説明

避難計画評価システム及び避難計画評価方法

【課題】より最適な避難計画が策定されているか否かを判断可能とする。
【解決手段】要援護者人数算出部602が、移動機100のユーザの属性情報に基づいて避難時における要援護者の人数を算出する。避難先別人数算出部604が、帰宅先及び避難所へ避難する避難者の人数を算出する。シミュレーション部606が、各ポリゴン領域P1〜P9から、帰宅先及び避難所へ避難者が避難する場合のシミュレーションを行う。点数算出部607が、要援護者数、避難者の人数、及びシミュレーション結果に基づいて避難計画のための点数を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難先へ避難する場合の避難計画を評価する避難計画評価システム及び避難計画評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、災害等が発生した場合を想定し、エリア内の人々が避難先(例えば、自宅や避難所)へ避難する際の避難の様子をコンピュータを用いてシミュレーションし、避難計画を策定することが考えられている。このような避難の様子をシミュレーションするものとして、例えば、非特許文献1に記載されたものがある。この文献には、避難時の起点や終点(避難先)、終点へ向かう人数等を初期条件として予め設定し、設定された初期条件に基づいて道路の混雑等を考慮しながら避難の様子をシミュレーションすることが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「帰宅行動シミュレーション結果について」 内閣府 中央防災会議 http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/shutohinan/081027/sanko03.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1には、避難時の起点や終点、終点へ向かう人数等を初期条件として設定して避難行動のシミュレーションを一度だけ行い、避難計画を策定することが記載されているものの、より最適な避難計画が策定されているか否かは不明であるといった問題がある。
【0005】
そこで本発明は、より最適な避難計画が策定されているか否かを判断可能な避難計画評価システム及び避難計画評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため本発明は、移動機のユーザ毎に、ユーザの帰宅先及びユーザが避難の際に援護を要するか否かを属性情報として記憶する属性情報記憶手段と、所定エリアを複数に分割した分割領域毎に、分割領域内の移動機のユーザ数、属性情報記憶手段に記憶された属性情報に基づいて、避難の際に援護を要する要援護者の人数を算出する要援護者人数算出手段と、避難所の設置位置を示す避難所情報を記憶する避難所情報記憶手段と、分割領域内の移動機のユーザ数、属性情報記憶手段に記憶された属性情報、及び避難所情報記憶手段に記憶された避難所情報に基づいて、分割領域毎に、分割領域内の避難者が帰宅先へ避難する帰宅先毎の人数、及び分割領域内の避難者が避難所へ避難する避難所毎の人数を算出する避難先別人数算出手段と、分割領域から帰宅先及び避難所へそれぞれ避難者が避難する際に経由する分割領域を避難経路として抽出する避難経路抽出手段と、それぞれの分割領域から避難経路を経由して帰宅先及び避難所へ避難者が避難する場合のシミュレーションを行うことにより、分割領域毎に当該分割領域内における避難者の人数の変遷を示す変遷管理テーブルを作成するシミュレーション手段と、要援護者数、避難者の人数、及びシミュレーション手段によるシミュレーション結果に基づいて避難計画のための点数を算出する点数算出手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、移動機のユーザ毎に、ユーザの帰宅先及びユーザが避難の際に援護を要するか否かを属性情報として記憶する属性情報記憶手段と、避難所の設置位置を示す避難所情報を記憶する避難所情報記憶手段と、を備える避難計画評価システムにおける避難計画評価方法であって、所定エリアを複数に分割した分割領域毎に、分割領域内の移動機のユーザ数、属性情報記憶手段に記憶された属性情報に基づいて、避難の際に援護を要する要援護者の人数を算出する要援護者人数算出ステップと、分割領域内の移動機のユーザ数、属性情報記憶手段に記憶された属性情報、及び避難所情報記憶手段に記憶された避難所情報に基づいて、分割領域毎に、分割領域内の避難者が帰宅先へ避難する帰宅先毎の人数、及び分割領域内の避難者が避難所へ避難する避難所毎の人数を算出する避難先別人数算出ステップと、分割領域から帰宅先及び避難所へそれぞれ避難者が避難する際に経由する分割領域を避難経路として抽出する避難経路抽出ステップと、それぞれの分割領域から避難経路を経由して帰宅先及び避難所へ避難者が避難する場合のシミュレーションを行うことにより、分割領域毎に当該分割領域内における避難者の人数の変遷を示す変遷管理テーブルを作成するシミュレーションステップと、要援護者数、避難者の人数、及びシミュレーションステップにおけるシミュレーション結果に基づいて避難計画のための点数を算出する点数算出ステップと、を備えることを特徴とする。
【0008】
これらの発明にあっては、移動機のユーザの属性情報に基づいて避難時における要援護者の人数が算出され、更に、帰宅先及び避難所へ避難する避難者の人数が算出される。また、所定エリアを複数に分割したそれぞれの分割領域から、帰宅先及び避難所へ避難者が避難する場合のシミュレーションが行われる。そして、要援護者数、避難者の人数、及びシミュレーション結果に基づいて避難計画のための点数が算出される。このように、避難計画のための点数を算出することができるため、算出された点数に基づいて、より最適な避難計画が策定されているか否かを判断することができる。
【0009】
また、シミュレーション手段は、シミュレーション結果として、帰宅先へ避難する避難者が避難に要する平均時間と、帰宅先へ避難する避難者が避難に要する時間の分散度合いと、避難者の人数より求めた分割領域内の混雑度の平均値と、避難者の人数より求めた分割領域内の混雑度の分散度合いと、の少なくともいずれかを算出することが好ましい。これにより、これらの値に基づいて、より精度良く、避難計画のための点数を算出することができる。
【0010】
また、避難経路抽出手段は、避難者が帰宅先へ避難する際の総移動距離を更に算出し、点数算出手段は、更に、総移動距離に基づいて点数を算出することが好ましい。これにより、帰宅先へ避難する際の総移動距離に基づいて、より精度良く、避難計画のための点数を算出することができる。
【0011】
また、点数算出手段によって点数が算出された後、更に、シミュレーション手段は、避難開始時間を変更してシミュレーションを行うことが好ましい。これにより、避難開始時間が異なる避難のシミュレーションが行われ、当該シミュレーションの結果に基づいて、避難開始時間が異なる避難計画について点数を算出することができる。
【0012】
また、点数算出手段によって点数が算出された後、更に、避難先別人数算出手段は、避難者の避難先を変更し、変更された避難先に基づいてシミュレーション手段がシミュレーションを行うことが好ましい。これにより、避難先が異なる避難のシミュレーションが行われ、当該シミュレーションの結果に基づいて、避難先が異なる避難計画について点数を算出することができる。
【0013】
また、避難経路抽出手段によって、一の帰宅先又は避難所へ避難する際の避難経路が複数抽出され、点数算出手段によって点数が算出された後、更に、シミュレーション手段は、一の帰宅先又は避難所へ避難する避難者を複数の避難経路毎に配分する比率を変更してシミュレーションを行うことが好ましい。これにより、複数の避難経路毎に避難者を配分する比率が変更された避難のシミュレーションが行われ、当該シミュレーションの結果に基づいて、複数の避難経路毎に避難者の配分比率が異なる避難計画について点数を算出することができる。
【0014】
また、避難経路抽出手段によって、一の帰宅先又は避難所へ避難する際の避難経路が複数抽出され、点数算出手段によって点数が算出された後、更に、シミュレーション手段は、新たな避難経路に基づいてシミュレーションを行うことが好ましい。これにより、新たな避難経路に基づいて避難のシミュレーションが行われ、当該シミュレーションの結果に基づいて、新たな避難経路を避難者が避難する避難計画について点数を算出することができる。
【0015】
また、点数算出手段によって算出された点数が、予め定められた出力条件を満たす場合に、出力条件を満たす点数が付与された要援護者数、避難者の人数、及びシミュレーション手段によるシミュレーション結果を出力する出力手段を更に備えることが好ましい。また、点数算出手段によって算出された点数が、予め定められた出力条件を満たす場合に、出力条件を満たす点数が付与された要援護者数、避難者の人数、シミュレーション手段によるシミュレーション結果、及び避難者が帰宅先へ避難する際の総移動距離を出力する出力手段を更に備えることが好ましい。これにより、出力条件を満たす点数が付与されたシミュレーション結果等が出力され、出力された情報を利用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、より最適な避難計画が策定されているか否かを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】移動通信システムの概略構成図である。
【図2】移動通信システムの機能構成を示すブロック図である。
【図3】BTSとセクタとの関係を示す図である。
【図4】避難先となる目的地を示す図である。
