説明

部分長留置尿道カテーテルおよび選択的排尿を可能にする方法

部分長カテーテル、あるいはカテーテルの伸展可能なチューブまたはスリーブ部材は、尿道前立腺部内で選択的に移動可能であり、排尿通路と尿道前立腺部の閉塞部分を開き、あるいは外部膀胱括約筋を開き、膀胱から排尿させる。操作用要素を尿路の外の地点で操作し、カテーテルまたは伸展可能なチューブまたはスリーブ部材を選択的に移動させ、これによって排尿を選択的に制御する。カテーテルはまた、膀胱収縮力低下または尿道閉塞による尿閉の問題の診断にも使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分長留置尿道カテーテル(partial-length indwelling urinary catheter)およびこのような尿道カテーテルの使用に関する。より詳しくは、本発明は、閉塞した尿道前立腺部から、あるいは尿路閉塞の状況下で収縮した外尿道括約筋から、使用者が排尿用経路を選択的に開いて、尿路内位置のある程度の違いに対処できるような新規で改良された部分長留置カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
良性前立腺肥大(BPH)や悪性前立腺がん等の前立腺の問題は、高齢の男性において珍しくない。このような病気の影響は、一般に、前立腺の腫脹または肥大を伴う。悪性前立腺がんが生死に関わる側面を持つことを別として、これらの病気の日常的な症状と影響は一般に面倒なものである。この種の問題のひとつは、排尿を制御し、正常な排尿を実現する能力に関する。前立腺が肥大し、前立腺を通る尿道前立腺部を閉塞するまでになると、自分の意思で排尿することにおいて大きな困難が生じる。こうした困難のことを一般に、尿路閉塞と呼ぶ。尿路閉塞には急性と慢性がある。
【0003】
尿道前立腺部の閉塞を原因とする尿路閉塞の緩和には、外科治療が利用できる。そのひとつが、経尿道的前立腺切除(TURP)である。TURP法では、前立腺の組織を外科的に切除し、閉塞や制約を排除または緩和する。外科手術を行うことで、優れた臨床結果が得られる可能性は高いものの、これには高い死亡率も伴う。より副作用の少ない代替治療として、経尿道的マイクロ波温熱治療(TMUT)、ラジオ波凝固ニードルアブレーション(TUNA)、間質レーザ・温水誘発温熱療法(WIT)等がある。これらの代替治療はすべて、障害となっている前立腺組織を加熱し、組織を壊死または損傷させるものである。壊死または損傷した組織は、その後、剥がれ落ち、体に吸収され、あるいはその他の方法で前立腺を通る尿の通路が拡大することになる。前立腺を通る尿の通路が拡大すると、障害が除去または緩和され、尿がよりよく流れるようになる。
【0004】
他の尿路閉塞の原因は、膀胱の収縮力低下(weak bladder)である。膀胱収縮力低下の状態は、膀胱を取り囲む筋肉が、男性の外尿道括約筋開口部を拡張させ、体外に通じる尿道に実質的な量の尿の流れを送り込むのに十分な流圧を膀胱内の尿に対して発生させることができるように、膀胱を十分に収縮、圧縮させることができない場合に起こる。男性には2つの尿道括約筋がある。膀胱頸部または膀胱と尿道との連結部にある内尿道括約筋と、下流にあり、尿道前立腺部が前立腺から陰茎を通過する尿道へと出る地点の外尿道括約筋である。
【0005】
正常な場合に尿が排出されない状態においては、どちらの尿道括約筋も収縮して、括約筋開口部を閉じ、尿道から尿が流れないようにしている。膀胱が自然に尿で満たされると、膀胱を取り囲む筋肉は弛緩する。排尿するために、膀胱を取り囲む筋肉は自発的に収縮し、膀胱内の尿に対して流圧を発生させる。尿からの圧力は圧縮された内尿道括約筋に加わり、これが脳によって感知される。内尿道括約筋の開口部が自発的に拡大し、尿を膀胱から尿道前立腺部に送る。しかしながら、膀胱を取り囲む筋肉が尿に十分な圧力を加えないと、通常収縮している外尿道括約筋に対する流圧が不十分で、拡大または開口しない。外尿道括約筋は、尿道前立腺部を通じて伝えられる流圧に反応して開口する。流圧が不十分な場合、外尿道括約筋は拡大しないか、少ししか拡大せず、排尿を制限または阻止する。膀胱の尿を空にすることができないと、重篤な健康上の問題や死亡につながる可能性がある。
【0006】
障害のある前立腺をTURPまたは温熱療法によって治療できない場合、および収縮力低下した膀胱が尿の流れを妨害または制限する場合、膀胱から機械的な流体用通路を構築する必要がある。外尿道括約筋を開くための最も一般的な機械的方法は、完全長カテーテル(full-length catheter)を挿入することである。完全長カテーテルは、陰茎の外尿道口から尿路の全長にわたって膀胱まで至る。完全長カテーテルは管状のステントとして、尿道括約筋を永久的に開いた状態に保ち、これによって括約筋が閉じて尿の流れを制約するのを防止する。場合によっては、患者に対し、排尿が必要となるたびに完全長カテーテルを挿入するよう指導することがある。あるいは、患者が完全長カテーテルを自分で挿入できない場合、医療従事者が完全長の留置カテーテルを尿路に挿入し、そのまま留置しなければならない。また、完全長カテーテルを、死ぬまで使い続けなければならないこともある。
【0007】
TURPと前立腺温熱治療法は一時的な副作用、例えば前立腺の炎症や腫脹を引き起こす。腫脹は、外科治療を行った前立腺からの尿の通過の障害となるほど大きい場合がある。尿と直接接触することで、炎症が悪化し、TUMTまたは温熱療法を受けた後の、生存しているが、癒えていない(raw)、柔らかい、腫れた前立腺組織の感染リスクが高くなる。TUMTまたは温熱療法のこうした副作用が見られる場合は、通常、患者がその処置の後数日間から数週間、膨張が収まり、前立腺組織が治癒または安定するまで、留置型の排尿カテーテル(indwelling urine drainage catheter)を使って排尿することが必要となる。
【0008】
完全長排尿カテーテル(full-length urinary drainage catheter)を用いると、膀胱と陰茎の外尿道口との間の内側の尿の流れる通路が継続的に開いているため、体外でクランプその他の機械的弁を使って、カテーテルからの尿の流れを制御しなければならない。クランプや弁を開いて尿を膀胱から排泄し、閉じて膀胱からの尿の流れを終了させる。あるいは、カテーテルの端部にタンクを取り付け、排泄された尿を回収してもよく、この場合、機械的弁やクランプは不要となる。
【0009】
陰茎の外尿道口の外にカテーテルが延びていたり、クランプや弁がついていたり、タンクが存在したりすることは不快であり、扱いにくく、抵抗感がある。完全長尿路カテーテルがあると、社会的な面で制約が生まれ、ほとんどの場合、生活の質の問題が生じてこれに直面しなければならない。性的活動は不可能である。また、感染リスクも高まる。
【0010】
完全長尿路カテーテルに伴う生活の質と社会的な問題により、部分長留置カテーテル(partial-length indwelling catheter)が開発されてきた。部分長留置カテーテルは、一般に、膀胱から尿道前立腺部の一部のみの範囲に亘り、膀胱から陰茎の外尿道口に至る尿路の長さ全体には及ばない。一般的な部分長留置カテーテルは、膀胱から尿道前立腺部を通って、外尿道括約筋に隣接する上流地点までの範囲に亘る。長さが短くなったことで、外尿道括約筋はより自然な方法で尿の流れを制御しながらも、尿の流れの大部分を、膨れた、閉塞した、あるいは癒えていない前立腺を避けて迂回させる。
【0011】
部分長留置カテーテルを適正な位置に保つことが非常に重要である。長さが短くなったことで、カテーテルが膀胱の中に完全に入ってしまったり、膀胱から出て尿道(urethra)と尿管(urinary canal)へと移動してしまったりすることがある。どちらの意図しない移動においても、これを修正するために重大な医学的介入が必要となる。
【0012】
部分長尿路カテーテルは、一般に、膀胱内に入る端部において、膨張可能なバルーンまたはその他の形態の固定手段(anchor)を使用する。バルーンまたは固定手段は、膀胱内で拡張または拡大される。拡張または拡大されたバルーンまたは固定手段は、尿道入口の膀胱頸部に接触し、部分長カテーテルが膀胱から抜けて、尿道内に移動するのを防止する。一般に、もうひとつの下流の固定手段が部分長カテーテルに取り付けられ、カテーテルが反対側に移動するのを制約する。下流の固定手段は、外尿道括約筋の下流に設置され、短い糸状の材料で部分長カテーテルに接続される。糸状材料は、外尿道括約筋の開口部から、下流の固定手段と部分長留置カテーテルの間に亘る。したがって、カテーテルと下流の固定手段は、外尿道括約筋の反対側に位置する。外尿道括約筋の通常の収縮状態が下流の固定手段を抑制し、部分長カテーテルが膀胱内に移動するのを防止する。
【0013】
外尿道括約筋は、糸状材料の周辺で収縮して尿の流れを止めることができ、また、拡大して尿を流すことができる。このように、外尿道括約筋の自然的機能が排尿を制御する。完全長カテーテルと一緒に使用されるクランプ、弁、タンクならびにこれらの装置による自意識、抵抗感、社会的問題や困難は、部分長留置カテーテルの使用によって完全に回避される。
