を発生する。したがって、本実施の形態2では、動圧溝51,52の両方を設けたので、回転起動時と定常回転時の両方で大きな動圧力を得ることができる。
【0114】
このように、インペラ10と動圧溝51,52の間に形成される動圧軸受効果により、インペラ10は隔壁6から離れ、非接触状態で回転する。このため、インペラ10はスムーズに回転起動し、インペラ10と隔壁6の間に血液流路が確保され、両者間での血液滞留およびそれに起因する血栓の発生が防止される。さらに、通常状態において、動圧溝51,52が、インペラ10と隔壁6の間において撹拌作用を発揮するので、両者間における部分的な血液滞留の発生を防止することができる。
【0115】
なお、動圧溝51,52を隔壁6に設ける代わりに、動圧溝51,52をインペラ10のシュラウド12の表面に設けてもよい。
【0116】
また、動圧溝51,52の各々の角の部分は、少なくとも0.05mm以上のRを持つように丸められていることが好ましい。これにより、溶血の発生をより少なくすることができる。
【0117】
また、図34は、インペラ10が定常回転浮上位置にある場合において、動圧溝52の深さD52と動圧溝51の深さD51との比D52/D51と、インペラ10に作用する動圧力との関係を示す図である。図33で示したように、インペラ10が隔壁6に近接した位置にある場合は、動圧溝52の追加によって大きな動圧力が発生するが、図34に示すように、インペラ10が定常回転浮上位置にある場合は、動圧溝52の追加によって動圧力が低下する。したがって、動圧溝52の追加による動圧力や剛性の低下がポンプ性能に悪影響を与えないように、動圧溝52の深さおよび幅を決定する必要がある。図34に示すように、比D52/D51が小さいほど定常回転浮上位置における動圧力の低下を抑制できる。よって好ましくは、比D52/D51は1/5以下に設定される。
【0118】
また、図35は、インペラ10が定常浮上位置にある場合において、動圧溝52の幅W52と動圧溝51の間隔(動圧溝51間のランド部の幅)WL51との比W52/WL51と、インペラ10に作用する動圧力との関係を示す図である。図35に示すように、比W52/WL51が小さいほど定常回転浮上位置における動圧力の低下を抑制できる。よって好ましくは、比W52/WL51は2/3以下に設定される。
【0119】
また、複数の動圧溝53および複数の動圧溝54は、図29に示すように、複数の動圧溝51および複数の動圧溝52と同様、インペラ10のシュラウド11に対応する大きさに形成されている。動圧溝53,54の各々は、血液室7の内壁の中心から若干離間した円形部分の周縁(円周)上に一端を有し、渦状に(換言すれば、湾曲して)血液室7の内壁の外縁付近まで、幅が徐々に広がるように延びている。また、複数の動圧溝53は、略同じ形状であり、かつ略同じ間隔で配置されている。動圧溝53は凹部であり、動圧溝53の深さは0.005〜0.4mm程度があることが好ましい。動圧溝53の数は、6〜36個程度であることが好ましい。図29では、10個の動圧溝53がインペラ10の中心軸に対して等角度に配置されている。
【0120】
また、複数の動圧溝54は略同じ形状であり、かつインペラ10の回転方向に等角度間隔に配置されている。動圧溝54は凹部であり、動圧溝54の深さは0.005〜0.3mm程度であることが好ましい。動圧溝54の数は、6〜36個程度であることが好ましい。
【0121】
動圧溝54は、動圧溝51,52について図30で説明したように、動圧溝53よりも浅い。動圧溝54の深さは動圧溝53の深さの5分の1以下であることが好ましい。また、動圧溝54の幅は2つの動圧溝53の間隔の3分の2以下であることが好ましい。また、動圧溝54の数は動圧溝53の数以下であることが好ましい。
【0122】
図29では、10個の動圧溝53と10個の動圧溝54がインペラ10の中心軸に対して等角度間隔で配置されている。動圧溝53,54の各々は、いわゆる内向スパイラル溝形状となっているので、インペラ10が時計方向に回転すると、動圧溝53,54の外径部から内径部に向けて液体の圧力が高くなる。このため、インペラ10と血液室7の内壁との間に反発力が発生し、これが動圧力となる。
