説明

還元処理方法及び還元処理装置

【課題】処理品の種類に対応して、乾留、水性ガス反応処理、真空還元処理等を施し、有価金属の高純度での回収、並びに、ハロゲン化物からの公害物質の除去、排ガス中のCOガスの除去等の処理をなし得る還元処理方法及び装置を提供する。
【解決手段】公害物、有価物等を含む廃棄物、酸化物、再利用品等の処理品を処理して無害化すると共に、高純度に有価物を回収するための装置であって、処理品のライン内搬入段4、処理品を乾留する乾留室9、処理品に対し水性ガス反応を起こさせて還元ガスを発生させる反応室16、処理品を、所定温度及び所定真空度にて、乾留室9及び反応室16で発生させた還元ガスや炭素質固体を用いて真空下で還元して還元分離と還元蒸発分離を行うための真空還元室23、真空還元処理した未蒸発還元処理品を冷却するための冷却室27、及び、冷却処理した処理品を搬出する手段32をこの順に配設して成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元処理方法及び還元処理装置、より詳細には、例えば、製鉄中に生ずる種々の酸化物、医療廃棄物、アスベスト等の公害品その他各種の廃棄物、酸化物、再利用品等を処理して、鉄、亜鉛、鉛、銅その他の有価金属を還元分離し、あるいは、還元蒸発分離して高純度に回収し、同時に、ダイオキシン、PCB等の有害酸化物を無害化するための、還元処理方法及び還元処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有価金属を効率的に回収するための方法が種々提案されている。例えば、鉄の酸化物や亜鉛酸化物から鉄や亜鉛を高純度に回収する方法としては、回転炉床炉を用いる方法(以下「RHF法」とする)が知られている。このRHF法は、製鉄時にできる酸化物の鉄粉を含む原料と石炭を利用して直接還元鉄(DRI)を製造するための方法で、製鉄ダストやスラッジ類は、還元に適した大きさに塊成化されて回転炉内に装入される。回転炉内はバーナーの燃焼熱で高温にされ、塊成化原料は内部のコークスを還元材として還元される。この時、亜鉛分は還元、気化により除去され、二次ダストとして回収され、残った鉄分は、低亜鉛で高金属化率のDRIとして、高炉や溶解炉においてのリサイクルが可能になる。
【0003】
このRHF法は、1200℃以上の高温で処理するものであるので、省エネルギーの面で劣り、また、設備費及びランニングコストが嵩むという問題がある(例えば、特開平11−279611号公報、特開2003−236517号公報参照)。
【0004】
また、真空加熱蒸発処理によって有価物を回収する方法が種々提案されている(特許第3149284号公報、特許第3763557号公報等)。
【0005】
しかし、この提案されている方法においては、処理される廃棄物等がある程度限定されていて、処理品の種類に対応して処理の態様が変わるというものではなく、また、有価物の回収と共に、有害物質等の無害化処理等を有効に効率よく処理し得るものでもない。
【0006】
【特許文献1】特開平11−279611号公報
【特許文献2】特開2003−236517号公報
【特許文献3】特許第3149284号公報
【特許文献4】特許第3763557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、減圧下で処理することにより沸点を下げることで、比較的低温にての処理が可能となり、設備費及びランニングコストも比較的低廉な方法及び装置であって、家庭ごみ、種々の産業廃棄物、医療廃棄物、酸化物、再利用品等の処理品の種類に対応して、乾留、水性ガス反応処理、真空還元処理等を施すことにより、有価金属の高純度での回収、並びに、ハロゲン化物からの公害物質の除去、排ガス中のCOガスの除去等の処理を有効になし得る、還元処理方法及び還元処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、公害物、有価物等を含む廃棄物、酸化物、再利用品等の処理品を処理して無害化すると共に、高純度に有価物を回収するための方法であって、前記処理品をライン内へ搬入する工程、必要に応じて前記処理品を乾留する工程、必要に応じて前記乾留工程を経た処理品に対し、水性ガス反応を起こさせて還元ガスを発生させる反応工程、前記乾留工程及び反応工程を経た処理品、あるいは、前記乾留工程及び反応工程を経ない処理品を、所定温度及び所定真空度にて、還元ガス及び/又は炭素質固体を用い、あるいは、還元ガス及び炭素質固体を用いることなく真空還元処理することにより、還元分離と還元蒸発分離を行う真空還元工程、前記真空還元工程を経た未蒸発還元処理品を冷却する工程、並びに、前記冷却工程を経た処理品を搬出する工程から成ることを特徴とする還元処理方法である。
