説明

選別装置および選別方法

【課題】樹脂片における、臭素の含有有無の評価をより容易に行なえる選別装置および製造方法を提供する。
【解決手段】当該選別装置は、加速電圧が40kV以上60kV以下の電子ビームにより連続X線6を照射するX線源1と、厚みが50nm以上100nm以下であるモリブデンで形成されたフィルター14と、フィルター14および樹脂片2を透過したX線を検出するX線検出器と、X線検出器の検出データに基づいて樹脂片2を選別する制御部とを備える。制御部は、フィルター14を透過したX線について、臭素を含まない、樹脂片2と同一の樹脂にて形成された試験片にX線を照射したときのX線の透過強度のデータがあらかじめ記憶される記憶部と、フィルター14および樹脂片2を透過したX線の透過強度を上記データと比較することにより、樹脂片2を選別する演算部とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、対象物をリサイクルする際の選別装置および選別方法に関するものであり、特に、樹脂をリサイクルする際に樹脂に含まれる臭素の有無により選別するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
EUのRoHS指令が2006年7月から施行され水銀、カドミウム、鉛、六価クロム、ポリ臭素化ビフェニール(PBB)、ポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE)の6品目が使用規制対象物質となった。これに伴い、電気・電子製品をリサイクルする際において、製品を破断した樹脂片中に含まれる、特に臭素を含む難燃剤として用いられるPBBやPBDEの有無を簡便に判定できる技術の開発が重要になっている。
【0003】
上述の臭素とは、ハロゲン元素のひとつで特異な物性と優れた反応性を有する物質である。たとえば上述のPBBやPBDE、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂は、臭素を高濃度に含めることにより、優れた難燃剤として用いることがある。このほか、有機中間体、無機薬品、写真感光材料、染料、医薬品、農薬、難燃剤などの原料として使用される物質である。また、航空機、新幹線車両の内装材としても用いられることがある有用な物質であり、電気・電子製品においても多くの部材に臭素が含まれている。
【0004】
しかしながら臭素は元来猛毒で、環境に与える影響が大きい。このため、製品を破断した樹脂片のリサイクルを行なう際には、臭素を含む樹脂片と臭素を含まない樹脂片とに選別し、リサイクルまたは廃棄処分を行なうことが必要である。
【0005】
異なる化学組成物の対象物を識別し、分離する方法として、たとえば、特開平5−131176号公報(特許文献1)にて以下の方法が開示されている。具体的には、リサイクルする樹脂容器などの樹脂製品に電磁放射線を照射し、照射した電磁放射線が樹脂製品を透過する量を検出して、樹脂製品が塩化プラスチックであるか否か見分けて選別する方法が開示されている。一般的に、同じ厚みを有する物質に対して、より大きい原子番号を有する元素で形成される物質は、より小さい原子番号を有する元素で形成される物質よりも、電磁放射線の吸収率が大きく、透過率が小さくなる傾向がある。上述の特許文献1では、この性質を用いている。また、特許文献1では、樹脂容器の厚い部分や折り目部分では電磁放射の吸収特性および透過特性にばらつきがあるので、樹脂製品の最も厚みの小さい部分に放射線を照射し、信号を検出するという方法を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−131176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
臭素などの特定元素を検出して樹脂片を選別する場合でも、特許文献1のように電磁放射線の透過量により検出する方法を適用することが考えられる。しかしながら、一般に種々の製品が破断されて得られる樹脂片は、さまざまの厚みを有する樹脂片が多数混じった
ものである。また、樹脂容器のように薄い部分があるとは限らない。このため特許文献1のような樹脂片中の薄い部分の透過量を検出する方法で精度よく選別することができない。
【0008】
上記選別を行なう精度が悪いと、選別を行なった後に、臭素を含有する樹脂が臭素を含有しない樹脂中に混入する。このため臭素を含むべきでないリサイクル樹脂材料中の平均臭素濃度が上昇する。このように精度の悪い選別を繰り返すと、リサイクル樹脂材料中の臭素濃度が高くなる。やがてリサイクル樹脂材料中に含有される臭素の濃度がRoHS基準値を超えると、当該リサイクル樹脂材料をRoHS対応の製品に使用することができなくなる。
【0009】
そこで、本発明は上述の問題に鑑みなされたものである。その目的は、樹脂片における特定元素である臭素の有無の判定を行なうにあたり、判定結果が樹脂片の厚みに影響されることを抑制する選別装置および選別方法を供給することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の選別装置は、臭素の有無に応じて樹脂片を選別する選別装置である。その構成要素としてはまず、加速電圧が40kV以上60kV以下の、電子ビームにより連続X線を照射するX線源と、厚みが50nm以上100nm以下であるモリブデンで形成されたフィルターとを備える。また、X線源から照射された連続X線のうち、フィルターおよび樹脂片を透過したX線を検出するX線検出器も備えている。さらに、X線検出器の検出データに基づいて樹脂片を選別する制御部を備え、制御部は、フィルターを透過したX線について、臭素を含まない、樹脂片と同一の樹脂にて形成された試験片にX線を照射したときのX線の透過強度のデータがあらかじめ記憶される記憶部と、フィルターおよび樹脂片を透過したX線の透過強度を、臭素を含まない試験片にX線を照射したときのX線の透過強度のデータと比較することにより、樹脂片を選別する演算部とを含む。
【0011】
また、本発明の臭素の有無に応じて樹脂片を選別する選別方法には、以下の各工程を含んでいる。加速電圧を40kV以上60kV以下となるように設定した電子ビームにより連続X線を照射するX線源からの連続X線を、厚みが50nm以上100nm以下であるモリブデンで形成されたフィルターと樹脂片とに照射する工程を含んでいる。さらに、フィルターと、樹脂片とを透過したX線の透過強度を検出する工程がある。続いて、X線の透過強度を、フィルターを透過したX線について、臭素を含まない、樹脂片と同一の樹脂にて形成された試験片にX線を照射したときのX線の透過強度のデータと比較する工程と、比較を行なった結果に応じて樹脂片を選別する工程とを備えている。
【0012】
上述の選別装置および選別方法に関連してさらに、後述する選別装置および選別方法も考えられる。本発明における選別装置は、臭素の有無に応じて樹脂片を選別する選別装置であって、加速電圧が40kV以上60kV以下の、電子ビームにより連続X線を照射するX線源と、樹脂からなるフィルターとを備える。また、X線源から照射された連続X線のうち、フィルターおよび樹脂片を透過したX線を検出するX線検出器も備えている。さらに、X線検出器の検出データに基づいて樹脂片を選別する制御部を備え、制御部は、フィルターを透過したX線について、臭素を含まない、樹脂片と同一の樹脂にて形成された試験片にX線を照射したときのX線の透過強度のデータがあらかじめ記憶される記憶部と、フィルターおよび樹脂片を透過したX線の透過強度を、臭素を含まない試験片にX線を照射したときのX線の透過強度のデータと比較することにより、樹脂片を選別する演算部とを含む。
【0013】
また、本発明の臭素の有無に応じて樹脂片を選別する選別方法には、樹脂片を準備する工程と、加速電圧を40kV以上60kV以下となるように設定した電子ビームにより連続X線を照射するX線源からの連続X線を、樹脂からなるフィルターと樹脂片とに照射する工程とを含んでいる。さらに、フィルターと、樹脂片とを透過したX線の透過強度を検出する工程がある。続いて、X線の透過強度を、フィルターを透過したX線について、臭素を含まない、選別したい樹脂片と同一の樹脂にて形成された試験片にX線を照射したときのX線の透過強度のデータと比較する工程と、比較を行なった結果に応じて樹脂片を選別する工程とを備える。
【0014】
この発明に係る選別装置は、連続X線を照射するX線源と、臭素を含有する第1のフィルターと、臭素のX線吸収端よりも高エネルギー側にX線吸収端を有する元素を含有する第2のフィルターと、X線源から照射された連続X線のうち、第1のフィルターおよび樹脂片を透過した第1のX線を検出し、第1のX線強度を求める第1のX線検出器と、X線源から照射された連続X線のうち、第2のフィルターおよび樹脂片を透過した第2のX線を検出し、第2のX線強度を求める第2のX線検出器と、第1のX線強度および第2のX線強度を用いることで、樹脂片を選別する制御部とを備え、制御部は、記憶部と演算部とを有し、記憶部は、予め、臭素を含有しない場合の厚さが異なる複数の第1の標準となる樹脂片を用いて、第1のX線強度および第2のX線強度の関係について求めた第1のデータと、臭素を含有する場合の厚さが異なる複数の第2の標準となる樹脂片を用いて、第1のX線強度および第2のX線強度の関係について求めた第2のデータとを記憶し、演算部は、測定対象となる樹脂片について得られた、第1のX線強度および第2のX線強度と、第1のデータおよび第2のデータの関係に基づいて臭素の含有の有無を判別するための演算を行うものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明における、上述の各選別装置および各選別方法によれば、以下の事柄が可能となる。すなわち、選別したい対象物である樹脂片における特定元素である臭素の有無の判定を行なうにあたり、判定結果が樹脂片の厚みに影響されることを抑制し、結果を誤判定する可能性を小さくすることができる。したがって、上記の選別装置および選別方法を用いて選別された樹脂片は、臭素濃度が十分に低くなっている。このため、上記の選別方法を用いたリサイクル樹脂材料の製造方法により、臭素の含有量が十分に少ない、繰り返し利用が可能なリサイクル樹脂材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1における、臭素の有無に応じて樹脂片を選別する装置を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態1における、臭素の有無を判定するための測定部の詳細を示す概略図である。