【0014】
部分長留置カテーテルには長所と利点があるものの、部分長留置カテーテルは、膀胱収縮力低下による排尿障害を克服するには有効ではない。部分長留置カテーテルの終端は、外尿道括約筋の上流にある。膀胱内の流圧は部分長留置カテーテルを通じて外尿道括約筋に伝えられるが、収縮力が低下した膀胱からの比較的低い流圧では、外尿道括約筋を開くのに不十分である。このために、部分長留置カテーテルは膀胱収縮力低下の状態での排尿の制御に有効ではない。そこで、膀胱収縮力低下の状態や、ある神経障害による状態においては、完全長排尿カテーテル(full-length urinary drainage catheter)が必要となる。
【0015】
部分長留置カテーテルはまた、TUMTまたは温熱治療後の予防的価値の点でも限定されている。部分長留置カテーテルの下流端は外尿道括約筋に直結せず、男性個人によって尿道前立腺部の生理学的長さが異なるため、下流端の位置が外尿道括約筋に至るより少し前となることがある。この下流端と外尿道括約筋の間の小さなギャップは、TUMTその他の温熱療法を受けた後に腫脹し、前立腺からの尿の流れを制限する場合がある。同様に、BPHその他の病気による前立腺肥大が、部分長留置カテーテルの下流端と外尿道括約筋の間のギャップに入り込むこともある。こうした閉塞状況において、部分長留置カテーテルは排尿を可能にするのに有効でなく、したがって、より好ましい部分長留置カテーテルではなく、完全長排尿カテーテルを使用する必要性が生じる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、病気に起因する、あるいは外科治療後の前立腺の腫脹から生じる、あるいは膀胱収縮力以下または神経障害から生じる尿道前立腺部の閉塞による尿路閉塞状態ならびに姿勢や尿道生理学の若干の相違という状態における排尿の問題を克服する。本発明の利点とその他の望ましい態様により、使用者は自分の意思で排尿し、より望ましくない完全長カテーテルを使用せずにすませることができる。
【0017】
本発明は、人間男性において、膀胱から前立腺と外尿道括約筋開口部を通して、外尿道口で終わる尿道へと尿を排泄する方法ならびにそのための部分長留置カテーテルに関する。
【0018】
総括的に言えば、この方法は、部分長留置カテーテルを正位置、つまりカテーテルの遠位端が膀胱内にあり、かつ、カテーテルの近位端が、外尿道括約筋に遠位側で隣接する上流地点にある位置に設置するステップと、カテーテルを固定して、正位置から近位方向への移動を静止するステップと、尿を膀胱から、カテーテルの遠位端と近位端との間に亘るカテーテルの内側通路内を通過するよう導くステップと、カテーテルの近位端を、外尿道括約筋の開口部を通して、正位置から近位側の下流方向に選択的に移動させて、尿を膀胱からカテーテルの内部通路と外尿道括約筋の中を通して尿道に導き、これによって尿を膀胱から排泄または排出するステップと、を含む。
【0019】
この方法はまた、以下の特徴のいくつかまたは全部を有する。膀胱から尿が排泄された後、カテーテルの近位端は、外尿道括約筋開口部から近位方向に移動される。外尿道括約筋開口部の通常の収縮によって、カテーテルが正位置にある間に、カテーテルの近位端から尿道への尿の排出が阻止される。操作用コード(control cord)を、カテーテルから外尿道括約筋開口部と尿道を通して、外尿道口の外の位置まで延ばし、この操作用コードを動かして、カテーテルの近位端を、正位置から外尿道括約筋の開口部を通して近位方向に選択的に移動させる。カテーテルの近位端は、カテーテル全体を近位方向に移動させるか、カテーテルの伸展可能な近位端部を近位方向に移動させることによって、正位置から近位方向に移動される。カテーテルを固定し、正位置から遠位および近位方向に移動しないようにする。
【0020】
総括的に言えば、部分長留置カテーテルは、遠位端と近位端とを持つ本体を有する。本体は、正位置を実現するのに十分な長さを有し、その正位置において、遠位端が膀胱内にあり、近位端が外尿道括約筋に遠位方向から隣接する上流にある。本体は、遠位端から近位端に至る内側通路を画定する。内側通路は膀胱内部と連通する。遠位側の固定要素は、本体の遠位端に連結される。遠位側の固定要素は、拡張可能であり、膀胱につながる尿道前立腺部の開口部に隣接する膀胱頸部と接触して、本体が正位置から近位側に移動しないように抑制する。操作用要素は、遠位端において本体に接続され、外尿道括約筋の開口部と尿道を通って外尿道口の外の地点に至る十分な長さを有する。操作用要素は、その近位端から本体に力を伝え、カテーテルの近位端を、正位置から外尿道括約筋開口部を通して近位方向に選択的に移動させ、これによって、尿を膀胱から内側通路を通して、外尿道括約筋の近位側で下流の位置における尿道へと導く。
【0021】
部分長留置カテーテルはまた、以下の特徴のいくつかまたは全部を有する。操作用要素は、本体に接続された操作用コードを有して引張力を伝え、その引張力は、遠位側固定要素を膀胱頸部に押し付け、カテーテル全体を近位方向に移動させるのに十分であり、これにより、カテーテルの近位端を、正位置から外尿道括約筋の開口部を通して近位方向に移動させる。遠位側固定要素は、流体で膨張させることのできる膨張可能なバルーンを備え、この膨張可能なバルーンは、カテーテル全体が近位方向に移動されると膀胱頸部に押し付けられ、これによって、カテーテルの近位端が正位置から外尿道括約筋の開口部を通して近位方向に移動する。膨張可能なバルーンを膀胱頸部に押し付けて、カテーテルの近位端を外尿道括約筋の開口部から遠位方向に移動させる力は、操作用コードへの力が解除されてから、本体を正位置に戻す。本体は、伸展可能な近位端を有する。操作用要素は、伸展可能な近位端に連結され、伸展可能な近位端を正位置から外尿道括約筋の開口部を通して近位方向に移動させる。バイアス要素が伸展可能な近位端と本体との間に連結され、操作用コードに引張力が加わらなくなると、伸展可能な近位端を伸展状態から外尿道括約筋の開口部を通して戻す。本体の伸展可能な近位端は、本体に関して入れ子式に移動可能なチューブ部材、または本体に関して拡張可能な柔軟スリーブ部材を備えていてもよい。操作用要素またはコードは、本体の伸展可能な近位端を、外尿道括約筋の開口部を通して本体に関して近位方向に移動させるのに十分な引張力を伝える。近位側固定要素は本体に接続され、遠位側固定要素が膀胱頸部に接触すると、外尿道括約筋の近位側の地点に位置付けられる。近位側固定要素は、本体が正位置から遠位側に移動しないように抑止する。
【0022】
カテーテルには、その他、次のいくつかまたは全部の特徴がある。遠位側固定要素は、本体に取り付けられた膨張可能なバルーンを備える。膨張用チューブは本体に接続され、本体から外尿道括約筋の開口部を通して延びるのに十分な長さを有する。膨張用チューブは、バルーンを拡張させるための流体を供給する。カテーテルの近位側固定要素は、外尿道括約筋の開口部が収縮したときに、尿道内の外尿道括約筋の近位側の下流の位置に位置付けられる膨張チューブのコイル部を有する。
【0023】
本発明の別の態様は、尿道前立腺部の閉塞または膀胱収縮力低下のいずれか一方による、人間男性における尿路閉塞を診断する方法である。この方法は、部分長留置カテーテルを尿道前立腺部内に位置付け、カテーテルの内側通路を通して、膀胱から、括約筋に遠位方向から隣接するカテーテルの近位端における地点に至る、流体の連通を確立するステップと、カテーテル内に尿を流すステップと、カテーテルを尿道前立腺部に設置した場合に、外尿道口からの尿流が、カテーテルを尿道前立腺部内に設置していないときの尿流と比較してより多いか否かを判断するステップと、カテーテルを尿道前立腺部に設置したときの尿流が、カテーテルを尿道前立腺部に設置していないときの尿流より有意に大きい場合に、尿道前立腺部の閉塞があると診断するステップと、カテーテルを尿道前立腺部に設置したときの尿流が、カテーテルを尿道前立腺部に設置していないときの尿流と比較して実質的に違わない場合は、膀胱収縮力低下と診断するステップと、を含む。膀胱収縮力低下の診断は、内側通路を膀胱内の尿との流体連通状態に保ちながら、カテーテルの近位端を外尿道括約筋の開口部を通して近位方向に選択的に移動させて、内側通路の近位端が外尿道括約筋の開口部を通して延びているときに、外尿道口からの尿流がより大きくなるか否かを判断することによって検証できる。もしそうであれば、膀胱収縮力低下の診断が確認される。この診断方法はまた、適当な排尿条件下において筋肉の拡張または収縮を阻害する外尿道括約筋の特定の神経障害を、排尿障害の原因として排除するか、またはその原因と考えるかを判断するためにも使用される。
【0024】
