説明

遺伝子組換え植物の養液栽培排水の処理方法及び装置

【課題】植物片及び細胞の漏出を経済的に且つ確実に防止できる遺伝子組換え植物の養液栽培排水の処理方法及び装置を提供する。
【解決手段】排水流路10に取水弁VA付き取水口路12と植物片及び細胞の捕捉可能な内部フィルタ14と排水口13とを有する濾過器11を接続し、取水口路12の取水弁VAとフィルタ14との間に導入弁VB付き蒸気導入路16を接続し、取水弁VAの開放時に導入弁VBを閉鎖して排水D中の植物片及び細胞をフィルタ14で捕捉しつつ排水し、取水弁VAの閉鎖時に導入弁VAを開放して高圧蒸気Sにより濾過器11内を植物片及び細胞の不活化温度に所定時間保持したのちフィルタ14を更新する。好ましくは、濾過器11の上流側に設けた排水貯留槽20の複数の排出路21にそれぞれ濾過器11及び蒸気導入路16を設け、何れかの濾過器11の取水弁VAの閉鎖時に他の濾過器11の取水弁VAを開放して排水Dを連続的に処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遺伝子組換え植物の養液栽培排水の処理方法及び装置に関し、とくに遺伝子組換え植物を閉鎖系環境下で養液栽培する植物工場、実験室、温室、栽培装置等(以下、これらを纏めて養液栽培施設という)からの排水を処理する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年開発された組換えDNA技術や細胞融合技術等の遺伝子組換え技術を用いて、農作物に除草剤耐性や病害虫耐性の遺伝子・形質を付与した遺伝子組換え植物、ストレス耐性(例えば耐乾燥性や耐塩性)の遺伝子・形質を付与した不良環境に強い遺伝子組換え植物、高栄養価(例えばオレイン酸やβカロチンの高生産性)の遺伝子・形質を導入した健康に役立つ遺伝子組換え植物等が開発されている(非特許文献1参照)。また最近では、農作物だけでなく医薬・検査薬の成分(医薬品原材料)のような機能性成分を生産する手段として遺伝子組換え植物を利用する研究開発も進められている(特許文献1参照)。これらの遺伝子組換え植物は、膨大な収穫量を必要としない限り適当な室内栽培技術を用いて閉鎖系で養液栽培することが可能であり、閉鎖系で養液栽培することで開放系(屋外)での栽培よりも品質・収量の均一性が確保しやすくなる利点も得られる。
【0003】
ただし、遺伝子組換え植物は環境(生物多様性等)の保全及び利用に悪影響(人の健康に対する危険も考慮したもの)を及ぼす可能性があり、閉鎖系で栽培する場合であっても、植物の成体や種子等の植物片、胞子や花粉等の植物細胞(以下、これらを「植物片及び細胞」ということがある)を環境中へ飛散・伝播・漏出させない封じ込め対策が必要とされる。従来、実験施設レベルにおいて遺伝子組換え植物を封じ込める方法は知られているが(非特許文献2参照)、植物を継続的に収穫するような養液栽培施設に実験室レベルの封じ込め方法をそのまま適用することは実用性・確実性・経済性の観点から困難である。
【0004】
これに対し特許文献2は、植物片及び細胞の漏出を確実に防止して効果的に封じ込めることができる遺伝子組換え植物Pの養液栽培施設(植物工場)を提案している。特許文献2の開示する養液栽培施設を、図3及び図4を参照して、本発明の理解に必要な限度において説明する。図3に示す養液栽培施設1は、遺伝子組換え植物Pを養液栽培する閉鎖系栽培エリア2と、栽培エリア2で収穫した植物Pから機能性成分が含まれる食品又は薬品を調製する製造エリア40と、その栽培エリア2と製造エリア40との間で収穫した植物Pを不活化する不活化エリア50とを含む。図示例の栽培エリア2は4つの栽培室3A、3B、3C、3Dに区分けされ、各栽培室3A、3B、3C、3Dにそれぞれ独立した養液栽培装置4A、4B、4C、4Dと空調装置5A、5B、5C、5Dと照明装置(図示せず)とが設けられ、各空調装置5に栽培室3からの植物片及び細胞のエリア外への漏出を遮断する排気フィルタ(例えばHEPAフィルタ)を含めている。図示例の不活化エリア50には、植物Pを自然環境下で発芽・生長・繁殖又は交雑しないように処理する植物不活化装置(例えば凍結乾燥装置)51が設けられている。また、図示例の製造エリア40は食品又は薬品の製造室41と製剤室42と準備室45とに区分けされており、そのうち製造室41がエアロック付き搬送口を介して不活化エリア50に隣接している。
【0005】
図3の養液栽培施設1は、栽培エリア2で収穫した遺伝子組換え植物Pを不活化エリア50で不活化したうえで製造エリア40へ搬送することにより、製造エリア40に搬送された植物Pが製造エリア40内又は自然環境下で発芽・生長・繁殖又は交雑することを防止する。また、栽培エリア2の各栽培室3A、3B、3C、3Dを陰圧とし、不活化エリア50を栽培エリア2より弱い陰圧とし、製造エリア40を陽圧とすることにより、製造エリア40から不活化エリア50を経て栽培エリア2へ向かう空気の流れをつくり、植物片及び細胞が空気の流れによって栽培エリア2から漏出することを防止している。更に、栽培エリア2と製造エリア40とに相互に独立したエアロック付き作業員入口を設け、栽培エリア2及び不活化エリア50と製造エリア40との間で作業員の出入を禁止することにより、植物片及び細胞が作業員に付着して栽培エリア2から漏出することも防止している。このような封じ込め対策により、遺伝子組換え植物Pを栽培エリア2に封じ込めつつ食品又は薬品に調製することが可能となる。