【図5】目的地情報のデータテーブルを示す図である。
【図6】避難先別の人数を含むデータテーブルを示す図である。
【図7】リンクで繋がれたポリゴン領域及び目的地を示す図である。
【図8】避難道路のデータテーブルを示す図である。
【図9】避難経路のデータテーブルを示す図である。
【図10】ポリゴン領域P5における変遷管理テーブルを示す図である。
【図11】ポリゴン領域P5における変遷管理テーブルを示す図である。
【図12】ポリゴン領域P5における変遷管理テーブルを示す図である。
【図13】ポリゴン領域P5についての集計テーブルを示す図である。
【図14】ポリゴン領域P5において避難開始時間を変更した変遷管理テーブルを示す図である。
【図15】ポリゴン領域P5において避難開始時間を変更した集計テーブルを示す図である。
【図16】変遷管理テーブルを示す図である。
【図17】集計テーブルを示す図である。
【図18】新規リンクを追加したポリゴン領域及び目的地を示す図である。
【図19】情報分析装置で行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る避難計画評価システム及び避難計画評価方法を適用した移動通信システムの好適な一実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1は、移動通信システムの概略構成図である。図1に示すように、移動通信システム10は、移動機100、BTS(基地局)200、RNC(無線ネットワーク制御装置)300、交換機400、及び管理センタ500を含んで構成されている。また、この管理センタ500は、社会センサユニット501、ペタマイニングユニット502、モバイルデモグラフィユニット503、及び可視化ソリューションユニット504から構成されている。
【0020】
交換機400は、BTS200、RNC300を介して、移動機100が位置登録要求や通信接続等を行った場合に移動機100の位置情報(詳しくは後述する位置登録情報)を取得する。交換機400は受け取った位置情報を記憶しておき、所定のタイミング、または管理センタ500からの要求に応じて、収集した位置情報を管理センタ500に出力する。ここで、一般的に、RNC300は、約千個からなるものであり、日本全国に配置されている。一方で、交換機400は、300個程度日本国内に配置されている。
【0021】
管理センタ500は、上述したとおり、社会センサユニット501、ペタマイニングユニット502、モバイルデモグラフィユニット503、及び可視化ソリューションユニット504を含んで構成されており、各ユニットでは、移動機100の分布情報を用いた統計処理を行う。
【0022】
社会センサユニット501は、各交換機400から移動機100の位置情報等を含んだデータを収集するサーバ装置である。この社会センサユニット501は、交換機400から定期的に出力されたデータを受信したり、または社会センサユニット501において予め定められたタイミングに従って交換機400からデータを取得したりできるように構成されている。
【0023】
ペタマイニングユニット502は、社会センサユニット501から受信したデータを所定のデータ形式に変換するサーバ装置である。例えば、ペタマイニングユニット502は、ユーザIDをキーにソーティング処理を行ったり、データの属するエリア毎にソーティング処理を行ったりする。
【0024】
モバイルデモグラフィユニット503は、ペタマイニングユニット502において処理されたデータに対する集計処理、即ち各項目のカウンティング処理を行うサーバ装置である。例えば、モバイルデモグラフィユニット503は、あるエリアに在圏する移動機100のユーザ数をカウントしたり、また在圏分布を集計したりすることができる。
【0025】
可視化ソリューションユニット504は、モバイルデモグラフィユニット503において集計処理されたデータを可視可能に処理するサーバ装置である。例えば、可視化ソリューションユニット504は、集計されたデータを地図上にマッピング処理することができる。この可視化ソリューションユニット504にて処理されたデータは、企業、官公庁または個人等に提供され、店舗開発、道路交通調査、災害対策、環境対策等に利用される。なお、このように統計処理された情報は、当然にプライバシーを侵害しないように個人等は特定されないように加工されている。
【0026】
なお、社会センサユニット501、ペタマイニングユニット502、モバイルデモグラフィユニット503及び可視化ソリューションユニット504はいずれも、前述したようにサーバ装置により構成され、図示は省略するが、通常の情報処理装置の基本構成、即ち、CPU、RAM、ROM、キーボードやマウス等の入力デバイス、外部との通信を行う通信デバイス、情報を記憶する記憶デバイス、及び、ディスプレイやプリンタ等の出力デバイス等を備えることは言うまでもない。
【0027】
次に、移動通信システム10の機能ブロック構成について説明する。図2は、移動通信システム10の機能構成を示すブロック図である。図2に示すように、移動通信システム10は、移動機100と、BTS200と、RNC300と、交換機400と、情報分析装置600とを含んで構成されている。なお、本実施形態の情報分析装置600は、図1に示される管理センタ500の各構成ユニット(社会センサユニット501、ペタマイニングユニット502、モバイルデモグラフィユニット503、及び可視化ソリューションユニット504)の全部もしくは一部により実現される。即ち、図2に示される情報分析装置600の機能ブロックは、管理センタ500を構成する各構成ユニットにおいて分散して配置されており、各構成ユニットにより一つの情報分析装置600が構成されている。なお、一の構成ユニットにより情報分析装置600が構成されてもよい。
【0028】
移動機100は、位置登録部101を含んで構成されている。位置登録部101は、位置登録要求を行うための位置登録信号を出力するものである。なお、位置登録信号は、例えば54分毎に出力される。
【0029】
BTS200は、移動機100と無線通信を行うものである。通信エリアであるセクタは、BTS200により形成される。このセクタ内に、複数の移動機100が在圏している。ここで、図3に、BTS200とセクタとの関係を示す。図3に示すように、円形で示されている領域の中心にBTS200が位置するものであり、それを中心に複数の等分されたものがセクタである。例えば図3では、BTS200の通信エリアは最大6セクタからなるものであり、RNC300は、いずれのセクタに移動機100が在圏しているかを把握することができる。
【0030】
RNC300は、通信制御部301と、セクタ識別部302とを含んで構成されている。通信制御部301は、移動機100とBTS200を介して通信接続を行う部分であり、例えば、移動機100からの発信処理若しくは着信処理に基づいた通信接続処理、及び位置登録要求に基づいた通信接続処理を行う部分である。セクタ識別部302は、移動機100が位置登録のために位置登録信号を出力した際に当該移動機100が在圏するセクタを識別し、識別結果を通信制御部301を通じて交換機400へ出力する。
【0031】
交換機400は、通信制御部401と、位置情報管理部402とを含んで構成されている。通信制御部401は、RNC300の通信制御部301と同様に、通信接続処理を行う部分である。位置情報管理部402は、移動機100が位置登録を行ったときに、セクタ識別部302によって識別されたセクタ(セクタ識別子)と、移動機100を識別するためのユーザ識別子と、移動機100が位置登録を行った時刻とを対応付けし、対応付けした結果を位置登録情報として記憶する。位置情報管理部402は、記憶している位置登録情報を、所定のタイミング、または情報分析装置600からの要求に応じて情報分析装置600に出力する。
【0032】
情報分析装置600は、属性情報データベース(属性情報記憶手段)601と、要援護者人数算出部(要援護者人数算出手段)602と、避難所情報データベース(避難所情報記憶手段)603と、避難先別人数算出部(避難先別人数算出手段)604と、避難経路抽出部(避難経路抽出手段)605と、シミュレーション部(シミュレーション手段)606と、点数算出部(点数算出手段)607と、出力部(出力手段)608と、目的地情報算出部609と、目的地情報データベース610と、避難道路データベース611と、避難経路データベース612と、を含んで構成されている。
【0033】
図4に、避難先となる目的地を示す。本実施形態において情報分析装置600は、図4に示すように、所定エリアX(23区)内の避難者が目的地A(埼玉県)、目的地B(千葉県)、目的地C(神奈川県)、目的地D(23区外)、目的地E(避難所)へ避難する場合の避難計画を行うものとする。所定エリアXは、所定エリアXをメッシュ状に分割したポリゴン領域(分割領域)P1〜P9によって構成されている。なお、図4では、図面の簡素化のため、ポリゴン領域を9個のみ示したが、実際には、所定エリアXを分割する大きさに応じて、例えば数千個程度存在する。
【0034】
属性情報データベース601は、移動機100のユーザ毎に、ユーザ識別子と、ユーザの帰宅先と、ユーザが避難の際に援護を要するか否かとが対応付けされた属性情報を記憶する。援護を要する場合とは、例えば、足が不自由なユーザである等がある。この属性情報は、移動機100のユーザの加入者情報等より取得される。また、移動機100のユーザの帰宅先は、本実施形態においては、移動機100のユーザの住所地とする。
【0035】
要援護者人数算出部602は、ポリゴン領域P1〜P9毎に、ポリゴン領域内の移動機100のユーザ数と、属性情報データベース601に記憶された属性情報とに基づいて、避難の際に援護を要する要援護者の人数を算出する。
