説明

遮水部材及びこれを用いた構造物解体方法

【課題】掘削機によって、隣り合う同士が連通するように一列に形成された掘削孔のうち、いずれかの掘削孔に、新たに掘削孔を形成しようとする場合に、新たに形成される掘削孔から前記一列に形成された掘削孔へ削孔水が流れることを防止できるようにする。
【解決手段】岩盤やコンクリート構造物の床面Wを掘削して解体する掘削機によって、隣り合う同士が連通するように一列に形成された掘削孔30のうち、いずれか一つの掘削孔30に、新たに掘削孔30を形成しようとする場合に、前記いずれか一つの掘削孔30に収縮された状態の遮水部材1を挿入すると共に、挿入された状態の遮水部材1の袋体2に流体を充填して、該袋体2を膨張させて当該掘削孔30の内面に圧接させて、新たに形成される掘削孔30から前記一列に形成された掘削孔30へ流れるコンクリートスラッジ及び削孔水を遮るようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩盤やコンクリート構造物の床面に、削孔水を供給しつつ、隣り合う同士が連通するように掘削孔を一列に形成した後、該既設の掘削孔のうち、いずれかの掘削孔に連通するように、新たに掘削孔を形成しようとする場合に、新設の掘削孔から既設の掘削孔へ流れる、掘削によるコンクリートスラッジ及び削孔水を遮るために使用される遮水部材及びこれを用いた構造物解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
岩盤やコンクリート構造物を解体する場合、掘削機を使用されるのが一般的である。この掘削機は、例えば、構造物の床面に対して直交方向に設けられると共に、該床面に沿って移動できるように構成されるガイド体と、該ガイド体に軸方向に移動自在に設けられると共に、回転自在に設けられる一対の掘削ロッドと、該掘削ロッドの先端部に取り付けられる掘削ビットと、掘削ロッドの内部に軸方向に沿って形成されると共に、該掘削ビットに削孔水を供給する給水路と、掘削ロッドに平行するように、ガイド体に移動自在に設けられるガイドロッドと、該ガイドロッドの内部に軸方向に沿って形成される、前記削孔水及びコンクリートスラッジの吸引路とを備えている。なお、掘削ロッドは、互いの掘削ビットが干渉しないように、先端部が段違いに設けられている。そして、各掘削ビットの外径は同一であり、各掘削ビットの間隔は、掘削ビットの外径よりも小さく設定されており、各掘削ビットにより、1回の掘削で、連通する一対の掘削孔が形成されることになる。
【0003】
そして、削孔水を供給しつつ掘削孔を一列に形成する一方、該掘削孔のいずれかを起点にして、削孔水を吸引しつつ新たに掘削孔を他列に形成し、岩盤やコンクリート構造物の床面に格子状に溝を形成して、当該構造物をブロック状にして取り壊している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−161397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の掘削機の場合、隣り合う同士が連通するように一列に形成される掘削孔のうち、いずれかの掘削孔に、新たに掘削孔を形成しようとする場合に、掘削ビットに供給される削孔水がガイドロッドの吸引路から吸引されずに、新たに形成される掘削孔から一列に形成された掘削孔へ削孔水が流れてしまうという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点を鑑み、一列に形成される掘削孔のうち、いずれかの掘削孔に、新たに掘削孔を形成しようとする場合に、新たに形成される掘削孔から前記一列に形成された掘削孔へ削孔水が流れることを防止できる遮水部材及びこれを用いた構造物解体方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係る遮水部材は、岩盤やコンクリート構造物の床面Wに、削孔水を供給しつつ、隣り合う同士が連通するように掘削孔30,…を一列に形成する掘削手段と、掘削によるコンクリートスラッジ及び削孔水を吸引する吸引手段とを備えた掘削機によって、前記一列に形成した掘削孔30,…のうち、いずれかの掘削孔30に連通するように、新たに掘削孔30を形成しようとする場合に、新たに形成される掘削孔30から前記一列に形成された掘削孔30,…へ流れる前記コンクリートスラッジ及び削孔水を遮るために使用される遮水部材であって、前記一列に形成された掘削孔30,…のいずれかに収縮された状態で軸方向に沿って挿入されると共に、挿入された状態で流体が充填されて膨張して当該掘削孔30の内面に圧接するように構成されることを特徴とする。
