遮水シートの施工方法および遮水シート施工装置
【課題】遮水シート同士の継手構造が多少複雑である場合でも確実に施工することができ、遮水性能の信頼性が高く経済的である継手構造を適用させることを目的とする。
【解決手段】溝等2の中に遮水シート3を設置する遮水シートの施工方法において、溝等2の中に入れられた遮水シート3のロール部分3cを溝等2に沿って移動させることで、ロール状の遮水シート3を展張し、ロール内側のシート端3aをロール移動方向の反対方向に向けて溝等2に沿って回動させることで遮水シート3の端部を折り返えしてシート端3aを溝等2の外に引き上げ、溝等2の外で、先行して設置された遮水シート3のシート端3aに、新たな遮水シートのロール外側のシート端を継手し、その後、先行して設置された遮水シート3のシート端3a及び新たな遮水シートを下方向に回動させることで、遮水シート3の折り返された端部を元に戻すとともに新たな遮水シートを溝等2の中に入れる。
【解決手段】溝等2の中に遮水シート3を設置する遮水シートの施工方法において、溝等2の中に入れられた遮水シート3のロール部分3cを溝等2に沿って移動させることで、ロール状の遮水シート3を展張し、ロール内側のシート端3aをロール移動方向の反対方向に向けて溝等2に沿って回動させることで遮水シート3の端部を折り返えしてシート端3aを溝等2の外に引き上げ、溝等2の外で、先行して設置された遮水シート3のシート端3aに、新たな遮水シートのロール外側のシート端を継手し、その後、先行して設置された遮水シート3のシート端3a及び新たな遮水シートを下方向に回動させることで、遮水シート3の折り返された端部を元に戻すとともに新たな遮水シートを溝等2の中に入れる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中遮水壁を構成する遮水シートを設置するための遮水シートの施工方法およびその施工方法に用いられる遮水シート施工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば産業廃棄物の最終処分場などでは、汚染物の流出を防止するために遮水壁で最終処分場を囲み、外部と仕切る必要がある。遮水壁としては、その地盤の透水性が高い場合や地盤の地耐力が低い場合、簡単且つ高い水密性を確保できる高密度ポリエチレン製の遮水シート等を使用した遮水シート工法が採用される場合が多い。遮水シート工法は、地盤に所定深さの溝を掘削するとともにこの溝内をソイルセメント等で満たした後、溝の中に遮水シートを設置する工法である。なお、地盤を所定長さ、所定深さで攪拌して面状(壁状)の地盤攪拌体を造成し、この地盤攪拌体の中に遮水シートを設置してもよい。
【0003】
上記した遮水シート工法における従来の遮水シートの施工方法としては、まず、予め遮水シートの一端に雄形のシートジョイナーを付設するとともに他端に雌形のシートジョイナーを付設しておく。そして、遮水シートをロール状に巻き、そのロール状の遮水シートを、地盤に形成された溝の中に挿入する。その後、ロール状の遮水シートから遮水シートを引き出しつつロール状の遮水シートのロール部分を溝方向に移動させて遮水シートを展張させる。次いで、同様にロール状に巻かれた新たな遮水シートを溝の中に挿入する。このとき、先行して設置された遮水シートのシートジョイナーに新たな遮水シートのシートジョイナーを嵌合させながら挿入を行う。その後、先行の遮水シートと同様に新たな遮水シートを展張する。この工程を繰り返すことで、互いに継手された複数の遮水シートが溝の中に設置される(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特公平4−33325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の遮水シートの施工方法では、例えば、遮水シートの継手構造として、雄雌のシートジョイナーが密着した状態で嵌合される継手構造や、雄雌のシートジョイナーの嵌合箇所に止水材を介在させる継手構造を適用すると、ソイルセメント等で満たされた溝の中や地盤攪拌体の中は作業性が悪いため、継手作業が困難であり、施工できない場合もある。したがって、従来の遮水シートの施工方法では、作業性を考慮して簡易的な継手構造にする必要があるが、簡易的な継手構造にすると、遮水性能をソイルセメントに期待しなければならず、遮水性能の信頼性が低いとともに経済性も悪いという問題がある。
【0005】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、遮水シート同士の継手構造が多少複雑である場合でも確実に施工することができ、遮水性能の信頼性が高く経済的である継手構造を適用することができる遮水シートの施工方法、およびその施工方法を実現することができる遮水シート施工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、地盤に形成された溝、又は地盤を連続的に攪拌して造成された地盤攪拌体の中に、複数の遮水シートを互いに継手させた状態でそれぞれ設置する遮水シートの施工方法において、ロール状に巻かれた状態で前記溝又は地盤攪拌体内に入れられた前記遮水シートのロール部分を前記溝又は地盤攪拌体に沿って移動させることで、ロール状に巻かれた前記遮水シートを展張し、ロール内側にあった前記遮水シートの一方のシート端をロール移動方向の反対方向に向けて前記溝又は地盤攪拌体に沿って回動させることで、該遮水シートの端部を折り返えし、前記一方のシート端を前記溝又は地盤攪拌体の外に引き上げ、該溝又は地盤攪拌体の外で、先行して設置された前記遮水シートの前記一方のシート端に、ロール状に巻かれた新たな遮水シートのロール外側にある他方のシート端を継手し、その後、先行して設置された前記遮水シートの前記一方のシート端および前記新たな遮水シートを下方向に回動させることで、先行して設置された前記遮水シートの折り返された端部を元に戻すとともに前記新たな遮水シートを前記溝又は地盤攪拌体内に入れることを特徴としている。
【0007】
このような特徴により、溝又は地盤攪拌体の中でロール状のものを展張することで遮水シートが溝又は地盤攪拌体の中に設置されるとともに、遮水シート同士の継手作業が溝又は地盤攪拌体の外で行われるため、継手作業の作業効率が向上する。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の遮水シートの施工方法において、前記遮水シートの前記一方のシート端には、雄型又は雌型の第1のジョイント冶具が付設され、前記遮水シートの前記他方のシート端には、前記第1のジョイント冶具と対を成す雌型又は雄型の第2のジョイント冶具が付設されており、前記溝又は地盤攪拌体の外で、先行して設置された前記遮水シートの前記一方のシート端と前記新たな遮水シートの前記他方のシート端とを継手する際、先行して設置された前記遮水シートの前記第1のジョイント冶具と前記新たな遮水シートの前記第2のジョイント冶具とを嵌合させるとともに、その嵌合箇所に止水材を介在させることを特徴としている。
【0009】
このような特徴により、第1、第2のジョイント冶具同士の嵌合作業が溝又は地盤攪拌体の外で行われることで、第1、第2のジョイント冶具の間に止水材を適正に介在させることが可能であり、そして、この止水材によって継手箇所の止水性が確保される。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の遮水シートの施工方法に用いられる遮水シート施工装置であって、前記溝又は地盤攪拌体の外に位置する回転軸を中心に前記溝又は地盤攪拌体に沿って回転可能に設けられているとともにロール状に巻かれた前記遮水シートを引き出し展張可能に保持する保持部材と、該保持部材を前記溝又は地盤攪拌体に沿って水平方向に移動させる移動手段と、前記保持部材を前記溝又は地盤攪拌体に沿って回動させる回動手段とが備えられ、前記保持部材には、前記溝又は地盤攪拌体内で展張された前記遮水シートの一方のシート端が係止されていることを特徴としている。
【0011】
このような特徴により、ロール状の遮水シートを展張可能に保持した保持部材が、溝又は地盤攪拌体の中に入れられ、この保持部材が移動手段によって水平方向に動かされることで、ロール状の遮水シートが溝又は地盤攪拌体の中で展張される。また、遮水シートを展張した後に、遮水シートの一方のシート端が係止されている保持部材を回動手段によって溝又は地盤攪拌体に沿って回動させることで、保持部材とともに一方のシート端が回動し、遮水シートの端部が折り返えされ、一方のシート端が溝又は地盤攪拌体の外に引き上げられる。さらに、保持部材を一方のシート端から取り外してロール状に巻かれた新たな遮水シートに取り付けるとともに、先行して設置された遮水シートの一方のシート端と新たな遮水シートの他方のシート端とを継手し、その後、保持部材を回動手段によって溝又は地盤攪拌体に沿って回動させることで、保持部材とともに、先行して設置された遮水シートの一方のシート端および新たな遮水シートが下方側にそれぞれ回動し、折り返された遮水シートの一方側の端部が元に戻されるとともに、新たな遮水シートが溝又は地盤攪拌体内に入れられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る遮水シートの施工方法によれば、ロール状の遮水シートを溝又は地盤攪拌体の中で展張することで遮水シートが設置されるとともに、遮水シート同士の継手作業が溝又は地盤攪拌体の外で行われることで継手作業の作業効率が向上するため、遮水シート同士の継手構造が多少複雑である場合でも確実に施工することができ、これによって、遮水性能の信頼性が高く経済的である継手構造を採用することができる。
【0013】
また、遮水シートの一方のシート端に第1のジョイント冶具を付設させ、他方のシート端に第2のジョイント冶具を付設させ、遮水シート同士を継手する際、先行して設置された遮水シートの第1のジョイント冶具と新たな遮水シートの第2のジョイント冶具とを嵌合させるとともに、その嵌合箇所に止水材を介在させることで、継手箇所の止水性が確保され、これによって、継手箇所の遮水性能についての信頼性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明に係る遮水シート施工装置によれば、溝又は地盤攪拌体の中で展張された遮水シートの一方のシート端を回動させること等が可能であり、上記した遮水シートの施工方法を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る遮水シートの施工方法および遮水シート施工装置の実施の形態について、図面に基いて説明する。なお、図1は遮水シート3を用いて地盤G内に遮水壁1を構築するときの
【0016】
まず、遮水シート3を用いて地盤G内に構築される遮水壁1の構成について説明する。
【0017】
図1は遮水壁1を表す立断面図である。図1に示すように、遮水壁1は、地盤Gを所定長さ、所定深さHで攪拌することで地盤G内に面状(壁状)に鉛直に造成された地盤攪拌体2と、地盤攪拌体2内に鉛直にそれぞれ埋設された複数の遮水シート3…とから構成されている。
【0018】