【0036】
具体的には、まず、要援護者人数算出部602は、交換機400の位情報管理部402から出力された位置登録情報を用い、位置登録情報に含まれるユーザ識別子及びセクタ識別子と、属性情報データベース601に記憶された属性情報(援護を要するか否かの情報)と、セクタとポリゴン領域との対応表と、に基づいて、各ポリゴン領域内の移動機100のユーザの中で、援護を要する要援護者の人数を算出する。そして、要援護者人数算出部602は、移動機100のユーザの中での要援護者の人数から、全人口に対する移動機100の契約率等を用いて、各ポリゴン領域内における全人口に対する要援護者の人数を算出する。要援護者人数算出部602は、算出した要援護者の人数を点数算出部607へ出力する。
【0037】
避難所情報データベース603は、避難所の設置位置を示す避難所情報を記憶する。この避難所情報には、避難所の収容人数の情報も含まれている。
【0038】
目的地情報算出部609は、属性情報データベース601に記憶された帰宅先と、避難所情報データベース603に記憶された避難所情報とに基づいて、目的地情報を算出する。ここでは、所定エリアX内の避難者が、どこへ避難するかを把握するものである。
【0039】
具体的には、まず、目的地情報算出部609は、交換機400の位情報管理部402から出力された位置登録情報を用い、位置登録情報に含まれるユーザ識別子及びセクタ識別子と、属性情報データベース601に記憶された帰宅先と、セクタと所定エリアXとの対応表とに基づいて、所定エリアX内の移動機100のユーザの帰宅先を避難の際の目的地として抽出する。ここでは、図4の目的地A〜Dが抽出されるものとする。そして、目的地情報算出部609は、避難所情報データベース603に記憶された避難所情報から、所定エリアX内の避難所を目的地として抽出する。ここでは、図4に示す目的地Eが抽出されるものとする。
【0040】
そして、目的地情報算出部609は、抽出された目的地毎に、目的地の価値と、目的地の収容人数とを対応付けて目的地情報を算出する。この目的地の価値は、避難先として選択する際の基準となるものであり、目的地の価値の値が大きいものほど、避難先として優先的に選択される。目的地の価値は、目的地の種類に応じて予め設定されており、通常、避難所よりも帰宅先の価値の方が高く設定されている。目的地の収容人数は、目的地が帰宅先の場合は無限(infinity)が設定され、目的地が避難所の場合は避難所情報データベース603に記憶された避難所情報に含まれる収容人数が設定される。
【0041】
図5は、目的地情報のデータテーブルを示す図である。図5に示すように、目的地情報算出部609は、目的地毎に、目的地ID(DestinationID)と、目的地の価値(DstValue)と、目的地の収容人数(Capacity)とを対応付けたデータテーブルを目的地情報として作成する。
【0042】
図5に示すデータテーブルのうち、目的地IDは、目的地(帰宅先及び避難所)を一意に特定するためのものである。なお、図5では、目的地A〜目的地Eを、「Dest_A」〜「Dest_E」として表記している。目的地A(Dest_A)は、帰宅先としての埼玉県であり、目的地の価値「1」と、目的地の収容人数「infinity」とが対応付けられている。また、目的地E(Dest_E)は、避難所であり、目的地の価値「0.5」と、目的地の収容人数「5000人」とが対応付けられている。
【0043】
目的地情報データベース610は、目的地情報算出部609によって作成された目的地情報のデータテーブル(図5参照)を記憶する。
【0044】
避難先別人数算出部604は、ポリゴン領域内の移動機100のユーザ数と、属性情報データベース601に記憶された属性情報と、避難所情報データベース603に記憶された避難所情報とに基づいて、ポリゴン領域毎に、ポリゴン領域内の避難者が帰宅先へ避難する帰宅先毎の人数と、ポリゴン領域内の避難者が避難所へ避難する避難所毎の人数とを算出する。
【0045】
具体的には、まず、避難先別人数算出部604は、交換機400の位置情報管理部402から出力された位置登録情報を用い、位置登録情報に含まれるユーザ識別子及びセクタ識別子と、属性情報データベース601に記憶された属性情報と、セクタとポリゴン領域との対応表とに基づいて、ポリゴン領域毎に、ポリゴン領域内の避難者(移動機100のユーザ)の帰宅先毎の人数及び避難所毎の人数を算出する。なお、例えば、避難者が居るポリゴン領域から帰宅先までの距離が所定距離以上の場合、当該避難者は、避難所に避難するものとして避難所毎の人数を算出する。また、例えば、援護を要する避難者は、最寄りの避難所に避難するものとして避難所毎の人数を算出することができる。また、避難先別人数算出部604は、目的地として帰宅先又は避難所を選択する際に、目的地情報データベース610に記憶された目的地情報の目的地の価値も考慮する。
【0046】
そして、避難先別人数算出部604は、移動機100のユーザのみを避難者として算出された各ポリゴン領域内の避難者の帰宅先毎の人数及び避難所毎の人数から、全人口に対する移動機100の契約率等を用いて、各ポリゴン領域内における全人口を避難者とした場合の帰宅先毎の人数及び避難所毎の人数を算出する。
【0047】
そして、避難先別人数算出部604は、避難先毎の人数を含むデータテーブルを作成する。図6は、避難先別の人数を含むデータテーブルを示す図である。図6に示すように、目的地情報算出部609は、ポリゴン領域毎に、ポリゴンID(PolygonID)と、ポリゴン領域内の全ての避難者の人数(Population ALL)と、目的地(避難先)毎の人数(Population EachDestination)と、ポリゴン領域の収容人数(Capacity)とを対応付けてデータテーブルを算出する。この、ポリゴン領域内の収容人数は、詳しくは後述する避難道路データベース611に記憶されているものであり、避難先別人数算出部604は、避難道路データベース611から収容人数の情報を取得する。
【0048】
図6に示すように、例えば、ポリゴン領域P5(PolygonID:PolyP5)については、ポリゴン領域P5内の全ての避難者の人数が「1000人」、ポリゴン領域P5から目的地A(Dest_A)へ避難する避難者の人数が「200人」・・・目的地E(Dest_E)へ避難する避難者の人数が「100人」、ポリゴン領域P5の収容人数が「1000人」となっている。避難先別人数算出部604は、作成したデータテーブルをシミュレーション部606へ出力する。
【0049】
避難道路データベース611は、災害が発生した場合に利用する避難道路についての情報を記憶する。この避難道路は、予め行政等によって定められたものであり、避難に適した道路(例えば、道幅が広い道路等)が選択される。また、避難道路データベース611は、更に、各ポリゴン領域の収容人数を記憶する。このポリゴン領域の収容人数は、地形等を考慮して予め定められたものである。
【0050】
ここで、避難道路データベース611が記憶する避難道路の詳細について説明する。避難道路データベース611は、図4に示すように、所定エリアXから目的地A〜Dへ避難する際に利用する避難道路R1〜R6の情報を記憶する。ここで、避難道路R1,R6は、ポリゴン領域P5から目的地Dへ向かい、避難道路R2は、ポリゴン領域P5から目的地Aへ向かい、避難道路R3,R4は、ポリゴン領域P5から目的地Bへ向かい、避難道路R5は、ポリゴン領域P5から目的地Cへ向かうものとする。
【0051】
避難道路データベース611は、避難道路R1〜R6を、具体的には、ポリゴン領域を繋ぐリンクとして記憶している。図7に、リンクで繋がれたポリゴン領域及び目的地を示す。図7に示すように、円で示す各ポリゴン領域P1〜P9、及び目的地A〜Eが、線で示すリンク(リンクL01,L02等)によって繋がれている。このリンクの接続関係は、図4に示す避難道路R1〜R6が経由するポリゴン領域と対応している。例えば、避難道路R1は、ポリゴン領域P5から、ポリゴン領域P4、ポリゴン領域P1を経由して目的地Dへ延びている。従って、図7では、ポリゴン領域P5からリンクL01がポリゴン領域P4に繋がり、ポリゴン領域P4からリンクL10がポリゴン領域P1に繋がり、ポリゴン領域P1からリンクL20が目的地Dへ繋がっている。
【0052】
また、避難道路データベース611は、ポリゴン領域P1〜P9及び目的地A〜Eを繋ぐリンクL01,L02等のコストを、リンク毎に記憶する。リンクのコストとは、当該リンクによって繋がれたポリゴン領域間、又はポリゴン領域と目的地との間を移動する際の移動の困難度合いを示し、例えば、距離に基づいて算出され、距離が離れている場合にはコストが高くなる。ここでは、図7に示すように、ポリゴン領域P5とポリゴン領域P4とを繋ぐリンクL01のコストは「10」が設定され、ポリゴン領域P1と目的地Dとを繋ぐリンクL20のコストは「100」が設定されている。図7において、リンクのコストを、リンクを示す線の近傍に記載して示している。なお、目的地E(避難所)は、ポリゴン領域P2内に存在しているため、目的地Eとポリゴン領域P2とを繋ぐリンクL30のコストは「0」が設定されている。
【0053】
避難道路データベース611は、上述したリンクやコストを、データテーブルとして記憶している。図8は、具体的な避難道路のデータテーブルを示す図である。図8に示すように、避難道路データベース611は、ポリゴン領域毎に、ポリゴンID(PolygonID)と、ポリゴンに繋がるリンク(Link)と、リンクのコストと、リンクによって接続された接続先のポリゴンIDとが対応付けられたデータテーブルを記憶している。具体的には、例えば、ポリゴン領域P5(PolyP5)においては、ポリゴン領域P5に接続されたリンクL01,L02,L03,L04(Link01,Link02,Link03,Link04)と、それぞれのリンクのコスト「10」(図8中、リンク名の右横に記載された数字)と、ポリゴン領域P5にリンクL01,L02,L03,L04を介して接続された接続先のポリゴン領域P4,P2,P6,P8(PolyP4,PolyP2,PolyP6,PolyP8)(図8中、リンクのコストの右横に記載されたポリゴン領域)と、が対応付けられている。