【0009】
前記真空還元処理に用いる還元ガスとして、前記乾留工程及び/又は反応工程において発生させた還元ガスを用いるようにすることができる。好ましくは、前記乾留工程の前に予熱工程を含み、前記予熱工程と前記乾留工程間、前記乾留工程と前記反応工程間、前記反応工程と前記真空還元工程間、及び、前記冷却工程と前記搬出工程間にそれぞれ、不活性ガスパージ工程を介在させ、更に、前記ライン内搬入工程に先立ち、処理品を微細化又は粉体化する工程を含める。また、好ましくは、前記乾留工程は、400〜500℃までチッ素ベースで常圧加熱昇温させて行うものとされ、前記真空還元工程は、設定温度まで昇温させると共に設定真空度に減圧して、還元分離及び還元蒸発分離を行うものとされる。
【0010】
更に、前記反応工程における反応は、前記乾留工程において生成されるコークスその他の炭素質固体及び水分を利用して行なうものとすることができ、前記乾留工程は、常圧チッ素ベースで加熱昇温を行なうものとし、前記反応工程は、該工程において発生するCOを除去する工程を含むものとすることができる。また、前記冷却工程において用いる不活性ガス中に、0.1Torr〜20Torrの範囲で還元ガスを供給することが好ましい。前記乾留工程及び/又は反応工程において発生させた還元ガスは、燃料発電用に利用することができる。
【0011】
前記処理品は、例えば合金であり得る。処理対象となる合金として、例えば、黄銅(真鍮)を挙げることができ、その場合は、前記真空還元工程において、先ず処理温度を550℃〜650℃に設定してZnを蒸発分離回収し、次いで、処理温度を950℃〜1000℃に設定してPbを蒸発分離回収し、残渣として高純度のCuを回収することができる。前記真空還元工程を経た鉄を含む処理品から高純度の鉄を回収するために、該処理品を破砕又は粉砕した後磁気吸着その他の分離手段によって鉄と不純物とを分離することができる。
【0012】
上記課題を解決するための請求項15に記載の発明は、処理品に含まれる水分とカーボン及びカーボン化合物とから還元ガスを生成する工程と、前記工程で生成された還元ガスを用いて前記処理品その他の酸化物を還元する工程とから成る還元処理方法である。
【0013】
また、上記課題を解決するための請求項16に記載の発明は、製鉄過程で生ずる、湿粉鉱、シックナースラッジ又は集塵ダスト中に含まれる水分とカーボン又はカーボン化合物を利用して還元ガスを生成する工程と、前記工程で生成された還元ガスを用いて酸化物を還元する工程とから成る還元処理方法である。この場合、前記還元ガスを生成するための水性ガス転化反応における触媒として、製鉄過程で生ずる湿粉鉱、シックナースラッジ又は集塵ダスト中に含まれる酸化鉄、酸化クロム、酸化カルシウム等の酸化物を利用することができ、
また、前記酸化物の還元工程において、メタノール、エタノール等の低級アルコールを供給して分解させて、還元を補助させると共に水性ガス転化反応を促進させることができる。その場合のメタノールとして、メタノール水溶液を用いることもある。
【0014】
上記課題を解決するための請求項20に記載の発明は、公害物、有価物等を含む廃棄物、酸化物、再利用品等の処理品を処理して無害化すると共に、高純度に有価物を回収するための装置であって、少なくとも前記処理品を処理して還元ガスを発生させるための手段と、前記還元ガス発生手段によって発生させた還元ガスを用いて前記処理品を真空還元処理する手段とを含むことを特徴とする還元処理装置である。
【0015】
また、上記課題を解決するための請求項21に記載の発明は、公害物、有価物等を含む廃棄物、酸化物、再利用品等の処理品を処理して無害化すると共に、高純度に有価物を回収するための装置であって、前記処理品をライン内へ搬入する手段、必要に応じて前記処理品を乾留するための乾留室、必要に応じて前記乾留処理した処理品に対し、水性ガス反応を起こさせて還元ガスを発生させるための反応室、前記水性ガス反応を起こさせた処理品又は前記乾留処理及び前記水性ガス反応処理を経ない処理品を、所定温度及び所定真空度にて、還元ガス及び/又は炭素質固体を用いあるいはこれらを用いることなく真空還元処理して還元分離と還元蒸発分離を行うための真空還元室、前記真空還元処理した未蒸発還元処理品を冷却するための冷却室、及び、前記冷却処理した処理品を搬出する手段、をこの順に配設して成る還元処理収装置である。
【0016】