本発明の範囲とその重要な改善を実現する方法は、添付の図面に関連する現時点での好ましい実施例に関する下記の詳細な説明、および添付の特許請求範囲を参照することによって、より十分に理解できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明を取り入れた部分長留置カテーテル20の1つの実施例を図1に示す。留置カテーテル20は、挿入ツール22に連結され、カテーテル・ツールアセンブリ24を形成し、これによってカテーテル20を人間の尿路、例えば、図6に示すような人間男性の尿路26等に挿入することができる。挿入ツール22は、一旦挿入されると、留置カテーテル20から切断または分離され、カテーテル20を尿路内に留置させ、または残し、図6−9,12,15に示されている人間の男性の前立腺30内の尿道前立腺部28の中に通した状態とする。図8に示される留置された使用位置において、カテーテル20は、尿を膀胱32から前立腺30内の尿道前立腺部28を通って、外尿道括約筋34の若干上流の位置に導く。
【0026】
留置カテーテル20は、挿入ツール22で尿路26内に押し込まれ、最終的に図6に示すように、留置カテーテル20の遠位端38が膀胱32に入る。挿入中、挿入ツール22は、留置カテーテルが尿路26内で正しい姿勢、位置にとどまるような方法で、留置カテーテル20に連結される。留置カテーテル20の遠位端38が膀胱に到達すると、この連結により、尿の漏出が確実になくなる。留置カテーテル20のバルーン40は、膨張用チューブ44の膨張用通路42を通じて導入される流体によって膨張させられ、最終的に、図7に示されるように、バルーン40の直径は、尿道前立腺部28を取り囲む膀胱32の頸部46よりも大きくなる。膨張用流体は、空気等の気体でも、生理食塩水等の液体でもよい。バルーン40は、膨張用チューブ44の端部にある弁アセンブリ50(図1)に連結されたシリンジ48等の膨張用ポンプによって、膨張させるのが好ましい。バルーン40を膨張させたところで、挿入ツール22を後方に引き戻し、最終的に膨張したバルーン40が膀胱頸部46に着座する。膀胱頸部46に着座したバルーン40は、留置カテーテル20が膀胱32から抜け、外尿道括約筋34を通過して尿道36へと移動するのを防止する。
【0027】
挿入ツール22をさらに引くことにより、図8に示すような留置カテーテル20と挿入ツール22の間の分離可能な連結部52(図1)において、挿入ツール22はカテーテル20から分離し、これによって留置カテーテル20が図8に示されるその最終的な留置位置に残る。その後、挿入ツール22は引かれ、尿道36内部から抜き取られる。膨張用チューブ44は尿道36内にとどまる。
【0028】
相対的な用語である「近位」および「遠位」は、本明細書の中では、カテーテルと、カテーテルを尿道36の外尿道口において尿路26の中に挿入する医療従事者に関連して用いられる。したがって、カテーテル20の、患者の体内の最も内部にある部分を「遠位」、カテーテル20の、尿道36の外尿道口に最も近い部分を「近位」という。つまり、カテーテルの「遠位」部は、カテーテルの「近位」部より尿路26内の内側に位置する。カテーテルの「遠位」部は、尿流の通常の方向に関して上流にあり、カテーテルの「近位」部は尿流の通常の方向に関して下流にある。カテーテルが相互作用する男性の尿路生理学の相対的な位置を示すのにも、同じ指示語用法(reference convention)が用いられる。この指示語用法の例として、バルーン40はカテーテル20の「遠位」端付近に位置づけられ、膨張用チューブ44の「遠位」端はカテーテル20の本体58の「近位」端に、外尿道括約筋34の上流つまり「遠位」にある位置において連結され、膀胱32からの尿は開口部を通じて外尿道括約筋の「遠位」側から「近位」側に向かって、その後尿道36内へと排出される。
【0029】
膨張用チューブ44は、図1−3,6−9に示される永久的に螺旋状のコイル部54を有するように形成される。コイル部54は、横方向の寸法と長さ方向の寸法の両方において弾力性を有する。膨張用チューブ44は、挿入ツール22を取り外した後に、尿道36内でコイル部54をコイル状に保つのに十分な強度を有する。コイル部54が弾力性を有するため、コイル部54は尿道36の内側を圧迫する。尿道36の内部を弾性的に圧迫することにより、コイル部54はまた、患者の不快さまたは尿道36への刺激を最小限にする。コイル部54は、コイルの開放された中央部を通る流体流路を提供するため、尿道36内の尿流を妨害しない。
【0030】
尿道括約筋34の若干近位側に位置づけられた、膨張用チューブ44のコイル部54は、留置カテーテル20を尿路26内の図8に示す位置に保持するのを助ける固定要素としても機能する。コイル部54は、コイル部54のコイルが括約筋34の開口部の収縮によって生じる尿路内収縮部に接触する結果、留置カテーテル20が図8に示す位置から遠位方向に移動するのを防止する。コイル部54は収縮部に接触し、留置カテーテル20の遠位方向への移動に抵抗し、カテーテル20が膀胱32の中に入るのを防止する。膨張したバルーン40はまた、留置カテーテル20の遠位端38において制約部を作ることによって固定手段としても機能し、カテーテル20が尿路26に沿って近位方向に移動し、尿道36から抜けるのを防止する。膨張したバルーン40が留置カテーテル20の遠位端にあり、かつ、コイル部54が括約筋34の近位側にある状態で、留置カテーテル20は固定されて、膀胱32に入る、または膀胱32から出る運動と、尿道前立腺部から抜ける運動に抵抗する。
【0031】
留置カテーテル20が通常の使用位置にバルーン40とコイル部54で固定された状態において、膀胱32からの尿およびその他の液体は、留置カテーテル20の排尿チャネルまたは内側通路56(図3)を通じて、拡大した外尿道括約筋34に隣接した位置にあるカテーテル20の近位端から流れることができる。前立腺の病気または前立腺30への外科治療後の腫れから生じるような、留置カテーテル20の近位端と外尿道括約筋34の間の尿道前立腺部に障害がないことを条件として、また膀胱32の収縮力が低下しておらず、尿に十分な流圧を加えられることを条件として、流圧は外尿道括約筋開口部を拡大させ、尿が拡大した外尿道括約筋34から尿道36へと流れるようにする。しかしながら、このような状態では、本発明によるカテーテルの使用は不要である。本発明は、前立腺の病気や前立腺への外科治療後の腫れから生じる留置カテーテル20の近位端と外尿道括約筋34との間の尿道前立腺部閉塞を克服し、膀胱32からの流圧が外尿道括約筋34を開放するのに不十分であるような膀胱の収縮力低下状態またはその他の神経障害を克服するために使用されるよう意図されている。
【0032】
閉塞した尿道前立腺部を通じて、あるいは膀胱収縮力低下状態で排尿通路を開くために、操作用コード57等の操作用要素が使用される。操作用コード57は、引いたときにそれほど伸びない、比較的薄い合成または天然の紐の形態とすることができる。操作用コード57は、一端において留置カテーテル20の本体58(図2,3)の一端に連結され、もう一端は、尿道36を通過して、尿道36が陰茎から開口する地点を越えて延びる。体外のある地点において操作用コード57を引くと、本体58は、閉塞した前立腺または尿道前立腺部の外尿道括約筋34のすぐ上流つまり遠位側の領域を通って近位方向に移動する。本体58が近位方向に移動することにより、図9に示すように、外尿道括約筋34の開口部が開く。本体58の近位端が尿道前立腺部の閉塞領域を通って外尿道括約筋34の開口部まで及ぶと、尿は膀胱32から、カテーテル20内の内側通路56を通じて外尿道括約筋34の下流の尿道36へと排出される。尿は、その後、尿道36から、陰茎の外尿道口部の外へと自然に排出される。
【0033】
バルーン40は十分に柔軟であり、操作用コード57を引くと拡張し、膀胱頸部46の組織周辺を圧縮する。膨張頸部46の組織はまた、図9に示すように、圧縮され、膀胱頸部46に押し付けられるバルーン40の圧力によっても圧縮される。バルーン40は、圧縮、拡張されるため、図9に示すように、本体58が操作用コード57によって加えられる引張力を受けて、閉塞した尿道前立腺部から外尿道括約筋開口部までの範囲にわたるのに十分な距離だけ近位方向に動くのを妨げない。
【0034】
カテーテル20の本体58を選択的に伸ばすことにより、膀胱収縮力が弱く、外尿道括約筋34の開口部を自然に開くことができなくても、使用者は操作用コード57を引くことにより、自分の意思で自分の膀胱32から尿を排泄することができる。膀胱の収縮力が低下した状態では、本体58を十分に引き、本体の近位端を外尿道括約筋34の開口部の中まで伸ばし、括約筋34の開口部を強制的に開かなければならない。前立腺が本体58の近位端と外尿道括約筋34の間の領域で腫れているものの、膀胱からの流圧は外尿道括約筋34を拡大するのに十分であれば、本体58は閉塞部の中にとどまるのに十分なだけ引く必要がある。このような場合、括約筋34を拡大させるのに十分な膀胱からの圧力が利用できるため、外尿道括約筋開口部を強制的に開く必要はない。
【0035】