【0054】
避難経路抽出部605は、ポリゴン領域から帰宅先及び避難所へそれぞれ避難者が避難する際に経由するポリゴン領域を避難経路として抽出する。具体的には、避難経路抽出部605は、避難道路データベース611が記憶する避難道路のデータテーブルに基づいて、各ポリゴン領域から目的地情報データベース610が記憶する目的地へ避難する際に経由するポリゴン領域を抽出してデータテーブルを作成する。
【0055】
図9は、避難経路のデータテーブルを示す図である。例えば、ポリゴン領域P5から目的地Dへ避難する場合、図7に示すように、ポリゴン領域P5から、ポリゴン領域P4,P1を経由して目的地Dへ避難する避難経路がある。そこで、避難経路抽出部605は、図9に示すように、当該避難経路を避難経路01(Path01)として、出発地(Source)となるポリゴン領域P5(polyP5)と、目的地(Destination)となる目的地D(Dest_D)と、ポリゴン領域P5から目的地Dへ避難する際に経由するポリゴン領域P5,P4,P1(polyP5,polyP4,polyP1)及び目的地D(Dest_D)の経路リスト(PathList)と、ポリゴン領域P5から目的地Dへ避難した際のリンクのコストの合計値(Total Costs)「120」とを対応付けてデータテーブルを作成する。
【0056】
また、ポリゴン領域P5から目的地Dへ避難する際の避難経路として、ポリゴン領域P5からポリゴン領域P4,P7を経由して目的地Dへ避難するものがある。そこで、避難経路抽出部605は、図9に示すように、避難経路01とは異なる避難経路ID(PathID)として避難経路02(Path02)を付与し、避難経路01と同様に、避難経路02についてのデータテーブルを作成する。このように、避難経路抽出部605は、各ポリゴン領域から各目的地へ避難する際に採り得る全ての避難経路についてのデータテーブルを作成する。
【0057】
避難経路データベース612は、避難経路抽出部605によって抽出された避難経路のデータテーブルを記憶する。
【0058】
シミュレーション部606は、各ポリゴン領域P1〜P9から、避難経路抽出部605で抽出された避難経路を経由して帰宅先及び避難所へ避難者が避難する場合のシミュレーションを行うことにより、ポリゴン領域毎に当該ポリゴン領域内における避難者の人数の変遷を示す変遷管理テーブルを作成する。
【0059】
この変遷管理テーブルは、ポリゴン領域毎に作成されるものである。以下において、ポリゴン領域P5についての変遷管理テーブルを作成する場合を代表させて説明する。図10〜図12は、ポリゴン領域P5における変遷管理テーブルを示す図である。まず、シミュレーション部606は、避難経路データベース612に記憶された避難経路についてのデータテーブル(図9参照)に基づいて、ポリゴン領域P5から各目的地A〜Eへ向かう避難経路を、目的地A〜E毎に一つずつ選択する。
【0060】
ここでは、例えば、一の目的地へ向かう避難経路が複数存在する場合、図8,図9のデータテーブルに基づいて、例えばダイクストラ法等によって移動距離が最も短い避難経路を選択する。具体的には、図9において、ポリゴン領域P5から目的地Dへ向かう避難経路を選択する場合、避難経路01,02のうち、リンクのコストの合計が小さい避難経路01が選択される。
【0061】
シミュレーション部606は、図10に示すように、選択した避難経路の避難経路ID(PathID)と、経路リスト(PathList)とを避難計画ID(PlanID)に対応付けた変遷管理テーブルを作成する。ここで、避難計画IDとは、避難計画毎に付与されるIDである。変遷管理テーブルは、具体的には、図10に示すように、避難計画IDとしての「Plan01」と、避難経路IDとしての「Path01」と、ポリゴン領域P5から目的地Dへ避難する際に経由する経路リストとしての「polyP5, polyP4, polyP1, Dest_D」とが対応付けられている。
【0062】
更に、シミュレーション部606は、図6に示す目的地毎の避難者の人数のデータテーブルから、目的地毎の避難者の人数を取得し、取得した人数を変遷管理テーブルに追加する。具体的には、図6に示すデータテーブルから目的地Dへ避難する避難者の人数「300人」を抽出し、抽出した人数を、図10に示すように変遷管理テーブルの「polyP5」の右横に記載する(人数「300人」を、「Pop_at0:00」と「polyP5」とに対応付けする)。ここで、避難経路は、避難経路01(Path01)のみが選択されているため、ポリゴン領域P5から目的地Dへ向かう300人の避難者は全て避難経路01を通って避難することとなる。
【0063】
また、図10に示された「Pop_at0:00」、「Pop_at0:30」、「Pop_at1:00」とは、災害(シミュレーションにおける災害)が発生してからの各経過時間における避難者の人数を示している。図10に示すデータテーブルでは、ポリゴン領域P5から目的地Dへ向かう避難者が、災害発生時(Pop_at0:00)においては、ポリゴン領域P5内に300人存在することを示している。
【0064】
次に、シミュレーション部606は、図10に示される変遷管理テーブルに従って、災害発生から30分後において、経路リストに記載されたポリゴン領域内に何人の避難者が存在するかのシミュレーションを行う。
【0065】
具体的には、図11に示すように、「Pop_at0:00」においてポリゴン領域P5内に300人居た避難者が目的地Dへ向かって避難することにより、災害発生から30分後(Pop_at0:30)には、ポリゴン領域P5内の避難者の人数が300人から50人に減少し、ポリゴン領域P4内の避難者が0人から150人に増加し、ポリゴン領域P1内の避難者が0人から100人に増加する。
【0066】
この避難者の移動は、図8に示す、リンク毎に付与されたコスト等に基づいて、既知の方法によってシミュレーションすることができる。ここでは、例えば、徒歩で避難する避難者の移動速度(例えば、時速3km)を用いて行うことができる。また、避難者の移動速度を考慮する際に、年齢や性別、援護を要するか否か等に基づいて、避難者を移送速度毎に分類し、分類された移動速度に基づいて移動のシミュレーションを行うこともできる。この避難者の年齢や性別についての情報は、移動機100のユーザの加入者情報等に基づいて取得することができる。
【0067】
そして、図12に示すように、災害発生から1時間後(Pop_at1:00)には、ポリゴン領域P5及びポリゴン領域P4内の避難者の人数が0人になり、ポリゴン領域P1内の避難者が100人になる。このように、災害発生時にポリゴン領域P5内に居た300人は、1時間後には、ポリゴン領域P1内を目的地Dに向けて100人が移動中であり、ポリゴン領域P1と目的地Dとの間の経路(リンクL20)上を目的地Dに向けて200人が移動中であることがわかる。
【0068】
また、図12に示す変遷管理テーブルにおいて、ポリゴン領域P5,P4,P1内の避難者の人数が0人となり、目的地D内の避難者の人数が300人となったときに、災害発生時にポリゴン領域P5内に居た目的地Dへ向かう300人の避難者が、全員目的地Dへ到着した(帰宅した)ことを示す。
【0069】
なお、図10〜図12に示す変遷管理テーブルは、目的地Dへ避難する避難者の変遷のシミュレーション結果のみ記載してあるが、ポリゴン領域P5から他の目的地へ向けて避難する避難者の変遷についてもシミュレーションを行う。
【0070】
また、図12に示すポリゴン領域毎の変遷管理テーブルは、災害発生時にシミュレーション対象としたポリゴン領域内に居た避難者の移動のみを考慮しており、他のポリゴン領域から流入してくる避難者の人数は考慮していない。
【0071】
ポリゴン領域P5以外のポリゴン領域についても、ポリゴン領域P5と同様に図12に示すような変遷管理テーブルを作成する。従って、ポリゴン領域の数だけ、図12に示す変遷管理テーブルが作成される。
【0072】
次に、シミュレーション部606は、ポリゴン領域毎に作成した変遷管理テーブルに基づいて、ポリゴン領域毎に集計テーブルを作成する。この集計テーブルは、他のポリゴン領域から当該ポリゴン領域に流入してくる避難者の人数についても考慮されたものである。
【0073】
シミュレーション部606が作成する集計テーブルの詳細について、ポリゴン領域P5についての集計テーブルを代表させて説明する。図13は、ポリゴン領域P5についての集計テーブルを示す図である。図13に示すように、シミュレーション部606は、集計テーブルに避難計画ID(PlanID):「Plan01」と、対象となるポリゴン領域ID(PolygonID):「PolyP5」とを入力する。
【0074】
次に、シミュレーション部606は、図6に示す目的地毎の避難者の人数のデータテーブルから、ポリゴン領域P5から避難する避難者の目的地と、目的地毎の避難者の人数とを取得して、これらを、図13に示す集計テーブルの避難計画欄(EvacuationPlan)の目的地(DestID)と、目的地毎の避難者の人数(InitialPop)とに入力する。具体的には、図13に示すように、例えば、目的地Dへ避難する避難者の人数は300人となっている。
【0075】
