説明

部位特異的ターゲッティング用の放射性標識ペプチド組成物

【課題】放射性医薬用途の放射性標識ペプチド組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、非修飾カルボキシ末端アミノ酸を有する、診断用または治療用用途の放射性標識ペプチドを提供する。この放射性医薬組成物は、選択した生物学的部位をターゲッティングするのに使用できる。放射性標識ペプチドは、そのカルボン酸形態のカルボキシ末端アミノ酸を有し、かつそのペプチドは、キレート剤により診断用または治療用放射性核種に結合されている。この放射性医薬組成物は、好ましくは、ソマトスタチン、ソマトスタチン類似体、ソマトスタチン誘導体、およびソマトスタチン受容体に結合可能なペプチド類からなる群から選択される放射性標識ペプチドを含んでなり、そのペプチドは、キレート剤により診断用または治療用放射性核種に結合しており、そのカルボン酸形態のカルボキシ末端アミノ酸を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
部位特異的ターゲッティング用の放射性標識ペプチド組成物発明の分野本発明は、全体に、放射性医薬用途の放射性標識ペプチド組成物に関し、より具体的には、非修飾カルボキシ末端アミノ酸を有する診断用または治療用用途の放射性標識ペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景 様々な放射性標識ペプチド組成物が、治療用または診断用放射性核種の部位特異的ターゲッティング用に、開発されており、また開発中である。総括的な原理は、器官または組織を診断目的でシンチグラフ的にイメージングするかまたは治療用ラジオアイソトープにより処理できるように、選択した放射性核種を、特定の器官または組織に対して高い特異性を有するペプチドに結合させることを含む。この研究分野は、特に腫瘍イメージングおよび処置に対し、応用可能性を示してきた。特に望ましい生物学的部位には、神経内分泌系腫瘍、例えば、腹部腫瘍、および小細胞肺癌、脳腫瘍、前立腺腫瘍、胸部腫瘍、結腸腫瘍、および卵巣腫瘍がある。
【0003】
既知の放射性標識部位特異的ペプチドの中には、神経内分泌系腫瘍を標的とするIn−111標識ペンテトレオチド(Mallinckrodt Medical,Inc.)、ソマトスタチン受容体を表出する組織または器官イメージング用のテクネチウム99m標識ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体(米国特許第5,225,180号、国際公開番号94/00489))、RC−160と同定したIn−111標識ソマトスタチン類似体(W.A.P.Breeman等、EuropeanJ.Nuc.Medicine,21,328(1994))、およびテクネチウム99m標識環状ペプチド(国際公開番号94/00489)がある。これらのペプチド類またはペプチド誘導体は、それぞれ、放射性医薬品として使用するために、カルボキシ末端アミノ酸をアルコールまたはアミドのいずれかに修飾することにより製造されてきた。このことは、ペプチダーゼ類による分解を防止し、血液中でのペプチドの滞留時間を長くするために必要であると考えられていた。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要 本発明は、選択した生物学的部位をターゲッティングするための放射性医薬組成物に関する。この組成物は、ソマトスタチン、血管内(vasointestinal)ペプチド(VIP)、下垂体アデニル酸サイクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、サブスタンスP、エンケファリン類、ニューロキニン類および類似体、またはこれら全ての誘導体類、並びに、これら全てのペプチドの対応する受容体に結合する能力があるペプチド類、からなる群から選択される放射性標識ペプチドを含む。この放射性標識ペプチドは、そのカルボン酸形態のカルボキシ末端アミノ酸を有することを特徴とし、またこのペプチドは、キレート剤により診断用または治療用放射性核種に結合する。
【0005】