排尿が完了したら、操作用コード57への引張力を解除する。本体58が操作用コード57からの力によって引っ張られているときにバルーン40が圧縮され、また圧縮されたバルーン40が接触したことによって膀胱頸部46の組織が圧迫されると、図8に示されるように、カテーテル20の本体58をその正位置に戻るように運動または移動させるのに十分な長さ方向の力が加わる。正位置に戻ると、バルーン40内の流体は、膀胱頸部46に押し付けられなくなる。カテーテル20がその正位置に戻ると(図8)、外尿道括約筋は、留置カテーテル20の近位端とコイル部54との間の膨張用チューブ44および操作用コード57の長さの周辺で収縮し、これによって、外尿道括約筋34における尿道からそれ以上排尿されなくなる。膀胱収縮力低下状態は、外尿道括約筋34が収縮して、尿道36からの尿流を停止する能力に不利な影響を与えない。したがって、カテーテル20により、外尿道括約筋34は自然な方法で排尿を阻止し、その一方で、本体58の近位端を選択的に伸ばすことで、前立腺閉塞、膀胱収縮力低下および特定の神経障害の状況における排尿不能が克服できる。
【0036】
留置カテーテル20の本体58は、好ましくはシリコンゴムで製作される。本体58は、一般に円筒状の外側形状を有する。本体58は、本体58内を通る通路56を画定する側壁60(図3)を有する。エンドピース62は、カテーテル20の遠位端38において本体58に取り付けられるか、あるいは本体と一体的に構成される。エンドピース62は、カテーテル20と挿入ツール22を尿路26に挿入しやすくするように構成された先端形状を有する。少なくとも1つの、好ましくは1対の尿取り入れ穴64がエンドピース62に形成される。穴64は、エンドピース62の外側と本体58の通路56との間で連通する。膀胱32からの尿は、穴64から通路56を通って本体58の近位端に流れる。
【0037】
バルーン40は、比較的薄く、柔軟で、拡張可能な、通常は透明の無孔材料で作られ、本体58の外側周辺に流体密シール(fluid-tight seals)68,70で取り付けられる柔軟スリーブ66によって形成される。第1の流体密シール68は、エンドピース62が取り付けられている本体58の遠位端の若干近位側に配置され、第2の流体密シール70は、本体58に沿って、第1のシール68から近位方向に、柔軟スリーブ66の軸方向の長さとほぼ等しい距離だけ離間されている。流体密シール68,70は、好ましくは、柔軟スリーブ66を接着剤または熱溶接によって本体58に取り付けることによって形成される。
【0038】
柔軟スリーブ66は、本体58の上に位置付けられ、本体58から開口部72の反対側で軸方向に延びる。流体密シール68,70は、それぞれ開口部72の遠位方向と近位方向に位置付けられる。流体は、流体密シール68,70の間における本体58の外側の容積74の中に、また柔軟スリーブ66の中に導入され、柔軟スリーブ66を外側に拡張させて、バルーン40を作る。
【0039】
膨張用コンジット(inflation conduit)76は、図3に示すように開口部72と連通している。膨張用コンジット76は、本体58の側壁60の中に形成される。膨張用チューブ44の遠位端は、図3,5に示されるように、膨張用コンジット76の近位端の中に挿入される。流体はシリンジ48(図1)から膨張用チューブ44の膨張用通路42の中に輸送され、膨張用コンジット76の中から柔軟スリーブ66の下の容積74の中へと流れ、柔軟スリーブ66が拡張してバルーン40の形になる。
【0040】
図5に示すように、膨張用チューブ44の遠位端を膨張用コンジット76に挿入することにより、膨張用チューブ44は留置カテーテル20と挿入ツール22の間の分離可能な連結部52を迂回し、つまりその周辺を通ることができる。膨張用チューブ44を接着剤によって膨張用コンジット76の中に接着させることにより、強力な流体密封結合が得られる。この接着は、膨張用チューブ44を本体に連結した状態に保ち、尿道36の外から膨張用チューブを引っ張ると、膨張用チューブ44を本体58から破断することなく、カテーテル20を尿路26から取り外すことができる。この点で、膨張用チューブ44はまた、カテーテル20用のテザー(tether)としての役割も果たす。図5に示される分離可能な連結部52により、膨張用通路42と膨張用コンジット76との間の流体連通は、カテーテル20が尿路内に設置されている間に挿入ツール22が留置カテーテル20から分離された後も損なわれず、流体密封状態が保たれる。バルーン40と弁アセンブリ50との間の膨張用通路の完全性が失われないことから、バルーン40は、必要に応じて、留置カテーテルの使用中に定期的に再膨張させることができる。定期的な再膨張は、バルーン40、弁アセンブリ50、またはバルーン40と弁アセンブリ50を連結する通路における小量の漏れによって必要となることがある。
【0041】
膨張用チューブ44は、留置カテーテル20の本体58から尿道36を通って体外に及ぶ長さを有する。膨張用チューブ44の長さは、弁アセンブリ50を人間の体外に位置づけるのに十分である。膨張用チューブ44は、チューブ44内の膨張用通路42が、尿路26の組織と接触してもつぶれないような剛性を有するが、この剛性は、膨張用チューブ44が適度な柔軟性を持たなくなるほど大きくないものとする。膨張用チューブ44が適度な柔軟性を有することにより、チューブは尿路26の一般的な曲線部に収まることができる。
【0042】
弁アセンブリ50は従来の構成であり、図1に示すように、シリンジ48のノズル80が挿入される受容部78を有する。弁アセンブリ50はまた、ノズル80が受容部78から抜き取られると、弁アセンブリ50において膨張用通路42を閉じる従来の内部逆止弁(図示せず)を有する。このように、バルーン40内の流体は、シリンジ48が弁アセンブリ50から取り外されたときに膨張用通路42から漏出するのを防止されるが、逆止弁により、シリンジ48のプランジャ(詳しくは図示せず)が押されたときに、シリンジ48からの流体がバルーン40を膨張させることができる。したがって、バルーン40は、シリンジ48が弁アセンブリ50から切断されても膨張したままである。しかしながら、カテーテルの使用中にバルーン40を再膨張させる必要がある場合、あるいはバルーン40を拡張させるために流体を追加供給する必要がある場合、そのためにシリンジ48を容易に弁アセンブリ50に接続することができる。
【0043】
弁アセンブリ50を使用する代わりに、バルーン40を膨張させた後に、膨張用通路42を近位端において密閉することもできる。例えば、弁アセンブリ50を使って流体がバルーンから抜けるのを防止する代わりに、膨張用チューブ44の近位端に、尿道36の外尿道口から近位方向に離間させた位置でノット(図示せず)を形成し、あるいは結んでもよい。ノット(knot)は膨張用通路42を密閉し、流体が通路から抜けるのを防止し、バルーン40を膨張した状態に保つ。膨張用チューブ42は、ノットの若干近位側の地点で切断される。このような代わりの構成において、弁アセンブリ50を用いない膨張用チューブ44は、尿道36の開放端から適度な距離の範囲に亘る。膨張用チューブ44の近位端に連結された弁アセンブルリ50のような大きな装置を扱う必要がないため、快適さと便利さが改善される。留置カテーテル20をしばらく使った後にバルーン40を再膨張させる必要がある、あるいは流体を追加供給する必要がある場合は、ノットを膨張用チューブ44の端から切り、適当なコネクタを取り付けて、シリンジ48から追加の流体を導入することができる。適当に膨張させた後、膨張用チューブ44の残りの近位部にまたノットを結ぶことができる。膨張用通路42から流体を抜くことによってバルーン40がしぼみ、膨張用チューブ44と操作用コード57を引けば、カテーテル20を尿道36から抜去できる。
【0044】
操作用コード57は、操作用コード57に大きな引張力が加えられても、本体58から切断されないような方法で本体58に固定される。図3から分かるように、操作用コード57を本体58に固定的に取り付けるために、操作用コード57は、側壁60の穴87から本体58の内側通路56に通される。操作用コード57は次に、本体58の外側を横方向に回されてループを形成した後で穴87から戻され、内側通路56に至り、ここで操作用コード57自身に固定される。この構成において、操作用コード57に加えられる引張力が伝えられ、本体58の周辺で操作用コード57を締めようとする力となる。操作用コード57に掛けられる力が本体58を外尿道括約筋34の開口部の中に引き込み、これを開くのに十分であるときに、本体58は、潰れずに操作用コード57を締める力に耐えられる。この配置により、操作用コード57は、図9に示すように、留置カテーテル20を外括約筋34の中に引き込むことができ、このとき、操作用コード57は本体58に損傷を与えず、また本体から外れない。
【0045】
挿入ツール22にカテーテル20が連結された状態で、図4に示すように、コイル部54は挿入ツール22の外側に巻かれ、操作用コード57は、図5,8に示されるように、本体58の内側通路56と挿入ツール22の内部チャネル88の中を通過する。挿入ツール22の外側に巻き付けられることにより、コイル部54は、留置カテーテル20と挿入ツール22が尿路26に挿入される間、膨張用チューブ44を挿入ツール22に隣接した状態に保つのを助ける。したがって、コイル部54は、膨張用チューブ44を挿入ツール22と一緒に尿路26の中に移動させるのを助ける。螺旋状のコイル部54は、挿入ツール22の周囲にゆるく巻き付けられ、これによって挿入ツール22は、挿入ツール22が留置カテーテル20から切断されたときにコイル部54の中央から引き抜くことができる。