前記真空還元室において用いる還元ガスとして、前記乾留室及び/又は反応室で発生させた還元ガスを用いることができる。好ましくは、前記乾留室の前に予熱室を配設し、前記予熱室と前記乾留室間、前記乾留室と前記反応室間、前記反応室と前記真空還元室間、及び、前記冷却室と前記搬出手段間にそれぞれ、不活性ガスパージ室を配置する。また、好ましくは、前記乾留室と前記反応室との間の前記不活性ガスパージ室に、カーボンを主体とする処理品その他の乾留を必要としない処理品の搬入手段を設け、前記反応室と前記真空還元室との間の前記不活性ガスパージ室に、乾留及び水性ガス反応処理を必要としない処理品の搬入手段と、乾留及び水性ガス反応処理後真空還元処理を必要としない処理品の搬出手段とを設ける。
【0017】
更に好ましくは、前記冷却室において冷却に用いる不活性ガス中に、0.1Torr〜20Torrの範囲で還元ガスが供給され、前記反応室及び他の部分から発生するCOを除去する手段を付設し、更に、前記還元ガス発生手段によって発生させた還元ガスを利用して発電を行う燃料発電装置を付設する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上述したとおりであって、減圧下で沸点を下げて処理を行うため、比較的低温にての処理が可能で、設備費及びランニングコストも比較的低廉な方法及び装置であり、しかも、種々の家庭ごみ、産業廃棄物、医療廃棄物、酸化物、再利用品等の処理品の種類に対応して、乾留、水性ガス反応処理、真空還元処理等を施すことにより、金属を含む酸化物等の還元分離及び還元蒸発分離処理による有価金属の高純度での回収、及び、ハロゲン化物からの公害物質の除去、排ガス中のCOガスの除去を有効になし得るものであり、特に、乾留室及び反応室で発生させた還元ガスを用いることで、上記各処理を有効且つ効率よくなし得る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態につき、添付図面に依拠して説明する。本発明に係る還元処理方法は、家庭ごみ、公害物、有価物等を含む廃棄物、酸化物、再利用品等の処理品を処理して無害化すると共に、高純度に有価物を回収するための方法であって、処理品に含まれる水分とカーボン及びカーボン化合物とから還元ガスを生成する工程と、前記工程で生成された還元ガスを用いて前記処理品その他の酸化物を還元する工程とから成るものである。
【0020】
より詳細には、本発明に係る還元処理方法は、家庭ごみ、公害物、有価物等を含む廃棄物、酸化物、再利用品等の処理品を処理して無害化すると共に、高純度に有価物を回収するための方法であって、前記処理品をライン内へ搬入する工程、必要に応じて前記処理品を乾留する工程、必要に応じて前記乾留工程を経た処理品に対し、水性ガス反応を起こさせて還元ガスを発生させる反応工程、前記乾留工程及び反応工程を経た処理品、あるいは、前記乾留工程及び反応工程を経ない処理品を、所定温度及び所定真空度にて、還元ガス及び/又は炭素質固体を用い、あるいは、還元ガス及び炭素質固体を用いることなく真空還元処理することにより、還元分離と還元蒸発分離を行う真空還元工程、前記真空還元工程を経た未蒸発還元処理品を冷却する工程、並びに、前記冷却工程を経た処理品を搬出する工程から成ることを特徴とするものである。
【0021】
図1は上記本発明に係る方法を実施するための本発明に係る装置の概略構成図であり、それは、未処理品の搬入から処理済品の搬出までが、1つの処理ラインに組み込まれたものであり、更に、COガスを除去するためのガス処理装置を付設して成るものである。
【0022】
図中1は、本装置において還元処理する処理品の未処理分をストックする未処理品ストックヤードであり、2は、処理済品をストックする処理済品ストックヤードである。未処理品ストックヤード1内の処理品は、自走駆動ローラーで構成される搬入ライン3に組み込まれた積込機4によって搬入ライン3に搬入され、計量機5を経て所定量計量された後、隣接する予熱炉6に送り込まれて予熱される。処理品は、処理効率を高めるために、本装置に搬入する前に予め微細化又は粉体化しておくことが好ましい。予熱炉6は、後続の乾留工程に先立ち、処理品が酸化しない程度(通例50〜150℃)まで処理品を加熱するためのものである。
【0023】
予熱炉6に続いて、真空ポンプを備えていて、不活性ガス(通例チッ素ガス)のパージを行う第1パージ室7が設置される。第1パージ室7においては、予熱炉6で予熱された処理品を搬入した後、不活性ガスを供給してのガス置換が行なわれる。ガス置換に伴って第1パージ室7から排出される活性ガスは、別途ガス処理装置により処理される。