【図3】臭素を含む第1のフィルターの、X線透過率のX線エネルギー依存性の例を示すグラフである。
【図4】モリブデンで形成させたフィルターの、X線透過率のX線エネルギー依存性を示すグラフである。
【図5】(A)第2のフィルターとして使用される、モリブデンで形成されたフィルターを示す概略図である。(B)第2のフィルターとして使用される、炭素を主成分とした支持体の表面がモリブデンの薄膜にて被覆された構造のフィルターを示す概略図である。(C)第2のフィルターとして使用される、モリブデンの薄膜が支持体の一方の主表面のみに形成された構造のフィルターを示す概略図である。
【図6】試験片の厚みと、第1のフィルターおよび試験片を通した連続X線の透過強度との関係を示す検量線である。
【図7】試験片の厚みと、第2のフィルターおよび試験片を通した連続X線の透過強度との関係を示す検量線である。
【図8】1mm厚のポリプロピレンのX線エネルギーに対する透過率と、臭素を1質量%含有した1mm厚のポリプロピレンのX線エネルギーに対する透過率を示すグラフである。
【図9】本発明の実施の形態1における選別方法を示すフローチャートである。
【図10】図9のフローチャートにおける工程(S100)または工程(S200)について詳細の工程を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態2における、臭素の有無に応じて樹脂片を選別する選別装置のうち、X線源とフィルターと樹脂片と、X線検出器とで形成される測定部のみを示す概略図である。
【図12】本発明の実施の形態3における、臭素の有無に応じて樹脂片を選別する選別装置のうち、X線源とフィルターと樹脂片と、X線イメージインテンシファイアとモータとで形成される測定部のみを示す概略図である。
【図13】本発明の実施の形態4における、臭素の有無に応じて樹脂片を選別する選別装置のうち、X線源とフィルターと樹脂片と、X線検出器とで形成される測定部のみを示す概略図である。
【図14】ラインセンサ36の各セルで検出されるX線透過強度の時間変化を示すグラフである。
【図15】ラインセンサ46の各セルで検出されるX線透過強度の時間変化を示すグラフである。
【図16】本発明の実施の形態5における、臭素の有無に応じて樹脂片を選別する選別装置のうち、X線源とフィルターと樹脂片と、X線検出器とで形成される測定部のみを示す概略図である。
【図17】本発明の実施の形態5における選別方法を示すフローチャートである。
【図18】本発明の実施の形態6における、臭素の有無に応じて樹脂片を選別する選別装置のうち、X線源とフィルターと樹脂片と、X線検出器とで形成される測定部のみを示す概略図である。
【図19】本発明の実施の形態7における、臭素の有無に応じて樹脂片を選別する装置を示す概略図である。
【図20】臭素を含まない試験片を用いて、第1のフィルターを通した連続X線を試験片に通したときの透過強度と、第2のフィルターを通した連続X線を試験片に通したときの透過強度とを、その試験片の厚みごとにプロットしたグラフである。
【図21】臭素を一定量含む試験片を用いて、第1のフィルターを通した連続X線を試験片に通したときの透過強度と、第2のフィルターを通した連続X線を試験片に通したときの透過強度とを、その試験片の厚みごとにプロットしたグラフである。
【図22】105と106とを重ねたグラフである。
【図23】本発明の実施の形態8における選別方法を示すフローチャートである。
【図24】図23のフローチャートにおける工程(S71)または工程(S72)について詳細の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態が説明される。なお、各実施の形態において、同一の機能を果たす部位には同一の参照符号が付されており、その説明は、特に必要がなければ、繰り返さない。
【0018】
(実施の形態1)
以下の説明における臭素の「有無」に関して、ある一定の割合以上の臭素を含む場合、たとえば臭素がある、含有すると述べ、ある一定の割合以上の臭素を含まない場合、たとえば臭素がない、含有しないと述べることにする。以下、主に図1、図2を参照しながら、本発明の実施の形態1の詳細を説明する。
【0019】
図1に示す、本発明の実施の形態1における選別装置110は、図2にも示すように、特定元素である臭素の有無を判定するための測定部100として、連続X線6を照射するX線源1と、第1のフィルター3と、第2のフィルター4とを備える。また、X線源1から照射されて、第1のフィルター3および選別したい対象物である樹脂片2を相次いで透過した連続X線6の強度を検出する第1のX線検出器であるX線イメージインテンシファイア15を備える。また、X線源1から照射されて、第2のフィルター4および選別したい対象物である樹脂片2を相次いで透過した連続X線6の強度を検出する第2のX線検出器であるX線イメージインテンシファイア16を備える。また、選別したい対象物である、樹脂片2を移動させることのできるコンベア7を備えている。樹脂片2にはたとえば、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂の破片が適用可能である。なお、本発明の実施の形態1を示す選別装置110においては、2つのX線イメージインテンシファイア15、16を設けた構成としている。しかしこれは説明の便宜上のものであり、第1のフィルター3と第2のフィルター4のそれぞれを透過した連続X線6の両方を検出できる構造となっていれば、X線イメージインテンシファイアは1つであっても差し支えない。さらに、X線イメージインテンシファイア15、16には、X線イメージインテンシファイア15、16のX線検出データに基づいて判定を行ないたい樹脂を選別する制御部であるデータ処理装置21が接続されている。データ処理装置21には、記憶部26と演算部27とが内蔵されており、これらはそれぞれ、コンピュータのメモリおよびCPUの役割を果たすものである。また、データ処理装置21に転送されたデータを容易に確認することができる、X線イメージ像28、29を表示する表示装置が設けられている。
【0020】
さらに、本発明の実施の形態1における選別装置110には、樹脂片2を臭素の有無を判定するための測定部100に供給するための樹脂片供給装置24が備わっており、ここから樹脂片2が供給される。また、臭素の有無を判定するための測定部100にて測定を行なった後に樹脂片2を2箇所に分別するための電磁弁つきエアブロー用ガン20、臭素の有無に応じて樹脂片2を選別し、収納するための容器22、23を備えている。
【0021】
X線源1から照射されるX線には連続X線6を用いている。連続X線6は、電子ビームをたとえばタングステンターゲットに照射し、原子核のクーロン場によって電子の軌道が曲げられ制動がかかるときに電子が失うエネルギーに相当する波長のX線を照射することにより発生させる。衝突の仕方は様々であるため、このX線は連続波長分布を持ち、連続X線と呼ばれる。上述のように電子ビームをターゲットに照射し、微小なX線光源を得る装置は、市販されており、使用することができる。なお、本発明の実施の形態1のように樹脂片2を透過したX線の像をX線イメージインテンシファイア15上に投影する場合には、X線源のサイズが小さい方が、投影像がぼやける可能性を小さくすることができる。このため、X線源1としては点光源を用いることが好ましい。
【0022】
第1のフィルター3は、特定元素である臭素を含有する。また、第1のフィルター3は、樹脂片2と同じ材質の樹脂に臭素を含有させたものであってもよい。一方、第2のフィルター4は、特定元素である臭素のX線吸収端よりも高エネルギー側にX線吸収端を有する元素を含有する。ここでX線吸収端とは、吸収される連続X線6の割合が急激に大きくなるときの連続X線6のエネルギー値のことである。これにより第1のフィルター3と第2のフィルター4とは臭素の吸収が大きいエネルギー領域の内外で透過特性が異なる。第1のフィルター3は第2のフィルター4に比べ臭素が吸収するエネルギー領域のX線の吸収が大きく、透過率が小さい。それ以外の領域のX線の吸収は小さく、臭素のX線吸収端より低い、樹脂成分などで吸収の大きいエネルギー領域のX線は比較的透過する。これに対して、第2のフィルター4は、第1のフィルター3と比較すると、臭素の吸収端よりエネルギーの少し高い領域、つまり臭素の吸収エネルギーが大きい領域で吸収が小さく、X線の透過率は高い。より詳細には、臭素の吸収端から第2のフィルター4に含まれる別の元素のX線吸収端との間の波長領域では吸収が小さく、透過率が大きい。したがって第2のフィルター4は臭素が吸収するエネルギー領域でのX線の透過がそれ以外の領域の透過に比べて比較的大きい。
【0023】
ここで、図3は第1のフィルターの組成が臭素100%、密度を1g/cm、厚みを300μmとした場合の計算例である。図3のグラフにおいて、横軸は入射したX線のエネルギーの大きさを、縦軸はフィルターに入射したX線の透過率を示している。エネルギーの値が13000eV付近に臭素のX線吸収端があり、透過率が急激に小さくなっている。臭素のX線吸収端のある13000eV付近以上で20000eV付近以下のエネルギー領域は臭素による吸収が大きい。図の例ではこの範囲内で透過率が20%以下、すなわち吸収率が80%以上となっている。第1のフィルター3は、臭素の吸収端である13000eVより低いエネルギー領域、すなわち臭素が大きい割合で透過するエネルギー領域のX線を大きい割合で透過する。この13000eVより低いエネルギー領域は樹脂成分による吸収が大きい波長領域である。この領域では低エネルギーになるほど樹脂成分の吸収が大きい。ただ、樹脂成分は臭素に比べて吸収する割合が小さいので、上述したように臭素を樹脂に含有した第1のフィルター3を用いても、樹脂成分による吸収が大きい波長領域でX線を透過する。