【0006】
図4は、図3の養液栽培施設1における給排水システムを示す。図示例の給排水システムは、各栽培室3A、3B、3C、3D毎に独立した給水タンク56A、56B、56C、56Dを有する。例えば敷地内の井戸52から軟水器53及び純粋装置54を介して給水タンク56に井水を導き、各栽培室3で栽培する遺伝子組換え植物Pの種類に応じた養液を各給水タンク56で調整したのち各栽培室3の養液栽培装置4A、4B、4C、4Dへ給液する。各栽培室3の養液栽培装置4及び空調装置5からの排水Dは、排水流路10を介して排水貯留槽20に纏めて集め、排水滅菌容器57において遺伝子組換え植物Pの不活化に必要なバッチ式高圧滅菌処理(例えば滅菌温度(121℃)に滅菌時間(例えば15分)保持する加熱滅菌処理)を施して排水D中の混入した植物片及び細胞を不活化したのち、一般排水として排水枡等へ放流する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−341937号公報
【特許文献2】特開2008−161114公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】社団法人農林水産先端技術振興センター「遺伝子組換え食品について」平成20年、インターネット<http://www.biotech−house.jp/materials/pdf/gmofoods.pdf>
【非特許文献2】平成16年文部科学省・環境省令第1号「研究開発等に係る遺伝子組換え生物等の第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令」平成16年1月29日公布
【非特許文献3】伊東正他「蔬菜園芸学」有限会社川島書店、1994年5月20日第4刷発行、pp.226−230
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図4のように排水Dを高圧滅菌処理する方法は、遺伝子組換え植物Pを扱う実験施設等において一般的に採用される封じ込め方法であり、養液栽培施設1の規模が小さく排水量が少ない場合は有効である。しかし、高温・高圧に耐える滅菌容器と排水の昇温/降温のためのエネルギーとを必要とし、バッチ式の滅菌容器は小型化を図ることも難しいため、施設1の規模(排水量)が大きくなると容器コストや処理コストが嵩む問題点がある。また高圧滅菌処理法は、処理後の封じ込め効果を簡単に確認することが難しい問題点もある。すなわち、不活化済の植物片及び細胞が処理後の排水中に残り、不活化済のものと不活化前のものとを識別することが困難であるため、処理後の封じ込め効果を確認しないまま放流しているのが現実である。遺伝子組換え植物の環境中への漏出を確実に防止するためには、処理後の排水に植物片及び細胞が不存在であることを少なくとも定期的に確認することが望ましい。
【0010】
そこで本発明の目的は、植物片及び細胞の漏出を経済的に且つ確実に防止できる遺伝子組換え植物の養液栽培排水の処理方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
図1の実施例を参照するに、本発明による遺伝子組換え植物の養液栽培排水の処理方法は、遺伝子組換え植物の養液栽培施設1(図3参照)の排水Dを処理する方法において、排水流路10に取水弁VA付き取水口路12と植物片及び細胞の捕捉可能な内部フィルタ14と排水口13とを有する濾過器11を接続し、取水口路12の取水弁VAとフィルタ14との間に導入弁VB付き蒸気導入路16を接続し、取水弁VAの開放時に導入弁VBを閉鎖して排水D中の植物片及び細胞をフィルタ14で捕捉しつつ排水し、取水弁VAの閉鎖時に導入弁VBを開放して高圧蒸気Sにより濾過器11内を植物片及び細胞の不活化温度に所定時間保持したのちフィルタ14を更新してなるものである。
【0012】
また、図1のブロック図を参照するに、本発明による遺伝子組換え植物の養液栽培排水の処理装置は、遺伝子組換え植物の養液栽培施設1(図3参照)の排水Dを処理する装置において、排水流路10に接続される取水弁VA付き取水口路12と植物片及び細胞の捕捉可能な内部フィルタ14と排水口13とを有する濾過器11、取水口路12の取水弁VAとフィルタ14との間に接続されて高圧蒸気Sを供給する導入弁VB付き蒸気導入路16、フィルタ14の差圧を検知する差圧検知器18、並びに検知器18の出力信号に応じて取水弁VA及び導入弁VBの開閉を制御する制御装置30を備えてなるものである。
【0013】
好ましくは、図1に示すように、排水流路10の濾過器11の上流側に複数の排出路21を有する排水貯留槽20を設け、取水弁VA付き濾過器11と導入弁VB付き蒸気導入路16と差圧検知器18とを各排出路21にそれぞれ接続し、制御装置30により各排出路21の検知器18の出力信号に応じて全排出路21の取水弁VA及び導入弁VBの開閉を制御する。