【0024】
第1パージ室7の出口側には、真空扉8を介して常圧の乾留室9が連設される。この乾留室9においては、有機物を含む処理品の酸化を防ぐと共に昇温速度を速めるために、チッ素ベースでの乾留処理が行なわれる。即ち、乾留室9内においては、400〜500℃までチッ素ベースによる常圧加熱昇温が行われ、これにより、比較的低温で蒸発分解する成分、例えばHg、K、Na、HO、ハロゲン化物等の不純物が常圧除去されると共に、COとHの合成ガスが得られる。乾留室9には、凝縮装置10を介してガス処理装置11が接続される。このガス処理装置11において、NOx、SOx、有害ハロゲン化物等の処理がなされ、同時にCOが、別途装備されるCO除去装置36によって処理される。
【0025】
反応室16においては、上記乾留によって発生する処理品中のカーボン及びHOから、約1000℃で起こる水性ガス反応(C+HO→CO+H)及び約500℃で起こる水性ガス転化反応(CO+HO→CO+H)を利用して、還元ガス又は他の反応ガスとして利用するためのCOとHの合成ガスを発生させる。本発明に係る方法は、このように、有機物の乾留炭素を利用して、RHF法の場合よりは低い500〜1000℃の高温中でCOとHの合成ガスを得て利用に供するものであるため、省エネ効果があり、また、廃棄物の有効利用に寄与するものといえる。
【0026】
上記乾留処理により得られたCOとHの合成ガスは、種々の用途に利用することができる。例えば、本装置の各加熱室の加熱用として、又は、後述する本装置の反応室16及び真空還元室23における還元ガス用として、あるいは、外部発電用、燃料用等としての利用が考えられる。
【0027】
乾留室9の出口側には、真空扉12を介し、直接反応室16が連設されることもあるが、図1に示す例のように、反応室16の前に、第1パージ室7と同様の構成の第2パージ室13を介在させることが好ましい。そして、第2パージ室13には搬入路14を設け、乾留処理を必要としないピッチ、タール、カーボン等のカーボンを主成分とする処理品その他の乾留を必要としない処理品を、乾留室9を通すことなく搬入路14から第2パージ室13を通して搬入し得るようにする。
【0028】
反応室16は、真空扉15を介して第2パージ室13に連設される。反応室16においては、上述したように、ガス処理装置11から導入されるH、CO及びHOを利用して、水分をコントロールしつつ上記水性ガス反応及び水性ガス転化反応を起こさせることによって、還元ガスを発生させる。ここで発生した還元ガスは、後続の真空還元室23において利用することができる。
【0029】
この反応において水分及びカーボンの発生がない、あるいは、不足するような処理品の場合には、単体のカーボンと水分を追加することにより、あるいは、上記反応を促進させることにより、COとHの合成ガスを得る。更に、水を高温で直接分解したり、電気分解したりして得られたHガス、又は付設される水素発生装置34から供給されるH単体ガスを利用することとすることもできる。この場合、金属や金属酸化物等の触媒を利用して、反応を促進させることとしてもよい。
【0030】
乾留室9及び/又は反応室16内で発生した還元ガスの一部は、凝縮装置17及び真空ポンプ18を介して回収され、還元ガスとして、発電用、燃料用、メタノール・エタノール等の合成用等として利用される。また、そのHガスの一部を2相式燃料発電装置19に導入して、燃料発電に利用することもできる。そして、この場合、2相式燃料発電装置19における発電を利用して反応室16の電源とし、また、そこで発生したHOを反応室16内における反応に利用することができる。
【0031】
反応室16には、真空扉20を介して第3パージ室21が連設される。第3パージ室21は、第1及び第2パージ室7、13と同様のチッ素ガスパージ機能を有すると共に、真空パージ機能を有するものである。即ち、第3パージ室21には真空扉22を介して真空還元室23が連設されるので、処理品を真空還元室23に搬入する際に、真空還元室23内の真空度を低下させないように、第3パージ室21内を真空状態にする必要があるのである。そして、第3パージ室21内の真空度をポンプ類だけではコントロールできない場合には、不活性ガス(通例チッ素ガス又はアルゴンガス)が供給される。第3パージ室21は、ガスパージ室と真空パージ室とに区分けされることもある。
【0032】
乾留処理品で有価物を有しないものは、反応室16に通して還元ガスを発生させた後、真空還元室23に導入することなく、第3パージ室21に設けた搬入・搬出路35から搬出する。
【0033】