次に、シミュレーション部606は、図12に示す変遷管理テーブルに基づき、シミュレーションを行う際に選択した避難経路ID(PathID)と、選択された避難経路に割り当てられた避難者の人数(「Pop_at0:00」の人数)とを取得し、これらを、図13に示す集計テーブルの避難計画欄(EvacuationPlan)の避難経路ID(PathID)と、避難者の人数(Pop)とに入力する。具体的には、図13に示すように、例えばポリゴン領域P5から目的地Dへ避難する場合、図12に示す変遷管理テーブルから、避難経路ID「Path01」と、避難者の人数「300人」が抽出され、これらが集計テーブルの避難経路ID(PathID)と、避難者の人数(Pop)とに入力される。
【0076】
次に、ポリゴン領域P5において、目的地毎に避難の開始時間(StartTime)と、避難の終了時間(EndTime)とを集計テーブルに入力する。避難の開始時間とは、災害発生時からの経過時間が入力され、初期状態では災害発生時と同じとなっている。また、避難の終了時間とは、災害発生からの経過時間が入力され、集計テーブルの集計対象となったポリゴン領域から、ある目的地に向かう避難者が0人となったときに、当該ポリゴン領域においてある目的地に向かう避難者の避難が終了したものとして、その時の経過時間が入力される。具体的には、図13に示すように、例えば、ポリゴン領域P5から目的地Dへ避難する場合、避難の開始時間として災害発生と同じであることを示す「0:00」が集計テーブルに入力され、避難の終了時間として「5:00」が集計テーブルに入力される。この避難の終了時間の算出については後述する。
【0077】
次に、シミュレーション部606は、避難計画欄(EvacuationPlan)と同様に、図6に示す目的地毎の避難者の人数のデータテーブルから、ポリゴン領域P5から避難する避難者の目的地と、目的地毎の避難者の人数とを取得して、これらを、図13に示す集計テーブルの避難結果欄(EvacuationResult)の目的地(DestID)と、目的地毎の避難者の人数(InitialPop)とに入力する。具体的には、図13に示すように、例えば、目的地Aへ避難する避難者の人数は200人、目的地Dへ避難する避難者の人数は300人となっている。
【0078】
また、シミュレーション部606は、集計テーブルの避難結果欄の最下欄に、当該ポリゴン領域における混雑度(Congestion)を入力する。これは、図6に示す目的地毎の避難者の人数のデータテーブルから取得した収容人数(Capacity)と、目的地毎に記載された避難者の合計人数とより求めることができる。具体的には、図13に示す目的地毎の避難者の人数(InitialPop)の合計が「1000人」となっており、図6に示すポリゴン領域P5における収容人数は「1000人」となっているため、現在のポリゴン領域P5内に居る避難者の人数は収容人数と同じであることを示す混雑度「1」を入力する。
【0079】
また、シミュレーション部606は、図13に示すように、集計テーブルの避難結果欄(EvacuationResult)に、災害発生からの経過時間毎(0:00, 1:00, 2:00…)、及び避難者の目的地毎に、ポリゴン領域P5内における避難者の人数を入力する。ポリゴン領域P5内における避難者の人数は、他のポリゴン領域からの避難者の流入についても考慮したものである。
【0080】
具体的には、例えば、災害発生時から1時間後に目的地Dへ避難するポリゴン領域P5内に居る避難者の人数は、図12に示す変遷管理テーブルにおいて、災害発生時から1時間後、且つポリゴン領域P5内に居る避難者の人数を抽出する(図12の例では「0人」)。この抽出を、ポリゴン領域P5から目的地D以外の目的地へ避難する避難者についても行う。更に、ポリゴン領域P5以外を対象として作成された変遷管理テーブルについても、災害発生時から1時間後、且つポリゴン領域P5内に居る避難者の人数を抽出する。
【0081】
そして、シミュレーション部606は、全てのポリゴン領域についての変遷管理テーブルから抽出した、災害発生時から1時間後、且つポリゴン領域P5内に居る避難者の人数を合算する。この合算結果を、図13に示す集計テーブルの避難結果欄(EvacuationResult)の「目的地D」及び「災害発生時から1時間経過(1:00)」に対応する欄に入力する(図13に示す例では「200人」)。これを所定の時間毎(ここでは1時間毎)に行う。
【0082】
このように、図12に示す変遷管理テーブルに基づいて、図13に示すポリゴン領域における目的地毎の避難者の人数の変遷を算出する。この集計テーブルの避難結果欄(EvacuationResult)に記載された人数が「0人」となった時間が、「0人」となった目的地の方向に避難する避難者が当該ポリゴン領域内に居なくなったことを示す。また、この「0人」になった時間が、集計テーブルの避難計画欄(EvacuationPlan)における避難の終了時間(EndTime)となる。
【0083】
また、シミュレーション部606は、図13に示す集計テーブルの避難結果欄(EvacuationResult)に記載された目的地毎の避難者の人数を、1時間毎に合計し、混雑度を算出する。例えば、災害発生から1時間後において、ポリゴン領域P5内に居る各目的地へ向かう避難者の人数を合計(2000人)し、混雑度「2」を入力する。ここでは、図6に示すポリゴン領域P5における収容人数は「1000人」となっているため、現在のポリゴン領域P5内に避難者の人数は「2000人」であり、収容人数の2倍の人数がポリゴン領域P5内に居ることを示す混雑度「2」を入力する。
【0084】
このように、シミュレーション部606は、図12に示すような変遷管理テーブルをポリゴン領域毎に作成して、災害発生時においてポリゴン領域内に居た避難者の避難状態をシミュレーションする。そして、シミュレーション部606は、変遷管理テーブルに基づいて、ポリゴン領域毎に、他のポリゴン領域からの避難者の流入も考慮した避難者の避難状態を算出する。
【0085】
点数算出部607は、要援護者人数算出部602によって算出された要援護者数と、避難先別人数算出部604によって算出された避難者の人数と、シミュレーション部606によるシミュレーション結果とに基づいて避難計画を評価するための点数を算出する。
【0086】
具体的には、点数算出部607は、要援護者数が避難所等に多く残っている場合には、評価が低い点数を算出する。要援護者数が多い場合には、バス等によって要援護者を目的地まで搬送する避難経路を新たに作成することにより、要援護者数に関する評価の点数を向上させることができる。バス等による新たな避難経路の作成について、詳しくは後述する。
【0087】
また、点数算出部607は、避難者の人数が多い場合には、評価が低い点数を算出する。
【0088】
また、点数算出部607は、シミュレーション部606によるシミュレーション結果として、帰宅先へ避難する避難者が避難に要する平均時間と、帰宅先へ避難する避難者が避難に要する時間の分散度合いと、避難者の人数より求めたポリゴン領域内の混雑度の平均値と、避難者の人数より求めたポリゴン領域内の混雑度の分散度合いとに基づいて、避難計画を評価するための点数を算出する。
【0089】
具体的には、帰宅先へ避難する避難者が避難に要する平均時間とは、図13に示す集計テーブルの避難の終了時間(EndTime)や、避難結果欄(EvacuationResult)に記載された避難者の人数の変遷等に基づいて算出することができる。避難に要する平均時間が長い場合には、評価が低い点数を算出する。
【0090】
また、帰宅先へ避難する避難者が避難に要する時間の分散度合いとは、図13に示す集計テーブルの避難結果欄(EvacuationResult)に記載された避難者の人数の変遷より求めることができる。例えば、避難終了までに要する時間のばらつきが大きい、即ち、最初に目的地に到着する避難者と最後に目的地に到着する避難者との間の時間差が大きい場合には、評価が低い点数を算出する。
【0091】
また、避難者の人数より求めたポリゴン領域内の混雑度の平均値とは、図13に示す集計テーブルの避難結果欄(EvacuationResult)に記載された時間毎の混雑度(Congestion)の値より求めることができる。例えば、混雑度の平均値が高い場合には、評価が低い点数を算出する。
【0092】
また、避難者の人数より求めたポリゴン領域内の混雑度の分散度合いとは、図13に示す集計テーブルの避難結果欄(EvacuationResult)に記載された時間毎の混雑度(Congestion)の値より求めることができる。例えば、ある時間帯に、混雑した状態が集中している場合には、評価が低い点数を算出する。
【0093】
また、点数算出部607は、避難経路データベース612に記憶された避難経路のデータテーブルにおけるコストの合計値に基づいて算出される、避難者が帰宅先へ避難する際の総移動距離に基づいて、避難計画を評価するための点数を算出する。具体的には、帰宅先までの総移動距離が長い場合には、評価が低い点数を算出する。
【0094】
このようにして算出された評価項目毎の点数を、評価項目毎に重み付けを行い、当該避難計画における点数を算出する。このような評価アルゴリズムとして、例えば、AHP(Analytic Hierarchy Process)法等を用いることができる。
【0095】
点数算出部607によって避難計画の点数が算出された後、条件を変えて、再びシミュレーション部606によって避難計画のシミュレーションを行う。このように、複数の避難計画のシミュレーションを行い、それぞれの避難計画毎に点数を算出することで、より最適な避難計画を得ることができる。以下に、再度シミュレーションを行う際に変更する条件について説明する。
【0096】
