説明

遮音板並びにそれを用いた構造物及びそれを構成する部材

【課題】 周囲の支持に依存することなく、板部材に加わる音圧に場所に依存する位相差が生じる場合にも板部材の面内伸縮による弾性作用によって音を遮断する遮音板を提供する。
【解決手段】 アーチ型やドーム型などの曲率を有する形状に成形された板部材1と、この板部材1の曲率を有する部位の縁部1a,1bを、両端2a,2bで固定する5つの梁2からなる遮音板であって、板部材1の湾曲方向に作用する面内伸縮モードの1次共振周波数[ヤング率/{密度・(曲率半径)}]1/2/(2×円周率)が、可聴周波数帯域内又は、遮断の対象とする音の周波数よりも高くなるよう板部材1の曲率半径を設定し、板部材1の曲げ変形を抑え且つ板部材1の面内弾性作用により音を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性反発力により音を遮断する遮音板並びにそれを用いた構造物及びそれを構成する部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音の遮断には、コンクリートや鉄板など質量の大きい材料が有効とされている。この手法による音の遮断効果は、質量則に従い、周波数が低くなるにつれて劣化する性質がある。このような問題点を解決するため、弾性による音の遮断技術として、膜や板をドーム型やアーチ型に成形し、成形した膜や板の周囲を固定すると、膜や板は音圧によって面内伸縮による弾性作用を生じ、この弾性効果によって音を遮断・吸収するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO2004/107313号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のように、湾曲した板の弾性作用による遮音技術では、音圧による力が周囲の枠に集中するため、大型化が進むにつれて補強材の撓み振動による遮音効果の劣化は著しくなる。また、板に加わる音圧に場所に依存する位相差が生じ易くなり弾性作用による遮音が得られ難くなる。
【0005】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、周囲の支持に依存することなく、板部材に加わる音圧に場所に依存する位相差が生じる場合にも板部材の面内伸縮による弾性作用によって音を遮断する遮音板並びにそれを用いた構造物及びそれを構成する部材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、アーチ型やドーム型などの曲率を有する形状に成形された板部材と、この板部材の曲率を有する部位の縁部を、両端で固定する少なくとも1つの梁からなる遮音板であって、板部材の湾曲方向に作用する面内伸縮モードの1次共振周波数[ヤング率/{密度・(曲率半径)}]1/2/(2×円周率)が、可聴周波数帯域内又は、遮断の対象とする音の周波数よりも高くなるよう板部材の曲率半径を設定し、板部材の曲げ変形を抑え且つ板部材の面内弾性作用により音を遮断するものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、アーチ型やドーム型などの曲率を有する形状に成形された板部材と、この板部材に接合する少なくとも1つの補強材からなる遮音板であって、板部材の湾曲方向に作用する面内伸縮モードの1次共振周波数[ヤング率/{密度・(曲率半径)}]1/2/(2×円周率)が、可聴周波数帯域内又は、遮断の対象とする音の周波数よりも高くなるよう板部材の曲率半径を設定し、アーチ型に形成した補強材の凸曲面又は凹曲面を板部材の曲率を有する部位に接合して、板部材の曲げ変形を抑え且つ板部材の面内弾性作用により音を遮断するものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、アーチ型やドーム型などの曲率を有する形状に成形された板部材と、この板部材に接合する格子状やハニカム状などに形成した補強枠からなる遮音板であって、板部材の湾曲方向に作用する面内伸縮モードの1次共振周波数[ヤング率/{密度・(曲率半径)}]1/2/(2×円周率)が、可聴周波数帯域内又は、遮断の対象とする音の周波数よりも高くなるよう板部材の曲率半径を設定し、アーチ型に形成した補強枠の凸曲面又は凹曲面を板部材の曲率を有する部位に接合して、板部材の曲げ変形を抑え且つ板部材の面内弾性作用により音を遮断するものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の遮音板において、前記梁が、前記板部材の曲率を有する曲面のうちで曲率半径が最小となる曲面に固定される。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項2に記載の遮音板において、前記補強材が、前記板部材の曲率を有する曲面のうちで曲率半径が最小となる曲面に接合される。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項3に記載の遮音板において、前記補強枠が、前記板部材の曲率を有する曲面のうちで曲率半径が最小となる曲面に接合される。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項1又は4に記載の遮音板において、前記梁で囲まれた前記板部材に掛かる音圧の位相差が90°以内になるよう前記梁の間隔を設定した。