一方、処理品が金属酸化物や金属のみの場合のように、乾留室9及び反応室16を通す必要のない場合には、真空還元室23に通じる第3パージ室21の搬入・搬出路35から、直接真空還元室23内に導入するようにする。
【0034】
真空還元室23内には、乾留室9で発生した還元ガスがガス処理装置11を介して、また、反応室16で発生した還元ガスが直接導入される。そして、設定温度に昇温すると共に、設定真空度に減圧しつつ還元ガスを供給することにより、処理品が還元分離又は還元蒸発分離し、不純物が除去されて、有価物を純度の良い製品として回収することが可能となる。
【0035】
真空還元室23においては、設定温度(例えば1100℃)、設定真空度(例えば、昇温時0.001Torr以上で還元ガスパーシャル時0.001Torr)及び設定時間で還元処理が行なわれ、比較的高温で蒸発分解する成分が還元分離ないし還元蒸発分離される。かくして不純物が除去され、有価物を純度の良い製品として回収することが可能となる。
【0036】
真空還元室23からの有価物の回収は、回収装置24によって凝縮することによって行なわれ、真空ポンプ25によって吸出される公害物は、ガス処理装置に送られて処理される。また、別途CO除去装置を設置してCOを、例えばCaCO3として除去することで、究極的には温暖化防止に寄与することとなる。
【0037】
真空還元室23の出口側には真空扉26を介して冷却室27が連設される。冷却室27内には、冷却水を通流させるためのフィンチューブ等の冷却手段が配備される。冷却ガスとしてはチッ素ガスを用いるが、還元処理品の酸化を防止しつつ、ダイオキシンの再発防止のために、還元ガスを0.001%以上、好ましくは0.05%〜0.5%の範囲で混入することが好ましい。
【0038】
冷却室27には、真空扉28を介して第4パージ室29が連設され、第4パージ室29は、真空扉30を介して搬出ライン31に連結される。搬出ライン31の終端部には反転機32が設置されていて、還元処理されて冷却された処理済品は、この反転機32によって処理済品ストックヤード2に投入される。
【0039】
なお、チッ素ガスの供給にガスボンベを用いることなく、別途チッ素ガス発生装置33を配備し、そこで発生させたチッ素ガスを、乾留室9、反応室16及び各パージ室7、13、21、29に導入し、また、還元処理品を冷却するために、冷却室27に導入することとしてもよい。
【0040】
本発明に係る方法及び装置における処理例を挙げると、例えば、複数の金属を含有する酸化合金等の合金を回収する場合は、真空還元室23内において減圧しつつ還元ガスを供給し、室内を、順次回収しようとする金属それぞれの蒸気圧温度及び真空度に設定していき、金属ごとに還元分離ないし還元蒸発分離を行うことで、順次回収していくことができる。例えば、黄銅(真鍮)の場合は、還元ガスを含むあるいは含まない真空下で、黄銅中のZnを550℃〜650℃で蒸発分離回収し、次いで、Pbを950℃〜1000℃で蒸発分離回収し、残渣として高純度のCuを回収する。
【0041】
前記真空還元工程を経た鉄を含む処理品から鉄を回収する場合、該処理品を破砕又は粉砕した後磁気吸着、その他任意の分離手段によって鉄と不純物とを分離することにより、高純度の鉄を回収することができる。
【0042】
また、製鉄過程で生ずる、湿粉鉱、シックナースラッジ又は集塵ダスト中に含まれる水分(10〜30%)とカーボン又はカーボン化合物(1〜20%)を利用し、水性ガス反応及び水性ガス転化反応によって還元ガスを生成させ、この生成させた還元ガスを用いて酸化物を還元するようにすることができる。
【0043】
この場合、還元ガスを生成するための水性ガス転化反応における触媒として、200〜250℃の反応には酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化クロム等の、また、400〜500℃の反応には酸化鉄や酸化クロム等の酸化物が用いられる。なお、その場合の触媒として、製鉄過程で生ずる湿粉鉱、シックナースラッジ又は集塵ダスト中に含まれる酸化鉄、酸化クロム、酸化カルシウム等の酸化物を利用することもできる。
【0044】
真空還元室23内における酸化物の還元工程において、真空還元室23内にメタノール、エタノール等の低
級アルコールを供給して分解させ(CHOH→CO+2H)、このCO+2Hを直接還元ガスとして利用し、あるいは、水性ガス転化反応用ガスとして利用して反応を促進させることができる。また、水分の少ない処理品の場合は、メタノールとしてメタノール水溶液を用いることが有効である。なお、この反応で生ずるCOガスは、エタノールアミンや炭酸カルシウム溶液で吸収処理することができる。