再度シミュレーションを行う際に変更する条件として、シミュレーション部606におけるシミュレーションにおいて、避難者が避難を開始する避難開始時間を変更することがある。現実には、誘導員が指示等を出すことにより、避難の開始時間を変更することが想定される。これをシミュレーションする場合には、図13に示す集計テーブルにおける避難計画欄(EvacuationPlan)の避難の開始時間(StartTime)の値を変更する。即ち、図10〜図12に示す変遷管理テーブルにおいて、避難者の人数を変化させる開始時間を変更する。
【0097】
図14は、ポリゴン領域P5において避難開始時間を変更した変遷管理テーブルを示す図であり、図15は、ポリゴン領域P5において避難開始時間を変更した集計テーブルを示す図である。例えば、災害発生時にポリゴン領域P5内に居る避難者が目的地Dへ避難する際の避難開始時間を災害発生時から2時間後とする場合、図15に示す集計テーブルは、避難計画欄(EvacuationPlan)の目的地D(Dest_D)へ向かう避難者の開始時間(StartTime)が「2:00」となる。また、図14に示す変遷管理テーブルは、2時間後(Pop_at2:00)から、避難者の避難を開始する、即ち「Pop_at0:00」〜「Pop_at2:00」までは、ポリゴン領域P5内の避難者の人数は300人の状態が維持される。
【0098】
また、再度シミュレーションを行う際に変更する他の条件として、避難先別人数算出部604によって算出される避難者の避難先を変更することがある。具体的には、避難先別人数算出部604が図6に示す避難先別の人数を含むデータテーブルを作成する際に、例えば、目的地A(Dest_A)に避難する避難者を避難所である目的地E(Dest_E)に避難させる(目的地Aの避難者の人数を減らし、目的地Eの避難者の人数を増やす)こと等がある。現実には、道路に案内看板を設置したり、誘導員によって避難経路を避難する避難者を誘導したりすることにより、避難者の避難先を変更することが想定される。
【0099】
また、再度シミュレーションを行う際に変更する他の条件として、避難経路抽出部605によって、ある目的地へ避難する際の避難経路が複数抽出されている場合、シミュレーション部606は、ある目的地へ避難する避難者を避難経路毎に配分する比率を変更することがある。現実には、道路に案内看板を設置したり、誘導員によって避難経路を避難する避難者を誘導したりすることにより、避難経路毎の人数を変えることが想定される。
【0100】
これをシミュレーションする場合、シミュレーション部606は、一方の避難経路上のリンクに付与されたコストを変更してシミュレーションを行うことができる。このシミュレーションは、避難経路に付与されたコストに基づいて、避難経路毎に避難者の分配が行われる。
【0101】
例えば、2つ避難経路のコストが同じである場合、シミュレーション部606は、各避難経路を同じ人数の避難者が通って避難するものとしてシミュレーションを行う。また、2つの避難経路のコストが異なる場合、シミュレーション部606は、コストが少ない方の避難経路を多くの避難者が通って避難するものとしてシミュレーションを行う。このように、避難経路が複数存在する場合、避難経路のコストを変更することにより、各避難経路を通って避難する避難者の人数の配分比率を変更することができる。コストを変更する以外にも、各避難経路を通って避難する避難者の人数を直接設定することもできる。
【0102】
また、再度シミュレーションを行う際に変更する他の条件として、避難経路抽出部605によって、ある目的地へ避難する際の避難経路が複数抽出されている場合、前回シミュレーションを行った際に用いた避難経路とは異なる新たな避難経路を選択することがある。
【0103】
具体的には、図9に示す避難経路のデータテーブルのように、ポリゴン領域P5から目的地Dへ向かう避難経路が2つ(避難経路01,02)存在する場合、避難経路01に基づいてシミュレーションを行った後、次に避難道路02に基づいてシミュレーションを行う。なお、複数の避難経路が存在する場合、混雑緩和の効果がより大きい避難経路を、避難の際に利用する道路として選択することが好ましい。
【0104】
次に、上記の条件変更によりシミュレーションを行う場合の具体例について説明する。例えば、災害発生時において避難者の人数が所定値よりも多いポリゴン領域については、他のポリゴン領域領域に比べて避難の開始タイミングを早くする。また、例えば、ポリゴン領域内に要援護者の人数が多い場合、当該ポリゴン領域内の避難者が優先的に避難所に避難できるように、避難先毎の避難者の人数を変更する。
【0105】
また、避難所へ向かう避難者の数が、避難所情報データベース603に記憶された避難所の収容人数を超えている場合には、当該避難所を目的地とする避難者を他の目的地へ避難する様に避難先を変更する。
【0106】
また、あるポリゴン領域内の混雑度が高い場合、混雑度が低くなるように条件を変更してシミュレーションを行う。より詳細には、まず、ポリゴン領域毎に作成された集計テーブル(図13参照)の混雑度(Congestion)を参照し、混雑度が最大となるポリゴン領域及びその時の時間を抽出する。ここでは、図13に示すように、ポリゴン領域P5において災害発生から1時間後の混雑度「2」が、最も高い混雑度であるものとする。
【0107】
次に、ポリゴン領域毎に作成された変遷管理テーブル(図12等参照)を参照し、災害発生から1時間後にポリゴン領域P5内に避難者が最も多く居る避難経路を抽出する。ここで、図16に、変遷管理テーブルを示す。図16に示す変遷管理テーブルは、ポリゴン領域P8から目的地Dへ避難する場合を示すものであり、避難経路20(PathID:Path20)として、ポリゴン領域P6からポリゴン領域P5、ポリゴン領域P4、ポリゴン領域P1を経由して目的地Dへ避難する場合を示している。ここでは、図16に示すように、災害発生から1時間後にポリゴン領域P5内に居る避難者の人数「800人」が、他のポリゴン領域について作成された変遷管理テーブルの中で最も避難が多いものとし、この避難者の人数が最も多い避難経路20を抽出する。
【0108】
避難経路の抽出後、図17に示す集計テーブルのように、シミュレーション部606が、避難計画ID「Plan02」のシミュレーションを行う場合、目的地Dへ向かう避難経路20に割り振られていた避難者「1000人」を、避難経路20(PathID:Path20)と避難経路21(PathID:Path21)とにそれぞれ500人ずつの避難者の人数が割り振られるように、人数の配分を変更する。或いは、目的地Dへ向かう避難経路20の避難開始時間を、例えば「0:00」から「2:00」に変更する。
【0109】
或いは、図18に示す、新規リンクを追加したポリゴン領域及び目的地のように、ポリゴン領域P8からポリゴン領域P7へ繋がる新たな道路(リンク)を設定してもよい。この新たな道路として、一般の道路を避難道路として設定することができる。この新たな道路として、災害状況(予測される災害状況)を示すハザードマップと、道路の情報とに基づいて災害発生時に利用できる道路を抽出し、抽出した道路を用いることができる。また、この新たな道路として、水上交通路や鉄道も新たな経路(リンク)とすることができる。このようにして、災害発生から1時間後にポリゴン領域P5内に居る避難者の人数を少なくし、混雑度を下げる。
【0110】
また、通行止めとなっていた道路が復旧した場合や、火災等により道路が通行止めとなった場合等を考慮して、避難のシミュレーションを行うこともできる。具体的には、避難経路抽出部605が、避難経路のデータテーブルに、復旧された道路を含む避難経路の避難経路IDを追加したり、通行止めとなった道路を含む避難経路の避難経路IDを削除したりする。シミュレーション部606は、復旧や通行止めとなった道路が考慮された避難経路のデータテーブルに基づいて、シミュレーションを行う。
【0111】
また、避難者が避難する際に、バスや鉄道等の輸送機関を利用することが想定できる。この場合には、行政等により定められた避難道路に基づいて作成された避難経路のデータテーブル(図9参照)に、輸送機関の路線(リンク)を用いて作成された避難経路を加えることができる。この輸送機関による避難経路についても、火災等により不通となった路線が復旧した場合や、不通となった場合を考慮して、避難経路のデータテーブルに避難経路IDの追加や削除を行う。このとき、輸送機関の輸送量を考慮して、避難計画のシミュレーションを行うことができる。また、ポリゴン領域と目的地とを繋ぐバス等の路線(リンク)を新たに追加することができる。これにより、例えば、避難所に多くの要援護者が残っている場合に、要援護者をバスによって目的地へ搬送する等の避難計画をシミュレーションすることができる。
【0112】
また、避難者が避難を開始するタイミングを示す時差避難基準として、例えば、基準A1:即座に避難を開始する、基準A2:所定時間毎に所定人数ずつ避難を開始する、という基準が考えられる。そこで、例えば、避難の際に利用する避難道路、徒歩で避難する避難者の徒歩避難速度(例えば、時速3km)、及び時差避難基準としての基準A1,A2に基づいて、時差避難基準毎に避難のシミュレーションを行い、各地域での災害発生後の通過人数を算出する。
【0113】
このような時差避難基準毎のシミュレーション結果に対し、避難経路付近にある帰宅支援ステーションの収容人数、帰宅支援ステーションの利用頻度、避難経路のキャパシティ、避難経路付近にある一時収容所のキャパシティの条件を加味することにより、避難者が避難を行う際に、帰宅支援ステーション、避難経路、及び一時収容所の各キャパシティを超えるか否かを判断する。この帰宅支援ステーション等のキャパシティを超えない時差避難基準を、避難に適した時差避難基準として算出することができる。ここで、帰宅支援ステーションとは、例えば、避難経路付近にあるコンビニエンスストア、ガスステーション等、避難の際に水や食料等を提供することができる場所を指す。帰宅支援ステーションのキャパシティとは、避難者に提供する水等の備蓄量を含めることもできる。また、一時収容所とは、避難経路付近にある、一時的に避難者を収容可能な場所を指す。