【0013】
請求項8に係る発明は、請求項2又は5に記載の遮音板において、前記補強材で囲まれた前記板部材に掛かる音圧の位相差が90°以内になるよう前記補強材の間隔を設定した。
【0014】
請求項9に係る発明は、請求項3又は6に記載の遮音板において、前記補強枠の開口部で囲まれた前記板部材に掛かる音圧の位相差が90°以内になるよう前記補強枠の開口部寸法を設定した。
【0015】
請求項10に係る発明は、請求項2、5又は8に記載の遮音板において、前記補強材の端部をT字型又はL字型に加工するか、端部を折り曲げ加工するか、或いは端部に棒状部材を接合する。
【0016】
請求項11に係る発明は、請求項3、6又は9に記載の遮音板において、前記補強枠の端部をT字型又はL字型に加工するか、端部を折り曲げ加工するか、或いは端部に棒状部材を接合する。
【0017】
請求項12に係る発明は、請求項2、5、8又は10に記載の遮音板において、前記補強材に貫通孔を形成した。
【0018】
請求項13に係る発明は、請求項3、6、9又は11に記載の遮音板において、前記補強枠に貫通孔を形成した。
【0019】
請求項14に係る発明は、請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の遮音板において、前記板部材の周囲を周囲固定枠に固定した。
【0020】
請求項15に係る発明は、請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の遮音板を音が放出される部分に取り付けた、自動車、航空機、建造物、機械、電気機器などの構造物及びそれを構成する部材に適用し、音を遮断・吸収するものである。
【発明の効果】
【0021】
請求項1〜3に係る発明によれば、周囲の支持に依存することなく、板部材に加わる音圧に場所に依存する位相差が生じる場合にも、板部材の曲げ変形を抑え且つ板部材の面内伸縮による弾性作用によって音を遮断することができる。
【0022】
請求項4〜6に係る発明によれば、梁、補強材又は補強枠が、板部材の曲率を有する曲面のうちで曲率半径が最小となる曲面に固定されるので、最大の遮音性能を得ることができる。
【0023】
請求項7〜9に係る発明によれば、位相差による遮音性能の劣化を抑えることができる。
【0024】
請求項10、11に係る発明によれば、補強材又は補強枠の撓み量を減少させて遮音効果の劣化を抑えることができる。
【0025】
請求項12、13に係る発明によれば、補強材又は補強枠に貫通孔を形成することにより、軽量化が図れる。
【0026】
請求項14に係る発明によれば、周囲固定枠の強度不足に伴う遮音効果の劣化を防ぐことができる。
【0027】
請求項15に係る発明によれば、自動車、航空機、建造物、機械、電気機器などの構造物及びそれを構成する部材において、有効な遮音効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、図1〜図7は本発明に係る遮音板の第1〜7実施の形態を示す図、図8は補強材及び補強枠の変形例の斜視図、図9は補強材及び補強枠の変形例の側面図、図10は周囲固定枠を用いた場合の遮音板を示す図である。
【0029】
本発明に係る遮音板の第1実施の形態は、図1に示すように、アーチ状の曲率を有する形状に成形された板部材1と、板部材1の曲率を有する曲面の縁部1a,1bに両端2a,2bを固定する梁2からなる。固定方法としては、接着でも溶接でもよいし、ネジや嵌め合いなどで機構的に固定してもよい。また、一体成形で板部材1と梁2を形成してもよい。板部材1としては、アクリルやポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック板、アルミなどの金属板、ベニア板など用いられる。梁2の材質としては、プラスチックや金属などでよい。
【0030】
アーチ状に成形された板部材1の曲率半径は、板部材1が音圧による面内の弾性伸縮作用で音を遮断するよう、板部材1の湾曲方向に作用する面内伸縮モードの1次共振周波数[ヤング率/{密度・(曲率半径)}]1/2/(2×円周率)が、遮断の対象となる音の周波数よりも高くなるように設定されている。
【0031】