【0008】
この場合、新たに形成される掘削孔30から一列に形成された掘削孔30,…へ流れる、コンクリートスラッジ及び削孔水が、一列に形成された掘削孔30のいずれかに挿入された遮水部材1によって遮られるので、一列に形成された掘削孔30,…に流入する、コンクリートスラッジ及び削孔水を再度吸引する必要がなく、掘削作業が効率よく行われるようになる。
【0009】
また本発明によれば、前記遮水部材1,10,100,1000を、掘削孔30の開口部に位置する上部に給気弁3および排気弁4を有する袋体2,20,200,2000によって構成するようにしてもよい。
【0010】
この場合、袋体2,20,200,2000に空気を供給することで、袋体2,20,200,2000が膨張して、袋体2,20,200,2000の外面が掘削孔30の内面に圧接して密着するようになり、新たに形成される掘削孔30から一列に形成された掘削孔30,…へのコンクリートスラッジ及び削孔水の流れを遮ることができる。
【0011】
また本発明によれば、袋体20は、基端部6aを袋体20の底部に固着すると共に、先端部6bを袋体20の上部から気密に導出する芯材6を、軸方向に沿って内挿するような構成を採用することもできる。
【0012】
この場合、導出される芯材6の先端部6bを把持して、袋体20を掘削孔30の深さ方向に沿って挿入しやすくなると共に、袋体20の底部を掘削孔30の底部に確実に密着させることができる。即ち、袋体20の底部および側部が掘削孔30の底壁部および側壁部に確実に密着することで、コンクリートスラッジ及び削孔水を確実に遮ることができる。
【0013】
また本発明によれば、複数の充填室200a,…、2000a,…に仕切るための仕切り板7,70を袋体200,2000の内部に内装すると共に、各充填室200a,…、2000a,…にそれぞれ給気弁3および排気弁4を設けるような構成を採用することもできる。
【0014】
この場合、新たに形成される掘削孔30側に位置する充填室200a,…、2000a,…を除く、残りの充填室200a,…、2000a,…、即ち既設の掘削孔30側に位置する充填室200a,…、2000a,…に流体を充填すれば、新たに形成される掘削孔30からのコンクリートスラッジ及び削孔水を遮ることができる。一方、新たに形成される掘削孔30側に位置する充填室200a,…、2000a,…、即ち掘削手段によって掘削される側の充填室200a,…、2000a,…には流体を供給しないようにすれば、袋体2を掘削手段による掘削によって袋体200,2000を損傷することがない。
【0015】
また本発明によれば、掘削機の掘削手段による掘削動作から袋体2を保護するためのシート8を、袋体2の外周面に沿って巻回するような構成を採用することもできる。
【0016】
この場合、シート8によって袋体2の外面が保護されているので、掘削手段の掘削動作による損傷を考慮することなく、所望の掘削孔30に遮水部材1を挿入できるようになる。即ち、新たに形成される掘削孔30から既設の掘削孔30へ流れ込むコンクリートスラッジ及び削孔水を遮るのに最適な位置の掘削孔30に遮水部材1を挿入できる。
【0017】
また本発明によれば、前記遮水部材1Aを、コンクリートスラッジ及び削孔水によって膨張すると共に、圧縮によって収縮する発泡材で構成するようにしてもよい。
【0018】
この場合、新たに形成される掘削孔30から一列に形成された掘削孔30,…へのコンクリートスラッジ及び削孔水を吸引して膨張することで、遮水部材1Aの外面が掘削孔30の内面に圧接するようになり、前記コンクリートスラッジ及び削孔水の流れ込みを遮ることができるようになる。即ち、コンクリートスラッジ及び削孔水の吸引及び遮水が同時に可能になる。