地盤攪拌体2は、地盤Gに水やベントナイト、フライアッシュ等の添加材を加えて攪拌したものであり、攪拌当初には流動性を有するものである。添加材としては、セメント等の固化材も含まれるが、これらの固化材を加えれば、遮水シート展張後に時間の経過とともに地盤攪拌体が流動性を失って固化するので、展張した遮水シートが早期に安定する。なお、地下水が高い地盤の場合は、これらの添加材を加えないで攪拌するだけで流動性を有することがあり、この場合は添加材を加えないこともある。また、地下水が低い地盤の場合は、固化材を加えなくても、脱水によって流動性を失い固化状態となることもあり、この場合は固化材を加えないこともある。
【0019】
遮水シート3は、例えばフレキシブルポリマーアロイ製のシート等であり、高い水密性を有するとともに、弾力性を有する柔らかな材質のものからなり、さらに、地盤攪拌体2内に設置する際に破損しない程度の強度及び厚さを有するものである。
【0020】
図2は遮水シート3,3同士の継手部分を表す拡大平面図である。図1,図2に示すように、鉛直(深さ)方向に延在する遮水シート3の側端のうち、一方のシート端(以下、第1シート端3aと記す。)には、その第1シート端3aに沿って延在する雄ジョイント4(第1のジョイント冶具)が付設されており、他方のシート端(以下、第2シート端3bと記す。)には、その第2シート端3bに沿って延在する雌ジョイント5(第2のジョイント冶具)が付設されている。雄ジョイント4と雌ジョイント5とは、互いに嵌合される一対のジョイント冶具であり、雄ジョイント4の先端部4aが雌ジョイント5の溝状の凹部5aの中に嵌め込まれることで連結される継手構造である。隣接する遮水シート3,3同士は、一方の遮水シート3の第1シート端3aに付設された雄ジョイント4と、他方の遮水シート3の第2シート端3bに付設された雌ジョイント5とが嵌合されることで継手されている。
【0021】
また、雄ジョイント4と雌ジョイント5との嵌合箇所には、止水性能を発揮する止水材6が介在されている。止水材6は、雄ジョイント4や雌ジョイント5の延在方向に延在する例えばゴム等の弾性材料からなる棒状の部材であり、雌ジョイント5の凹部5aの中に配置され、雌ジョイント5の凹部5aの内側面と雄ジョイント4の先端部4aとの間に介在されている。
【0022】
図3は地盤攪拌体2内に入れるときの遮水シート3の状態を表す断面図である。図3に示すように、地盤攪拌体2内に入れるときの遮水シート3は、第1シート端3aを内側にして(第2シート端3bを外側にして)ロール状に巻かれた状態になっている。具体的には、遮水シート3は、断面形状C形の円筒形の軸芯鋼管9に巻き付けられている。軸芯鋼管9には、軸線方向に延在するスリット9aが形成されており、スリット9aから軸芯鋼管9内に、第1シート端3aに付設された雄ジョイント4が差し込まれている。スリット9aの幅寸法は、雄ジョイント4の基端部4bの厚さよりも大きくて先端部4aの厚さよりも小さくなっており、軸芯鋼管9内にある雄ジョイント4が係止されてスリット9aから引き抜きできない状態になっている。また、軸芯鋼管9は、少なくとも一方端が開放されており、軸芯鋼管9と雄ジョイント4とを軸線方向に相対移動させることで取り外し可能になっている。
【0023】
次に、地盤Gに上記した地盤攪拌体2を造成する際に使用する設備について説明する。
【0024】
図4は地盤攪拌体2を造成する際の施工システムと施工機械を表す図である。図4に示すように、地盤攪拌体2を造成する際は、セメントミルク等の液状の添加材を製造する添加材製造手段10と、製造された添加材を所定量だけ地盤攪拌体2内に送る添加材流入手段11と、地盤Gと添加材とを攪拌混合する地盤攪拌機12と、残土の搬出を行うバックホウ等の掘削機13とが使用される。
【0025】
添加材製造手段10は、サイロ14,スラリープラント15,水槽16及び発電機17から構成されており、添加材製造手段10によって、液状の添加材が製造されるとともに製造された添加材が添加材流入手段11に送られる。添加材流入手段11はグラウトポンプ18,流量計19及び空気圧縮機20から構成されており、添加材流入手段11によって、添加材は地盤攪拌機12が攪拌している地盤G内に圧送される。なお、この添加材製造手段10は、セメント等の固化材に替えてベントナイト等の添加材をスラリー状にするのにも用いられる。
【0026】
図5は地盤攪拌機12を表す斜視図である。図5に示すように、地盤攪拌機12は、ベースマシン51に可動アーム50が備えられ、この可動アーム50にフレーム52が取り付けられた概略構成からなる。このフレーム52は、上部には油圧モータ等の原動機に連結された駆動輪53と、下部には従動輪54を有し、この駆動輪53と従動輪54との間にエンドレスチェーン55が巻き掛けられ、エンドレスチェーン55は駆動輪53の駆動回転によって駆動輪53と従動輪54との間を周回するようになっている。また、エンドレスチェーン55は、その全周方向外側に一定間隔で攪拌羽根56を有している。この攪拌羽根56の周回によって、地盤Gが攪拌され、添加材や固化材を添加すれば、地盤Gが添加材や固化材とともに攪拌混合され、セメントであれば地盤攪拌体2はソイルセメントとなる。
【0027】
次に、地盤G内に造成された地盤攪拌体2内に複数の遮水シート3…を設置する遮水シート施工装置30について説明する。
【0028】
図6,図7は遮水シート3を施工する遮水シート施工装置30を表す図である。図6,図7に示すように、遮水シート施工装置30は、ロール状に巻かれた遮水シート3を保持部材31で保持し、このロール状の遮水シート3を地盤攪拌体2内で展張させて遮水シート3を設置する装置であり、地盤G上を走行可能な重機である。遮水シート施工装置30には、地盤G上を走行するベースマシン33(移動手段)と、ベースマシン33に装備された略鉛直に立設されたマスト部34と、マスト部34に沿って上下動する上下動部32と、上下動部32に対して回転軸49で軸支されて鉛直方向に回転可能に取り付けられているとともにロール状の遮水シート3を保持する保持部材31と、上下動部32を上下動させて保持部材31を昇降させる昇降機構36と、保持部材31を地盤攪拌体2に沿って鉛直回転させる回動機構37(回動手段)とが備えられている。
【0029】
図8は保持部材31を表す側面図であり、図9は保持部材31の下端部を表す拡大側面図であり、図10は保持部材31の上部を表す拡大側面図である。図7,図8,図9,図10に示すように、保持部材31は、ロール状に巻かれた遮水シート3を引き出し展張可能(軸回転可能)に保持する部材であり、保持部材31の上端部は、地盤攪拌体2の外(地盤攪拌体2の上方)に位置する回転軸49を介して上下動部32に取り付けられ、保持部材31は、回転軸49を中心にして鉛直回転可能に設けられている。また、保持部材31には、矩形鋼管等からなるロッド状の本体部60が備えられており、この本体部60の下端側面には、ロール状の遮水シート3が載せられるブラケット状の受け部63が設けられている。受け部63は、本体部60の軸線に対して直交して突設されており、その上面には、開放された軸芯鋼管9の下端に回転自在に挿嵌される突起63aが形成されている。
【0030】
また、軸芯鋼管9上端には、軸芯延長部材64が継手されている。具体的には、軸芯延長部材64の下端には軸芯鋼管9上端に回転拘束状態で嵌合する嵌合孔64aが形成され、この嵌合孔64a内に軸芯鋼管9の上端が差し込まれることで継手されている。また、軸芯延長部材64の上部には、回転自在なベアリング部64bが付設されている。
【0031】
図11は図10に示すA−A間の断面図であり、図12は図10に示すB−B間の断面図である。図10,図11,図12に示すように、本体部60の上部には、軸芯鋼管9の上端に継手された軸芯延長部材64を着脱自在に把持する把持機構65が設けられている。把持機構65は、軸芯延長部材64のベアリング部64bを把持する上部把持機構66と、軸芯延長部材64の下部を直接把持する下部把持機構67とからなっており、上部把持機構66で軸芯延長部材64のベアリング部64bを把持している時には軸芯鋼管9は回転自在に保持され、下部把持機構67で軸芯延長部材64の下部を把持している時には軸芯鋼管9は回転拘束状態(回転しない)で保持される。
【0032】
図10,図11に示すように、上部把持機構66は、本体部60から張り出して取り付けられて2枚平行に配置された受けアーム(把持部材)68,68と、これらの受けアーム68,68の間に配置された押えアーム(把持部材)69と、押えアーム69の端部にその一端が取り付けられ、他端が本体部60に取り付けられた伸縮ジャッキ(伸縮機構)70とからなっている。押えアーム69は、L字型形状をしており、一方の辺に相当するところは直線状で、他方の辺に相当する押え部69aはベアリング部64bの円弧形状に合わせて内方に曲がる円弧形状とされ、中間の屈曲部69bにおいて、受けアーム68の基端部付近で受けアーム68に対し回転可能に軸支されている。なお、受けアーム68は、ベアリング部64bを把持する受け部68aが、ベアリング部64bの円弧形状に合わせて円弧形状とされている。
【0033】
図10,図12に示すように、下部把持機構67は、上部把持機構66と同様の構成からなり、本体部60からそれぞれ張り出して取り付けられて2枚平行に配置された受けアーム(把持部材)68´,68´と、これらの受けアーム68´,68´の間に配置された押えアーム(把持部材)69´と、押えアーム69´の端部にその一端が取り付けられ、他端が本体部60に取り付けられた伸縮ジャッキ(伸縮機構)70´とからなっている。押えアーム69は、L字型形状をしており、一方の辺に相当するところは直線状で、他方の辺に相当する押え部69a´は軸芯延長部材64の下部の外周形状に合わせて内方に曲がる円弧形状とされ、中間の屈曲部69b´において、受けアーム68´の基端部付近で受けアーム68´,68´に対し回転可能に軸支されている。なお、受けアーム68´,68´は、軸芯延長部材64を把持する受け部68a´が、軸芯延長部材64の下部の外周形状に合わせて円弧形状とされている。
【0034】
図10,図11,図12に示すように、把持機構65によって軸芯延長部材64を把持する時(取付時)には、上部把持機構66及び下部把持機構67の伸縮ジャッキ70,70´のロッド部70a,70a´をシリンダー部70b,70b´内にそれぞれ縮退させ、押え部69a,69a´と受け部68a,68a´とでベアリング部64bや軸芯延長部材64を挟んでそれぞれ把持する。一方、把持機構65に把持された軸芯延長部材64を開放する時(取外時)には、上部把持機構66及び下部把持機構67の伸縮ジャッキ70,70´のロッド部70a,70a´をシリンダー部70b,70b´から伸長させることで、ベアリング部64bや軸芯延長部材64下部の把持を開放する。
【0035】
図7に示すように、上下動部32は、マスト部34に付設された図示せぬガイドレールに摺動可能に取り付けられた部材であり、後述する昇降機構36のワイヤー41に吊り下げられている。
図6,図7に示すように、昇降機構36は、マスト部34の上端部及びベースマシン33上にそれぞれ付設された上下動用滑車(シーブ)38,38と、ベースマシン33に搭載された上下動用巻上機(ウインチ)39と、ウインチ39によって巻き取られる上下動用のワイヤー41とから構成されている。ワイヤー41は、ウインチ39からベースマシン33上の上下動用のシーブ38を経てマスト部34上端のシーブ38にそれぞれ巻回され、端部が上下動部32に接続されており、上下動部32は、ウインチ39によってワイヤー41を巻き取ることで上昇され、反対に、ウインチ29を開放してワイヤー41を送り出すことで下降される。
【0036】