【0014】
更に好ましくは、排水貯留槽20に養液栽培施設1と連通する複数の流入路23を設け、各流入路23にそれぞれ流入弁VE付き流入口路26と内部スクリーン28と流出口27とを有するストレーナ25を設けると共にそのスクリーン28の差圧を検知する差圧検知器19を設け、各流入口路26の流入弁VEとスクリーン28との間にそれぞれ高圧蒸気Sを供給する導入弁VF付き蒸気導入路17を接続し、制御装置30により各流入路23の差圧検知器19の検知信号に応じて全流入路23の流入弁VE及び導入弁VFの開閉を制御する。
【発明の効果】
【0015】
本発明による遺伝子組換え植物の養液栽培排水の処理方法及び装置は、遺伝子組換え植物の養液栽培施設1からの排水D中の植物片及び細胞を濾過器11のフィルタ14で捕捉することにより除去し、高圧蒸気Sの導入により濾過器11内を植物片及び細胞の不活化温度に所定時間保持して植物片及び細胞をフィルタ14と共に不活化したのち濾過器11のフィルタ14を更新するので、次の効果を奏する。
【0016】
(イ)従来の高圧滅菌処理法のように排水Dを昇温/降温させる必要がなく、高圧蒸気Sの導入によってフィルタ14を不活化温度に保持すれば足りるので、排水D中の植物片及び細胞の不活化に要するエネルギーを削減できる。
(ロ)また、排水14を連続処理することが可能であり、バッファー機能を有する貯留槽を設けて排水14を少しずつ連続的に処理することにより、濾過器11及びフィルタ14のサイズを小さく抑える(コンパクト化を図る)ことができる。
(ハ)濾過器11及びフィルタ14のサイズを小さく抑えることにより、フィルタ14の更新コスト及び高圧蒸気Sの使用量を低減し、従来の高圧滅菌処理法に比して処理コストの削減を図ることができ、養液栽培施設1からの遺伝子組換え植物の漏出を経済的に防止することが可能となる。
(ニ)排水中の植物片及び細胞をフィルタ14で捕捉して除去する方式であるため、処理後の排水をモニタリングすることによって封じ込め効果を容易に検知することができ、処理不十分な排水の処理をやり直すことで植物片及び細胞の環境中への漏出を確実に防止できる。
(ホ)また、十分に処理できた排水は養液として再利用(リサイクル)することが可能であり、処理後の排水を養液栽培施設に戻して再利用することにより養液栽培全体の経済性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための形態及び実施例を説明する。
【図1】本発明の排水処理装置の一実施例の説明図である。
【図2】本発明の排水処理装置の他の実施例の説明図である。
【図3】従来の遺伝子組換え植物の養液栽培施設の一例の説明図である。
【図4】図3の養液栽培施設における排水処理装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、養液栽培施設1からの排水を処理する本発明の排水処理装置の一実施例を示す。図示例の養液栽培施設1は、例えば図3及び図4を参照して上述したように養液栽培装置4と空調装置5と照明装置とを設けた閉鎖系環境下の栽培室3(栽培エリア2)で遺伝子組換え植物Pを栽培し、少なくとも養液栽培装置4の排水Dを排水流路10へ排出するものである。養液栽培(hydroponics、nutriculture)とは土壌を用いずに養分を無機塩類の水溶液(培養液)として与えることを特徴とする栽培法であり(非特許文献3参照)、養液栽培装置4の一例は流動法(NFT、DFT)や静置法(浮根法、毛管法、筒栽培法)等の水耕栽培方式、噴霧耕方式、又は礫耕・砂耕・ロックウール耕等の固形培地耕方式のものである。図3に示すような養液栽培施設1では、空調装置5の排水(ドレイン)や栽培室3内で発生する結露水などにも植物Pの植物片及び細胞が混入しうるので、それらも排水流路10へ排出して養液栽培装置4の排水Dと共に本発明の排水処理装置で処理することができる。ただし本発明は、図3の養液栽培施設1への適用に限定されるものではなく、遺伝子組換え植物Pの養液栽培施設1の排水処理に広く適用可能である。
【0019】
図示例の排水流路10は、養液栽培施設1からの排水Dを一時的に貯える排水貯留槽(原水タンク)20と、養液栽培施設1からの排水Dを排水貯留槽20に送る複数の流入路23と、排水貯留槽20に貯えた排水Dを排出する複数の排出路21とを有している。養液栽培施設1からの排水Dは、その栽培方法に応じて常時定量的に排水されるのではなく、遺伝子組換え植物体Pの入れ換え時等に1回/週程度の頻度で1〜2時間/回程度にわたり集中的に排水されることがある。図示例のようにバッファー機能を有する貯留槽20を排水流路10に設けることにより、排水流量の変動に拘わらず、貯留槽20の下流側の排水流路10(排出路21)で排水Dを定量的に処理することができる。ただし、本発明は貯留槽20を有する排水流路10への適用に限定されるものでなく、貯留槽20のない排水流路10にも適用可能である。
【0020】