【0024】
このことから、このようなフィルターを実現するためには、第1のフィルター3として、たとえばフィルターの主成分を臭素とするとよい。また、混合物として炭素または炭素より軽い元素でできた固体を用いて形成してもよい。たとえば、フィルターの形成や取り扱いが簡便となるため臭化ベリリウムまたは、臭素を高濃度に含んだ樹脂を用いることが好ましい。たとえば、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂等に臭素を添加させる技術は、既に臭素系難燃剤として樹脂に添加する公知技術がある。質量比で臭素が20%程度含有する市販の樹脂材料もあり、それらをそのまま用いてもよいし、さらに臭素を高濃度にして用いてもよい。
【0025】
なお、フィルターに含まれる臭素の割合が多いほど、具体的には臭素の密度または、臭素および混合物で形成させたフィルターの厚みが大きいほど、臭素の吸収端以下と吸収端以上とのそれぞれのエネルギー領域における連続X線透過強度の比が大きくなる。つまり、第1のフィルター3に含まれる臭素の割合が多いほど、樹脂片2に含まれる臭素がよく吸収するエネルギー領域の除去性がよい。しかし、X線の透過する絶対量が低下するため、X線の強度を測定して臭素の有無を判別するための信号強度が取れなくなる。特に臭素の吸収端以上のエネルギー領域のX線を透過する絶対量が低下するため信号強度が取れなくなる。こういった事態を抑制するため、フィルターに含まれる臭素の量には適度な範囲が存在する。具体的には、臭素の吸収端以下と臭素の吸収端以上のX線透過強度の比が5:1より大きいことが好ましい。また、出力された信号強度を、臭素の有無の判定に有効に利用するためには、臭素の吸収端以下のエネルギー領域におけるX線の透過率が0.1以上であることが好ましい。以上の条件を満足させるためには、フィルターの密度をd(g/cm)、フィルターの厚みをt(μm)とすれば、
130≦dt≦1000
という関係式を満足することが好ましい。たとえば、フィルターの密度が1のときには、厚みは130μm以上1000μm以下であることが好ましい。ちなみにフィルターの臭素の密度が2倍になれば、1/2倍の厚みを設けることが好ましい。
【0026】
以上より、たとえば第1のフィルター3として、臭素を含む混合物で形成させたフィルターを用い、樹脂片2に含まれる臭素の有無を判定する場合、第1のフィルター3に連続X線6を透過させると、以下のような現象が起こる。第1のフィルターは、臭素によりX線が大きい割合で吸収されるエネルギー領域のX線を大きい割合で吸収する。したがって、透過X線において、13000eV付近から20000eV付近にかけての、臭素による吸収の大きいエネルギー領域の割合が減少する。したがって、透過される連続X線6は、臭素の影響が小さくなり、樹脂片2の樹脂成分に主に依存するようになる。樹脂成分による連続X線6の吸収は、上述のとおり、樹脂片2の樹脂成分の厚みに依存するため、この透過強度を検出することにより、樹脂片2の厚みを推定することが可能になる。
【0027】
逆に、第2のフィルター4は、臭素のX線吸収端より高いエネルギー領域、すなわち臭素が吸収するエネルギー領域のX線を透過する割合が大きい。すなわち、第2のフィルター4を構成する材質としては、臭素のX線吸収端よりも高いエネルギー領域にX線吸収端を有する材質を用いるのがよい。
【0028】
この第2のフィルター4として、たとえば、モリブデンで形成させたフィルターを用いる。図4のグラフにおける横軸および縦軸は図3のグラフと同様である。図4のデータ抽出においては、モリブデン密度10.22、モリブデン厚み50μmとなるように形成したフィルターを用いている。図4より、臭素が大きい割合で吸収するエネルギー領域である、13000eV付近から20000eV付近にかけて、臭素を含有する第1のフィルター3と全く逆に、エネルギーの透過率が増加していることがわかる。このことから、モリブデンフィルターを用いることにより、臭素の吸収端である13000eV付近から20000eV付近にかけてのエネルギー領域をもつX線を選択的に透過させることができる。
【0029】
したがって、たとえば、第2のフィルター4として、モリブデンで形成させたフィルターを用い、樹脂片2に含まれる臭素の有無を判定する場合、第2のフィルター4に連続X線6を透過させると、樹脂片2に含まれる臭素の有無を高精度で検出できる。それは以下の理由による。臭素は臭素のX線吸収端より高いエネルギー領域に吸収の大きいエネルギー領域が存在し、それは上述のとおり、13000eV付近から20000eV付近にかけてである。そこで、モリブデンで形成させた第2のフィルター4に連続X線6を照射することにより、モリブデンの吸収端である20000eV付近以上のエネルギーのX線の透過率は減少する。20000eV付近以上のX線のエネルギーについては、モリブデンによる吸収が増加するからである。したがって、透過X線において、臭素のX線吸収端からモリブデンのX線吸収端である、13000eV付近から20000eV付近にかけての、臭素による吸収の大きいエネルギー領域の割合が増加する。このため、たとえばX線検出器であるX線イメージインテンシファイア15がエネルギー分解能を有さなかったとしても、臭素の有無を高精度で検出することができる。
【0030】
また、上述の臭素および混合物で形成させたフィルターと同様の理由により、密度10.22のモリブデンで形成させたフィルターの厚みをt(μm)とすれば、25≦t≦180であることが好ましい。
【0031】
なお、第1のフィルター3において、X線を吸収させるための元素は、臭素のほかにセレンを用いても、X線を吸収する範囲が臭素に比較的近いため、臭素に準じたフィルター効果を得ることができる。また、第2のフィルター4においては、モリブデンのほかに、ニオブ、テクネチウム、ルテニウムを用いても、X線を吸収する範囲がモリブデンに比較的近いため、モリブデンに準じたフィルター効果を得ることができる。
【0032】
なお、第2のフィルター4は、上述したように、たとえばモリブデンで形成させてもよいが、炭素またはホウ素を主成分とした支持体の表面が、上述したたとえばモリブデンで形成された薄膜にて被覆された構造体を用いてもよい。第2のフィルター4としては、図5(A)、図5(B)、図5(C)のいずれの構造のフィルターを用いてもよい。図5(B)または図5(C)に示す第2のフィルター4において、支持体12は、炭素を主成分とした構造体である。しかしこれは、炭素を100%含む単体であっても、炭素を主成分として含み、他にたとえば水素や酸素と化合した成分を含む、樹脂状の化合物であってもよい。また、炭素の代わりにホウ素を用いて、上述と同様に形成したものであってもよい。また、薄膜13は、モリブデンの代わりにニオブ、テクネチウムまたはルテニウムの薄膜を用いてもよい。
【0033】
上述したような構造体を第2のフィルター4として用いることができるのは、炭素やホウ素は原子番号が小さいため、照射された連続X線6を高い割合で透過するためである。このため、炭素やホウ素を用いて構成したフィルターは、第2のフィルター4としての動作を行なうことを阻害しない。また、支持体12は、連続X線6を高い割合で透過する材質を使用しているため、連続X線6の吸収の影響が小さくなる。このため、上述したモリブデンで形成させたフィルターの厚みに関して成り立つ数式:25≦t≦180は、図5(B)や図5(C)に示す第2のフィルター4に対しても成立する。なお、図5(B)のように支持体12の両方の主表面にモリブデンの薄膜13を有する構造では、両方の主表面の薄膜13の厚みの和を、X線吸収から求められる最適なモリブデンの薄膜13の厚みとする。たとえば、最適な薄膜13の厚みが100μmである場合、一方の主表面と他方の主表面とにそれぞれ50μmずつ薄膜13を形成するとよい。
【0034】
次に、臭素および混合物で形成させた第1のフィルター3およびモリブデンで形成させた第2のフィルター4を用いて臭素の有無を判定する原理について、図1、図2を適宜参照しながら説明する。
【0035】
実際に臭素の有無の判定を行ないたい、たとえば樹脂片2に対して測定を行なう前に、あらかじめ、第1のフィルター3を透過した連続X線6について、臭素を含まない、樹脂片2と同一の樹脂にて形成された試験片を透過したときの透過強度と試験片の厚みとの関係を示す第1のデータを検量線101として求めておく。また、第2のフィルター4に対しても上述と同様の処理を行い、上述と同様に第2のデータを検量線102として求めておく。図6の検量線101において、横軸は臭素を含まない試験片の厚みを示し、縦軸は臭素および混合物で形成させたフィルターをX線が透過する強度を示したものである。また、図7の検量線102においても、横軸および縦軸については、図6の検量線101と同様である。図6の検量線101は以下の方法により得たものである。まず、臭素を含まない一様な厚みを持ち、かつ樹脂片2と同じ材質の樹脂で作った試験片を、異なる厚みのものを複数個用意する。そしてX線源1から連続X線6を、たとえば臭素および混合物で形成させた第1のフィルター3および上述した各厚みの試験片に照射し、得られたX線透過強度と試験片の厚みとの関係を求めることにより、図6で示す検量線101を得る。同様に、X線源1から連続X線6を、たとえばモリブデンで形成させた第2のフィルター4および上述した各厚みの試験片に照射し、得られたX線透過強度と試験片の厚みとの関係を求めることにより、図7で示す検量線102を得る。
【0036】