回動機構37は、マスト部34の上端部及びベースマシン33上にそれぞれ付設された回動用滑車(シーブ)43,43,43と、ベースマシン33に搭載された回動用巻上機(ウインチ)44と、ウインチ44によって巻き取られる回動用のワイヤー45と、地盤G上に設置された滑車架台42とから構成されている。ワイヤー45は、ウインチ44からベースマシン33上の回動用シーブ43及びマスト部34上端の2つのシーブ43,43をそれぞれ経て滑車架台42に巻回され、端部が保持部材31下端の受け部63に接合された被掛止部61に接続されており、保持部材31は、ウインチ44によってワイヤー45を巻き取ることで鉛直方向に回動される。具体的には、ベースマシン33(保持部材31)よりも後方(後述する遮水シート3の移動展張方向の基端側)の位置に滑車架台42を配置した状態で、ウインチ44によってワイヤー45を巻き取ることで、鉛直状態の保持部材31が回転軸49を回転中心にして後方に向かって鉛直回動して、第1シート端3aは地盤攪拌体2内から引き上げられる。一方、ベースマシン33(保持部材31)よりも先方(後述する移動展張方向の先端側)の位置に滑車架台42を配置した状態で、ウインチ44によってワイヤー45を巻き取ることで、水平状態の保持部材31が回転軸49を回転中心にして下方に回転して、第1シート端3aは地盤攪拌体2内に入れられる。
【0037】
次に、上記した地盤攪拌体2を造成する施工システムと施工機械を用いて地盤Gに地盤攪拌体2を造成した後、遮水シート施工装置30を用いて地盤攪拌体2内に遮水シート3を設置し、上記した遮水壁1を構築する施工手順を説明する。
【0038】
まず、所要の機械を現場に搬入して組み立てる機械搬入・組立工程を行う。具体的には、図4に示す添加材製造手段10を構成する機材や、添加材流入手段11を構成する機材、分解された状態の地盤攪拌機12、掘削機13をそれぞれ現場に搬入し、これらの機材等を組み立てて、地盤攪拌体2を造成する際の施工システムをつくる。また、図6,図7に示す遮水シート施工装置30を分解した状態で搬入し、現場で組み立てる。さらに、図1,図3に示す複数の遮水シート3…や軸芯鋼管9、軸芯延長部材64の材料をそれぞれ搬入し、遮水シート3を軸芯鋼管9にロール状に巻き付け、複数のロール状の遮水シート3…を製作しておく。このとき、遮水シート3の両端部に、雄ジョイント4や雌ジョイント5を付設しておく。なお、予め工場等でロール状に巻かれたロール状の遮水シート3を現場に搬入してもよく、その他の機械や設備についても、既に組み立てられたものを現場に搬入してもよい。
【0039】
次に、施工ヤードの造成を行う施工ヤード造成工程を行う。具体的には、図3に示すように、掘削機13で地盤攪拌機12や遮水シート施工装置30が据置・走行する範囲の整地を行うとともに鉄板等を敷設する。
【0040】
次に、地盤Gを所定深さ(遮水壁を設けようとする深さである)で所定長さ(遮水壁を設けようとする長さである)連続的に攪拌し、地盤中に面的な広がりを有する面状の地盤攪拌体2を造成する地盤攪拌体造成工程を行う。ここで地盤攪拌体2の幅は、小さいのに越したことはないが、ロール状の遮水シートを挿入する関係からここでは60cm程度に設定している。また、攪拌にあたっては、攪拌のみの場合、水やベントナイト、フライアッシュ、固化材としてのセメント等の添加材を混入して攪拌混合する場合がある。
【0041】
ここで、添加材を添加する場合の攪拌混合について説明する。具体的には、図4に示すように添加材製造手段10によって所定配合の添加材(必要に応じ固化材を混入してもよい)を製造する。そして、製造された添加材を添加材流入手段11によって地盤Gに混入させつつ、地盤攪拌機12のエンドレスチェーン55を周回させることで攪拌羽根56を周回させて、地盤Gとともに攪拌混合する。このとき、エンドレスチェーン55が巻き掛けられたフレーム52を上下および横方向、即ち深さと長さ方向に移動させることで、所定の深さ、所定の長さで連続する面状で流動状の地盤攪拌体2を造成する。また、このとき、遮水シート3の挿入・展張の作業性を考慮しつつ、地盤攪拌体2の遮水性能を適正に確保するべく、攪拌体のフロー値が所定値になるように流量計19で混入させる添加材の注入量を調整する。具体的には、遮水シート3の挿入・展張の作業性を考慮するとともに、最低限の遮水性能(透水係数10−5cm/sec)を確保するために、攪拌体のテーブルフロー値(JIS R5201−1981「セメントの物理試験方法」による計測値)が130mm以上250mm以下になるように、添加材の注入量を調整し、好ましくはテーブルフロー値が150mm程度になるように調整する。
【0042】
一方、図13(a)に示すように、ロール状の一枚目の遮水シート3を遮水シート施工装置30の保持部材31に保持させるシート保持工程を行う。具体的には、まず、図8,図10に示すように、遮水シート3が巻き付けられている軸芯鋼管9の上端に軸芯延長部材64を継手させ、さらに、図示しないピン等で軸芯鋼管9と軸芯延長部材64とが外れないようにしておく。次に、図10,図11,図12,図13(a)に示すように、遮水シート施工装置30の保持部材31を水平状態に配置しておき、この状態で、遮水シート3の軸芯鋼管9の下端を本体部60下端の受け部63の突起63aに嵌合させるとともに、軸芯延長部材64のベアリング部64bを本体部60上部に設けた上部把持機構66で把持し、さらに下部把持機構67でも軸芯延長部材64を把持する。
【0043】
次に、図13(a),図13(b)に示すように、流動状の地盤攪拌体2内に、保持部材31に保持された1枚目のロール状の遮水シート3を挿入するシート挿入工程を行う。具体的には、まず、図13(a)に示すように、昇降機構36によって上下動部32を上昇させる。このとき、保持部材31は鉛直回転自在になっており、上下動部32が上昇するとともに、保持部材31が鉛直方向に回動して地盤Gの上方で鉛直状態になり、保持部材31に保持されたロール状の遮水シート3も鉛直状態になる。次いで、図13(b)に示すように、遮水シート施工装置30を動かして、保持部材31に保持されたロール状の遮水シート3を地盤攪拌体2の端部上方に配置する。次いで、昇降機構36によって上下動部32を下降させ、保持部材31とともにロール状の遮水シート3を地盤攪拌体2内に挿入する。このとき、地盤攪拌体2の端部に予め鉛直に打設されたロッド状の固定部材27に、ロール状の遮水シート3の外側にある図3に示す雌ジョイント5を固定させる。
【0044】
次に、図14(a)に示すように、ロール状の遮水シート3を地盤攪拌体2内で展張させるシート展張工程を行う。具体的には、図12に示す下部把持機構67を解除した後、ベースマシン33によって遮水シート施工装置30を地盤攪拌体2に沿って固定部材27から離れる方向に水平移動させることで、保持部材31を同様に地盤攪拌体2に沿って固定部材27から離れる方向に水平移動させる。このとき、保持部材31に保持された遮水シート3のロール部分3cは、保持部材31とともに、固定された第2シート端3bから離れる方向に水平移動しながら軸回転し、地盤攪拌体2内で引き出されて(巻きほぐされて)横引き展開される。ロール状の遮水シート3が完全に展張されたところで、ベースマシン33の走行を停止させる。
【0045】
次に、図14(b)に示すように、展張された遮水シート3の第1シート端3a(雄ジョイント4)を、回動機構37によって、保持部材31とともに地盤攪拌体2内から引き上げるシート端引上げ工程を行う。具体的には、図6,図7,図14(b)に示すように、滑車架台42をベースマシン33の後方に配置した状態で、ウインチ44によってワイヤー45を巻き取って保持部材31の下端にワイヤー45を介して牽引力を与え、地盤攪拌体2の外にある回転軸49を回転中心にして、鉛直状態の保持部材31を後方に向けて鉛直回動させる。このとき、保持部材31に掛止されている雄ジョイント4(第1シート端3a)が保持部材31とともに後方に向けて鉛直回動し、これにより、遮水シート3の端部が折り返され、第1シート端3aが地盤攪拌体2内から気中(地盤攪拌体2の外)に引き上げられる。そして、保持部材31(第1シート端3a)が完全に引き上げられて水平に配置されたところでウインチ44を停止して、保持部材31(第1シート端3a)の回動を停止させる。
【0046】
次に、図14(b),図15,図16に示すように、地盤攪拌体2の外で、1枚目の遮水シート3の第1シート端3aと、2枚目の(新たな)遮水シート3´の第2シート端3b´とを継手するとともに、ロール状に巻かれた2枚目の遮水シート3´を保持部材31に保持させるシート継手・保持工程を行う。具体的には、図10,図11,図12,図15に示すように、地盤攪拌体2内から引き上げられた保持部材31の上部把持機構66および下部把持機構67をそれぞれ解除するとともに軸芯鋼管9の上端から軸芯延長部材64を引き抜き、保持部材31から軸芯鋼管9を取り外す。なお、軸芯鋼管9を保持部材31から取り外すとき或いは雄ジョイント4を軸芯鋼管9から取り外すときに遮水シート3の第1シート端3aがずれて地盤攪拌体2内に落下しないように落下防止用として、または、1枚目と2枚目の遮水シート3を継手するときの作業用として、シート押え部材72が取り付けられた継手作業台71を、ヒンジ73を介して本体部60に回動可能に取り付けておくことが好ましい。上記した継手作業台71が備えられることで、前記した取り外し作業や継手作業をする際には、継手作業台71を水平に回動させて、この上に1枚目の遮水シート3の第1シート端3a付近を載せ、遮水シート3の上方からシート押え部材72で固定することことができ、上記作業が行い易くなる。次いで、図15に示すように、軸芯鋼管9を軸線方向にスライドさせ、1枚目の遮水シート3の第1シート端3aに付設された雄ジョイント4から軸芯鋼管9を取り外す。次いで、図16に示すように、1枚目の遮水シート3の雄ジョイント4に、軸芯鋼管9´に巻回された2枚目の遮水シート3´のロール外側にある雌ジョイント5´を嵌合させながら、ロール状の2枚目の遮水シート3´を軸線方向にスライドさせ、1枚目の遮水シート3の第1シート端3aと2枚目の遮水シート3´の第2シート端3b´とを継手させる。このとき、その継手箇所に止水材6を介在させる。なお、この止水材6は、雄ジョイント4の先端部や雌ジョイント5´の内側面に予め接着しておいてもよく、或いは、雄ジョイント4と雌ジョイント5´とを嵌合させる際に、それらの間に配置してもよい。次いで、図10,図11,図12,図16に示すように、1枚目の遮水シート3と同様に、2枚目の遮水シート3´の軸芯鋼管9´上端に軸芯延長部材64を継手させ、軸芯鋼管9´下端を保持部材31の受け部63の突起63aに嵌合させ、軸芯延長部材64のベアリング部64bを上部把持機構66で把持し、さらに下部把持機構67で軸芯延長部材64を把持することで、2枚目の遮水シート3´を保持部材31に保持させる。
【0047】
