説明

遠隔監視システムおよび遠隔監視システムにおける遠隔監視端末装置のデータ送出レベル調整方法

【課題】回線損失が変動しても良好な通信品質を維持しやすい遠隔監視システムと、そのような遠隔監視システムにおける遠隔監視端末装置のデータ送出レベル調整方法とを安価に提供すること。
【解決手段】昇降機1に接続された遠隔監視端末装置2が、公衆回線網4にデータを送出する際のデータ送出レベルを、監視センター5との通信が安定して行える通信安定送出レベル範囲内で高低いずれのレベル側にも余裕をもった値に設定するという自動調整を行うようにした。かかる自動調整に際して遠隔監視端末装置2は、データ送出レベルを設定可能な範囲内で変更して、その都度、監視センター5との通信を複数回実施して通信成功回数をカウントすると共に、この通信成功回数に基づいて通信安定送出レベル範囲を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば昇降機などの設備機器の動作状態を遠隔的に監視する遠隔監視システムと、この種の遠隔監視システムにおける遠隔監視端末装置のデータ送出レベル調整方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
昇降機などの設備機器の動作状態を遠隔的に監視する遠隔監視システムにおいては、設備機器に接続された遠隔監視端末装置が該設備機器の動作状態に関するデータを取得し、この取得データを通信回線を介して地理的に離れた場所にある監視センターへ送信するようになっている。また、通信回線としては電話回線等のアナログ通信網を利用することが多いが、アナログ通信網を利用してデータ通信を行う際に用いられるモデムは、通信回線での損失(回線損失)が大きくて受信信号レベルが著しく低くなると通信不良を起こしたり、通信が成立しない通信不能を起こす虞がある。そのため、通常は、遠隔監視端末装置側で通信回線にデータを送出する際のデータ送出レベルを調整して対応している。例えば、通信回線で損失が発生することを前提として、予めデータ送出レベルを高めに設定して受信信号レベルを確保できるようにしておくことがある。ただし、データ送出レベルが高すぎてモデムの特性と合わなくなってしまうと、やはり通信不良や通信不能が起こりやすくなる。
【0003】
このような事情から、昇降機などの設備機器に接続されて動作状態を監視する遠隔監視端末装置のデータ送出レベルは、端末装置ごとに最適な値に設定する必要がある。通常はかかる設定作業を現地へ出向いた作業者の経験に頼って実施しているが、データ送出レベルを適正な値に設定する作業を短時間で完了させることは困難なため、このことが作業時間を長引かせる要因となっており、かつ、作業者の経験が乏しい場合などには、データ送出レベルが適正な値に設定されずに通信状態が不安定になってしまう危険性があった。
【0004】
そこで従来より、特許文献1や特許文献2に示されているように、通信が不成立な場合にデータ送出レベルを増減させて自動調整するという技術が知られている。また、特許文献3には、遠隔監視端末装置の施工時に監視センターとの間でテスト通信を行い、監視センター側で受信信号の減衰レベルを測定すると共に、この減衰レベルの測定値に応じて遠隔監視端末装置のデータ送出レベルを自動的に設定するという技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−99571号公報
【特許文献2】特開平7−187538号公報
【特許文献3】特開平8−293928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1,2に開示された従来技術によれば、通信異常が発生したときにデータ送出レベルが高めに再設定されたり低めに再設定されるため、良好な通信状態を自動的に回復させることができるが、再設定されたデータ送出レベルが最適な値とは限らないため、すぐにまた通信異常が発生してしまう可能性があった。つまり、回線損失のレベルは常に一定なわけではなく、回線混雑状況により接続のたびに回線経路が変更されるなどして生じる変動的な回線損失もあるため、接続のタイミング次第でデータ送出レベルが必ずしも適正ではない値に再設定されてしまうこともある。その際、リトライ処理によって通信を回復させることは可能であるが、通信回復までに多くの時間を要してしまうため、昇降機等の設備機器を監視する遠隔監視システムにおいては、異常発生時に通報が遅れて機器復旧の迅速な対応に支障をきたす虞があった。