【0114】
この避難に適した時差避難基準に基づいて行われたシミュレーション結果に対して、点数算出部607が高い点数を付与することができる。このような避難に適した時差避難基準によって避難を行う場合には、避難者が通過する地域での混雑度合いを平準化することができ、帰宅支援ステーション等の防災施設の数を最小限に抑えることができる。なお、上述した時差避難基準は一例であり、これ以外の基準を用いることもできる。
【0115】
また、避難者が避難を行う際の避難手段(徒歩、バス等の輸送機関の利用等)として、例えば、現在位置から目的地までの距離に基づいて設定することができる。避難手段を選択する際の基準となる避難方法基準を、例えば、基準B1として、目的地までの距離が10km未満の避難者は徒歩で避難する、目的地までの距離が10km以上30km未満の避難者はバス等の輸送手段で避難する、目的地までの距離が30km以上の避難者は一時収容所へ避難する、という条件を設定する。また、基準B2として、目的地までの距離が10km未満の避難者は徒歩で避難する、目的地までの距離が10km以上20km未満の避難者はバス等の輸送手段で避難する、目的地までの距離が20km以上の避難者は一時収容所へ避難する、という条件を設定する。このような基準B1,B2と、避難の際に利用する避難道路、徒歩で避難する避難者の徒歩避難速度(例えば、時速3km)に基づいて、避難方法基準毎に避難のシミュレーションを行い、各地域での災害発生後の通過人数を算出する。
【0116】
このような避難方法基準毎のシミュレーション結果に対し、避難経路付近にある帰宅支援ステーションの収容人数、帰宅支援ステーションの利用頻度、避難経路のキャパシティ、避難経路付近にある一時収容所のキャパシティ、バス等の輸送手段のキャパシティ(輸送能力)の条件を加味することにより、避難者が避難を行う際に、帰宅支援ステーション、避難経路、一時収容所、輸送手段の各キャパシティを超えるか否かを判断する。この帰宅支援ステーション等のキャパシティを超えない避難方法基準を、避難に適した避難方法基準として算出することができる。
【0117】
この避難に適した避難方法基準に基づいて行われたシミュレーション結果に対して、点数算出部607が高い点数を付与することができる。このような避難方法基準によって避難を行う場合には、避難者が通過する地域での混雑度合いを平準化することができ、帰宅支援ステーションや輸送手段等の防災施設の数を最小限に抑えることができる。なお、上述した避難方法基準は一例であり、これ以外の基準を用いることもできる。
【0118】
また、現在位置から目的地までの避難のシミュレーションを行う際に、上述した時差避難基準のうち最も避難に適した時差避難基準と、上述した避難方法基準のうち最も避難に適した避難方法基準とを用い、目的地まで続く複数の避難経路のうち、どの避難経路を通って帰る場合が最も混雑度合いが少ないかを判断することができる。具体的には、例えば、最も避難に適した時差避難基準と、最も適した避難方法基準と、目的地までの避難経路C1とに基づいて避難のシミュレーションを行う。同様に、避難に最も適した時差避難基準と、最も適した避難方法基準と、目的地までの避難経路C2とに基づいて避難のシミュレーションを行う。
【0119】
このようにして算出された避難経路毎のシミュレーション結果に基づいて、当該避難経路における避難者の混雑度合いを算出する。そして、避難者の混雑度合いが小さい避難経路を、混雑緩和の効果が大きい避難経路として利用する(点数算出部607が当該シミュレーション結果に対して高い点数を付与する)ことができる。この場合には、避難者が通過する地域での混雑度合いを更に緩和することができる。
【0120】
以上のようなシミュレーションの条件変更は、情報分析装置600において自動的に行ってもよく、操作者によって条件を直接変更することもできる。
【0121】
出力部608は、点数算出部607によって算出された点数が、予め定められた出力条件を満たす場合に、出力条件を満たす点数が付与された要援護者数、避難者の人数、シミュレーション結果、及び避難者が帰宅先へ避難する際の総移動距離等を有力な避難計画として出力する。この有力な避難計画を選択する際に、例えば、算出された点数が所定点数以上の避難計画を有力な避難計画として選択したり、例えば、ニュートン法を用いて、10回程度条件を変更してシミュレーションを行い、算出されている点数以上の点数を有する避難計画が得られなくなった場合に、最も高い点数が付与された避難計画を有効な避難計画として選択したりする。なお、最有力の避難計画を出力する以外にも、点数算出部607によって点数が算出される毎に、当該点数を出力することもできる。
【0122】
次に、情報分析装置600で行われる処理の流れを説明する。図19は、情報分析装置で行われる処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、予め、目的地情報算出部609によって目的地情報のデータテーブル(図5参照)が算出され、算出された目的地情報のデータテーブルを目的地情報データベース610が記憶しているものとする。
【0123】
まず、要援護者人数算出部602が、移動機100の位置登録情報等を用いて、ポリゴン領域毎に、避難の際に援護を要する要援護者の人数を算出する(ステップS101:要援護者人数算出ステップ)。次に、避難先別人数算出部604が、移動機100の位置登録情報等を用いて、ポリゴン領域毎に、ポリゴン領域内の避難者が目的地へ避難する目的地毎の人数と、ポリゴン領域内の避難者が避難所へ避難する避難所毎の人数とを算出する(ステップS102:避難先別人数算出ステップ)。
【0124】
次に、避難経路抽出部605が、ポリゴン領域から目的地及び避難所へそれぞれ避難者が避難する際に経由するポリゴン領域を避難経路として抽出する(ステップS103:避難経路抽出ステップ)。次に、シミュレーション部606が、帰宅先及び避難所へ避難者が避難する場合のシミュレーションを行う(ステップS104:シミュレーションステップ)。
【0125】
次に、点数算出部607は、要援護者数と、避難者の人数と、シミュレーション結果とに基づいて避難計画を評価するための点数を算出する(ステップS105:点数算出ステップ)。
【0126】
次に、出力部608は、点数算出部607によって算出された点数が、予め定められた出力条件を満たすか否かを判断する(ステップS106)。点数が出力条件を満たさない場合(ステップS106:NO)、ステップS102の処理へ戻る。そして、上述のように、避難先別人数算出部604が目的地及び避難先へ避難する人数の配分を変更したり(ステップS102)、シミュレーションの条件を変更したりして、シミュレーション部606において再度、避難のシミュレーションを行う(ステップS104)。
【0127】
点数算出部607で算出された点数が、出力条件を満たす場合(ステップS106:YES)、出力部608は、出力条件を満たす避難計画を有力な避難計画として出力する(ステップS107)。
【0128】
次に、本実施形態に係る移動通信システム10の作用効果について説明する。移動通信システム10によれば、移動機100のユーザの属性情報に基づいて避難時における要援護者の人数が算出され、更に、帰宅先及び避難所へ避難する避難者の人数が算出される。また、シミュレーション部606によって、所定エリアXを複数に分割したそれぞれのポリゴン領域P1〜P9から、帰宅先及び避難所へ避難者が避難する場合のシミュレーションが行われる。そして、点数算出部607によって、要援護者数、避難者の人数、及びシミュレーション結果に基づいて避難計画のための点数が算出される。このように、避難計画のための点数を算出することができるため、算出された点数に基づいて、より最適な避難計画が策定されているか否かを判断することができる。
【0129】
また、シミュレーション部606により、シミュレーション結果として、帰宅先へ避難する避難者が避難に要する平均時間と、帰宅先へ避難する避難者が避難に要する時間の分散度合いと、避難者の人数より求めた分割領域内の混雑度の平均値と、避難者の人数より求めた分割領域内の混雑度の分散度合いとが算出され、算出されたこれらの結果に基づいて点数算出部607により点数が算出される。これにより、算出されたこれらの値に基づいて、より精度良く、避難計画のための点数を算出することができる。
【0130】
また、点数算出部607により、避難者が帰宅先へ避難する際の総移動距離に基づいて点数の算出が行われる。これにより、より精度良く、避難計画のための点数を算出することができる。
【0131】
また、点数算出部607によって点数が算出された後、更に、シミュレーション部606により、避難開始時間を変更してシミュレーションが行われる。これにより、避難開始時間が異なる避難のシミュレーションが行われ、当該シミュレーションの結果に基づいて、避難開始時間が異なる避難計画について点数を算出することができる。
【0132】
また、点数算出部607によって点数が算出された後、更に、シミュレーション部606により、避難者の避難先を変更してシミュレーションが行われる。これにより、避難先が異なる避難のシミュレーションが行われ、当該シミュレーションの結果に基づいて、避難先が異なる避難計画について点数を算出することができる。
【0133】
