説明

遺伝子産物の濃縮または活性を調節するためのレスベラトロールを含む組成物

本発明は、遺伝子発現を、レスベラトロール単独でまたはカロリー制限で見られるものより大きい程度まで調節することができるレスベラトロールを含む組成物に関する。本発明は、特に、レスベラトロール、キレート剤、ヒアルロン酸、および/またはビタミンDを含み、レシピエントに投与したとき生存/長寿遺伝子産物の濃度もしくは活性を増し、かつ/または細胞傷害を誘発もしくは引き起こす遺伝子産物の濃度もしくは活性を減少させる、レスベラトロールを含む組成物に関わる。最も好ましくは、そのレスベラトロール安定化組成物は、キレート剤のフィチン酸(イノシトールヘキサホスフェート;IP6)、ヒアルロン酸、およびビタミンDを含む。本発明は、さらに、がん、循環器疾患、老化に伴う疾患、ならびにその他の状態および疾病の治療または予防におけるかかる組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、米国特許出願第10/971,017号(2004年10月25日に出願、係属中)(この米国特許出願は、米国仮特許出願第60/513,225号(2003年10月23日に出願;失効)への優先権を主張する)、ならびに米国仮特許出願第60/973,817号(2007年9月20日に出願;係属中),第61/023,227号(2008年1月24日に出願;係属中),第61/023,230号(2008年1月24日に出願;係属中),第61/023,234号(2008年1月24日に出願;係属中),第61/048,756号(2008年4月29日に出願;係属中)、および第61/048,769号(2008年4月29日に出願;係属中)からの優先権を主張し、これら特許出願のすべては、それらの全体が、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、レスベラトロール単独でまたはカロリー制限で見られるものより大きい程度まで遺伝子発現を調節することができるレスベラトロールを含む組成物に関する。本発明は、特に、レスベラトロール、キレート剤、ヒアルロン酸、および/またはビタミンDを含み、レシピエントに投与したとき生存/長寿遺伝子産物の濃度もしくは活性を増し、かつ/または細胞傷害を誘発もしくは引き起こす遺伝子産物の濃度もしくは活性を減少するようなレスベラトロールを含む組成物に関わる。本発明は、特に、上記組成物のがん、循環器疾患、老化に伴う疾患、ならびにその他の状態および疾病の治療または予防における使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
コレステロール、糖尿病、高血圧症および飽和脂肪の大量摂取等の高レベルの危険因子にもかかわらず、フランス人の男性は、西側工業国で最も低い虚血性心疾患および循環器疾患による死亡率(米国より36%低く、英国より39%低い)を示している。いわゆる「フレンチパラドックス」(特に循環器疾患による死亡率が低いこと)は、主としてワインの習慣的な消費によるものであり得る(非特許文献1)。
【0004】
レスベラトロール(3,4’,5−トリヒドロキシ−トランス−スチルベン)は、ヒトの健康と関係する有益な特性を有することが実証されている例えばブドウの皮の中に見出される天然に存在するフェノール化合物である(Das, S.ら、(2007年)、「Resveratrol: A Therapeutic Promise For Cardiovascular Diseases」、Recent Patents Cardiovasc. Drug Discov. 2巻(2号):133〜138頁;Mancuso, C.ら、(2007年)、「Natural antioxidants in Alzheimer’s disease」、Expert Opin. Investig. Drugs. 16巻(12号):1921〜1931頁;Baumann L.、(2007年)、「Botanical Ingredients In Cosmeceuticals」 J. Drugs Dermatol. 6巻(11号):1084〜1088頁;Meeran, S.M.ら、(2008年)、「Cell Cycle Control As A Basis For Cancer Chemoprevention Through Dietary Agents」 Front. Biosci. 13巻:2191〜2202頁; de la Lastra, CA.ら、(2007年)、「Resveratrol As An Antioxidant And Pro−Oxidant Agent: Mechanisms And Clinical Implications」、Biochem. Soc. Trans. 35巻(第5部):1156〜1160頁;Das, S.ら、(2007年)、「Anti−Inflammatory Responses Of Resveratrol」、Inflamm. Allergy Drug Targets 6巻(3号)、168〜173頁;Cucciolla, V.ら、(イーパブ(epub)2007年7月31日)、「Resveratrol: From Basic Science To The Clinic」、Cell Cycle 6巻(20号):2495〜2510頁;Opie, L.H.ら、(イーパブ2007年6月7日)、「The Red Wine Hypothesis : From Concepts To Protective Signaling Molecules」、Eur. Heart J. 28巻(14号)、1683〜1693頁;Chen, Y.ら、(2007年)、「Review. Pro− And Anti−Angiogenesis Effects Of Resveratrol」、In Vivo 21巻(2号):365〜370頁[In Vivo21巻(6号):1172頁および21巻(5号):955頁の正誤表];Holme, A.L.ら、(2007年)、「Resveratrol In Cell Fate Decisions」、J. Bioenerg. Biomembr. 39巻(1号):59〜63頁;Athar, M.ら、(イーパブ2007年1月3日)、「Resveratrol: A Review Of Preclinical Studies For Human Cancer Prevention」、Toxicol. Appl. Pharmacol. 224巻(3号):274〜283頁)。特に、レスベラトロールは、心臓の働きに対してとヒト細胞の寿命を延ばすことにおいて有益であると考えられる。レスベラトロールは、栄養補助食品中に使用される場合、植物源からのアルコール抽出物として一般に製造される。
【0005】
カロリー制限食は、生存/長寿遺伝子を上方制御するかまたはその発現が細胞傷害を増大させる遺伝子を下方制御することによって生存および寿命を延ばすことが示されている(Edwards, M.G.ら、(2007年)、「Gene Expression Profiling Of Aging Reveals Activation Of A P53−Mediated Transcriptional Program」、BMC Genomics 8巻:80頁;Anderson, R.M.ら、(2006年)、「Calorie Restriction: Progress During Mid−2005−Mid−2006」、Exp. Gerontol. 41巻(12号):1247〜1249頁; Weindruch, R.ら、(2001年)、「Microarray Profiling of Gene Expression in Aging and Its Alteration by Caloric Restriction in Mice」、J. Nutrition 131巻:918S〜923S;Lee, K.− C.ら、(2003年)、「Transcriptional Profiles Associated With Aging And Middle Age−Onset Caloric Restriction In Mouse Hearts」、Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 99巻(23号):14988〜14993頁;Weindruch, R.ら、(2002年)、「Effects Of Caloric Restriction On Gene Expression」、Nestle Nutr. Workshop Ser. Clin. Perform. Programme 6巻:17〜28頁、28〜32頁;Mulligan, J.D.ら、(イーパブ2007年11月1日)、「Downregulation Of Plasma Insulin Levels And Hepatic Ppar gamma Expression During The First Week Of Caloric Restriction In Mice」、Exp. Gerontol. 43巻(3号):146〜153頁;Rodgers, J.T.ら、(イーパブ2007年11月26日)、「Metabolic Adaptations Through The PGC−1 Alpha And SIRTl Pathways」、FEBS Lett. 582巻(1号):46〜53頁;Swindell, W.R.、(2007年)、「Gene Expression Profiling Of Long−Lived Dwarf Mice: Longevity−Associated Genes And Relationships With Diet, Gender And Aging」、BMC Genomics. 8巻:353頁; Zhu, M.ら、(イーパブ2007年6月6日)、「Adipogenic Signaling In Rat White Adipose Tissue: Modulation By Aging And Calorie Restriction」、Exp. Gerontol. 42巻(8号):733〜744頁;Chiarpotto, E.ら、(2006年)、「Molecular Mechanisms Of Calorie Restriction ’s Protection Against Age−Related Sclerosis」、IUBMB Life. 58巻(12号):695〜702頁;Lu, J.ら、(2007年)、「Different Gene Expression Of Skin Tissues Between Mice With Weight Controlled By Either Calorie Restriction Or Physical Exercise」、Exp. Biol. Med. (Maywood). 232巻(4号):473〜480頁;Masternak, M.M.ら、(2007年)、「pPARS In Calorie Restricted And Genetically Long−Lived Mice」、pPAR Res. 2007年:28436頁;Fu, C.ら、(2006年)「Tissue Specific And Non−Specific Changes In Gene Expression By Aging And By Early Stage CR」、Mech. Ageing Dev. 127巻(12号):905〜916頁)。上で列挙した参考文献によって示されているように、遺伝子の発現の比較をヒトとするためのモデルとしてはマウスが広く使用されている。無制限に、ヒト遺伝子発現に対するマウスモデルの妥当性は、ヒトとマウスの遺伝子の98%が相同であり、マウスとヒトはほぼ同じ数の遺伝子(例えば、約30,000)を有するという事実を反映している。
【0006】
カロリー制限食の立証された利点にもかかわらず、必要な食事管理の厳しさは寿命を延ばすためのこのアプローチの使用を制限している。それ故、食事制限の必要性を避け、広範囲に及ぶ使用が受け入れられるカロリー制限の利点を得る代替手段を提供することが望まれる。本発明はこれとその他の必要性とを対象にする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Renaud, S.ら、(1998年)、「The French Paradox And Wine Drinking」、Novartis Found. Symp. 216巻:208〜222頁、152〜158頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明の要旨
本発明は、レスベラトロール単独かまたはカロリー制限で見られるものより大きい程度まで遺伝子発現を調節することができるレスベラトロールを含む組成物に関する。本発明は、特に、レスベラトロール、キレート剤、ヒアルロン酸、および/またはビタミンDを含み、レシピエントに投与したとき生存/長寿遺伝子産物の濃度もしくは活性を増し、かつ/または細胞傷害を誘発もしくは引き起こす遺伝子産物の濃度もしくは活性を減少するようなレスベラトロールを含む組成物に関わる。最も好ましくは、そのレスベラトロール安定化組成物は、キレート剤のフィチン酸(イノシトールヘキサホスフェート;IP6)、ヒアルロン酸、およびビタミンDを含む。本発明は、さらに、レシピエントに投与されると生存/長寿遺伝子を上方制御するかまたはその発現が細胞傷害を増大させる遺伝子を下方制御するような組成物の使用に関する。本発明は、特に、上記組成物のがん、循環器疾患、老化に伴う疾患、ならびにその他の状態および疾病の治療または予防における使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
詳しくは、本発明は、レシピエントに投与すると、レスベラトロール単独またはカロリー制限と比較して、生存/長寿遺伝子の産物またはその発現が細胞傷害を増大させる遺伝子の産物の濃度または活性を調節するレスベラトロールを含む組成物を提供する。投与は好ましくは経口摂取による。
【0010】
本発明は、その調節が、
(A)酸化的リン酸化、
(B)アクチンフィラメントの長さまたは重合、
(C)細胞内輸送、
(D)オルガネラ生合成、
(E)インスリンのシグナル伝達、
(F)解糖、
(G)糖新生、または
(H)脂肪酸代謝
を変化させるような組成物の実施形態をさらに提供する。
【0011】
本発明は、遺伝子産物が、生存/長寿遺伝子産物であり、特に遺伝子産物が、sサーチュイン1(sSurtuin 1)またはフォークヘッドFoxo1転写因子であるような組成物の実施形態をさらに提供する。
【0012】
本発明は、遺伝子産物が、細胞傷害を増大させる遺伝子産物であり、特に遺伝子産物が脱共役タンパク質3、Pgc−1,またはピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ4遺伝子によりコードされるような組成物の実施形態をさらに提供する。
【0013】
本発明は、組成物が、
(a)トランス−レスベラトロール、および
(b)金属キレート剤
を含み、トランス−レスベラトロールはカプセル化されており、それによって、生存/長寿遺伝子の産物またはその発現が細胞傷害を増大させる遺伝子の産物の濃度または活性を調節するための組成物の能力を、トランス−レスベラトロールの光または酸素への曝露による損失から実質的に保護するような組成物の実施形態をさらに提供する。
【0014】
本発明は、現存する個人の疾患に伴う症状を改善するためかまたは個人において疾患が発生する前に個人において症状が発現することを防止するための方法をさらに提供し、それは、レスベラトロール単独またはカロリー制限と比較して、生存/長寿遺伝子の産物またはその発現が細胞傷害を増大させる遺伝子の産物の濃度または活性を調節するレスベラトロールを含む組成物を個人に投与するステップを含み、レスベラトロールが、疾患の症状を改善する遺伝子の濃度または活性の調節をもたらす有効量で提供され、疾患が、循環器疾患、がん、黄斑変性、老化に伴う疾患、および炎症からなる群から選択される。
【0015】
本発明は、その調節により、
(A)酸化的リン酸化、
(B)アクチンフィラメントの長さまたは重合、
(C)細胞内輸送、
(D)オルガネラ生合成、
(E)インスリンのシグナル伝達、
(F)解糖
(G)糖新生、または
(H)脂肪酸代謝
を変化させるような方法の実施形態をさらに提供する。
【0016】
本発明は、生存/長寿遺伝子産物が、サーチュイン1またはフォークヘッドFoxo1転写因子であるような方法の実施形態をさらに提供する。本発明は、その発現が細胞傷害を増大させる遺伝子が、脱共役タンパク質3またはピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ4をコードするような方法の実施形態をさらに提供する。
【0017】
本発明は、前記組成物が、
(a)トランス−レスベラトロール、および
(b)金属キレート剤
を含み、トランス−レスベラトロールはカプセル化されており、それによって、生存/長寿遺伝子の産物またはその発現が細胞傷害を増大させる遺伝子の産物の濃度または活性を調節する組成物の能力を、トランス−レスベラトロールの光または酸素への曝露による損失から実質的に保護するような方法の実施形態をさらに提供する。
【0018】
本発明は、疾患が、がん、または老化に伴う疾患(特に、神経変性疾患)であるような方法の実施形態をさらに提供する。
【0019】
本発明は、組成物が、ケルセチン、ヒアルロン酸および/またはビタミンDをさらに含むような方法の実施形態をさらに提供する。
【0020】
本発明は、調節をレスベラトロール単独と比較するかまたは調節をカロリー制限と比較するような方法の実施形態をさらに提供する。
【0021】
本発明は、遺伝子産物が、生存/長寿遺伝子産物であり、特に、遺伝子産物が、サーチュイン1またはフォークヘッドFoxo1転写因子であるような方法の実施形態をさらに提供する。
【0022】
本発明は、遺伝子産物が、細胞傷害を増大させる遺伝子産物であり、特に遺伝子産物が、脱共役タンパク質3、Pgc−1,またはピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ4遺伝子によりコードされるような方法の実施形態をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】レスベラトロールまたは本発明の組成物(Longevinex(登録商標))を投与したマウスの、対照動物およびカロリー制限食を維持した動物と比較した体重の変化を示す図である。
【図2】レスベラトロールまたは本発明の組成物(Longevinex(登録商標))を投与したマウスの、対照動物およびカロリー制限食を維持した動物と比較した血清インスリン濃度を示す図である。
【図3】レスベラトロール(P=0.97)または本発明の組成物(Longevinex(登録商標))(P=0.07)を投与したマウスの、対照動物およびカロリー制限食を維持した動物(P=0.10)と比較した血清グルコース濃度を示す図である。
【図4】観察された本発明の組成物の生物活性と調和する作用機序の概略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、レスベラトロール単独かまたはカロリー制限で見られるものより大きい程度まで遺伝子発現を調節することができるレスベラトロールを含む組成物(特に、レスベラトロールを含む食品組成物(すなわち、レシピエントによる経口摂取に適する組成物))に関する。本発明は、特に、レスベラトロール、キレート剤、ヒアルロン酸、および/またはビタミンDを含み、レシピエントに投与したとき、生存/長寿遺伝子を上方制御するかまたはその発現が細胞傷害を増大させる遺伝子を下方制御するようなレスベラトロールを含む組成物に関わる。最も好ましくは、そのレスベラトロールを安定化する組成物は、キレート剤のフィチン酸(イノシトールヘキサホスフェート;IP6)、ヒアルロン酸、およびビタミンDを含む。本発明は、さらに、レシピエントに投与したとき、生存/長寿遺伝子を上方制御するかまたはその発現が細胞傷害を増大させる遺伝子を下方制御するかかる組成物の使用に関する。本発明のミネラルキレート剤は、ゲノムの分化における証拠としての老化防止効果を提供する。
【0025】
A.レスベラトロール
本明細書で用いる用語「レスベラトロール」は、構造:
【0026】
【化1】

