説明

適応アンテナ無線通信装置及び適応アンテナ無線通信方法

【課題】マルチキャリア伝送方式の移動通信システムにおいて、帯域全体で最適な指向性制御を行うことを目的とする。
【解決手段】アレーアンテナ1で受信された分割帯域毎のサブキャリア信号群に対して、パイロット信号との相互相関演算を行う複数のパイロット信号相関演算部21と、それらの出力を基に異なるサブキャリア信号のアレーアンテナ素子間の相関値を合成する相関行列生成部22で得られる相関行列から空間プロファイルを算出し、方向推定する。これにより、周波数選択フェージング下でも分割帯域毎の方向推定精度を確保する。また、帯域全体の角度広がりを算出し、その広がりに応じて、指向性制御方法を切替えることで、帯域全体で最適な指向性制御を行うことができ、ユーザ間干渉を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数の異なる複数のサブキャリアを用いたマルチキャリア伝送方式のディジタル無線通信システムにおいて、到来パスの方向推定手段と、それに基づく指向性制御手段を有するアレーアンテナ備えた適応アンテナ無線通信装置及び適応アンテナ無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信装置が受信する信号は、様々な信号による干渉を受けて、受信品質の劣化が生ずる。この干渉を抑制し、所望方向から到来する信号のみを強く受信する技術として、アダプティブアレーアンテナ(適応アンテナ)が知られている。アダプティブアレーアンテナでは、受信信号に乗算する重み付け係数(以下、この重み付け係数を「重み」という。)を調整して受信信号に対して与える振幅と位相を調整することにより、所望方向から到来する信号のみを強く受信することができる。
【0003】
また、近年、無線通信の大容量化と、高速化への要求が高まりをみせており、その実現には耐マルチパス性や耐フェージング対策が大きな課題となっている。広帯域伝送を行う帯域内を複数の狭帯域なサブキャリアにより並列的に伝送するマルチキャリア伝送は、課題解決のための一つのアプローチであり、特に直交周波数分割多重(OFDM)伝送方式は地上波ディジタル放送や広帯域無線アクセスシステムにおいて採用されている。
【0004】
マルチキャリア伝送システムにおいて、アダプティブアレーアンテナを用いることで、両者の特徴をさらに生かすことが可能であり、耐マルチパス性、耐フェージング性をさらに高めることができる。
【0005】
詳細構成についての説明は省略するが、マルチキャリア伝送システムにおいて、アダプティブアレーアンテナを備えた従来の無線装置として、サブキャリア毎にアンテナ重みを演算することで、比帯域(=使用する全通信帯域/全通信帯域の中心周波数)が大きい場合でも、OFDM伝送方式の全通信帯域に均一なアンテナ指向性ビームが得られ、全通信帯域内でマルチパス等の妨害波の影響を受けにくい送受信を可能にしているという開示例がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−205026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の適応アンテナ無線通信装置においては、サブキャリア毎に方向推定を行い、アレー重みを演算するため、周波数選択性フェージングの影響をうける場合、受信電力が小さいサブキャリア信号に対しては十分な精度で方向推定が行えないという課題が生じる。また、サブキャリア数が多い場合にはサブキャリア毎に方向推定する場合には回路規模が増大するといった課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の適応アンテナ無線通信装置は、マルチキャリア伝送される通信帯域を分割した分割帯域毎に、送信指向性ビームを形成するための1つの送信アレー重みを生成する送信重み生成部と、上記分割帯域毎に生成された上記送信アレー重みを送信サブキャリア信号に乗算することで、重みづけがなされた送信信号を生成するサブキャリア送信指向性形成部と、上記重みづけがなされた送信信号を送信するための複数のアンテナ素子から構成されるアレーアンテナとを具備する構成を採る。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通信帯域を分割した分割帯域毎にアレー重みを生成することにより、分割帯域内に受信電力が小さいサブキャリア信号が存在する場合でも、到来方向推定精度の劣化を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の適応アンテナ無線通信装置は、マルチキャリア伝送される通信帯域を分割した分割帯域毎に、送信指向性ビームを形成するための1つの送信アレー重みを生成する送信重み生成部と、上記分割帯域毎に生成された上記送信アレー重みを送信サブキャリア信号に乗算することで、重みづけがなされた送信信号を生成するサブキャリア送信指向性形成部と、上記重みづけがなされた送信信号を送信するための複数のアンテナ素子から構成されるアレーアンテナとを具備する。
また、上記適応アンテナ無線通信装置において、上記送信重み生成部は、全通信帯域に共通なアレー重み、あるいは、分割帯域内で共通なアレー重みのどちらかを出力してもよい。
本発明の適応アンテナ無線通信装置は、マルチキャリア伝送される通信帯域を分割した分割帯域毎に、複数の送信指向性ビームを形成するための送信アレー重みを生成するサブキャリア送信重み生成部と、上記分割帯域毎に生成された上記送信アレー重みを送信サブキャリア信号に乗算することで、複数の指向性ビームが形成された送信信号を生成するサブキャリア送信指向性形成部と、上記指向性ビームが形成された送信信号を送信するための複数のアンテナ素子から構成されるアレーアンテナとを具備する。
本発明の適応アンテナ無線通信方法は、マルチキャリア伝送される通信帯域を分割した分割帯域毎に、送信指向性ビームを形成するための1つの送信アレー重みを生成し、上記分割帯域毎に生成された上記送信アレー重みを送信サブキャリア信号に乗算することで、重みづけがなされた送信信号を生成し、上記重みづけがなされた送信信号を複数のアンテナ素子から構成されるアレーアンテナを用いて送信する。
また、上記適応アンテナ無線通信方法において、上記送信アレー重みとして、全通信帯域に共通なアレー重み、あるいは、分割帯域内で共通なアレー重みのどちらかを用いてもよい。
本発明の適応アンテナ無線通信方法は、マルチキャリア伝送される通信帯域を分割した分割帯域毎に、複数の送信指向性ビームを形成するための送信アレー重みを生成し、上記分割帯域毎に生成された上記送信アレー重みを送信サブキャリア信号に乗算することで、複数の重みづけがなされた送信信号を形成し、上記重みづけがなされた送信信号を複数のアンテナ素子からなるアレーアンテナを用いて送信する。
本発明の適応アンテナ無線通信装置は、マルチキャリア伝送された信号を受信する複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナと、上記アンテナ素子毎に、受信された信号を複数のサブキャリア信号に分波する分波器と、上記全通信帯域を複数の分割帯域に分割し、サブキャリア信号群を含む各分割帯域毎に、該分割帯域に属するサブキャリア信号群に含まれる複数のサブキャリアを用いて到来方向推定を行い、1つのアレー重みを生成する分割帯域アレー重み生成部と、上記分割帯域毎に生成された上記アレー重みを、上記複数のサブキャリア信号に乗算合成するサブキャリア指向性形成部と、上記サブキャリア指向性形成部の出力信号を復調する復調部とを具備する。