【0045】
上記のとおり本願発明に係る方法及び装置においては、処理品の種類に応じ、必要に応じて先ず乾留処理をし、また、必要に応じて水分をコントロールしながら水性ガス反応処理をすることにより、一部の有価金属を回収すると共に還元ガスを発生させ、この還元ガスを用いて、あるいは、他から導入した還元ガスを用いて処理品を真空還元処理して還元分離ないし還元蒸発分離を行うことで、有価物を回収すると共に、ハロゲン化物等の有害物質の無害化処理を行うものであり、処理に無駄がなくて非常に高効率なものということができる。
【0046】
そして、本発明に係る方法及び装置は、合金や鉄製造時の残渣からの還元分離、レントゲンフィルムからの銀の還元回収、1700℃でのアスベストの無公害化、有価物を含むスラッジダスト品、切削・研磨・切断時に生ずる金属くず中の金属酸化物の還元回収、その他、利用範囲は多岐に亘り、また、排ガス処理で、NOx、SOx、有害ハロゲン化物の処理に加え、COを回収処理するものであるため、究極的には地球の温暖化防止に寄与し得るものということができる。
【0047】
下記表1は、本発明に係る方法により、処理品である高炉湿粉鉱、転炉シックナースラッジ、及び、電気炉集塵ダストを、それぞれ次の条件で真空還元処理した結果を示すものである。
・真空還元室23の有効径: 600W×900L×500H
・処理量: 3kg
・処理温度: 1100℃
・真空度: 0.003Torr
・処理時間: 3Hr
【0048】
[表1]

【0049】
また、下記表2は、本発明に係る真空還元処理方法による回収率と、上記従来のRHF法による回収率の比較表である。
[表2]

【0050】
上記表2からは、本発明に係る方法によって高炉湿粉鉱を処理した場合、鉄の回収率が98%で亜鉛の回収率が100%と極めて高いのに対し、RHF法による処理の場合は、鉄の回収率が70〜85%で亜鉛の回収率が90〜97%と、共に低い。両方法においてこのように差が出るのは、本発明に係る方法の場合は、HO20.8%とカーボン20%とが混入されているため、水性ガスが発生し、減圧下においてHとCOの還元ガスによる還元力が増大すると同時にカーボンの還元力が増加され、カーボンとの直接反応が促進されるためと考えられる。また、高炉湿粉鉱は粉状で還元されやすいという点も大いに関係している。なお、RHF法の場合は、本発明に係る方法のような減圧処理ではないために還元力が弱く、処理中及び冷却時等において酸化が起こりやすいという欠点がある。
【0051】
そして、転炉スラッジの処理において鉄の回収率が34%と低いのは、水分は十分であってもカーボン含有物が少ないために水性反応が起こりにくく、カーボンによる還元力が弱いためであり、また、それがペレット状で大きいことも関係していると考えられる。更に、電炉ダストの場合は、高炉湿粉鉱よりも大きなペレットで、水分及びカーボンの含有率が他の処理品に比べて少ないために水性反応が起こりにくく、鉄及び亜鉛共に、回収率は著しく低いものとなっている。
【0052】
以上の結果から、還元ガス及び炭素質固体を用いて真空還元処理する本発明に係る方法の有効性を、十分に窺い知ることができるであろう。そして、上記のとおり、転炉スラッジ及び電気炉ダストの場合のFe及びZnの回収率が低いのは、高炉湿粉鉱の場合に比較してカーボンの含有率が低いためと考えられる。このことを実証するために、カーボン及びH及びCOの還元ガスを直接処理品へ添加することにより、炭素還元作用及び還元ガス還元作用によってZnO、FeO等の酸化物の還元が促進されて、Fe及びZnの回収率が高まることの確認試験を、下記処理条件により実施してその結果を観察した。
【0053】
[表3]減圧還元ガスによる電気炉集塵ダストの還元確認試験結果

[処理条件]処理品:電気炉集塵ダスト
・真空炉:有効径 600W×900L×500H
・真空度:0.003Torr
・処理時間:3hr
・処理量:3kg
・処理品の粒度:50メッシュ
・処理温度:1100℃
※還元ガス:CO(50%)・Hガス(50%)
【0054】
[表4]炭素による還元作用の確認試験結果

[処理条件]処理品:転炉シックナースラッジ
・真空炉:有効径 600W×900L×500H
・真空度:0.003Torr
・処理時間:3hr
・処理量:3kg
・処理品の粒度:50メッシュ
・処理温度:1100℃
※C=20.1%
【0055】
表3及び表4の試験結果から明らかなように、カーボン及び還元ガスの含有率を考慮することにより、Zn及びFeの回収率を著しく向上させることができた。これは、下記の炭素、CO、H等の還元反応によってもたらされた結果と推定される。