【0019】
また本発明に係る構造物解体方法は、岩盤やコンクリート構造物の床面Wに、削孔水を供給しつつ、隣り合う同士が連通するように掘削孔30,…を一列に形成する掘削手段と、掘削によるコンクリートスラッジ及び削孔水を吸引する吸引手段とを備えた掘削機によって、前記一列に形成された掘削孔30,…のうち、いずれか一つの掘削孔30に連通するように、新たに掘削孔30,…を他列に形成することで、前記床面Wに格子状の溝40を形成して構造物をブロック状に解体する構造物解体方法であって、他列の掘削孔30,…から前記一列に形成された掘削孔30,…への前記コンクリートスラッジ及び削孔水の流れを遮るように、前記一列に形成された掘削孔30,…のいずれかに、前記いずれかの遮水部材1,10,100,1000を挿入することを特徴とする。
【0020】
この場合、岩盤やコンクリート構造物の床面Wに格子状の溝40を容易に形成することができる。即ち、一度吸引したコンクリートスラッジ及び削孔水を再度吸引する必要がないので、岩盤やコンクリート構造物を容易にブロック状にして解体できるようになる。つまり、掘削作業及び解体作業の作業性を向上できる。
【0021】
また本発明によれば、前記一列の掘削孔30,…のいずれかに、袋体2の内部に複数の充填室2a,…が形成された遮水部材1が挿入された場合において、前記充填室2aのうち、新たに掘削孔30を形成しようとする側の充填室2aを除く、既設の掘削孔30側の充填室2aに流体を充填するような構成を採用することもできる。
【0022】
この場合、必要箇所の充填室2aに流体を供給すればよく、より一層作業性が良くなる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、掘削機によって、一列に形成された掘削孔のうち、いずれか一つの掘削孔に収縮された状態の遮水部材を挿入すると共に、挿入された状態の遮水部材に流体を充填して膨張させて、当該掘削孔の内面に圧接するようにしたので、新たに形成される掘削孔から一列に形成された掘削孔へのコンクリートスラッジ及び削孔水の流れを遮ることができる。
【0024】
また、本発明によれば、一列に形成された掘削孔のうち、いずれかの掘削孔に、上述した遮水部材を挿入した状態で、新たな掘削孔を他列に形成するようにしたので、新たな掘削作業によって生じる、新設の掘削孔からのコンクリートスラッジ及び削孔水の流れを遮ることができる。したがって、岩盤やコンクリート構造物の床面に格子状の溝を容易に形成することができる。即ち、構造物の解体作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る空気が充填される袋体を有する遮水部材を示す図。
【図2】掘削面に形成される格子状の溝を示す図。
【図3】図2の溝において、十字状の溝を形成する場合の施工方法の説明図。
【図4】図2の溝において、T字状の溝を形成する場合の施工方法の説明図。
【図5】遮水部材の袋体に芯材を内挿した遮水部材を示す図。
【図6】袋体の内部を仕切り板によって2分割した遮水部材を示す図。
【図7】図6の遮水部材の使用態様の説明図。
【図8】袋体の内部を4分割した遮水部材の使用態様の説明図。
【図9】袋体の外周面にシートを巻回した遮水部材を示す図。
【図10】(a)は収縮した状態の遮水部材を示し、(b)は溝の水を給水して膨張した状態の遮水部材を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係る遮水部材について、図1〜図10を参照しつつ説明する。なお、掘削には、背景技術欄で説明した同等の掘削機を使用するものとし、1回の掘削で、連通した一対の掘削孔(スロット)が同時に形成されるものとする。また、図3及び図4と、図7及び図8については、図面の上側及び下側を、構造物の床面の上側及び下側とする。
【0027】