【0007】
また、前述した特許文献3に開示された従来技術では、テスト通信にて信号の減衰レベルを測定する手段を監視センター側に設けなければならないため、監視センターの装置類を改変するという煩雑な作業を余儀なくされ、費用も嵩むという問題があった。
【0008】
本発明は、前述した従来技術における実状に鑑みてなされたもので、その目的は、回線損失が変動しても良好な通信品質を維持しやすい遠隔監視システムと、そのような遠隔監視システムにおける遠隔監視端末装置のデータ送出レベル調整方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、設備機器に接続された遠隔監視端末装置を用いて、前記設備機器の動作状態に関する情報を通信回線を介して監視センターへ通報する遠隔監視システムにおいて、前記遠隔監視端末装置が、前記通信回線にデータを送出する際のデータ送出レベルを、前記監視センターとの通信が安定して行える通信安定送出レベル範囲内で高低いずれのレベル側にも余裕をもった値に設定するという自動調整を行い、この自動調整に際して前記遠隔監視端末装置は、前記データ送出レベルを設定可能な範囲内で変更して、その都度、前記監視センターとの通信を複数回実施して通信成功回数をカウントすると共に、前記通信成功回数に基づいて前記通信安定送出レベル範囲を検出するようにした。
【0010】
このように構成された本発明の遠隔監視システムは、遠隔監視端末装置が、監視センターとの通信が安定して行える通信安定送出レベル範囲を検出し、この通信安定送出レベル範囲内で高低いずれのレベル側にも余裕をもった値にデータ送出レベルを自動的に設定するため、回線損失が変動したときに、データ送出レベルを通信安定送出レベル範囲内で最適な値に再設定することが容易である。それゆえ、煩雑な調整作業を行わなくても常に良好な通信品質を維持することが可能となる。また、作業者の経験に頼らずにデータ送出レベルを調整できるため信頼性も高めやすくなる。また、監視センターの装置類を改変する必要がないためコストアップも回避できる。
【0011】
また、本発明に係る遠隔監視システムは、上記の構成において、携帯端末から送信されたデータ送出レベル設定要求を遠隔監視端末装置が受信した場合、または遠隔監視端末装置と監視センターとの定期通信に異常が発生した場合、もしくは監視センターから送信されたデータ送出レベル再設定要求を遠隔監視端末装置が受信した場合に、遠隔監視端末装置がデータ送出レベルを再設定するようにしてあると、通信異常の発生時に速やかにデータ送出レベルを最適な値に再設定することができるため、通信状態を安定させることが容易となる。なお、遠隔監視端末装置と監視センターとの定期通信に異常が発生しているか否かを把握するために、例えば、定期通信が規定回数失敗したときに異常が発生していると判断すればよい。また、監視センターは、定期通信に発生した異常に関するデータを記憶することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る遠隔監視システムは、上記の構成において、監視センターが、通信回線を介して通信可能な複数の遠隔監視端末装置のそれぞれについてデータ送出レベルの設定値および通信安定送出レベル範囲を記憶していると共に、定期通信に異常が発生した遠隔監視端末装置の設定値および通信安定送出レベル範囲を、定期通信が正常に行われている別の遠隔監視端末装置の設定値および通信安定送出レベル範囲と比較して、両端末装置の該データの差異が予め定めた比較基準内である場合には、定期通信に異常が発生した遠隔監視端末装置に対してデータ送出レベルの再設定を要求し、かつ、両端末装置の該データの差異が比較基準よりも大きい場合には、管轄の営業所に対して定期通信に異常が発生した遠隔監視端末装置のデータ送出レベルの調査および再設定を指令するようにしてあると、回線損失以外のノイズ等の障害に起因する通信異常にも的確に対応することができる。すなわち、こうすることによって、回線損失の変動で定期通信に異常が発生したときに、該当する遠隔監視端末装置のデータ送出レベルを速やかに最適な値に再設定することができるのみならず、ノイズ等の障害が原因で定期通信に異常が発生したときに、該当する遠隔監視端末装置へ作業者を派遣してノイズ除去等の対策を速やかに講じることができる。