を有するフィトアレキシンの3,4’,5−トリヒドロキシ−トランス−スチルベンを指す。
【0027】
レスベラトロールは、循環器疾患の予防または治療(参照、例えば、Das, S.ら、(2007年)、「Resveratrol: A Therapeutic Promise For Cardiovascular Diseases」、Recent Patents Cardiovasc. Drug Discov. 2巻(2号):133〜138頁;Opie, L.H.ら、(イーパブ2007年6月7日)、「The Red Wine Hypothesis: From Concepts To Protective Signaling Molecules」、Eur. Heart J. 28巻(14号):1683〜1693頁;Bertelli, A. A.、(イーパブ2007年5月24日)、「Wine, Research And Cardiovascular Disease: Instructions For Use」、Atherosclerosis 195巻(2号):242〜247頁; Providencia, R.、(2006年)、「Cardiovascular Protection From Alcoholic Drinks: Scientific Basis Of The French Paradox」、Rev. Port. Cardiol. 25巻(11号):1043〜1058頁;Maulik, N.、(2006年)、「Reactive Oxygen Species Drives Myocardial Angiogenesis?」、Antioxid. Redox Signal. 8巻(11〜12号):2161〜2168頁;Olas, B.ら、(2005年)、「Resveratrol, A Phenolic Antioxidant With Effects On Blood Platelet Functions」、Platelets 16巻(5号):251〜260頁;Bradamante, S.ら、(2004年)、「Cardiovascular Protective Effects Of Resveratrol」、Cardiovasc Drug Rev. 22巻(3号):169〜188頁;Hao, H.D.ら、(2004年)、「Mechanisms Of Cardiovascular Protection By Resveratrol」、J. Med. Food 7巻(3号):290〜298頁)、がんの予防または治療(Jang, M.ら、(1997年)、「Cancer Chemopreventive Activity Of Resveratrol, A Natural Product Derived From Grapes」、Science 275巻:218〜220頁;Das, S.ら、(2007年)、「Anti− Inflammatory Responses Of Resveratrol」、Inflamm. Allergy Drug Targets 6巻(3号):168〜173頁;de Ia Lastra, CA.ら、(2007年)、「Resveratrol As An Antioxidant And Pro−Oxidant Agent: Mechanisms And Clinical Implications」、Biochem. Soc. Trans. 35巻(第5部):1156〜1160頁;Athar, M.ら、(イーパブ2007年1月3日)、「Resveratrol: A Review Of Preclinical Studies For Human Cancer Prevention」、Toxicol. Appl. Pharmacol. 224巻(3号):274〜283頁;Meeran, S.M.ら、(2008年)、「Cell Cycle Control As A Basis For Cancer Chemoprevention Through Dietary Agents」、Front. Biosci. 13巻:2191〜2202頁;Shankar, S.ら、(2007年)、「Chemoprevention By Resveratrol: Molecular Mechanisms And Therapeutic Potential」、Front. Biosci. 12巻:4839〜4854頁;Delmas, D.ら、(2006年)、「Resveratrol As A Chemopreventive Agent: A Promising Molecule For Fighting Cancer」、Curr. Drug Targets 7巻(4号):423〜442頁;Signorelli, P.ら、(2005年)、「Resveratrol As An Anticancer Nutrient: Molecular Basis, Open Questions And Promises」、J. Nutr. Biochem. 16巻(8号):449〜466頁)、黄斑変性の予防または治療(米国特許出願第61/023、234号;King, R.E.ら、(2005年)「Resveratrol reduces oxidation and proliferation of human retinal pigment epithelial cells via extracellular signal−regulated kinase inhibition」、Chem. Biol. Interact. 151巻(2号):143〜149頁;Sparrow, J.R.ら、(2003年)、「A2E−epoxides damage DNA in retinal pigment epithelial cells. Vitamin E and other antioxidants inhibit A2E−epoxide formation」、J. Biol. Chem. 278巻(20号):18207〜18213頁)、老化に伴う疾患、ならびにアルツハイマー病およびパーキンソン病などの神経変性疾患の発生率または重症度を含めたその他の状態および疾病の減弱または予防(Baxter, R.A.、(2008年)「Anti−Aging Properties Of Resveratrol: Review And Report Of A Potent New Antioxidant Skin Care Formulation」、J. Cosmet. Dermatol. 7巻(1号):2〜7頁;Engel, N.ら、(2008年)、「Aging And Anti−Aging: Unexpected Side Effects Of Everyday Medication Through Sirtuinl Modulation」、Int. J. MoI. Med. 21巻(2号):223〜232頁;Bickenbach, K.A.ら、(イーパブ2007年12月21日)、「Resveratrol Is An Effective Inducer Of Carg−Driven Tnf−Alpha Gene Therapy」、Cancer Gene Ther. 15巻(3号):133〜139頁;Putics, A.ら、(2008年)、「Resveratrol Induces The Heat−Shock Response And Protects Human Cells From Severe Heat Stress」、Antioxid. Redox Signal. 10巻(1号):65〜75頁:Bass, T.M.ら、(イーパブ2007年8月14日)、「Effects Of Resveratrol On Lifespan In Drosophila melanogaster And Caenorhabditis elegans」、Mech. Ageing Dev. 128巻(10号):546〜552頁;Stefani, M.ら、(イーパブ2007年9月5日)、「The Effect Of Resveratrol On A Cell Model Of Human Aging」、Ann. N.Y. Acad. Sci. 1114巻:407〜418頁;Heiss, E.H.ら、(イーパブ2007年7月11日)、「Chronic Treatment With Resveratrol Induces Redox Stress− And Ataxia Telangiectasia−Mutated (Atm)−Dependent Senescence In P53−Positive Cancer Cells」、J. Biol. Chem. 282巻(37号):26759〜26766頁;Mayo Clinic (2007年)、「A Compound In Red Wine Makes Mice Live Longer, Healthier」、Mayo Clin. Health Lett. 25巻(5号):4頁;Kim, D.ら、(イーパブ2007年6月21日)、「Sirtl Deacetylase Protects Against Neurodegeneration In Models For Alzheimer’s Disease And Amyotrophic Lateral Sclerosis」、EMBO J. 26巻(13号):3169〜3179頁)、および抗炎症活性(Das, S.ら、(2007年)、「Anti− Inflammatory Responses Of Resveratrol」、Inflamm. Allergy Drug Targets 6巻(3号):168〜173頁)を含めた多様な有益な生物学的効果の原因とみなされている(列挙されている開示された効果を参照により本明細書に組み込む米国特許第7,345,178号を参照)。
【0028】
レスベラトロールは、化学的に合成することができ(Farina, A.ら、(2006年)、「An Improved Synthesis Of Resveratrol」、Nat. Prod. Res. 20巻(3号):247〜252頁)、または、より好ましくは植物源から抽出することができる。レスベラトロールは、31の属および12の科の中に分布している植物の少なくとも72種中で見出される(参照、Counet, C.ら、(2006年)、「Chocolate And Cocoa: New Sources Of Trans−Resveratrol And Trans−Piceid」、Food Chem. 98巻:649〜657頁;Jang, M.ら、(1997年)、「Cancer Chemopreventive Activity Of Resveratrol, A Natural Product Derived From Grapes」、Science 275巻:218〜220頁;Wang, Y.ら、(2002年)、「An LC−MS Method For Analyzing Total Resveratrol In Grape Juice, Cranberry Juice, And In Wine」、J. Agricult. Food Chem. 50巻(3号):431〜435頁)。レスベラトロールを含有していることが見出されている科はすべて、種子植物の門:ブドウ科、フトモモ科、フタバガキ科、カヤツリグサ科、グネツム科、マメ科、マツ科、クワ科、ブナ科、ユリ科に属する(Langcake, P.ら、(1976年)「The Production Of Resveratrol By Vitis Vinifera And Other Members Of The Vitaceae As A Response To Infection Or Injury」、Physiol. Plant Pathol. 9巻:77〜86頁;Yoshiaki, T.ら、(2002年)、「Biogenic Reactions On Stilbenetetramers From Vitaceaeous Plants」、Tetrahedron 58巻:9265〜9271頁)。レスベラトロールは、非食用植物:つる植物、ユーカリノキ属、トウヒ、および熱帯の落葉樹Bauhinia racemosa、Pterolobium Hexapetallum中にあることが最も頻繁に報告されている(Cassady, A.ら、(2000年)、「Isoflavones, Lignans, And Stilbenes −Origins, Metabolism And Potential Importance To Human Health」、J. Science Food Agric. 80巻:1044〜1062頁;Soleas, G. J.ら、(1997年)、「Resveratrol: A Molecule Whose Time Has Come? And Gone?」、Clin. Biochem. 30巻:91〜113頁)。レスベラトロールは、特にブドウの皮およびオオイタドリ中(参照、Burns, J.ら、(2002年)、「Plant Foods and Herbal Sources of Resveratrol」、J. Agric. Food Chem. 50巻(11号):3337〜3340頁)、ココアおよびチョコレート中(Counet, C.ら、(2006年)、「Chocolate And Cocoa: New Sources Of Trans−Resveratrol And Trans−Piceid」、Food Chem. 98巻:649〜657頁)に特に見出される。ピーナッツの芽もレスベラトロールの豊富な供給源である。
【0029】
B.遺伝子産物の濃度または活性の調節
本発明は、レシピエントに投与したときに、生存/長寿遺伝子産物の濃度または活性を増加し、かつ/または細胞傷害を誘発または引き起こす遺伝子産物の濃度または活性を減少させる組成物に関連する。本明細書で使用するような濃度または活性の増加(もしくは減少)は、任意の機構によって達成され得る。例えば、そのような増加(もしくは減少)は、遺伝子発現の調節を反映することができ、生存/長寿遺伝子産物をコードする遺伝子発現の増加(もしくは減少)をもたらすか、またはそのような発現または活性を制御する(例えば誘発または抑制する)遺伝子またはその産物がそのような発現または活性を制御する遺伝子のいずれかをもたらす。かわりに、または共同で、そのような濃度または活性の増加(もしくは減少)は、レシピエントの上記遺伝子産物のいずれかを劣化または安定化させる能力の調節を反映することができる。かわりに、または共同で、そのような濃度または活性の増加(もしくは減少)は、レシピエントの、上記遺伝子産物のいずれかの活性を、高め、加速し、抑制し、または減速する能力の調節を反映することができる。
【0030】
上で論じた濃度または活性の調節は、そのような生存/長寿遺伝子産物または細胞傷害を誘発または引き起こすそのような遺伝子産物の細胞内、細胞間および/または組織の濃度または活性の調節であり得る。そのような調節は、1つまたは複数のタイプの細胞、組織等で行われるDNA発現のアッセイ、遺伝子産物活性のアッセイ、遺伝子産物のレベルのアッセイ、遺伝子産物の代謝回転速度のアッセイ等によって確認することができる。
【0031】
生存/長寿遺伝子産物の濃度の増加は、例えば、生存/長寿遺伝子産物をコードする遺伝子の転写の増加、生存/長寿遺伝子産物をコードする遺伝子の発現を誘発する遺伝子の転写の増加、生存/長寿遺伝子産物をコードする遺伝子の発現を抑制する遺伝子の転写の減少、生存/長寿遺伝子産物の発現分子の劣化の減少または安定化の増大(生存/長寿遺伝子産物の蓄積の高まりにつながる)によってもたらされ得る。同様に、生存/長寿遺伝子産物の濃度の減少は、例えば、生存/長寿遺伝子産物をコードする遺伝子の転写の減少、生存/長寿遺伝子産物をコードする遺伝子の発現を誘発する遺伝子の転写の減少、生存/長寿遺伝子産物をコードする遺伝子の発現を抑制する遺伝子の転写の増加、生存/長寿遺伝子産物の発現分子の劣化の増加または安定化の減少(生存/長寿遺伝子産物の消失の増大につながる)によってもたらされ得る。
【0032】
本発明の1態様は、従って、遺伝子発現を調節し、特に、「生存/長寿」遺伝子および/または「傷害誘発」遺伝子の発現を調節するレスベラトロールおよびレスベラトロールを含む組成物の使用に関する。本明細書で用いられる化合物は、その投与が少なくとも10%のかかる遺伝子の発現の変化(対照と比較して)をもたらす場合に、遺伝子発現を「調節する」と言う。調節は、発現の増加(「上方制御」)含むことができ、または、それは発現の減少(「下方制御」)を含むことができる。用語の上方制御は、このように、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも2倍、少なくとも5倍、または最も好ましくは少なくとも10倍(対照と比較して)の発現の増加を意味する。用語の下方制御は、逆に、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも2倍、少なくとも5倍、または最も好ましくは少なくとも10倍(対照と比較して)の発現の減少を意味する。
【0033】
本発明の第2の態様は、従って、「生存/長寿」遺伝子および/または「傷害誘発」遺伝子の発現産物の濃度または活性を調節するレスベラトロールおよびレスベラトロールを含む組成物の使用に関する。本明細書で用いられる化合物は、その投与が少なくとも10%のかかる遺伝子産物の細胞内、細胞間または組織の濃度または活性の変化(対照と比較して)をもたらす場合に、かかる発現した産物の濃度または活性を「調節する」と言う。調節は、例えば、「蓄積の増大」または「活性の増強」を含むことができ、あるいは、例えば、それは「蓄積の減少」または「活性の減少」を含み得る。用語の「蓄積の増大」(または「活性の増強」)は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも2倍、少なくとも5倍、または最も好ましくは少なくとも10倍(対照と比較して)の濃度(または活性)の増加を意味する。用語の「蓄積の減少」または「活性の減少」は、逆に、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも2倍、少なくとも5倍、または最も好ましくは少なくとも10倍(対照と比較して)の濃度(または活性)の減少を意味する。
【0034】
本明細書で用いられる「生存/長寿」遺伝子とは、その発現がそのような遺伝子を発現する対象(例えば、哺乳動物、特にヒト)の生存または寿命の増進に寄与する遺伝子である。逆に、「傷害誘発」遺伝子とは、その発現がかかる対象におけるDNA、細胞、または組織の傷害に関与する遺伝子である。かかる遺伝子は、生物学的ストレス因子に対するレスポンダーであり、それらは、その発現を調節することによって、放射線(例えば、太陽光、ガンマ線、UV光など)、放射線類似作用物質(radiomimetic agent)(例えば、ビタミンD)、熱、半飢餓状態(カロリー制限、またはその模倣剤、レスベラトロール)等のストレス因子に応じた作用を開始する。
【0035】
生存/長寿遺伝子の例を、表1に提供する。その発現が細胞の傷害を増大させる遺伝子の例を表2に提供する。これらの表は、遺伝子に関するNCBIの「ENTREZGENE」受け入れ番号を提供している。最も好ましくはかかる遺伝子はヒト遺伝子である。サーチュイン1遺伝子は、DNA修復酵素を産生する能力のお陰で生体の老化の速度を制御し、カロリー制限の有益な効果を模倣することが公知である。レスベラトロールのトランス型(シス−レスベラトロールではない)は、サーチュイン1遺伝子を活性化する(Alcendor, R.R.(2007年)、「Sirtl Regulates Aging And Resistance To Oxidative Stress In The Heart」、Circulation Research 100巻(10号):1512〜1521頁; Howitz, K.T.ら、(2003年)、「Small Molecule Activators Of Sirtuins Extend Saccharomyces Cerevisiae Lifespan」、Nature 425巻:191〜196頁)。本発明は、特に、サーチュイン1生存/長寿遺伝子産物の濃度を増加させる組成物に関する。本発明は、さらに、特に、フォークヘッドFoxo1(daf−16、dFoxO)転写因子生存/長寿遺伝子産物の濃度を増加させる組成物に関する。
【0036】
【表1−1】