【0046】
挿入ツール22は柔軟な管状構造であり、一般に、通常の完全長尿路カテーテルの近位部と同様の構成である。挿入ツール22は少なくとも、体外から尿道36と尿道前立腺部28の中の、最終的に必要な使用場所に留置カテーテル20を設置する地点に至るのに十分な長さとする。挿入ツール22は、好ましくはシリコンゴムで製作されるが、体外から加えられる押す力を挿入ツール22の長さに沿って長さ方向に伝え、これによって留置カテーテル20が取り付けられた挿入ツール22を、尿路26の中に遠位方向に移動させるのに十分な構造的完全性を有するものとする。挿入ツール22の近位端は中空のハンドル82または拡張部分の形状であり、これによって、尿路26へ挿入する際、挿入ツール22を握って、押す力を加える。
【0047】
挿入ツール22と留置カテーテル20との間の分離可能な連結部52は、図5に示すようにスリーブ84を有する。スリーブ84は、例えば接着剤によって、挿入ツール22の遠位端に剛性的に取り付けられる。スリーブ84の遠位部は、挿入ツール22の遠位端を越えて突出し、カテーテル20の内側通路56の中に入る。スリーブ84の遠位部は、内側通路56の中に摩擦によって嵌まり込むような外径を有し、スリーブ84を内側通路56に挿入することによって生じる摩擦は、バルーン40を膨張させる前に挿入、設置する間、尿路26内でカテーテル・ツールアセンブリ24を操作するときに留置カテーテル20を挿入ツール22に保持するのに十分なものとする。スリーブ84の遠位端と本体58との間の、内側通路56の近位端における摩擦抵抗の程度は、バルーン40が膨張され、膀胱頸部46に着座した後に、留置カテーテル20が挿入ツール22から分離できなくなるほど大きくないものとする。
【0048】
スリーブ84は中央開口部86を有し(図5)、これが本体58の内側通路56と挿入ツール22の内側チャネル88との間の通路となる。操作用コード57は、本体58の近位端から、スリーブ84の中央開口部86と内側チャネル88と挿入ツール22のハンドル82を通り、図1に示すように、ハンドル82の近位端から外に延びる。図8に示すように、挿入ツール22が留置カテーテル20から取り外されると、制御コード57は尿道36内に留まり、本体58から近位方向に外尿道口へと延び、操作用コード57は陰茎の尿道の外側から掴むことができる。便利に切断できる機械的コネクタを、スリーブ84によって提供される摩擦接続の代わりに使用することができる。
【0049】
カテーテル・ツールアセンブリ24は、図6−8に示すような方法で挿入、使用される。図6に示すように、カテーテル20と挿入ツール22は、従来の完全長尿路カテーテルの挿入方法と同じ方法で、尿道36から尿路26の中へと挿入される。挿入力は、挿入ツール22とその近位端に取り付けられたハンドル82を押すことによって加えられる。カテーテル・ツールアセンブリ24の遠位方向への移動は、丸みのあるエンドピース62と留置カテーテル20の重大な遠位部が膀胱32の中に位置付けられるまで続けられる。柔軟スリーブ66が膀胱32内に確実に位置付けられるまで十分に挿入する。必ず十分に挿入するために、しばしば、遠位方向の移動を続け、端38が膀胱32の反対側の壁に接触したら停止し、これによりバルーン40が膀胱32内に確実に入る。このように挿入する間、挿入ツール22の周囲に巻き付けられたコイル部54は、膨張用チューブ44の前方つまり遠位部分が留置カテーテル20と一直線に整列し、これと一緒に進むのを助ける。
【0050】
カテーテル・ツールアセンブリ24が十分に挿入されると、図7に示すようにバルーン40が膨張させられる。膨張させるのは、シリンジ48を弁アセンブリ50に接続し、シリンジ48のプランジャ(図示せず)を押して、流体を膨張用チューブ44の膨張用通路42から膨張用コンジット76の中へ、そして開口部72を通って内側容積74の中に押し込み、柔軟スリーブ66が拡張してバルーン40になるようにする。バルーン40が拡大された状態になった後、挿入ツール22を引いて、カテーテル・ツールアセンブリ24を近位方向に移動させ、膨張したバルーン40を膀胱頸部46に着座させる。
【0051】
バルーン40が膀胱頸部46に着座した状態で、挿入ツール22をさらに近位方向に移動させると、図8に示すように、分離可能な連結部52が留置カテーテル20を挿入ツール22から分離する。バルーン40は、留置カテーテル20が挿入ツール22と一緒に尿路26から抜けるのを防止するが、これは、膨張したバルーン40が膨張頸部46より大きいからである。膨張用チューブ44のコイル部54は、外尿道括約筋34から近位方向に位置づけられ、留置カテーテル20が膀胱32内に入るのを防止する。コイル部54は、挿入ツール22をさらに引く動作を妨害せず、これは挿入ツール22の本体がコイル部54の内部を通過するからである。膨張用チューブ44の長さは、弁アセンブリ50を尿路26の外側に位置付けるのに十分である。操作用コード57の長さもまた、操作用コード57の近位端を陰茎の尿路26の外尿道口に位置付けるのに十分である。
【0052】
挿入ツール22が図8から分かるように取り外された後、バルーン40は、膀胱32の中で膨張した状態のままであり、留置カテーテル20の本体58の近位端は尿道前立腺部28の大部分を通るが、外尿道括約筋34の中には延びない。コイル部54は、外尿道括約筋34の反対側つまり近位側に位置する。この最終位置において、バルーン40は、留置カテーテル20が尿道前立腺部28から抜けて、尿道36の中に入るのを防止し、その一方で、コイル部54は、留置カテーテル20が尿道前立腺部28から移動して膀胱32の中に入るのを防止する。膨張用チューブ44と操作用コード57は、尿道括約筋34が膨張用チューブ44と操作用コード57の周辺で収縮して尿流を自然に停止させる能力を妨害しない。
【0053】
カテーテル20が不要となった場合、あるいは留置カテーテル20を定期的に交換する必要がある場合、バルーン40を収縮させると取り外すことができる。収縮は、シリンジ48を弁アセンブルリ50に挿入し、シリンジ48のプランジャ(図示せず)を外側に移動させて膨張用通路42から流体を引き抜くことによって実現する。弁アセンブリ50にシリンジ48を挿入することによって、弁アセンブリ50内の逆止弁が開き、流体が引き抜かれる。前述のように膨張用チューブ44でノットを結び、弁アセンブリ50を使用していない場合には、膨張用チューブ44をノットの遠位方向のある箇所で切って流体を抜く。流体を抜くことによってバルーン40は収縮し、柔軟スリーブ66は、留置カテーテル20の本体58に隣接する収縮位置に移動する(図1,6)。
【0054】
バルーン40が収縮されたら、膨張用チューブ44および/または操作用コード57は、弁アセンブリ50または膨張用チューブ44の近位端を握って引っ張ることにより、引き抜かれる。力は、膨張用チューブ44から留置カテーテル20の本体58に伝えられる。引張力は、コイル部54のコイルを引き締めて伸ばし、これによって、引張力で個々のコイルを長さ方向に分離する結果、その横方向の寸法が縮小する。横方向の寸法が縮小すると、尿道36との接触が少なくなるか、あるいは接触しなくなる。このように、コイル部54はカテーテルを外すのを妨げず、またカテーテルが尿道内を移動するときの大きな不快感を引き起こさない。伝えられる力の量は、留置カテーテル20の本体58が外尿道括約筋34を通過して尿道36に入るのに十分である。収縮されたバルーン40は、留置カテーテル20の遠位端が膀胱頸部46を通過するのを妨害しない。膨張用チューブ44をさらに引くことにより、留置カテーテル20は尿道36内を移動し、最終的に、留置カテーテル20は完全に尿道36の近位端から抜去される。操作用コード57は、留置カテーテル20が尿道36から引き抜かれるときに、膨張用チューブ44への引張力と同時に引かれる。
【0055】
留置カテーテル20の別の実施例90,92をそれぞれ図10−12と図13−15に示す。図10−12に示される留置カテーテル90は、本体58の近位端で内側通路56内に入れ子式に保持されるチューブ部材94を有する。操作用コード57は、チューブ部材94の近位端に取り付けられる。操作用コード57に引張力を加えると、入れ子式のチューブ部材94は、図11に示されるように、本体58の近位端から、外尿道括約筋の若干上流つまり遠位側の尿道前立腺部を通って移動し、これにより、図12に示されるように、外尿道括約筋34の開口部を開け、そこから延びる。図13−15に示される留置カテーテル92は、本体58の近位端において、内側通路56内に保持される拡張・引き込み可能なスリーブ部材96を使用する。操作用コード57は、拡張・引き込み可能なスリーブ部材96の近位端に取り付けられる。操作用コード57に引張力を加えると、スリーブ部材96は、図14に示されるように、本体58の近位端からアコーディオンのように近位方向に外に向かって拡張し、外尿道括約筋34の上流つまり遠位側の尿道前立腺部を通過し、これによって図15に示されるように、外尿道括約筋34の開口部を開け、そこから延びる。