また、一の帰宅先又は避難所へ避難する際の避難経路が複数抽出されている場合、点数算出部607によって点数が算出された後、更に、シミュレーション部606により、一の帰宅先又は避難所へ避難する避難者を複数の避難経路毎に配分する比率を変更してシミュレーションが行われる。これにより、複数の避難経路毎に避難者を配分する比率が変更された避難のシミュレーションが行われ、当該シミュレーションの結果に基づいて、複数の避難経路毎に避難者の配分比率が異なる避難計画について点数を算出することができる。
【0134】
また、一の帰宅先又は避難所へ避難する際の避難経路が複数抽出されている場合、点数算出部607によって点数が算出された後、更に、シミュレーション部606により、新たな避難経路に基づいてシミュレーションが行われる。これにより、新たな避難経路に基づいて避難のシミュレーションが行われ、当該シミュレーションの結果に基づいて、新たな避難経路を避難者が避難する避難計画について点数を算出することができる。
【0135】
また、点数算出部607によって算出された点数が、予め定められた出力条件を満たす場合に、出力部608よって、出力条件を満たす点数が付与された要援護者数、帰宅先へ避難する避難者の人数、シミュレーション結果、及び避難者が帰宅先へ避難する際の総移動距離が出力される。これにより、出力条件を満たす点数が付与されたシミュレーション結果等が出力され、出力された情報を利用することができる。
【0136】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、シミュレーション部606において、ポリゴン領域から目的地へ向かう避難経路を選択する際に、リンクのコストに基づいて選択する以外の方法を用いてもよい。具体的には、ポリゴン領域毎に、一の目的地を帰宅先とする移動機100のユーザの人数を算出し、一の目的地を帰宅先とするユーザが多いポリゴン領域を経由する経路を、一の目的地へ避難する際の避難経路とすることもできる。一の目的地と帰宅先とするユーザが多いポリゴン領域は、このポリゴン領域から一の目的地への行き来がし易い(例えば、幹線道路又は電車が通っている等)と考えられる。このため、このようなポリゴン領域を経由する経路を避難経路とすることにより、避難を容易に行うことができる避難経路を選択することができる。
【0137】
或いは、時間帯によってリンクのコストが変化してもよい。具体的には、火災の影響を考慮して、火災が予想される時間帯に火災が予想されるポリゴン領域を経由するリンクのコストを大きくして、当該リンクを含む避難経路を選択されなくすることもできる。また、災害による経路の一時的断絶と復旧を考慮して、災害発生直後はリンクのコストを高く、災害復旧が予想される時刻以降はコストを低く設定し、経路の復旧後は当該リンクを含む避難経路として選択されやすくすることもできる。
【符号の説明】
【0138】
10…移動通信システム、100…移動機、601…属性情報データベース、602…要援護者人数算出部、603…避難所情報データベース、604…避難先別人数算出部、605…避難経路抽出部、606…シミュレーション部、607…点数算出部、608…出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動機のユーザ毎に、前記ユーザの帰宅先及び前記ユーザが避難の際に援護を要するか否かを属性情報として記憶する属性情報記憶手段と、
所定エリアを複数に分割した分割領域毎に、前記分割領域内の移動機のユーザ数、前記属性情報記憶手段に記憶された属性情報に基づいて、避難の際に援護を要する要援護者の人数を算出する要援護者人数算出手段と、
避難所の設置位置を示す避難所情報を記憶する避難所情報記憶手段と、
前記分割領域内の移動機のユーザ数、前記属性情報記憶手段に記憶された属性情報、及び前記避難所情報記憶手段に記憶された避難所情報に基づいて、前記分割領域毎に、前記分割領域内の避難者が帰宅先へ避難する帰宅先毎の人数、及び前記分割領域内の避難者が避難所へ避難する避難所毎の人数を算出する避難先別人数算出手段と、
前記分割領域から前記帰宅先及び前記避難所へそれぞれ避難者が避難する際に経由する前記分割領域を避難経路として抽出する避難経路抽出手段と、
それぞれの前記分割領域から前記避難経路を経由して前記帰宅先及び前記避難所へ前記避難者が避難する場合のシミュレーションを行うことにより、前記分割領域毎に当該分割領域内における前記避難者の人数の変遷を示す変遷管理テーブルを作成するシミュレーション手段と、
前記要援護者数、前記避難者の人数、及び前記シミュレーション手段によるシミュレーション結果に基づいて避難計画のための点数を算出する点数算出手段と、
を備えることを特徴とする避難計画評価システム。
【請求項2】
前記シミュレーション手段は、前記シミュレーション結果として、前記帰宅先へ避難する避難者が避難に要する平均時間と、前記帰宅先へ避難する避難者が避難に要する時間の分散度合いと、前記避難者の人数より求めた前記分割領域内の混雑度の平均値と、前記避難者の人数より求めた前記分割領域内の混雑度の分散度合いと、の少なくともいずれかを算出することを特徴とする請求項1に記載の避難計画評価システム。
【請求項3】
前記避難経路抽出手段は、前記避難者が前記帰宅先へ避難する際の総移動距離を更に算出し、
前記点数算出手段は、更に、前記総移動距離に基づいて前記点数を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の避難計画評価システム。
【請求項4】
前記点数算出手段によって点数が算出された後、更に、前記シミュレーション手段は、避難開始時間を変更して前記シミュレーションを行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の避難計画評価システム。
【請求項5】
前記点数算出手段によって点数が算出された後、更に、前記避難先別人数算出手段は、前記避難者の避難先を変更し、前記変更された避難先に基づいて前記シミュレーション手段が前記シミュレーションを行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の避難計画評価システム。
【請求項6】
前記避難経路抽出手段によって、一の前記帰宅先又は前記避難所へ避難する際の避難経路が複数抽出され、
前記点数算出手段によって点数が算出された後、更に、前記シミュレーション手段は、前記一の帰宅先又は避難所へ避難する避難者を前記複数の避難経路毎に配分する比率を変更して前記シミュレーションを行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の避難計画評価システム。
【請求項7】
前記避難経路抽出手段によって、一の前記帰宅先又は前記避難所へ避難する際の避難経路が複数抽出され、
前記点数算出手段によって点数が算出された後、更に、前記シミュレーション手段は、新たな避難経路に基づいて前記シミュレーションを行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の避難計画評価システム。
【請求項8】
前記点数算出手段によって算出された前記点数が、予め定められた出力条件を満たす場合に、前記出力条件を満たす点数が付与された前記要援護者数、前記避難者の人数、及び前記シミュレーション手段によるシミュレーション結果を出力する出力手段を更に備えることを特徴とする請求項1,2,4〜7のいずれか一項に記載の避難計画評価システム。
【請求項9】
前記点数算出手段によって算出された前記点数が、予め定められた出力条件を満たす場合に、前記出力条件を満たす点数が付与された前記要援護者数、前記避難者の人数、前記シミュレーション手段によるシミュレーション結果、及び前記避難者が前記帰宅先へ避難する際の総移動距離を出力する出力手段を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の避難計画評価システム。
【請求項10】
移動機のユーザ毎に、前記ユーザの帰宅先及び前記ユーザが避難の際に援護を要するか否かを属性情報として記憶する属性情報記憶手段と、避難所の設置位置を示す避難所情報を記憶する避難所情報記憶手段と、を備える避難計画評価システムにおける避難計画評価方法であって、
所定エリアを複数に分割した分割領域毎に、前記分割領域内の移動機のユーザ数、前記属性情報記憶手段に記憶された属性情報に基づいて、避難の際に援護を要する要援護者の人数を算出する要援護者人数算出ステップと、
前記分割領域内の移動機のユーザ数、前記属性情報記憶手段に記憶された属性情報、及び前記避難所情報記憶手段に記憶された避難所情報に基づいて、前記分割領域毎に、前記分割領域内の避難者が帰宅先へ避難する帰宅先毎の人数、及び前記分割領域内の避難者が避難所へ避難する避難所毎の人数を算出する避難先別人数算出ステップと、
前記分割領域から前記帰宅先及び前記避難所へそれぞれ避難者が避難する際に経由する前記分割領域を避難経路として抽出する避難経路抽出ステップと、
それぞれの前記分割領域から前記避難経路を経由して前記帰宅先及び前記避難所へ前記避難者が避難する場合のシミュレーションを行うことにより、前記分割領域毎に当該分割領域内における前記避難者の人数の変遷を示す変遷管理テーブルを作成するシミュレーションステップと、
前記要援護者数、前記避難者の人数、及び前記シミュレーションステップにおけるシミュレーション結果に基づいて避難計画のための点数を算出する点数算出ステップと、
を備えることを特徴とする避難計画評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−83908(P2012−83908A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228727(P2010−228727)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】