また、梁2の両端2a,2bに固定される板部材1の2つの縁部1a,1bは、曲率を有する板部材1の曲面のうちで最小の曲率半径を形成する部位であることが望ましい。なお、アーチ状に成形された板部材1の場合には、設定された曲率半径が梁2の両端2a,2bに固定される板部材1の2つの縁部1a,1bが形成する最小の曲率半径と一致することになる。また、板部材1に掛かる音圧に位相差が生じる場合でも、梁2よって挟まれた板部材1の縁部で音圧の位相差が90°以内となるように、梁2の設置間隔が設定されている。
【0032】
曲面縁部を梁2で固定することにより、板部材1の曲げ変形を抑え且つ板部材1の面内伸縮による弾性作用によって音を遮断することができる。また、梁2を板部材1の湾曲方向に対して斜めに取り付けるのではなく、図1のように湾曲方向に沿って且つ曲率を有する板部材1の曲面のうちで最小の曲率半径を形成する曲面縁部1a,1bに取り付けることで遮音効果が向上する。更に、板部材1に加わる音圧に場所に依存する位相差が生じる場合でも、梁2よって挟まれた板部材1の縁部で音圧の位相差が90°以内となるように、梁2の設置間隔を設定することにより、位相差による遮音性能の劣化を抑えることができる。
【0033】
本発明に係る遮音板の第2実施の形態は、図2に示すように、所定の曲率を有する形状に成形されたアーチ状の板部材11と、板部材11の凹曲面に一様に接合する補強材12からなる。補強材12は、略半円形状に形成され、凸状でアーチ状に形成された上部12aが板部材11の凹曲面に接合される。接合による固定方法としては、接着でも溶接でもよいし、ネジや嵌め合いなどで機構的に固定してもよい。また、一体成形で板部材1と補強材12を形成してもよい。板部材11としては、アクリルやポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック板、アルミなどの金属板、ベニア板など用いられる。補強材12の材質としては、プラスチックや金属などでよい。
【0034】
アーチ状に成形された板部材11の曲率半径は、板部材11が音圧による面内の弾性伸縮作用で音を遮断するよう、板部材11の湾曲方向に作用する面内伸縮モードの1次共振周波数[ヤング率/{密度・(曲率半径)}]1/2/(2×円周率)が、遮断の対象となる音の周波数よりも高くなるように設定されている。
【0035】
また、補強材12の両端12b,12cに固定される板部材11の2つの縁部11a,11bは、曲率を有する板部材11の曲面のうちで最小の曲率半径を形成する部位であることが望ましい。なお、アーチ状に成形された板部材11の場合には、設定された曲率半径が補強材12の両端12b,12cに固定される板部材11の2つの縁部11a,11bが形成する最小の曲率半径と一致することになる。また、板部材11に掛かる音圧に位相差が生じる場合でも、補強材12よって挟まれた部位13で音圧の位相差が90°以内となるように、補強材12の設置間隔が設定されている。
【0036】
また、補強材12の撓みは、遮音効果を劣化させる原因となるので、図8(a)に示すように、断面形状がT字型になるよう補強材12の底部12dに加工を施して、撓み量を減少させることができる。また、図8(b)に示すように、断面形状がL字型になるよう補強材12の底部12dに加工を施してもよく、図8(c)に示すように、補強材12の底部12dに曲げ加工を施してもよく、図8(d)に示すように、補強材12の底部12dの側部12eに他の部材(角棒状部材)12fを接合してもよく、何れも補強材12の撓み量を減少させることができる。
【0037】
更に、図9(a)に示すように、補強材12の代わりに貫通孔14を側部15aに加工した孔開き補強材15を用いれば、軽量化を図ることができる。更に、孔の形状を円形にすれば、補強材自体の強度劣化による撓みを抑えることができる。
【0038】
このように、曲率を有する板部材11の曲面のうちで最小の曲率半径を形成する曲面の縁部11a,11bを5つの補強材12,15で固定することにより、板部材11の曲げ変形を抑え且つ板部材11の面内伸縮による弾性作用によって音を遮断することができる。更に、板部材11に加わる音圧に場所に依存する位相差が生じる場合でも、補強材12,15よって囲まれた部位13で音圧の位相差が90°以内となるように、補強材12,15の設置間隔を設定することにより、位相差による遮音性能の劣化を抑えることができる。
【0039】
本発明に係る遮音板の第3実施の形態は、図3に示すように、所定の曲率を有する形状に成形されたアーチ状の板部材21と、板部材21の凸曲面に一様に接合する補強材22からなる。補強材22は、凹状でアーチ状に形成された上部22aが板部材21の曲面に接合される。接合による固定方法としては、接着でも溶接でもよいし、ネジや嵌め合いなどで機構的に固定してもよい。また、一体成形で板部材1と補強材22を形成してもよい。板部材21としては、アクリルやポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック板、アルミなどの金属板、ベニア板など用いられる。補強材22の材質としては、プラスチックや金属などでよい。