【0123】
図31〜図33において動圧溝51,52について説明したように、動圧溝53は、インペラ10と血液室7の内壁の間の距離が長い場合に動圧溝54よりも大きな動圧力を発生する。また、動圧溝54は、インペラ10と血液室7の内壁との間の距離が短い場合に動圧溝53よりも大きな動圧力を発生する。したがって、本実施の形態2では、動圧溝53,54の両方を設けたので、回転起動時と定常回転時の両方で大きな動圧力を得ることができる。
【0124】
このように、インペラ10と動圧溝53,54の間に形成される動圧軸受効果により、インペラ10は血液室7の内壁から離れ、非接触状態で回転する。このため、インペラ10はスムーズに回転起動し、インペラ10と血液室7の内壁の間に血液流路が確保され、両者間での血液滞留およびそれに起因する血栓の発生が防止される。さらに、通常状態において、動圧溝53,54が、インペラ10と血液室7の内壁の間において撹拌作用を発揮するので、両者間における部分的な血液滞留の発生を防止することができる。また、ポンプ部1が外的衝撃を受けたときや、動圧溝51,52による動圧力が過剰となったときに、インペラ10の血液室7の内壁への密着を防止することができる。動圧溝51,52によって発生する動圧力と動圧溝53,54によって発生する動圧力は異なるものとなっていてもよい。
【0125】
なお、動圧溝53,54を血液室7の内壁に設ける代わりに、動圧溝53,54をインペラ10のシュラウド11の表面に設けてもよい。
【0126】
また、動圧溝53,54の各々の角の部分は、少なくとも0.05mm以上のRを持つように丸められていることが好ましい。これにより、溶血の発生をより少なくすることができる。
【0127】
また、動圧溝51,52について図34および図35で説明したように、動圧溝54の深さD54と動圧溝53の深さD53との比D54/D53は1/5以下に設定される。また、動圧溝54の幅W54と動圧溝53の間隔(動圧溝53間のランド部の幅)WL53との比W54/WL53は2/3以下に設定される。
【0128】
また、インペラ10のシュラウド12と隔壁6との隙間と、インペラ10のシュラウド11と血液室7の内壁との隙間とが略同じ状態でインペラ10が回転することが好ましい。インペラ10に作用する流体力などの外乱が大きく、一方の隙間が狭くなる場合には、その狭くなる側の動圧溝による動圧力を他方の動圧溝による動圧力よりも大きくし、両隙間を略同じにするため、動圧溝51,52と53,54の形状を異ならせることが好ましい。
【0129】
また、図28および図29では、動圧溝51〜54の各々を内向スパイラル溝形状としたが、他の形状の動圧溝51〜54を使用することも可能である。ただし、血液を循環させる場合は、血液をスムーズに流すことが可能な内向スパイラル溝形状の動圧溝51〜54を採用することが好ましい。
【0130】
[実施の形態3]
図36は、この発明の実施の形態3による遠心式血液ポンプ装置の要部を示す図であって、図3と対比される図である。図36において、この実施の形態3では、永久磁石15が径方向に2つの永久磁石15a,15bに分割され、永久磁石16が径方向に2つの永久磁石16a,16bに分割されている。すなわち、シュラウド11には永久磁石15a,15bが埋設され、シュラウド11に対向する血液室7の内壁には、それぞれ永久磁石15a,15bを吸引する永久磁石16a,16bが埋設されている。永久磁石15a,15b,16a,16bは、インペラ10をモータ室8と反対側、換言すれば血液流入ポート4側に吸引(換言すれば、付勢)するために設けられている。
【0131】
図37(a)(b)は永久磁石15a,15b,16a,16bの構成を示す図であり、図37(a)は図37(b)のXXXVIIA−XXXVIIA線断面図である。図37(a)(b)に示すように、永久磁石15a,15bの各々は円環状に形成されており、永久磁石15aの外径は永久磁石15bの内径よりも小さい。永久磁石15a,15bは同軸状に設けられており、永久磁石15a,15bの中心点は、ともにインペラ10の回転中心線に配置されている。永久磁石15a,15bのN極は同じ方向に向けられている。