本実施形態に係る遮水部材1は、図1に示すように、細長い円柱状の袋体2と、該袋体2の上部に径方向に沿って給気弁3および排気弁4が所定の間隔をおいて配置されている。そして、給気弁3および排気弁4は、袋体2内部の充填室2aに連通して設けられている。また、給気弁3には、外部から接続されるコンプレッサ(図示せず)によって空気が導入されて、充填された空気が給気する際に外部に漏れ出ないように逆止弁(図示せず)が設けられている。
【0028】
袋体2は、伸縮性を有するゴム製の素材が使用されており、3〜5mm程度の厚さを有し、掘削孔30の深さに相当する長さ、例えば100〜120cm程度の長さを有している。そして、袋体2は、流体(空気)が充填されていない場合は収縮した状態で、細長いシート状になっているので、掘削孔30に挿入しやすくなっている。また、掘削孔30に袋体2が挿入された状態で、袋体2の充填室2aに流体が充填されると、袋体2は、膨張して掘削孔30の内径よりもやや大きい円柱状になり、掘削孔30の内面に圧接するようになる。膨張した場合の袋体2の外径は、例えば50〜100mm程度になっている。そして、異なる位置の掘削孔30に差し替える場合は、排気弁4から袋体2内部の空気を少し抜いて、収縮させた後、挿入されている掘削孔30から引き出して、別の掘削孔30にそのままの状態で挿入する。また、掘削作業終了後は、排気弁4を開放して、袋体2内部の空気を全て脱気して、袋体2を収縮させて、掘削孔30から袋体2を取り出す。
【0029】
つぎに使用態様について図2〜図4を参照して説明する。まず、構造物の床面Wには、図2に示すように、隣り合う同士が連通するように、掘削孔30,…が一列に形成されると共に、該掘削孔30,…のうちいずれかの掘削孔30を起点にして、新たに掘削孔30,…が他列に形成される。即ち、水平方向の3つの溝40a,…と、これに交差する上下方向の3つの溝40b,…が形成される結果、格子状の溝40が形成される。この溝40が構造物の床面Wに形成されることで、構造物がブロック状に取り壊されることになる。なお、掘削機によって、床面Wに掘削孔30,…を形成する場合は、削孔水を供給すると同時に、掘削によるコンクリートスラッジおよび削孔水を吸引しつつ、掘削することとする。
【0030】
前記格子状の溝40において、例えば、床面に十字状の溝を形成する場合、図3に示すように、図面の左から右に順に掘削孔30,…(溝40a)を一列に形成した後、該掘削孔30,…のうち、中央部の掘削孔30を起点にして、上側の掘削孔30,30(溝40b)を、中央部の掘削孔30に向かうように形成すると共に、下側の掘削孔30,30(溝40b)を、中央部の掘削孔30から離れるように形成する。この場合、遮水部材1は、一列の最後部の掘削孔30の掘削が終了した後、その中央部の掘削孔30を挟む一対の掘削孔30,30に遮水部材1を挿入する。挿入する際には、掘削孔30に挿入しやすくするために、遮水部材1の袋体2には空気を充填せずに、袋体2を収縮させた状態で掘削孔30,30に挿入する。また、この掘削孔30,30を選択した理由としては、中央部の掘削孔30を起点にして、新たに掘削孔30を形成しようとする場合、新たな掘削によって生じるコンクリートスラッジおよび削孔水が、既設の掘削孔群(溝40a)に流れない最適な位置に形成されているためである。
【0031】
また、床面にT字状の溝を形成する場合、図4に示すように、左から右に順に掘削孔30,…(溝40a)を一列に形成した後、該掘削孔30,…のうち、右側から2つ目の掘削孔30を起点して、下方向に沿って掘削孔30,…(溝40b)を形成する。この場合、起点となる右側から2つ目の掘削孔30に遮水部材1を予め挿入しておく。そうすることで、新たな掘削によって生じるコンクリートスラッジおよび削孔水が、既設の掘削孔群(溝40a)に流れなくなり、該溝40aにおける吸引作業を省略することができる。この場合、掘削ビットの回転によって、遮水部材1の袋体2が損傷されることが考えられるが、該袋体2を保護する手段として、袋体2に充填される流体圧を加減すると共に、袋体2自体による伸縮性でもって、掘削ビットからの損傷を回避している。
【0032】