(1)FenOm+mC→nFe+mCO(炭素直接反応)
(2)FenOm+mCO→nFe+mCO(水性ガス還元装置)
(3)ZnO+C→Zn+CO(炭素直接反応)
(4)ZnO+CO→Zn+CO(水性ガス還元反応)
(5)FeO+H→Fe+HO(水性ガス還元反応)
(6)ZnO+H→Zn+HO(水性ガス還元反応)
(7)C+CO→2CO(カーボン反応)
(8)C+HO→CO+H(水性ガス発生反応)
【0056】
以上の結果からしても、還元ガス及び炭素質固体を用いて真空還元処理する本発明に係る方法の有効性を、十分に窺い知ることができるであろう。
【0057】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る方法を実施するための本発明に係る装置の構成例の概略図である。
【符号の説明】
【0059】
1 未処理品ストックヤード
2 処理済品ストックヤード
3 搬入ライン
4 積込機
5 計量機
6 予熱炉
7 第1パージ室
8 真空扉
9 乾留室
10 凝縮装置
11 ガス処理装置
12 真空扉
13 第2パージ室
14 搬入路
16 反応室
17 凝縮装置
18 真空ポンプ
19 2相式燃料発電装置
20 真空扉
21 第3パージ室
22 真空扉
23 真空還元室
24 回収装置
25 真空ポンプ
26 真空扉
27 冷却室
28 真空扉
29 第4パージ室
30 真空扉
31 搬出ライン
32 反転機
33 チッ素ガス発生装置
34 水素ガス発生装置
35 搬入・搬出路
36 CO除去装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
公害物、有価物等を含む廃棄物、酸化物、再利用品等の処理品を処理して無害化すると共に、高純度に有価物を回収するための方法であって、前記処理品をライン内へ搬入する工程、必要に応じて前記処理品を乾留する工程、必要に応じて前記乾留工程を経た処理品に対し、水性ガス反応を起こさせて還元ガスを発生させる反応工程、前記乾留工程及び反応工程を経た処理品、あるいは、前記乾留工程及び反応工程を経ない処理品を、所定温度及び所定真空度にて、還元ガス及び/又は炭素質固体を用い、あるいは、還元ガス及び炭素質固体を用いることなく真空還元処理することにより、還元分離と還元蒸発分離を行う真空還元工程、前記真空還元工程を経た未蒸発還元処理品を冷却する工程、並びに、前記冷却工程を経た処理品を搬出する工程から成ることを特徴とする還元処理方法。
【請求項2】
前記真空還元処理に用いる還元ガスとして、前記乾留工程及び/又は反応工程において発生させた還元ガスを用いる、請求項1に記載の還元処理方法。
【請求項3】
前記乾留工程の前に予熱工程を含む、請求項1に記載の還元処理方法。
【請求項4】
前記予熱工程と前記乾留工程間、前記乾留工程と前記反応工程間、前記反応工程と前記真空還元工程間、及び、前記冷却工程と前記搬出工程間にそれぞれ、不活性ガスパージ工程を介在させる、請求項2に記載の還元処理方法。
【請求項5】
前記ライン内搬入工程に先立ち、処理品を微細化又は粉体化する工程を含む、請求項1に記載の還元処理方法。
【請求項6】
前記乾留工程は、400〜500℃までチッ素ベースで常圧加熱昇温させて行うものであり、前記真空還元工程は、設定温度まで昇温させると共に設定真空度に減圧して還元分離及び還元蒸発分離を行うものである、請求項1に記載の還元処理方法。
【請求項7】
前記反応工程における反応は、前記乾留工程において生成されるコークスその他の炭素質固体及び水分を利用して行なわれる、請求項1に記載の還元処理方法。
【請求項8】
前記乾留工程は、常圧チッ素ベースで加熱昇温を行なうものである、請求項1に記載の還元処理方法。
【請求項9】
前記反応工程は、該工程において発生するCOを除去する工程を含む、請求項1に記載の還元処理方法。
【請求項10】
前記冷却工程において、冷却に用いる不活性ガス中に、0.1Torr〜20Torrの範囲で還元ガスを供給する、請求項1に記載の還元処理方法。
【請求項11】
前記乾留工程及び/又は反応工程において発生させた還元ガスを燃料発電用に利用する、請求項1に記載の還元処理方法。
【請求項12】
前記処理品は合金である、請求項1に記載の還元処理方法。
【請求項13】
前記合金は黄銅であり、前記真空還元工程において処理温度を550℃〜650℃に設定してZnを蒸発分離回収し、次いで、処理温度を950℃〜1000℃に設定してPbを蒸発分離回収し、残渣として高純度のCuを回収する、請求項12に記載の還元処理方法。