【0013】
なお、かかる構成において、遠隔監視端末装置が保有するデータ送出レベルの設定値および通信安定送出レベル範囲に関するデータは、通信回線を介して監視センターへ送信され、この送信されたデータを監視センターが記憶するようにしてあることが好ましい。
【0014】
また、前記目的を達成するために、本発明は、設備機器に接続された遠隔監視端末装置を用いて、前記設備機器の動作状態に関する情報を通信回線を介して監視センターへ通報する遠隔監視システムにおける遠隔監視端末装置のデータ送出レベル調整方法において、前記遠隔監視端末装置が、前記通信回線にデータを送出する際のデータ送出レベルを、前記監視センターとの通信が安定して行える通信安定送出レベル範囲内で高低いずれのレベル側にも余裕をもった値に設定するという自動調整を行い、この自動調整に際して前記遠隔監視端末装置は、前記データ送出レベルを設定可能な範囲内で変更して、その都度、前記監視センターとの通信を複数回実施して通信成功回数をカウントすると共に、前記通信成功回数に基づいて前記通信安定送出レベル範囲を検出するようにした。
【0015】
このように構成された本発明の遠隔監視システムにおける遠隔監視端末装置のデータ送出レベル調整方法は、遠隔監視端末装置が、監視センターとの通信が安定して行える通信安定送出レベル範囲を検出し、この通信安定送出レベル範囲内で高低いずれのレベル側にも余裕をもった値にデータ送出レベルを自動的に設定するため、回線損失が変動したときに、データ送出レベルを通信安定送出レベル範囲内で最適な値に再設定することが容易である。それゆえ、煩雑な調整作業を行わなくても常に良好な通信品質を維持することが可能となる。また、作業者の経験に頼らずにデータ送出レベルを調整できるため信頼性も高めやすくなる。また、監視センターの装置類を改変する必要がないためコストアップも回避できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の遠隔監視システムおよび該システムにおける遠隔監視端末装置のデータ送出レベル調整方法は、遠隔監視端末装置が、監視センターとの通信が安定して行える通信安定送出レベル範囲を検出し、この通信安定送出レベル範囲内で高低いずれのレベル側にも余裕をもった値にデータ送出レベルを自動的に設定するため、回線損失が変動したときに、データ送出レベルを通信安定送出レベル範囲内で最適な値に再設定することが容易である。それゆえ、煩雑な調整作業を行わなくても常に良好な通信品質を維持することができ、かつ、作業者の経験に頼らずにデータ送出レベルを調整できるため信頼性が高めやすくなり、また、監視センターの装置類を改変する必要がないためコストアップを回避できる等、顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態における遠隔監視システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態で遠隔監視端末装置がデータ送出レベルの自動調整時に行う処理手順を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態で遠隔監視端末装置がデータ送出レベルを変更しながら通信成功回数をカウントした結果の一例を示す説明図である。
【図4】本実施形態で監視センターが通信異常の発生時に行う処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る遠隔監視システムおよび該システムにおける遠隔監視端末装置のデータ送出レベル調整方法の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本実施形態における遠隔監視システムの全体構成を示すブロック図である。同図に示す遠隔監視システムは、昇降機1の動作状態に関する情報を遠隔監視端末装置2を用いて、通信回線である公衆回線網4を介して監視センター5へ通報するというものである。図示していないが、複数の昇降機に個別に接続された複数の遠隔監視端末装置が監視センター5と通信できるようになっているため、これら複数の遠隔監視端末装置から監視データが送信されてくる監視センター5は各昇降機の動作状態を遠隔的に監視することができる。