検量線が得られたところで、検量線101および検量線102のデータを、データ処理装置21の記憶部26に記憶しておく。ここで実際に特定元素である臭素の有無を判定したい樹脂片2の測定を行なう。まずX線源1から連続X線6を、臭素および混合物で形成させた第1のフィルター3に通した上で、樹脂片2に通す。すると、図3に示すとおり、第1のフィルター3は13000eV付近から20000eV付近にかけてのエネルギー領域にあるX線を大きな割合で吸収するため、この領域内にあるX線の透過率が他のエネルギー領域に比べて低くなっている。このことは図8を見ても明らかである。図8において、横軸は入射したX線のエネルギーの大きさを、縦軸はフィルターに入射したX線の透過率を示している。すなわち、ポリプロピレンに臭素を1.0質量%含有させた樹脂については、純粋なポリプロピレンの樹脂に比べて13000eV付近から20000eV付近にかけてのエネルギー領域にあるX線を吸収している。逆に、図8から、13000eV付近以下のエネルギー領域にあるX線の透過率は、純粋なポリプロピレンについても、ポリプロピレンに臭素を1.0質量%含有させたものについても、近い値を示している。つまり、13000eV付近以下のエネルギー領域にあるX線は、臭素によって吸収される割合は小さいと考えることができる。第1のフィルター3に通した後の連続X線6は、13000eV付近から20000eV付近にかけてのエネルギー領域のものを含む割合は極めて小さい。したがって、13000eV付近以下のエネルギー領域のX線のみを、樹脂片2に照射することになる。すると、樹脂片2中の臭素の有無にかかわらず、樹脂片2中の樹脂成分のみによる吸収が起こると近似できる。したがって、透過率の差は樹脂片2に含有する臭素の有無には依存せず、樹脂片2の厚みの差のみによるものであると考えられる。ゆえに、まず第1のフィルター3および樹脂片2を透過したX線の透過強度を求め、これを先に準備してデータ処理装置21の記憶部26に記憶された検量線101と比較する。以上により、樹脂片2の予想厚みを決定することができる。
【0037】
そして次に、連続X線6を、モリブデンで形成させた第2のフィルター4に通した上で、樹脂片2に通す。第2のフィルター4は、臭素の吸収端である13000eV付近以上のエネルギー領域のX線を大きい割合で透過するため、これを樹脂片2に照射すると、樹脂片2の樹脂成分によるX線の吸収と、樹脂片2に含まれる臭素によるX線の吸収との両方が起こりうる。そこで第2のフィルター4および樹脂片2を透過したX線の透過強度を求め、これを先に求めた樹脂片2の予想厚みの値から、データ処理装置21の記憶部26および演算部27を用いて検量線102から算出できる予想透過強度と比較する。この比較の結果、有意に差があれば臭素が含まれていることによるX線の吸収が起こっていると判定する。その判定基準としては、予想透過強度からの許容変位量をあらかじめ設定しておく。そして、樹脂片2を透過したX線の透過強度を測定したものと、予想透過強度との差が許容変位量以上であれば、X線の吸収が起こっていると判定する。以上により樹脂片2に臭素が含まれているか否かを判定する。以上の原理により、第1のフィルター3および第2のフィルター4を用いて樹脂片2の臭素の有無を判定することができる。
【0038】
X線イメージインテンシファイア15、16は、たとえば、X線を入射した際に蛍光を発生する蛍光材料が塗布されたプレートとそのプレートが発した蛍光を受光してこれを電気信号に変換する光電素子とからなる。X線源1から照射される連続X線6は、第1のフィルター3に含まれる臭素によって一部が吸収されるが残りが透過し、樹脂片2にて一部が樹脂成分または含まれる臭素によって吸収されるが残りが透過する。またコンベア7にて一部が吸収されるが残りが透過する。そして、最後まで透過し続けたX線がX線イメージインテンシファイア15に到達する。同様に、第2のフィルター4を透過した連続X線6は、最後まで透過し続ければX線イメージインテンシファイア16に到達する。光電素子はマトリックス状に受光素子が配置された受光面を有するので、X線イメージインテンシファイア15において、2次元像として連続X線6を検出することになる。樹脂片2の厚みが大きいほど、樹脂成分によるX線の吸収量が多くなることから、X線が樹脂片2を通らない部分では検出されるX線の透過強度が強く、X線が樹脂片2を通った部分では検出されるX線の透過強度が弱い。特に、樹脂の厚い部分を通った部分では、より弱く検出する。X線イメージインテンシファイア15の各セルからの信号は、データ処理装置21に転送される。そのデータは樹脂の臭素有無判定に用いるが、樹脂片2の、X線イメージ像28としても確認できる。
【0039】
コンベア7は、樹脂片2を所望の位置に移動させるためのものである。原理上、コンベア7においては照射した連続X線6を通過する材質および厚みのものを用いることが好ましい。たとえば、ナイロンストッキングのように、薄い合成繊維のものが好ましい。また、後述する、最終的に樹脂片2を選別する工程にて、樹脂片2に圧縮空気を当てるために、メッシュ状など、空孔を持った構造になっていることが好ましい。
【0040】
X線イメージインテンシファイア15の上にて、樹脂片2により最終的に透過されたX線が受光された後、樹脂片2はコンベア7によりX線イメージインテンシファイア16の上まで移動する。ここでもX線源1から照射される連続X線6は、第2のフィルター4に含まれるモリブデンによって一部が吸収されるが残りが透過し、樹脂片2にて一部が樹脂または含まれる臭素によって吸収されるが残りが透過する。またコンベア7にて一部が吸収されるが残りが透過する。そして、最後まで透過し続けたX線がX線イメージインテンシファイア16に到達する。また、図1および図2のようにX線源1を2つ設置した場合、2つのX線源1のそれぞれのターゲットや電子ビームの加速電圧、電流などを必ずしも同一にする必要はない。光電素子はマトリックス状に受光素子が配置された受光面を有するので、X線イメージインテンシファイア16において、2次元像として連続X線6を検出することになる。X線イメージインテンシファイア16の各セルからの信号は、データ処理装置21に転送される。そのデータは樹脂の臭素有無判定に用いるが、樹脂片2の、X線イメージ像29としても確認できる。
【0041】
なお、一度に多くの樹脂片2を判定することが可能になるため、好ましくは検知面積の大きいX線イメージインテンシファイア15、16を用いる。また、像として検出するためには、X線イメージインテンシファイア15、16のそれぞれのセルサイズ(正確にはセル間の距離)は、樹脂片2のサイズに比べて十分小さい、たとえば1/5程度にすることが好ましい。セルサイズが十分小さくない場合には、たとえばX線源1と樹脂片2の距離をX1とし、樹脂片2とX線イメージインテンシファイア15または16との距離をX2とすれば、たとえばX1<X2となるようにX1を短く、X2を長くすることが好ましい。X線源1と樹脂片2との距離をX1とし、樹脂片2とX線イメージインテンシファイア15との距離をX2とすれば、拡大率は(X1+X2)/X1となる。これにより、X線イメージインテンシファイア15、16に投影される樹脂片2の投影像を任意の拡大率に拡大できるので、セルサイズに対して投影像を大きくできる。この結果、樹脂片2を透過したX線の強度分布を像としてより明瞭に検出することができる。
【0042】
最終的に、X線イメージインテンシファイア15、16からの信号をデータ処理装置21にて、内蔵されている記憶部26と演算部27とを駆使しながら演算し、樹脂片2の臭素含有の有無を判定する。
【0043】
樹脂片2の臭素含有の有無を判定している間に、コンベア7により、樹脂片2は、電磁弁つきエアブロー用ガン20の先端部が向いている箇所にまで移動する。ここで、データ処理装置21にて演算の結果、当該樹脂片2が臭素を含むと判定した場合は、データ処理装置21から出力される信号により電磁弁つきエアブロー用ガン20の電磁弁を開けて圧縮空気を当てる。このことにより樹脂片2を飛ばし、設置された容器22に入れる。また、先の判定により当該樹脂片2が臭素を含まないと判定した場合は、データ処理装置21から信号は出力されないため、電磁弁つきエアブロー用ガン20の電磁弁は作動させず、コンベア7の移動により、樹脂片2を別の容器23に入れる。
【0044】
以下、より具体的に、樹脂片2中の臭素の含有の有無を判定する選別方法を説明する。なお、図10は、工程(S100)および工程(S200)に共通のフローチャートである。本実施の形態1における選別方法について、図9、図10および上述の図1〜図8を適宜用いて説明する。
【0045】
判定を行ないたい樹脂片2の測定に先立ちあらかじめ、第1のデータを導出する工程(S100)を実施しておく。ここで第1のデータとは、第1のフィルター3および試験片を直列に並べたものの両者を透過したX線の強度と、試験片の厚みとの関係を示すデータである。第1のデータを導出するには、図10のフローチャートに示すとおり、まず、試験片を準備する工程(S1000)を実施する。これは、上述のとおり、臭素を含まない一様な厚みを持ち、かつ樹脂片2と同一の樹脂で作った試験片を、異なる厚みのものを複数個用意する。
【0046】
続いて、第1(第2)のフィルターと試験片とを透過する連続X線の透過強度を検出する工程(S1001)を実施する。工程(S1001)は、X線源1から連続X線6を、たとえば第1のフィルター3と上述した試験片とを直列に並べたものに、両者を相次いで透過するように照射しながら、両者を透過したX線の透過強度を、試験片の厚みごとに検出する工程である。そして、厚みと検出した透過強度との関係を求める工程(S1002)に進む。これは先の工程(S1001)にて検出したX線透過強度と試験片の厚みとの関係を求めることにより、検量線101を得る工程である。上述のとおり、この検量線101は、臭素の吸収端である13000eV付近以下のエネルギー値のX線の透過強度を主に測定したものである。
【0047】
同様に、第2のデータを導出する工程(S200)を実施する。ここで第2のデータとは、第2のフィルター4および試験片を直列に並べたものの両者を透過したX線の強度と、試験片の厚みとの関係を示すデータである。こちらについても第1のデータを導出する工程(S100)と同様に、まず試験片を準備する工程(S1000)を実施する。続いて、第1(第2)のフィルターと試験片とを透過する連続X線の透過強度を検出する工程(S1001)を実施する。工程(S1001)は、X線源1から連続X線6を、たとえば第2のフィルター4と上述した試験片とを直列に並べたものに、両者を相次いで透過するように照射しながら、両者を透過したX線の透過強度を、試験片の厚みごとに検出する工程である。本発明の実施の形態1においては、第2のフィルターとしてモリブデンで形成させたフィルターを用いる。そして、厚みと検出した透過強度との関係を求める工程(S1002)に進む。これは先の工程(S1001)にて検出したX線透過強度と試験片の厚みとの関係を求めることにより、検量線102を得る工程である。
