説明

適合されたバックプレート付きのヒートシンク

【課題】電子パワーモジュール等のための、流体冷却式のヒートシンクとバックプレートの接続構造を提供する。
【解決手段】バックプレート20は、一群の溝21を形成され、ヒートシンク10は上記一群の溝に対応し且つ上記一群の溝内に達して固定される一群のリブ13を形成される。バックプレートをヒートシンクに留め付けるため、上記一群のリブと上記一群の溝との間には、例えばシリコーン系接着剤等の糊14若しくは接着材料、又はシリコーン製Oリング等が配される。また、ヒートシンクから突き出す第二の一群のリブ15を、該第二の一群のリブの各リブとバックプレートとの間に間隔をあけられるように設けることも可能である。第二の一群のリブとバックプレートの間には、エポキシ系接着材料を配することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンク、ヒートパイプ、ラジエータ、及び冷却装置の分野に関するものである。本発明は、より具体的には、自動車を含む自動車両やフード(ボンネット)下等の用途に用いられる電子パワーモジュール及びトランジスタを冷却するための金属製ヒートシンク、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子パワーモジュールやトランジスタを含む、エンジン及び/又はその他のフード下機能を制御するための電子部品は、自動車を含む自動車両の業界で広く用いられている。このような電子部品は、一般に、直に隣接して設けられたヒートシンク又はヒートパイプを用いて冷却する必要がある。例えば、FET等のトランジスタを含むある種のパワーモジュール、又はある種の半導体電子及びシリコンチップ等は発熱するので、一定期間に渡って効果的に利用するためには冷却する必要がある。冷却媒体として流体又は液体を用いるヒートシンクの場合は、流体を内包する必要があり、したがって、冷却するべき電子部品から概して離して設けられたバックプレートを有する。このような冷却剤としては、水、又は化学剤を混ぜた水がよく用いられる。
【0003】
しかしながら、ある程度の機械的強度を実現するためにヒートシンクにバックプレートを取り付け且つ留め付けると、幾つかの難題が持ち上がる。ヒートシンクに対するバックプレートの取り付けには、ネジ、糊、又はその他の固定手段が用いられる。しかしながら、バックプレートのリブすなわちフィンの末端に糊すなわち接着剤を付けるだけでは、必ずしもヒートシンクにバックプレートを適切に留め付けることができるとは限らない。ネジ及びその他の固定手段は、ヒートシンク内における冷却水路用の貴重なスペースを占有し、組み立てに使用される部品の増大は、必要とされる在庫および費用を更に増大させる。したがって、冷却水路内のスペースを含むスペースを節約することができる、スリム化された単純なデザインであることが好都合である。
【発明の開示】
【0004】
流体冷却式のヒートシンク及びバックプレートが提供される。バックプレートは、一群の溝を形成され、ヒートシンクは、その一群の溝に対応し且つその一群の溝内に達して固定される第一の一群のリブを形成される。
【0005】
上記のヒートシンク及びバックプレートは、また、バックプレートをヒートシンクに留め付ける目的で第一の一群のリブと一群の溝との間に配された一種又はそれ以上の糊材料若しくは接着材料を含むことができる。例えば、接着材料は、シリコーン系接着材料であることが可能である。
【0006】
また、第二の一群のリブを設けることも可能である。該第二の一群のリブは、各リブの末端が上記複数の溝の各溝から離れて並べられ尚かつ各リブとバックプレートとの間に間隔があけられように、ヒートシンクから突き出すように設けられる。第二の一群のリブとバックプレートとの間には、エポキシ系接着材料を配することが可能である。あるいは、第一の一群のリブと一群の溝との間に、バックプレートをヒートシンクに固定する目的でシリコーン系接着材料を配して、第二の一群のリブを、一群の溝に溶接又は弱溶接することも可能である。あるいは、一群の溝と第一の一群のリブとの間のシールギャップ内に、一群のシリコーン製Oリングを配することも可能である。あるいは、第一の一群のリブを溝に溶接又は弱溶接することも可能である。
【0007】
バックプレートをヒートシンクに留め付けるために、複数のスタンドオフピンを挿入することも可能である。これらのスタンドオフピンは、アルミニウム、アルミニウム合金、又は鋼で作成することが可能である。
【0008】
冷却流体は、水、又は主に水であることが可能である。ヒートシンク及びバックプレートは、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いてダイカスト又はその他の方法で形成することが可能である。このようなヒートシンク及びバックプレートは、自動車用途の電子パワーモジュールに主に適合すると考えられる。
【0009】