【0020】
図1において、携帯端末3は例えば作業者が保持するものであり、この携帯端末3を操作することによって遠隔監視端末装置2に所定の処理を行わせることができる。また、監視センター5には、公衆回線網4を介して遠隔監視端末装置2と通信を行うデータ受信装置5aおよびデータ収集装置5bと、遠隔監視端末装置2に設定されているデータ送出レベルに関する情報を格納するデータ送出レベル情報格納装置5cと、遠隔監視端末装置2とデータ受信装置5aやデータ収集装置5bとの通信異常に関する情報を格納する通信エラー情報格納装置5dと、管轄の営業所6に対して遠隔監視端末装置2のデータ送出レベルの再設定を依頼するアラーム信号を出力するか否かを判定するアラーム出力判定装置5eとが備えられている。
【0021】
昇降機1に接続されている遠隔監視端末装置2は、この昇降機1に故障が発生すると、公衆回線網4を介して監視センター5のデータ受信装置5aに故障情報を送信する。また、遠隔監視端末装置2はデータ受信装置5aと定期的に通信を行い、通信が失敗するとリトライ処理を規定回数行う。その際、遠隔監視端末装置2は送信するデータに通信開始時刻を付加し、データ受信装置5aは、このデータに付加された通信開始時刻を現在時刻と比較する。そして、データに付加された通信開始時刻と現在時刻とが一定程度以上ずれている場合、データ受信装置5aは遠隔監視端末装置2からのデータ送信がリトライされているものと判断して、異常発生情報を通信エラー情報格納装置5dに格納する。
【0022】
監視センター5のデータ収集装置5bも遠隔監視端末装置2と定期的に通信を行い、遠隔監視端末装置2に格納されている昇降機1の運行データを公衆回線網4を介して収集する。そして、このデータ収集装置5bも定期通信時に遠隔監視端末装置2がリトライ処理を行った場合には、異常発生情報を通信エラー情報格納装置5dに格納する。
【0023】
遠隔監視端末装置2は、公衆回線網4にデータを送出する際のデータ送出レベルを概ね次のようにして自動的に設定する。すなわち、まず監視センター5との通信が安定して行える通信安定送出レベル範囲を検出し、この通信安定送出レベル範囲内で高低いずれのレベル側にも余裕のある中間値を、昇降機1の監視に適用する最適なデータ送出レベルとして設定する。また、遠隔監視端末装置2は前記通信安定送出レベル範囲を検出する際に、データ送出レベルを設定可能な範囲内で変更して、その都度、監視センター5との通信を複数回(例えば5回)実施して通信成功回数をカウントする。こうしてカウントされたデータ送出レベル毎の通信成功回数と、前記通信安定送出レベル範囲に基づいて設定された最適なデータ送出レベルとは、公衆回線網4を介して監視センター5のデータ受信装置5aに送信されてデータ送出レベル情報格納装置5cに格納される。
【0024】
監視センター5のアラーム出力判定装置5eは、通信エラー情報格納装置5dに通信異常に関する異常発生情報が格納されると、該当する通信異常が発生した遠隔監視端末装置2に適用されているデータ送出レベルと前記通信安定送出レベル範囲、ならびに同一エリアに配備されている他の遠隔監視端末装置に適用されているデータ送出レベルと前記通信安定送出レベル範囲を、それぞれデータ送出レベル情報格納装置5cから抽出して、両端末装置の該データを比較する。そして、比較した結果、両端末装置の該データの差異が予め定めた比較基準内であって大差ない場合には、通信異常が発生した遠隔監視端末装置2に対して、データ収集装置5b経由でデータ送出レベルの再設定要求を送信する。しかるに、両端末装置の該データの差異が前記比較基準よりも大きい場合には、通信異常が発生した遠隔監視端末装置2に定常的に大きなノイズが発生していたり、該端末装置2の動作不良が考えられるため、アラーム出力判定装置5eは管轄の営業所6に対して、通信異常が発生した遠隔監視端末装置2の配備されている現地へ出向いてデータ送出レベルに関する調査および再設定を行うように指令信号を出力する。