また、上記適応アンテナ無線通信装置において、上記分割帯域アレー重み生成部は、既知のパイロット信号と、入力された上記分割帯域内に属するサブキャリア信号群に含まれるパイロット信号とのパイロット信号相関値を算出し、上記各分割帯域毎に算出された上記パイロット信号相関値の相関値を基に、上記分割帯域毎にアレー重みを生成してもよい。
また、上記適応アンテナ無線通信装置において、上記分割帯域アレー重み生成部は全通信帯域に共通なアレー重み、あるいは、分割帯域内で共通なアレー重みのどちらかを出力する。
本発明の適応アンテナ無線通信方法は、マルチキャリア伝送された信号を複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナを用いて受信し、上記アンテナ素子毎に、受信された信号を複数のサブキャリア信号に分波し、上記マルチキャリア伝送される全通信帯域を複数の分割帯域に分割し、サブキャリア信号群を含む各分割帯域毎に、該分割帯域に属するサブキャリア信号群に含まれる複数のサブキャリアを用いて到来方向推定を行い、1つのアレー重みを生成し、上記分割帯域毎に生成された上記アレー重みを、上記複数のサブキャリア信号に乗算合成し、上記合成された信号を復調する。
また、上記適応アンテナ無線通信方法において、上記分割帯域毎のアレー重みの生成において、既知のパイロット信号と、入力された上記分割帯域内に属するサブキャリア信号群に含まれるパイロット信号とのパイロット信号相関値を算出し、上記各分割帯域毎に算出された上記パイロット信号相関値の相関値を基に、上記分割帯域毎にアレー重みを生成する。
また、さらに、上記適応アンテナ無線通信方法において、上記分割帯域毎のアレー重みの生成において、全通信帯域に共通なアレー重み、あるいは、分割帯域内で共通なアレー重みのどちらかを生成してもよい。
【0011】
本発明によれば、指向性送信する場合、分割帯域毎あるいは全通信帯域での空間的なスペクトラムをもとに角度広がりを検出することで、角度広がりが小さい場合は、全サブキャリア信号群の平均的な到来方向に基づき送信指向性制御を行い、角度広がりが大きい場合は、1)分割帯域毎の方向推定結果のなかで最大受信電力を与える方向に指向性送信制御、または、2)分割帯域毎の方向推定結果の中で所定数の上位受信電力を与える方向に指向性送信制御を行う。これにより受信時の到来パス方向に指向性送信が可能となり、他ユーザへの干渉を効果的に低減することができ、通信品質を高め、システム容量を改善することができる。
【0012】
また、本発明によれば、アレーアンテナを備えた適応アンテナ無線通信装置において、広帯域なマルチキャリア伝送方式を行う場合において、隣接するサブキャリア信号間での空間的なスペクトラムの相関が高いことを利用し、通信帯域内を分割した分割帯域内に属するサブキャリア信号群の平均的な到来方向を推定することで、受信電力が小さいサブキャリアが存在する場合でも、それが属するサブキャリア信号群としての到来方向を推定することで、推定精度の劣化を抑えることを可能にしており、ロバスト化した方向推定結果を用いて指向性受信を行うことで受信品質の改善が可能となる。また、指向性送信する場合、全通信帯域での空間プロファイルをもとに角度広がりを検出することで、角度広がりに応じて、指向性送信方法を切替えることで、ユーザ間干渉と低減させ通信品質の改善を図ることができる。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図1から図7を用いて説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る適応アンテナ無線通信装置の構成を示すブロック図である。図1に示す適応アンテナ無線通信装置は、複数Na個のアンテナ素子1−1〜Naから構成されるアレーアンテナ1、第k番目のアンテナ素子1−kで受信された高周波信号s1−kを周波数変換後に、複数Ns個のサブキャリア信号f1−kからfNs−kに分波する分波器2―k(ただし、k=1〜Na)、通信帯域をNd個に分割した分割帯域のうち、第m番目の分割帯域3−mに属するサブキャリア信号群を用いて到来方向推定を行う分割帯域方向推定部4−m、第m番目の分割帯域方向推定部4−mでの方向推定結果を基にアレー重みを生成する分割帯域アレー重み生成部5−m、分割帯域アレー重み生成部5−mによるアレー重みを用いて、第m番目の分割帯域3−mに属するサブキャリア信号群に対し指向性形成するサブキャリア指向性形成部6−m、指向性受信された各サブキャリア信号を用いてデータ復調を行う復調部7から構成されている。ただし、m=1、...、Ndである。なお、図1ではアンテナ素子数Na=2、サブキャリア数Ns=4、分割帯域数Nd=2の場合の構成例を示している。
【0015】
以下、図1を用いてその動作の説明を行う。まず、アレーアンテナ1を構成するアンテナ素子1−1〜Naにてマルチキャリア方式で伝送された高周波信号s1−1〜Naをそれぞれ受信する。このうち第k番目のアンテナ素子1−kにより受信された高周波信号s1−kは、分波器2−kにより、高周波増幅、周波数変換を順次施されマルチキャリア伝送に用いられる複数Ns個のサブキャリア信号f1―k、f2−k、...、fNs―kが抽出される。ここで、全通信帯域をNd個の分割帯域に分け、その内の第m番目の分割帯域3−mに属するサブキャリア信号群は、分割帯域方向推定部4−mとサブキャリア指向性形成部6−mにそれぞれ入力される。なお、分割帯域数Ndは、全サブキャリア数Ns≧Nd>1の範囲にある自然数で設定することができる。また、各分割帯域3に属するサブキャリア信号群に属するサブキャリア数は必ずしも等しい必要はないが、以下では、等しいサブキャリア数Nc(=Ns/Nd)が属するものとして説明を行う。
【0016】
第m番目の分割帯域3−mに属するサブキャリア信号群を用いて分割帯域方向推定部4―mは到来方向推定を行う。図2は分割帯域方向推定部4の詳細な構成図を示す。図2において、分割帯域方向推定部4は、各サブキャリア信号に埋め込まれた予め既知であるパイロット信号を生成するパイロット信号生成部20、受信された各サブキャリア信号と生成されたパイロット信号との相関値を演算するパイロット信号相関演算部21、パイロット信号相関値を基に相関行列を生成する相関行列生成部22、相関行列を基に空間プロファイルを演算する空間プロファイル演算部23とから構成されている。以下、図2を用いてその動作説明を行う。なお、図2はアンテナ素子数Na=2、分割帯域内のサブキャリア数Nc=2の場合における第1番目の分割帯域3−1における分割帯域方向推定部4―1の例を示す。
【0017】
パイロット信号生成部20はサブキャリア信号にあらかじめ埋め込まれた既知信号(以下パイロット信号)を生成する。パイロット信号相関演算部21は生成されたパイロット信号と、サブキャリア信号の受信パイロットシンボルとの相関演算を行う。ここで、パイロット信号をr(s)とする。ただし、s=1〜Npであり、Npはパイロット信号のシンボル数とする。第k番目のアンテナ素子1−kで受信された第m番目の分割帯域3−mに属する第n番目のサブキャリア信号fn−k(t)(なお、tはパス到来タイミングを表す。)に対し、パイロット信号相関演算部21―n―kは、(数1)に示す相関演算を行い、パイロット相関値hnkを算出する。ただし、Noはシンボルに対するオーバーサンプル数、*は複素共役を示す。以下、すべてのアンテナ素子(k=1〜Na)で受信された第m番目の分割帯域3−mに属するサブキャリア信号群(n=1〜Nc)に対しパイロット相関値hnkを算出する。
【0018】
【数1】