【0040】
アーチ状に成形された板部材21の曲率半径は、板部材21が音圧による面内の弾性伸縮作用で音を遮断するよう、板部材21の湾曲方向に作用する面内伸縮モードの1次共振周波数[ヤング率/{密度・(曲率半径)}]1/2/(2×円周率)が、遮断の対象となる音の周波数よりも高くなるように設定されている。
【0041】
また、補強材22の両端22b,22cに固定される板部材21の2つの縁部21a,21bは、曲率を有する板部材21の曲面のうちで最小の曲率半径を形成する部位であることが望ましい。なお、アーチ状に成形された板部材21の場合には、設定された曲率半径が補強材22の両端22b,22cに固定される板部材21の2つの縁部21a,21bが形成する最小の曲率半径と一致することになる。また、板部材21に掛かる音圧に位相差が生じる場合でも、補強材22よって囲まれた部位23で音圧の位相差が90°以内となるように、補強材22の設置間隔が設定されている。
【0042】
また、補強材22の撓みは、遮音効果を劣化させる原因となるので、図8(a)に示すように、断面形状がT字型になるよう補強材22の底部22dに加工を施して、撓み量を減少させることができる。また、図8(b)に示すように、断面形状がL字型になるよう補強材22の底部22dに加工を施してもよく、図8(c)に示すように、補強材22の底部22dに曲げ加工を施してもよく、図8(d)に示すように、補強材22の底部22dの側部22eに他の部材(角棒状部材)22fを接合してもよく、何れも補強材22の撓み量を減少させることができる。
【0043】
更に、図9(b)に示すように、補強材22の代わりに円形の貫通孔24を側部25aに加工した孔開き補強材25を用いれば、強度劣化を抑えつつ、軽量化を図ることができる。また、貫通孔の形状を力のかかる方向に長軸を有する楕円や長方形などの形状にしても、強度劣化を抑える効果がある。
【0044】
曲面縁部を補強材22,25で固定することにより、板部材21の曲げ変形を抑え且つ板部材21の面内伸縮による弾性作用によって音を遮断することができる。また、補強材22,25を板部材1の湾曲方向に対して斜めに取り付けるのではなく、図1のように湾曲方向に沿って且つ曲率を有する板部材1の曲面のうちで最小の曲率半径を形成する曲面縁部21a,21bに取り付けることで遮音効果が向上する。更に、板部材21に加わる音圧に場所に依存する位相差が生じる場合でも、補強材22,25よって挟まれた部位23で音圧の位相差が90°以内となるように、補強材22,25の設置間隔を設定することにより、位相差による遮音性能の劣化を抑えることができる。
【0045】
本発明に係る遮音板の第4実施の形態は、図4に示すように、所定の曲率を有する形状に成形されたアーチ状の板部材31と、板部材31の凹曲面に接合する矩形状の補強枠32からなる。補強枠32は、図2に示す補強材12と同形状の補強材33を連結部材34で連結して構成したもので、凸状でアーチ状に形成された補強材33の上部33a及び連結部材34の上部34aが板部材31の凹曲面に接合される。板部材31としては、アクリルやポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック板、アルミなどの金属板、ベニア板など用いられる。補強枠32の材質としては、プラスチックや金属などでよい。なお、補強材33として、図3に示す補強材22と同形状のものを用いて補強枠を構成することもできる。また、補強枠32の他に、ハニカムなどの多角形状の補強枠を用いて遮音板を構成することもできる。
【0046】
アーチ状に成形された板部材31の曲率半径は、板部材31が音圧による面内の弾性伸縮作用で音を遮断するよう、板部材31の湾曲方向に作用する面内伸縮モードの1次共振周波数[ヤング率/{密度・(曲率半径)}]1/2/(2×円周率)が、遮断の対象となる音の周波数よりも高くなるように設定されている。
【0047】
また、補強材33の両端33b,33cに固定される板部材31の2つの縁部31a,31bは、曲率を有する板部材31の曲面のうちで最小の曲率半径を形成する部位であることが望ましい。なお、アーチ状に成形された板部材31の場合には、設定された曲率半径が各補強材33の両端33b,33cに固定される板部材31の2つの縁部31a,31bが形成する最小の曲率半径と一致することになる。また、板部材31に掛かる音圧に位相差が生じる場合でも、補強材33と連結部材34で囲まれた部位(開口部)35で音圧の位相差が90°以内となるように、補強材33と連結部材34の設置間隔が設定されている。
【0048】