本発明の重要な一態様は、ソマトスタチン、ソマトスタチン類似体、ソマトスタチン誘導体、およびソマトスタチン受容体に結合する能力があるペプチド類からなる群から選択される放射性標識ペプチドを含んでなる放射性医薬組成物を提供することであり、ここで、そのペプチドはキレート剤により診断用または治療用放射性核種に結合されている。この放射性標識ペプチドはそのカルボン酸形態のカルボキシ末端アミノ酸を有することを特徴とする。好ましくは、その放射性医薬品はキレート剤を介してIn−111またはテクネチウム99mで標識したD−Phe−Cys−Phe−D−Trp−Lys−Thr−Cys−Thr−OHである。
【0006】
本発明の更に重要な態様は、ソマトスタチン、ソマトスタチン類似体、ソマトスタチン誘導体、およびソマトスタチン受容体に結合する能力があるペプチド類、からなる群から選択される放射性標識ペプチドをターゲッティングする方法を提供することである。ここで、この放射性標識ペプチドはそのカルボン酸形態のカルボキシ末端アミノ酸を有しており、かつキレート剤により診断用または治療用放射性核種に結合されているものであり、この方法では、選択した生物学的部位においてシンチグラフィー法により放射性標識を検出する。
【0007】
本発明により達成されることが見出された多くの利点の中には、次のものがある:カルボン酸形態のカルボキシ末端アミノ酸を保持する、放射性標識ペプチドまたはそれらの類似体または誘導体からなる放射性医薬組成物の供給;修飾カルボキシ末端アミノ酸を有する同様の組成物類と比較して、高い血液および肝臓クリアランスを提供する診断的または治療的施用のための放射性医薬組成物の供給;診断的施用において、修飾カルボキシ末端アミノ酸を有する同様の組成物類よりも迅速に、腫瘍の可視化を可能とする放射性医薬組成物の提供;修飾カルボキシ末端アミノ酸を有する同様の組成物類よりも、腫瘍摂取および保持が増大した放射性医薬組成物の提供;および診断的または治療的施用のために、選択した生物学的部位または組織に本発明の放射性標識ペプチドをターゲッティングする方法の提供。
【0008】
したがって、本発明は、以下を提供する。
1.ソマトスタチン、ソマトスタチン誘導体、ソマトスタチン類似体、またはソマトスタチン受容体に結合するペプチド類、からなる群から選択される放射性標識ペプチドを含んでなり、これらの放射性標識ペプチドがそのカルボキシ末端アミノ酸をカルボン酸形態で有し、かつそのペプチドはキレート剤により診断用または治療用放射性核種に結合されているものである、選択した生物学的部位をターゲッティングするための放射性医薬組成物。
2.ペプチドがD−Phe−Cys−Phe−D−Trp−Lys−Thr−Cys−Thr−OHである、請求の範囲第1項に記載の組成物。
3.ペプチドがD−Phe−Cys−Tyr−D−Trp−Lys−Thr−Cys−Thr−OHである、請求の範囲第1項に記載の組成物。
4.診断用放射性核種がインジウム−111またはテクネチウム99mである、請求の範囲第1項に記載の組成物。
5.治療用放射性核種が、90Y、67Cu、186Re、188Re、169Er、121Sn、127Te、143Pr、198Au、109Pd、165Dy、32P、142Pr、および153Smからなる群から選択される、請求の範囲第1項に記載の組成物。
6.キレート剤が放射性核種を結合するのに利用できる少なくとも1つの硫黄基を持つ四座配位子である、請求の範囲第1項に記載の組成物。
7.キレート剤がDTPAである、請求の範囲第1項に記載の組成物。
8.ソマトスタチン受容体を表出する選択した生物学的部位に放射性医薬組成物をターゲッティングする方法であって、ソマトスタチン、ソマトスタチン誘導体、ソマトスタチン類似体、またはソマトスタチン受容体に結合するペプチド類、からなる群から選択される、診断的量の放射性標識ペプチド、但し、この放射性標識ペプチドはそのカルボン酸形態のカルボキシ末端アミノ酸を有し、かつそのペチドはキレート剤により診断用放射性核種に結合されているものである、を投与すること、および、選択した生物学的部位にて放射性標識を検出すること、を含んでなる、方法。
9.ペプチドがD−Phe−Cys−Phe−D−Trp−Lys−Thr−Cys−Thr−OHである、請求の範囲第8項に記載の方法。
10.ペプチドがD−Phe−Cys−Tyr−D−Trp−Lys−Thr−Cys−Thr−OHである、請求の範囲第8項に記載の方法。
11.診断用放射性核種がインジウム−111またはテクネチウム99mである、請求の範囲第8項に記載の方法。
12.キレート剤が、放射性核種を結合するのに利用できる少なくとも1つの硫黄基を持つ四座配位子である、請求の範囲第8項に記載の方法。