【0048】
検量線101および検量線102が求まったところで、実際の判定を行ないたい樹脂片2の測定を行なう。まず、第1のフィルターと樹脂片とを透過する連続X線の透過強度を検出する工程(S11)を実施する。すなわち、図1に示すように、X線源1から連続X線6を、たとえば第1のフィルター3と樹脂片2とを直列に並べたものに、両者を相次いで透過するように照射しながら、両者を透過したX線の透過強度を検出する工程である。工程(S11)を実施するにあたり、本発明の実施の形態1においては、図1および図2に示すとおり、たとえばX線源1から照射された連続X線6が、先に第1のフィルター3を、続いて樹脂片2を通過するように設置する。また、樹脂片2は樹脂片供給装置24から供給され、コンベア7の上に搭載されるように設置する。
【0049】
そのあと、樹脂片の予想厚みを決定する工程(S13)を行なう。すなわち、先の第1のデータを導出する工程(S100)にて求まった、透過したX線の強度と樹脂の厚みとの関係と、第1のフィルターと樹脂片とを透過する連続X線の透過強度を検出する工程(S11)にて検出された、連続X線6の透過強度のデータとを比較する。そして樹脂片2の予想厚みを求める処理を行なう。この処理はデータ処理装置21の記憶部26と演算部27にて算出することにより容易に実施できる。なお、本発明の実施の形態1においては、他に樹脂片2の厚みを測定する方法として、樹脂片2の上側からたとえば超音波や光を使った変位計を用いて、樹脂片2の高さを測定する方法を用いてもよい。この場合、工程(S11)から工程(S13)が、たとえば超音波や光を使った変位計を用いて、樹脂片2の高さを測定する方法に変わるため、第1のフィルターを通したX線源1およびX線イメージインテンシファイア15は省いてもよい。
【0050】
以上と同様に、第2のフィルターと樹脂片とを透過する連続X線の透過強度を検出する工程(S21)を実施する。具体的には、コンベア7により樹脂片2が、第2のフィルター4の下側に来るように移動させる。そしてこの状態にて、X線源1から連続X線6を、たとえば第2のフィルター4と樹脂片2とを直列に並べたものに、両者を相次いで透過するように照射しながら、両者を透過したX線の透過強度を検出する工程である。
【0051】
そして、予想透過強度を決定する工程(S120)を行なう。すなわち、先に工程(S13)にて決定した、樹脂片2の予想厚みと、第2のデータを導出する工程(S200)にて導出した検量線102とから、データ処理装置21に内蔵される記憶部26および演算部27を駆使して第2のフィルター4と樹脂片2とを透過するX線の予想強度を求める工程である。
【0052】
続いて強度を比較し、臭素の含有有無を判定する工程(S121)を行なう。具体的には、先の工程(S120)にて求まった予想透過強度と、工程(S21)にて検出した透過強度とを比較することにより、樹脂片2の臭素の含有有無を判定する工程である。検量線102のデータは臭素を含まない樹脂に対する透過強度のデータなので、上述の比較の結果、たとえばあらかじめ設定した許容変位量以上の差があれば、臭素が含まれていることによるX線の吸収が起こっていると判定する。なお、その判定基準となる予想透過強度からの許容変位量はあらかじめ設定しておく。たとえば、許容変位量は、予想透過強度の値の5%以内とする。そして、樹脂片2を透過したX線の透過強度を測定したものと、予想透過強度との差が許容変位量以上であれば、臭素の存在に起因するX線の吸収が起こっていると判定する。
【0053】
そして最終的に、樹脂片を選別する工程(S122)を行なう。先の工程(S121)における判定の結果に応じてデータ処理装置21から出力される信号により電磁弁つきエアブロー用ガン20の電磁弁を開けて、臭素を含有すると判定された樹脂片2に圧縮空気を当てる。このことにより樹脂片2を飛ばし、設置された容器22に入れる。また、先の判定により当該樹脂片2が臭素を含まないと判定した場合は、データ処理装置21から信号は出力されないため、電磁弁つきエアブロー用ガン20の電磁弁は作動させず、コンベア7の移動により、樹脂片2を別の容器23に入れる。以上の工程を踏むことにより、樹脂片2中の臭素の有無を判定し、選別を行なうことができる。
【0054】
容器23に収納される樹脂片2は、高精度な選別方法により、臭素を含有しないと判定された樹脂片2であり、臭素を含有する樹脂片2を含有する可能性は小さい。したがって、容器23に収納される樹脂片2は、臭素濃度に制限を設けた製品に対しても繰り返し利用可能なリサイクル樹脂材料である。このようにしてリサイクル樹脂材料を製造することができる。さらに、容器22に収納された、臭素を含有する樹脂片2についても、臭素濃度に基準のない製品に対して再利用したり、サーマルリサイクル燃料として利用することができる。したがって、以上に述べたリサイクル樹脂材料の製造方法により、樹脂片2の再利用の効率を大幅に向上することができる。
【0055】
なお、たとえば容器23に収納されたリサイクル樹脂材料は、再粉砕や洗浄などの後工程を経て、新しく生産される電化製品の部材などに用いるためのリサイクル樹脂材料として提供することができる。
【0056】
なお、本発明の実施の形態1において、実際に選別される樹脂片2とは、リサイクルしたい電気製品を構成する樹脂ケース等を細かく破断したものである。平らで厚みが一定な形状のものも含むが、ケースの角の部分や、曲がったものなどがあり、形状は様々である。すなわち、実際に選別される樹脂片2の厚みは一様ではない。したがって、樹脂の中の実際にX線を透過させる場所により、透過強度は異なったものとなる。そこで、第1のフィルター3および第2のフィルター4を通した樹脂片2の透過強度としては、図2に示す、X線イメージインテンシファイア15、16の各セルから送られるX線強度に対応した信号のうち、もっとも小さな値を用いている。これは、樹脂片2の最も厚みの大きい部分を判定するということを意味する。樹脂片2の測定は、最も厚みの大きい部分で行なうため、樹脂片2の形状に因らず測定が可能である。
【0057】
臭素および混合物で形成させた第1のフィルター3により透過されるとしている、臭素の吸収端以下のエネルギー領域であるX線も、樹脂片2中に含まれる臭素によりわずかではあるが吸収される。このため、樹脂片2に含まれる臭素の濃度が高いとき、上述の算出方法で求める樹脂の厚みは実際よりも若干大きい値となる。しかし、臭素濃度が高いと、モリブデンで形成させた第2のフィルター4を通したX線を非常に大きい割合で吸収する。このため、臭素の有無の判定を誤る可能性は小さい。このことからも、樹脂片2の測定は、最も厚みの大きい部分で行なうことが好ましい。一方、判定がシビアな、臭素濃度が低いと思われる樹脂片2の測定を行なう場合においても、樹脂片2にて臭素により吸収されるX線の量は少ないので、樹脂片2の厚みを高い精度で求めることが可能である。したがって、判定に支障をきたす可能性は小さい。
【0058】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2においては、図11の実施の形態2における測定部120に示すように、第1のフィルター3および第2のフィルター4が、コンベア7から見て、X線の検出される側であるたとえば下側に設置され、X線源1から照射された連続X線6は、先に樹脂片2を透過し、その後に第1のフィルター3および第2のフィルター4を通過する。このように、フィルターと樹脂片2との透過する順序を入れ替えても同様の効果が得られる。また、1台のX線イメージインテンシファイア5を2分割(たとえば画面の右側と左側)して用い、X線減1も1台にすることで、設備投資を安価にすることができる。以上の点においてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。
【0059】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3においては、図12の実施の形態3における測定部130に示すように、第1のフィルター3および第2のフィルター4にモータ8を取り付け、回転可能とする。すなわち、第1のフィルター3および第2のフィルター4が回転移動する。このことにより、X線源1と樹脂片2との間には第1のフィルター3と第2のフィルター4とが交互に挿入される。このため、第1のフィルター3を透過した連続X線6または第2のフィルター4を透過した連続X線6を樹脂片2に透過させ、X線イメージインテンシファイア5にて検出することが可能となる。以上の点においてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。なお、第1のフィルター3および第2のフィルター4を交互に挿入する部分は、X線源1と樹脂片2との間の代わりに、本発明の実施の形態2のように、樹脂片2とX線イメージインテンシファイア5との間に設置してもよい。また、コンベア7は停止させたままでもよいし、X線イメージインテンシファイア5にて像が確認できる速度以下で移動させてもよい。また、本発明の実施の形態3においては、実施の形態3における測定部130に示すように、X線源1およびX線イメージインテンシファイア5は1台ずつとなるので、設備投資を安価にすることができる。
【0060】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4においては、図13の実施の形態4における測定部140に示すように、X線検出器として、X線イメージインテンシファイアに代わり、X線のラインセンサ36および46を用いている。以上の点においてのみ、本発明の実施の形態2と異なる。
【0061】