次に、図17(a)に示すように、1枚目の遮水シート3の第1シート端3aおよび2枚目の遮水シート3´を保持部材31とともに下方に回動させることで、1枚目の遮水シート3の折り返された端部を元に戻すとともに、ロール状の2枚目の遮水シート3´を地盤攪拌体2内に入れるシート入れ工程を行う。具体的には、図6,図7,図17(a)に示すように、滑車架台42をベースマシン33の先方に配置した状態で、ウインチ44によってワイヤー45を巻き取って保持部材31の下端にワイヤー45を介して牽引力を与え、地盤攪拌体2の外にある回転軸49を回転中心にして、水平状態の保持部材31を下方(シート端引上げ工程のときと反対の方向)に向けて鉛直回動させる。このとき、保持部材31に保持されたロール状の2枚目の遮水シート3´、およびその遮水シート3´の第2シート端3b´に継手された1枚目の遮水シート3の第1シート端3aは、保持部材31とともに下方に向けて鉛直回動し、これにより、折り返された遮水シート3の端部は広げられ、1枚目の遮水シート3の第1シート端3aおよび2枚目の遮水シート3´は地盤攪拌体2の中に入れられる。そして、保持部材31(1枚目の遮水シート3の第1シート端3aおよび2枚目の遮水シート3´)が地盤攪拌体2内で鉛直に配置されたところでウインチ44を停止して、保持部材31の回動を停止させる。なお、水平状態の保持部材31を下方に向けて鉛直回動させる方法として、滑車架台42をベースマシン33の後方に配置したままで、ウインチ44によってワイヤー45を巻き戻すことで、保持部材31を下方に鉛直回動させる方法もある。
【0048】
次に、図17(b)に示すように、1枚目の遮水シート3と同様に、2枚目の遮水シート3´について上記したシート展張工程を行うことで、2枚目の遮水シート3´を展張する。その後、上記したシート端引上げ工程、シート継手・保持工程、シート入れ工程、シート展張工程を順次繰り返し行う。
【0049】
上記した構成からなる遮水シート3の施工方法によれば、ロール状の遮水シート3を展張した後、遮水シート3の第1シート端3aを後方に向けて回動させることで、遮水シート3の端部を折り返えして第1シート端3aを地盤攪拌体2の外に引き上げ、その後、地盤攪拌体2の外で、先行の遮水シート3の第1シート端3aに新たな遮水シート3´の第2シート端3bを継手することにより、遮水シート3,3´同士の継手作業の作業効率が向上するため、遮水シート3,3´同士の継手構造(雄ジョイント4,雌ジョイント5)が多少複雑な構造である場合でも確実に施工することができる。これによって、遮水シート3,3´同士の継手構造に、遮水性能の信頼性が高く経済的である継手構造を採用することができる。
【0050】
また、地盤攪拌体2の外で、先行の遮水シート3の第1シート端3aに新たな遮水シート3´の第2シート端3bを継手する際、先行の遮水シート3の第1シート端3aに付設された雄ジョイント4と、新たな遮水シート3´の第2シート端3bに付設された雌ジョイント5とを嵌合させるとともに、その嵌合箇所に止水材6を介在させることにより、止水材6によって継手箇所の止水性が確保される。これによって、遮水シート3,3´同士の継手箇所の遮水性能についての信頼性を向上させることができる。なお、雄ジョイント4と雌ジョイント5との嵌合作業が地盤攪拌体2の外の気中で行われるため、雄ジョイント4と雌ジョイント5との間に止水材6を適正に介在させることが可能である。
【0051】
また、上記した構成からなる遮水シート施工装置30によれば、地盤攪拌体2の外に位置する回転軸49を中心に鉛直方向に回転可能に設けられてロール状の遮水シート3,3´を引き出し展張可能に保持する保持部材31と、この保持部材31を水平方向に移動させるベースマシン33と、保持部材31を鉛直方向に回動させる回動機構37とが備えられていることにより、地盤攪拌体2内のロール状の遮水シート3を展張させること、展張された遮水シート3の第1シート端3aを鉛直方向に回動させること、新たな遮水シート3´に継手させた後、先行の遮水シート3の第1シート端3aおよび新たなロール状の遮水シート3´を鉛直方向に回動させて地盤攪拌体2内に入れること等が可能であり、上記した遮水シート3の施工方法を実施することができる。
【0052】
以上、本発明に係る遮水シートの施工方法および遮水シート施工装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した実施の形態では、ロール内側の第1シート端3aに雄ジョイント4が付設され、ロール外側の第2シート端3bに雌ジョイント5が付設されているが、本発明は、第1シート端3aに雌型のジョイント冶具が付設され、第2シート端3bに雄型のジョイント冶具が付設されていてもよい。
【0053】
また、上記した実施の形態では、遮水シート3,3´の第1シート端3aに雄ジョイント4が付設され、遮水シート3,3´の第2シート端3bに雌ジョイント5が付設され、地盤攪拌体2の外で先行の遮水シート3の雄ジョイント4と新たな遮水シート3´の雌ジョイント5とを嵌合させることで、双方の遮水シート3,3´同士を継手しているが、本発明は、図18に示すように、遮水シート3,3´が、第1シート端3a,3a´にL形のアングル材104,104´が付設(溶着)され、第2シート端3b,3b´に冶具等が付設されてない構成であってもよい。この場合、地盤攪拌体2の外で双方の遮水シート3,3´同士を継手する際、先行の遮水シート3のアングル材104に新たな遮水シート3´の第2シート端3b´を現場溶着する。また、アングル材104,104´は、スリット9aの幅よりも大きく、軸芯鋼管9に掛止されて引き抜きできない構成にする。なお、遮水シート3,3´同士を直接溶着するようにしてもよい。
その他、本発明は、遮水シート同士の継手構造が如何なる構成のものでもよく、他の構成からなる継手構造であっても適宜変更可能である。
【0054】
また、上記した実施の形態では、保持部材31は、上部把持機構66と受け部63の突起63aとで軸芯鋼管9を軸回転自在に軸支することでロール状の遮水シート3を保持しているが、本発明は、図19に示すように、遮水シート3を引き出すためのスリット122aが形成された筒状の収納ケース122の中に、ロール状に巻かれた遮水シート3のロール部分3cを収納した構成であってもよい。
【0055】
また、上記した実施の形態では、保持部材31の下端にワイヤー45を取り付け、このワイヤー45の延在方向を滑車架台42で調整するとともにウインチ44で巻き上げることで、保持部材31を鉛直回動させているが、本発明は、モータ等の回転駆動源を利用して保持部材を鉛直回動させてもよく、或いは、その他の機構によって保持部材を鉛直回動させてもよい。
【0056】
また、上記した実施の形態では、ほぐされた土の中に液状の添加材を混入して攪拌することで、流動体状の地盤攪拌体2を造成しているが、本発明は、ほぐされた土の中に、セメント等の固化材と水とをそれぞれ混入させて攪拌することで流動体状の地盤攪拌体2を造成してもよい。
また、上記した実施の形態では、地盤攪拌体2の中に遮水シート3を設置する場合を例にして説明しているが、本発明は、地盤に所定深さ・所定長さの溝を形成するとともに、この溝の中に遮水シートを設置してもよい。なお、溝が深い場合には、構内に安定液を満たすことが好ましい。
また、上記した実施の形態では、地盤Gに鉛直の地盤攪拌体2を形成し、この地盤攪拌体2内に遮水シート3を鉛直に設置する場合について説明しているが、本発明は、傾斜した地盤攪拌体や溝を形成し、この地盤攪拌体等の中に遮水シートを斜めに設置してもよい。なお、この場合、地盤攪拌体等の中に配置された遮水シートの一方のシート端は、地盤攪拌体等に沿って斜めに回動される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための遮水シートを用いた遮水壁の立断面図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するための遮水シートを用いた遮水壁の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するための遮水シートの断面図である。
【図4】本発明の実施の形態を説明するための地盤攪拌体を造成する設備を表した図である。
【図5】本発明の実施の形態を説明するための地盤攪拌体を造成するときに使用する掘削機を表した図である。
【図6】本発明の実施の形態を説明するための遮水シート施工装置を表した図である。
【図7】本発明の実施の形態を説明するための遮水シート施工装置を表した図である。
【図8】本発明の実施の形態を説明するための保持部材を表した図である。
【図9】本発明の実施の形態を説明するための保持部材を表した部分拡大図である。
【図10】本発明の実施の形態を説明するための保持部材を表した部分拡大図である。
【図11】図10に示すA−A間の断面図である。
【図12】図10に示すB−B間の断面図である。
【図13】本発明の実施の形態を説明するための遮水シートの施工工程を表した図である。
【図14】本発明の実施の形態を説明するための遮水シートの施工工程を表した図である。
【図15】本発明の実施の形態を説明するための引き上げられた遮水シートのシート端を表す図である。
【図16】本発明の実施の形態を説明するための遮水シートの継手状況を表した図である。
【図17】本発明の実施の形態を説明するための遮水シートを施工する工程を表した図である。
【図18】本発明の他の実施の形態を説明するための遮水シートの継手状況を表した図である。
【図19】本発明の他の実施の形態を説明するための保持部材を表した図である。
【符号の説明】
【0058】
2 地盤攪拌体
3 遮水シート
3´ 新たな遮水シート
3a,3a´ 一方のシート端
3b,3b´ 他方のシート端
4,4 雄ジョイント(第1のジョイント冶具)
5,5´ 雌ジョイント(第2のジョイント冶具)
6 止水材
30 遮水シート施工装置
31 保持部材
33 ベースマシン(移動手段)
37 回動機構(回動手段)
49 回転軸
G 地盤
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中遮水壁を構成する遮水シートを設置するための遮水シートの施工方法およびその施工方法に用いられる遮水シート施工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば産業廃棄物の最終処分場などでは、汚染物の流出を防止するために遮水壁で最終処分場を囲み、外部と仕切る必要がある。遮水壁としては、その地盤の透水性が高い場合や地盤の地耐力が低い場合、簡単且つ高い水密性を確保できる高密度ポリエチレン製の遮水シート等を使用した遮水シート工法が採用される場合が多い。遮水シート工法は、地盤に所定深さの溝を掘削するとともにこの溝内をソイルセメント等で満たした後、溝の中に遮水シートを設置する工法である。なお、地盤を所定長さ、所定深さで攪拌して面状(壁状)の地盤攪拌体を造成し、この地盤攪拌体の中に遮水シートを設置してもよい。
【0003】
上記した遮水シート工法における従来の遮水シートの施工方法としては、まず、予め遮水シートの一端に雄形のシートジョイナーを付設するとともに他端に雌形のシートジョイナーを付設しておく。そして、遮水シートをロール状に巻き、そのロール状の遮水シートを、地盤に形成された溝の中に挿入する。その後、ロール状の遮水シートから遮水シートを引き出しつつロール状の遮水シートのロール部分を溝方向に移動させて遮水シートを展張させる。次いで、同様にロール状に巻かれた新たな遮水シートを溝の中に挿入する。このとき、先行して設置された遮水シートのシートジョイナーに新たな遮水シートのシートジョイナーを嵌合させながら挿入を行う。その後、先行の遮水シートと同様に新たな遮水シートを展張する。この工程を繰り返すことで、互いに継手された複数の遮水シートが溝の中に設置される(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特公平4−33325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の遮水シートの施工方法では、例えば、遮水シートの継手構造として、雄雌のシートジョイナーが密着した状態で嵌合される継手構造や、雄雌のシートジョイナーの嵌合箇所に止水材を介在させる継手構造を適用すると、ソイルセメント等で満たされた溝の中や地盤攪拌体の中は作業性が悪いため、継手作業が困難であり、施工できない場合もある。したがって、従来の遮水シートの施工方法では、作業性を考慮して簡易的な継手構造にする必要があるが、簡易的な継手構造にすると、遮水性能をソイルセメントに期待しなければならず、遮水性能の信頼性が低いとともに経済性も悪いという問題がある。