なお、前記実施形態の場合、袋体2を少し収縮させた状態で、遮水部材1を掘削孔30に挿入するようにしたが、図5に示すように、袋体2の内部に軸方向に沿って内挿した芯材6を持って挿入するようにしてもよい。この芯材6は、基端部6aが袋体2の底部に固着されると共に、先端部6bが袋体2の上部を気密に貫通して外部に導出されている。この芯材6によって、柔軟な袋体2に剛性を持たせることができて、掘削孔30に袋体2を挿入しやすくなる。つまり、遮水部材10を確実に掘削孔30に挿入できるので、掘削孔30の底壁部及び側壁部の内面に、膨張した袋体2の外面を確実に圧接させて密着させることができ、コンクリートスラッジ及び削孔水の流れを確実に遮ることができる。また、他の手段として、図示していないが、袋体2の底部に、円板状の錘を固着しておいて、鉛直方向への袋体2の挿入が容易になるようにしてもよい。
【0033】
また、前記実施形態の場合、袋体2に一つの充填室2aが形成された遮水部材1としたが、図6に示すように、仕切り板(平板)7によって、充填室を二分割した遮水部材100であってもよい。この場合、分割された充填室200a,200aにそれぞれ連通する給気弁3,3及び排気弁4,4が配設されている。これによって、所望の充填室200aのみに流体(空気)を充填することで、回転する掘削ビットから遮水部材100の袋体200を保護することができる。例えば、図7の実線に示すように、一列に掘削孔30,…を形成した後、最終に形成された掘削孔30に、破線に示す新たな掘削孔30を形成しようとした場合、新たに掘削する側の充填室200aに対しては流体の供給を行わず、既設の掘削孔30側に位置する充填室200aのみに流体の供給を行うようにする。そうすれば、新たな掘削によって生じるコンクリートスラッジ及び削孔水が、一列に形成された掘削孔30,…、即ち既設の掘削孔群(溝40a)に流れ込むことがない。
【0034】
また、断面が十字形状の仕切り板70によって、充填室を4分割した遮水部材1000であってもよい(図示せず)。なお、各充填室2000aにそれぞれ連通する給気弁及び排気弁が配置されているものとする。この場合、例えば、図8に示すように、上下方向に沿って形成された掘削孔群(溝40b)と、該掘削孔群の最後部の掘削孔30を起点にして、左右方向に沿って掘削孔群(溝40a)を形成した後、さらに、その交点に位置する掘削孔30を起点として、下側及び左側に新たに掘削孔30を形成しようとする場合、起点となる掘削孔30に遮水部材1000を挿入する際、4つに分割された各充填室2000a,…を上下左右に位置するように挿入する。そうすれば、既設の掘削孔30,…に位置する充填室2000aのみに流体を充填することで、新たな掘削によって生じるコンクリートスラッジ及び削孔水の既設の掘削孔群への流れを遮ることができる。
【0035】
また、前記実施形態の場合、掘削ビットから遮水部材1の袋体2を保護する手段としては、充填される流体圧の加減と、袋体2自体の伸縮性をもって回避するとしたが、図9に示すように、掘削ビットが回転しても袋体2が損傷しないように、袋体2の外周面に、麻素材のシート8を巻回するようにしてもよい。この場合、掘削ビットによる損傷を考慮することなく、所望の掘削孔30、例えば、新たに形成される掘削孔30に隣接する掘削孔30に遮水部材1を挿入できるようになり、作業性がより一層よくなる。
【0036】
また、前記実施形態の場合、流体が充填される袋体2を有する遮水部材1としたが、コンクリートスラッジ及び削孔水を吸引して膨張する素材(発泡材)で構成される遮水部材1Aであってもよい。この場合、図10(a)に示すように、コンクリートスラッジ及び削孔水を吸引すると、図10(b)に示すように、膨張して拡径して、掘削孔30の内面に遮水部材1の外面が圧接するようになる。新たに形成される掘削孔30からのコンクリートスラッジ及び削孔水の吸引、及び、流れ込み防止の相乗効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0037】