【0056】
留置カテーテル90,92は、膀胱32、本体58の内側通路56、および、それぞれ入れ子式のチューブ部材94または拡張可能なスリーブ部材96を通って、括約筋34を通過して尿道36へと尿を排出する。その後、尿は尿道36から陰茎の外尿道口の外に流れ、これによって、収縮力の低下した膀胱が自然に外尿道括約筋34を拡張するのに十分な流圧を発生できないことが有効に回避、克服される。排尿が終了したら、入れ子式のチューブ部材94と拡張可能なスリーブ部材96は、尿道括約筋34の外に遠位方向に引き込まれ、本体58の中に戻り、これによって、外尿道括約筋34はその開口部を閉じ、さらに無意識に排尿されることを防止する。
【0057】
留置カテーテル90,92において、入れ子式チューブ部材94と拡張・引き込み可能な柔軟スリーブ部材96は、本体58から選択的に伸張可能な導尿コンジット(urine conducting conduit)となる。操作用コード57に加えられる引張力により、伸展可能な導尿コンジット94,96が伸び、その間、留置カテーテル90,92の本体58は、尿道前立腺部28と膀胱32の中の固定または安定した位置に基本的に留まる。操作用コード57に引張力が加えられても、留置カテーテル20の場合のように、本体58は移動せず、またバルーン40を圧縮しない。その結果、バルーン40を過剰に圧縮し、バルーン40を不注意で破裂させ、あるいは留置カテーテル20の本体58が図9に示すように近方向に移動されるときに、バルーン40が膀胱に対して、また膀胱内で圧縮されることによって膀胱の拡張または膨張が膀胱頸部46を刺激することにつながるリスクがなくなる。その代わりに、操作用コード57への引張力により、入れ子式チューブ94または拡張可能なスリーブ96は遠位側の尿道前立腺部28の短い部分と外尿道括約筋34の開口部を通過することができ、その際、留置カテーテル20の本体58全体を移動させることによる大きな抵抗や不快感が発生しない。
【0058】
伸展可能な導尿コンジット94,96の使用により、カテーテル90,92の本体58は、男性個人によって尿道前立腺部28の生理学的な長さが異なっても、設定された、あるいは一定のサイズにすることができる。尿道前立腺部内の本体58の長さが一定であっても、入れ子式のチューブ部材94または拡張可能なスリーブ部材96は、尿道前立腺部の近位の閉塞部を開き、外括約筋34の開口部を開けるのに十分な距離だけ伸展される。留置カテーテル内を通過し、尿道36に入る排尿通路全体の長さは、伸展可能な部材94,96によってより多様化できる。
【0059】
カテーテル90を、図10−12に関連してさらに詳しく説明する。カテーテル90の入れ子式チューブ部材94は、本体58の内側通路56の中に嵌まり込み、図10に示される引き込まれた位置から図11に示される伸展した位置まで、内側通路56内を長さ方向にスライドさせることによって移動する。入れ子式チューブ部材94は、通常、引き込みスプリング98によって本体58内の引き込み位置にバイアスされる。引き込みスプリング98は、一端が内側通路56内で本体58のエンドピース62に取り付けられ、もう一端がチューブ部材94の遠位端に取り付けられる。内側通路56内のその通常の引き込み位置において(図10)、チューブ部材94のどの部分も、本体58の近位端の外に延びていない。操作用コード57はチューブ部材94の近位端に取り付けられ、例えば、チューブ部材94の側壁に形成される小さな開口部を通して結び付けられる。引き込みスプリング98のバイアスを克服するのに十分な力で操作用コード57を引くと、チューブ部材94は、本体58の中の引き込み位置から伸展位置へと近位方向に移動する(図11)。チューブ部材94の外側表面から本体58の内部側壁表面に形成されたスロットの中に延びる半径方向の突起部(いずれも図示せず)等の抑制手段により、チューブ部材94が内側通路56の近位端から完全に抜けるのが防止される。
【0060】
カテーテル20が尿道前立腺部28に挿入された状態で、操作用コード57を引くと、チューブ部材94がその伸展位置に移動する間、チューブ部材94は、図12に示されるように外尿道括約筋34の開口部を強制的に開く。伸展位置において、チューブ部材94の内側排尿管100が本体58の内側通路56から、外尿道括約筋34を通って、括約筋34の近位側の尿道36へと尿を導く。尿が外尿道括約筋34の下流つまり近位側に運ばれると、その後、尿は自然に尿道の残りの部分を通過し、陰茎の尿道36が体外に向けて開く地点から外に排出される。
【0061】
排尿が終了すると、操作用コード57は解放され、引き込みスプリング98がチューブ部材94を、その伸展位置から遠位方向の外尿道括約筋34の開口部の外に移動させ、本体58の内側通路56内の引き込み位置に戻す。すると外尿道括約筋34は、操作用コード57と膨張用チューブ44の周辺にあるその開口部を自由に収縮させ、自然な方法でさらに尿が流れるのを防止する。
【0062】
カテーテル92を、図13−15を参照しながらさらに詳しく説明する。拡張・引き込み可能な柔軟スリーブ部材96は、薄いプラスチック等の柔軟材料を、コイルスプリング104の周辺に被覆、鋳型成形またはその他の方法によって取り付け、あるいは一体的に形成した比較的薄い壁102を有する。柔軟な壁102とコイルスプリンク104は、図14に示されるように、壁102が伸展したコイルスプリング104の個々のコイルの間に伸びる間、コイルスプリング104が長さ方向に伸びるような方法で接続または一体的に構成される。壁102は十分に柔軟で、薄く、図13に示されるように、コイルスプリング104がその伸展位置から引き込み位置に移動するのを、壁102がそれほど妨げない。比較的薄く、柔軟な壁102は、スプリング104の個々のコイルの間でアコーディオンのように折り畳まれ、スプリング104の個々のコイルは、基本的に圧縮され、あるいは相互に隣接した状態になる。柔軟な壁102は、アコーディオンのように折り畳まれるため、コイルスプリング10の引き込みを妨害しない。伸展可能なスリーブ部材96が伸展した位置と引き込まれた位置のどちらにおいても、壁102は、連続的かつ一体的に、コイルスプリング104の長さに沿って伸びる。
【0063】
拡張可能なスリーブ部材96の外寸は、本体58の内側通路56の内寸より若干小さいため、拡張可能なスリーブ部材96は内側通路56の中に留まる。スリーブ部材96の遠位端に、コイルスプリング104の遠位側コイル全体と、スプリング104の遠位側コイルを取り囲む壁102があり、これが接着剤等で、内側通路56の内側表面に固定的、安定的に接着される。その結果、スリーブ部材96の遠位端は、本体58に関して移動しない。拡張可能なスリーブ部材96の残りの近位部は、コイルスプリング104のその他のコイルとこれを取り囲む壁102の部分を含め、全て遠位端での剛性接着部の近位方向に位置付けられており、内側通路56内で近位方向に自由に移動する。拡張可能なスリーブ部材96の遠位端を内側通路56内に取り付けることにより、スリーブ部材96を通る内側排尿管106ができる。連続する一体壁102は、スリーブ部材96を通過する排尿管106を画定する。
【0064】
操作用コード57は、拡張可能なスリーブ部材96の近位端に取り付けられる。取り付けは、壁102に小さな穴を開けることにより、操作用コード57の端部をコイルスプリング104の近位の1つのコイルの周辺にループを作って行われる。操作用コード57の端部は1つのコイルに結ばれ、これによって操作用コードは拡張可能なスリーブ部材96の近位端に固定的に取り付けられる。操作用コード57を引くと、スリーブ部材96は、内側通路56内を長さ方向に拡張し、最終的にスリーブ部材96の近位端が本体58から拡張する。スリーブ部材96は、本体58から伸展位置まで拡張して、図15に示されるように外尿道括約筋34の開口部を開ける。内側排尿管106は、拡張可能なスリーブ部材102の長さを通過して、本体58の内側通路56からの流体伝導路へと続く。尿は、膀胱32から、内側通路56と内側排尿管106を通って、外尿道括約筋34の下流つまり近位側において尿道36へと流れることができる。尿がいったん外尿道括約筋34の下流つまり近位側に運ばれると、その後、尿は自然に尿道の残りの部分を流れ、尿道36が体外に向けて開く陰茎部分から排出される。
【0065】
排尿が終了すると、操作用コード57は解放され、内側コイルスプリング104が拡張可能なスリーブ部材96を括約筋34の開口部から引き込み、本体58の内側通路56に戻す。拡張可能なスリーブ部材96が外括約筋34から引き込まれると、筋肉34は、収縮して膨張用チューブ44と操作用コード57の周辺の開口部を閉じ、自然な方法で膀胱32からの尿流を停止させる。
【0066】