【0005】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、遮水シート同士の継手構造が多少複雑である場合でも確実に施工することができ、遮水性能の信頼性が高く経済的である継手構造を適用することができる遮水シートの施工方法、およびその施工方法を実現することができる遮水シート施工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、地盤に形成された溝、又は地盤を連続的に攪拌して造成された地盤攪拌体の中に、複数の遮水シートを互いに継手させた状態でそれぞれ設置する遮水シートの施工方法において、ロール状に巻かれた状態で前記溝又は地盤攪拌体内に入れられた前記遮水シートのロール部分を前記溝又は地盤攪拌体に沿って移動させることで、ロール状に巻かれた前記遮水シートを展張し、ロール内側にあった前記遮水シートの一方のシート端をロール移動方向の反対方向に向けて前記溝又は地盤攪拌体に沿って回動させることで、該遮水シートの端部を折り返えし、前記一方のシート端を前記溝又は地盤攪拌体の外に引き上げ、該溝又は地盤攪拌体の外で、先行して設置された前記遮水シートの前記一方のシート端に、ロール状に巻かれた新たな遮水シートのロール外側にある他方のシート端を継手し、その後、先行して設置された前記遮水シートの前記一方のシート端および前記新たな遮水シートを下方向に回動させることで、先行して設置された前記遮水シートの折り返された端部を元に戻すとともに前記新たな遮水シートを前記溝又は地盤攪拌体内に入れることを特徴としている。
【0007】
このような特徴により、溝又は地盤攪拌体の中でロール状のものを展張することで遮水シートが溝又は地盤攪拌体の中に設置されるとともに、遮水シート同士の継手作業が溝又は地盤攪拌体の外で行われるため、継手作業の作業効率が向上する。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の遮水シートの施工方法において、前記遮水シートの前記一方のシート端には、雄型又は雌型の第1のジョイント冶具が付設され、前記遮水シートの前記他方のシート端には、前記第1のジョイント冶具と対を成す雌型又は雄型の第2のジョイント冶具が付設されており、前記溝又は地盤攪拌体の外で、先行して設置された前記遮水シートの前記一方のシート端と前記新たな遮水シートの前記他方のシート端とを継手する際、先行して設置された前記遮水シートの前記第1のジョイント冶具と前記新たな遮水シートの前記第2のジョイント冶具とを嵌合させるとともに、その嵌合箇所に止水材を介在させることを特徴としている。
【0009】
このような特徴により、第1、第2のジョイント冶具同士の嵌合作業が溝又は地盤攪拌体の外で行われることで、第1、第2のジョイント冶具の間に止水材を適正に介在させることが可能であり、そして、この止水材によって継手箇所の止水性が確保される。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の遮水シートの施工方法に用いられる遮水シート施工装置であって、前記溝又は地盤攪拌体の外に位置する回転軸を中心に前記溝又は地盤攪拌体に沿って回転可能に設けられているとともにロール状に巻かれた前記遮水シートを引き出し展張可能に保持する保持部材と、該保持部材を前記溝又は地盤攪拌体に沿って水平方向に移動させる移動手段と、前記保持部材を前記溝又は地盤攪拌体に沿って回動させる回動手段とが備えられ、前記保持部材には、前記溝又は地盤攪拌体内で展張された前記遮水シートの一方のシート端が係止されていることを特徴としている。
【0011】
このような特徴により、ロール状の遮水シートを展張可能に保持した保持部材が、溝又は地盤攪拌体の中に入れられ、この保持部材が移動手段によって水平方向に動かされることで、ロール状の遮水シートが溝又は地盤攪拌体の中で展張される。また、遮水シートを展張した後に、遮水シートの一方のシート端が係止されている保持部材を回動手段によって溝又は地盤攪拌体に沿って回動させることで、保持部材とともに一方のシート端が回動し、遮水シートの端部が折り返えされ、一方のシート端が溝又は地盤攪拌体の外に引き上げられる。さらに、保持部材を一方のシート端から取り外してロール状に巻かれた新たな遮水シートに取り付けるとともに、先行して設置された遮水シートの一方のシート端と新たな遮水シートの他方のシート端とを継手し、その後、保持部材を回動手段によって溝又は地盤攪拌体に沿って回動させることで、保持部材とともに、先行して設置された遮水シートの一方のシート端および新たな遮水シートが下方側にそれぞれ回動し、折り返された遮水シートの一方側の端部が元に戻されるとともに、新たな遮水シートが溝又は地盤攪拌体内に入れられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る遮水シートの施工方法によれば、ロール状の遮水シートを溝又は地盤攪拌体の中で展張することで遮水シートが設置されるとともに、遮水シート同士の継手作業が溝又は地盤攪拌体の外で行われることで継手作業の作業効率が向上するため、遮水シート同士の継手構造が多少複雑である場合でも確実に施工することができ、これによって、遮水性能の信頼性が高く経済的である継手構造を採用することができる。
【0013】
また、遮水シートの一方のシート端に第1のジョイント冶具を付設させ、他方のシート端に第2のジョイント冶具を付設させ、遮水シート同士を継手する際、先行して設置された遮水シートの第1のジョイント冶具と新たな遮水シートの第2のジョイント冶具とを嵌合させるとともに、その嵌合箇所に止水材を介在させることで、継手箇所の止水性が確保され、これによって、継手箇所の遮水性能についての信頼性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明に係る遮水シート施工装置によれば、溝又は地盤攪拌体の中で展張された遮水シートの一方のシート端を回動させること等が可能であり、上記した遮水シートの施工方法を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る遮水シートの施工方法および遮水シート施工装置の実施の形態について、図面に基いて説明する。なお、図1は遮水シート3を用いて地盤G内に遮水壁1を構築するときの
【0016】
まず、遮水シート3を用いて地盤G内に構築される遮水壁1の構成について説明する。
【0017】
図1は遮水壁1を表す立断面図である。図1に示すように、遮水壁1は、地盤Gを所定長さ、所定深さHで攪拌することで地盤G内に面状(壁状)に鉛直に造成された地盤攪拌体2と、地盤攪拌体2内に鉛直にそれぞれ埋設された複数の遮水シート3…とから構成されている。
【0018】
地盤攪拌体2は、地盤Gに水やベントナイト、フライアッシュ等の添加材を加えて攪拌したものであり、攪拌当初には流動性を有するものである。添加材としては、セメント等の固化材も含まれるが、これらの固化材を加えれば、遮水シート展張後に時間の経過とともに地盤攪拌体が流動性を失って固化するので、展張した遮水シートが早期に安定する。なお、地下水が高い地盤の場合は、これらの添加材を加えないで攪拌するだけで流動性を有することがあり、この場合は添加材を加えないこともある。また、地下水が低い地盤の場合は、固化材を加えなくても、脱水によって流動性を失い固化状態となることもあり、この場合は固化材を加えないこともある。
【0019】
遮水シート3は、例えばフレキシブルポリマーアロイ製のシート等であり、高い水密性を有するとともに、弾力性を有する柔らかな材質のものからなり、さらに、地盤攪拌体2内に設置する際に破損しない程度の強度及び厚さを有するものである。
【0020】
図2は遮水シート3,3同士の継手部分を表す拡大平面図である。図1,図2に示すように、鉛直(深さ)方向に延在する遮水シート3の側端のうち、一方のシート端(以下、第1シート端3aと記す。)には、その第1シート端3aに沿って延在する雄ジョイント4(第1のジョイント冶具)が付設されており、他方のシート端(以下、第2シート端3bと記す。)には、その第2シート端3bに沿って延在する雌ジョイント5(第2のジョイント冶具)が付設されている。雄ジョイント4と雌ジョイント5とは、互いに嵌合される一対のジョイント冶具であり、雄ジョイント4の先端部4aが雌ジョイント5の溝状の凹部5aの中に嵌め込まれることで連結される継手構造である。隣接する遮水シート3,3同士は、一方の遮水シート3の第1シート端3aに付設された雄ジョイント4と、他方の遮水シート3の第2シート端3bに付設された雌ジョイント5とが嵌合されることで継手されている。
【0021】
また、雄ジョイント4と雌ジョイント5との嵌合箇所には、止水性能を発揮する止水材6が介在されている。止水材6は、雄ジョイント4や雌ジョイント5の延在方向に延在する例えばゴム等の弾性材料からなる棒状の部材であり、雌ジョイント5の凹部5aの中に配置され、雌ジョイント5の凹部5aの内側面と雄ジョイント4の先端部4aとの間に介在されている。
【0022】
図3は地盤攪拌体2内に入れるときの遮水シート3の状態を表す断面図である。図3に示すように、地盤攪拌体2内に入れるときの遮水シート3は、第1シート端3aを内側にして(第2シート端3bを外側にして)ロール状に巻かれた状態になっている。具体的には、遮水シート3は、断面形状C形の円筒形の軸芯鋼管9に巻き付けられている。軸芯鋼管9には、軸線方向に延在するスリット9aが形成されており、スリット9aから軸芯鋼管9内に、第1シート端3aに付設された雄ジョイント4が差し込まれている。スリット9aの幅寸法は、雄ジョイント4の基端部4bの厚さよりも大きくて先端部4aの厚さよりも小さくなっており、軸芯鋼管9内にある雄ジョイント4が係止されてスリット9aから引き抜きできない状態になっている。また、軸芯鋼管9は、少なくとも一方端が開放されており、軸芯鋼管9と雄ジョイント4とを軸線方向に相対移動させることで取り外し可能になっている。
【0023】
次に、地盤Gに上記した地盤攪拌体2を造成する際に使用する設備について説明する。
【0024】
図4は地盤攪拌体2を造成する際の施工システムと施工機械を表す図である。図4に示すように、地盤攪拌体2を造成する際は、セメントミルク等の液状の添加材を製造する添加材製造手段10と、製造された添加材を所定量だけ地盤攪拌体2内に送る添加材流入手段11と、地盤Gと添加材とを攪拌混合する地盤攪拌機12と、残土の搬出を行うバックホウ等の掘削機13とが使用される。
【0025】