X線源1から照射され、樹脂片2、コンベア7、および第1のフィルター3を透過した連続X線6を、ラインセンサ36のセル31〜35にて検出する。ただし、図13においては、セル35は隠れているので図示されていない。また、X線源1から照射され、第2のフィルター4を透過したX線は、ラインセンサ46のセル41〜45にて検出する。このとき、コンベア7は一定の速度で図13中の左方から右方へ移動する。
【0062】
図14において、横軸は時間の経過を示し、縦軸は各時間に各セルにて確認されるX線透過強度を示す。図14において、曲線51はセル31で検出されるX線透過強度の時間変化を、以下同様に、曲線52はセル32、曲線53はセル33、曲線54はセル34、曲線55はセル35で検出されるX線透過強度の時間変化を示す。また、図15においても、横軸および縦軸は図14と同様であり、曲線61はセル41、曲線62はセル42、曲線63はセル43、曲線64はセル44、曲線65はセル45で検出されるX線透過強度の時間変化を示す。図14に示すグラフ103、図15に示すグラフ104において、各ラインセンサの各セルで検出されるX線透過強度は、樹脂片2が各ラインセンサの真上を通るとき、すなわち照射された連続X線6が樹脂片2を透過するときに低下する。また、たとえばセル43からのX線透過強度を表わす曲線63は、セル33からのX線透過強度を表わす曲線53に対して、ラインセンサ36とラインセンサ46の間の距離を、コンベア7の速度で除した値の時間分だけ、X線透過強度が低下するタイミングが遅れて検出される。以上のような系にて、X線透過強度の最も低い値、またはX線透過強度が減少している時間範囲における平均値を、第1のフィルター3、および第2のフィルター4を通したときの樹脂片2のX線透過強度と定義する。その上で、実施の形態1〜3と同様の方法により、樹脂片2の臭素の有無を判定する工程を行なう。
【0063】
本発明の実施の形態4における樹脂片2のように、連続して移動してくる対象物を検出する際には、ラインセンサを用いると、1スキャン毎にビデオ出力されるため、画像の連続的な処理を容易に行なうことができる。ラインセンサを用いた場合、画面をスキャンする位置が移動しないため、動いている像を観察した際に、像が変形する可能性が小さい。このため、容易に像の処理を行なうことができる。
【0064】
以上の説明は、樹脂片2が1個ずつラインセンサ36および46上のコンベア7に乗って移動する場合を想定している。しかし、複数の樹脂片2が同時に横並びで、重ならずにラインセンサ36および46上を通過する場合においても、X線透過強度の信号から、個々の樹脂片2を認識することで、同時に複数の樹脂片2に対して、臭素の有無を判定することが可能である。この場合、電磁弁つきエアブロー用ガン20を、図13に示すラインセンサ36のセル31とセル35との間に、複数台設置する。臭素を含有すると判定された樹脂片2の位置に対応する電磁弁つきエアブロー用ガン20を選択し、その電磁弁を操作して樹脂片2を選別する。また、1台の電磁弁つきエアブロー用ガン20を、実施の形態4における測定部140に示すラインセンサ36のセル31とセル35との間で移動させてもよい。または、1台の電磁弁つきエアブロー用ガン20を、所望の方向を向くように回転させてもよい。なお、実施の形態4における測定部140においては、実施の形態2と同様に、X線源1から照射された連続X線6は、先に樹脂片2を透過し、その後に第1のフィルター3および第2のフィルター4を透過する配置となっているが、本発明の実施の形態1と同様に、先にフィルターを透過し、その後に樹脂片2を透過する配置としてもよい。
【0065】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5においては、図16の実施の形態5における測定部150に示すように、本発明の実施の形態1〜4に示していた、第1のフィルター3に該当するものは設置しない。
【0066】
本発明の実施の形態5においては、図16に示すように、モリブデンで形成されたフィルター14を用いる。ただし、モリブデンで形成されたフィルターの特徴である、臭素によく吸収される13000eV付近から20000eV付近にかけてのエネルギー領域にあるX線を大きい割合で透過させる性質をより引き立たせる条件となるように準備する。具体的には、モリブデンで形成されたフィルター14は、厚みを50nm以上100nm以下になるよう準備する。このように、本発明の実施の形態5におけるモリブデンで形成されたフィルター14は、本発明の実施の形態1〜4における第2のフィルター4として用いうる、モリブデンで形成されたフィルターに厚みの条件が加わる。このため、本発明の実施の形態5においては、モリブデンで形成されたフィルターの参照番号を14とすることにより区別している。また、13000eV付近から20000eV付近にかけてのエネルギー領域に強度のピークを持つように、X線源1における電子ビームの加速電圧を40kV以上60kV以下となるよう設定し、連続X線6を発生させるために電子ビームを照射するターゲットとしてはタングステンを準備する。さらに、樹脂片2の、最も厚みの大きい部分における厚みを1mm以上3mm以下になるよう前準備を行なう。以上の条件を満たした上で、実施の形態5における測定部150を用いた選別装置にて、臭素の有無を判定する工程を実施すれば、誤判定の起こる可能性をより小さくすることができる。なお、図16においては、先にモリブデンで形成されたフィルター14を透過し、その後に樹脂片2を透過する配置となっているが、先に樹脂片2を透過し、その後にモリブデンで形成されたフィルター14を透過する配置としてもよい。以上の点においてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。
【0067】
以下、フローチャートに則って工程の説明を行なう。上述のとおり、実施の形態5においては、第1のフィルター3が存在しない。また、樹脂片2の厚みを検討する工程も存在しない。しかるに臭素の有無の判定を精度よく行なうことができる。そのような構成とするために、選別装置の構成要素の準備を、寸法や材質などに留意し、綿密に行なう必要がある。まず、樹脂片を準備する工程(S31)を行なう。具体的には上述のとおり、樹脂片2を、その最も厚みの大きい部分における厚みが1mm以上3mm以下になるよう前準備を行なう工程を指す。
【0068】
次に、連続X線の透過強度を検出する工程(S32)を行なう。具体的にはまず、上述のとおり、まず実施の形態5における測定部150を構成するX線源1における電子ビームの加速電圧を40kV以上60kV以下となるよう設定する。また、連続X線6を発生させるために電子ビームを照射するターゲットとしてはタングステンを準備する。さらに、モリブデンで形成されたフィルター14を、厚みが50nm以上100nm以下となるように準備する。そして、図16に示すように、連続X線6を、モリブデンで形成されたフィルター14および樹脂片2を直列に並べたものに、両者を相次いで透過するように照射する。そして、連続X線6の照射を行ないながら、モリブデンで形成されたフィルター14と樹脂片2との両者を透過したX線の透過強度を検出する工程である。
【0069】
ここで、上述のとおり、モリブデンで形成されたフィルター14は、臭素によく吸収される13000eV付近から20000eV付近のエネルギー領域のX線をより鋭利に透過させる。このため、樹脂片2に臭素が含まれていれば、X線が樹脂片2を透過した際に、臭素によるX線の吸収が大きな割合で行なわれる。上述のとおり、13000eV付近から20000eV付近のエネルギー領域のX線は、樹脂成分による吸収が起こりにくい上(図8参照)、樹脂片2の厚みを1mm以上3mm以下に設定していることにより、相対的に樹脂成分によるX線の吸収をより小さく、臭素によるX線の吸収をより大きくすることができる。樹脂片2中に臭素を含んでいれば、13000eV付近から20000eV付近のエネルギー領域のX線がある割合で吸収され、臭素を含んでいなければ、吸収はきわめて小さい割合でしか起こらない。
【0070】
そして、臭素の含有有無を判定する工程(S33)を行なう。ここでは、まず上述の工程(S32)にて検出された透過強度を、予めデータ処理装置21の記憶部26に記録されている、モリブデンで形成されたフィルター14を透過した連続X線6が、臭素を含まない樹脂を透過したときに検出されるX線の透過強度のデータと比較する。両者の間にたとえばあらかじめ設定した許容変位量以上の差があれば、樹脂片2中に臭素が大きい割合で含まれていると判定する。このようにして樹脂片2における臭素の含有の有無を判定する。そして最終的に、樹脂片を選別する工程(S34)にて、判定された樹脂片2中の臭素の有無の結果を元に、上述のように電磁弁つきエアブロー用ガン20の電磁弁を作動させることにより、選別を行なう。
【0071】
本発明の実施の形態5を用いれば、フィルターの設置が1台になる。また、本発明の実施の形態5における選別方法を示すフローチャートから、選別を行なう工程をシンプルにすることができ、選別作業を安価で行なうことが可能となる。なお、本発明の実施の形態5において、図16の実施の形態5における測定部150に示すように、X線源1から照射された連続X線6が先にモリブデンで形成されたフィルター14を透過した後で樹脂片2を透過する構成としてもよい。または、先に樹脂片2を透過し、その後にモリブデンで形成されたフィルター14を透過する構成としてもよい。
【0072】