【0132】
一方、永久磁石16a,16bの各々は円弧状に形成されており、インペラ10の回転方向に2つ配列されている。円環状に配置された2つの永久磁石16aの外径および内径は、永久磁石15aの外径および内径と同じである。円環状に配置された2つの永久磁石16bの外径および内径は、永久磁石15bの外径および内径と同じである。永久磁石16a,16bのN極は同じ方向に向けられている。永久磁石15a,15bのS極と永久磁石16a,16bのN極とは、互いに対向している。
【0133】
また、図36に示すように、永久磁石15a,15bの間隔(すなわち永久磁石16a,16bの間隔)D1は、インペラ10のラジアル方向の可動距離(すなわち血液室7の内径とインペラ10の外径との差の距離)の2分の1の距離D2よりも大きく設定されている(D1>D2)。これは、D1<D2とした場合、インペラ10がラジアル方向に最大限まで移動したとき、永久磁石15aと16b、永久磁石15bと16aがそれぞれ干渉し、インペラ10をポンプ中心位置に復元させる復元力が不安定になるからである。
【0134】
このように、インペラ10の径方向に2対の永久磁石15a,16aおよび永久磁石15b,16bを設けたので、インペラ10の径方向に1対の永久磁石のみを設けた場合に比べ、インペラ10のラジアル方向の支持剛性を大きくすることができる。
【0135】
なお、シュラウド11および血液室7の内壁にそれぞれ永久磁石15a,15bおよび永久磁石16a,16bを設ける代わりに、シュラウド11および血液室7の内壁の一方に永久磁石を設け、他方に磁性体を設けてもよい。また、磁性体としては軟質磁性体と硬質磁性体のいずれを使用してもよい。
【0136】
また、図36では、永久磁石15aと16aの対向面のサイズが同じであり、かつ永久磁石15bと16bの対向面のサイズが同じである場合が示されているが、永久磁石15a,15bと永久磁石16a,16bの吸引力に起因するインペラ10の剛性の低下を防ぐため、永久磁石15aと16aの対向面のサイズを異ならせ、かつ永久磁石15bと16bの対向面のサイズを異ならせることが好ましい。永久磁石15a,15bと永久磁石16a,16bの対向面のサイズを異ならせることにより、両者間の距離によって変化する吸引力の変化量、すなわち負の剛性を小さく抑えることができ、インペラ10の支持剛性の低下を防ぐことができる。
【0137】
また、図37(a)(b)では、永久磁石15a,15bの各々を円環状に形成し、永久磁石16a,16bの各々を円弧状に形成してインペラ10の回転方向に等角度間隔で2つ配列したが、逆に、永久磁石16a,16bの各々を円環状に形成し、永久磁石15a,15bの各々を円弧状に形成してインペラ10の回転方向に等角度間隔で2つ配列してもよい。また、永久磁石15a,15bの各々、あるいは永久磁石16a,16bの各々をさらに短い円弧状に形成してインペラ10の回転方向に等角度間隔で複数配列してもよい。
【0138】
[実施の形態4]
図38は、この発明の実施の形態4による遠心式血液ポンプ装置の要部を示す断面図であって、図36と対比される図である。図38において、この遠心式血液ポンプ装置が図36の遠心式血液ポンプ装置と異なる点は、インペラ10の外周面に対向する血液室7の内周面に動圧溝60が形成されている点である。動圧溝60は、インペラ10の外周面に対する動圧力を発生し、インペラ10の外周面が血液室7の内周面に接触することを防止する。
【0139】