本発明の排水処理装置は、排水流路10(図示例では排水貯留槽20からの排出路21)に接続されて排水D中の植物片及び細胞を捕捉する濾過器11と、その濾過器11に接続する導入弁VB付き蒸気導入路16とを有する。濾過器11は、排水流路10に接続する取水弁VA付き取水口路12と、植物片及び細胞の捕捉可能な内部フィルタ14と、排水口13とを有する。濾過器11の取水口路12は、排水流路10から取り入れた排水Dを内部フィルタ14の一次側へ導く流路であり、濾過器11のハウジング内蔵管路又は図示例のように濾過器11の取水口に接続して取り付けた取水弁VA付き外付け管路とすることができる。濾過器11の取水口路12の取水弁VAとフィルタ14との間に導入弁VBを介して蒸気導入路16の一端を接続し、その導入路16の他端を蒸気発生器15と接続することにより、導入弁VBの開放時に蒸気発生器15から濾過器11のハウジング内に植物片及び細胞の不活化のための高圧蒸気Sを供給可能とする。
【0021】
排水Dを処理する際は、濾過器11の取水弁VAを開放すると共に導入弁VBを閉鎖し、取水口路12を介して排水Dを濾過器11内に流入させ、排水D中の植物片及び細胞をフィルタ14で捕捉しながら排水口13から排水する。フィルタ14の一例は、遺伝子組換え植物Pの花粉等の植物細胞より小径の微細孔を有し、排水D中に混入しうる植物片及び細胞を全て捕捉・除去することができるメンブレンフィルタ又は液濾過フィルタである。例えばフィルタ14として孔径5〜10μm程度の精密濾過膜を使用するが、フィルタ14の種類(限界濾過膜や精密濾過膜、又はその材料等)及び孔径(又は分画分子量)は植物Pの種類、排水Dの性状等に応じて適宜に選択可能である。
【0022】
また、例えば定期的に手動操作で濾過器11の取水弁VAを閉鎖すると共に導入弁VBを開放し、蒸気発生器15から蒸気導入路16を介して高圧蒸気Sを導入して濾過器11内を植物片及び細胞の不活化温度に所定時間保持する。例えば濾過器11のハウジング容積が2m程度である場合は、度蒸気導入路16を介して導入量20Kg/時程度の高圧蒸気を導入継続時間30分/回程度で導入することにより、濾過器11内を不活化温度(121℃)に所定時間(例えば15分)保持することができる。不活化温度及びその保持時間(すなわち高圧蒸気の導入量及び導入継続時間)は、遺伝子植物Pの種類、排水Dの性状等に応じて適宜に選択可能である。高圧蒸気Sの導入によりフィルタ14に捕捉された植物片及び細胞を不活化したのち導入弁VBを閉鎖し、フィルタ14を更新したうえで取水弁VAを開放して排水Dの処理を再開する。例えば、メンブレンフィルタ等のフィルタ14を濾過器11のハウジング内に交換可能な態様で設け、不活化処理後にフィルタ14を交換することにより更新する。或いは、フィルタ14に捕捉された植物片及び細胞を簡単に取り除くことができる場合は、不活化処理後にフィルタ14の捕捉物を除去することで更新してもよい。
【0023】
なお、不活化時に導入した高圧蒸気Sは濾過器11内で凝縮液(ドレイン)となるので排水Dと同様に排水口13を介して排出可能であるが、濾過器11内にドレインが滞留すると蒸気Sによる加熱(不活化温度への加熱)が阻害され、植物片及び細胞の不活化処理が不十分なものとなりうる。排水口13からドレインを迅速に排出することが難しい場合は、図示例のように濾過器11の排水口13に排水弁VCを設けると共にフィルタ14と排水弁VCとの間に排蒸気弁VDを介して蒸気排路32を接続し、蒸気導入路16の導入弁VBの開放時に排水弁VCを閉鎖すると共に排蒸気弁VDを開放し、排水Dと別経路の蒸気排路32を介してドレインを迅速に排出することが望ましい。排水弁VC及び排蒸気弁VDは濾過器11のハウジングに内蔵可能であるが、例えば濾過器11の排水口13に排水弁VC付き外付け管路を取り付け、その外付け管路に排蒸気弁VD付き蒸気排路32を接続してもよい。
【0024】
図示例のように、排水流路10の濾過器11の上流側にバッファーとなる排水貯留槽20を設けた場合は、貯水槽20の複数(図示例では2本)の排出路21にそれぞれ取水弁VA付き濾過器11及び導入弁VB付き蒸気導入路16を接続し、何れかの濾過器11の取水弁VAの閉鎖時に他の濾過器11の取水弁VAを開放することにより、排水Dを連続的に処理することができる。例えばポンプ22により貯留槽20の排水Dを少しずつ送り出し、定期的に濾過器11を切替えながら排水Dを連続的に処理することにより、各排出路21の濾過器11及びフィルタ14のサイズを小さく抑え、フィルタ14の更新コスト及び高圧蒸気Sの使用量を低減することができる。貯留槽20の下流側に3本以上の排出路21を設けることにより、濾過器11及びフィルタ14のサイズを更に小さくすることも可能である。例えばフィルタ14が消耗品であって交換コストが必要となる場合でも、フィルタ14の小型化を図ると共に高圧蒸気Sの使用量を低減することにより、本発明による排水処理コストを従来の高圧滅菌処理法に比して削減し、養液栽培施設1からの遺伝子組換え植物の漏出を経済的に防止することができる。
【0025】