相関行列生成部22は、パイロット信号相関演算部21において算出されたパイロット相関値hnkを用いて、(数2)で示される相関ベクトルVnを用いて、(数3)にされる相関行列Rを算出する。ただし、n=1〜Ns、k=1〜Na、Tはベクトル転置を示す。
【0019】
【数2】

【0020】
【数3】

【0021】
空間プロファイル演算部23は、相関行列生成部22により生成された相関行列Rを用いて、方向推定を行う。方向推定アルゴリズムは数多く提案されているが、以下ではフーリエ法に基づく空間プロファイルを生成し、そのピーク方向を検出することで到来方向推定値とするアルゴリズムを適用した場合の動作を説明する。
【0022】
空間プロファイル演算部23は、(数4)に示す到来方向推定評価関数F(θ)におけるパラメータθを所定の角度ステップΔθで可変することで空間プロファイルを算出し、空間プロファイルのピークレベルの高い順に所定数M(M≧1)のピーク方向を検出し、到来方向推定値とする。ただし、a(θ)はアレーアンテナ1の素子配置で決まる方向ベクトルであり、例えば素子間隔dの等間隔直線アレーの場合、(数5)のように表すことができる。ここで、λは搬送波帯での分割帯域3−mにおける中心周波数の波長であり、θは直線アレーの法線方向を0°方向としている。また、Hは複素共役転置を表す。
【0023】
【数4】