添付の図面を参照にした以下の発明の詳細な説明によって、本発明のその他の特徴及び利点が明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、バックプレート20付きヒートシンクの略断面図である。ヒートシンク10は、バックプレート20に向けて突き出すように設けられた一群のリブすなわちフィンを含む。バックプレート20は、ヒートシンク10のリブを受けるためにバックプレート20内に形成された一連の窪みすなわち溝21を含む。図中、ヒートシンクのリブ13及びその他のリブは、バックプレートに向けて先細るように図示されているが、リブとしては、例えば長方形又は円筒状等のその他の形状も同様に考えられる。バックプレート20は、一般に、溝21を所定位置に有する状態で製造される。例えば、バックプレート20は、主にアルミニウム又はアルミニウム合金を使用して、溝21を有する状態で成形される又は機械加工される。一般に、バックプレート20は、周知のダイカスト方法で製造される。同様に、ヒートシンク10は、リブ13すなわちフィンと一体の状態で、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金等の金属で作成される。このようなバックプレート付きヒートシンクは、一般に、3バールを超える圧力に耐えうるように設計される。
【0011】
図2に示されるように、溝21は、黒で示された糊、エポキシ、又は樹脂等の接着材料14を、リブ21の留め付け目的で導入される。接着材料14を導入された溝は、次いで、バックプレート20をヒートシンク10に留め付ける目的でリブと噛み合わされる。しかしながら、リブすなわちフィンは、シリコーン系接着剤を介する又はシールギャップ内にシリコーン製Oリングを嵌め込む等して取り付ける又は固定することも可能である。なお、バックプレート20をヒートシンク10に留め付ける工程は、様々に可変である。例えば、リブ13の末端30(および残りのリブの末端)の上又は周りに接着剤又はOリングを配し、次いで、これらのリブをバックプレート20の溝に挿入することが可能である。
【0012】
また、図1及び図2には、ヒートシンク10から突き出した一群の短いリブも図示されている。短い各リブ15は、より高いリブ(バックプレート20の溝と噛み合う位置にあるリブ)と隣り合わせに配され、交互のパターンを形成する。短いリブ15は、ヒートシンクとバックプレートとの結合を更に強化するために、バックプレートに固定することができる。短いリブは、その末端又はその末端近くの位置で、接着剤若しくは糊を使用して接着される、又は溶接若しくは弱溶接される。
【0013】
更に、ヒートシンク及びバックプレートには、やはりアルミニウム、アルミニウム合金、又は鋼などで作成されたボルト又はスタンドオフピンが、接着剤の厚さを定め且つ組み立て工程時の強度を高める目的で押し込まれる。つまり、例えば糊、接着剤、若しくはOリングの硬化又はバックプレートへのフィンの溶接を含むバックプレート20付きヒートシンクの組み立て工程中に、限られた数のこのようなピンを使用することによって、バックプレートとフィンとを予め一体化させることができる。したがって、硬化工程及び/又は溶接工程のあいだ、ヒートシンク10及びバックプレート20は、追加の固定具を用いずとも定位置に保持される。しかしながら、バックプレート20をヒートシンク10に固定するためのこれらの手段は、当業者ならば明らかなように、変更したり、取り替えたり、又は組み合わせたりすることが可能である。
【0014】
したがって、ダイカスト方法又はその他の方法で二部構成に形成されたこのようなバックプレート付きヒートシンクは、低コストで且つコンパクトな設計を提供することができるうえ、追加のネジを必要とせずにすむ。これは、冷却水路のより効果的な使用を可能にする。
【0015】
以上では、特定の実施形態に基づいて発明の説明が行われたが、当業者ならば明らかなように、その他にも数多くの変形態様、変更態様、及び説明された特徴のその他の結合態様、並びにその他の使用及び用途が可能である。したがって、本発明は、本明細書の具体的な開示内容によって限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一態様にしたがった、バックプレート付きヒートシンクを示した断面図である。
【図2】本発明の一態様にしたがった、バックプレートと噛み合う位置にあるヒートシンクのリブを示した拡大断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体冷却式のヒートシンク及びバックプレートであって、
複数の溝を形成されたバックプレートと、
前記複数の溝に対応し且つ前記複数の溝内に達して固定される第1の複数のリブを形成されたヒートシンクと
を備えるヒートシンク及びバックプレート。
【請求項2】
請求項1に記載のヒートシンク及びバックプレートであって、更に、
前記バックプレートを前記ヒートシンクに留め付けるために、前記第1の複数のリブと前記複数の溝との間に配された、糊材料又は接着材料の少なくとも一種を備えるヒートシンク及びバックプレート。
【請求項3】
請求項2に記載のヒートシンク及びバックプレートであって、
前記糊材料又は接着材料の少なくとも一種は、シリコーン系接着材料である、ヒートシンク及びバックプレート。
【請求項4】
請求項1に記載のヒートシンク及びバックプレートであって、更に、