添加材製造手段10は、サイロ14,スラリープラント15,水槽16及び発電機17から構成されており、添加材製造手段10によって、液状の添加材が製造されるとともに製造された添加材が添加材流入手段11に送られる。添加材流入手段11はグラウトポンプ18,流量計19及び空気圧縮機20から構成されており、添加材流入手段11によって、添加材は地盤攪拌機12が攪拌している地盤G内に圧送される。なお、この添加材製造手段10は、セメント等の固化材に替えてベントナイト等の添加材をスラリー状にするのにも用いられる。
【0026】
図5は地盤攪拌機12を表す斜視図である。図5に示すように、地盤攪拌機12は、ベースマシン51に可動アーム50が備えられ、この可動アーム50にフレーム52が取り付けられた概略構成からなる。このフレーム52は、上部には油圧モータ等の原動機に連結された駆動輪53と、下部には従動輪54を有し、この駆動輪53と従動輪54との間にエンドレスチェーン55が巻き掛けられ、エンドレスチェーン55は駆動輪53の駆動回転によって駆動輪53と従動輪54との間を周回するようになっている。また、エンドレスチェーン55は、その全周方向外側に一定間隔で攪拌羽根56を有している。この攪拌羽根56の周回によって、地盤Gが攪拌され、添加材や固化材を添加すれば、地盤Gが添加材や固化材とともに攪拌混合され、セメントであれば地盤攪拌体2はソイルセメントとなる。
【0027】
次に、地盤G内に造成された地盤攪拌体2内に複数の遮水シート3…を設置する遮水シート施工装置30について説明する。
【0028】
図6,図7は遮水シート3を施工する遮水シート施工装置30を表す図である。図6,図7に示すように、遮水シート施工装置30は、ロール状に巻かれた遮水シート3を保持部材31で保持し、このロール状の遮水シート3を地盤攪拌体2内で展張させて遮水シート3を設置する装置であり、地盤G上を走行可能な重機である。遮水シート施工装置30には、地盤G上を走行するベースマシン33(移動手段)と、ベースマシン33に装備された略鉛直に立設されたマスト部34と、マスト部34に沿って上下動する上下動部32と、上下動部32に対して回転軸49で軸支されて鉛直方向に回転可能に取り付けられているとともにロール状の遮水シート3を保持する保持部材31と、上下動部32を上下動させて保持部材31を昇降させる昇降機構36と、保持部材31を地盤攪拌体2に沿って鉛直回転させる回動機構37(回動手段)とが備えられている。
【0029】
図8は保持部材31を表す側面図であり、図9は保持部材31の下端部を表す拡大側面図であり、図10は保持部材31の上部を表す拡大側面図である。図7,図8,図9,図10に示すように、保持部材31は、ロール状に巻かれた遮水シート3を引き出し展張可能(軸回転可能)に保持する部材であり、保持部材31の上端部は、地盤攪拌体2の外(地盤攪拌体2の上方)に位置する回転軸49を介して上下動部32に取り付けられ、保持部材31は、回転軸49を中心にして鉛直回転可能に設けられている。また、保持部材31には、矩形鋼管等からなるロッド状の本体部60が備えられており、この本体部60の下端側面には、ロール状の遮水シート3が載せられるブラケット状の受け部63が設けられている。受け部63は、本体部60の軸線に対して直交して突設されており、その上面には、開放された軸芯鋼管9の下端に回転自在に挿嵌される突起63aが形成されている。
【0030】
また、軸芯鋼管9上端には、軸芯延長部材64が継手されている。具体的には、軸芯延長部材64の下端には軸芯鋼管9上端に回転拘束状態で嵌合する嵌合孔64aが形成され、この嵌合孔64a内に軸芯鋼管9の上端が差し込まれることで継手されている。また、軸芯延長部材64の上部には、回転自在なベアリング部64bが付設されている。
【0031】
図11は図10に示すA−A間の断面図であり、図12は図10に示すB−B間の断面図である。図10,図11,図12に示すように、本体部60の上部には、軸芯鋼管9の上端に継手された軸芯延長部材64を着脱自在に把持する把持機構65が設けられている。把持機構65は、軸芯延長部材64のベアリング部64bを把持する上部把持機構66と、軸芯延長部材64の下部を直接把持する下部把持機構67とからなっており、上部把持機構66で軸芯延長部材64のベアリング部64bを把持している時には軸芯鋼管9は回転自在に保持され、下部把持機構67で軸芯延長部材64の下部を把持している時には軸芯鋼管9は回転拘束状態(回転しない)で保持される。
【0032】
図10,図11に示すように、上部把持機構66は、本体部60から張り出して取り付けられて2枚平行に配置された受けアーム(把持部材)68,68と、これらの受けアーム68,68の間に配置された押えアーム(把持部材)69と、押えアーム69の端部にその一端が取り付けられ、他端が本体部60に取り付けられた伸縮ジャッキ(伸縮機構)70とからなっている。押えアーム69は、L字型形状をしており、一方の辺に相当するところは直線状で、他方の辺に相当する押え部69aはベアリング部64bの円弧形状に合わせて内方に曲がる円弧形状とされ、中間の屈曲部69bにおいて、受けアーム68の基端部付近で受けアーム68に対し回転可能に軸支されている。なお、受けアーム68は、ベアリング部64bを把持する受け部68aが、ベアリング部64bの円弧形状に合わせて円弧形状とされている。
【0033】
図10,図12に示すように、下部把持機構67は、上部把持機構66と同様の構成からなり、本体部60からそれぞれ張り出して取り付けられて2枚平行に配置された受けアーム(把持部材)68´,68´と、これらの受けアーム68´,68´の間に配置された押えアーム(把持部材)69´と、押えアーム69´の端部にその一端が取り付けられ、他端が本体部60に取り付けられた伸縮ジャッキ(伸縮機構)70´とからなっている。押えアーム69は、L字型形状をしており、一方の辺に相当するところは直線状で、他方の辺に相当する押え部69a´は軸芯延長部材64の下部の外周形状に合わせて内方に曲がる円弧形状とされ、中間の屈曲部69b´において、受けアーム68´の基端部付近で受けアーム68´,68´に対し回転可能に軸支されている。なお、受けアーム68´,68´は、軸芯延長部材64を把持する受け部68a´が、軸芯延長部材64の下部の外周形状に合わせて円弧形状とされている。
【0034】
図10,図11,図12に示すように、把持機構65によって軸芯延長部材64を把持する時(取付時)には、上部把持機構66及び下部把持機構67の伸縮ジャッキ70,70´のロッド部70a,70a´をシリンダー部70b,70b´内にそれぞれ縮退させ、押え部69a,69a´と受け部68a,68a´とでベアリング部64bや軸芯延長部材64を挟んでそれぞれ把持する。一方、把持機構65に把持された軸芯延長部材64を開放する時(取外時)には、上部把持機構66及び下部把持機構67の伸縮ジャッキ70,70´のロッド部70a,70a´をシリンダー部70b,70b´から伸長させることで、ベアリング部64bや軸芯延長部材64下部の把持を開放する。
【0035】
図7に示すように、上下動部32は、マスト部34に付設された図示せぬガイドレールに摺動可能に取り付けられた部材であり、後述する昇降機構36のワイヤー41に吊り下げられている。
図6,図7に示すように、昇降機構36は、マスト部34の上端部及びベースマシン33上にそれぞれ付設された上下動用滑車(シーブ)38,38と、ベースマシン33に搭載された上下動用巻上機(ウインチ)39と、ウインチ39によって巻き取られる上下動用のワイヤー41とから構成されている。ワイヤー41は、ウインチ39からベースマシン33上の上下動用のシーブ38を経てマスト部34上端のシーブ38にそれぞれ巻回され、端部が上下動部32に接続されており、上下動部32は、ウインチ39によってワイヤー41を巻き取ることで上昇され、反対に、ウインチ29を開放してワイヤー41を送り出すことで下降される。
【0036】
回動機構37は、マスト部34の上端部及びベースマシン33上にそれぞれ付設された回動用滑車(シーブ)43,43,43と、ベースマシン33に搭載された回動用巻上機(ウインチ)44と、ウインチ44によって巻き取られる回動用のワイヤー45と、地盤G上に設置された滑車架台42とから構成されている。ワイヤー45は、ウインチ44からベースマシン33上の回動用シーブ43及びマスト部34上端の2つのシーブ43,43をそれぞれ経て滑車架台42に巻回され、端部が保持部材31下端の受け部63に接合された被掛止部61に接続されており、保持部材31は、ウインチ44によってワイヤー45を巻き取ることで鉛直方向に回動される。具体的には、ベースマシン33(保持部材31)よりも後方(後述する遮水シート3の移動展張方向の基端側)の位置に滑車架台42を配置した状態で、ウインチ44によってワイヤー45を巻き取ることで、鉛直状態の保持部材31が回転軸49を回転中心にして後方に向かって鉛直回動して、第1シート端3aは地盤攪拌体2内から引き上げられる。一方、ベースマシン33(保持部材31)よりも先方(後述する移動展張方向の先端側)の位置に滑車架台42を配置した状態で、ウインチ44によってワイヤー45を巻き取ることで、水平状態の保持部材31が回転軸49を回転中心にして下方に回転して、第1シート端3aは地盤攪拌体2内に入れられる。
【0037】
次に、上記した地盤攪拌体2を造成する施工システムと施工機械を用いて地盤Gに地盤攪拌体2を造成した後、遮水シート施工装置30を用いて地盤攪拌体2内に遮水シート3を設置し、上記した遮水壁1を構築する施工手順を説明する。
【0038】
まず、所要の機械を現場に搬入して組み立てる機械搬入・組立工程を行う。具体的には、図4に示す添加材製造手段10を構成する機材や、添加材流入手段11を構成する機材、分解された状態の地盤攪拌機12、掘削機13をそれぞれ現場に搬入し、これらの機材等を組み立てて、地盤攪拌体2を造成する際の施工システムをつくる。また、図6,図7に示す遮水シート施工装置30を分解した状態で搬入し、現場で組み立てる。さらに、図1,図3に示す複数の遮水シート3…や軸芯鋼管9、軸芯延長部材64の材料をそれぞれ搬入し、遮水シート3を軸芯鋼管9にロール状に巻き付け、複数のロール状の遮水シート3…を製作しておく。このとき、遮水シート3の両端部に、雄ジョイント4や雌ジョイント5を付設しておく。なお、予め工場等でロール状に巻かれたロール状の遮水シート3を現場に搬入してもよく、その他の機械や設備についても、既に組み立てられたものを現場に搬入してもよい。
【0039】
次に、施工ヤードの造成を行う施工ヤード造成工程を行う。具体的には、図3に示すように、掘削機13で地盤攪拌機12や遮水シート施工装置30が据置・走行する範囲の整地を行うとともに鉄板等を敷設する。
【0040】
次に、地盤Gを所定深さ(遮水壁を設けようとする深さである)で所定長さ(遮水壁を設けようとする長さである)連続的に攪拌し、地盤中に面的な広がりを有する面状の地盤攪拌体2を造成する地盤攪拌体造成工程を行う。ここで地盤攪拌体2の幅は、小さいのに越したことはないが、ロール状の遮水シートを挿入する関係からここでは60cm程度に設定している。また、攪拌にあたっては、攪拌のみの場合、水やベントナイト、フライアッシュ、固化材としてのセメント等の添加材を混入して攪拌混合する場合がある。
【0041】