13.キレート剤がDTPAである、請求の範囲第8項に記載の方法。
14.ソマトスタチン受容体を表出する選択した生物学的部位に放射性医薬組成物をターゲッティングする方法であって、ソマトスタチン、ソマトスタチン誘導体、ソマトスタチン類似体、またはソマトスタチン受容体に結合するペプチド類、からなる群から選択される治療的量の放射性標識ペプチド、但し、この放射性標識ペプチドはそのカルボン酸形態のカルボキシ末端アミノ酸を有し、かつそのペプチドはキレート剤により治療用放射性核種に結合されているものである、を投与すること、を含んでなる、方法。
15.ペプチドがD−Phe−Cys−Phe−D−Trp−Lys−Thr−Cys−Thr−OHである、請求の範囲第14項に記載の方法。
16.ペプチドがD−Phe−Cys−Tyr−D−Trp−Lys−Thr−Cys−Thr−OHである、請求の範囲第14項に記載の方法。
17.治療用放射性核種が、90Y、67Cu、186Re、188Re、169Er、121Sn、127Te、143Pr、198Au、109Pd、165Dy、32P、142Pr、および153Smからなる群から選択される、請求の範囲第14項に記載の方法。
18.キレート剤が、放射性核種を結合するのに利用できる少なくとも1つの硫黄基を持つ四座配位子である、請求の範囲第14項に記載の方法。
19.キレート剤がDTPAである、請求の範囲第14項に記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
好ましい実施態様の詳細な説明 診断的または治療的施用のために、選択した生物学的部位をターゲッティングする放射性標識ペプチドの有効性が、ペプチドのカルボン酸形態のカルボキシ末端アミノ酸を保持することにより、顕著に改善されることを見出した。驚いたことに、非修飾カルボキシ末端アミノ酸を有する本発明の放射性標識ペプチドは、カルボキシ末端アミノ酸位置でカルボン酸を除去する特異的修飾を行った対応する放射性標識ペプチドと比較した場合、インビボ特性の改善を示す。特に、本発明の放射性標識ペプチドは、血液および肝臓クリアランスの向上、並びに、生物学的部位摂取および保持時間の向上を示す。従って、本発明は、ソマトスタチン、血管内(vasointestinal)ペプチド(VIP)、下垂体アデニル酸サイクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、サブスタンスP、エンケファリン類、ニューロキニン類および類似体、またはこれら全ての誘導体類、並びに、これら全てのペプチドの対応する受容体に結合する能力があるペプチド類からなる群から選択される放射性標識ペプチドを含んでなる、選択した生物学的部位をターゲッティングするための放射性医薬組成物を提供するものであって、この放射性標識ペプチドは、そのカルボン酸形態のカルボキシ末端アミノ酸を有し、かつそのペプチドがキレート剤により診断用または治療用放射性核種に結合されているものである。
【0010】
本発明に関して使用するペプチド類は、既知の単離および精製法により天然資源から入手してもよく、そのペプチドのペプチド配列が知られている場合は標準的な固相または液相ペプチド合成法により合成することもでき、また、市販の製品から入手することもできる。これらには、天然ペプチドの生物学的結合特性を示し、かつ天然ペプチドの特異的結合特性を保持するペプチド類が包含される。
【0011】
本明細書中でペプチドの誘導体および類似体というのは、そのペプチドが天然ペプチドの特異的結合特性を保持している限り、そのペプチドの個々のアミノ酸の組成、同一性、および誘導体化における修飾物を含むものである。かかる修飾の例には、D−立体異性体、芳香族アミノ酸の芳香環側鎖の置換、側鎖にアミノまたはカルボキシル基を含有するアミノ酸中のかかる基の誘導体化、ペプチドのアミノまたはカルボキシ末端の置換、第2のペプチドまたは生物学的に活性な部分へのペプチドの結合、およびペプチドの環化を含む、あらゆるアミノ酸の修飾がある(G.Van BinstおよびD.Tourwe,Peptide Research,5,8(1992))。好ましい実施態様では、本発明の放射性医薬組成物を製造するのに使用するペプチドは、そのカルボン酸形態のカルボキシ末端アミノ酸がある、ソマトスタチン、ソマトスタチン誘導体、ソマトスタチン類似体、またはソマトスタチン受容体に結合するペプチド類である。より具体的には、D−Phe−Cys−Phe−D−Trp−Lys−Thr−Cys−Thr−OH(ペプチド1)またはD−Phe−Cys−Tyr−D−Trp−Lys−Thr−Cys−Thr−OH(ペプチド2)である。