【0037】
【表1−2】

【0038】
【表1−3】

【0039】
【表1−4】

【0040】
【表1−5】

【0041】
【表1−6】

【0042】
【表1−7】

【0043】
【表2−1】

【0044】
【表2−2】

【0045】
【表2−3】

【0046】
【表2−4】

【0047】
【表2−5】

【0048】
【表2−6】

【0049】
【表2−7】

C.本発明の好ましい組成物
本発明は、特に、レスベラトロールの比活性が安定化されているかまたは増大しているレスベラトロールを含む組成物に関する。本明細書で使用される用語の「比活性」とは、投与されたレスベラトロールの量(質量)当たりの遺伝子調節の程度(対照と比較して)の比率を指す。
【0050】
好ましくは、上記組成物は、キレート剤、ヒアルロン酸、および/またはビタミンDを含む。本発明は、特に、レスベラトロールと、抗酸化剤(キレート剤)、ヒアルロン酸、およびビタミンDからなる群から選択される少なくとも1つの化合物とを含む上記組成物(好ましくは、本発明の組成物は、約10mgから約2gまで、より好ましくは約100mgから約500mgまでの組成物薬用量を提供する)に関する。好ましくは、本発明の組成物は、レスベラトロール、抗酸化剤、ヒアルロン酸、およびビタミンDを含有する。
【0051】
本明細書で使用される用語の「キレート剤」とは、溶液から遊離の金属イオンと結合して取り除く有機化合物を指す。適当なキレート剤の例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒスチジン、テトラサイクリンファミリーの抗生物質、ピリドキサル2−クロロベンゾイルヒドラゾン、デスフェリオキサミン、デクスラゾキサン、デフェラシロクス、ピオベルジン、シューダン(pseudan)、シトレート、NDGA(ノルジヒドログアヤレチン酸:l,4−ビス[3,4−ジヒドロキシフェニル]2,3−ジメチルブタン)、フェルラ酸およびフィチン酸が挙げられる。好ましくは、本発明の組成物は、約1gから約15gまで、より好ましくは約2gから約12gまでのキレート剤の組成物薬用量を提供する。
【0052】
フィチン酸は、本発明の目的に対して特に好ましいキレート剤である。本明細書で使用される用語の「フィチン酸」は、イノシトールヘキサホスフェート((2,3,4,5,6−ペンタホスホノオキシシクロヘキシル)二水素ホスフェート、「IP6」としても公知である)(参照、Thorne Research, Inc.、(2002年)、「Inositol Hexaphosphate. Monograph」、Altern. Med. Rev. 7巻(3号):244〜248頁;Vucenik, I.ら、(2006年)、「Protection Against Cancer By Dietary IP6 And Inositol」、Nutr. Cancer. 55巻(2号):109〜125頁;Lopez, M.A.ら、(2004年)、「Iron Availability: An Updated Review」、Int. J. Food Sci. Nutr. 55巻(8号):597〜606頁;Singh, R.P.ら、(2005年)、「Prostate Cancer And Inositol Hexaphosphate: Efficacy And Mechanisms」、Anticancer Res. 25巻(4号):2891〜2903頁;Vucenik, I.ら、(2006年)、「Cancer Inhibition By Inositol Hexaphosphate (IP6) And Inositol: From Laboratory To Clinic」、J. Nutr. 133巻(11号別冊1):3778S〜3784S;Raboy, V.、(2003年)、「Myo−Inositol− 1,2,3,4,5,6−Hexakisphosphate」、Phytochemistry. 64巻(6号):1033〜19043頁;Vohra, A.ら、(2003年)、「Phytases: Microbial Sources, Production, Purification, And Potential Biotechnological Applications」、Crit. Rev. Biotechnol. 23巻(1号):29〜60頁;Fox, C.H.ら、(2002年)、「Phytic Acid (IP6), Novel Broad Spectrum Anti−Neoplastic Agent: A Systematic Review」、Complement Ther. Med. 10巻(4号):229〜234頁;Grases, F.ら、(1999年)、「Phytate (IP6) Is A Powerful Agent For Preventing Calcifications In Biological Fluids: Usefulness In Renal Lithiasis Treatment」、Anticancer Res. 19巻(5a):3717〜3722頁;Jariwalla, R.J.、(1999年)、「Inositol Hexaphosphate (IP6) As An Anti−Neoplastic And Lipid−Lowering Agent」、Anticancer Res. 19巻(5a):3699〜3702頁;Katayama T.、(1999年)、「Hypolipidemic Action Of Phytic Acid (IP6): Prevention Of Fatty Liver」、Anticancer Res. 19巻(5a):3695〜3698頁)。フィチン酸の構造を下に提供する:
【0053】
【化2】

フィチン酸は、全粒穀類(whole grain)、穀類(cereal)、マメ科植物、木の実、および種子中にかなりの量が見出され、発芽する植物のための主要なエネルギー源である(Graf, E.、(1983年)、「Applications of Phytic Acid」、J. Am. Oil. Chem. Soc 60巻:1861〜1867頁)。フィチン酸およびその低リン酸化型(IP3など)は、ほとんどの哺乳類細胞中にも見出され、そこでそれらはさまざまな重要な細胞機能の調節を助けている(Szwergold, B. S.ら、(1987年)、「Observation Of Inositol Pentakis− And Hexakisphosphates In Mammalian Tissues By 31P NMR」、Biochem. Biophys. Res. Commun. 264巻:874〜881頁)。フィチン酸は、好ましくは米ぬかの形で提供される(Srinivasan, M.、(2007年)、「Ferulic Acid’ Therapeutic Potential Through Its Antioxidant Property」、J. Clin. Biochem. Nutr. (2007年)40巻(2号):92〜100頁;Kim, M.J.ら、(2007年)、「Ferulic Acid Supplementation Prevents Trimethyltin−Induced Cognitive Deficits in Mice」、Biosci. Biotechnol. Biochem. (2007年)71巻(4号):1063〜1068頁)。フィチン酸は、銅および鉄等の二価のカチオンをキレート化することによる抗酸化剤として機能し、それによって細胞傷害および発癌に関与する反応性の酸素種の発生を防止すると報告されている(Harland, B.F.ら、(1987年)、「Phytate In Foods」、World Rev. Nutr. Diet 52巻:235〜259頁)。フィチン酸(例えば、米ぬかとして)の好ましい組成物薬用量は、2000〜12,000mgの範囲である。
【0054】
本明細書で使用される用語の「ヒアルロン酸」(ヒアルロナンとしても公知である)とは、D−グルクロン酸およびD−N−アセチルグルコサミンが、交互のβ−1,4グリコシド結合およびβ−1,3グリコシド結合を介して共に連結している二糖の繰り返し([−β(1,4)−GlcUA−β(1,3)−GlcNAc−])から成る線状ポリマーを指す。ヒアルロン酸は、25,000の二糖の繰り返し(n)の長さであり得る:
【0055】
【化3】

ヒアルロン酸は、人体中で天然に生成されるが、体が老化すると量が減少する水保有分子である。ヒアルロン酸は、細胞の細胞周囲マトリクスの基底を形成する多機能のグリコサミノグリカンである。ヒアルロン酸は、異なるけれども関連する3つの酵素によって合成される(ヒアルロナンシンターゼ:HASl、HAS2およびHAS3)(Weigel, P.H.ら、(1997年)、「Hyaluronan Synthases」、J. Biol. Chem. 272巻:13997〜14000頁;Tammi, M.I.ら、(2002年)、「Hyaluronan And Homeostasis: A Balancing Act」、J. Biol. Chem. 277巻:4581〜4584頁;Kakehi, K.ら、(2003年)、「Hyaluronic Acid: Separation And Biological Implications」、J. Chromatogr. B Analyt. Technol. Biomed. Life Sci. 797巻(l〜2号):347〜355頁;Radaeva, I.F.ら、(1997年)、「Hyaluronic Acid: Biological Role, Structure, Synthesis, Isolation, Purification, And Application (Review)」、Prikl. Biokhim. Mikrobiol. 33巻(2号):133〜137頁;Stoolmiller, A.C.ら、(1970年)、「The Biosynthesis Of Hyaluronic Acid By Group A Streptococcus」、Expos. Annu. Biochim. Med. 30巻:65〜78頁)。米国特許出願公開第2004/0234497号は、抗がん剤送達のためのヒアルロン酸の使用を開示している。その公開物の全体の開示を、参照により本明細書に組み込む。
【0056】
ヒアルロン酸は、伝統的に、雄鶏のとさか、ウシまたは魚の硝子体液、微生物の生産物またはその他の供給源から抽出されてきた(Rangaswamy, V.ら、(イーパブ2007年10月24日)、「An Efficient Process For Production And Purification Of Hyaluronic Acid From Streptococcus Equi Subsp. Zooepidemicus」、Biotechnol. Lett. 30巻(3号):493〜496頁;Gao, F.ら、(2006年)、「Preparation And Characterization Of Hyaluronan Oligosaccharides For Angiogenesis Study」、J. Biomed. Mater. Res. B Appl. Biomater. 78巻(2号):385〜392頁;Blank, L.M.ら、(2005年)、「Stable Production Of Hyaluronic Acid In Streptococcus Zooepidemicus Chemostats Operated At High Dilution Rate」、Biotechnol. Bioeng. 90巻(6号):685〜693頁;Kakehi, K.ら、(2003年)、「Hyaluronic Acid: Separation And Biological Implications」、J. Chromatogr. B Analyt. Technol. Biomed Life Sci. 797巻(1〜2号):347〜355頁;Volpi, N.ら、(2003年)、「Purification And Characterization Of Hyaluronic Acid From The Mollusc Bivalve Mytilus Galloprovincialis」、Biochimie 85巻(6号):619〜625頁;Tawada, A.ら、(2002年)、「Large−Scale Preparation, Purification, And Characterization Of Hyaluronan Oligosaccharides From 4−Mers To 52−Mers」、Glycobiology. 2002年7月、12巻(7号):421〜426頁;Mahoney, D.J.ら、(2001年)、「Novel Methods For The Preparation And Characterization Of Hyaluronan Oligosaccharides Of Defined Length」、Glycobiology. 11巻(12号):1025〜1033頁;Mcdonald, J.ら、(2002年)、「Hyaluronan Minireview Series」、J. Biol. Chem. 277巻(7号):4575〜4579頁;Radaeva, I.F.ら、(1997年)、「Hyaluronic Acid: Biological Role, Structure, Synthesis, Isolation, Purification, And Application (Review)」、Prikl. Biokhim. Mikrobiol. 33巻(2号):133〜137頁)。最も好ましくは、本発明のヒアルロン酸は、雄鶏のとさかから得る。ヒアルロン酸は、広く市販されており、そのような製剤は本発明の目的に適合し得る。本発明の組成物は、好ましくは約1mgから約400mgまで、より好ましくは約50mgから約200mgまでのヒアルロン酸の組成物薬用量を提供する。
【0057】
本明細書で用いられる用語の「ビタミンD」とは、油脂に溶解するプロホルモンを指す。ビタミンDの2つの主な形態は、ビタミンD(エルゴカルシフェロール)およびビタミンD(コレカルシフェロール)である(DeLuca, H.F.ら、(1998年)、「Mechanisms And Functions Of Vitamin D」、Nutr. Rev. 56巻:S4〜S10):
【0058】
【化4】

ビタミンDは、多くの生物学的作用を示す。ビタミンDは、骨疾患(成長中の子供のくる病、高齢者における骨粗しょう症)を回避するその能力について広く公知である一方で、それはがんとの闘いにおける主役となりつつある。免疫力およびがんにおけるビタミンDの役割に関して、ビタミンDは、走化性の(親和性の)好中球の動員および移動を向上させる。ビタミンD欠乏によるくる病の患者は、適切に移動することができない不活発な好中球を有することが観察される。ビタミンDは、単球のマクロファージへの成熟化を促進する。これにより腫瘍に向かって戦闘を開始する免疫戦闘細胞の大きくなった軍隊が生じる。ビタミンDは、幅広く市販されており、そのような製剤は、本発明の目的に適合する。
【0059】
ビタミンDは、最適な筋肉、骨、脳、免疫および心臓脈管の健康にとって必須であり、世界中の老化の研究者による再発見を受けている。2000IUまでのビタミンD補給が死亡率を著しく低下させることが示されており、従って現在真の長寿の因子であると考えられている分子のラインナップにビタミンDを加えている(Autier, P.ら、(2007年)、「Vitamin D Supplementation And Total Mortality: A Meta−Analysis Of Randomized Controlled Trials」、Arch Intern Med. 167巻(16号):1730〜1737頁)。その抗石灰化特性(Zittermann, A.ら、(2007年)、「Vitamin D And Vascular Calcification」、Curr. Opin. Lipidology 18巻(l号):41〜46頁)は、ビタミンDを、人体の加齢に伴う漸進的な過剰ミネラル化を阻止し、本発明の組成物中のその他のミネラルのキレート剤の作用に匹敵するもう1つの強力な作用物質と評している。1200IUの用量は、1日当たりの推奨許容量より3倍多いが、それは、十分に、全米科学アカデミーによって確立された安全な上限値(2000IU)の範囲内であり、ヒトの臨床試験で有益であることが最近見出された追加の薬用量と一致する(Lappe, J.M.ら、(2007年)、「Vitamin D and calcium supplementation reduces cancer risk: results of a randomized trial」、Amer. J. Clin. Nutr. 85巻(6号):1586〜1591頁)。2,000IUの薬用量は、副作用が報告されていない南の地帯における15〜30分間の全身の真昼の夏の日光曝露によって生ずる天然のビタミンD3と大体同等である。本発明の組成物は、好ましくは約100IUから約100,000IUまで、より好ましくは約1,000IUから約50,000IUまでのビタミンDの組成物薬用量を提供する。
【0060】
本発明の組成物は、レスベラトロールの生物学的活性を増大させるように作用するさらなる活性成分および不活性な化合物(例えば、風味料、甘味料、染料、ビタミン、アミノ酸(例えばリジン、プロリンなど)、ミネラル、栄養素など)を含めた追加成分を含むことができる。
【0061】
特に、ケルセチン(3,3’,4’,5,7−ペンタヒドロキシ−2−フェニルクロメン−4−オン)、
【0062】
【化5】