また、補強枠32を構成する各補強材33の撓みは、遮音効果を劣化させる原因となるので、図8(a)に示すように、断面形状がT字型になるよう補強材33の底部33dに加工を施して、撓み量を減少させることができる。また、図8(b)に示すように、断面形状がL字型になるよう補強材33の底部33dに加工を施してもよく、図8(c)に示すように、補強材33の底部33dに曲げ加工を施してもよく、図8(d)に示すように、補強材33の底部33dの側部33eに他の部材(角棒状部材)33fを接合してもよく、何れも補強枠32を構成する補強材33の撓み量を減少させることができる。
【0049】
更に、補強材33の代わりに、図9(a)に示すように、円形の貫通孔36を側部37aに加工した孔開き補強材37を用いて補強枠32を構成すれば、強度劣化を抑えつつ、軽量化を図ることができる。なお、補強材33として、図3に示す補強材22と同形状のものを用いて補強枠を構成した場合でも、図9(b)に示すように、円形の貫通孔24を側部25aに加工した孔開き補強材25を用いて補強枠を構成すれば、強度劣化を抑えつつ、軽量化を図ることができる。また、貫通孔の形状を力のかかる方向に長軸を有する楕円や長方形などの形状にしても、強度劣化を抑える効果がある。
【0050】
このように、曲率を有する板部材31の曲面のうちで最小の曲率半径を形成する曲面の縁部31a,31bを、補強枠32を構成する補強材33と連結部材34で固定することにより、板部材31の曲げ変形を抑え且つ板部材31の面内伸縮による弾性作用によって音を遮断することができる。更に、板部材31に加わる音圧に場所に依存する位相差が生じる場合でも、補強材33と連結部材34で囲まれた部位(開口部)35で音圧の位相差が90°以内となるように、補強材33と連結部材34の設置間隔を設定することにより、位相差による遮音性能の劣化を抑えることができる。
【0051】
本発明に係る遮音板の第5実施の形態は、図5に示すように、所定の曲率を有する形状に成形された円形でドーム状の板部材41と、板部材41の凹曲面に接合する補強枠42からなる。補強枠42は、図2に示す補強材12と略同形状の補強材43を放射状に配列してドーム状に形成されている。凸状でアーチ状に形成された補強材43の上部43aが板部材41の凹曲面に接合されている。接合による固定方法としては、接着でも溶接でもよいし、ネジや嵌め合いなどで機構的に固定してもよい。また、一体成形で板部材41と補強枠42を形成してもよい。板部材41としては、アクリルやポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック板、アルミなどの金属板、ベニア板など用いられる。補強枠42の材質としては、プラスチックや金属などでよい。
【0052】
円形でドーム状に成形された板部材41の曲率半径は、板部材41が音圧による面内の弾性伸縮作用で音を遮断するよう、板部材41の湾曲方向に作用する面内伸縮モードの1次共振周波数[ヤング率/{密度・(曲率半径)}]1/2/(2×円周率)が、遮断の対象となる音の周波数よりも高くなるように設定されている。
【0053】
また、補強枠42を構成する各補強材43の両端43b,43cに固定される板部材41の2つの縁部41a,41bは、曲率を有する板部材41の曲面のうちで最小の曲率半径を形成する部位であることが望ましい。また、板部材41に掛かる音圧に位相差が生じる場合でも、補強材43で囲まれた部位44で音圧の位相差が90°以内となるように、補強材43の設置間隔が設定されている。
【0054】
また、補強枠42を構成する各補強材43の撓みは、遮音効果を劣化させる原因となるので、図8(a)に示すように、断面形状がT字型になるよう補強材43の底部43dに加工を施して、撓み量を減少させることができる。また、図8(b)に示すように、断面形状がL字型になるよう補強材43の底部43dに加工を施してもよく、図8(c)に示すように、補強材43の底部43dに曲げ加工を施してもよく、図8(d)に示すように、補強材43の底部43dの側部43eに他の部材(角棒状部材)43fを接合してもよく、何れも補強枠42を構成する補強材43の撓み量を減少させることができる。
【0055】
更に、補強材43の代わりに、図9(a)に示すように、円形の貫通孔45を側部46aに加工した孔開き補強材46を用いて補強枠42を構成すれば、強度劣化を抑えつつ、軽量化を図ることができる。また、貫通孔の形状を力のかかる方向に長軸を有する楕円や長方形などの形状にしても、強度劣化を抑える効果がある。
【0056】
このように、曲率を有する板部材41の曲面のうちで最小の曲率半径を形成する曲面の縁部41a,41bを、補強枠42を構成する各補強材43で固定することにより、板部材41の曲げ変形を抑え且つ板部材41の面内伸縮による弾性作用によって音を遮断することができる。更に、板部材41に加わる音圧に場所に依存する位相差が生じる場合でも、補強材43で囲まれた部位44で音圧の位相差が90°以内となるように、補強材43の設置間隔を設定することにより、位相差による遮音性能の劣化を抑えることができる。