第二の複数のリブであって、各リブの末端が前記複数の溝の各溝から離れて並べられ、尚かつ各リブとバックプレートとの間に間隔があけられるように、前記ヒートシンクから突き出している第二の複数のリブを備えるヒートシンク及びバックプレート。
【請求項5】
請求項4に記載のヒートシンク及びバックプレートであって、更に、
前記第二の複数のリブと前記バックプレートとの間に配されたエポキシ系接着材料を備えるヒートシンク及びバックプレート。
【請求項6】
請求項4に記載のヒートシンク及びバックプレートであって、更に、
前記バックプレートを前記ヒートシンクに留め付けるために、前記第一の複数のリブと前記複数の溝との間に配された、少なくとも一種のシリコーン系接着材料を備え、前記第二の複数のリブは、前記複数の溝に溶接されるか又は弱溶接されるかの少なくとも一方である、ヒートシンク及びバックプレート。
【請求項7】
請求項1に記載のヒートシンク及びバックプレートであって、更に、
前記複数の溝と前記第一の複数のリブとの間の複数のシールギャップ内に配された複数のシリコーン製Oリングを備えるヒートシンク及びバックプレート。
【請求項8】
請求項1に記載のヒートシンク及びバックプレートであって、
前記第一の複数のリブは、前記複数の溝に溶接されるか又は弱溶接されるかの少なくとも一方である、ヒートシンク及びバックプレート。
【請求項9】
請求項1に記載のヒートシンク及びバックプレートであって、更に、
前記バックプレートを前記ヒートシンクに留め付けるスタンドオフピンを備えるヒートシンク及びバックプレート。
【請求項10】
請求項9に記載のヒートシンク及びバックプレートであって、
前記スタンドオフピンは、アルミニウム、アルミニウム合金、又は鋼のいずれか一種で形成される、ヒートシンク及びバックプレート。
【請求項11】
請求項1に記載のヒートシンク及びバックプレートであって、
前記流体は水である、ヒートシンク及びバックプレート。
【請求項12】
請求項1に記載のヒートシンク及びバックプレートであって、
前記ヒートシンク及び前記バックプレートは、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成される、ヒートシンク及びバックプレート。
【請求項13】
請求項1に記載のヒートシンク及びバックプレートであって、
前記ヒートシンクは、自動車用途の電子パワーモジュールに適合している、ヒートシンク及びバックプレート。
【請求項14】
自動車用途の電子パワーモジュールに用いられる水冷式ヒートシンクのためのバックプレートであって、前記ヒートシンクから突き出している対応する複数のリブの末端を受けるように適合された複数の溝を形成されたバックプレート。
【請求項15】
請求項14に記載のバックプレートであって、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成されたバックプレート。
【請求項16】
ヒートシンク及びバックプレートを形成する方法であって、
対応する第1の複数のリブを受けるための複数の溝を有する前記バックプレートを形成する工程と、
前記対応する第1の複数のリブを有する前記ヒートシンクを形成する工程と、
前記対応する第1の複数のリブを前記複数の溝内に留め付ける工程と
を備える方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
前記留め付ける工程は、前記第1の複数のリブと前記複数の溝との間に糊材料又は接着材料の少なくとも一種を配することを含む、方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、
前記ヒートシンクを形成する工程は、前記ヒートシンクから突き出している第2の複数のリブを形成することを含み、前記第2の複数のリブの各リブは、前記第2の複数のリブの各リブと前記バックプレートとの間に間隔をあけられるように、前記第1の複数のリブの少なくとも一つのリブに隣接して形成される、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、
前記留め付ける工程は、前記第2の複数のリブを前記バックプレートに溶接するか又は弱溶接するかの少なくとも一方を含む、方法。
【請求項20】
請求項16に記載の方法であって、
前記留め付ける工程は、複数のスタンドオフピンを配することを含む、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−59883(P2007−59883A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−191546(P2006−191546)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(505300623)インターナショナル・レクティファイヤ・コーポレーション (23)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL RECTIFIER CORPORATION
【Fターム(参考)】