【0025】
図3は、遠隔監視端末装置2がデータ送出レベルを変更しながら通信成功回数をカウントした結果の一例を示す説明図である。具体的には、この遠隔監視端末装置2のデータ送出レベルとして設定可能な最大値(0dB)から段階的に−1dBずつレベル値を変更していき、各レベル値で監視センター5との通信を5回ずつ実施して通信成功回数をカウントした結果が図3に表記されている。同図に示す例では、遠隔監視端末装置2のデータ送出レベルが0dB〜−4dBの場合は通信不可状態であり、−5dB〜−9dBの場合および−14dBと−15dBの場合は通信不安定状態であるが、−10dB〜−13dBの場合は監視センター5との通信がすべて成功しており通信安定状態となっている。したがって、この例では、−10dB〜−13dBが、監視センター5との通信が安定して行える通信安定送出レベル範囲となり、この通信安定送出レベル範囲内で高低いずれのレベル側にも余裕のある−11dBまたは−12dBが、データ送出レベルの設定値として最適であることがわかる。
【0026】
次に、遠隔監視端末装置2がデータ送出レベルの自動調整時に行う処理手順を図2に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0027】
遠隔監視端末装置2の施工時などに携帯端末3から送信されたデータ送出レベル設定要求を該端末装置2が受信した場合、または遠隔監視端末装置2と監視センター5との定期通信が規定回数失敗した場合、もしくは監視センター5のデータ収集装置5bから送信されたデータ送出レベル再設定要求を遠隔監視端末装置2が受信した場合、図2のステップS1において、遠隔監視端末装置2に対するデータ送出レベルの設定要求(調整要求)ありと判断してステップS2へ進む。
【0028】
このステップS2において、遠隔監視端末装置2は、データ送出レベルを該端末装置2として設定可能な最大値(例えば0dB)に設定する。次なるステップS3では、設定されているデータ送出レベルが許容範囲(設定可能範囲)であるか否かを判定し、許容範囲内であればステップS4へ進む。なお、ステップS2の処理が実行された直後はデータ送出レベルが許容範囲内に設定されているので、ステップS3の判定は「Yes」となってステップS4へ進む。
【0029】
このステップS4において、遠隔監視端末装置2は、監視センター5のデータ受信装置5aとの通信を複数回(例えば5回)連続して実施し、次なるステップS5で、遠隔監視端末装置2の備える図示せぬ記憶装置に通信成功回数を格納してからステップS6へ進む。そして、このステップS6でデータ送出レベルを変更してからステップS3へ戻り、以後、ステップS6で変更されたデータ送出レベルが許容範囲を外れるまで同様の処理を繰り返す。
【0030】
なお、本実施形態においては、遠隔監視端末装置2からの信号送信に対して、監視センター5のデータ受信装置5aからの応答を所定時間内に遠隔監視端末装置2が受信した回数を、通信成功回数としてカウントしている。また、データ送出レベルの変更は、例えばデータ信号増幅用の増幅装置の利得を調整することによって行われ、本実施形態ではステップS6においてデータ送出レベルを例えば−1dBずつ変更する。したがって、ステップS6での処理が行われるたびに、データ送出レベルは初期値として設定された最大値から段階的に低減していく。
【0031】
ステップS4とステップS5およびステップS6の処理が繰り返し実行された後、ステップS3においてデータ送出レベルが許容範囲(設定可能範囲)を外れていると判定されると、遠隔監視端末装置2はステップS7へ進む。このステップS7において、遠隔監視端末装置2は、監視センター5のデータ受信装置5aとの通信が安定して行えるデータ送出レベルの範囲(通信安定送出レベル範囲)を規定すると共に、昇降機1の監視に実際に適用するデータ送出レベルを最適な値に設定するという自動調整を行う。この自動調整は前記記憶装置に記憶されている前記通信成功回数に基づいて行われ、データ受信装置5aとの通信が安定して行える通信安定送出レベル範囲内で高低いずれのレベル側にも余裕をもった値が、実際に適用するデータ送出レベルとして設定される。例えば、図3に示す例では、前述したように、−10dB〜−13dBが、監視センター5との通信が安定して行える通信安定送出レベル範囲として抽出され、この通信安定送出レベル範囲内で高低いずれのレベル側にも余裕のある中間値(−11dBまたは−12dB)が、実際に適用するデータ送出レベルの設定値として抽出される。