【0024】
【数5】

図3はアレー素子数Na=8、サブキャリア信号群のサブキャリア数Nc=2の場合の空間プロファイル算出結果を示す。図3(a)はサブキャリア1の到来角度θ=20°、サブキャリア2の到来角度θ=−20°の結果であり、図3(b)はサブキャリア1の到来角度θ=5°、サブキャリア2の到来角度θ=−5°の結果である。(数4)で示す到来方向推定はビームフォーマ法を用いており、アレーアンテナ1のビーム幅より、到来パス間隔が十分離れている場合はそれぞれのパス方向に対するピークを検出することができる(図3a)。また、複数パスの到来角度が近接している場合(図3b)、パス数に比べ少ないピーク数をもつ空間プロファイルが得られる。この場合のピーク方向は、複数パスの合成電力が最大となる方向となる。
【0025】
分割帯域アレー重み生成部5−mは、第m番目の分割帯域3−mに属するサブキャリア信号群に対し、分割帯域方向推定部4−mでの方向推定結果の最大ピーク方向または所定数の複数ピーク方向に主ビームを向けるアレー重みを生成し、サブキャリア指向性形成部6−mは、生成されたアレー重みを各サブキャリア信号に対し共通に乗算合成した信号を出力する。なお、アレー重みは、無線周波数帯での各分割帯域3−mの中心周波数の波長λmを考慮して生成する。これは、特に比帯域が大きい場合に有効である。例えば素子間隔dの等間隔直線アレーの場合、第m番目の分割帯域3−mにおけるアレー重みWmは、(数6)のように表すことができる。ここで、θは方向推定結果である。なお、直線アレーの法線方向を0°方向としている。
【0026】
【数6】

復調部7は、すべての分割帯域3での指向性形成部6により指向性受信された各サブキャリア信号を用いて、復調動作を行いデータ受信する。
【0027】
本実施の形態においては、分割帯域3に属するサブキャリア信号群に属する各サブキャリア信号から得られる相関ベクトルVnを合成した相関行列Rを生成し、それを用いた到来方向推定を行うことで、分割帯域内のサブキャリア信号群の平均的な到来方向を推定することが可能となる。これにより、サブキャリア信号間の周波数間隔が十分狭い場合、近接するサブキャリア信号間の空間相関特性が比較的高い性質があり、サブキャリア信号あたりの受信電力が小さい場合でも、それらの複数サブキャリア信号を同相合成した後に方向推定を行うため、到来方向推定精度を確保できるという効果を有する。サブキャリア信号間の周波数間隔が十分広い場合、周波数ダイバーシチ効果により、方向推定精度を安定化させる効果をもつ。
【0028】
なお、相関行列生成部22は、(数3)に示される相関行列Rではなく、(数7)に示す相関ベクトルzを用いても良く、この場合、空間プロファイル演算部23は(数4)でなく、(数8)に示す空間プロファイルを算出して、ピークレベルを検出することで、到来方向推定値とする。ここで、Vn、mは、相関ベクトルVnの第m番目の要素を表す。
【0029】
【数7】

【0030】
【数8】

なお、各サブキャリア信号が時間軸方向に拡散されるマルチキャリア直接拡散符号分割多重(MC/DS−CDMA)方式を用いて伝送される場合、分割帯域方向推定部4はサブキャリア信号における到来時刻の異なるマルチパス信号を取り出し、それらの複数パスの方向推定を行う構成でも良く、図4にその構成例を示す。図4における分割帯域方向推定部4bの分割帯域方向推定部4の別な構成を示す図である。図4において分割帯域方向推定部4bは、各サブキャリア信号に埋め込まれた予め既知であるパイロット信号を生成するパイロット信号生成部20、サブキャリア信号毎に複数の到来パスタイミングを検出するパスサーチ部30、検出された複数の到来パスタイミング毎に受信されたサブキャリア信号と生成されたパイロット信号との相互相関値を算出するパイロット信号演算部31、それらのパイロット信号相関値を基に相関行列を生成する相関行列生成部32と、生成された相関行列を用いて空間的な空間プロファイルを演算する空間プロファイル演算部33とから構成されている。以下、図4を用いてその動作説明を行う。なお、図4はアンテナ素子数Na=2、分割帯域内のサブキャリア数Nc=2の場合の例を示している。
【0031】
パスサーチ部30―1〜Nsは、サブキャリア信号に埋め込まれたパイロット信号を用いて遅延プロファイルを生成し、その上位受信電力のピークタイミングをパスタイミングとして検出する。ここで、あるサブキャリア信号群の第n番目のサブキャリア信号に対するパスサーチ部30−nにおける受信パスタイミング検出数をLnとする。だだし、n=1〜Nc。第k番目のアンテナ素子1―kで受信された第n番目のサブキャリア信号fn−kに対する、第j番目のパスタイミングtにおけるパイロット信号相関値hnk(t)は(数9)で表すことができる。ここで、パイロット信号をr(s)とする。ただし、s=1〜Npであり、Npはパイロット信号のシンボル数とする。
【0032】
【数9】

なお、遅延プロファイルは、1)各アンテナ素子1―1〜Nで得られたパイロット信号相関値hnk(t)の絶対値あるいは2乗を同じタイミング毎に合成する方法、あるいは、2)指向性ビーム形成する重みを同じタイミングのパイロット相関値hnk(t)に乗算後、加算し、その絶対値あるいは2乗をとることで複数の遅延プロファイルを生成する方法、さらにはそれらを合成する方法により生成する。また、遅延プロファイルは、複数フレーム間にわたり平均化することで、ノイズ成分を抑圧することができる。
【0033】
相関行列生成部32は、パイロット信号相関演算部31において算出されたパイロット相関値hnk(t)及び(数10)で示される相関ベクトルVn(t)を用いて、(数11)に示される相関行列Rを算出する。ただし、n=1〜Ns、k=1〜Na、Hはベクトル複素共役転置を示す。
【0034】
【数10】

【0035】
【数11】

空間プロファイル演算部33は、相関行列生成部32により生成された相関行列Rを用いて、(数4)に示す空間プロファイルを算出し方向推定を行う。
【0036】
なお、相関行列生成部32おいて、相関ベクトルVn(t)を合成後に、空間スペクトルを演算しているが、パス毎の相関ベクトルVn(t)を用いて、(数12)に示すようにパス毎に空間プロファイル演算を行っても良い。なお、(数12)は、第n番目のサブキャリア信号に対する第j番目のパスの方向推定評価関数を示す。ただし、n=1〜Ns、j=1〜Lnである。
【0037】
【数12】

なお、相関行列生成部32は、(数11)に示される相関行列Rではなく、(数13)に示す相関ベクトルzを用いても良く、この場合、空間プロファイル演算部32は(数4)でなく、(数14)に示す空間プロファイルを算出して、ピークレベルを検出することで、到来方向推定値とする。ここで、Vn、m(t)は、相関ベクトルVn(t)の第m番目の要素を表す。
【0038】
【数13】