図10−15に示される留置カテーテル90,92は、前述のようにカテーテル20を挿入する場合と基本的に同じ方法で、尿路26内に挿入される。入れ子式チューブ部材94と拡張可能なスリーブ部材96は、それぞれ図10,13において示されるその引き込み位置において、本体58の近位端において十分なスペースを確保し、挿入ツール22の遠位端におけるスリーブ84が本体58と結合して、図5に示されるように留置カテーテル20を挿入するための新たな連結部52を作る。その結果、挿入ツール22は、カテーテル20に連結されるのと同じ方法でカテーテル90,92に連結され、カテーテル90,92を前述の方法で挿入することができる。
【0067】
特定の状況では、膀胱32内に血栓が形成され、膀胱から内側通路56への流体が流れるための開口部64を閉塞することがある。これらの血栓その他の障害物を除去するために、内側通路56を、整理食塩水またはその他の適当なフラッシング液(flushing liquid)で定期的に洗い流すことが必要または好ましい。フラッシング液は、挿入ツールが留置カテーテルに接続された状態の間に、留置カテーテル挿入後、挿入ツール22の内側チャネル88を通じて、カテーテル20,90,92に運ばれる。一般に、フラッシング液は、ハンドル82から挿入ツール22の内側チャネル88を通じて、スリーブ84の中央開口部86から内側通路56内を通って押し出される。フラッシング液は、内側通路56または開口部64内の全ての血栓を溶解し、通路56に、膀胱32からの尿流の障害となるものがないようにする。溶解した血栓は、内側通路56から内側チャネル88を通って、尿道36の外に流れ、あるいは血栓は、フラッシング液と共に膀胱32に押し戻され、ここで膀胱内の尿内に溶解することもある。
【0068】
留置カテーテル20,90,92のフラッシングを行うための流体連絡路は、挿入ツール22が留置カテーテル20から切断、分離された後に確立される。操作用コード57は、挿入ツール22を尿道36から戻し、留置カテーテルと接触し、新たな連結部52を再構築するまで(図5)案内するためのガイドとして使用される。挿入ツール22は、操作用コード57の近位端の上に挿入され、尿道36の中に遠位方向に押し込まれ、その間、操作用コード57は、尿道内へと移動する挿入ツール22のためのガイドとなるのに十分な張りに保持される。挿入ツール22は、コード57に追随して、膨張用チューブ44のコイル部54の中央から外尿道括約筋34の開口部へと至る。挿入ツール22が引き続き遠位方向に移動すると、括約筋34の開口部が開き、挿入ツール22はそこを通過することができる。挿入ツール22の遠位方向の移動はさらに続き、最終的に挿入ツール22のスリーブ84が内側通路56の近位端の中に入り、図5に示される新たな連結部52が再構築される。カテーテル90,92において、操作用コード59への弱い引張力が解除され、入れ子式のチューブ部材94と拡張可能なスリーブ部材96はカテーテルの本体58の中に引き込まれ、それによって、スリーブ84は内側通路56の中に入り、新たな連結部52が再構築される。その後、フラッシング液が挿入ツール22から内側通路56の中へと導かれ、内側通路56の中から障害物が排除される。
【0069】
あるいは、留置カテーテル20の近位端は、操作用コード57を引くことによって、外尿道括約筋34の開口部から移動され、この位置にあるときに、挿入ツール22との分離可能な連結部52が再構築され、一方、本体58の近位端は外尿道括約筋34の開口部の近位方向つまり下流に位置する。さらに別の方法として、図16に示されるフラッシングチューブ108を、挿入ツール22の代わりに使用することができる。フラッシングチューブ108の遠位端は、スリーブ84と同じサイズであるため、挿入ツール22のスリーブ84が挿入されるのと実質的に同じ方法(図16には示されていない)で本体58の近位端に挿入することができる。フラッシングチューブ108は、内側チャネルまたは通路を有し、この中からフラッシング液がカテーテル20,90,92の内側通路56の中に送られて、障害物を流し出す。
【0070】
カテーテル90の入れ子式のチューブ部材94またはカテーテル92の拡張可能なスリーブ部材96を使ったフラッシング液用連通路の構築は、図16に示されるように、フラッシングチューブ108を使用することによって実現できる。操作用コード57を引いて、チューブ部材94またはスリーブ部材96を近位方向に、外尿道括約筋34の開口部の中へと移動させる。制御コード57をフラッシングチューブ108の内側チャネルの中に通し、フラッシングチューブ108を制御コード57に追随させて尿道36の中に挿入し、その中を遠位方向に移動させ、最終的に、フラッシングチューブ108がチューブ部材94またはスリーブ部材96のいずれか一方の近位端に接触するようにする。フラッシングチューブ108の外寸または直径は、それぞれチューブ部材94またはスリーブ部材96の内側排尿管100または106の中に嵌まり込む大きさである。その後、フラッシング液は、フラッシングチューブ108の内側チャネルまたは通路を通じて運ばれる。フラッシング液は、管100または106を通って内側通路56の中に入り、血栓や障害物を洗い流し、溶解し、除去し、あるいは移動させる。フラッシングチューブ108からチューブ部材94またはスリーブ部材96への流体連通路は、フラッシング液の流れと圧力が十分であれば、フラッシング液が障害物を除去するのに流体密閉状態である必要はない。
【0071】
図16に示されるフラッシングチューブ108は、入れ子式のチューブ部材94または拡張可能なスリーブ部材96の内側排尿管100または106の中に嵌まり込むサイズであるものの、フラッシングチューブ108のサイズを大きくし、その内側チャネルまたは通路をチューブ部材94またはスリーブ部材96の上に嵌るようにしてもよい。このような場合、チューブ部材94またはスリーブ部材96を伸展位置に移動して、外尿道括約筋34の近位つまり下流側において、より大きなサイズのフラッシングチューブ108と伸展したチューブ部材94またはスリーブ部材96の間に流体接続が確立されるようにすべきである。比較的直径の小さなラッシングチューブ108を用いた場合、そのチューブ部材94またはスリーブ部材96が引き込み位置にあるときに、留置カテーテル90または92と流体接続を確立することが可能である。このような場合、チューブ部材94またはスリーブ部材96が引き込み位置にある間に、より小さな直径のフラッシングチューブ108は、外尿道括約筋開口部から遠位方向に、内側排尿管100または106内へと移動される。この場合、膨張用チューブ44のコイル部54は、カテーテル90または92が膀胱32の中に押し込まれないようにするための固定具として機能する。
【0072】
完全長カテーテルを使用する必要性をなくすことにおける有利な用途に加え、部分長留置カテーテル20,90,92はまた、膀胱収縮力低下または尿道前立腺部閉塞による尿閉の問題の診断においても有益である。膀胱収縮力低下と尿道前立腺部閉塞のどちらも、尿流を減らす(あるいは重い場合は流れなくする)が、尿道前立腺部閉塞の治療は、膀胱収縮力低下の治療とは実質的に異なる。したがって、この種の尿路閉塞の原因を正しく診断することが非常に重要である。膀胱収縮力低下または尿道前立腺部閉塞の診断に加え、部分長留置カテーテルは、外尿道括約筋のある種の神経障害をその原因として考えることにおいても有益である。
【0073】
膀胱収縮力低下を診断するための一般的な方法においては、膀胱内圧測定調査が行われる。膀胱内圧測定は不快であり、時間とコストが掛かり、尿道感染のリスクが高まる。カテーテル20,90,92あるいは上記の先願の米国特許出願に記載されているカテーテル等の部分長留置カテーテルは、大きな費用、時間消費、不快さまたは尿道感染のリスク増大を伴わずに、簡単な方法で膀胱収縮力低下または尿道前立腺部閉塞を診断する有効かつ信頼性の高い方法に使用することができる。このような部分長留置カテーテルを使った、膀胱収縮力低下または尿道前立腺部閉塞の診断方法110を図17に示す。図17に示されるように、方法110の各ステップは別個の参照番号で示されている。
【0074】
方法110では、まず、図の112において、部分長留置ステーテルを尿道36に挿入し、最終的に、カテーテルがその使用位置(図8等)に位置付けられるようにする。留置カテーテル20が挿入されたら、114において、尿流を観察する。次に、116において、尿流が正常または容認可能か否か、あるいは尿流が受入可能なレベルより少ないか否かを判断する。尿流が容認可能であれば、118に示すように、尿流減少の原因は尿道前立腺部閉塞である。尿流が容認可能であるのは、部分長カテーテルを尿道前立腺部内に設置したことで、障害のないカテーテルの内側通路56ができ、この中を膀胱からの尿が流れるためである。つまり、部分長カテーテルを尿道前立腺部内に設置すると、前立腺の腫脹または膨張による閉塞があっても、尿通路が開かれる。部分長カテーテルが挿入された後に留置カテーテルを通じた尿流が容認可能なレベルとなれば、部分長留置カテーテルを挿入する前の容認不能な尿流は、尿道前立腺部閉塞に起因していたことを示し、これは118において診断される。
【0075】