【0057】
本発明に係る遮音板の第6実施の形態は、図6に示すように、所定の曲率を有する形状に成形された円形でドーム状の板部材51と、板部材51の凹曲面に接合する補強枠52からなる。補強枠52は、図2に示す補強材12と略同形状の補強材53を格子状に配列してドーム状に形成されている。凸状でアーチ状に形成された各補強材53の上部53aが、板部材51の凹曲面に接合されている。接合による固定方法としては、接着でも溶接でもよいし、ネジや嵌め合いなどで機構的に固定してもよい。また、一体成形で板部材51と補強枠52を形成してもよい。板部材51としては、アクリルやポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック板、アルミなどの金属板、ベニア板など用いられる。補強枠52の材質としては、プラスチックや金属などでよい。
【0058】
円形でドーム状に成形された板部材51の曲率半径は、板部材51が音圧による面内の弾性伸縮作用で音を遮断するよう、板部材51の湾曲方向に作用する面内伸縮モードの1次共振周波数[ヤング率/{密度・(曲率半径)}]1/2/(2×円周率)が、遮断の対象となる音の周波数よりも高くなるように設定されている。
【0059】
また、補強枠52を構成する各補強材53の両端53b,53cに固定される板部材51の2つの縁部51a,51bは、曲率を有する板部材51の曲面のうちで最小の曲率半径を形成する部位であることが望ましい。また、板部材51に掛かる音圧に位相差が生じる場合でも、補強材53で囲まれた部位54で音圧の位相差が90°以内となるように、補強材53の設置間隔が設定されている。
【0060】
また、補強枠52を構成する各補強材53の撓みは、遮音効果を劣化させる原因となるので、図8(a)に示すように、断面形状がT字型になるよう補強材53の底部53dに加工を施して、撓み量を減少させることができる。また、図8(b)に示すように、断面形状がL字型になるよう補強材53の底部53dに加工を施してもよく、図8(c)に示すように、補強材53の底部53dに曲げ加工を施してもよく、図8(d)に示すように、補強材53の底部53dの側部53eに他の部材(角棒状部材)を接合してもよく、何れも補強枠52を構成する補強材53の撓み量を減少させることができる。
【0061】
更に、補強材53の代わりに、図9(a)に示すように、円形の貫通孔55を側部56aに加工した孔開き補強材56を用いて補強枠52を構成すれば、強度劣化を抑えつつ、軽量化を図ることができる。また、貫通孔の形状を力のかかる方向に長軸を有する楕円や長方形などの形状にしても、強度劣化を抑える効果がある。
【0062】
このように、曲率を有する板部材51の曲面のうちで最小の曲率半径を形成する曲面の縁部51a,51bを、補強枠52を構成する各補強材53で固定することにより、板部材51の曲げ変形を抑え且つ板部材51の面内伸縮による弾性作用によって音を遮断することができる。更に、板部材51に加わる音圧に場所に依存する位相差が生じる場合でも、補強材53で囲まれた部位54で音圧の位相差が90°以内となるように、補強材53の設置間隔を設定することにより、位相差による遮音性能の劣化を抑えることができる。
【0063】
本発明に係る遮音板の第7実施の形態は、図7に示すように、所定の曲率を有する形状に成形された楕円形でドーム状の板部材61と、板部材61の凹曲面に接合する補強材62からなる。5つの補強材62は、夫々略半円形状に形成され、凸状でアーチ状に形成された上部62aが板部材61の凹曲面に接合される。接合による固定方法としては、接着でも溶接でもよいし、ネジや嵌め合いなどで機構的に固定してもよい。また、一体成形で板部材61と補強材62を形成してもよい。板部材61としては、アクリルやポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック板、アルミなどの金属板、ベニア板など用いられる。補強材62の材質としては、プラスチックや金属などでよい。
【0064】
楕円形でドーム状に成形された板部材61の曲率半径は、板部材61が音圧による面内の弾性伸縮作用で音を遮断するよう、板部材61の湾曲方向に作用する面内伸縮モードの1次共振周波数[ヤング率/{密度・(曲率半径)}]1/2/(2×円周率)が、遮断の対象となる音の周波数よりも高くなるように設定されている。
【0065】
また、補強材62の両端62b,62cに固定される板部材61の2つの縁部6a,61bは、曲率を有する板部材61の曲面のうちで最小の曲率半径を形成する部位であることが望ましい。また、板部材61に掛かる音圧に位相差が生じる場合でも、補強材62よって囲まれた部位63で音圧の位相差が90°以内となるように、補強材62の設置間隔が設定されている。