【0039】
【数14】

なお、本実施の形態における分割帯域方向推定部4では、ビームフォーマ法を用いて方向推定をおこなっているが、菊間著、「アレーアンテナによる適応信号処理」(科学技術出版)等で情報開示されているMUSIC法、ESPRIT法といった固有値分解手法や、相関行列の逆行列演算を含むCapon法等の到来方向推定の高分解能手法を、(数3)あるいは(数11)で示される相関行列生成部22あるいは32の出力である相関行列Rに対し、適用可能である。ただし、サブキャリア信号群に属するサブキャリア信号数Ncがアレー素子数よりも小さい場合は、相関行列生成部22の出力である相関行列Rのランク数がフルランクにならないケースが考えられるため、サブキャリア信号数Ncに応じて、あるいは相関行列生成部32を用いる場合は、サブキャリア信号数Ncとパス数Lnを加算した数に応じて、方向推定アルゴリズムを適宜選択する必要がある。また、アレーアンテナ1の構成が等間隔直線アレー配置である場合、相関行列生成部22あるいは32で得られる相関行列Rに対し、空間スムージング処理の適用や、ユニタリ変換行列を乗算することでの方向ベクトルを実数化したビームスペースでの到来方向推定処理も適用も可能である。
【0040】
なお、サブキャリア伝送は、直交周波数分割多重(OFDM)されたサブキャリア信号でも良く、この場合、各サブキャリア信号がOFDMシンボル区間内で直交する周波数が選択され使用される。また、周波数軸方向に、符号拡散多重されるMC―CDMA方式への適用も可能であり、この場合、サブキャリア信号に埋め込まれた個別ユーザ毎に多重されたパイロット信号を用いて、ユーザ毎に各サブキャリア信号のパイロット相関値を算出することで、実施の形態で説明した動作を行うことで同様な効果が得られる。
【0041】
また、時間軸方向に符号拡散多重されるMC/DS−CDMA方式でも同様に適応が可能であり、この場合、各サブキャリア信号の時間軸方向に符号分割多重されたユーザ信号を、逆拡散により抽出後に、ユーザ毎に各サブキャリア信号のパイロット相関値を算出することで、実施の形態で説明した動作を行うことで同様な効果が得られる。
【0042】
また、符号分割多重されたユーザが存在する場合、分割帯域アレー重み生成部5は、所望ユーザの方向にサブキャリア信号群毎に分割帯域方向推定部4の推定方向に主ビームを有し、多重されている他ユーザの方向にはヌルを形成するアレー重みを生成することで、符号拡散多重されているユーザ間の干渉を低減させるビーム形成機能を付加してもよい。
【0043】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2に係る適応アンテナ無線通信装置の構成を示すブロック図であり、実施の形態1で説明した図1の構成での、各分割帯域方向推定部4の方向推定結果を基にサブキャリア毎に送信指向性を形成する動作を行う。なお、分割帯域方向推定部4の方向推定結果が得られるまでのブロック図は実施の形態1と同様であり、省略している。図5における適応アンテナ無線通信装置は、分割帯域方向推定部4の推定結果を基に送信アレー重みを生成するサブキャリア送信重み生成部40、送信サブキャリア信号を送信アレー素子数分だけ複製したそれぞれの信号に、送信アレー重みを乗算するサブキャリア送信指向性形成部41、重み付けされたサブキャリア信号を混合する混合器42、混合器42の出力を無線周波数に周波数変換する無線送信部43から構成される。なお、図5ではアンテナ素子数Na=2、サブキャリア数Ns=2、分割帯域数Nd=2の場合の構成例を示している。以下、図5を用いてその動作の説明を行う。
【0044】
アレーアンテナ1で受信されたマルチキャリア方式で伝送された高周波信号s1を基に、分割帯域方向推定部4−1〜Ndで分割帯域毎に到来方向推定されるまでは実施の形態1と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0045】
サブキャリア送信重み生成部40は、Nd個の分割帯域方向推定部4の推定結果を基に送信アレー重みを生成する。送信アレー重みの生成は、無線通信システムのデュプレックス方式により異なる動作を行う。例えば、時分割多重(TDD)方式、周波数多重(FDD)方式により、以下の異なる動作を行う。
【0046】
TDD方式の場合、送信帯域と受信帯域が時分割で共有されるため、分割帯域毎の分割帯域方向推定部4−1〜Ndでの推定方向結果を基に、分割帯域アレー重み生成部5−1〜Ndのそれぞれで生成されたアレー重みを送信アレー重みWsとして用いる。また、別な方式としては、分割帯域毎の分割帯域方向推定部4−1〜Ndでの方向推定結果の全通信帯域にわたる広がり(偏差)が大きい場合、符号拡散多重により複数ユーザが存在する無線通信システムの場合、ユーザ間干渉が大きくなるという課題が生じるため、以下の動作のいずれかを適用する。
【0047】
1)分割帯域毎の分割帯域方向推定部4−1〜Ndでの推定方向結果から、全分割帯域の中で最大受信電力を与える推定方向(分割帯域毎に分割帯域方向推定部4−1〜Ndでそれぞれ算出された空間プロファイルの中での最大ピーク方向)に送信指向性ビームを形成する送信アレー重みWsを生成する。
【0048】
2)分割帯域毎の分割帯域方向推定部4−1〜Ndでの推定方向結果から推定方向の全通信帯域での偏差を算出し、偏差が所定値より小さい場合には分割帯域方向推定部4−1〜Ndの各推定方向結果の平均方向に、所定値より大きい場合には、全分割帯域の中で受信電力上位の推定方向(分割帯域毎に分割帯域方向推定部4−1〜Ndでそれぞれ算出された空間プロファイルの中での上位のピーク方向)に複数の主ビームを向ける送信アレー重みWsを生成する。
【0049】
FDD方式の場合、送信帯域と受信帯域が異なるが、各分割帯域方向推定部4−1〜Ndの推定値を基に、以下の動作のいずれかを適用する。
【0050】
1)分割帯域毎の分割帯域方向推定部4−1〜Ndでの推定方向結果から、全分割帯域の中で最大受信電力を与える推定方向(分割帯域毎に分割帯域方向推定部4−1〜Ndでそれぞれ算出された空間プロファイルの中での最大ピーク方向)に送信指向性ビームを形成する送信アレー重みWsを生成する。
【0051】
2)分割帯域毎の分割帯域方向推定部4−1〜Ndでの推定方向結果から推定方向の全通信帯域での偏差を算出し、偏差が所定値より小さい場合には分割帯域方向推定部4−1〜Ndの各推定方向結果の平均方向に、所定値より大きい場合には、全分割帯域の中で受信電力上位の推定方向(分割帯域毎に分割帯域方向推定部4−1〜Ndでそれぞれ算出された空間プロファイルの中での上位のピーク方向)に複数の主ビームを向ける送信アレー重みWsを生成する。
【0052】
サブキャリア送信指向性形成部41−1〜Nsは、送信データを所定の変調フォーマットで変調された送信サブキャリア信号41−1〜Nsを、アレーアンテナ1の素子数Naに等しい数に分配し、それぞれに対し、送信アレー重みWs=[w、w、...、wna]の要素を乗算して混合器42―1〜Naに出力する。混合器42―1〜Naは、指向性重みづけされたサブキャリア送信指向性形成部41−1〜Nsのアレー素子数分の出力信号をそれぞれ割り当てられた周波数間隔でサブキャリア信号を配置するように混合する。無線送信部43―1〜Naは、混合器42―1〜Naの出力をそれぞれ無線周波数に周波数変換しアレーアンテナ44を構成するアンテナ素子44−1〜Naから送信する。
【0053】
以上のように、本実施の形態により、実施の形態1の効果に加え、分割帯域方向推定部4−1〜Ndでの推定方向に指向性送信することで、マルチパス干渉が低減され、通信品質が改善される。また、全分割帯域の中で最大受信電力を与える推定方向または、全通信帯域での分割帯域毎の方向推定値の偏差に応じて、指向性送信方向を分割帯域の中で受信電力がより高い方向に限定することで、ユーザ間干渉を抑えた形で、効率よく指向性送信ができるという効果が得られる。ユーザ間干渉を抑圧できシステム容量を改善できるという作用を有する。
【0054】
なお、送信で用いられるサブキャリア伝送は、直交周波数分割多重(OFDM)されたサブキャリア信号でも良く、この場合、各サブキャリア信号がOFDMシンボル区間内で直交する周波数が選択され使用される。また、周波数軸方向に、符号拡散多重されるMC―CDMA方式への適用も可能であり、ユーザ毎に実施の形態で説明した動作を行うことで同様な効果が得られる。また、時間軸方向に符号拡散多重されるMC/DS−CDMA方式でも同様に適応が可能であり、この場合もユーザ毎に、実施の形態で説明した動作を行うことで同様な効果が得られる。
【0055】
また、符号分割多重されたユーザが存在する場合、サブキャリア送信重み生成部40は、所望ユーザの方向にサブキャリア信号群毎に分割帯域方向推定部4の推定方向に主ビームを有し、多重されている他ユーザの方向にはヌルを形成するアレー重みを生成することで、符号拡散多重されているユーザ間の干渉を低減させるビーム形成機能を付加してもよい。
【0056】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3に係る適応アンテナ無線通信装置の構成を示すブロック図であり、実施の形態1で説明した図1に示す構成に、アレーアンテナ1で受信された全てのサブキャリア信号を用いることで全通信帯域での方向推定を行う全帯域方向推定部50と、分割帯域方向推定部4または、全帯域方向推定部50で算出される空間プロファイルを用いることで角度広がり検出し、どちらかの方向推定結果を選択して出力する方向推定結果選択部51とを追加した構成である。なお、分割帯域方向推定部4の方向推定結果が得られるまでのブロック図は実施の形態1と同様であり、省略している。以下、図6を用いて実施の形態1と異なる部分を主に説明を行う。なお、図6ではアンテナ素子数Na=2、サブキャリア数Ns=2、分割帯域数Nd=2の場合の構成例を示している。
【0057】
アレーアンテナ1で受信されたマルチキャリア方式で伝送された高周波信号s1を基に、分割帯域方向推定部4−1〜Ndで分割帯域毎に到来方向推定されるまでは実施の形態1と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0058】
全帯域方向推定部50は、第n番目の分割帯域3−nで算出された(数3)で示される相関行列RをRnと表記したとき(ただし、n=1、...、Nd)、全ての分割帯域3−1〜Ndで算出されたRnを入力とし、(数15)で示されるRnの合成和Raを算出する。そして、例えば(数16)で示されるフーリエ法による空間プロファイルを、θを所定の角度ステップΔθで可変することで空間プロファイルを算出し、空間プロファイルのピークレベルの高い順に所定数M(M≧1)のピーク方向を検出し、全通信帯域でのサブキャリア信号の平均的な到来方向推定を行う。ただし、a(θ)はアレーアンテナ1の素子配置で決まる方向ベクトルであり、例えば素子間隔dの等間隔直線アレーの場合、(数5)のように表すことができる。ここで、λは搬送波の波長であり、θはアレーの法線方向を0°方向としている。また、Hは複素共役転置を表す。
【0059】
【数15】