図39は、動圧溝60の具体的構成を例示する図である。図39において、血液室7の内周面のうちのシュラウド11の外周面に対向する領域には、V字型の動圧溝61がインペラ10の回転方向に所定のピッチで形成されている。V字型の動圧溝61の先端(鋭角部)はインペラ10の回転方向に向けられている。同様に、血液室7の内周面のうちのシュラウド12の外周面に対向する領域には、V字型の動圧溝62がインペラ10の回転方向に所定のピッチで形成されている。V字型の動圧溝62の先端(鋭角部)はインペラ10の回転方向に向けられている。血液室7の内周面のうちのシュラウド11,12の隙間に対向する領域には、所定深さの溝63がリング状に形成されている。インペラ10が矢印の方向に回転すると、動圧溝61,62の先端部に向けて液体の圧力が高くなる。このため、インペラ10と血液室7の内周面との間に反発力が発生し、これが動圧力となる。
【0140】
図40は、実施の形態4の変更例を示す図であって、図39と対比される図である。図40において、この変更例では、動圧溝61,62が血液室7の内周面側ではなく、それぞれシュラウド11,12の外周面に形成される。動圧溝61,62の先端は、インペラ10の回転方向と逆の方向に向けられている。インペラ10が矢印の方向に回転すると、動圧溝61,62の先端部に向けて液体の圧力が高くなる。このため、インペラ10と血液室7の内周面との間に反発力が発生し、これが動圧力となる。
【0141】
図41は、実施の形態4の他の変更例を示す図であって、図39と対比される図である。図41において、この変更例では、動圧溝61,62がそれぞれ動圧溝64,65で置換されている。動圧溝64,65の各々は、帯状に形成され、インペラ10の回転方向に延在している。動圧溝64,65の各々の深さは、インペラ10の回転方向に向かって徐々に浅くなっている。この変更例でも、インペラ10が矢印の方向に回転すると、動圧溝64,65の先端部に向けて液体の圧力が高くなる。このため、インペラ10と血液室7の内周面との間に反発力が発生し、これが動圧力となる。
【0142】
図42は、実施の形態4のさらに他の変更例を示す図であって、図41と対比される図である。図41において、この変更例では、動圧溝64,65が血液室7の内周面側ではなく、それぞれシュラウド11,12の外周面に形成される。動圧溝64,65の各々の深さは、インペラ10の回転方向と逆の方向に向かって徐々に浅くなっている。この変更例でも、インペラ10が矢印の方向に回転すると、動圧溝64,65の先端部に向けて液体の圧力が高くなる。このため、インペラ10と血液室7の内周面との間に反発力が発生し、これが動圧力となる。
【0143】
図43は、実施の形態4のさらに他の変更例を示す図であって、図38と対比される図である。図43において、この変更例では、永久磁石15a,15b,16a,16bが除去されている。磁性体18をコイル20よりも短くして永久磁石17と磁性体18の吸引力を、血液室7内におけるインペラ10の可動範囲の略中央での定格回転時の動圧力F3よりも小さくしたために、このような構成が可能となっている。インペラ10の回転中において、動圧溝22によって発生する定格回転時の動圧力F4と磁性体18および永久磁石17間の吸引力F2との和の力(F2+F4)と、動圧溝21によって発生する定格回転時の動圧力F3とは、血液室7におけるインペラ10の可動範囲の略中央で釣り合うように設定されている。
【0144】
図44は、実施の形態4のさらに他の変更例を示す図であって、図43と対比される図である。図43において、この変更例では、シュラウド11にも複数の永久磁石17Aが設けられ、シュラウド11側にもモータ室8Aが設けられる。モータ室8Aと血液室7は、隔壁6Aで仕切られている。モータ室8A内には、複数の永久磁石17Aに対向して複数の磁性体18Aが設けられ、各磁性体18Aにはコイル20Aが巻回され、磁性体18Aは円板状の磁性体19Aに接合されている。インペラ10の中心軸方向において、磁性体18Aはコイル20Aよりも短い。インペラ10の回転中において、複数の永久磁石17および複数の磁性体18間の第1の吸引力と複数の永久磁石17Aおよび複数の磁性体18A間の第2の吸引力とは、血液室7内におけるインペラ10の可動範囲の略中央で釣り合うように設定されている。