【0032】
こうしてステップS7でデータ送出レベルの自動調整を行った後、次なるステップS8において、遠隔監視端末装置2は、データ送出レベル毎の通信成功回数と自動調整の結果であるデータ送出レベルの設定値とを監視センター5のデータ受信装置5aに送信し、監視センター5では送信された情報をデータ送出レベル情報格納装置5cに格納する。
【0033】
次に、監視センター5が通信異常の発生時に行う処理手順を図4に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0034】
監視センター5は、図4のステップS11において、遠隔監視端末装置2からデータ受信装置5aへの定期通信に遅れが生じているか否かを判定する。この判定は、データ受信装置5aとの定期通信に関する異常発生情報が通信エラー情報格納装置5dに記録されているか否かによって判断され、該定期通信が遅れていないと判定された場合はステップS12へ進み、該定期通信が遅れていると判定された場合はステップS13へ進む。
【0035】
遠隔監視端末装置2からデータ受信装置5aへの定期通信に遅れが生じていないと判定された場合、ステップS12において、監視センター5は、遠隔監視端末装置2がデータ収集装置5bとの定期通信時にリトライ処理を行ったか否かを判定する。この判定は、データ収集装置5bとの定期通信に関する異常発生情報が通信エラー情報格納装置5dに記録されているか否かによって判断され、該定期通信時にリトライ処理ありと判定された場合はステップS13へ進む。また、該定期通信時にリトライ処理なしと判定された場合は、遠隔監視端末装置2とデータ受信装置5aおよびデータ収集装置5bとの定期通信が正常に行われているものと判断して処理を終了する。
【0036】
遠隔監視端末装置2とデータ受信装置5aやデータ収集装置5bとの定期通信が正常に行われず、通信エラー情報格納装置5dに異常発生情報が記録されていた場合は、まずステップS13において、監視センター5が、この遠隔監視端末装置2に設定されているデータ送出レベルを、同一エリアに配備されて定期通信が正常な別の遠隔監視端末装置に設定されているデータ送出レベルと比較して、両端末装置のデータ送出レベルの差異が予め定めた比較基準よりも大きいか否かを判定する。なお、これらの遠隔監視端末装置に設定されているデータ送出レベルは、前述したように監視センター5のデータ送出レベル情報格納装置5cに格納されている。そして、定期通信に異常が発生した遠隔監視端末装置2のデータ送出レベルと、定期通信が正常に行われている別の遠隔監視端末装置のデータ送出レベルとの差異が比較基準内で大差なしと判定された場合、つまり、ステップS13での判定が「No」の場合はステップS14へ進む。一方、前記差異が比較基準よりも大きいと判定された場合、つまり、ステップS13での判定が「Yes」の場合は後述するステップS16へ進む。
【0037】
ステップS14において、監視センター5は、定期通信に異常が発生した遠隔監視端末装置2の前記通信安定送出レベル範囲(監視センター5との通信が安定して行えるデータ送出レベルの範囲)を、同一エリアに配備されて定期通信が正常な別の遠隔監視端末装置の通信安定送出レベル範囲と比較して、両端末装置の通信安定送出レベル範囲の差異が予め定めた比較基準よりも大きいか否かを判定する。なお、これらの遠隔監視端末装置の通信安定送出レベル範囲は前記通信成功回数と対応しており、この通信成功回数は前述したように監視センター5のデータ送出レベル情報格納装置5cに格納されている。そして、定期通信に異常が発生した遠隔監視端末装置2の通信安定送出レベル範囲と、定期通信が正常に行われている別の遠隔監視端末装置の通信安定送出レベル範囲との差異が比較基準内で大差なしと判定された場合、つまり、ステップS14での判定が「No」の場合はステップS15へ進む。一方、前記差異が比較基準よりも大きいと判定された場合、つまり、ステップS14での判定が「Yes」の場合は後述するステップS16へ進む。