【0060】
【数16】

方向推定結果選択部51は、全ての分割帯域方向推定部4−1〜Ndの方向推定値Φkmと、それぞれの分割帯域3―mでの空間プロファイル値(または到来方向推定評価関数値)F(Φkm)を用いて、(数17)に示される計算式を用いて角度広がりASを算出する。ここで、m=1、...、Ndである。また、φは(数18)で与えられ、Φkmは、第m番目の分割帯域3−mでの分割帯域方向推定部4−mで検出された全Lm個のパスのうち、第k番目のパスの到来方向を示す。算出された角度広がりASを用いて、角度広がりASが所定値K以下の場合、全帯域方向推定部50の推定値を選択し、すべての分割帯域アレー重み生成部5−1〜Ndに共通に出力する。一方、角度広がりASが所定値Kより大きい場合、実施例1の形態と同様に、第m番目の分割帯域3−mでの分割帯域方向推定部4−mの推定値は、分割帯域重み生成部5−mに出力する。ここで、m=1、...、Ndである。また、角度広がりASの別な算出方法としては、空間プロファイル値(または到来方向推定評価関数値)F(Φkm)の上位を与える方向推定値Φkmのみを用いて、(数17)から角度広がりASを求めても良い。
【0061】
【数17】

【0062】
【数18】

分割帯域アレー重み生成部5は、方向推定結果選択部51での方向推定選択結果に従い、主ビーム方向を特定方向に向けるアレー重みを生成し、サブキャリア指向性形成部6により、生成されたアレー重みを各サブキャリア信号に対し共通に乗算合成した信号を出力する。すなわち、第m番目の分割帯域3−mにおける分割帯域アレー重み生成部5−mは、第m番目の分割帯域3−mに属するサブキャリア信号群に対し、方向推定結果選択部51での方向推定選択結果に従い、主ビーム方向を特定方向に向けるアレー重みを生成し、サブキャリア指向性形成部6−mは、生成されたアレー重みを各サブキャリア信号に対し共通に乗算合成した信号を出力する動作をすべてのm=1、...、Ndに対して行う。
【0063】
復調部7は、指向性受信された各サブキャリア信号を用いて、復調動作を行いデータ受信する。
【0064】
以上のように、本実施の形態により、実施の形態1での効果に加えて、方向推定結果選択部51により、全通信帯域でのサブキャリア信号の角度広がりを検出することで、全分割帯域毎に異なる指向性形成または、すべての分割帯域3に共通な指向性形成を、角度広がりASに応じて切り替えることができる。これにより、角度広がりASが小さい場合、すべてのサブキャリア信号に平均的な到来方向を推定することにより、周波数選択性フェージングにより、一部の帯域の受信レベルが低い場合でも、通信帯域全体ではロバストな到来方向推定が可能となる。
【0065】
なお、方向推定結果選択部51における角度広がり検出は、分割帯域毎の到来方向推定値の広がりを基に算出したが、全帯域方向推定部50で算出される空間プロファイルを基に検出する方法も適用可能である。空間プロファイルより角度広がりを算出する方法としては、例えば、N.S.M.Shah他、“MUSICアルゴリズムを用いた到来方向と角度広がりの同時推定”、2000年電子情報通信学会通信ソサエティ大会B−1−31に情報開示されている。(数15)で算出される相関行列Raから空間プロファイルより算出した角度広がりASを用いて同様に、全帯域方向推定部50または分割帯域方向推定部4−1〜Ndの推定結果を選択的に切り替えることができる。
【0066】
なお、本実施の形態では、全通信帯域のサブキャリア信号を用いた方向推定を行う全帯域方向推定部50を用いたが、全帯域方向推定部50は、分割帯域方向推定部4に用いるサブキャリア信号分割数Nsよりも大きい分割数での方向推定を行う構成でも良い。
【0067】
なお、本実施の形態における全分割帯域方向推定部50では、ビームフォーマ法を用いて方向推定をおこなっているが、菊間著、「アレーアンテナによる適応信号処理」(科学技術出版)等で情報開示されているMUSIC法、ESPRIT法といった固有値分解手法や、相関行列の逆行列演算を含むCapon法等の到来方向推定の高分解能手法を、(数15)で示される相関行列Raを用いて適用することが可能である。ただし、分割帯域3に属するサブキャリア信号数Nc、あるいはパス数がアレー素子数よりも小さい場合は、相関行列生成部22の出力である相関行列のランク数がフルランクにならないケースが考えられるため、ランク数、あるいはパス数に応じて、ビームフォーマ法との適応的な併用が考えられる。また、アレーアンテナ1の構成が等間隔直線アレー配置である場合、(数15)で示される相関行列Raに対し、空間スムージング処理や、ユニタリ変換行列を乗算することでの方向ベクトルを実数化したビームスペースでの到来方向推定処理も同様に適用可能である。
【0068】
なお、サブキャリア伝送は、直交周波数分割多重(OFDM)されたサブキャリア信号でも良く、この場合、各サブキャリア信号がOFDMシンボル区間内で直交する周波数が選択され使用される。また、周波数軸方向に、符号拡散多重されるMC―CDMA方式への適用も可能であり、この場合、サブキャリア信号に埋め込まれた個別ユーザ毎に多重されたパイロット信号を用いて、ユーザ毎に各サブキャリア信号のパイロット相関値を算出することで、実施の形態で説明した動作を行うことで同様な効果が得られる。
【0069】
また、時間軸方向に符号拡散多重されるMC/DS−CDMA方式でも同様に適応が可能であり、この場合、各サブキャリア信号の時間軸方向に符号分割多重されたユーザ信号を、逆拡散により抽出後に、ユーザ毎に各サブキャリア信号のパイロット相関値を算出することで、実施の形態で説明した動作を行うことで同様な効果が得られる。
【0070】
また、符号分割多重されたユーザが存在する場合、分割帯域アレー重み生成部5は、所望ユーザの方向にサブキャリア信号群毎に方向推定結果選択部51の選択された推定方向に主ビームを有し、多重されている他ユーザの方向にはヌルを形成するアレー重みを生成することで、符号拡散多重されているユーザ間の干渉を低減させるビーム形成機能を付加してもよい。
【0071】
(実施の形態4)
図7は、本発明の実施の形態4に係る適応アンテナ無線通信装置の構成を示すブロック図であり、実施の形態2で説明した図5に示す構成に、アレーアンテナ1で受信された全てのサブキャリア信号を用いることで全帯域での方向推定を行う全帯域方向推定部50と、分割帯域方向推定部4または、全帯域方向推定部50で算出される空間プロファイルを用いることで角度広がり検出し、どちらかの方向推定結果を選択して出力する方向推定結果選択部51とを追加した構成である。なお、分割帯域方向推定部4の方向推定結果が得られるまでのブロック図は実施の形態1と同様であり、省略している。以下、図7を用いて実施の形態1と異なる部分を主に説明を行う。なお、図7ではアンテナ素子数Na=2、サブキャリア数Ns=2、分割帯域数Nd=2の場合の構成例を示している。
【0072】
アレーアンテナ1で受信されたマルチキャリア方式で伝送された高周波信号s1を基に、分割帯域方向推定部4−1〜Ndで分割帯域毎に到来方向推定されるまでは実施の形態1と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0073】
全帯域方向推定部50は、実施の形態3で説明した動作と同様に、第n番目の分割帯域3−nで算出された(数3)で示される相関行列RをRnと表記したとき(ただし、n=1、...、Nd)、全ての分割帯域3−1〜Ndで算出されたRnを入力とし、(数15)で示されるRnの合成和Raを算出する。そして、例えば(数16)で示されるフーリエ法による空間プロファイルを、θを所定の角度ステップΔθで可変することで空間プロファイルを算出し、空間プロファイルのピークレベルの高い順に所定数M(M≧1)のピーク方向を検出し、全通信帯域でのサブキャリア信号の平均的な到来方向推定を行う。ただし、a(θ)はアレーアンテナ1の素子配置で決まる方向ベクトルであり、例えば素子間隔dの等間隔直線アレーの場合、(数5)のように表すことができる。ここで、λは搬送波の波長であり、θはアレーの法線方向を0°方向としている。また、Hは複素共役転置を表す。
【0074】