好ましくは、図示例のように各排水処理装置にフィルタ14の差圧(濾過器11の一次側(取水口路12側)と二次側(排水口13側)との間の差圧(圧損))を検知する差圧検知器18を含め、その差圧検知器18による差圧(すなわちフィルタ14の目詰まり)の検知に応じて濾過器11の取水弁VAの開閉を制御する。例えば、差圧が初期圧損0.01Mpaから0.05Mpaに達したときに取水弁VAを閉鎖し、導入弁VBを開放して高圧蒸気Sを導入し、濾過器11内の植物片及び細胞の不活化したのちフィルタ14を更新する。また図示例では、差圧検知器18の出力信号に応じて取水弁VAの開閉を制御する制御装置30を排水処理装置に含め、何れかの排出路21の差圧検知器18が差圧を検知したときに、制御装置30により差圧の生じた排出路21の取水弁VAを閉鎖すると共に他の排出路21の取水弁VAを開放し、取水弁VAの自動切替えによる排水Dの連続処理を可能としている。また、制御装置30により各排出路21の取水弁VAだけでなく導入弁VBの開閉をも制御し、差圧の生じた排出路21の濾過器11に高圧蒸気Sを導入する不活化処理も自動化することができる。更に、図示例のように蒸気排路32を設けている場合は、制御装置30によって排水口13の排水弁VC及び蒸気排路32の排蒸気弁VDを制御し、不活化処理時のドレインの排水切替えも自動化することが可能である。
【0026】
更に好ましくは、図示例のように排水貯留槽20に養液栽培施設1と連通する複数の流入路23を設け、各流入路23にそれぞれ流入弁VE付き流入口路26と植物片の捕捉可能な内部スクリーン28と流出口27とを有するストレーナ25を設け、各ストレーナ25の流入口路26の流入弁VEとスクリーン28との間にそれぞれ導入弁VF付き蒸気導入路17を接続する。ストレーナ25の流入口路26は、排水流路10から取り入れた排水Dを内部スクリーン28の一次側へ導く流路であり、ストレーナ25のハウジング内蔵管路又は図示例のようにストレーナ25の流入口に接続して取り付けた流入弁VE付き外付け管路とすることができる。何れかの流入路23の流入弁VEを開放して排水D中の比較的大きな植物片を捕捉しつつ貯留槽20へ連続的に排水Dを流出させ、流入弁VEを閉鎖した流入路23の導入弁VFを開放して高圧蒸気Sによりストレーナ25のハウジング内を植物片の不活化温度の所定時間保持したのちスクリーン28を更新する。例えば、不活化処理後にスクリーン28の捕捉物を除去することにより更新するか、或いは不活化処理後にスクリーン28を交換することにより更新する。
【0027】
図示例のように、ストレーナ25によって排水D中の大径の植物片を予め粗取りしたうえで下流側の濾過器11で微細な植物片及び細胞を除去することにより、濾過器11の差圧(フィルタ14の目詰まり)を生じにくくし、フィルタ14の更新の頻度を低減して排水処理コストを更に削減することができる。スクリーン28として例えば40メッシュ程度の金網を使用することができるが、スクリーン28のメッシュサイズも遺伝子組換え植物Pの種類、排水Dの性状等に応じて適宜に選択可能である。なお、濾過器11の場合と同様に、不活化時にストレーナ25内に導入した高圧蒸気Sの凝縮液(ドレイン)は流出口27から貯留槽20へ流出させてもよいが、必要に応じてストレーナ25に蒸気排路33を設けてドレインを迅速に流出させることが望ましい。すなわち、図示例のようにストレーナ25の流出口27に流出弁VGを設けると共にスクリーン28と流出弁VGとの間に排蒸気弁VHを介して蒸気排路33を接続し、蒸気導入路17の導入弁VFの開放時に流出弁VGを閉鎖すると共に排蒸気弁VHを開放し、蒸気排路33を介してドレインを流出する。例えばストレーナ25の流出口27に流出弁VG付き外付け管路を取り付け、その外付け管路に排蒸気弁VH付き蒸気排路33を接続する。なお図示例では、腐食の原因となりうる比較的高温のドレインの排水貯留槽20への流入を避け、ストレーナ25からのドレインを後述するモニタリング槽34へ流出させている。
【0028】
排水貯留槽20の各流入路23の流入弁VEは例えば定期的に手動操作で切替え可能であるが、図示例のように各流入路23にもそれぞれスクリーン28の差圧(ストレーナ25の一次側(流入口路26側)と二次側(流出口27側)との間の差圧(圧損))を検知する差圧検知器19を設け、制御装置30によって差圧検知器19の検知信号に応じて各流入路23の流入弁VEの開閉を自動制御することができる。また、制御装置30によって各流入路23の導入弁VFの開閉をも制御し、差圧の生じた流入路23のストレーナ25に高圧蒸気Sを導入する不活化処理も自動化することができる。例えば、検知器19により差圧0.02Mpaを検知したときに流入弁VEを自動的に閉鎖して流入路26を切替え、上述した濾過器11の不活化処理と同様に、差圧を検知した流入路23の導入弁VFを開放してストレーナ25のハウジング内に高圧蒸気を所定導入量で所定時間継続的に導入して植物片の不活化温度(121℃)に所定時間(例えば15分)保持したのち、差圧の生じたスクリーン28を更新(例えばスクリーン28の捕捉物を除去)する。更に、図示例のように蒸気排路33を設けた場合は、制御装置30によってストレーナ25の流出口27の排水弁VCと蒸気排路33の排蒸気弁VHを制御し、不活化処理時のドレインの排水切替えも自動化することができる。
【0029】