ブテイン、フィセチン、ミリセチン、ケンフェロール、シス−レスベラトロールまたはピセタノールをその組成物に加えることができる。
【0063】
【化6】

【0064】
【化7】

かかる化合物は、例えば、Stecher, G.ら、(2001年)(「Determination Of Flavonoids And Stilbenes In Red Wine And Related Biological Products By HPLC And HPLC−ESI−MS−MS」、Fresenius J. Anal Chem. 2001年9月:371巻(1号):73〜80頁)により記述されている。
【0065】
レスベラトロールは、ヒト肝臓中でグルクロン酸塩化され、それは生物学的利用能を減少する可能性がある。フラボノイド類、例えばケルセチンは、レスベラトロールのグルクロン酸結合を阻止し、従ってレスベラトロールの生物学的利用能を改善するように作用することができる(参照、de Santi, C.ら、(2000年)、「Glucuronidation Of Resveratrol, A Natural Product Present In Grape And Wine, In The Human Liver」、Xenobiotica 30巻(11号):1047〜1054頁);De Santi, C.ら、(2000年)、「Sulphation Of Resveratrol, A Natural Compound Present In Wine, And Its Inhibition By Natural Flavonoids」、Xenobiotica 30巻(9号):857〜866頁;De Santi, C.ら、(2000年)、「Sulphation Of Resveratrol, A Natural Product Present In Grapes And Wine, In The Human Liver And Duodenum」、Xenobiotica 30巻(6号):609〜617頁)。ケルセチンも、レスベラトロールと相乗的にかまたはレスベラトロールとは無関係に作用して有益な機能を提供することができる(Kampkoetter, A.ら、(イーパブ2007年10月16日)、「Increase Of Stress Resistance And Lifespan Of Caenorhabditis Elegans By Quercetin」、Comp. Biochem. Physiol. B Biochem. Mol. Biol. 149巻(2号):314〜323頁)。(以下も参照、Kaindl, U.ら、(2008年)、「The Dietary Antioxidants Resveratrol And Quercetin Protect Cells From Exogenous Pro−Oxidative Damage」、Food Chem. Toxicol. 46巻(4号):1320〜1326頁;Melzig, M.Fら、(2002年)、「Induction Of Neutral Endopeptidase And Angiotensin−Converting Enzyme Activity Of Sk−N−Sh Cells In Vitro By Quercetin And Resveratrol」、Pharmazie. 57巻(8号):556〜558頁;Hsu, C.L.ら、(2006年)、「Induction Of Cell Apoptosis In 3T3−L1 Pre−Adipocytes By Flavonoids Is Associated With Their Antioxidant Activity」、Molec. Nutr. Food Res. 50巻(11号):1072〜1079頁;Chan, M.M.ら、(2000年)、「Synergy Between Ethanol And Grape Polyphenols, Quercetin, And Resveratrol, In The Inhibition Of The Inducible Nitric Oxide Synthase Pathway」、Biochem. Pharmacol. 60巻(10号):1539〜1548頁;Nicholson S. K.ら、(2008年)、「Effects Of Dietary Polyphenols On Gene Expression In Human Vascular Endothelial Cells」、Proc. Nutr. Soc. 67巻(l号):42〜47頁;Lemos, C.ら、(2007年)、「Modulation Of Folate Uptake In Cultured Human Colon Adenocarcinoma Caco−2 Cells By Dietary Compounds」、Eur. J. Nutr 46巻(6号):329〜336頁)。
【0066】
乳化剤、充填剤、結合剤なども、本発明の組成物に含めることができる。
【0067】
1実施形態において、本発明の組成物は、新規な組合せを含み、それは、広範囲に及ぶ予防上および治療上の健康特性を有するケルセチンおよびレスベラトロール等の小分子;および/またはコラーゲン構築栄養素(例えば、ビタミンC−アスコルベート、リジン、プロリン等);ならびに短くした(低分子量の)鎖のヒアルロン酸(HA)またはその特異成分(グルコサミン、グルクロン酸塩)またはコンドロイチン硫酸(それらは、軟骨組織の構成成分として寄与する線状の二糖類(砂糖に似た分子)であるが、本組合せにおいては生体細胞を取り巻く非細胞(結合)組織中の相乗的な共同治療剤として寄与する)などのグリコサミノグリカンの組合せである。コラーゲンの産生を促すためのグリコサミノグリカン(ヒアルロナン、グルクロン酸またはコンドロイチン)および/またはアスコルビン酸、リジンまたはプロリン、および細胞内基底で働く小分子の組合せは、全組織マトリックスを網羅する治療または予防作用を含む。本発明の合せは、ヒトまたは動物が栄養補助食品として経口摂取することを意図している。その下位の実施形態において、かかる組成物は、栄養補助食品中にレスベラトロールとヒアルロナンの組合せを含むことができ、それは、いくつかのがんを含めたさまざまな疾病を治療するために役立つ。レスベラトロールは、抗がん分子であり、その他の治癒力および延命力を有することが公知である。ヒアルロナン(ヒアルロン酸、HA)は、経口サプリメントとして摂取され、またはがん細胞を標的として静脈内に投与することができる。他の分子と組み合わされるかまたは他の分子に結合するとき、ヒアルロナンは、レスベラトロール等のその他の抗がん剤および治癒剤を腫瘍部位に送達する。その組合せは、上記の本発明者の同時係属の特許出願に記載されているようなキレート剤、抗酸化物質および/または乳化剤を含んでも含まなくてもよい。それらの添加剤ありまたはなしで、カプセル化するかまたはさもなければ一緒に適用するとき、レスベラトロールおよびHAは、動物およびヒトに対する強力な治癒特性を有する。
【0068】
最も好ましくは、本発明の組成物は、レスベラトロールの比活性を、該組成物のレスベラトロールが、酸素ガスの存在下で維持されているか、またはキレート剤、ヒアルロン酸、もしくはビタミンDなしで維持されているレスベラトロールの比活性より大きい比活性を有するように安定化する。好ましくは、組成物のレスベラトロール以外の構成成分の量が、組成物のレスベラトロールを、それが酸素ガスの存在下で維持されているか、またはキレート剤、ヒアルロン酸、もしくはビタミンDなしで維持されているレスベラトロールの活性の、少なくとも10%より多い活性、少なくとも20%より多い活性、少なくとも50%より多い活性、少なくとも2倍の活性、少なくとも5倍の活性、または少なくとも10倍の活性を示すように、そしてそれが、周囲条件の温度および湿度で(すなわち、温度または湿度について特別の予防措置の必要無しで)かかる比活性を長期間(例えば、1、2、4、6、10、12、18、24、または36ヶ月あるいはそれより長き)にわたって示すことができ続けるように安定化する。
【0069】
D.本発明の好ましい組成物の包装
レスベラトロールは、一般的に光および酸化に対して不安定である(Shaanxi University of Science & Technology、Xianyang China、(2007年)、「Study On The Stability Of Resveratrol In Rhizoma Polygoni cuspidate」、Zhong Yao Cai. 30巻(7号):805〜80頁)。本発明のレスベラトロールは、その比活性を最大にするやり方で好ましくは調製、包装および/または保存する。光誘起される劣化(例えば光異性化)または酸素誘起される劣化を最小にするようにレスベラトロールを微小光中(または暗闇中)および/または低酸素中で調製、包装および/または保存するのが好ましい。本発明の好ましい組成物は、ピル、ロゼンジ、カプセル剤、エリキシル剤、シロップ剤などの形態の経口摂取用の栄養補助食品として製剤化する。投与のその他の様式(例えば、鼻腔内、非経口、静脈内、動脈内、局所等)を代わりに使用することができる。
【0070】
かかる好ましい包装の最初の例において、本発明の組成物は、カプセル化が酸素への曝露を防止するか最小にするように行われる気密のカプセルとして製剤化する。1実施形態において、そのようなカプセル化は酸素のない環境の中で行われる。例えば、本発明の組成物の成分は、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴンなど)環境の中でカプセル中に入れられ得る。好ましくは、窒素のバブル(カプセル容積の5〜20%)を、該成分を酸素に対してさらに安定化し、保護するためにそのカプセル中に導入することができる(参照、参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開第WO 01/08631号)。その国際出願は、対応する米国特許出願を有する。栄養補助食品のレスベラトロールおよびその他の酸化されやすい成分のカプセル化において有用な適当なカプセルとしては、Licaps(登録商標)(Capsugel)、気密ゼラチンカプセルが挙げられる。該構成成分を金属誘発性の酸化から保護する能力を有するフィチン酸の存在は、かかる抗酸化の予防手段を増やす。かかるレスベラトロールを含む組成物の特に好ましい例は、レスベラトロールとフィチン酸とを含むLongevinex(登録商標)(Resveratrol Partners、LLC、San Dimas、CA)である。Longevinex(登録商標)は、活性成分として(1カプセル当たり)、5mgのビタミンE(混合トコフェロールとして)、215mgの全レスベラトロール(フランス赤ワインおよびイタドリ(giant knotwood)(Polygonum cuspidatum)から採取し、100mgのトランス−レスベラトロールを供給)、25mgのケルセチン二水和物、75mgのフィチン酸(米糠抽出物)、380mgの米ぬか油、55mgのヒマワリレシチン、を含有する。
【0071】
組成物が一旦気密カプセル中に密封されたら、カプセルを取り囲んでいる包装中の低酸素または無酸素環境を維持することが、万一破壊または漏れが密封したカプセルに起こったときにその組成物を酸化から保護するために重要である。それ故、酸素吸収性の袋(packette)を遊離の酸素の存在を減らすために好ましくは使用する。気密材料の真空または窒素置換した(nitrogen−flushed)包装(ボトル、ピルケース等)が望ましい。
【0072】
他の実施形態において、本発明の成分および組成物は、マイクロカプセル化プロセスのように調製することができる(参照、大まかに、Rubiana, M.ら、(2004年)、「Drug Delivery Systems: Past, Present, and Future」、Current Drug Targets, 5巻(5号):449〜455頁)。マイクロカプセル化は、微小粒子または液滴(大きさが数ナノメートルから1ミクロンまでの範囲)を保護層により被覆して制御された特性を有する小カプセルを作るプロセスである。適当なミクロンサイズのカプセル化された製剤は、Maxx Performance Inc.(Chester、NY)、Blue California(Rancho Santa Margarita、CA)、Southwest Research Institute(San Antonio、TX)、Coating Place,Inc.(Verona、WI)、Microtek Laboratories(Dayton、OH)、Particle Sciences,Inc.(Bethlehem、PA)等のマイクロカプセル化プロセスを用いて得ることができる。ビタミンD3、ビタミンE、レスベラトロール、ケルセチン、およびフィチン酸を含有する第3世代のLongevinex(登録商標)(「Longevinex−3(登録商標)」)(Resveratrol Partners,LLC)は、本発明の組成物の特に好ましいマイクロカプセル化された形態である。
【0073】
本発明は、酸化性金属と接触させることができるケルセチンおよびその他の容易に酸化される栄養補助食品成分を安定化させる実用的方法をさらに含む。
【0074】
E.本発明の組成物の有用性
本発明の組成物は、レスベラトロールの比活性を増大させる。本発明の組成物は、それ故、「生存/長寿」遺伝子および/または「傷害誘発」遺伝子の発現の調節が望ましい循環器疾患、がん、黄斑変性、老化、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病など)、および炎症等の疾患の治療(または疾患の症状の改善)において有用性があることが分かる。時間と共に、カルシウムおよび鉄等のミネラルが人体に蓄積すると、遺伝子は有害な形で反応する。Liu, Y.ら、(2005年)「Global Genomic Approaches To The Iron−Regulated Proteome」、Ann. Clin. Lab. Sci. 35巻(3号):230〜239頁; Templeton, D.M.ら、(2003年)、「Genetic Regulation Of Cell Function In Response To Iron Overload Or Chelation」、Biochim. Biophys. Acta. 1619巻(2号):113〜124頁;Ikeda, H.ら、(1992年)、「Evidence That An Iron Chelator Regulates Collagen Synthesis By Decreasing The Stability Of Procollagen mRNA」、Hepatology 15巻(2号):282〜287頁。本発明は、黄斑変性、がんおよび老化の状態の治療において独特の有用性を有する。
【0075】
1.黄斑変性
米国においては過去20〜30年の間にヒトの寿命の延びにより、加齢に伴う眼疾患の黄斑変性の蔓延を生じた。完全な失明はもたらさないが、その病気は、高齢者から読むことならびに色覚のために使用される彼らの中心視力を奪う。黄斑変性は、斑と呼ばれる眼の視覚中心(visual center)に影響を及ぼす。その斑は、色視細胞(color−vision cell)(網膜錐体)が位置している網膜の一部である。
【0076】
黄斑変性は、以下の4つの段階に分類することができる進行性の加齢に伴う病気である。
1.人生の30代頃に始まる、網膜色素上皮(RPE)と呼ばれる「汚物清浄」細胞の、眼底からの細胞残屑を飲み込んで除去することの不能により、リポフスチン(ly−poh−fus−kin)と呼ばれる小さい微視的な沈着物の形成がもたらされる。リポフスチンは、鉄および銅に誘発された細胞残屑の酸化によってもたらされ、その蓄積は、生物の早老および短縮された寿命と関連する。黄斑変性の蔓延は、色素の濃い皮膚を有する人々より白人において多く、白人は、彼らの網膜中により多くのリポフスチンの沈着を有する。網膜中のこの細胞残屑のいくらかは、ヒトの眼の中で毎朝暗視(杆体)細胞から脱落する使い古しのビタミンAからなる。RPE細胞の機能の衰弱は、RPE内の鉄およびカルシウムの蓄積によってもたらされる。
2.遅れて、人生の50代頃には、RPEと血液供給層(脈絡膜)の間に存在するブルーフ膜と呼ばれる下に横たわるセロファンの薄さの網膜層(retinal layer)の進行性の石灰化が存在する。網膜内に生じるドルーゼンは部分的にコレステロールからなるが、この脂質は、血液循環または殆どのコレステロールが産生される肝臓が起源ではない。ブルーフ膜内の石灰化は、光受容体層からの脂質(脂肪)、タンパク質、および細胞残屑の漏出をさらに減じ、それによって網膜上にドルーゼンと呼ばれる黄色の斑点の形成がもたらされる。ドルーゼンは、検眼鏡を用いる眼の検査において観察することができる。現在のところドルーゼンを除去する方法はない。
3.RPE細胞の死は、この進行性の疾患の第3段階である。これは時々RPEドロップアウトと呼ばれる。RPE細胞が弱まるかまたは死亡し、ブルーフ膜がカルシウムで詰まると、光受容体はそのとき栄養分を与えられることができず、また次々に死に始める。現在のところ黄斑変性の段階1〜3に対する治療法は存在しない。段階1〜3は、それが出血または浮腫または新血管形成をもたらしていないので黄斑変性の「ドライ」型と呼ばれる。黄斑変性患者の約85%が、この疾患の「ドライ」型を有する。
4.ブルーフ膜の破損が起こるか、またはブルーフ膜が完全に石灰化されると、光受容体層は、酸素を奪われ、斑中の光受容体層中に侵入することができる新たな血管を形成(新血管形成と呼ばれる)して視力を損なうか、あるいは血液血清の漏れまたは明らかな赤血球の放出があり得、それにより、浮腫または出血がもたらされる。これは黄斑変性のより進行し、視覚を脅かす形であり、光受容体層中への血液血清または赤血球の漏れが存在するためにしばしば「ウェット」型黄斑変性と呼ばれる。この疾患のこの段階は、早期に捉えられた場合は、レーザー光により治療することができ、それによって漏れのある血管を眼張りすることができる。しかしながら、この治療はその疾患の進行を遅らせるのに有効なだけでそれを治癒するものではない。
【0077】
リソソームによって促進される細胞清浄プロセスは、生涯を通しての代謝廃棄物の蓄積についてゆくことはできない。杆体細胞密度が最も高く、それ故より多くの円盤状の使い古しのビタミンAが噴出される傍中心窩の環は、黄斑変性が始まり、網膜中で最高濃度のリポフスチンが見られるところである。結果的に、RPE細胞は、年齢がかさむと共に次々に死んでゆき、それによって残っているRPE細胞が健康な網膜を維持することの負担が増大する。
【0078】
過去において、リポフスチンは、無害の消耗した細胞代謝の副産物と考えられてきた。本発明の1態様は、鉄および銅が誘発する酸化により形成し、網膜色素上皮細胞内のリソソーム体の中で硬化するリポフスチンが、軽度の量の照射および酸化によって網膜を増感させて傷害することの認識に関する。網膜は、加齢と共に青色光の損傷に対してますます敏感になる。網膜中のドルーゼンの形成は、RPE細胞が、内在性の抗酸化酵素であるスーパーオキシドジスムターゼを生ずることができないことと関係している。スーパーオキシドジスムターゼが不足しているマウスは、典型的な加齢に関連したヒトにおける黄斑変性の特徴を発症させる。スーパーオキシドジスムターゼは、網膜細胞を結合していない(遊離の)鉄に対して保護する。高濃度の鉄の食物および細胞環境は、スーパーオキシドジスムターゼ活性を減少することが示されている。
【0079】
網膜光受容体および網膜色素上皮細胞は、特に低分子量の鉄の複合体による損傷に対し脆弱であると考えられている。血液循環中の抗酸化物質は、血液網膜関門を横断することが必ずしもできるとは限らないので、網膜は、それ自身を保護する鉄と結合する抗酸化物質を生成する。鉄キレート剤は、結合していない(遊離の)鉄(タンパク質に結合していない)の悪影響を阻止する。ヘムオキシゲナーゼもまた、鉄キレート剤と同じような方法で作用して遊離の鉄によって誘発される網膜損傷を防ぐ。
【0080】
多数の薬剤が、リポフスチンおよびドルーゼンをきれいにするために実験的に使用された。コレステロールの血液血清レベルを低下するために通常使用されるスタチン系の薬剤も、動物におけるリポフスチンの沈着を防ぐために試験されている。スタチン系の薬剤は、リポフスチンの形成を減少させたが、肝臓に対して毒性があり、これらの動物の早期死亡をもたらした。神経伝達物質GABAの誘導体であり、栄養補助食品として現在入手できるピラセタムは、それを使用することによって脳組織中のリポフスチン形成を減少させることに成功した。ソルビニルは、糖尿病に伴う網膜の問題を防ぐために1990年代における不成功のヒトでの試験を経験した酵素阻害薬物(アクロース(aklose)還元酵素阻害薬)である。ソルビニルにおいて、げっ歯類の網膜色素上皮細胞におけるリポフスチン沈着を部分的に減少させることが示されている。ヒデルギンは、老年性認知症を治療するために使用される薬物である。げっ歯類の調査において、ヒデルギンは脳のリポフスチンレベルを低下させたが動物の早期死亡ももたらしたことが報告された。東インドの香辛料ウコンは、クルクミンと呼ばれる抗酸化性分子を含有する。クルクミンは、脳中のリポフスチンを減少させるための実験的マウスの調査で使用された。スベリヒユは、マグネシウム、βカロチンおよびω−3油が豊富な顕花植物である。スベリヒユのマウスへの供給は、マウスの脳中のリポフスチンの沈着を減少させることを示した。
【0081】