【0145】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0146】
1 ポンプ部、2 ハウジング、3 本体部、4 血液流入ポート、5 血液流出ポート、6,6A 隔壁、7 血液室、8,8A モータ室、10 インペラ、10a 貫通孔、11,12 シュラウド、13 ベーン、14 血液通路、15〜17,15a,15b,16a,16b,42 永久磁石、18,18A,19,19A,36〜39,41 磁性体、18a,19a 磁性鋼板、20,20A コイル、21,22,51,52,60〜62,64,65 動圧溝、25 コントローラ、26 モータ制御回路、27,30,31 パワーアンプ、32 切換スイッチ、40 切り欠き部、63 溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁で仕切られた第1および第2の室を含むハウジングと、前記第1の室内において前記隔壁に沿って回転可能に設けられ、回転時の遠心力によって液体を送るインペラと、前記第2の室内に設けられ、前記隔壁を介して前記インペラを回転駆動させる駆動部とを備えた遠心式ポンプ装置であって、
前記インペラの一方面に設けられた第1の磁性体と、
前記インペラの一方面に対向する前記第1の室の内壁に設けられ、前記第1の磁性体を吸引する第2の磁性体と、
前記インペラの他方面に設けられて前記インペラの回転方向に配列され、前記駆動部によって吸引される複数の第3の磁性体とを備え、
前記駆動部は、
前記複数の第3の磁性体に対向して設けられ、回転磁界を生成するための複数のコイルと、
それぞれ前記複数のコイルに対応して設けられ、各々が対応のコイルに挿入された複数の第4の磁性体とを含み、
前記インペラの中心軸方向において各第4の磁性体は対応のコイルよりも短く、
前記インペラの回転中において、前記第1および第2の磁性体間の第1の吸引力と前記複数の第3の磁性体および前記複数の第4の磁性体間の第2の吸引力とは、前記第1の室内における前記インペラの可動範囲の略中央で釣り合い、
前記インペラの一方面またはそれに対向する前記第1の室の内壁に第1の動圧溝が形成され、前記インペラの他方面またはそれに対向する前記隔壁に第2の動圧溝が形成されている、遠心式ポンプ装置。
【請求項2】
前記駆動部は、さらに、円板状の第5の磁性体を含み、
前記複数のコイルは前記隔壁と前記第5の磁性体との間に設けられ、
前記複数の第4の磁性体は前記第5の磁性体に接合されている、請求項1に記載の遠心式ポンプ装置。
【請求項3】
各隣接する2つの第4の磁性体の互いに対向する面は略平行に設けられている、請求項1または請求項2に記載の遠心式ポンプ装置。
【請求項4】
各第4の磁性体は円柱状に形成されている、請求項1または請求項2に記載の遠心式ポンプ装置。
【請求項5】
各第4の磁性体は、前記インペラの回転方向に積層された複数の鋼板を含む、請求項1から請求項4までのいずれかに記載の遠心式ポンプ装置。
【請求項6】
各第4の磁性体は、前記インペラの径方向に積層された複数の鋼板を含む、請求項1から請求項4までのいずれかに記載の遠心式ポンプ装置。
【請求項7】
各第4の磁性体は、純鉄、軟鉄または珪素鉄で形成されている、請求項1から請求項4までのいずれかに記載の遠心式ポンプ装置。
【請求項8】
各第4の磁性体は、純鉄、軟鉄または珪素鉄の粉末で形成されている、請求項1から請求項4までのいずれかに記載の遠心式ポンプ装置。
【請求項9】
各第4の磁性体は、中心線の周りに複数回巻回された帯状の磁性鋼板を含む、請求項1から請求項4までのいずれかに記載の遠心式ポンプ装置。
【請求項10】
隔壁で仕切られた第1および第2の室を含むハウジングと、前記第1の室内において前記隔壁に沿って回転可能に設けられ、回転時の遠心力によって液体を送るインペラと、前記第2の室内に設けられ、前記隔壁を介して前記インペラを回転駆動させる駆動部とを備えた遠心式ポンプ装置であって、
前記インペラに設けられて前記インペラの回転方向に配列され、前記駆動部によって吸引される複数の第1の磁性体を備え、