【0012】
本発明の放射性医薬品に使用するために選択されるペプチドは、キレート剤をペプチドに結合させることにより、放射性標識する。キレート剤は、選択した放射性標識を共有結合させる能力のあるものである。キレート剤および放射性核種は、それぞれ、ペプチドの結合特性または特異性に干渉しないか、または不利に影響しない方法でペプチドおよびキレート剤に結合させる。放射性ペプチドに対する様々なキレート剤の使用は、当分野ではよく知られている。適切なキレート剤には、一般に、既知のN3SおよびN22配位子などのような、金属放射性核種を結合させるのに役立つ硫黄基を少なくとも1つもつ、四座配位子を含有するものがある。より具体的には、本発明のペプチドについて使用され得るキレート基には、2,3−ビス(メルカプトアセトアミド)プロパノエート(米国特許第4,444,690号)、S−ベンゾイルメルカプトアセチルグリシルグリシルグリシン(米国特許第4,861,869号)、DTPAおよびEDTAなどの二環状ジアンヒドライド類およびそれらの誘導体類(米国特許第4,479,930号)、キレート化速度を高めるためにアミノ基を含有するNSキレート類(米国特許第5,310,536号)、米国特許第4,965,392号に記載のN22キレート類、および米国特許第5,120,526号に記載のN3Sキレート類、および米国特許第5,175,257号に記載のような切断可能リンカーを含有するN22キレートがある。上記およびその教示に引用されている特許の全ては、出典明示により本明細書の一部とする。キレート剤は、本発明の分野で知られいる標準方法によりペプチドに結合させ、ペプチドの生物学的活性に不利に影響しない条件でペプチド上のあらゆる位置に添加することができる。キレート基は、固相ペプチド合成中にペプチドに有利に結合させることができ、また、液相化学によりペプチドを得た後に添加することもできる。好ましいキレート基には、DTPA、カルボキシメチルDTPA、N供与原子およびS供与原子の組み合わせまたはN供与原子を含有する四座配位子がある。
【0013】
診断的または治療的価値を有するあらゆる放射性核種が本発明のペプチドに対する放射性標識として使用できる。好ましい実施態様では、放射性核種は、ランタノイドまたはアクチノイド系列の元素から選択されるγ−放出放射性核種、またはβ−放出放射性核種である。陽電子放出放射性核種、たとえば、68Gaもまた使用され得る。
【0014】
適切なγ−放出放射性核種には、診断用イメージング施用に有用なものがある。γ−放出放射性核種は、好ましくは1時間から40日の、好ましくは12時間から3日の半減期を有する。適切なγ−放出放射性核種の例には、67Ga、111In、99mTc、169Yb、および186Reがある。最も好ましくは、放射性核種は99mTcである。
【0015】
適切なβ−放出放射性核種には、治療的施用に有用なものがある。その例には、90Y、67Cu、186Re、188Re、169Er、121Sn、127Te、143Pr、198Au、109Pd、165Dy、32P、142Pr、および153Smがある。β−放出放射性核種は、好ましくは、2時間から2週間の、より好ましくは、約2時間から100時間の半減期を有する。
【0016】
本発明のペプチド/キレートコンジュゲートは、このコンジュゲートと、選択した放射性核種、例えば金属塩、好ましくは水溶性、とを反応させることにより、標識する。この反応は、下記実施例4および5に記載のように、好ましくは還元剤(例えば、塩化第一スズ)および転移剤(例えば、酒石酸、グルコン酸、クエン酸、またはマンニトール)を用いて当分野で知られている方法により実施する。
【0017】
本発明の放射性標識ペプチド/キレートコンジュゲートおよびそれらの医薬的に許容され得る塩類は、診断用イメージング剤として、または治療的施用において、有用である。放射性標識ペプチド/キレートコンジュゲートは、医薬的に許容され得るキャリアー、例えば、食塩水または血漿中で製造し、当業者には知られている標準法を用いて測定した診断上または治療上有効量で個体に投与する。
【0018】