ラブディッシュ(lab dish)研究において、1992年にメキャベツおよびブロッコリー中に見出された抗酸化性分子のスルフォラファンを使用して、青色光にさらしたRPE細胞中のリポフスチン沈着を減らすことに成功した。
【0082】
老齢ラットへのリポ酸の腹腔内投与は、リポフスチンおよび酵素活性における減少および上昇を、それぞれ、脳の、皮質、小脳、線条体、海馬、および視床下部においてもたらす。これらの結果は、天然の代謝抗酸化物質のリポ酸が、高齢者における神経機能障害を防ぐ治療ツールとして役立つにちがいないことを示唆している。生体組織内で生成し、また栄養補助食品として利用することもできる天然の抗酸化生成物のリポ酸は、RPE細胞を酸化的傷害から護ることをラブディッシュ研究で示されている。
【0083】
リポフスチンの形成は、アルコールの消費に続いて組織中で劇的に増加する。高用量のブドウ種子のフラボノールによる補給は、リポフスチン形成の増加を防ぐ。リポフスチンは、エタノール消費に続いて劇的に増加する脂質過酸化反応の最終産物である。
【0084】
ウーロン茶および緑茶飲料は、マウスにおける認知障害およびリポフスチン形成を逆転させる。緑茶の主要成分であるエピガロカテキン−3−ガレート(EGCG)は、ラブディッシュ研究でヘムオキシゲナーゼの活性を上方に調節する。ヘムオキシゲナーゼは、網膜において起こる鉄に誘発される酸化に対する保護酵素である。
【0085】
補足のエストロゲンの供給は、脳組織におけるリポフスチンの沈着を減少させることが示されている。ラブディッシュ研究で、RPE細胞へのルテインおよびゼアキサンチンの供給はリポフスチンの形成を減少させた。補足のアセチル−L−カルニチンを与えたげっ歯類において、リポフスチンの沈着の減少が脳細胞中で測定されている。
【0086】
米国特許第5,747,536号は、心脈管障害、末梢血管疾患および末梢糖尿病性神経障害の予防および治療のための薬剤を産み出すために、L−カルニチン、低級アルカノイルL−カルニチンまたは薬理学的に容認できるその塩を、レスベラトロール、レスベラトロール誘導体またはレスベラトロール含有天然物と組み合わせた治療での使用について記載している。
【0087】
メラニンは、網膜中で鉄に結合する抗酸化物質である。加齢が進んで網膜中のメラニンのレベルが減少すると、リポフスチンはより大きく蓄積される。
【0088】
1実施形態において、本発明は、
(a)鉄、銅、重金属などの金属(複数可)のためのキレート剤、例えば、イノシトールヘキサホスフェート(IP6)、トランスレスベラトロール、ケルセチン、または任意のポリフェノールもしくはバイオフラボノイド、
(b)カルシウムキレート剤、例えば、イノシトールヘキサホスフェート(IP6)、
(c)ヘムオキシゲナーゼ活性剤、例えば、トランスレスベラトロール、ピセタノール、または任意のレスベラトロールの天然類似物、あるいは、フィセチン、ミリセチン、ケルセチンもしくはその他のバイオフラボノイドなどの類似の小分子、
(d)赤血球に対する酸素の親和性を低下させる作用物質、例えば、イノシトールヘキサホスフェート(IP6)、ならびに、場合によって、
(e)その他の抗酸化物質、例えば、ビタミンE、ルテイン/ゼアキサンチン、αリポ酸、
の組合せを含む組成物に関する。
【0089】
その調合物は、
(1)網膜組織(光受容体、網膜色素上皮細胞(RPE)、脈絡膜、特にRPE細胞中のミトコンドリアおよびリソソーム)中の酸化を制限する、
(2)リポフスチン沈着の蓄積を阻止する、
(3)ドルーゼンの形成を阻止する、ならびに
(4)網膜組織、特にブルーフ膜に対する石灰化を制限する
ように機能する。
【0090】
2.がん
がん治療における主な挑戦は、細胞傷害性の作用物質を腫瘍細胞に選択的に向けることである(Luo, Y.ら、(2000年)、「A Hyaluronic Acid−Taxol Antitumor Bioconjugate Targeted To Cancer Cells」、Biomacromolecules 1巻(2号):208〜218頁)。小分子の抗がん剤の望ましくない副作用を減らすために、多くの標的化のアプローチが試されている。最も期待できる方法の1つは、細胞毒素の高分子担体、特にヒアルロン酸との組合せまたは共有結合を伴う(Luo, Y.ら、(1999年)、「Synthesis And Selective Cytotoxicity Of A Hyaluronic Acid−Antitumor Bioconjugate」、Bioconjug. Chem. 10巻(5号):755〜763頁;Luo, Y.ら、(2000年)、「A Hyaluronic Acid−Taxol Antitumor Bioconjugate Targeted To Cancer Cells」、Biomacromolecules l巻(2号):208〜218頁;Luo, Y.ら、(1999年)、「Hyaluronic Acid−N−Hydroxysuccinimide: A Useful Intermediate For Bioconjugation」、Bioconjug. Chem. 12巻(6号):1085〜1088頁; Luo, Y.ら、(2002年)、「Targeted Delivery Of Doxorubicin By HPMA Copolymer−Hyaluronan Bioconjugates」、Pharm. Res. 19巻(4号):396〜402頁)。
【0091】
1実施形態において、本発明は、がんの治療のための、レスベラトロール、ヒアルロナン、および場合によってビタミンDおよび/またはIP6を含むレスベラトロールおよびヒアルロン酸含有組成物に関する。これらの成分は、ヒトにおけるがんを治癒および/または予防し、かつ/または腫瘍によって脅かされている患者の免疫(例えば、免疫システムの応答)を改善する効果を媒介するために互いに相乗的に作用するものと考えられる。本発明のこの態様は、1部には天然分子が、場合によっては、がんが証明されているマウスで観察されているものと同様の様式でがん免疫を上昇させることができるという認識に基づいている。
【0092】
かかる組成物が供給されると、生来の免疫システムの番人である樹状細胞は、警告され得、好中球、マクロファージおよびナチュラルキラー細胞の活性を著しく増大させることができる。レスベラトロールによるビタミンD受容体の増強は、がんを治療または予防する組合せのアプローチのさらに別の主要な利点である。このアプローチは、多くの場合貧弱な栄養または栄養吸収の欠如により免疫が低下している、がんに対する最も高いリスクグループの高齢者に対してより適切のように思われる。この治療が、現在、非侵襲性のがん細胞計数技術によって効果を直ちに測定できるという事実は、費用がかかりかつはっきりしない動物での試験は、効力を証明するためには必要ではないかもしれないことを意味している。
【0093】
ビタミンDは、多くの生物学的作用を示す。ビタミンDは、骨疾患(成長段階の子供のくる病、高齢者の骨粗しょう症)を回避するその能力について広く公知である一方で、それはがんに対する戦いの主役になりつつある。ごく最近、それは抗生物質としても注目を得つつある。ビタミンDが不足しているマウスは、感染症または炎症に直面して、食細胞から不完全な反応を示す。ビタミンDの不足は、しばしば反復性感染症と関係する。ビタミンDのレベルが適切である動物と比較して、ビタミンDが不足している動物においては炎症の部位に蓄積しているマクロファージ細胞は約半分のみである。
【0094】
免疫およびがんにおけるビタミンDの役割をより深く掘り下げると、ビタミンDは、好中球に対して走化性(親和性)を改善して、動員して移動するようにする。ビタミンDの欠乏によるくる病の患者は、適切に移動することができない緩慢な好中球を有することが観察される。ビタミンDは、単球のマクロファージへの成熟を刺激する。これにより、腫瘍に対して立ち向かう免疫戦闘細胞の拡大された軍隊がもたらされる。補助的なビタミンDがすべてのタイプのがんに対するリスクを大幅に低減することを示す研究によって、より大きな注目が、今や、抗がんの武器としてのビタミンDに与えられつつある。1100IUのビタミンD3を使用した研究は、ネブラスカにおける女性の間のがんのリスクの60〜77%の減少をたった4年の間に生じさせた。
【0095】
がんのリスクは、太陽にさらされる集団の中でビタミンDのレベルがより高い地理的に日がよく当たる赤道域において最も低いにもかかわらず、がんに対するビタミンDの保護効果は、繰り返し退けられるか軽視されてきた。ビタミンDの経口による消費は、フィルターなしの太陽光線への露出過多から生ずる皮膚がんの心配を除去する。最近の分析の1つは、結腸がんのリスクは、1日当たり2000IUのビタミンDの摂取により半減させることができ、乳がんに対するリスクは1日当たり3500IUのビタミンDの摂取により半減させることができることを示している。ビタミンDの食事摂取量の中央値は、1日当たり約230IUのみであり、そのため、がんを予防または治療するための食物の強化または補足の可能性は、今や現実となっている。
【0096】
組織がビタミンDを利用してそこから利益を得るためには、組織はビタミンDを受け入れてそれに結合するように設計されたタンパク質をそれらの外層(細胞膜)中に有さなければならない。例えば、ビタミンD受容体の遺伝子発現(産生)は低レベルであるが、ヒトの乳房の腫瘍の約80%はビタミンD細胞受容体を産生する。
【0097】
ビタミンDのがんを阻止する能力は、それが食物中のかすかなエストロゲン様分子によって助けられるときに増大させることができる。通常赤ワイン中に見出されるエストロゲン様分子のレスベラトロールは、がんの成長を増すことなく乳がん細胞中のビタミンD受容体を上方に調節する。レスベラトロールは、実質的に、乳がん細胞をビタミンDの抗がん特性に対して感度を上げることができる。
【0098】
研究室実験は、低用量のビタミンD3は、乳房腫瘍細胞の成長を減少させないが、レスベラトロールと組み合わせたときは、腫瘍細胞の数が40%程減少することを示している。より高い濃度で、ビタミンD3は、乳がん細胞の数をラブディッシュ中で約25%減少させ、この減少は、レスベラトロールと組み合わせたときは50%まで改善する。エストロゲンはビタミンD受容体遺伝子発現を増すが、それはまた乳房の腫瘍の成長を刺激する。レスベラトロールは、この欠点を持たない。レスベラトロールは、ビタミンDのがん抑制効果を強化または「兵器化する」。
【0099】
その上、レスベラトロールは、それだけで食細胞の細菌および腫瘍細胞のような異質の侵入者に対する貪食応答を静めることが示されている。レスベラトロールは、活性酸素種(フリーラジカル)の産生を弱め、マクロファージ細胞における粒子の摂取を正常化する。それ故、レスベラトロールは、自己免疫を生じることができる免疫細胞の過剰応答を阻止する。
【0100】
レスベラトロールは、がんにとってレスベラトロールによって妨害されない経路を見出すことが困難であるほど多くの方法でがんを妨害する。レスベラトロールは、腫瘍細胞中に、アポトーシスと呼ばれるプログラムされた細胞死を誘発するその他の酵素のカスケードに通常つながるシトクロムC酸化酵素と呼ばれる酵素を放出するミトコンドリアと呼ばれる細胞エネルギー区画を生じさせる。しかし、最近の実験は、レスベラトロールは、シトクロムCを卵巣腫瘍細胞から放出し、それが、腫瘍細胞の内部で産生された酵素が実はその内部を消化する(一種の細胞内の共食いの形)プロセスであるオートファジーと呼ばれるプロセスによる急速な細胞死をもたらすことを示している。これはレスベラトロールが健康な細胞ではなく腫瘍細胞内で活性化する細胞自殺の形態である。
【0101】
腫瘍の調査における自然免疫の寄与は、がん生物学においては比較的無視されている。食作用、すなわち「細胞食作用(cell eating)」は、自然免疫反応の礎石である。焦点は自然免疫反応の番人と思われる樹状細胞に向けられてきた。調査された免疫増強剤の数は限られている。
【0102】
がん治療に対する自然免疫のアプローチにおける利益の周りをを懐疑が取り巻いている。例えば、免疫抑制剤を使用している患者は、必ずしもより多い頻度でがんを発症してはいない。しかしながら、これは誤解されている可能性がある。過剰反応性の免疫システムは、がん患者には致命的であり得るより多くの組織および臓器の損傷をもたらし得る。乳がん治療のために使用される殆どの薬物は、免疫抑制を誘発する。
【0103】
天然の最も強力な鉄キレート剤は、全粒穀類の種子およびぬか部分に見出されるイノシトールヘキサホスフェート(IP6)である。低用量のIP6は、横紋筋肉腫細胞の成長を50%抑えることが見出されている。IP6の除去は、これらの腫瘍細胞が回復し、再度成長することを許す。注射した腫瘍を有するIP6治療したマウスは、治療しないマウスより50倍小さい腫瘍を示す。IP6は、マウスにおいて注射した線維肉腫細胞の成長を減少させ、マウスの生存を引き伸ばすことも示している。
【0104】
IP6の免疫を増大させる特性の試験において、それはバクテリアの存在下で、フリーラジカル(スーパーオキサイド)の産生および好中球の細胞消化作用を上昇させることを示している。IP6は、インターロイキン−8の放出を増加する。
【0105】
腫瘍細胞破壊に含まれるナチュラルキラー細胞の作用は、IP6によって高められる。
【0106】
1実施形態において、上記組成物のヒアルロン酸は、化学療法剤に結合される。本発明は、特に、その化学療法剤がタキソールであるような組成物に関連する。本発明は、特に、さらにそして好ましくは、キレート剤、および/またはビタミンDを含むような組成物に関連する。殆どの悪性の固形腫瘍は、上昇したレベルのヒアルロン酸を含有し(Rooney, P.ら、(1995年)、「The Role Of Hyaluronan In Tumour Neovascularization (Review)」、Int. J. Cancer 60巻(5号):632−636頁)、そしてこれらの高レベルのHA産生は、浸潤を促進するマトリックスを提供する(Hua, Q.ら、(1993年)、「Internalization Of Hyaluronan By Chondrocytes Occurs Via Receptor−Mediated Endocytosis」、J. Cell. Sci. 106巻(パートl):365〜375頁;Luo, Y.ら、(2000年)、「A Hyaluronic Acid−Taxol Antitumor Bioconjugate Targeted To Cancer Cells」、Biomacromolecules l巻(2号):208〜218頁)。従って、ヒアルロン酸に結合した化学療法剤は、腫瘍細胞を標的とし、より低い全体濃度で効果的な抗腫瘍薬用量を提供することができる。
【0107】
手短に記せば、結合の好ましい方法は、化学療法剤のNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド誘導体の形成を伴う。かかる誘導体は、モル過剰の乾燥ピリジンを室温のCHCl中のタキソールと無水コハク酸の撹拌溶液に加えることによって製造することができる。その反応混合物は、次に室温で数日間撹拌し、次いで真空中で濃縮する。その残留物を5mlのCHClに溶解し、その生成したタキソール−2’−ヘミスクシネートは、シリカゲル上で精製し(ヘキサンで洗浄し、酢酸エチルにより溶離する)、所望の生成物を生じさせることができる(Luo, Y.ら、(1999年)、「Synthesis And Selective Cytotoxicity Of A Hyaluronic Acid−Antitumor Bioconjugate」、Bioconjug. Chem. 10巻(5号):755〜 763頁)。
【0108】
その化学療法剤のN−ヒドロキシ−スクシンイミド誘導体は、次にアジピン酸ジヒドラジド官能化ヒアルロン酸に結合する。アジピン酸ジヒドラジド官能化ヒアルロン酸は、好ましくは、Pouyani, T.ら、(1994年)(「Functionalized Derivatives Of Hyaluronic Acid Oligosaccharides − Drug Carriers And Novel Biomaterials」Bioconjugate Chem. 5巻:339〜347頁);Pouyani, T.ら、(1994年)(「Novel Hydrogels Of Hyaluronic Acid: Synthesis, Surface Morphology, And Solid−State NMR」、J. Am. Chem. Soc. 116巻:7515〜7522頁);Vercruysse, K.P.ら、(1997年)(「Synthesis And In Vitro Degradation Of New Polyvalent Hydrazide Cross−Linked Hydrogels Of Hyaluronic Acid」、Bioconjugate Chem. 8巻:686〜694頁)により記載されているようにして調製する。従って、ヒアルロン酸は、好ましくは、水および過剰のアジピン酸ジヒドラジド(ADH)中に溶解する。その反応混合物のpHは、酸を添加して4.75に調整する。次に、1当量の1−エチル−3−[3−(ジメチルアミノ)−プロピル]カルボジイミド(EDCI)を固形のまま加える。その反応混合物のpHは、酸の添加によって4.75に維持する。その反応を0.1NのNaOHを加えてその反応混合物のpHを7.0に調整することによって抑える。その反応混合物を次に前処理した透析チューブ(Mwカットオフ3,500)に移して100mMのNaClに対して徹底的に透析し、次に25%EtOH/H2O、最後に水で透析する。その溶液を次に0.2mの酢酸セルロース膜を通して濾過し、急速冷凍し、凍結乾燥する(Luo, Y.ら、(1999年)、「Synthesis And Selective Cytotoxicity Of A Hyaluronic Acid− Antitumor Bioconjugate」、Bioconjug. Chem. 10巻(5号):755〜763頁)。
【0109】
3.老化
石灰化およびさびつきが老化の主な促進因子である。人体は、内部から絶えず置き換わるかまたは新しくされなくてはならない細胞、および同様に絶えず再生されなければならない細胞の間を満たすコラーゲンまたは結合組織と呼ばれるねばねばした物質から成る。人体が細胞レベルで老化するにつれて、リポフスチンと呼ばれる細胞残屑が徐々に蓄積される。リポフスチンの形成は、リソソームおよびミトコンドリアと呼ばれる細胞体の内部への鉄およびカルシウムの進行性の蓄積によって促進される。オートファジーと呼ばれる細胞の清浄過程および再生過程は、リポフスチンの蓄積を防ぐ。細胞残屑除去の進行性の不能は、減退する細胞機能およびその後の細胞の早死にをもたらす。若い細胞は屑を内部から効率的に除去する。古い細胞は屑を効率的に除去することができずリポフスチンを蓄積する。
【0110】
細胞の石灰化およびさびつきは、リソソームによって産生される酵素による細胞残屑(リポフスチン)の細胞からの清浄化を損ない、細胞中のミトコンドリアによって産生される細胞エネルギー(ATP)の欠陥をもたらす。本発明の組成物は、細胞の老化および/または結合組織の老化を阻止しかつ/または逆転させ、特に、主要なミネラル(例えば、鉄、カルシウムなど)の蓄積によって引き起こされる細胞の老化および/または結合組織の老化を阻止しかつ/または逆転させる。結果として、本発明の組成物のレシピエントは寿命の延長ならびに細胞および結合組織の健康状態および構造の増強を示す。
【0111】
人体は、リソソームおよびミトコンドリアと呼ばれる細胞体の内部への鉄およびカルシウムの進行性の蓄積によって促進されるリポフスチンと呼ばれる細胞残屑が徐々に蓄積することによって細胞レベルで老化する。オートファジーと呼ばれる細胞の清浄過程および再生過程は、若い成長の年代の間はリポフスチンの蓄積を防ぐが、このリソソームの仕掛けは一旦完全な成長に達すると細胞内の鉄およびカルシウムの蓄積によって衰退する。細胞残屑を除去することの進行性の不能により、減退する細胞機能およびその後の細胞の早死にを生じる。若い細胞は屑を内部から効率的に除去する。古い細胞は屑を効率的に除去することができずリポフスチンを蓄積する。リソソーム体がそれらの細胞清浄活動を行うための細胞エネルギーを提供するミトコンドリアも一旦幼児期の成長が終わると徐々に石灰化され、鉄分が多くなる。80歳までに約5%のミトコンドリアしか機能しなくなる。鉄およびカルシウムキレート剤により、リソソーム酵素活性などの細胞機能に影響を及ぼすミトコンドリアの老化を改善するよう提案されている。
【0112】
人体は、コラーゲンおよびヒアルロン酸(後者は空間充填型、水保持型の分子である)を再生する線維芽細胞と呼ばれる細胞の障害によって結合組織内で老化する。コラーゲンの形成は、食物中のビタミンおよびアミノ酸(ビタミンC、リジン、プロリン)によって促進される。線維芽細胞は、体内で自然につくられるエストロゲンによって、ならびにヒアルロン酸それ自体についてその食物中に提供される、フィトエストロゲンと呼ばれる植物中に見出されるエストロゲン様の分子によって刺激されてヒアルロン酸を産生することができる。若い女性は、エストロゲンを産生する能力のおかげで、豊富なヒアルロン酸によって、より濃い髪の毛、より滑らかな肌およびより柔軟な関節を示す。これらはすべて若々しさの特質である。
【0113】
ヒアルロン酸を再生することができないことは、ヒアルロン酸の空間充填特性の喪失によって組織が自身の物理的完全性を失う結果となる。十分なヒアルロン酸がないと脱水状態が生じ、組織は小さくなって完全に縮んでしまう。例えば、ヒアルロン酸が不足している皮膚は、皺が寄り乾燥して見える。関節腔は、骨が骨に擦り付くことを防止するために必要な緩和材および空間充填材を欠くことになる。眼は大きさが縮み始める。髪の毛は、不十分な水和によって薄くなる。これらは最も顕著な目に見える、または美容上の老化のサインである。