【0038】
ステップS15では、定期通信に異常が発生した遠隔監視端末装置2に設定されているデータ送出レベルおよび通信安定送出レベル範囲が、同一エリアに配備されて定期通信が正常な別の遠隔監視端末装置に設定されているデータ送出レベルおよび通信安定送出レベル範囲と比べて大差なしと判定された場合の処理が行われ、監視センター5は、定期通信に異常が発生した遠隔監視端末装置2に対してデータ収集装置5b経由でデータ送出レベルの再設定要求を送信した後、処理を終了する。
【0039】
また、ステップS13やステップS14からステップS16へ進んだ場合は、定期通信に異常が発生した遠隔監視端末装置2に定常的に大きなノイズが発生していたり、この遠隔監視端末装置2の動作不良が考えられるため、監視センター5はアラーム出力判定装置5eから管轄の営業所6の端末装置に対して所定の指令信号を出力する。すなわち、定期通信に異常が発生した遠隔監視端末装置2の配備されている現地へ出向いて、データ送出レベルに関する調査および再設定を行うことを要求する指令信号が、監視センター5のアラーム出力判定装置5eから営業所6の端末装置に対して送信される。
【0040】
以上説明したように本実施形態においては、遠隔監視端末装置2が、監視センター5との通信が安定して行える通信安定送出レベル範囲を検出し、この通信安定送出レベル範囲内で高低いずれのレベル側にも余裕をもった値(中間値)にデータ送出レベルを自動的に設定するため、回線損失が変動したときに、データ送出レベルを通信安定送出レベル範囲内で最適な値に容易に再設定することができる。しかも、携帯端末3を用いて作業者が要求すれば遠隔監視端末装置2にデータ送出レベルの再設定を実行させることができるだけでなく、通信異常を検出した監視センター5が所定の条件下で自動的にデータ送出レベルの再設定を遠隔監視端末装置2に要求するようにしてあるため、通信異常の発生時に速やかにデータ送出レベルを再設定して通信状態を安定させることができる。それゆえ、煩雑な調整作業を行わなくても常に良好な通信品質を維持することが可能となり、かつ、作業者の経験に頼らずにデータ送出レベルを調整できるため信頼性も高めやすくなる。また、監視センター5の装置類を改変する必要がないためコストアップも回避できる。
【0041】
また、本実施形態においては、監視センター5が、複数の遠隔監視端末装置のそれぞれについてデータ送出レベルの設定値および通信安定送出レベル範囲を記憶していると共に、定期通信に異常が発生した遠隔監視端末装置2の前記設定値および通信安定送出レベル範囲を、定期通信が正常に行われている別の遠隔監視端末装置の前記設定値および通信安定送出レベル範囲と比較している。そして、両端末装置の該データの差異が予め定めた比較基準内である場合には、定期通信に異常が発生した遠隔監視端末装置2に対してデータ送出レベルの再設定を要求し、かつ、両端末装置の該データの差異が前記比較基準よりも大きい場合には、管轄の営業所6に対して定期通信に異常が発生した遠隔監視端末装置2のデータ送出レベルの調査および再設定を指令するようにしてあるため、回線損失以外のノイズ等の障害に起因する通信異常にも的確に対応できるようになる。すなわち、回線損失の変動で定期通信に異常が発生したときに、該当する遠隔監視端末装置2のデータ送出レベルを速やかに最適な値に再設定することができるのみならず、ノイズ等の障害が原因で定期通信に異常が発生したときに、該当する遠隔監視端末装置2へ作業者を派遣してノイズ除去等の対策を速やかに講じることができる。
【0042】
なお、以上の実施形態では昇降機の遠隔監視システムについて説明しているが、本発明は昇降機以外の設備機器(例えば空調設備など)の遠隔監視システムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 昇降機(設備機器)
2 遠隔監視端末装置
3 携帯端末
4 公衆回線網(通信回線)
5 監視センター
5a データ受信装置
5b データ収集装置
5c データ送出レベル情報格納装置
5d 通信エラー情報格納装置
5e アラーム出力判定装置