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6においては、樹脂片2の臭素成分によるX線の吸収を促進させた本発明の実施の形態5と逆に、樹脂片2の樹脂成分によるX線の吸収を抑制する。そのため、樹脂片2の5倍以上の厚みを持つ、樹脂片2と同一の樹脂成分にて形成された樹脂フィルター70に連続X線を透過させる。すると、厚みの大きい樹脂フィルター70を連続X線6が透過した際に、連続X線6のうち、樹脂成分により大きな割合で吸収されるエネルギー領域については大きい割合で吸収される。このことにより、樹脂成分による連続X線6の吸収の割合が大きい、X線のエネルギー領域を除去し、樹脂片2における樹脂成分にてX線が吸収される割合を小さくする。以上より、樹脂片2の厚みが臭素の有無の判定に与える影響を小さくすることができる。上述の構成としては、たとえば図16にて実施の形態5における測定部150に示す、モリブデンで形成されたフィルター14の代わりに、樹脂片2と同一の樹脂成分にて形成され、樹脂片2の5倍以上の厚みを持つ、樹脂フィルター70を設置する。以上の点においてのみ、本発明の実施の形態5と異なる。すなわち、本発明の実施の形態1〜4のように、2枚のフィルターを用いて、樹脂片2の予想厚みや予想透過強度を検討する工程は、本発明の実施の形態6においても含まれない。なお、本発明の実施の形態6においても、X線源1から照射された連続X線6は、図18の実施の形態6における測定部160に示すように、先に樹脂片2を透過し、その後に樹脂フィルター70を透過する配置としてもよい。あるいは、先に樹脂フィルター70を透過し、その後に樹脂片2を透過する配置としてもよい。
【0073】
本発明の実施の形態6における選別方法は、図17の、本発明の実施の形態5における選別方法を示すフローチャートを用いて説明することができる。まず、樹脂片を準備する工程(S31)を行なう。具体的には本発明の実施の形態1〜4と同様に、樹脂片2を準備する工程を指す。
【0074】
次に、連続X線の透過強度を検出する工程(S32)を行なう。これは具体的には、まず実施の形態6における測定部160を構成するX線源1における電子ビームの加速電圧を40kV以上60kV以下となるよう設定する。また、連続X線6を発生させるために電子ビームを照射するターゲットとしてはタングステンを準備する。また、フィルターとしては、樹脂片2の5倍以上の厚みを持つ、樹脂片2と同一の樹脂成分にて形成された樹脂フィルター70を準備する。そして、連続X線6を、樹脂フィルター70および樹脂片2を直列に並べたものに、両者を相次いで透過するように照射する。すると、上述のとおり、樹脂片2と同一の樹脂成分で形成された樹脂フィルター70の厚みを十分大きくしているため、樹脂成分によるX線の吸収は樹脂フィルター70にて大きな割合で起こる。したがって、樹脂片2におけるX線の吸収のうち、樹脂片2に含まれる樹脂成分による吸収の割合を小さくすることができる。以上より、樹脂片2中において、相対的に樹脂成分によるX線の吸収をより小さく、臭素によるX線の吸収をより大きくすることができる。そして、連続X線6の照射を行ないながら、樹脂フィルター70と樹脂片2との両者を透過したX線の透過強度を検出する。理論的には、樹脂片2中に臭素を含んでいれば、13000eV付近から20000eV付近のエネルギー領域のX線がある割合で吸収され、臭素を含んでいなければ、吸収はきわめて小さい割合でしか起こらない。
【0075】
そして、臭素の含有有無を判定する工程(S33)を行なう。ここでは、まず上述の工程(S32)にて検出された透過強度を、予めデータ処理装置21の記憶部26に記録されている、樹脂フィルター70を透過した連続X線6が、臭素を含まない樹脂を透過したときに検出されるX線の透過強度のデータと比較する。両者の間にたとえばあらかじめ設定した許容変位量以上の差があれば、樹脂片2中に臭素が大きい割合で含まれていると判定する。このようにして樹脂片2における臭素の含有の有無を判定する。そして最終的に、樹脂片を選別する工程(S34)にて、判定された樹脂片2中における臭素の含有有無の結果を元に、上述のように電磁弁つきエアブロー用ガン20の電磁弁を作動させることにより、選別を行なう。
【0076】
(実施の形態7)
また、以下に示すような構成も考えられる。図19に示す実施の形態7における選別装置170においては、本発明の実施の形態6にて使用した樹脂フィルター70を、本発明の実施の形態1〜6での樹脂片2を移動させるコンベア7における、樹脂片2を搭載する部材として設置する。つまり、樹脂フィルター70がコンベア7(図1参照)としての機能とフィルターとしての機能とを兼ね備える構成となっている。なお、この構成を持つ選別装置については、コンベアが圧縮空気を通すことができない。すなわち、樹脂片2の下方から電磁弁つきエアブロー用ガン20を用いてエアを使用することにより、臭素を大きい割合で含む樹脂片2を選別することはできない。しかし、たとえば樹脂片2の上方から、回転羽根71を回転させて、臭素を大きい割合で含む樹脂片2に対して衝突することにより機械的に選別を行なうことが可能である。この場合、データ処理装置21を回転羽根71に接続し、データ処理装置21からの信号を受信できるような構成にしておく。また、コンベアを兼ねる樹脂フィルター70の動作は、ローラー72、バネつきローラー73の駆動により制御される。なお、本発明の実施の形態7においても、実施の形態5および6と同様、X線源1における電子ビームの加速電圧を40kV以上60kV以下となるように設定することが好ましい。また、連続X線6を発生させるために電子ビームを照射するターゲットとしてはタングステンを準備する。このことにより、臭素に吸収される割合が大きい、13000eV付近から20000eV付近のエネルギー領域のX線の出力の割合を大きくすることができる。本発明の実施の形態7における選別方法は、図17の、本発明の実施の形態5における選別方法を示すフローチャートで説明することができる。
【0077】
(実施の形態8)
さらに、本発明の実施の形態としては、以下に示すような選別方法も考えられる。本発明の実施の形態8においては、本発明の実施の形態1における選別装置110と同一の選別装置を用いて選別を行なう。しかし、樹脂片2の予想厚みを求めずに臭素の有無を判定する点において、実施の形態1と異なる。
【0078】
本発明の実施の形態8においては、実際に臭素の有無の判定を行ないたい、たとえば樹脂片2(図1参照)に対して測定を行なう前に、あらかじめ、第1のフィルター3(図1参照)を透過した連続X線6(図1参照)について、臭素を含まない、樹脂片2と同一の樹脂にて形成された試験片の透過強度を、各厚みの試験片に対して求めておく。また、第2のフィルター4(図1参照)を透過した連続X線6についても、上述した第1のフィルター3を透過した連続X線6と同様に、臭素を含まない、樹脂片2と同一の樹脂にて形成された試験片の透過強度を求める。これらの測定結果をプロットしたグラフ105として求めておく。なお、これらのデータをとるために、まず、臭素を含まない一様な厚みを持ち、かつ樹脂片2と同一の樹脂で作った試験片を、異なる厚みのものを複数個用意する。また、臭素を一定量含む、樹脂片2と同一の樹脂にて形成された試験片についても、同様にあらかじめ、各フィルターを透過した連続X線6の透過強度を、各厚みの試験片に対して求めておき、測定結果をプロットしたグラフ106として求めておく。これらのデータをとるためにも、まず、一定量(たとえば1.0質量%)の臭素を含む一様な厚みを持ち、かつ樹脂片2と同一の樹脂で作った試験片を、異なる厚みのものを複数個用意する。
【0079】
図20において横軸(A)は第1のフィルターおよび試験片を通したX線の透過強度を、縦軸(B)は第2のフィルターおよび試験片を通したX線の透過強度を示す(以下の図21、図22も同様)。
【0080】
図22の105と106とを重ねたグラフ107において、白丸はプロットしたグラフ105であり、すなわち臭素を含まない試験片が検出した透過強度を試験片の厚みごとにプロットしたものである。また、点線で示した曲線は、白丸のデータをおおよそ結んでできた曲線であり、測定誤差(ばらつき)やマージンなどを考慮して決定された判定基準である。同様に、図22の105と106とを重ねたグラフ107において、黒丸はプロットしたグラフ106であり、すなわち一定量の臭素を含む試験片が検出した透過強度を試験片の厚みごとにプロットしたものである。また、実線で示した曲線は、黒丸のデータをおおよそ結んでできた曲線であり、測定誤差(ばらつき)やマージンなどを考慮して決定された判定基準である。
【0081】
本発明の実施の形態8においては、上述したプロットしたグラフ105、106のデータを、それぞれ第1のデータ、第2のデータとして、あらかじめデータ処理装置21の記憶部26に記憶しておく。ここで実際に臭素の有無を判定したい樹脂片2の測定を行なう。その方法は上述した試験片と同様である。つまり、第1のフィルターおよび樹脂片2を通したX線の検出される透過強度、および第2のフィルターおよび樹脂片2を通したX線の検出される透過強度の関係を、第3のデータとして求める。そして第3のデータを、データ処理装置の記憶部26および演算部27を用いて第1のデータおよび第2のデータと比較する。たとえば、図22に示す107を参照して、第3のデータが第1のデータおよび第2のデータと比較してどの位置に存在するかを調べる。このことにより、樹脂片2における臭素の有無を判別する。
【0082】
以下、より具体的に、樹脂片2中の臭素の含有の有無を判定する選別方法を説明する。なお、図24は、工程(S71)および工程(S72)に共通のフローチャートである。本実施の形態8における選別方法について、図20〜図24および上述の図1〜図19を適宜用いて説明する。
【0083】
判定を行ないたい樹脂片2の測定に先立ちあらかじめ、第1のデータを導出する工程(S71)を実施しておく。ここで第1のデータとは、上述したプロットしたグラフ105の示すデータである。すなわち、第1のフィルター3および第2のフィルター4のそれぞれを透過した連続X線6が臭素を含まない試験片を透過した際に検出した透過強度を示す。第1のデータを導出するには、図24のフローチャートに示すとおり、まず、試験片を準備する工程(S81)を実施する。これは、上述のとおり、臭素を含まない一様な厚みを持ち、かつ樹脂片2と同一の樹脂で作った試験片を、異なる厚みのものを複数個用意する。
【0084】