1,1A,10,100,1000…遮水部材、2,20,200,2000…袋体、2a…充填室、3…給気弁、4…排気弁、6…芯材、6a…基端部、6b…先端部、7,70…仕切り板、8…シート、30…掘削孔、40…格子状の溝、40a…水平方向の溝、40b…上下方向の溝、W…床面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩盤やコンクリート構造物の床面(W)に、削孔水を供給しつつ、隣り合う同士が連通するように掘削孔(30)を一列に形成する掘削手段と、掘削によるコンクリートスラッジ及び削孔水を吸引する吸引手段とを備えた掘削機によって、前記一列に形成された掘削孔(30,…)のうち、いずれかの掘削孔(30)に連通するように、新たに掘削孔(30)を形成しようとする場合に、新たに形成される掘削孔(30)から前記一列に形成された掘削孔(30,…)へ流れる前記コンクリートスラッジ及び削孔水を遮るために使用される遮水部材であって、
前記一列に形成された掘削孔(30,…)のいずれかに収縮された状態で軸方向に沿って挿入されると共に、挿入された状態で流体が充填されて膨張して当該掘削孔(30)の内面に圧接するように構成されることを特徴とする遮水部材。
【請求項2】
前記遮水部材(1,10,100,1000)は、掘削孔(30)の開口部に位置する上部に給気弁(3)および排気弁(4)を有する袋体(2,20,200,2000)によって構成されることを特徴とする請求項1に記載の遮水部材。
【請求項3】
前記袋体(20)は、軸方向に沿って芯材(6)が内挿され、該芯材(6)は、基端部(6a)が該袋体(20)の底部に固着されると共に、先端部(6b)が袋体(20)の上部から気密に導出されることを特徴とする請求項2に記載の遮水部材。
【請求項4】
前記袋体(200,2000)は、内部を複数の充填室(200a,…,2000a,…)に仕切るための仕切り板(7,70)が軸方向に沿って内装されると共に、各充填室(200a,…,2000a,…)にそれぞれ給気弁(3)及び排気弁(4)が設けられることを特徴とする請求項2に記載の遮水部材。
【請求項5】
前記袋体(2)は、前記掘削機の掘削手段による掘削動作から袋体(2)を保護するためのシート(8)が、袋体(2)の外周面に沿って巻回されることを特徴とする請求項2に記載の遮水部材。
【請求項6】
前記遮水部材(1A)は、コンクリートスラッジ及び削孔水を吸引することによって膨張すると共に、圧縮によって収縮する発泡材で構成されることを特徴とする請求項1に記載の遮水部材。
【請求項7】
岩盤やコンクリート構造物の床面(W)に、削孔水を供給しつつ、隣り合う同士が連通するように掘削孔(30)を一列に形成する掘削手段と、掘削によるコンクリートスラッジ及び削孔水を吸引する吸引手段とを備えた掘削機によって、前記一列に形成した掘削孔(30,…)のうち、いずれか一つの掘削孔(30)に連通するように、新たに掘削孔(30,…)を他列に形成することで、前記床面(W)に格子状の溝(40)を形成して構造物をブロック状に解体する構造物解体方法であって、
他列の掘削孔(30,…)から前記一列に形成された掘削孔(30,…)への前記コンクリートスラッジ及び削孔水の流れを遮るように、前記一列に形成された掘削孔(30,…)のいずれかに、前記請求項1乃至6のいずれか1項に記載の遮水部材(1,10,100,1000)を挿入することを特徴とする構造物解体方法。
【請求項8】
前記一列の掘削孔(30,…)のいずれかに、前記請求項4に記載の遮水部材(100,1000)が挿入された場合において、袋体(200,2000)の内部に形成された複数の充填室(200a,…、2000a,…)のうち、新たに掘削孔(30)を形成しようとする側の充填室(200a,…、2000a,…)を除く、既設の掘削孔(30,30)側の充填室(200a,…、2000a,…)に流体を充填するようにしたことを特徴とする請求項7に記載の構造物解体方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−99262(P2011−99262A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255189(P2009−255189)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】