6 営業所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備機器に接続された遠隔監視端末装置を用いて、前記設備機器の動作状態に関する情報を通信回線を介して監視センターへ通報する遠隔監視システムにおいて、
前記遠隔監視端末装置が、前記通信回線にデータを送出する際のデータ送出レベルを、前記監視センターとの通信が安定して行える通信安定送出レベル範囲内で高低いずれのレベル側にも余裕をもった値に設定するという自動調整を行い、この自動調整に際して前記遠隔監視端末装置は、前記データ送出レベルを設定可能な範囲内で変更して、その都度、前記監視センターとの通信を複数回実施して通信成功回数をカウントすると共に、前記通信成功回数に基づいて前記通信安定送出レベル範囲を検出することを特徴とする遠隔監視システム。
【請求項2】
請求項1の記載において、携帯端末から送信されたデータ送出レベル設定要求を前記遠隔監視端末装置が受信した場合、または前記遠隔監視端末装置と前記監視センターとの定期通信に異常が発生した場合、もしくは前記監視センターから送信されたデータ送出レベル再設定要求を前記遠隔監視端末装置が受信した場合に、前記遠隔監視端末装置がデータ送出レベルを再設定することを特徴とする遠隔監視システム。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記遠隔監視端末装置と前記監視センターとの定期通信が規定回数失敗したときに、前記定期通信に異常が発生していると判断することを特徴とする遠隔監視システム。
【請求項4】
請求項2または3の記載において、前記監視センターは前記定期通信に発生した異常に関するデータを記憶することを特徴とする遠隔監視システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項の記載において、前記監視センターが、通信回線を介して通信可能な複数の前記遠隔監視端末装置のそれぞれについて前記データ送出レベルの設定値および前記通信安定送出レベル範囲を記憶していると共に、定期通信に異常が発生した遠隔監視端末装置の前記設定値および前記通信安定送出レベル範囲を、定期通信が正常に行われている別の遠隔監視端末装置の前記設定値および前記通信安定送出レベル範囲と比較して、両端末装置の該データの差異が予め定めた比較基準内である場合には、定期通信に異常が発生した遠隔監視端末装置に対して前記データ送出レベルの再設定を要求し、かつ、両端末装置の該データの差異が前記比較基準よりも大きい場合には、管轄の営業所に対して定期通信に異常が発生した遠隔監視端末装置のデータ送出レベルの調査および再設定を指令することを特徴とする遠隔監視システム。
【請求項6】
請求項5の記載において、前記遠隔監視端末装置が保有する前記データ送出レベルの設定値および前記通信安定送出レベル範囲に関するデータは、通信回線を介して前記監視センターへ送信され、この送信されたデータを前記監視センターが記憶することを特徴とする遠隔監視システム。
【請求項7】
設備機器に接続された遠隔監視端末装置を用いて、前記設備機器の動作状態に関する情報を通信回線を介して監視センターへ通報する遠隔監視システムにおける遠隔監視端末装置のデータ送出レベル調整方法において、
前記遠隔監視端末装置が、前記通信回線にデータを送出する際のデータ送出レベルを、前記監視センターとの通信が安定して行える通信安定送出レベル範囲内で高低いずれのレベル側にも余裕をもった値に設定するという自動調整を行い、この自動調整に際して前記遠隔監視端末装置は、前記データ送出レベルを設定可能な範囲内で変更して、その都度、前記監視センターとの通信を複数回実施して通信成功回数をカウントすると共に、前記通信成功回数に基づいて前記通信安定送出レベル範囲を検出するようにしたことを特徴とする遠隔監視システムにおける遠隔監視端末装置のデータ送出レベル調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−142731(P2012−142731A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293137(P2010−293137)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】