続いて、第1のフィルターと試験片とを透過する連続X線の透過強度を検出する工程(S82)を実施する。すなわち、X線源1から連続X線6を、たとえば第1のフィルター3と試験片とを直列に並べたものに、両者を相次いで透過するように照射しながら、両者を透過したX線の透過強度を検出する工程である。なお、その順序については、たとえば図2に示す臭素の有無を判定するための測定部100のように、先にフィルターを通した後で試験片(樹脂片2参照)を通してもよい。あるいは、逆に図11に示す実施の形態2における測定部120のように、先に試験片を通した後でフィルターを通してもよい。なお、透過強度の検出は、たとえば図2に示す臭素の有無を判定するための測定部100の構成を用いてもよいし、図11に示す実施の形態2における測定部120の構成を用いてもよい。あるいは図12に示す実施の形態3における測定部130の構成を用いてもよいし、図13に示す実施の形態4における測定部140の構成を用いてもよい。
【0085】
続いて、上述した工程(S82)と同様に、第2のフィルターと試験片とを透過する連続X線の透過強度を検出する工程(S83)を実施する。すなわち、X線源1から連続X線6を、たとえば第2のフィルター4と試験片とを直列に並べたものに、両者を相次いで透過するように照射しながら、両者を透過したX線の透過強度を検出する工程である。そして最後に、2種類の透過強度の関係を求める工程(S84)を行なう。すなわち、工程(S82)にて検出した第1の透過強度と、工程(S83)にて検出した第2の透過強度との関係を、試験片の厚みごとに求める。それをグラフに表したものが、上述のプロットしたグラフ105である。
【0086】
同様に、図24のフローチャートに示す手順にて、第2のデータを導出する工程(S72)を実施する。ここで第2のデータとは、上述したプロットしたグラフ106の示すデータである。すなわち、第1のフィルター3および第2のフィルター4のそれぞれを透過した連続X線6が一定量の臭素を含む試験片を透過した際に検出した透過強度を示す。第2のデータを導出するには、図24のフローチャートに示すとおり、まず、試験片を準備する工程(S81)を実施する。これは、上述のとおり、一定量の臭素を含む一様な厚みを持ち、かつ樹脂片2と同一の樹脂で作った試験片を、異なる厚みのものを複数個用意する。以下、上述した第1のデータを求める場合と同様に、工程(S82)〜工程(S84)を実施することにより、第2のデータを求める。それをグラフに表したものが、上述のプロットしたグラフ106である。
【0087】
プロットしたグラフ105、106が求まったところで、実際の判定を行ないたい樹脂片2の測定を行なう。まず、第1のフィルターと樹脂片とを透過する連続X線の透過強度を検出する工程(S41)を実施する。同様に、第2のフィルターと樹脂片とを透過する連続X線の透過強度を検出する工程(S51)を実施する。そして、両透過強度の関係を示すデータを導出する工程(S61)を行なう。これを第3のデータとする。
【0088】
次に、データをもとに臭素の含有有無を判定する工程(S62)を行なう。すなわち、あらかじめデータ処理装置21の記憶部26に記憶されている第1のデータおよび第2のデータと、今回求めた第3のデータとを、データ処理装置21の演算部27を駆使することにより比較する。図22に示した105と106とを重ねたグラフ107を参照し、たとえば第2のデータを検出する際に使用した試験片が、臭素を1.0質量%含んだとする。ここでたとえば第3のデータをプロットしたときに第2のデータを示す黒丸(実線)よりも下側に存在したとすれば、樹脂片2は、臭素を1.0質量%以上の高い割合で含むと判定することができる。また、たとえば第3のデータをプロットしたときに第1のデータを示す白丸(点線)と第2のデータを示す黒丸(実線)との間に存在したとすれば、樹脂片2は、臭素を1.0質量%以下の低い割合で含むと判定することができる。また、たとえば第3のデータが第1のデータを示す白丸(点線)にほぼ重なる場合は、樹脂片2は、臭素をほとんど含まないと判定することができる。このようにして樹脂片2の臭素の含有の有無を判定する。そして最終的に、樹脂片を選別する工程(S63)を実施する。
【0089】
なお、上述したように、本発明の実施の形態8を実施するにあたり、選別装置の測定部として、本発明の実施の形態1で用いた臭素の有無を判定するための測定部100の代わりに、実施の形態2における測定部120を用いてもよい。また同様に、実施の形態3における測定部130ないし実施の形態4における測定部140を用いてもよい。本発明の実施の形態8においては、以上の点においてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、本発明の実施の形態8に関して、上述しなかった構成や条件などは、全て本発明の実施の形態1に順ずる。
【0090】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0091】
この発明は、選別したい対象物である樹脂をリサイクルする際に樹脂に含まれる臭素の有無により選別する技術として利用するに適している。
【符号の説明】
【0092】
1 X線源、2 樹脂片、3 第1のフィルター、4 第2のフィルター、5,15,16 X線イメージインテンシファイア、6 連続X線、7 コンベア、8 モータ、12 支持体、13 薄膜、14 モリブデンで形成されたフィルター、20 電磁弁つきエアブロー用ガン、21 データ処理装置、22,23 容器、24 樹脂片供給装置、26 記憶部、27 演算部、28,29 X線イメージ像、31〜35,41〜45 セル、36,46 ラインセンサ、51〜55,61〜65 曲線、70 樹脂フィルター、71 回転羽根、72 ローラー、73 バネつきローラー、100 臭素の有無を判定するための測定部、101,102 検量線、103,104 グラフ、105,106 プロットしたグラフ、107 105と106とを重ねたグラフ、110 実施の形態1における選別装置、120 実施の形態2における測定部、130 実施の形態3における測定部、140 実施の形態4における測定部、150 実施の形態5における測定部、160 実施の形態6における測定部、170 実施の形態7における選別装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭素の有無に応じて樹脂片を選別する選別装置であって、
加速電圧が40kV以上60kV以下の、電子ビームにより連続X線を照射するX線源と、
厚みが50nm以上100nm以下であるモリブデンで形成されたフィルターと、
前記X線源から照射された前記連続X線のうち、前記フィルターおよび前記樹脂片を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記X線検出器の検出データに基づいて前記樹脂片を選別する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記フィルターを透過したX線について、臭素を含まない、前記樹脂片と同一の樹脂にて形成された試験片に前記X線を照射したときの前記X線の透過強度のデータがあらかじめ記憶される記憶部と、
前記フィルターおよび前記樹脂片を透過したX線の透過強度を、前記データと比較することにより、前記樹脂片を選別する演算部とを含む、選別装置。
【請求項2】
臭素の有無に応じて樹脂片を選別する選別装置であって、
加速電圧が40kV以上60kV以下の、電子ビームにより連続X線を照射するX線源と、
樹脂からなるフィルターと、
前記X線源から照射された前記連続X線のうち、前記フィルターおよび前記樹脂片を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記X線検出器の検出データに基づいて前記樹脂片を選別する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記フィルターを透過したX線について、臭素を含まない、前記樹脂片と同一の樹脂にて形成された試験片に前記X線を照射したときの前記X線の透過強度のデータがあらかじめ記憶される記憶部と、
前記フィルターおよび前記樹脂片を透過したX線の透過強度を、前記データと比較することにより、前記樹脂片を選別する演算部とを含む、選別装置。
【請求項3】
前記フィルターが、前記樹脂片を移動させるコンベアにおける、前記樹脂片を移動させるために搭載する部材として用いられていることを特徴とする、請求項2に記載の選別装置。
【請求項4】
臭素の有無に応じて樹脂片を選別する選別方法であって、
加速電圧が40kV以上60kV以下の電子ビームにより連続X線を照射するX線源からの連続X線を、厚みが50nm以上100nm以下であるモリブデンで形成されたフィルターと前記樹脂片とに照射する工程と、
前記フィルターと、前記樹脂片とを透過したX線の透過強度を検出する工程と、
前記X線の透過強度を、前記フィルターを透過したX線について、臭素を含まない、前記樹脂片と同一の樹脂にて形成された試験片に前記X線を照射したときの前記X線の透過強度のデータと比較する工程と、
前記比較を行なった結果に応じて前記樹脂片を選別する工程とを備える、選別方法。
【請求項5】
臭素の有無に応じて樹脂片を選別する選別方法であって、
前記樹脂片を準備する工程と、
加速電圧が40kV以上60kV以下の電子ビームにより連続X線を照射するX線源からの連続X線を、樹脂からなるフィルターと前記樹脂片とに照射する工程と、
前記フィルターと、前記樹脂片とを透過したX線の透過強度を検出する工程と、
前記X線の透過強度を、前記フィルターを透過したX線について、臭素を含まない、前記樹脂片と同一の樹脂にて形成された試験片に前記X線を照射したときの前記X線の透過強度のデータと比較する工程と、
前記比較を行なった結果に応じて前記樹脂片を選別する工程とを備える、選別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−47681(P2013−47681A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−210937(P2012−210937)
【出願日】平成24年9月25日(2012.9.25)
【分割の表示】特願2009−13294(P2009−13294)の分割
【原出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】