【0114】
1実施形態において、本発明は、細胞の老化および細胞外(結合組織)の老化の両方、例えば、(a)生体細胞の若い機能を、大部分がカルシウムおよび鉄である過剰のミネラルを除去することによって保護し、これによってオートファジー(リソソーム酵素によるリポフスチン等の細胞残屑の掃除)を促進すること、および(b)金属キレート剤、例えば、フィチン酸、フェルレート、ケルセチン、レスベラトロールなどの供給によるHAの劣化の防止に対して、HA、フィトエストロゲン(レスベラトロール、ケルセチン、ゲミステインなど)による線維芽細胞の刺激によって、ヒアルロナンの産生を活発にして保護すること扱う。
【0115】
1実施形態において、本発明は、下記の能力によって細胞の老化および細胞以外の老化の両方に対処する栄養補助食品である:
(a)細胞内のリソソーム体による細胞残屑の酵素分解を介する内部からの生細胞の再生を刺激する栄養補助食品。これは、金属(鉄、銅、重金属)キレート化分子およびカルシウムキレート化分子を配合中に含めることによって促進される。リソソームは、細胞残屑を酵素的に消化する自身の能力を、鉄、銅およびその他の金属の進行性の蓄積、ならびにカルシウムの結晶化により失う。
【0116】
(b)再び若年者のレベルでヒアルロン酸を産生するように線維芽細胞を刺激する栄養補助食品。これは、線維芽細胞を刺激してヒアルロン酸を産生させる経口で消費される分子の供給によって達成される。
【0117】
(c)若々しいリソソーム機能を維持する助けをする金属キレート化分子が、ビタミンEまたはビタミンC、リポ酸、金属キレート剤(IP6フィチン酸塩、ケルセチン、バイオブラボノイドまたはポリフェノール、レスベラトロールのような)のように抗酸化物質として確認されている栄養補助食品。レスベラトロールは、鉄を制御する助けをする酵素のヘムオキシゲナーゼの産生を刺激するその能力によって機能する。
【0118】
(d)カルシウムの結晶化を防ぐ分子がマグネシウムおよびIP6フィチン酸塩である栄養補助食品。
【0119】
(e)線維芽細胞を刺激してヒアルロン酸を産生させる経口で消費される分子が、ヒアルロン酸、グルコサミン、コンドロイチン、または、エストロゲン様の分子例えばゲニステイン、リグナン、ヒドロキシチロソール、もしくはエストロゲンの様に構成されたその他の分子などである栄養補助食品。経口で消費されるHAは、HAおよびコンドロイチン合成をより大きく刺激する。同様に、グルコサミンは、線維芽細胞を刺激してHAを産生させる。代わりに、またはさらに、グルコサミンは、主として滑液の潤滑および緩衝性に関与するヒアルロン酸の滑液の産生を促進する(McCarty, M.F.、(1998年)、「Enhanced Synovial Production Of Hyaluronic Acid May Explain Rapid Clinical Response To High−Dose Glucosamine In Osteoarthritis」、Medical Hypotheses 50巻:507〜510頁、1998年)。
【0120】
(f)コラーゲンの産生を刺激する経口で消費される分子が、ビタミンC,プロリンおよびリジンである栄養補助食品。
【0121】
かかる実施形態において、本発明は、若々しい機能および外見をヒトの細胞および組織に取り戻すレスベラトロールおよびヒアルロン酸を含有する栄養補助食品に関する。本発明は、特に、キレート剤、および/またはビタミンDをさらに含むような組成物に関連する。最も好ましくは、その組成物は、キレート剤のフィチン酸(イノシトールヘキサホスフェート;IP6)を含む。本発明の組成物は、レスベラトロールおよび/またはヒアルロン酸の比活性を相乗的に高め、従って、本発明の組成物は、その成分を個別に投与して得られる活性を超える活性の増大を提供する。かかる実施形態において、本発明は、ヒトの細胞および組織に若々しい機能および外見を復元させるための方法に関するものであり、次のステップを含む:
(a)細胞内のリソソーム体による細胞残屑の酵素分解を介する内部からの生体細胞の再生を刺激するステップ(好ましくは、若々しいリソソーム機能を維持する助けをする金属キレート化分子を提供することによる。そのような分子は、抗酸化物質、例えば、ビタミンEまたはビタミンC、リポ酸、金属キレート剤(IP6フィチン酸塩、ケルセチン、バイオフラボノイドまたはポリフェノール、および/またはレスベラトロールのような)を含む)、および
(b)ヒアルロン酸を産生するために線維芽細胞を刺激するステップ(ヒアルロン酸を産生するために線維芽細胞を刺激する経口で消費される分子を提供するステップを含み、そのような経口で消費される分子は、例えば、ヒアルロン酸、グルコサミン、コンドロイチン、および/またはエストロゲン様の分子例えばゲニステイン、リグナン、ヒドロキシチロソール、もしくはエストロゲンの様に構成されたその他の分子を含む)。
好ましくは、かかる刺激は、明記された化合物を、より好ましくはコラーゲンの産生を刺激する経口で消費できる分子と組み合わせて含む組成物の食物投与によって達成され、かかる分子は、例えば、ビタミンC、プロリンおよび/またはリジンを含む。
【0122】
いずれの機構によっても制約されるつもりはないが、一緒に投与した場合、4つの好ましい成分は次の様式で作用するものと考えられる。
(a)ビタミンD:ビタミンD3は、生物学的ストレス因子である太陽の照射への反応を模倣する作用物質のように作用する。特に、ビタミンD3は、免疫システムの活性化に関与する保護遺伝子、特に好中球の数および運動性を上方に調節し、ビタミンDの太陽/皮膚産生を減少させる高齢化に伴う皮膚肥厚による体内のビタミンD3産生の減少を克服するのを助ける。その上、ビタミンD3は、IP6を主要な活性分子と思われるIP3に分解するように相乗的に作用する。レスベラトロールも同様にビタミンD3に対する細胞の感度を引き上げる(細胞表面のビタミンD受容体を増感させる)ように相乗的に働く。ビタミンDは、IP6をその主要な活性型であるIP3に分解するために働く。ビタミンDは、また、ヒトにおける自然免疫を増大させる免疫システム増強剤として作用するものと考えられる。この能力に関して、ビタミンDは、重要ながん予防特性およびがん治癒特性を有することが実験的に示されている。
(b)レスベラトロール:レスベラトロールは、細胞表面のビタミンD受容体の感度を増大させ、従って、ビタミンDに対する増強剤としておよび抗がん剤として作用するものと考えられる。レスベラトロールは、がん細胞の表面のビタミンD受容体を上方制御し、ビタミンDに対するがん細胞の感度を引き上げる(Wietzke, J.A.ら、(2003年)、「Phytoestrogen Regulation Of A Vitamin D3 Receptor Promoter And 1,25− Dihydroxyvitamin D3 Actions In Human Breast Cancer Cells」、J. Steroid Biochem. Molec. Biol. 84巻(2〜3号):149〜157頁;Wietzke, J.A.ら、(2005年)、「Regulation Of The Human Vitamin D3 Receptor Promoter In Breast Cancer Cells Is Mediated Through Sp1Sites」、Molec. Cell. Endocrinol. 230巻(1〜2号):59〜68頁)。レスベラトロールは、また、モノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害薬)であるとも考えられる。
(c)ヒアルロン酸:ヒアルロン酸は、人体のその足場剤(scaffolding agent)および水和剤として寄与する水をゲル化する分子である。老化が進むにつれて、産生されるヒアルロン酸が少なくなり、皺の多い皮膚、薄くなる髪の毛、潤滑しない関節が生じる。本組成物のキレート剤は、体の中のヒアルロン酸を保護するのにも役立つ。ヒアルロン酸成分およびミネラルをキレート化する成分(例えば、レスベラトロール、ケルセチン、フィチン酸IP6、フェルレート)は、細胞および結合組織内部の若々しい機能を維持するための全体の老化防止戦略として働く。ヒアルロン酸は、がん細胞に対して親和性を有するものと考えられる。それは、血液循環中での送達および標的に向ける(薬物送達剤)分子として寄与し、結合組織の老化に対処するものと考えられる。細胞間の結合組織の完全性の崩壊および喪失は、老化の兆候(例えば、皮膚の皺、薄くなる髪の毛、関節の硬直、身長の減少など)を与える。ヒアルロン酸の本発明の組成物への添加により、人体中の線維芽細胞のさらなるヒアルロン酸の産生を活発にし、かくして結合組織(コラーゲン)を若々しい状態で保存することに寄与するものと考えられる(Yadav, A.K.ら、(2008年)、「An Insight On Hyaluronic Acid In Drug Targeting And Drug Delivery」、J. Drug Target. 16巻(2号):91〜107頁;Liao, Y.H.ら、(2005年)、「Hyaluronan: Pharmaceutical Characterization And Drug Delivery」、Drug Deliv. 12巻(6号):327〜342頁;Joddar, B.ら、(2006年)、「Elastogenic Effects Of Exogenous Hyaluronan Oligosaccharides On Vascular Smooth Muscle Cells」、Biomaterials 27巻(33号):5698〜5707頁;Girish, K.S.ら、(2007年)、「The Magic Glue Hyaluronan And Its Eraser Hyaluronidase: A Biological Overview」、Life Sci. 80巻(21号):1921〜1943頁)。
(d)フィチン酸:好ましくは米ぬかの形のフィチン酸は、鉄および銅のキレート剤として、およびカルシウム結晶化の防止剤として作用すると考えられる。フィチン酸は、また、腫瘍細胞における増殖因子として寄与する金属ミネラルの利用可能性を減少させると考えられる。それはまた、好中球のプライミングおよび運動性の薬剤として働くと考えられる。加えて、フィチン酸は神経保護性があり、従って神経変性疾患(特にパーキンソン病、前屈症、およびアルツハイマー病)に伴う状態の重症度を減弱することが見出されている(Xu, Q.ら、(イーパブ2007年12月27日)、「Neuroprotective Effect Of The Natural Iron Chelator, Phytic Acid In A Cell Culture Model Of Parkinson’s Disease」、Toxicology 245巻(1〜2号):101〜108頁)。本発明の組成物の成分は、かかる神経防護作用を増進するものと考えられる。
【0123】
鉄キレート剤のケルセチンは、存在する場合、レスベラトロールの即時型生物学的利用能を、それが代謝される前に肝臓をより多く通過することを可能にすることによって、増すよう働くものと考えられる。
【0124】
該組成物の個々の成分は、相乗的に作用して、例えば、レスベラトロールの効果を増大させるものと考えられる。それに限定する意図は無いが、身体の管理または鉄およびカルシウムのキレート化が、完全な成長が達成された後の老化の速度を制御するものであることを提唱する。幼児期の成長の間はすべての鉄およびカルシウムは、新たな骨および新たな赤血球(ヘモグロビン)の産生に向けられる。幼児期の成長の停止は、過剰の鉄、銅およびカルシウムを生じ、それは次に徐々に(a)石灰化し、(b)組織をさびさせる。リソソームは、鉄およびカルシウムを蓄積し始め、それによってそれらの機能不全をもたらす。ミトコンドリアは、機能不全が始まり、同時にそれらもまた徐々にさびついて石灰化する。本発明の組成物は、細胞および細胞器官のその進行性のさびつきおよび石灰化を制限または鈍化させ、それによって老化過程の鈍化または逆転を促進することができると考えられる。キレート化は、遺伝子を制御するものである。遺伝子はそのとき順調に上方制御または下方制御される。レスベラトロールおよび銅キレート剤は、(1)カルシウムを骨に保持する助けをするホルモンであるオステオカルシンの上方制御によるカルシウム濃度のコントローラとして、および(2)抗酸化酵素であるヘムオキシゲナーゼによる鉄濃度のコントローラとして作用するものと考えられる。
【0125】
MAO阻害薬および鉄キレート剤は、パーキンソン病の治療薬として提唱されている(Youdim, M.B.ら、(2004年)、「Novel Bifunctional Drugs Targeting Monoamine Oxidase Inhibition And Iron Chelation As An Approach To Neuroprotection In Parkinson’s Disease And Other Neurodegenerative Diseases」、J. Neural. Transm. 111巻(10〜11号):1455〜1471頁;Yanez, M.ら、(2006年)、「(−)−Trans−Epsilon−Viniferin, A Polyphenol Present In Wines, Is An Inhibitor Of Noradrenaline And 5−Hydroxytryptamine Uptake And Of Monoamine Oxidase Activity」、Eur. J. Pharmacol. 542巻(l〜3号):54〜60頁;Bureau, G.ら、(2008年)、「Resveratrol And Quercetin, Two Natural Polyphenols, Reduce Apoptotic Neuronal Cell Death Induced By Neuroinflammation」、J. Neurosci. Res. 86巻(2号):403〜410頁;Singh, A.ら、(2003年)、「Quercetin Potentiates L−Dopa Reversal Of Drug−Induced Catalepsy In Rats: Possible COMT/MAO Inhibition、Pharmacol. 68巻(2号):81〜88頁;Gao, X.ら、(2007年)、「Prospective Study Of Dietary Pattern And Risk Of Parkinson Disease」、Am. J. Clin. Nutr. 86巻(5号):1486〜1494頁;Johnson, S.、(2001年)、「Is Parkinson’s Disease The Heterozygote Form Of Wilson’s Disease: PD = 1/2 WD?」、Med. Hypotheses 56巻(2号):171〜173頁)。MAO阻害薬と銅キレート剤、レスベラトロール、鉄キレート剤ならびにMAO阻害薬、ケルセチン、および幅広い金属キレート剤のフィチン酸を含有する本発明の組成物(複数)は、神経変性疾患(特に、パーキンソン病、前屈症、およびアルツハイマー病)の治療に対して、またはかかる疾患の症状の改善のために特に好ましい。
【0126】
さて、本発明を一般的に説明してきたが、同じことが、実例として提供されており、明記されていない限り本発明を限定することを意図するものではない以下の実施例を参照することによってより容易に理解されよう。
【実施例】
【0127】
(実施例1)
レスベラトロールと本発明の組成物との効果の比較
本発明の組成物が、レスベラトロールの生物学的活性を媒介することにおいてレスベラトロール単独よりもっと効果的であるかどうかを決定するために、カロリー制限によって達成された遺伝子発現の調節を本発明の組成物によって得られた遺伝子発現の調節と比較する遺伝子発現の分析を行った。
【0128】
それに沿って、レスベラトロール単独および本発明のレスベラトロールを含む組成物の生存/長寿遺伝子を上方制御するかまたはその発現が細胞傷害を増大させる遺伝子を下方制御する能力を、陽性対照としてのカロリー制限した(「CR」)動物の発現プロフィールおよび陰性対照としての正常に給餌した動物の発現プロフィールを用いて比較した。オスのB6CHF1マウス(2ヶ月の月齢)を、かくして、40%のカロリー制限食、市販品を入手したトランス−レスベラトロールの供給物(Sigma Chemical;1日当たり1.25mg/kg)、本発明のレスベラトロールを含む組成物の供給物(Longevinex(登録商標);Resveratrol Associates,LLC;80kgのヒトで1日当たり100mgのトランス−レスベラトロール含有カプセル(すなわち、1日当たり2.5mg/kgのレスベラトロール(1日当たり1.25mg/kgのトランス−レスベラトロール)、1日当たり0.31mg/kgのケルセチン二水和物、1日当たり0.94mg/kgの米ぬか抽出物、1日当たり4.75mg/kgの米ぬか油および1日当たり0.70mg/kgのヒマワリレシチン))のいずれかにおいた。そのマウスはそれらが5ヶ月の月齢に達するまで観察した。
【0129】
体重、血清グルコースレベル、血清インスリンレベルならびに脳および筋肉組織中の脂質過酸化反応物を測定した。その結果は、Longevinex(登録商標)が、体重の増加をもたらさず、対照動物と見分けられることを示した(図1)。血清インスリンレベルは、カロリー制限した動物で見られたものとほぼ同じであることが分かった(図2)。血清グルコースレベルは、カロリー制限した動物で見られたものより低いことが分かった(図3)。
【0130】
(実施例2)
レスベラトロールおよび本発明の組成物の心臓組織中の遺伝子発現についての効果の比較
レスベラトロールまたは本発明の組成物(Longevinex(登録商標))を受けたマウスの心臓組織中に発現した遺伝子のプロフィールをカロリー制限食においたマウスおよび対照マウスのそれと比較した。遺伝子発現は、1アレイ当たり45,101個のプローブセットを含有するAffymetrix MG430 2.0アレイを用いて測定した。そのアレイが複数のプローブにより同じ遺伝子を表す場合は、最高の信号強度を有するプローブセットを使用した。特性化されていないESTおよびcDNA配列を含めた公知ではない遺伝子は、分析しなかった。従って、そのアレイは、単一のEntrez Gene IDを有する20,341個の遺伝子を分析するための手段を提供した。分析は、実質的に、参照により本明細書に組み込む、Lee, C−K.らによる(2002年)、「Transcriptional Profiles Associated With Aging And Middle Age−Onset Caloric Restriction In Mouse Hearts」、Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 99巻:14988〜14993頁に記載されているようにして実施した。ある群中のすべてのアレイの平均値を計算した。治療した群の平均値を対照群の平均値と比較し、違いがあればその統計的有意性を両側t−検定(P<0.01)を用いて決定した。その分析の結果を表3に示す(CO、対照;CR、カロリー制限;RES、レスベラトロール;LGX、Longevinex(登録商標);FC,倍率変化。FCは、治療した群の平均値を対照群の平均値で割って算出し、この値を次に統計目的のために対数変換(底は2)する。例として、対照中で100および治療した群中で200発現する遺伝子は2のFcを有する(すなわち、発現が2倍増加する)ことになり、対照中で100および治療した群中で50発現する遺伝子は−2のFcを有する(すなわち発現が2倍減少する)ことになる。
【0131】
ヒト臍帯静脈上皮細胞のフェルラ酸、ケルセチンまたはレスベラトロールによる処理は、調査した10,000の遺伝子のうちの363の遺伝子が2倍を超える下方制御、また233の遺伝子が2倍を超える上方制御の遺伝子発現の変化をもたらすことが報告されている(Nicholson, S. K.ら、(2008年)、「Effects Of Dietary Polyphenols On Gene Expression In Human Vascular Endothelial Cells」、Proc. Nutr. Soc. 67巻(l号):42〜47頁)。その一方、表3は、2,829の遺伝子が、処置マウス対対照マウスにおける発現で統計的に有意な変化を示すことが見出されたことを示している。これらの遺伝子について、7%は、カロリー制限のみを受けたマウスにおいて発現の変化を示すことが見出され、8%は、レスベラトロールを受けただけのマウスにおいて発現の変化を示すことが見出された。カロリー制限とレスベラトロール投与との組合せは、何らかのさらなる遺伝子の発現を変化させることに失敗した。対照的に、Longevinex(登録商標)の投与は、2,829の遺伝子の61%の発現を変化させることが見出された。カロリー制限したマウスに対するLongevinex(登録商標)の投与は、さらに2%の遺伝子の発現を変えることが見出された。レスベラトロールを受けているマウスに対するLongevinex(登録商標)の投与は、さらに21%の遺伝子の発現を変化させることが見出された。従って、Longevinex(登録商標)単独またはその他の養生法と組み合わせたLongevinex(登録商標)は、発現の変化を示す全体の遺伝子の85%(2,406個)に影響を及ぼすことが見出された。
【0132】
【表3−1】