本発明は、従来の高圧滅菌処理法のように排水Dを昇温/降温させる必要がなく、高圧蒸気Sの導入によってフィルタ14を不活化温度に保持すれば足りるので、排水D中の植物片及び細胞の不活化に要するエネルギーを削減できる。また、排水14を少しずつ連続処理することにより濾過器11及びフィルタ14のサイズを小さく抑え、フィルタ14の更新コスト及び高圧蒸気Sの使用量を削減し、従来の高圧滅菌処理法に比して養液栽培施設1からの遺伝子組換え植物の漏出を経済的に防止することができる。更に、排水中の植物片及び細胞をフィルタ14によって捕捉して除去する方式であるため、処理後の排水中の植物片及び細胞をモニタリングすることによって処理後の封じ込め効果を比較的容易に確認することができ、処理不十分な排水の放流を適当な方法で阻止することにより植物片及び細胞の環境中への漏出を確実に防ぐことができる。
【0030】
こうして本発明の目的である「植物片及び細胞の漏出を経済的に且つ確実に防止できる遺伝子組換え植物の養液栽培排水の処理方法及び装置」の提供を達成できる。
【実施例1】
【0031】
図1の実施例では、排水流路10の濾過器11の下流側にモニタリング槽34を設けると共に、モニタリング槽34の排水Dを排水貯留槽20又は養液栽培施設1へ返送する開閉弁VJ付き排水返送路35と、モニタリング槽34内の植物片及び細胞を検出するセンサ37とを設けている。センサ37によりモニタリング槽34内の植物片及び細胞を検出し、植物片及び細胞が検出されない場合にのみ放流弁VIを開放して排水Dを排水枡等へ放流し、植物片及び細胞が検出された時はモニタリング槽34の排水Dをポンプ36により排水貯留槽20又は養液栽培施設1へ戻して排水処理をやり直す。このようなセンサ37として、例えばモニタリング槽34内の計測域に半導体レーザー光を照射して前方又は側方散乱光から排水D中の植物片又は細胞を計測(又は計数)する計測器を用いることができる。
【0032】
また図示例では、センサ37の出力信号に応じて放流弁VI及び排水返送路35の開閉弁VJの開閉を制御する制御装置39を排水処理装置に含め、センサ37により植物片及び細胞が検出されたときに、制御装置39により放流弁VIを閉鎖すると共に開閉弁VJを開放し、処理不十分な排水Dをモニタリング槽34から排水貯留槽20又は養液栽培施設1へ戻している。返送路35を排水貯留槽20及び養液栽培施設1に切替弁VK、VLを介して接続し、制御装置39によって切替弁VK、VLの開閉を制御することにより、排水貯留槽20及び養液栽培施設1の何れに処理不十分な排水Dを戻すかを制御装置29で切り替えることも可能である。図示例のように処理不十分な排水の処理をやり直すことにより、植物片及び細胞の環境中への漏出を一層確実に防止することができる。
【0033】
また、図示例のようにモニタリング槽34に養液濃度センサ38を設け、モニタリング槽34の排水D(養液)の養分濃度(窒素、燐酸、カリウム等の濃度)又は放流水質をモニタリングすることにより、例えば養液濃度が低い排水Dは放流弁VIを開放して排水Dを放流し、養液濃度が高い排水D(養液)はモニタリング槽34から養液栽培施設1へ戻して養液として再利用(リサイクル)することもできる。モニタリング槽34の排水Dに養分補給装置(図示せず)を設け、センサ38で不足が検知された養分を排水Dに補給することにより、ほとんどの排水Dを養液栽培施設1に戻して養液として再利用することも可能である。処理後の排水Dを養液栽培施設1に戻して再利用することにより、植物片及び細胞の環境中への漏出を一層確実に防止すると共に養液栽培全体の経済性を高めることが期待できる。
【実施例2】
【0034】
図2は、排水流路10の排水貯留槽20とフィルタ12付き濾過器11との間に、更にプレフィルタ64付きプレ濾過器61を配置した実施例を示す。例えば図3のように複数の養液栽培装置4A、4B、4C、4Dを設けた養液栽培施設1では、排水D中に複数の遺伝子組換え植物Pの様々な大きさの植物片及び細胞が混入しうる。図1のように上流側のストレーナ25のスクリーン28で比較的大径の植物片を粗取りすることにより下流側の濾過器11のフィルタ14の急速な目詰まりを避けることができるが、例えば植物細胞を捕捉するフィルタ14(例えばメンブランフィルタ等)の更新の頻度を更に低減するためには、フィルタ14の孔径より大きな植物片等をできる限り上流側で除去しておくことが望ましい。その全ての植物片を細かいメッシュのスクリーン28で除去することも可能であるが、逆にスクリーン28の目詰まりが生じやすくなり、スクリーン28の更新頻度及びスクリーン28の不活化のための高圧蒸気Sの使用量が増大してしまう。図2に示すように、ストレーナ25と濾過器11との間にプレ濾過器61を設け、スクリーン28より粗いがフィルタ14より細かい植物片をプレ濾過器61で捕捉・除去することにより、フィルタ14やスクリーン28の目詰まり頻度を低減すると共にシステム全体としての高圧蒸気Sの使用量を節減することができる。
【0035】