【0066】
また、補強材62の撓みは、遮音効果を劣化させる原因となるので、図8(a)に示すように、断面形状がT字型になるよう補強材62の底部62dに加工を施して、撓み量を減少させることができる。また、図8(b)に示すように、断面形状がL字型になるよう補強材62の底部62dに加工を施してもよく、図8(c)に示すように、補強材62の底部62dに曲げ加工を施してもよく、図8(d)に示すように、補強材62の底部62dの側部62eに他の部材(角棒状部材)を接合してもよく、何れも補強材62の撓み量を減少させることができる。
【0067】
更に、図9(a)に示すように、補強材62の代わりに円形の貫通孔64を側部65aに加工した孔開き補強材65を用いれば、強度劣化を抑えつつ、軽量化を図ることができる。また、貫通孔の形状を力のかかる方向に長軸を有する楕円や長方形などの形状にしても、強度劣化を抑える効果がある。
【0068】
このように、曲率を有する板部材61の曲面のうちで最小の曲率半径を形成する曲面の縁部61a,61bを5つの補強材62,65で固定することにより、板部材61の曲げ変形を抑え且つ板部材61の面内伸縮による弾性作用によって音を遮断することができる。更に、板部材61に加わる音圧に場所に依存する位相差が生じる場合でも、補強材62,65よって囲まれた部位63で音圧の位相差が90°以内となるように、補強材62,65の設置間隔を設定することにより、位相差による遮音性能の劣化を抑えることができる。
【0069】
また、図10(a)に示すように、曲率を有する板部材71の縁部が周囲固定枠72で固定されている場合、梁、補強材又は補強枠を板部材71及び周囲固定枠72に接合すれば、周囲固定枠72の強度不足に伴う遮音効果の劣化を防ぐことができる。なお、図10(b),(c)は、図4に示す補強枠32を板部材71及び周囲固定枠72に接合した場合を示している。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る遮音板並びにそれを音が放出される部分に取り付けた構造物及びそれを構成する部材は、自動車、電車などの車両、航空機、船舶およびその他の輸送機器(乗物)、パネル、パーティションおよびその他の建築材料、遮音壁、防音壁、建造物、室、電気機器、機械、音響機器など、音の遮断・吸収が要求されるあらゆる構造物及びこれを構成する部材に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る遮音板の第1実施の形態を示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図、(d)は梁の斜視図
【図2】本発明に係る遮音板の第2実施の形態を示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図、(d)は補強材の斜視図
【図3】本発明に係る遮音板の第3実施の形態を示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図、(d)は補強材の斜視図
【図4】本発明に係る遮音板の第4実施の形態を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)のA―A線断面図、(c)は背面図、(d)は補強枠の一部斜視図
【図5】本発明に係る遮音板の第5実施の形態を示す図で、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は(b)のB―B線断面図
【図6】本発明に係る遮音板の第6実施の形態を示す図で、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は(b)のC―C線断面図
【図7】本発明に係る遮音板の第7実施の形態を示す図で、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は(b)のD―D線断面図
【図8】補強材及び補強枠の変形例の斜視図で、(a)はT字型加工、(b)はL字型加工、(c)は曲げ加工、(d)は棒状部材の接合
【図9】補強材及び補強枠の変形例の側面図で、(a)は凸型孔開き補強材の斜視図、(b)凹型孔開き補強材の斜視図
【図10】周囲固定枠を用いた場合の遮音板を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)のE―E線断面図、(c)は背面図
【符号の説明】
【0072】