【請求項14】
前記真空還元工程を経た鉄を含む処理品から高純度の鉄を回収するために、該処理品を破砕又は粉砕した後磁気吸着その他の分離手段によって鉄と不純物とを分離する、請求項1に記載の還元処理方法。
【請求項15】
処理品に含まれる水分とカーボン及びカーボン化合物とから還元ガスを生成する工程と、前記工程で生成された還元ガスを用いて前記処理品その他の酸化物を還元する工程とから成る還元処理方法。
【請求項16】
製鉄過程で生ずる、湿粉鉱、シックナースラッジ又は集塵ダスト中に含まれる水分とカーボン又はカーボン化合物を利用して還元ガスを生成する工程と、前記工程で生成された還元ガスを用いて酸化物を還元する工程とから成る還元処理方法。
【請求項17】
前記還元ガスを生成するための水性ガス転化反応における触媒として、製鉄過程で生ずる前記湿粉鉱、シックナースラッジ又は集塵ダスト中に含まれる酸化鉄、酸化クロム、酸化カルシウム等の酸化物を利用する、請求項16に記載の還元処理方法。
【請求項18】
前記酸化物の還元工程において、メタノール、エタノール等の低級アルコールを供給して分解させて、還元を補助させると共に水性ガス転化反応を促進させる、請求項15又は16に記載の還元処理方法。
【請求項19】
前記メタノールとして、メタノール水溶液を用いる、請求項18に記載の還元処理方法。
【請求項20】
公害物、有価物等を含む廃棄物、酸化物、再利用品等の処理品を処理して無害化すると共に、高純度に有価物を回収するための装置であって、少なくとも前記処理品を処理して還元ガスを発生させるための手段と、前記還元ガス発生手段によって発生させた還元ガスを用いて前記処理品を真空還元処理する手段とを含むことを特徴とする還元処理装置。
【請求項21】
公害物、有価物等を含む廃棄物、酸化物、再利用品等の処理品を処理して無害化すると共に、高純度に有価物を回収するための装置であって、前記処理品をライン内へ搬入する手段、必要に応じて前記処理品を乾留するための乾留室、必要に応じて前記乾留処理した処理品に対し、水性ガス反応を起こさせて還元ガスを発生させるための反応室、前記水性ガス反応を起こさせた処理品又は前記乾留処理及び前記水性ガス反応処理を経ない処理品を、所定温度及び所定真空度にて、還元ガス及び/又は炭素質固体を用いあるいはこれらを用いることなく真空還元処理して還元分離と還元蒸発分離を行うための真空還元室、前記真空還元処理した未蒸発還元処理品を冷却するための冷却室、及び、前記冷却処理した処理品を搬出する手段、をこの順に配設して成る還元処理収装置。
【請求項22】
前記真空還元室において用いる還元ガスとして、前記乾留室及び/又は反応室で発生させた還元ガスを用いる、請求項21に記載の還元処理装置。
【請求項23】
前記乾留室の前に予熱室を配設した、請求項21に記載の還元処理装置。
【請求項24】
前記予熱室と前記乾留室間、前記乾留室と前記反応室間、前記反応室と前記真空還元室間、及び、前記冷却室と前記搬出手段間にそれぞれ、不活性ガスパージ室を配置した、請求項21に記載の還元処理装置。
【請求項25】
前記乾留室と前記反応室との間の前記不活性ガスパージ室に、カーボンを主体とする処理品その他の乾留を必要としない処理品の搬入手段を設けた、請求項24に記載の還元処理装置。
【請求項26】
前記反応室と前記真空還元室との間の前記不活性ガスパージ室に、乾留及び水性ガス反応処理を必要としない処理品の搬入手段と、乾留及び水性ガス反応処理後真空還元処理を必要としない処理品の搬出手段とを設けた、請求項24に記載の還元処理装置。
【請求項27】
前記冷却室において冷却に用いる不活性ガス中に、0.1Torr〜20Torrの範囲で還元ガスが供給される、請求項21に記載の還元処理装置。
【請求項28】
前記反応室及び他の部分から発生するCOを除去する手段を付設した、請求項21に記載の還元処理装置。
【請求項29】
前記還元ガス発生手段によって発生させた還元ガスを利用して発電を行う燃料発電装置を付設した、請求項21に記載の還元処理装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−263728(P2009−263728A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115824(P2008−115824)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(508081282)
【Fターム(参考)】