ここで、添加材を添加する場合の攪拌混合について説明する。具体的には、図4に示すように添加材製造手段10によって所定配合の添加材(必要に応じ固化材を混入してもよい)を製造する。そして、製造された添加材を添加材流入手段11によって地盤Gに混入させつつ、地盤攪拌機12のエンドレスチェーン55を周回させることで攪拌羽根56を周回させて、地盤Gとともに攪拌混合する。このとき、エンドレスチェーン55が巻き掛けられたフレーム52を上下および横方向、即ち深さと長さ方向に移動させることで、所定の深さ、所定の長さで連続する面状で流動状の地盤攪拌体2を造成する。また、このとき、遮水シート3の挿入・展張の作業性を考慮しつつ、地盤攪拌体2の遮水性能を適正に確保するべく、攪拌体のフロー値が所定値になるように流量計19で混入させる添加材の注入量を調整する。具体的には、遮水シート3の挿入・展張の作業性を考慮するとともに、最低限の遮水性能(透水係数10−5cm/sec)を確保するために、攪拌体のテーブルフロー値(JIS R5201−1981「セメントの物理試験方法」による計測値)が130mm以上250mm以下になるように、添加材の注入量を調整し、好ましくはテーブルフロー値が150mm程度になるように調整する。
【0042】
一方、図13(a)に示すように、ロール状の一枚目の遮水シート3を遮水シート施工装置30の保持部材31に保持させるシート保持工程を行う。具体的には、まず、図8,図10に示すように、遮水シート3が巻き付けられている軸芯鋼管9の上端に軸芯延長部材64を継手させ、さらに、図示しないピン等で軸芯鋼管9と軸芯延長部材64とが外れないようにしておく。次に、図10,図11,図12,図13(a)に示すように、遮水シート施工装置30の保持部材31を水平状態に配置しておき、この状態で、遮水シート3の軸芯鋼管9の下端を本体部60下端の受け部63の突起63aに嵌合させるとともに、軸芯延長部材64のベアリング部64bを本体部60上部に設けた上部把持機構66で把持し、さらに下部把持機構67でも軸芯延長部材64を把持する。
【0043】
次に、図13(a),図13(b)に示すように、流動状の地盤攪拌体2内に、保持部材31に保持された1枚目のロール状の遮水シート3を挿入するシート挿入工程を行う。具体的には、まず、図13(a)に示すように、昇降機構36によって上下動部32を上昇させる。このとき、保持部材31は鉛直回転自在になっており、上下動部32が上昇するとともに、保持部材31が鉛直方向に回動して地盤Gの上方で鉛直状態になり、保持部材31に保持されたロール状の遮水シート3も鉛直状態になる。次いで、図13(b)に示すように、遮水シート施工装置30を動かして、保持部材31に保持されたロール状の遮水シート3を地盤攪拌体2の端部上方に配置する。次いで、昇降機構36によって上下動部32を下降させ、保持部材31とともにロール状の遮水シート3を地盤攪拌体2内に挿入する。このとき、地盤攪拌体2の端部に予め鉛直に打設されたロッド状の固定部材27に、ロール状の遮水シート3の外側にある図3に示す雌ジョイント5を固定させる。
【0044】
次に、図14(a)に示すように、ロール状の遮水シート3を地盤攪拌体2内で展張させるシート展張工程を行う。具体的には、図12に示す下部把持機構67を解除した後、ベースマシン33によって遮水シート施工装置30を地盤攪拌体2に沿って固定部材27から離れる方向に水平移動させることで、保持部材31を同様に地盤攪拌体2に沿って固定部材27から離れる方向に水平移動させる。このとき、保持部材31に保持された遮水シート3のロール部分3cは、保持部材31とともに、固定された第2シート端3bから離れる方向に水平移動しながら軸回転し、地盤攪拌体2内で引き出されて(巻きほぐされて)横引き展開される。ロール状の遮水シート3が完全に展張されたところで、ベースマシン33の走行を停止させる。
【0045】
次に、図14(b)に示すように、展張された遮水シート3の第1シート端3a(雄ジョイント4)を、回動機構37によって、保持部材31とともに地盤攪拌体2内から引き上げるシート端引上げ工程を行う。具体的には、図6,図7,図14(b)に示すように、滑車架台42をベースマシン33の後方に配置した状態で、ウインチ44によってワイヤー45を巻き取って保持部材31の下端にワイヤー45を介して牽引力を与え、地盤攪拌体2の外にある回転軸49を回転中心にして、鉛直状態の保持部材31を後方に向けて鉛直回動させる。このとき、保持部材31に掛止されている雄ジョイント4(第1シート端3a)が保持部材31とともに後方に向けて鉛直回動し、これにより、遮水シート3の端部が折り返され、第1シート端3aが地盤攪拌体2内から気中(地盤攪拌体2の外)に引き上げられる。そして、保持部材31(第1シート端3a)が完全に引き上げられて水平に配置されたところでウインチ44を停止して、保持部材31(第1シート端3a)の回動を停止させる。
【0046】
次に、図14(b),図15,図16に示すように、地盤攪拌体2の外で、1枚目の遮水シート3の第1シート端3aと、2枚目の(新たな)遮水シート3´の第2シート端3b´とを継手するとともに、ロール状に巻かれた2枚目の遮水シート3´を保持部材31に保持させるシート継手・保持工程を行う。具体的には、図10,図11,図12,図15に示すように、地盤攪拌体2内から引き上げられた保持部材31の上部把持機構66および下部把持機構67をそれぞれ解除するとともに軸芯鋼管9の上端から軸芯延長部材64を引き抜き、保持部材31から軸芯鋼管9を取り外す。なお、軸芯鋼管9を保持部材31から取り外すとき或いは雄ジョイント4を軸芯鋼管9から取り外すときに遮水シート3の第1シート端3aがずれて地盤攪拌体2内に落下しないように落下防止用として、または、1枚目と2枚目の遮水シート3を継手するときの作業用として、シート押え部材72が取り付けられた継手作業台71を、ヒンジ73を介して本体部60に回動可能に取り付けておくことが好ましい。上記した継手作業台71が備えられることで、前記した取り外し作業や継手作業をする際には、継手作業台71を水平に回動させて、この上に1枚目の遮水シート3の第1シート端3a付近を載せ、遮水シート3の上方からシート押え部材72で固定することことができ、上記作業が行い易くなる。次いで、図15に示すように、軸芯鋼管9を軸線方向にスライドさせ、1枚目の遮水シート3の第1シート端3aに付設された雄ジョイント4から軸芯鋼管9を取り外す。次いで、図16に示すように、1枚目の遮水シート3の雄ジョイント4に、軸芯鋼管9´に巻回された2枚目の遮水シート3´のロール外側にある雌ジョイント5´を嵌合させながら、ロール状の2枚目の遮水シート3´を軸線方向にスライドさせ、1枚目の遮水シート3の第1シート端3aと2枚目の遮水シート3´の第2シート端3b´とを継手させる。このとき、その継手箇所に止水材6を介在させる。なお、この止水材6は、雄ジョイント4の先端部や雌ジョイント5´の内側面に予め接着しておいてもよく、或いは、雄ジョイント4と雌ジョイント5´とを嵌合させる際に、それらの間に配置してもよい。次いで、図10,図11,図12,図16に示すように、1枚目の遮水シート3と同様に、2枚目の遮水シート3´の軸芯鋼管9´上端に軸芯延長部材64を継手させ、軸芯鋼管9´下端を保持部材31の受け部63の突起63aに嵌合させ、軸芯延長部材64のベアリング部64bを上部把持機構66で把持し、さらに下部把持機構67で軸芯延長部材64を把持することで、2枚目の遮水シート3´を保持部材31に保持させる。
【0047】
次に、図17(a)に示すように、1枚目の遮水シート3の第1シート端3aおよび2枚目の遮水シート3´を保持部材31とともに下方に回動させることで、1枚目の遮水シート3の折り返された端部を元に戻すとともに、ロール状の2枚目の遮水シート3´を地盤攪拌体2内に入れるシート入れ工程を行う。具体的には、図6,図7,図17(a)に示すように、滑車架台42をベースマシン33の先方に配置した状態で、ウインチ44によってワイヤー45を巻き取って保持部材31の下端にワイヤー45を介して牽引力を与え、地盤攪拌体2の外にある回転軸49を回転中心にして、水平状態の保持部材31を下方(シート端引上げ工程のときと反対の方向)に向けて鉛直回動させる。このとき、保持部材31に保持されたロール状の2枚目の遮水シート3´、およびその遮水シート3´の第2シート端3b´に継手された1枚目の遮水シート3の第1シート端3aは、保持部材31とともに下方に向けて鉛直回動し、これにより、折り返された遮水シート3の端部は広げられ、1枚目の遮水シート3の第1シート端3aおよび2枚目の遮水シート3´は地盤攪拌体2の中に入れられる。そして、保持部材31(1枚目の遮水シート3の第1シート端3aおよび2枚目の遮水シート3´)が地盤攪拌体2内で鉛直に配置されたところでウインチ44を停止して、保持部材31の回動を停止させる。なお、水平状態の保持部材31を下方に向けて鉛直回動させる方法として、滑車架台42をベースマシン33の後方に配置したままで、ウインチ44によってワイヤー45を巻き戻すことで、保持部材31を下方に鉛直回動させる方法もある。
【0048】
次に、図17(b)に示すように、1枚目の遮水シート3と同様に、2枚目の遮水シート3´について上記したシート展張工程を行うことで、2枚目の遮水シート3´を展張する。その後、上記したシート端引上げ工程、シート継手・保持工程、シート入れ工程、シート展張工程を順次繰り返し行う。
【0049】
上記した構成からなる遮水シート3の施工方法によれば、ロール状の遮水シート3を展張した後、遮水シート3の第1シート端3aを後方に向けて回動させることで、遮水シート3の端部を折り返えして第1シート端3aを地盤攪拌体2の外に引き上げ、その後、地盤攪拌体2の外で、先行の遮水シート3の第1シート端3aに新たな遮水シート3´の第2シート端3bを継手することにより、遮水シート3,3´同士の継手作業の作業効率が向上するため、遮水シート3,3´同士の継手構造(雄ジョイント4,雌ジョイント5)が多少複雑な構造である場合でも確実に施工することができる。これによって、遮水シート3,3´同士の継手構造に、遮水性能の信頼性が高く経済的である継手構造を採用することができる。
【0050】
また、地盤攪拌体2の外で、先行の遮水シート3の第1シート端3aに新たな遮水シート3´の第2シート端3bを継手する際、先行の遮水シート3の第1シート端3aに付設された雄ジョイント4と、新たな遮水シート3´の第2シート端3bに付設された雌ジョイント5とを嵌合させるとともに、その嵌合箇所に止水材6を介在させることにより、止水材6によって継手箇所の止水性が確保される。これによって、遮水シート3,3´同士の継手箇所の遮水性能についての信頼性を向上させることができる。なお、雄ジョイント4と雌ジョイント5との嵌合作業が地盤攪拌体2の外の気中で行われるため、雄ジョイント4と雌ジョイント5との間に止水材6を適正に介在させることが可能である。
【0051】
また、上記した構成からなる遮水シート施工装置30によれば、地盤攪拌体2の外に位置する回転軸49を中心に鉛直方向に回転可能に設けられてロール状の遮水シート3,3´を引き出し展張可能に保持する保持部材31と、この保持部材31を水平方向に移動させるベースマシン33と、保持部材31を鉛直方向に回動させる回動機構37とが備えられていることにより、地盤攪拌体2内のロール状の遮水シート3を展張させること、展張された遮水シート3の第1シート端3aを鉛直方向に回動させること、新たな遮水シート3´に継手させた後、先行の遮水シート3の第1シート端3aおよび新たなロール状の遮水シート3´を鉛直方向に回動させて地盤攪拌体2内に入れること等が可能であり、上記した遮水シート3の施工方法を実施することができる。
【0052】