キャリアーは、医薬的に許容され得る補助物質、例えば、塩類、緩衝剤類、保存剤類なども含有していてもよい。好ましくは、本発明の放射性医薬組成物は、キットの形態で提供し、そうして、放射性核種を1つのバイアルで提供し、ペプチド/キレート基コンジュゲートを第2のバイアルで提供し、その内容物を投与直前に混合する。完全に標識する必要がある場合は、この混合物を加熱してもよい。キット形態でのこのような放射性標識複合体の提供および最終的な放射性標識生成物の製造は、核医薬の分野では標準的かつ日常的である。最終の放射性医薬生成物は、当分野で知られている標準プロトコールで測定した場合、高放射性化学純度、好ましくは95%以上、少なくとも90%以上のものであるべきである。
【0019】
放射性標識複合体は、標準放射性医薬品用量測定に従い、約0.05mCiおよび約40mCiの間、好ましくは約1mCiないし約20mCiの放射能用量を個体に提供するように製造する。ここで使用した、“診断上有効量”とは、シンチグラフ的手段によりその検出が可能であるのに十分な放射性医薬品の量を意味し、“治療上有効量”とは、ターゲットとした生物学的部位で治療的処置を達成するのに十分な量を意味する。放射性標識ペプチドは、静脈内注射で常用の媒体中、静脈内投与できる。生物学的部位のイメージングは、注射後、約2−5分以内に為され得るが、注射後数時間で起こる場合もある。診断目的のあらゆる常用イメージング法が利用できる。
【実施例】
【0020】
下記の実施例は、本発明の好ましい実施態様を記載するものである。請求の範囲内のその他の実施態様は、ここに開示した本発明の説明または実施例を考慮すれば当業者には明らかであろう。その説明は、実施例と併せて、請求の範囲に示した本発明の範囲および精神を単に例示するものとみなされることを意図している。
【0021】
実施例1 本実施例は、カルボキシ末端アミノ酸がそのカルボン酸を維持している、本発明のペプチド/キレート基コンジュゲートの合成を記載する。
【0022】
ペプチドとしてD−Phe−Cys−Phe−D−Trp−Lys−Thr−Cys−Thr−OH(ペプチド1)およびペプチド1配列のアミノ末端に結合させたキレート基としてDTPAを含んでなる、ペプチド/キレート基コンジュゲートは、アプライド・バイオシステム・モデル431Aペプチド合成機を用いて、0.2−0.3mmole規模で合成した。Fmoc−O−t−ブチルトレオニン充填−SASRIN樹脂(樹脂0.3−0.4mmol/g)(BachemBiosciences)を用いた。アミノ酸との連続縮合の後、N−末端Fmoc保護基を合成機の一般的プロトコールに従って除去した。
【0023】
1,1,4−トリス(t−ブチルオキシカルボニルメチル)−7,7−ビス(カルボキシメチル)−1,4,7−トリアザヘプタンを用いて、固相合成を続けた。合成が完了したら、生成物であるモノ付加生成物DTPA−ペプチドを室温で1−6時間トリフルオロ酢酸:水:アニソール:トリイソプロピルシランの溶液を用いて切断した。生成物をエーテルにより沈澱させ、C−18逆相クロマトグラフィーにより精製した。切断、脱保護、およびLC精製により、モノDTPA−ペプチド1を高純度、m/e1407(M+1)で得た。
【0024】
実施例2 本実施例は、本発明に関して有用である、そのカルボン酸形態のカルボキシ末端アミノ酸を有するペプチド/キレート基コンジュゲートの合成を例示説明する。
【0025】
DTPA−ペプチド2は、合成するペプチドがペプチド2である以外は、実施例1に記載の方法に従い合成した。切断、脱保護、およびLC精製により、モノDTPA−ペプチド2を高純度、m/e1425(M+1)で得た。
【0026】
実施例3 本実施例は、本発明に関して有用である、そのカルボン酸形態のカルボキシ末端アミノ酸を有するペプチド/キレート基コンジュゲートの合成を例示説明する。
【0027】
ペプチドとしてペプチド1およびペプチド1のアミノ末端に結合させたキレート基としてN3S配位子を含んでなる、ペプチド/キレート基コンジュゲートは、固相−液相組み合わせ法により合成した。H−Lys(ε−Troc)−Glu−Aha−D−Phe−Cys−Phe−D−Trp−Lys(ε−Troc)−Thr−Cys−Thr−OH(ペプチド3)を、上記実施例1に記載の一般的方法に従い、Fmoc−O−t−ブチルトレオニン充填−SASRIN樹脂(樹脂0.3−0.4mmol/g)(BachemBiosciences)から合成した。この化合物は、マススペクトルm/e1752(M+1)を特徴とした。トリエチルアミン含有ジメチルホルムアミド(10mlDMF/ペプチドmmoleおよび1mlトリエチルアミン/ペプチドmmole)中、上記ペプチド3の溶液に、S−テトラヒドロピラニルメルカプト酢酸スクシンイミデートエステルを加え、溶液を室温で撹拌した。溶媒を除去し、生成物をC−18フラッシュクロマトグラフィーにより単離した。この工程由来の生成物(THP−S−MA−Lys(ε−Troc)−Glu−Aha−D−Phe−Cys−Phe−D−Trp−Lys(ε−Troc)−Thr−Cys−Thr−OH)をZn粉末/THF/水と共に撹拌して、Troc保護基を除去して、最終生成物:
【0028】
【化1】

【0029】
を得た。
【0030】
実施例4 本実施例は、本発明に関して有用である、そのカルボン酸形態のカルボキシ末端アミノ酸を有するペプチド/キレート基コンジュゲートの合成を例示説明する。
【0031】
ペプチドとしてペプチド2およびペプチド2のアミノ末端に結合させたキレート基としてN3S配位子を含んでなる、ペプチド/キレート基コンジュゲート(下記に示す)は、固相−液相組み合わせ法により合成した。H−Lys(ε−Troc)−Glu−Aha−D−Phe−Cys−Tyr−D−Trp−Lys(ε−Troc)−Thr−Cys−Thr−OH(ペプチド4)を、上記実施例1に記載の一般的方法に従い、Fmoc−O−t−ブチルトレオニン充填−SASRIN樹脂(樹脂0.3−0.4mmol/g)(BachemBiosciences)から合成した。この化合物は、マススペクトルm/e1752(M+1)を特徴とした。トリエチルアミン含有ジメチルホルムアミド(10mlDMF/ペプチドmmoleおよび1mlトリエチルアミン/ペプチドmmole)中、上記ペプチド4の溶液に、S−テトラヒドロピラニルメルカプト酢酸スクシンイミデートエステルを加え、溶液を室温で撹拌した。溶媒を除去し、生成物をC−18フラッシュクロマトグラフィーにより単離した。この工程由来の生成物(THP−S−MA−Lys(ε−Troc)−Glu−Aha−D−Phe−Cys−Tyr−D−Trp−Lys(ε−Troc)−Thr−Cys−Thr−OH)をZn粉末/THF/水と共に撹拌して、Troc保護基を除去して、最終生成物:
【0032】
【化2】



【0033】
を得た。
【0034】
実施例5 本実施例は、上記実施例1および2で製造したDTPA−ペプチド1およびDTPA−ペプチド2/キレート基コンジュゲートの放射性標識を記載するものである。
【0035】
DTPA−ペプチド1またはDTPA−ペプチド2のいずれか5マイクログラムを、酢酸ナトリウム0.624mgおよびアスコルビン酸0.440mgを含有する0.05NHCl含有水に溶解させた。塩化インジウムとして3mCiのIn−111を加えた。標識は、室温で行い、15分以内で完了した。最終反応容量は、200μlであり、pH4であった。放射性標識ペプチド1または2の収率は、>98%であり、純度もまた>98%であった。
【0036】
実施例6 本実施例は、実施例3に記載のN3S−ペプチド1ペプチド/キレート基コンジュゲートのTc−99m−標識を記載する。
【0037】
Tc−99m標識は、市販のMerck-Frosstキットを用いて実施した。キット成分を水1mlに溶解させた。市販のジェネレーター由来の30mCi過テクネテート1mlを含有する別のバイアルに、Merck-Frosstキット由来の溶液100μlを加え、この溶液を15分間静置させた。この溶液に、N3S−ペプチド1生成物100μgを加え、溶液を100℃で15−20分間加熱した。滅菌フィルターにて濾過後、溶液の投与準備が整った。
【0038】
実施例7 本実施例は、C−末端アミノ酸カルボン酸を保持する本発明の放射性標識ペプチドの特性改善を、Mallinckrodt Medical,Inc.によりOctreoscan(登録商標)
の商標で市販されているIn−111標識ペンタトレオチド神経内分泌系腫瘍イメージング剤と比較して、例示説明する。
【0039】