方向推定結果選択部51は、全ての分割帯域方向推定部4−1〜Ndの方向推定値Φkmと、それぞれの分割帯域3―mでの空間プロファイル値(または到来方向推定評価関数値)F(Φkm)を用いて、(数17)に示される計算式を用いて角度広がりASを算出する。ここで、m=1、...、Ndである。また、φは(数18)で与えられ、Φkmは、第m番目の分割帯域3−mでの分割帯域方向推定部4−mで検出された全Lm個のパスのうち、第k番目のパスの到来方向を示す。算出された角度広がりASを用いて、角度広がりASが所定値K以下の場合、全帯域方向推定部50の推定値を選択し、サブキャリア送信重み生成部40に出力する。一方、角度広がりASが所定値Kより大きい場合、実施例2の形態と同様に、各分割帯域3−1〜Ndでの分割帯域方向推定部4−1〜Ndの推定値を、サブキャリア送信重み生成部40に出力する。ここで、m=1、...、Ndである。また、角度広がりASの別な算出方法としては、空間プロファイル値(または到来方向推定評価関数値)F(Φkm)の上位を与える方向推定値Φkmのみを用いて、(数17)から角度広がりASを求めても良い。
【0075】
サブキャリア送信重み生成部40は、方向推定結果選択部51の出力を基に送信アレー重みを生成する。角度広がりASが所定値Kより大きい場合、各分割帯域3−1〜Ndでの分割帯域方向推定部4−1〜Ndの推定値が入力されるので、実施例2の形態におけるサブキャリア送信重み生成部40と同様な動作を行うので、ここでは説明を省略する。角度広がりASが所定値K以下の場合、全帯域方向推定部50の推定値が選択されて入力されるので、方向推定値の方向に主ビームを向ける送信アレー重みを生成する。
【0076】
サブキャリア送信指向性形成部41−1〜Nsは、送信データを所定の変調フォーマットで変調された送信サブキャリア信号41−1〜Nsを、アレーアンテナ1の素子数Naに等しい数に分配し、それぞれに対し、送信アレー重みWs=[w、w、...、wna]の要素を乗算して混合器42―1〜Naに出力する。混合器42―1〜Naは、指向性重みづけされたサブキャリア送信指向性形成部41−1〜Nsのアレー素子数分の出力信号をそれぞれ割り当てられた周波数間隔でサブキャリア信号を配置するように混合する。無線送信部43―1〜Naは、混合器42―1〜Naの出力をそれぞれ無線周波数に周波数変換しアレーアンテナ44を構成するアンテナ素子44−1〜Naから送信する。
【0077】
以上のように、本実施の形態により、実施の形態1及び実施の形態2の効果に加え、全分割帯域毎に異なる指向性形成または、すべての分割帯域3に共通な送信指向性形成を、角度広がりASに応じて切り替えることができる。これにより、角度広がりASが小さい場合、すべてのサブキャリア信号に平均的な到来方向を推定することにより、周波数選択性フェージングにより、一部の帯域の受信レベルが低い場合でも、通信帯域全体ではロバストな到来方向推定が可能となり、その結果を用いる指向性送信は、より安定した動作が保証されるという効果が得られ、ユーザ間干渉を抑圧できシステム容量を改善できるという作用を有する。
【0078】
なお、本実施の形態では、全通信帯域のサブキャリア信号を用いた方向推定を行う全帯域方向推定部50を用いたが、全帯域方向推定部50は、分割帯域方向推定部4に用いるサブキャリア信号分割数Nsよりも大きい分割数での方向推定を行う構成でも良い。
【0079】
なお、サブキャリア伝送は、直交周波数分割多重(OFDM)されたサブキャリア信号でも良く、この場合、各サブキャリアがOFDMシンボル区間内で直交する周波数を選択して使用される。また、周波数軸方向に、符号多重拡散されるMC―CDMA方式への適用も可能であり、この場合、符号分割多重されたユーザ毎に、拡散符号の逆拡散後にユーザ信号を抽出後に実施の形態で説明した動作を行う。
【0080】
また、時間軸方向に符号多重されるMC―DS−CDMA方式でも同様に適応が可能であり、この場合、符号分割多重されたユーザ毎に、拡散符号の逆拡散後にユーザ信号を抽出後に実施の形態で説明した動作を行う。
【0081】
また、符号分割多重されたユーザが存在する場合、サブキャリア送信重み生成部40は、所望ユーザの方向にサブキャリア信号群毎に方向推定結果選択部51による選択された推定方向に主ビームを有し、多重されている他ユーザの方向にはヌルを形成するアレー重みを生成することで、符号拡散多重されているユーザ間の干渉を低減させるビーム形成機能を付加してもよい。
【0082】
本発明の適応アンテナ無線通信装置は、マルチキャリア伝送された高周波信号を受信する複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナと、上記アンテナ素子毎に受信された高周波信号を複数のサブキャリア信号に分波する分波器と、上記マルチキャリア伝送される全通信帯域をNd個(ただし、Ndは2以上、かつ、マルチキャリア伝送に用いられるサブキャリア数以下の自然数)に分割し、各分割帯域に属するサブキャリア信号群を用いて電波の到来方向推定を行うNd個の分割帯域方向推定部と、上記分割帯域毎に上記分割帯域方向推定部の推定方向に指向性ビームを有するアレー重みを生成する分割帯域アレー重み生成部と、上記分割帯域毎に生成された上記アレー重みを対応する上記分割帯域内に属するそれぞれのサブキャリア信号に乗算合成することで指向性形成するサブキャリア指向性形成部と、上記サブキャリア指向性形成部の出力を用いてデータ復調する復調部とを具備することを特徴とし、分割された帯域内のサブキャリア信号群の到来方向推定が可能であり、方向推定結果に基づいた指向性受信ができるという作用を有する。
【0083】
また、上記適応アンテナ無線通信装置は、分割帯域方向推定部は、サブキャリア信号に埋め込まれた既知のパイロット信号を用いて、入力された各サブキャリア信号とのパイロット信号相関値を算出し、異なるアンテナ素子で受信されたサブキャリア信号間で算出された上記パイロット信号相関値の相関値を基に到来方向推定を行うことを特徴とし、パイロット相関値の位相を基準とした方向推定ができるという作用を有する。
【0084】
また、上記適応アンテナ無線通信装置は、分割帯域方向推定部は、サブキャリア信号群に属するサブキャリア数がL個で、列ベクトルVの第m番目の要素を、第k番目のサブキャリア信号における第m番目のアンテナ素子でのパイロット信号相関値とし、Hを複素共役転置演算子とした場合、R=V+V+・・・+Vとして表せる相関行列Rを用いて到来方向推定を行うことを特徴とし、サブキャリア信号群の到来方向を平均した方向を精度よく検出できるという作用を有する。
【0085】
また、上記適応アンテナ無線通信装置は、分割帯域方向推定部は、サブキャリア信号群に属するサブキャリア数がL個で、その第k番目のサブキャリア信号における第m番目のアンテナ素子でのパイロット信号相関値を第m番目の要素にもつ列ベクトルをV、Vkxを列ベクトルVの第x番目の要素(ただし、xはアンテナ素子数以下の自然数)とし、*を複素共役転置演算子とした場合、z=V1x+V2x+・・・+VLxとして表せる相関ベクトルzを用いて到来方向推定を行うことを特徴とし、サブキャリア信号群の到来方向を平均した方向を精度よく検出できるという作用を有する。
【0086】
また、上記適応アンテナ無線通信装置は、分割帯域方向推定部は、サブキャリア信号に埋め込まれた既知のパイロット信号を用いて、入力された各サブキャリア信号との相互相関演算を行うことで遅延プロファイルを算出し、上記遅延プロファイルから複数のパス到来タイミングを検出し、上記到来パスタイミング毎に、異なるアンテナ素子で受信されたサブキャリア信号間で算出された上記パイロット信号相関値の相関値を基に到来方向推定を行うことを特徴とし、サブキャリア信号毎に含まれるマルチパス波の到来方向を推定できるという作用を有する。
【0087】
また、上記適応アンテナ無線通信装置は、分割帯域方向推定部は、サブキャリア信号群に属するサブキャリア数がL個で、その第k番目のサブキャリア信号における第p番目の到来パス(全到来パス数はS)の第m番目のアンテナ素子でのパイロット信号相関値をm番目の要素にもつ列ベクトルをV(p)、Hを複素共役転置演算子とした場合、
【数19】