図2の実施例では、排水貯留槽20の下流側に複数のプレ排出路68を設け、そのプレ排出路21の各々にプレフィルタ64付きプレ濾過器61を設け、各プレ排出路68の下流端を中間路69に接続して合流させ、その中間路69の下流端に複数の排出路21を接続して上述した取水弁VA付き濾過器11を接続している。必要に応じて中間路69に排水貯留槽(図示せず)を設け、プレ排出路68からの排水Dを貯留槽に一旦貯えたうえで排出路21に排出してもよい。図示例のプレ濾過器61は、貯留槽20に連通する取水弁VM付き取水口路62と内部プレフィルタ64と排水口63とを有し、その取水口路62の取水弁VMとプレフィルタ64との間に導入弁VN付き蒸気導入路66を接続して濾過器11と同様の構造としたものである。プレフィルタ64の一例は、上述した濾過器11のフィルタ14よりも大きく且つストレーナ25のスクリーン28よりも小さい細孔を有するメンブレンフィルタ又は液濾過フィルタであるが、プレフィルタ64の種類及び孔径は植物Pの種類、排水Dの性状等に応じて適宜に選択可能である。
【0036】
複数のプレ排出路68のうち何れかの取水弁VMを開放して貯留槽20から排水Dをプレ濾過器61に取り入れ、ストレーナ25の通過後に残存する比較的大きな植物片をプレフィルタ64で捕捉しつつ排水Dを下流の中間路69へ排水する。また、流入弁VMを閉鎖したプレ排出路68の導入弁VNを開放して蒸気導入路66から高圧蒸気Sをプレ濾過器61のハウジング内に導入し、プレ濾過器61内を植物片の不活化温度(例えば121℃)に所定時間(例えば15分)保持したのち、導入弁VNを閉鎖してプレフィルタ64を更新する。例えば、メンブレンフィルタ等のプレフィルタ64をプレ濾過器61のハウジング内に交換可能な態様で設けて不活化処理後にプレフィルタ64を交換するか、或いは、不活化処理後にプレフィルタ64の捕捉物を除去する。植物片の不活化時にプレ濾過器61内に導入した高圧蒸気Sの凝縮液(ドレイン)は、排水口63から排水してもよいが、上述した濾過器11の場合と同様にプレ濾過器61の排水口63に排水弁VOを設けると共にプレフィルタ64と排水弁VOとの間に排蒸気弁VPを介して蒸気排路67を接続し、蒸気導入路66の導入弁VNの開放時に排水弁VOを閉鎖すると共に排蒸気弁VPを開放することにより、蒸気排路67を介してドレインを迅速に排出することができる。中間路69に排水されたプレ濾過器61の排水Dは、何れかの排出路21の取水弁VAの開放時に濾過器11を介して排水され、プレフィルタ64の通過後に残存する微細な植物片及び細胞が濾過器11のフィルタ14で更に捕捉・除去される。
【0037】
図2の複数のプレ排出路68を例えば定期的に手動操作で切替えることで排水Dを連続的に処理するが、好ましくは図示例のように、プレフィルタ64の差圧(プレ濾過器61の一次側(取水口路62側)と二次側(排水口63側)との間の差圧(圧損))を検知する差圧検知器65を設け、制御装置30により差圧検知器65の差圧検知信号に応じてプレ濾過器61の取水弁VMの開閉を制御し、差圧の生じたプレ排出路61の取水弁VMを閉鎖すると共に他のプレ排出路61の取水弁VMを開放する自動切替えによって排水Dの連続処理を可能とする。また、制御装置30によって各プレ排出路61の導入弁VNを自動制御して差圧の生じたプレ排出路61のプレ濾過器61に高圧蒸気Sを導入し、排水口63の排水弁VO及び蒸気排路67の排蒸気弁VPを自動制御して高圧蒸気Sのドレインを蒸気排路67へ排水することも可能である。
【0038】
なお、図2の実施例ではストレーナ25と濾過器11との間に1段のプレ濾過器61を設けているが、ストレーナ25と濾過器11との間に段階的に孔形が細かくなる複数段のプレ濾過器61を設けることができる。複数段のプレ濾過器61及び濾過器11で排水D中の植物片及び細胞を段階的に捕捉・除去することにより、プレ濾過器61のプレフィルタ64と濾過器11のフィルタ14の更新の頻度を共に低減させると共に、そのフィルタ64、14の更新時に要する高圧蒸気Sの使用量を削減し、遺伝子組換え植物Pの排水処理の経済性を更に高めることが期待できる。
【符号の説明】
【0039】
1…遺伝子組換え植物工場 2…栽培エリア
2A…前室 2B…後室
2C…廊下 3…栽培室
4…養液栽培装置 5…空調装置
6A…栽培エリア入口(作業員用) 6B…栽培エリア入口(資材用)
7A…栽培エリア出口(作業員用) 7B…栽培エリア出口(資材用)
9…外周廊下 9A…施設入口
9B…施設出口
10…排水流路 11…濾過器
12…取水口路 13…排水口
14…フィルタ 15…蒸気発生装置
16…蒸気導入路 17…蒸気導入路
18…差圧検知器 19…差圧検知器
20…排水貯留槽 21…排出路
22…ポンプ 23…流入路
25…ストレーナ 26…流入口路
27…流出口 28…スクリーン
30…制御装置
32…蒸気排路 33…蒸気排路
34…モニタリング槽 35…排水返送路
36…ポンプ 37…植物片及び細胞検出センサ
38…養液濃度センサ 39…制御装置
40…製造エリア 41…製造室
42…製造装置 43…製剤室
44…製剤装置 45…準備室
46…洗浄装置 47…更衣室
48…更衣前室 49…手洗い場
50…不活化エリア 51…植物不活化装置
52…井戸 53…軟水器
54…純水装置 55…給水路
56…給水タンク 57…排水滅菌容器
61…プレ濾過器 62…取水口路
63…排水口 64…プレフィルタ
65…差圧検知器 66…蒸気導入路