【0133】
【表3−2】

【0134】
【表3−3】

【0135】
【表3−4】

【0136】
【表3−5】

【0137】
【表3−6】

【0138】
【表3−7】

【0139】
【表3−8】

【0140】
【表3−9】

【0141】
【表3−10】

【0142】
【表3−11】

【0143】
【表3−12】

【0144】
【表3−13】

【0145】
【表3−14】

【0146】
【表3−15】

【0147】
【表3−16】

【0148】
【表3−17】

【0149】
【表3−18】

【0150】
【表3−19】

【0151】
【表3−20】

【0152】
【表3−21】

【0153】
【表3−22】

【0154】
【表3−23】

【0155】
【表3−24】

【0156】
【表3−25】

【0157】
【表3−26】

【0158】
【表3−27】

【0159】
【表3−28】

【0160】
【表3−29】

【0161】
【表3−30】

【0162】
【表3−31】

【0163】
【表3−32】

【0164】
【表3−33】

【0165】
【表3−34】

【0166】
【表3−35】

【0167】
【表3−36】

【0168】
【表3−37】

【0169】
【表3−38】

【0170】
【表3−39】

【0171】
【表3−40】

【0172】
【表3−41】

【0173】
【表3−42】

【0174】
【表3−43】

【0175】
【表3−44】

【0176】
【表3−45】

【0177】
【表3−46】

【0178】
【表3−47】

【0179】
【表3−48】

【0180】
【表3−49】

【0181】
【表3−50】

【0182】
【表3−51】

【0183】
【表3−52】

【0184】
【表3−53】

【0185】
【表3−54】

【0186】
【表3−55】

【0187】
【表3−56】

【0188】
【表3−57】

【0189】
【表3−58】

【0190】
【表3−59】

【0191】
【表3−60】

【0192】
【表3−61】

【0193】
【表3−62】

特に興味深いいくつかの遺伝子は、本発明の配合物(Longevinex(登録商標))が、レスベラトロールより大きい程度まで、生存/長寿遺伝子を上方制御するかまたはその発現が細胞傷害を増大させる遺伝子を下方制御することを示す発現パターンを示した:
(A)遺伝子のサーチュインファミリー、特にサーチュイン1は、寿命の延長に決定的に重要な媒介物であると考えられている(Boily, G.ら、(2008年)、「SirTl Regulates Energy Metabolism And Response To Caloric Restriction In Mice」、PLoS ONE 3巻(3号):el759;Huang, J.ら、(2008年)、「SIRTl Overexpression Antagonizes Cellular Senescence with Activated ERK/S6k1 Signaling in Human Diploid Fibroblasts」、PLoS ONE 3巻(3号):el710)。レスベラトロールを受けているマウスは1.22倍の発現における減少を示すのみであり、カロリー制限食を受けるマウスはサーチュイン1発現における1.12倍の低下を示すのみであるが、サーチュイン1の発現が、Longevinex(登録商標)を受けているマウスにおいては1.71倍減少されることが見出された。
(B)Pgc−1α(ペルオキシソーム増殖活性化受容体γコアクチベーター1α;ppargc1a)は、エネルギー代謝およびミトコンドリアの生物発生を制御する転写補助因子であり、その発現は長期間のカロリー制限によって骨格筋組織中で増加する(Conley, K.E.ら、(2007年)、「Mitochondrial Dysfunction and Age」、Curr. Opin. Clin. Nutr. Metab. Care. 10巻(6号):688〜692頁;Wu, Z.ら、(2007年)、「Targeting PGC−1 Alpha To Control Energy Homeostasis」、Expert Opin. Ther. Targets 11巻(10号):1329〜1338頁)。Pgc−1αの発現を、レスベラトロールを受けているマウスはわずかに1.6倍の発現の増加を示したのみであり、カロリー制限食を受けるマウスは増加を示さなかったが、Longevinex(登録商標)を受けているマウスは、1.94倍のPgc−1αの発現の増加を示した。
(C)脱共役タンパク質−3は、Pgc−1αの標的であって脂肪酸代謝における役割を果たすと考えられ、その発現は、長期間カロリー制限すると心臓組織中で増加する(Bezaire, V.ら、(イーパブ2007年1月3日)、「Uncoupling Protein−3: Clues In An Ongoing Mitochondrial Mystery」、FASEB J. 21巻(2号):312〜324頁;Chan, C.B.ら、(2006年)、「Uncoupling Proteins: Role In Insulin Resistance And Insulin Insufficiency」、Curr. Diabetes Rev. 2巻(3号):271〜283頁)。脱共役タンパク質−3発現において、レスベラトロールを受けているマウスはわずかに2.02倍の発現の増加を示したのみであり、カロリー制限食を受けるマウスはわずかに1.8倍の増加を示したのみであったが、Longevinex(登録商標)を受けているマウスは、2.79倍の脱共役タンパク質−3の発現の増加を示した。
(D)ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ4は、絶食中脂肪酸代謝を促進するために燃料の選択を調整する(Sugden, M.C.ら、(2006年)、「Mechanisms Underlying Regulation Of The Expression And Activities Of The Mammalian Pyruvate Dehydrogenase Kinases」、Arch. Physiol. Biochem. 112巻(3号):139〜149頁;Pilegaard, H.ら、(2004年)、「Transcriptional Regulation Of Pyruvate Dehydrogenase Kinase 4 In Skeletal Muscle During And After Exercise」、Proc. Nutr. Soc. 63巻(2号):221〜226頁; Sugden, M.C.、(2003年)、「PDK4: A factor in fatness?」、Obes. Res. 11巻(2号):167〜169頁)。それは、Pgc−1αの標的であり、長期間のカロリー制限によって多くの組織中に誘導される。ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ4の発現において、レスベラトロールを受けているマウスはわずかに2.78倍の発現の増加を示したのみであり、カロリー制限食を受けるマウスはわずかに1.48倍の増加を示したのみであったが、Longevinex(登録商標)を受けているマウスは、3.25倍のピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ4の発現の増加を示した。
【0194】
本発明の配合物(Longevinex(登録商標))によって上方制御または下方制御される遺伝子の分析により、ミトコンドリアのATP産生に関与する酸化的リン酸化遺伝子が際立って上方制御されることが明らかとなった(表4)。
【0195】
【表4】