として表せる相関行列Rを用いて到来方向推定を行うことを特徴とし、サブキャリア信号毎に含まれるマルチパス波の到来方向を推定を精度よく行えるという作用を有する。
【0088】
また、上記適応アンテナ無線通信装置は、分割帯域方向推定部は、サブキャリア信号群に属するサブキャリア数がL個で、その第k番目のサブキャリア信号における第p番目の到来パス(全到来パス数はS)の第m番目のアンテナ素子でのパイロット信号相関値をm番目の要素にもつ列ベクトルをV(p)、Vkx(p)を列ベクトルV(p)のx番目の要素(ただし、xはアンテナ素子数以下の自然数)とし、*を複素共役転置演算子とした場合、
【数20】

として表せる相関ベクトルzを用いて到来方向推定を行うことを特徴とし、サブキャリア信号毎に含まれるマルチパス波の到来方向を推定を精度よく行えるという作用を有する。
【0089】
また、上記適応アンテナ無線通信装置は、分割帯域方向推定部は、相関行列Rを用いて、MUSIC法、ESPRIT法、CAPON法、あるいはフーリエ法のいずれかの手法を用いて到来方向推定を行うことを特徴とし、様々な到来方向推定手法を適用することができるという作用を有する。
【0090】
また、上記適応アンテナ無線通信装置は、分割帯域方向推定部は、相関行列Rに空間スムージング処理を適用後に、MUSIC法、ESPRIT法、CAPON法、あるいはフーリエ法のいずれかの手法を用いて到来方向推定を行うことを特徴とし、相関波が存在する場合でも推定精度を確保できるという作用を有する。
【0091】
また、上記適応アンテナ無線通信装置は、分割帯域方向推定部は、相関行列Rにユニタリ変換処理を適用後に、MUSIC法、ESPRIT法、CAPON法、あるいはフーリエ法のいずれかの手法を用いて到来方向推定することを特徴とし、アレーアンテナが等間隔直線アレーの場合、方向ベクトルを実数化することができるため、演算処理量を低減できるという作用を有する。
【0092】
また、上記適応アンテナ無線通信装置は、全通信帯域でのサブキャリア信号を用いて到来方向推定を行う全帯域方向推定部と、Nd個の分割帯域方向推定部での方向推定結果の偏差が所定値以下の場合、上記全帯域方向推定部の推定値を選択して出力し、偏差が所定値より大きい場合、上記分割帯域方向推定部の推定値を出力する方向推定結果選択部と、上記方向推定結果選択部の出力を用いてアレー重みを生成する分割帯域アレー生成部とを具備することを特徴とし、帯域内での到来方向の分散から適応的に指向性制御方法を切り替えることができるという作用を有する。
【0093】
また、上記適応アンテナ無線通信装置は、全通信帯域でのサブキャリア信号を用いて到来方向推定を行う全帯域方向推定部と、上記全帯域方向推定部で算出される空間プロファイルから角度広がりを検出し、角度広がりが所定値以下の場合、上記全帯域方向推定部の推定値を選択して出力し、角度広がりが所定値より大きい場合、上記分割帯域方向推定部の推定値を出力する方向推定結果選択部と、上記方向推定結果選択部の出力を用いてアレー重みを生成する分割帯域アレー生成部とを具備することを特徴とし、帯域内での到来方向の広がりから適応的に指向性制御方法を切り替えることができるという作用を有する。
【0094】
また、上記適応アンテナ無線通信装置は、時間分割デュプレックス(TDD)方式または周波数分割デュプレックス(FDD)方式でマルチキャリア伝送される無線システムにおいて、方向推定結果選択部で選択された推定方向結果を基に分割帯域毎に1つの送信指向性ビームを形成する送信アレー重みを算出するサブキャリア送信重み生成部と、上記分割帯域毎に上記送信アレー重みを送信サブキャリア信号に乗算することで指向性ビーム送信するサブキャリア送信指向性形成部とを具備することを特徴とし、帯域内での到来方向の広がりから適応的に指向性制御方法を切り替えることができるという作用を有する。
【0095】
また、上記適応アンテナ無線通信装置は、時間分割デュプレックス(TDD)方式でマルチキャリア伝送される無線システムにおいて、分割帯域毎の分割帯域アレー重み生成部で生成されたアレー重みを送信アレー重みとして用いるサブキャリア送信重み生成部と、上記分割帯域毎に共通な送信アレー重みを用いて指向性ビームを送信するサブキャリア送信指向性形成部とを具備することを特徴とし、分割帯域毎に受信指向性と同じ指向性を用いて送信ができるという作用を有する。
【0096】
また、上記適応アンテナ無線通信装置は、時間分割デュプレックス(TDD)方式または周波数分割デュプレックス(FDD)方式でマルチキャリア伝送される無線システムにおいて、分割帯域毎の分割帯域方向推定部での推定方向結果から、上記分割帯域のうち最大受信電力与える推定方向に送信指向性ビームを形成する送信アレー重みを算出するサブキャリア送信重み生成部と、上記送信アレー重みを用いて全分割帯域で共通の指向性ビームを送信するサブキャリア送信指向性形成部とを具備することを特徴とし、分割帯域の中で最大受信電力を与えるパス方向に送信ビームを形成できるという作用を有する。
【0097】
また、上記適応アンテナ無線通信装置は、時間分割デュプレックス(TDD)方式または周波数分割デュプレックス(FDD)方式でマルチキャリア伝送される無線システムにおいて、分割帯域毎の分割帯域方向推定部での推定方向結果から推定方向の偏差を算出し、偏差が所定値以下の場合には上記分割帯域方向推定部で得られるすべての方向推定値の平均方向に、所定値より大きい場合には上記分割帯域から所定数の受信電力上位を与える推定方向にマルチビームとなる送信指向性ビームを形成する送信アレー重みを算出するサブキャリア送信重み生成部を具備することを特徴とし、帯域内での到来方向の広がりから適応的に指向性制御方法を切り替えることができるという作用を有する。
【0098】
また、上記適応アンテナ無線通信装置は、サブキャリア伝送は、直交周波数分割多重(OFDM)されたサブキャリア信号であること特徴とし、周波数使用効率の高い変調方式で伝送できるという作用を有する。
【0099】
また、上記適応アンテナ無線通信装置は、サブキャリア伝送は、周波数軸方向に符号拡散多重することでユーザ多重されたサブキャリア信号であることを特徴とし、符号拡散多重によりユーザ多重ができるシステムに適用できる作用を有する。
【0100】
また、上記適応アンテナ無線通信装置は、サブキャリア伝送は、時間軸方向に符号拡散多重することでユーザ多重されたサブキャリア信号であることを特徴とし、符号拡散多重によりユーザ多重ができるシステムに適用できる作用を有する。
【0101】
また、上記適応アンテナ無線通信装置は、符号拡散多重によりユーザ多重されたサブキャリア信号を用いたサブキャリア伝送の場合、多重されたユーザ毎に送信アレー重みあるいは受信アレー重みを生成し、指向性受信を行うことを特徴とし、多重ユーザ毎に分割帯域毎に最適な指向性制御が可能となる作用を有する。
【0102】
また、上記適応アンテナ無線通信装置は、分割帯域アレー重み生成部は、対応する分割帯域での分割帯域方向推定部の方向推定結果に指向性ビームを有し、多重されている他ユーザの推定方向にはヌルを形成するアレー重みを生成することを特徴とし、多重ユーザ毎に分割帯域毎に干渉方向にヌルを形成した最適な指向性受信が可能となる作用を有する。
【0103】
また、上記適応アンテナ無線通信装置は、サブキャリア送信重み生成部は、所望ユーザ方向に指向性ビームを有し、多重されている他ユーザ方向にはヌルを形成する送信分割帯域アレー重みを生成することを特徴とし、多重ユーザ毎に分割帯域毎に干渉方向にヌルを形成した最適な指向性送信受信が可能となる作用を有する。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の実施の形態1における無線通信装置の構成を示すブロック図
【図2】実施の形態1における分割帯域方向推定部の詳細な構成を示すブロック図
【図3】実施の形態1における分割帯域方向推定部での空間プロファイル算出結果を示す図
【図4】実施の形態1における分割帯域方向推定部の別な構成を示すブロック図
【図5】本発明の実施の形態2における無線通信装置の構成を示すブロック図
【図6】本発明の実施の形態3における無線通信装置の構成を示すブロック図
【図7】本発明の実施の形態4における無線通信装置の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0105】
1 アレーアンテナ
1―1〜Na アンテナ素子
2―1〜Na 分波器
3―1〜Nd 分割帯域
4―1〜Nd 分割帯域方向推定部
5―1〜Nd 分割帯域アレー重み生成部
6―1〜Nd サブキャリア指向性形成部
7 復調部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチキャリア伝送される通信帯域を分割した分割帯域毎に、送信指向性ビームを形成するための1つの送信アレー重みを生成する送信重み生成部と、
前記分割帯域毎に生成された前記送信アレー重みを送信サブキャリア信号に乗算することで、重みづけがなされた送信信号を生成するサブキャリア送信指向性形成部と、
前記重みづけがなされた送信信号を送信するための複数のアンテナ素子から構成されるアレーアンテナと
を具備することを特徴とする適応アンテナ無線通信装置。
【請求項2】
前記送信重み生成部は、
全通信帯域に共通なアレー重み、あるいは、分割帯域内で共通なアレー重みのどちらかを出力することを特徴とする請求項1記載の適応アンテナ無線通信装置。
【請求項3】
マルチキャリア伝送される通信帯域を分割した分割帯域毎に、複数の送信指向性ビームを形成するための送信アレー重みを生成するサブキャリア送信重み生成部と、
前記分割帯域毎に生成された前記送信アレー重みを送信サブキャリア信号に乗算することで、複数の指向性ビームが形成された送信信号を生成するサブキャリア送信指向性形成部と、
前記指向性ビームが形成された送信信号を送信するための複数のアンテナ素子から構成されるアレーアンテナと
を具備することを特徴とする適応アンテナ無線通信装置。
【請求項4】
マルチキャリア伝送される通信帯域を分割した分割帯域毎に、送信指向性ビームを形成するための1つの送信アレー重みを生成し、
前記分割帯域毎に生成された前記送信アレー重みを送信サブキャリア信号に乗算することで、重みづけがなされた送信信号を生成し、
前記重みづけがなされた送信信号を複数のアンテナ素子から構成されるアレーアンテナを用いて送信する
適応アンテナ無線通信方法。
【請求項5】
前記送信アレー重みとして、全通信帯域に共通なアレー重み、あるいは、分割帯域内で共通なアレー重みのどちらかを用いる請求項4記載の適応アンテナ無線通信方法。
【請求項6】
マルチキャリア伝送される通信帯域を分割した分割帯域毎に、複数の送信指向性ビームを形成するための送信アレー重みを生成し、
前記分割帯域毎に生成された前記送信アレー重みを送信サブキャリア信号に乗算することで、複数の重みづけがなされた送信信号を形成し、
前記重みづけがなされた送信信号を複数のアンテナ素子からなるアレーアンテナを用いて送信する
適応アンテナ無線通信方法。
【請求項7】
マルチキャリア伝送された信号を受信する複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナと、
前記アンテナ素子毎に、受信された信号を複数のサブキャリア信号に分波する分波器と、
前記全通信帯域を複数の分割帯域に分割し、サブキャリア信号群を含む各分割帯域毎に、該分割帯域に属するサブキャリア信号群に含まれる複数のサブキャリアを用いて到来方向推定を行い、1つのアレー重みを生成する分割帯域アレー重み生成部と、
前記分割帯域毎に生成された前記アレー重みを、前記複数のサブキャリア信号に乗算合成するサブキャリア指向性形成部と、
前記サブキャリア指向性形成部の出力信号を復調する復調部と
を具備することを特徴とする適応アンテナ無線通信装置。
【請求項8】
前記分割帯域アレー重み生成部は、既知のパイロット信号と、入力された前記分割帯域内に属するサブキャリア信号群に含まれるパイロット信号とのパイロット信号相関値を算出し、
前記各分割帯域毎に算出された前記パイロット信号相関値の相関値を基に、前記分割帯域毎にアレー重みを生成することを特徴とする請求項7記載の適応アンテナ無線通信装置。
【請求項9】
前記分割帯域アレー重み生成部は
全通信帯域に共通なアレー重み、あるいは、分割帯域内で共通なアレー重みのどちらかを出力することを特徴とする請求項7又は8記載の適応アンテナ無線通信装置。
【請求項10】
マルチキャリア伝送された信号を複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナを用いて受信し、
前記アンテナ素子毎に、受信された信号を複数のサブキャリア信号に分波し、
前記マルチキャリア伝送される全通信帯域を複数の分割帯域に分割し、サブキャリア信号群を含む各分割帯域毎に、該分割帯域に属するサブキャリア信号群に含まれる複数のサブキャリアを用いて到来方向推定を行い、1つのアレー重みを生成し、
前記分割帯域毎に生成された前記アレー重みを、前記複数のサブキャリア信号に乗算合成し、
前記合成された信号を復調する
適応アンテナ無線通信方法。
【請求項11】
前記分割帯域毎のアレー重みの生成において、既知のパイロット信号と、入力された前記分割帯域内に属するサブキャリア信号群に含まれるパイロット信号とのパイロット信号相関値を算出し、
前記各分割帯域毎に算出された前記パイロット信号相関値の相関値を基に、前記分割帯域毎にアレー重みを生成する請求項10記載の適応アンテナ無線通信方法。
【請求項12】
前記分割帯域毎のアレー重みの生成において、全通信帯域に共通なアレー重み、あるいは、分割帯域内で共通なアレー重みのどちらかを生成する請求項10又は11記載の適応アンテナ無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−312228(P2008−312228A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182463(P2008−182463)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【分割の表示】特願2002−283194(P2002−283194)の分割
【原出願日】平成14年9月27日(2002.9.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】