放射性標識化合物(群)の注射前およそ14−18日に、雄ルイスラットの左横腹領域にCA20948腫瘍物質を移植し、ソマトスタチン受容体を発現する生存可能な腫瘍塊を形成させた。研究の1日目、ラット(n=3/グループ)にIn−111複合体(群)を静脈内投与し、その調製物の比活性は約2800Ci/mmolであり、注射後1、4および24時間で動物を屠殺した。下記の器官/組織を摘出し、ラジオトレーサーの摂取を定量した:血液、肝臓、脾臓、心臓、筋肉、腎臓、小腸、胃、甲状腺、大腿骨、副腎、膵臓および腫瘍。24時間で、糞および尿も集め、複合体(群)の排出経路および全体のクリアランスパターンを測定するためにカウントした。更に、複合体のインビボ安定性を評価するために代謝研究用に2匹のラットに注射し、その他2匹のラットにもガンマシンチグラフィーによる動物の可視化のために注射した。この組織を注射用量%(%ID)
および%ID/組織グラムについて検定して、複合体の全体的生体分布を測定した。これらの価から、標的組織価:非標的組織価の比率を評価し、これを計算して、対照に対する試験組成物の効力を測定した。その結果は、下記表1に示す。
【0040】
【表1A】

【0041】
【表1B】



【0042】
*かっこ内の数=標準偏差これらの結果は、そのカルボン酸形態のカルボキシ末端アミノ酸を有する放射性標識ペプチドの腫瘍摂取および保持時間の増大を同一の腫瘍受容体に対して特異的な市販の放射性標識ペプチドと比較して例示するものであり、並びに血液からのより迅速なクリアランスを示している。代謝研究に関しては、尿サンプルを逆相HPLCにより分析し、その結果は、複合体がなんら有意に分解されることなく排出されることを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
D−Phe−Cys−XXX−D−Trp−Lys−Thr−Cys−Thr--OH
を有するペプチドであって、
該XXXは、PheまたはTyrであり、
--OHは、カルボキシ末端アミノ酸が、そのカルボン酸形態で存在することを示す、
ペプチド。
【請求項2】
前記XXXがPheを示す、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記XXXがTyrを示す、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
さらに、キレート剤に結合したものである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
前記キレート剤が四座配位子を含むものであり、請求項4に記載のペプチド。
【請求項6】
前記キレート剤がDTPA、カルボキシメチルDTPA、NおよびS供与原子の組み合わせを含有する四座配位子、ならびにN供与原子の組み合わせを含有する四座配位子からなる群より選択される、請求項4に記載のペプチド。
【請求項7】
前記キレート剤が、NSキレート類、Nキレート類、NSキレート類および二環状ジアンヒドライド類からなる群より選択される、請求項4に記載のペプチド。
【請求項8】
以下の式:
D−Phe−Cys−XXX−D−Trp−Lys−Thr−Cys−Thr--OH
を有するペプチドをカップリングさせる工程を含む放射性医薬組成物を製造する方法であって、
該XXXは、PheまたはTyrであり、
--OHは、カルボキシ末端アミノ酸が、そのカルボン酸形態で存在することを示す、
方法。
【請求項9】
前記XXXがPheを示す、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記XXXがTyrを示す、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ソマトスタチン、ソマトスタチン誘導体、ソマトスタチン類似体、またはソマトスタチン受容体に結合するペプチド類、からなる群から選択される放射性標識ペプチドを含んでなり、これらの放射性標識ペプチドがそのカルボキシ末端アミノ酸をカルボン酸形態で有し、かつそのペプチドはキレート剤により診断用 または治療用放射性核種に結合されているものである、選択した生物学的部位をターゲッティングするための放射性医薬組成物。

【公開番号】特開2008−266342(P2008−266342A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125326(P2008−125326)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【分割の表示】特願平9−501714の分割
【原出願日】平成8年6月6日(1996.6.6)
【出願人】(595181003)マリンクロッド・インコーポレイテッド (203)
【氏名又は名称原語表記】Mallinckrodt INC.
【Fターム(参考)】