以上、本発明に係る遮水シートの施工方法および遮水シート施工装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した実施の形態では、ロール内側の第1シート端3aに雄ジョイント4が付設され、ロール外側の第2シート端3bに雌ジョイント5が付設されているが、本発明は、第1シート端3aに雌型のジョイント冶具が付設され、第2シート端3bに雄型のジョイント冶具が付設されていてもよい。
【0053】
また、上記した実施の形態では、遮水シート3,3´の第1シート端3aに雄ジョイント4が付設され、遮水シート3,3´の第2シート端3bに雌ジョイント5が付設され、地盤攪拌体2の外で先行の遮水シート3の雄ジョイント4と新たな遮水シート3´の雌ジョイント5とを嵌合させることで、双方の遮水シート3,3´同士を継手しているが、本発明は、図18に示すように、遮水シート3,3´が、第1シート端3a,3a´にL形のアングル材104,104´が付設(溶着)され、第2シート端3b,3b´に冶具等が付設されてない構成であってもよい。この場合、地盤攪拌体2の外で双方の遮水シート3,3´同士を継手する際、先行の遮水シート3のアングル材104に新たな遮水シート3´の第2シート端3b´を現場溶着する。また、アングル材104,104´は、スリット9aの幅よりも大きく、軸芯鋼管9に掛止されて引き抜きできない構成にする。なお、遮水シート3,3´同士を直接溶着するようにしてもよい。
その他、本発明は、遮水シート同士の継手構造が如何なる構成のものでもよく、他の構成からなる継手構造であっても適宜変更可能である。
【0054】
また、上記した実施の形態では、保持部材31は、上部把持機構66と受け部63の突起63aとで軸芯鋼管9を軸回転自在に軸支することでロール状の遮水シート3を保持しているが、本発明は、図19に示すように、遮水シート3を引き出すためのスリット122aが形成された筒状の収納ケース122の中に、ロール状に巻かれた遮水シート3のロール部分3cを収納した構成であってもよい。
【0055】
また、上記した実施の形態では、保持部材31の下端にワイヤー45を取り付け、このワイヤー45の延在方向を滑車架台42で調整するとともにウインチ44で巻き上げることで、保持部材31を鉛直回動させているが、本発明は、モータ等の回転駆動源を利用して保持部材を鉛直回動させてもよく、或いは、その他の機構によって保持部材を鉛直回動させてもよい。
【0056】
また、上記した実施の形態では、ほぐされた土の中に液状の添加材を混入して攪拌することで、流動体状の地盤攪拌体2を造成しているが、本発明は、ほぐされた土の中に、セメント等の固化材と水とをそれぞれ混入させて攪拌することで流動体状の地盤攪拌体2を造成してもよい。
また、上記した実施の形態では、地盤攪拌体2の中に遮水シート3を設置する場合を例にして説明しているが、本発明は、地盤に所定深さ・所定長さの溝を形成するとともに、この溝の中に遮水シートを設置してもよい。なお、溝が深い場合には、構内に安定液を満たすことが好ましい。
また、上記した実施の形態では、地盤Gに鉛直の地盤攪拌体2を形成し、この地盤攪拌体2内に遮水シート3を鉛直に設置する場合について説明しているが、本発明は、傾斜した地盤攪拌体や溝を形成し、この地盤攪拌体等の中に遮水シートを斜めに設置してもよい。なお、この場合、地盤攪拌体等の中に配置された遮水シートの一方のシート端は、地盤攪拌体等に沿って斜めに回動される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための遮水シートを用いた遮水壁の立断面図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するための遮水シートを用いた遮水壁の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するための遮水シートの断面図である。
【図4】本発明の実施の形態を説明するための地盤攪拌体を造成する設備を表した図である。
【図5】本発明の実施の形態を説明するための地盤攪拌体を造成するときに使用する掘削機を表した図である。
【図6】本発明の実施の形態を説明するための遮水シート施工装置を表した図である。
【図7】本発明の実施の形態を説明するための遮水シート施工装置を表した図である。
【図8】本発明の実施の形態を説明するための保持部材を表した図である。
【図9】本発明の実施の形態を説明するための保持部材を表した部分拡大図である。
【図10】本発明の実施の形態を説明するための保持部材を表した部分拡大図である。
【図11】図10に示すA−A間の断面図である。
【図12】図10に示すB−B間の断面図である。
【図13】本発明の実施の形態を説明するための遮水シートの施工工程を表した図である。
【図14】本発明の実施の形態を説明するための遮水シートの施工工程を表した図である。
【図15】本発明の実施の形態を説明するための引き上げられた遮水シートのシート端を表す図である。
【図16】本発明の実施の形態を説明するための遮水シートの継手状況を表した図である。
【図17】本発明の実施の形態を説明するための遮水シートを施工する工程を表した図である。
【図18】本発明の他の実施の形態を説明するための遮水シートの継手状況を表した図である。
【図19】本発明の他の実施の形態を説明するための保持部材を表した図である。
【符号の説明】
【0058】
2 地盤攪拌体
3 遮水シート
3´ 新たな遮水シート
3a,3a´ 一方のシート端
3b,3b´ 他方のシート端
4,4 雄ジョイント(第1のジョイント冶具)
5,5´ 雌ジョイント(第2のジョイント冶具)
6 止水材
30 遮水シート施工装置
31 保持部材
33 ベースマシン(移動手段)
37 回動機構(回動手段)
49 回転軸
G 地盤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に形成された溝、又は地盤を連続的に攪拌して造成された地盤攪拌体の中に、複数の遮水シートを互いに継手させた状態でそれぞれ設置する遮水シートの施工方法において、
ロール状に巻かれた状態で前記溝又は地盤攪拌体内に入れられた前記遮水シートのロール部分を前記溝又は地盤攪拌体に沿って移動させることで、ロール状に巻かれた前記遮水シートを展張し、
ロール内側にあった前記遮水シートの一方のシート端をロール移動方向の反対方向に向けて前記溝又は地盤攪拌体に沿って回動させることで、該遮水シートの端部を折り返えし、前記一方のシート端を前記溝又は地盤攪拌体の外に引き上げ、
該溝又は地盤攪拌体の外で、先行して設置された前記遮水シートの前記一方のシート端に、ロール状に巻かれた新たな遮水シートのロール外側にある他方のシート端を継手し、
その後、先行して設置された前記遮水シートの前記一方のシート端および前記新たな遮水シートを下方向に回動させることで、先行して設置された前記遮水シートの折り返された端部を元に戻すとともに前記新たな遮水シートを前記溝又は地盤攪拌体内に入れることを特徴とする遮水シートの施工方法。
【請求項2】
請求項1記載の遮水シートの施工方法において、
前記遮水シートの前記一方のシート端には、雄型又は雌型の第1のジョイント冶具が付設され、前記遮水シートの前記他方のシート端には、前記第1のジョイント冶具と対を成す雌型又は雄型の第2のジョイント冶具が付設されており、
前記溝又は地盤攪拌体の外で、先行して設置された前記遮水シートの前記一方のシート端と前記新たな遮水シートの前記他方のシート端とを継手する際、先行して設置された前記遮水シートの前記第1のジョイント冶具と前記新たな遮水シートの前記第2のジョイント冶具とを嵌合させるとともに、その嵌合箇所に止水材を介在させることを特徴とする遮水シートの施工方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の遮水シートの施工方法に用いられる遮水シート施工装置であって、
前記溝又は地盤攪拌体の外に位置する回転軸を中心に前記溝又は地盤攪拌体に沿って回転可能に設けられているとともにロール状に巻かれた前記遮水シートを引き出し展張可能に保持する保持部材と、該保持部材を前記溝又は地盤攪拌体に沿って水平方向に移動させる移動手段と、前記保持部材を前記溝又は地盤攪拌体に沿って回動させる回動手段とが備えられ、
前記保持部材には、前記溝又は地盤攪拌体内で展張された前記遮水シートの一方のシート端が係止されていることを特徴とする遮水シート施工装置。
【請求項1】
地盤に形成された溝、又は地盤を連続的に攪拌して造成された地盤攪拌体の中に、複数の遮水シートを互いに継手させた状態でそれぞれ設置する遮水シートの施工方法において、
ロール状に巻かれた状態で前記溝又は地盤攪拌体内に入れられた前記遮水シートのロール部分を前記溝又は地盤攪拌体に沿って移動させることで、ロール状に巻かれた前記遮水シートを展張し、
ロール内側にあった前記遮水シートの一方のシート端をロール移動方向の反対方向に向けて前記溝又は地盤攪拌体に沿って回動させることで、該遮水シートの端部を折り返えし、前記一方のシート端を前記溝又は地盤攪拌体の外に引き上げ、
該溝又は地盤攪拌体の外で、先行して設置された前記遮水シートの前記一方のシート端に、ロール状に巻かれた新たな遮水シートのロール外側にある他方のシート端を継手し、
その後、先行して設置された前記遮水シートの前記一方のシート端および前記新たな遮水シートを下方向に回動させることで、先行して設置された前記遮水シートの折り返された端部を元に戻すとともに前記新たな遮水シートを前記溝又は地盤攪拌体内に入れることを特徴とする遮水シートの施工方法。
【請求項2】
請求項1記載の遮水シートの施工方法において、
前記遮水シートの前記一方のシート端には、雄型又は雌型の第1のジョイント冶具が付設され、前記遮水シートの前記他方のシート端には、前記第1のジョイント冶具と対を成す雌型又は雄型の第2のジョイント冶具が付設されており、
前記溝又は地盤攪拌体の外で、先行して設置された前記遮水シートの前記一方のシート端と前記新たな遮水シートの前記他方のシート端とを継手する際、先行して設置された前記遮水シートの前記第1のジョイント冶具と前記新たな遮水シートの前記第2のジョイント冶具とを嵌合させるとともに、その嵌合箇所に止水材を介在させることを特徴とする遮水シートの施工方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の遮水シートの施工方法に用いられる遮水シート施工装置であって、
前記溝又は地盤攪拌体の外に位置する回転軸を中心に前記溝又は地盤攪拌体に沿って回転可能に設けられているとともにロール状に巻かれた前記遮水シートを引き出し展張可能に保持する保持部材と、該保持部材を前記溝又は地盤攪拌体に沿って水平方向に移動させる移動手段と、前記保持部材を前記溝又は地盤攪拌体に沿って回動させる回動手段とが備えられ、
前記保持部材には、前記溝又は地盤攪拌体内で展張された前記遮水シートの一方のシート端が係止されていることを特徴とする遮水シート施工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−2071(P2008−2071A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169898(P2006−169898)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
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