(実施例4)
本発明の組成物により影響を受ける生化学経路
最近の研究は、複雑な形質が、複雑な遺伝子の座位および環境要因によって調節される分子ネットワークの創発(emergent)特性であることを示唆している。Chen, Y.ら、(イーパブ2008年3月16日)、「Variations In DNA Elucidate Molecular Networks That Cause Disease」、Nature 452巻(7186号):429〜435頁)。
【0196】
実際、この10年の間の研究により、殆どの慢性的な疾病、例えば、がん、循環器疾患および呼吸器系統の疾患、神経系の疾患、糖尿病、ならびに自己免疫疾患などは、多重の細胞シグナル伝達経路の調節異常を示すことが明らかとなっている(Harikumar, K.B. ら、(イーパブ2008年2月15日)、「Resveratrol: A Multitargeted Agent For Age−Associated Chronic Diseases」、Cell Cycle. 2008年:7巻(8号))。本発明の配合物は、それ故生化学経路の発現に及ぼすそれらの効果を評価し、(表5)により220の生物過程に関与する遺伝子の発現に影響を及ぼすことを見出した(P<0.05)。
【0197】
【表5−1】

【0198】
【表5−2】

【0199】
【表5−3】

【0200】
【表5−4】

【0201】
【表5−5】

【0202】
【表5−6】

【0203】
【表5−7】

カロリー制限は、これらの過程の5%と関係する遺伝子に影響を及ぼし、レスベラトロールの投与はこれらの過程の10%と関係する遺伝子に影響を及ぼした。本発明の配合物(例えば、Longevinex(登録商標))は、これらの過程の85%に影響を及ぼすことが見出された。カロリー制限したマウスへのレスベラトロールの投与は、これらの過程のいずれにおいてもどの遺伝子にも影響を及ぼすことに失敗した。カロリー制限したマウスへのLongevinex(登録商標)の投与は、これらの過程の8%と関係する遺伝子に影響を及ぼすことが見出された。レスベラトロールとLongevinex(登録商標)の両方の投与は、これらの過程の12%と関係する遺伝子に影響を及ぼすことが見出された。表6は、カロリー制限(CR)、レスベラトロール単独(Res)、または本発明の組成物(LGX)により引き起こされる酸化的リン酸化経路(GO:0006119)の遺伝子の調節を示す。
【0204】
【表6−1】

【0205】
【表6−2】

表7は、カロリー制限(CR)、レスベラトロール単独(Res)、または本発明の組成物(LGX)により引き起こされるグルコース代謝経路(GO:0006006)の遺伝子の調節を示す。
【0206】
【表7−1】

【0207】
【表7−2】

【0208】
【表7−3】

表8は、カロリー制限(CR)、レスベラトロール単独(Res)、または本発明の組成物(LGX)により引き起こされるトリカルボン酸代謝経路(GO:0006099)の遺伝子の調節を示す。
【0209】
【表8】

表9は、カロリー制限(CR)、レスベラトロール単独(Res)、または本発明の組成物(LGX)により引き起こされる脂肪酸代謝経路(GO:0006631)の遺伝子の調節を示す。
【0210】
【表9−1】

【0211】
【表9−2】

【0212】
【表9−3】

【0213】
【表9−4】

【0214】
【表9−5】

心臓組織中の20,341の遺伝子の発現の調査により、2,829の遺伝子が、発現において統計的有意差(P<0.01)を示すことが明らかとなった。これらの7%(ほぼ187の遺伝子)は、カロリー制限食のみを受けた動物で発現の変化を示し、8%(ほぼ226の遺伝子)は、レスベラトロールのみを受けた動物で発現の変化を示し、レスベラトロールを受けかつカロリー制限食を受けた動物では発現の変化を示す追加の遺伝子は無かった。対照的に、20,341の遺伝子の61%(ほぼ1,729の遺伝子)が、本発明の配合物(例えば、Longevinex(登録商標))のみを受けている動物で発現の変化を示し、追加の2%の遺伝子(ほぼ56の遺伝子)が、本発明の配合物(例えば、Longevinex(登録商標))を受け、かつカロリー制限食を受けていた動物で発現の変化を示し;追加の21%の遺伝子(ほぼ594の遺伝子)が、本発明の配合物(例えば、Longevinex(登録商標))とレスベラトロールを受けた動物で発現の変化を示し;追加の1%の遺伝子(ほぼ28の遺伝子)が、本発明の配合物(例えば、Longevinex(登録商標))とレスベラトロールを受け、かつカロリー制限食を受けていた動物で発現の変化を示した。
【0215】
上記のデータは、本発明の配合物(例えばLongevinex(登録商標))が、カロリー制限のそれさえも上回る程度に心臓(hear)組織中の遺伝子発現を調節するのに有効であったことを実証している。同様の効果が心臓以外の組織において観察されている。脳組織における20,341の遺伝子の発現の調査により、3,572の遺伝子が発現における統計的有意差(P<0.01)を示すことが明らかにされた。これらのうちの124の遺伝子は、カロリー制限食のみを受けた動物で発現の変化を示し、424の遺伝子は、レスベラトロールのみを受けた動物で発現の変化を示し、10の遺伝子は、レスベラトロールを受けかつカロリー低下食を受けた動物で発現の変化を示した。対照的に、2560の遺伝子が、本発明の配合物(例えば、Longevinex(登録商標))のみを受けている動物で発現の変化を示し、19の追加の遺伝子が、本発明の配合物(例えば、Longevinex(登録商標))を受け、かつカロリー制限食を受けていた動物で発現の変化を示し;430の追加の遺伝子が、本発明の配合物(例えば、Longevinex(登録商標))とレスベラトロールを受けた動物で発現の変化を示し;5個の追加の遺伝子が、本発明の配合物(例えば、Longevinex(登録商標))とレスベラトロールを受けかつカロリー制限食を受けていた動物で発現の変化を示した。
【0216】
(実施例4)
本発明の組成物の作用のモデル機構
本発明の配合物は、かくして、カロリー制限に関して見られる遺伝子発現の調節を大きく超え、脂質代謝、グルコース代謝、酸化的リン酸化、クレブス回路、ATP合成および脂肪酸β酸化の主要な経路において遺伝子の発現を変えることが見出された。要約すれば、本発明の配合物は、影響される遺伝子の数および種々の生化学経路の数に関して両方で、レスベラトロール単独より大きい比活性を有することが見出された。この結果は、カロリー制限(CR)があらゆる形の生物で寿命を引き延ばす明白な方法と考えられているので、重要である。一般に、50%のカロリー摂取量の削減は、どの生物の寿命も倍加する。上記の実験は、本発明の組成物が、ゲノム発現に関してレスベラトロールまたはCRよりもより強い影響力を発揮することを実証しており、何らかの技術がCRの効果を超えることを示したのは初めてである。その上、本発明の組成物は、CR(遺伝子を差別化するにはCR食を一生順守することが必要)より寿命の初期段階でゲノム発現に影響を及ぼすことが見出された。
【0217】
作用のいずれの機構によっても制約されるつもりはないが、上記の結果は、本発明の配合物が、フォークヘッドFoxo1(daf−16、dFoxO)転写因子の活性を増大させることによって作用することを示唆している(図5)。モデル生物における調査は、Foxo1が寿命の発現を、遺伝子発現を高めることによって媒介することを示している。インスリン/IGF−1のシグナル伝達は、Foxo1をリン酸化し、それによって、それが核からの排除をもたらし、その作用を下方制御する。本発明の配合物は、インスリンおよびIGF−1のシグナル伝達を減少させ、それによってFoxo1のリン酸化を減少させる。このモデルと一致するのは、インスリン受容体シグナル伝達経路(例えば、GO:008286;遺伝子Ide、Igfbp4、およびIgfbp6)が、本発明の配合物によって影響されるという観測である。Foxo1の発現は、1.75倍増加する。本発明の配合物は、解糖の減少および糖新生の増加(例えば、GO:0006006)、Pgc−1α発現の亢進(それによってPdk4発現の刺激をもたらす(例えば、Pparge1αにおいて1.94倍の増加およびPdk4において3.25倍の増加)、脂質代謝遺伝子の発現の増加(例えば、Ucp3において2.79倍の増加、Cpt1aにおいて1.49倍の増加、およびCpt1bにおいて1.45倍の増加)を媒介する。脂質および脂肪酸代謝遺伝子GO:0006629およびGO:0006635は、本発明の配合物によってユニークな形で影響される。本発明の配合物は、かくして、カロリー制限およびレスベラトロールによって影響される主要な過程(例えば、クロマチン再構築、RNAポリメラーゼIIプロモーターからの転写、およびユビキチンサイクルに対して一層顕著な好ましい効果を発揮する。遺伝子GO:0006333およびGO:0006367は、本発明の配合物によりユニークな形で影響され、遺伝子GO:0006512は、レスベラトロールとLongevinex(登録商標)とによって影響される。かくして、要約して言えば、提示される作用の機構は、本発明の組成物が、レスベラトロールを細胞に送達し、そこでそれが細胞壁を通過して細胞質に入り込み、Foxo1遺伝子の細胞核中への移行を促し、それによって長寿効果を生ずるというものである。
【0218】
この明細書において挙げられたすべての出版物および特許は、あたかもそれぞれの個々の出版物または特許出願が明確にかつ個別に全体として参照により組み込まれることが示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、その特定の実施形態に関連して説明してきたが、当然のことながら、それはさらに修正することが可能であり、この出願は、一般に、本発明の原理に従い、本発明が関わる当該技術の公知のまたは習慣的実践の範囲に入るようなおよび上文に示した本質的特徴に当てはまり得るような本開示から逸脱しているものを含めた本発明の任意の変化、用途、または適合を対象にすることを意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レスベラトロールを含む組成物であって、レシピエントに投与すると、レスベラトロール単独またはカロリー制限と比較して、生存/長寿遺伝子の産物またはその発現が細胞傷害を増大させる遺伝子の産物の濃度または活性を調節するレスベラトロールを含む組成物。
【請求項2】
前記調節が、前記レシピエントにおいて、
(A)酸化的リン酸化、
(B)アクチンフィラメントの長さまたは重合、
(C)細胞内輸送、
(D)オルガネラ生合成、
(E)インスリンのシグナル伝達、
(F)解糖、
(G)糖新生、または
(H)脂肪酸代謝
を変化させる、請求項1に記載のレスベラトロールを含む組成物。
【請求項3】
前記生存/長寿遺伝子の産物が、サーチュイン1またはフォークヘッドFoxo1転写因子である、請求項1から2のいずれかに記載のレスベラトロールを含む組成物。
【請求項4】
その発現が細胞傷害を増大させる前記遺伝子が、脱共役タンパク質3またはピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ4をコードする、請求項1から3のいずれかに記載のレスベラトロールを含む組成物。
【請求項5】
前記組成物が、
(a)トランス−レスベラトロール、および
(b)金属キレート剤
を含み、前記トランス−レスベラトロールはカプセル化されており、それによって、前記生存/長寿遺伝子の前記産物またはその発現が細胞傷害を増大させる前記遺伝子の前記産物の濃度または活性を調節する前記組成物の能力を、前記トランス−レスベラトロールの光または酸素への曝露による損失から実質的に保護する、請求項1から4のいずれかに記載のレスベラトロールを含む組成物。
【請求項6】
前記金属キレート剤が、ノルジヒドログアイアレチン酸である、請求項5に記載のレスベラトロールを含む組成物。
【請求項7】
前記金属キレート剤が、フィチン酸である、請求項5に記載のレスベラトロールを含む組成物。
【請求項8】
前記組成物が、ケルセチンをさらに含む、請求項5から7のいずれかに記載のレスベラトロールを含む組成物。
【請求項9】
前記組成物が、ヒアルロン酸をさらに含む、請求項5から8のいずれかに記載のレスベラトロールを含む組成物。
【請求項10】
前記組成物が、ビタミンDをさらに含む、請求項5から9のいずれかに記載のレスベラトロールを含む組成物。
【請求項11】
前記レスベラトロールのカプセル化が、マイクロカプセル化である、請求項5から10のいずれかに記載のレスベラトロールを含む組成物。
【請求項12】
現存する個人の疾患に伴う症状を改善するためのまたは個人において前記疾患が発生する前に前記個人において前記症状の発症を防止するための薬剤を製造するためのレスベラトロールを含む組成物の使用であって、前記レスベラトロールを含む組成物が、レスベラトロール単独またはカロリー制限と比較して、生存/長寿遺伝子の産物またはその発現が細胞傷害を増大させる遺伝子の産物の濃度または活性を調節し、前記疾患が、循環器疾患、がん、黄斑変性、老化に伴う疾患、および炎症からなる群から選択されるレスベラトロールを含む組成物の使用。
【請求項13】
前記調節が、前記個人において、
(A)酸化的リン酸化、
(B)アクチンフィラメントの長さまたは重合、
(C)細胞内輸送、
(D)オルガネラ生合成、
(E)インスリンのシグナル伝達、
(F)解糖、
(G)糖新生、または
(H)脂肪酸代謝
を変化させる、請求項12に記載のレスベラトロールを含む組成物の使用。
【請求項14】
前記生存/長寿遺伝子の産物が、サーチュイン1またはフォークヘッドFoxo1転写因子である、請求項12から13のいずれかに記載のレスベラトロールを含む組成物の使用。
【請求項15】
その発現が細胞傷害を増大させる前記遺伝子が、脱共役タンパク質3またはピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ4をコードする、請求項12から14のいずれかに記載のレスベラトロールを含む組成物の使用。
【請求項16】
前記組成物が、
(a)トランス−レスベラトロール、および
(b)金属キレート剤
を含み、前記トランス−レスベラトロールはカプセル化されており、それによって、前記生存/長寿遺伝子の前記産物またはその発現が細胞傷害を増大させる前記遺伝子の前記産物の濃度または活性を調節する前記組成物の能力を、前記トランス−レスベラトロールの光または酸素への曝露による損失から実質的に保護する、請求項12から15のいずれかに記載のレスベラトロールを含む組成物の使用。
【請求項17】
前記疾患ががんである、請求項12から16のいずれかに記載のレスベラトロールを含む組成物の使用。
【請求項18】
前記疾患が老化に伴う疾患である、請求項12から16のいずれかに記載のレスベラトロールを含む組成物の使用。
【請求項19】
前記老化に伴う疾患が、神経変性疾患である、請求項18に記載のレスベラトロールを含む組成物の使用。
【請求項20】
前記組成物が、ケルセチン、ヒアルロン酸および/またはビタミンDをさらに含む、請求項12から19のいずれかに記載のレスベラトロールを含む組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−540444(P2010−540444A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525922(P2010−525922)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/076707
【国際公開番号】WO2009/039195
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(510079101)レスベラトロル パートナーズ, エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】