前記駆動部は、
前記複数の第1の磁性体に対向して設けられ、回転磁界を生成するための複数のコイルと、
それぞれ前記複数のコイルに対応して設けられ、各々が対応のコイルに挿入された複数の第2の磁性体とを含み、
前記インペラの中心軸方向において各第2の磁性体は対応のコイルよりも短く、
前記インペラの一方面またはそれに対向する前記第1の室の内壁に第1の動圧溝が形成され、前記インペラの他方面またはそれに対向する前記隔壁に第2の動圧溝が形成され、
前記インペラの回転中において、第1の動圧溝によって発生する定格回転時の動圧力と前記複数の第1の磁性体および前記複数の第2の磁性体間の吸引力との和の力と、第2の動圧溝によって発生する定格回転時の動圧力とは、前記第1の室内における前記インペラの可動範囲の略中央で釣り合う、遠心式ポンプ装置。
【請求項11】
前記駆動部は、さらに、円板状の第3の磁性体を含み、
前記複数のコイルは前記隔壁と前記第3の磁性体との間に設けられ、
前記複数の第2の磁性体は前記第3の磁性体に接合されている、請求項10に記載の遠心式ポンプ装置。
【請求項12】
前記インペラの外周面またはそれに対向する前記第1の室の内周面に第3の動圧溝が形成されている、請求項1から請求項11までのいずれかに記載の遠心式ポンプ装置。
【請求項13】
第1および第2の隔壁とそれらの間の液体室を含むハウジングと、前記液体室内において前記第1および第2の隔壁に沿って回転可能に設けられ、回転時の遠心力によって液体を送るインペラと、前記液体室外に設けられ、それぞれ前記第1および第2の隔壁を介して前記インペラを回転駆動させる第1および第2の駆動部とを備えた遠心式ポンプ装置であって、
前記インペラに設けられて前記インペラの回転方向に配列され、前記第1および第2の駆動部によって吸引される複数の第1の磁性体を備え、
前記第1および第2の駆動部の各々は、
前記複数の第1の磁性体に対向して設けられ、回転磁界を生成するための複数のコイルと、
それぞれ前記複数のコイルに対応して設けられ、各々が対応のコイルに挿入された複数の第2の磁性体とを含み、
前記インペラの中心軸方向において各第2の磁性体は対応のコイルよりも短く、
前記インペラの回転中において、前記複数の第1の磁性体および前記第1の駆動部の前記複数の第2の磁性体間の第1の吸引力と前記複数の第1の磁性体および前記第2の駆動部の前記複数の第2の磁性体間の第2の吸引力とは、前記液体室内における前記インペラの可動範囲の略中央で釣り合い、
前記インペラの一方面またはそれに対向する前記第1の隔壁に第1の動圧溝が形成され、前記インペラの他方面またはそれに対向する前記第2の隔壁に第2の動圧溝が形成されている、遠心式ポンプ装置。
【請求項14】
前記第1および第2の駆動部の各々は、さらに、円板状の第3の磁性体を含み、
前記第1の駆動部の前記複数のコイルは、前記第1の隔壁と前記第1の駆動部の前記第3の磁性体との間に設けられ、
前記第2の駆動部の前記複数のコイルは、前記第2の隔壁と前記第2の駆動部の前記第3の磁性体との間に設けられ、
前記第1および第2の駆動部の各々において前記複数の第2の磁性体は前記第3の磁性体に接合されている、請求項13に記載の遠心式ポンプ装置。
【請求項15】
前記インペラの外周面またはそれに対向する前記液体室の内周面に第3の動圧溝が形成されている、請求項13または請求項14に記載の遠心式ポンプ装置。
【請求項16】
前記液体は血液であり、
前記遠心式ポンプ装置は前記血液を循環させるために使用される、請求項1から請求項15までのいずれかに記載の遠心式ポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【公開番号】特開2012−62790(P2012−62790A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205787(P2010−205787)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】