1,11,21,31,41,51,61…板部材、1a,1b…縁部、2…梁、2a,2b…両端、12,22,33,43,53,62…補強材、14,36,45,55,64…貫通孔、32,42,52…補強枠。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーチ型やドーム型などの曲率を有する形状に成形された板部材と、この板部材の曲率を有する部位の縁部を、両端で固定する少なくとも1つの梁からなる遮音板であって、板部材の湾曲方向に作用する面内伸縮モードの1次共振周波数[ヤング率/{密度・(曲率半径)}]1/2/(2×円周率)が、可聴周波数帯域内又は、遮断の対象とする音の周波数よりも高くなるよう板部材の曲率半径を設定し、板部材の曲げ変形を抑え且つ板部材の面内弾性作用により音を遮断することを特徴とする遮音板。
【請求項2】
アーチ型やドーム型などの曲率を有する形状に成形された板部材と、この板部材に接合する少なくとも1つの補強材からなる遮音板であって、板部材の湾曲方向に作用する面内伸縮モードの1次共振周波数[ヤング率/{密度・(曲率半径)}]1/2/(2×円周率)が、可聴周波数帯域内又は、遮断の対象とする音の周波数よりも高くなるよう板部材の曲率半径を設定し、アーチ型に形成した補強材の凸曲面又は凹曲面を板部材の曲率を有する部位に接合して、板部材の曲げ変形を抑え且つ板部材の面内弾性作用により音を遮断することを特徴とする遮音板。
【請求項3】
アーチ型やドーム型などの曲率を有する形状に成形された板部材と、この板部材に接合する格子状やハニカム状などに形成した補強枠からなる遮音板であって、板部材の湾曲方向に作用する面内伸縮モードの1次共振周波数[ヤング率/{密度・(曲率半径)}]1/2/(2×円周率)が、可聴周波数帯域内又は、遮断の対象とする音の周波数よりも高くなるよう板部材の曲率半径を設定し、アーチ型に形成した補強枠の凸曲面又は凹曲面を板部材の曲率を有する部位に接合して、板部材の曲げ変形を抑え且つ板部材の面内弾性作用により音を遮断することを特徴とする遮音板。
【請求項4】
請求項1に記載の遮音板において、前記梁が、前記板部材の曲率を有する曲面のうちで曲率半径が最小となる曲面に固定されることを特徴とする遮音板。
【請求項5】
請求項2に記載の遮音板において、前記補強材が、前記板部材の曲率を有する曲面のうちで曲率半径が最小となる曲面に接合されることを特徴とする遮音板。
【請求項6】
請求項3に記載の遮音板において、前記補強枠が、前記板部材の曲率を有する曲面のうちで曲率半径が最小となる曲面に接合されることを特徴とする遮音板。
【請求項7】
請求項1又は4に記載の遮音板において、前記梁で挟まれた前記板部材に掛かる音圧の位相差が90°以内になるよう前記梁の間隔を設定したことを特徴とする遮音板。
【請求項8】
請求項2又は5に記載の遮音板において、前記補強材で挟まれた前記板部材に掛かる音圧の位相差が90°以内になるよう前記補強材の間隔を設定したことを特徴とする遮音板。
【請求項9】
請求項3又は6に記載の遮音板において、前記補強枠の開口部で囲まれた前記板部材に掛かる音圧の位相差が90°以内になるよう前記補強枠の開口部寸法を設定したことを特徴とする遮音板。
【請求項10】
請求項2、5又は8に記載の遮音板において、前記補強材の端部をT字型又はL字型に加工するか、端部を折り曲げ加工するか、或いは端部に棒状部材を接合することを特徴とする遮音板。
【請求項11】
請求項3、6又は9に記載の遮音板において、前記補強枠の端部をT字型又はL字型に加工するか、端部を折り曲げ加工するか、或いは端部に棒状部材を接合することを特徴とする遮音板。
【請求項12】
請求項2、5、8又は10に記載の遮音板において、前記補強材に貫通孔を形成したことを特徴とする遮音板。
【請求項13】
請求項3、6、9又は11に記載の遮音板において、前記補強枠に貫通孔を形成したことを特徴とする遮音板。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の遮音板において、前記板部材の周囲を周囲固定枠に固定したことを特徴とする遮音板。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の遮音板を音が放出される部分に取り付けた、自動車、航空機、建造物、機械、電気機器などの構造物及びそれを構成する部材に適用し、音を遮断・吸収することを特徴とする遮音板を用いた構造物及びそれを構成する部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−232906(P2007−232906A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52649(P2006−52649)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000173728)財団法人小林理学研究所 (15)
【出願人】(000115636)リオン株式会社 (128)
【Fターム(参考)】