67…蒸気排路 68…プレ排出路
69…合流中間路
D…排水 S…高圧蒸気
P…遺伝子組換え植物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子組換え植物の養液栽培施設の排水を処理する方法において、排水流路に取水弁付き取水口路と植物片及び細胞の捕捉可能な内部フィルタと排水口とを有する濾過器を接続し、前記取水口路の取水弁とフィルタとの間に導入弁付き蒸気導入路を接続し、前記取水弁の開放時に導入弁を閉鎖して排水中の植物片及び細胞をフィルタで捕捉しつつ排水し、前記取水弁の閉鎖時に導入弁を開放して高圧蒸気により濾過器内を植物片及び細胞の不活化温度に所定時間保持したのちフィルタを更新してなる遺伝子組換え植物の養液栽培排水の処理方法。
【請求項2】
請求項1の処理方法において、前記排水流路の濾過器上流側に複数の排出路を有する排水貯留槽を設け、前記取水弁付き濾過器と導入弁付き蒸気導入路とを各排出路にそれぞれ接続し、何れかの濾過器の取水弁の閉鎖時に他の濾過器の取水弁を開放して連続的に排水を処理してなる遺伝子組換え植物の養液栽培排水の処理方法。
【請求項3】
請求項2の処理方法において、前記排水貯留槽に養液栽培施設と連通する複数の流入路を設け、前記各流入路にそれぞれ流入弁付き流入口路と植物片の捕捉可能な内部スクリーンと流出口とを有するストレーナを設け、前記各流入口路の流入弁とスクリーンとの間にそれぞれ導入弁付き蒸気導入路を接続し、何れかの流入路の流入弁を開放して排水中の植物片を捕捉しつつ貯留槽へ連続的に排水を流出させ、前記流入弁を閉鎖した流入路の導入弁を開放して高圧蒸気によりストレーナ内を植物片の不活化温度に所定時間保持したのちスクリーンを更新してなる遺伝子組換え植物の養液栽培排水の処理方法。
【請求項4】
請求項2又は3の処理方法において、前記排水流路の濾過器下流側にモニタリング槽を設け、前記モニタリング槽において植物片及び細胞を検出し且つ検出時に排水をモニタリング槽から排水貯留槽又は養液栽培施設へ戻してなる遺伝子組換え植物の養液栽培排水の処理方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れかの処理方法において、前記フィルタを遺伝子組換え植物の花粉又は胞子より小径の微細孔を有するメンブレンフィルタとしてなる遺伝子組換え植物の養液栽培排水の処理方法。
【請求項6】
遺伝子組換え植物の養液栽培施設の排水を処理する装置において、排水流路に接続される取水弁付き取水口路と植物片及び細胞の捕捉可能な内部フィルタと排水口とを有する濾過器、前記取水口路の取水弁とフィルタとの間に接続されて高圧蒸気を供給する導入弁付き蒸気導入路、前記フィルタの差圧を検知する差圧検知器、並びに前記差圧検知器の出力信号に応じて取水弁及び導入弁の開閉を制御する制御装置を備えてなる遺伝子組換え植物の養液栽培排水の処理装置。
【請求項7】
請求項6の処理装置において、前記排水流路の濾過器上流側に複数の排出路を有する排水貯留槽を設け、前記取水弁付き濾過器と導入弁付き蒸気導入路と差圧検知器とを各排出路にそれぞれ接続し、前記制御装置により各排出路の差圧検知器の出力信号に応じて全排出路の取水弁及び導入弁の開閉を制御してなる遺伝子組換え植物の養液栽培排水の処理装置。
【請求項8】
請求項7の処理装置において、前記排水貯留槽に養液栽培施設と連通する複数の流入路を設け、前記各流入路にそれぞれ流入弁付き流入口路と植物片の捕捉可能な内部スクリーンと流出口とを有するストレーナを設けると共にスクリーンの差圧を検知する差圧検知器を設け、前記各流入口路の流入弁とスクリーンとの間にそれぞれ高圧蒸気を供給する導入弁付き蒸気導入路を接続し、前記制御装置により各流入路の差圧検知器の検知信号に応じて全流入路の流入弁及び導入弁の開閉を制御してなる遺伝子組換え植物の養液栽培排水の処理装置。
【請求項9】
請求項7又は8の処理装置において、前記排水流路の濾過器下流側にモニタリング槽を設け、前記モニタリング槽の排水を排水貯留槽又は養液栽培施設へ返送する開閉弁付き排水返送路、前記モニタリング槽内の植物片及び細胞を検出するセンサ、並びに前記センサの出力信号に応じて返送路の開閉弁を制御する制御装置を設けてなる遺伝子組換え植物の養液栽培排水の処理装置。
【請求項10】
請求項6から9の何れかの処理装置において、前記フィルタを遺伝子組換え植物の花粉又は胞子より小径の微細孔を有するメンブレンフィルタとしてなる遺伝子組換え植物の養液栽培排水の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−166830(P2010−166830A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10309(P2009−10309)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、経済産業省、「植物機能を活用した高度モノ作り基盤技術開発/植物利用高付加価値物質製造基盤技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】