設置された部分長カテーテルによって開いた内側通路56により、膀胱により作られる流圧は、尿道前立腺部を通って外尿道括約筋34へと伝えられる。流圧連通路が、膀胱からカテーテルを通って外尿道括約筋34に至るように確立されるこのような状況において、括約筋34の開口部が拡張せず、十分な量の尿を誘導しなければ、膀胱収縮力低下が、不十分な尿流の原因として考えられる。したがって、116において尿流が依然として容認不能と判断されれば、膀胱収縮力低下が示され、120においてそのように診断される。
【0076】
120の診断は、カテーテル20の本体58またはカテーテル90の入れ子式チューブ部材94あるいはカテーテル92の拡張可能なスリーブ部材96を移動させ、外尿道括約筋34の開口部を開き、その後の尿流を観察することによって検証される。そのときの尿流レベルが容認可能であれば、外尿道括約筋34の開口部を開くことが必要であり、これは膀胱からの圧力刺激が外尿道括約筋34を自然に開かせるのに不十分であることを示しているため、120における膀胱収縮力低下の診断が確認される。
【0077】
先行技術において開示されているもののように、外尿道括約筋開口部を機械的に開く能力を持たない部分長留置カテーテルは、方法110を実行することによって膀胱収縮力低下を診断するのに有効であるが、カテーテル20,90,92は、特に、その外尿道括約筋の開口部を機械的に開いて、膀胱収縮力低下の診断を検証することができるため、膀胱収縮力低下の診断を検証するのに有益である。
【0078】
図17に示す方法はまた、外尿道括約筋に影響を与える特定の神経障害の診断または関与においても有益である。部分長留置カテーテルを挿入した状態で故意によらない排尿があれば、その筋肉の開口部が、閉じているべきときに開いていることから、外尿道括約筋の神経障害が関与している。一方、部分長留置カテーテルが挿入された状態で排尿が行われない場合には、外尿道括約筋の開口部が希望通りに開かないことから、外尿道括約筋の神経障害が関与している。このように、本発明の方法は、膀胱収縮力低下または尿道前立腺部閉塞ではないと判断された場合に、神経障害を診断するために使用することができる。あるいは、神経障害が原因として排除された場合、本発明による方法は、尿道前立腺部閉塞または膀胱収縮力低下の診断において有益である。
【0079】
図17に関連して説明した方法110は、カテーテル20,90または92の本体58の近位端と、外尿道括約筋34の遠位側との間の閉塞を見分けるには有効でない。一般に、この比較的短い尿道前立腺部の部分の閉塞は、前立腺の病変の結果として発生しない。なぜなら、閉塞はより範囲が広く、尿道前立腺部内のより中央にあるからである。この比較的短い部分の閉塞は、経尿道的前立腺切除(TURP)、経尿道的マイクロ波温熱療法(TUMT)、ラジオ波凝固ニードルアブレーション(TUNA)、間質レーザ・温水誘発温熱療法(WIT)等の治療後の組織腫脹によって発生する。この種の治療を行った場合は腫脹があると予測されるため、膀胱収縮力低下と尿道前立腺部閉塞を正しく区別することについては、通常、それほど難しくない。したがって、方法110の有効性は、前立腺閉塞または膀胱収縮力低下による尿路閉塞の問題の診断において、非常に有益で生産的である。
【0080】
部分長カテーテル20,90,92では、外尿道括約筋34を自発的かつ自然に使用することによって、尿の流れを開始、停止することができる。前立腺30の中の留置カテーテルの位置は、外科的処置により影響を受けた前立腺30の組織との接触部分からの尿の流れのほとんどを迂回し、これによって、痛みや刺激を防止または軽減できる。カテーテル20,90,92はまた、BPHまたはその他の疾患あるいは外科治療によって病変した、あるいは腫れた前立腺から尿が流れる通路を確保できる。膀胱収縮力が低下した男性は、完全長カテーテルを使用せずに、選択的に排尿を制御できる留置カテーテル20,90または92を使用することから恩恵を受けられる。その他のさまざまな恩恵や利点はすでに説明したか、あるいは本発明の効果を理解することによって明らかとなるであろう。
【0081】
本発明の現時点で好ましい実施例とその改良の多くについて、これまである程度具体性をもって説明した。説明文には記載されているが、状況によってはコイル54が不要となることもある。本発明のこのような実施例によるカテーテル21を図18に示す。尿道36からコイル54のない膨張用チューブ45を延ばすことにより、カテーテルがその正位置から遠位方向に移動するのを制限し、またはこれに抵抗し、この抵抗は、排尿時以外に膨張用チューブ45周辺の外尿道括約筋34が正常に収縮することによってさらに大きくなる。カテーテルが、その正位置から遠位方向にある程度移動するのは妨害されない。これは、操作用コード57を引くことにより、バルーン40が膀胱頸部46と接触している状態で、カテーテルをその正位置から戻すことができるからである。カテーテルを遠位側に移動した位置から正位置に戻すのは、コイル54が膨張用チューブ44に設けられているか否かとは別に、操作用コードを引くのと同時に膨張用チューブ45を引くことによって容易になる。
【0082】
操作用要素とカテーテルを排尿に使用する場合、近位端が外尿道括約筋に遠位方向から隣接した状態での留置カテーテル2の位置は、操作用要素に力が加えられる度に反復的に調整される。したがって、膨張用チューブ45にコイル部がなくても、所望の位置に保たれる。
【0083】
カテーテルのさらに別の実施例を図19に示す。この実施例において、膨張用チューブ45は、カテーテルの近位端を正位置から外尿道括約筋の開口部を通って移動させるための、操作用要素としても使用される。膨張用チューブ45を操作用要素として使用する場合、操作用コードは不要となる。また、図2,3,6−9,15,16,18,19に示されるカテーテルをさらに組み合わせることも、本発明の範囲内で可能である。
【0084】
以上、本発明の現時点で好ましい実施例とその改良の多くを、ある程度の具体性をもって説明した。説明は、本発明を実現するための好ましい例に関するものであり、必ずしも本発明の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は、付属の特許請求範囲により定義されている。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施例を取り入れた部分長留置前立腺カテーテルの、挿入ツールに取り付けられ、シリンジと一緒に使用されている状態の斜視図である。
【図2】図1のカテーテルの、挿入ツールが取り除かれ、留置カテーテルのバルーンが拡張された状態の拡大斜視図である。
【図3】図2のカテーテルの、一部を詳細に示す、略長軸平面から見た長さ方向の拡大断面図である。
【図4】図1の略線4−4の平面から見た横方向の拡大断面図である。
【図5】図1の略線5−5の平面から見た、図1に示す留置カテーテルと挿入ツールのアセンブリの分離可能な連結部の長さ方向軸の部分拡大断面図ある。
【図6】尿道内に挿入した状態の図1に示す留置カテーテルと挿入ツールの一部と、人間の男性の外尿道括約筋、尿道前立腺部および尿路の膀胱を示した斜視図であり、生理学的部分は一般に断面で示す。
【図7】図6と同様の図で、バルーンを膀胱内で膨張させた状態の図である。
【図8】図6,7と同様の図で、挿入ツールを留置カテーテルから分離した状態の図である。
【図9】図6−8と同様の図で、外尿道括約筋開口部から尿を排出するときの留置カテーテルの使用状態を示す図である。
【図10】入れ子式または伸展可能なチューブ部材を用いた、本発明の部分長留置カテーテルの別の形態の長さ方向の拡大断面図である。
【図11】入れ子式部材が伸展位置にある、図10に示す留置カテーテルの部分図である。
【図12】図9と同様の図で、外尿道括約筋開口部を通じた排尿に図10,11に示す留置カテーテルを使用した様子を示す図である。
【図13】伸展可能な柔軟スリーブ部材を使用する本発明による部分長カテーテルの別の形態の長さ方向の拡大断面図である。
【図14】図13に示す留置カテーテルの、柔軟スリーブ部材が伸展した位置にある状態の部分図である。
【図15】図9,12と同様の図で、図13,14に示す留置カテーテルの、外尿道括約筋開口部から尿を排泄する時の使用状態を示す図である。
【図16】図12,15と同様の図で、さらに図10,13に示す留置カテーテルとともにフラッシングチューブを使用した状態を示す図である。
【図17】尿道前立腺部の閉塞または膀胱収縮力低下の状態を診断するための部分長留置カテーテルの使用方法を示すフローチャートである。
【図18】さらに別のカテーテルの実施例の、挿入ツールを取り外し、留置カテーテルのバルーンを拡張させた状態の拡大斜視図である。
【図19】また別のカテーテルの実施例の、挿入ツールを取り外し、留置カテーテルのバルーンを拡張させた状態の拡大斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間男性における尿を、膀胱(32)から前立腺(30)と外尿道括約筋(34)開口部を通して、外尿道口で終わる尿道(36)へと排出させ、前記尿が、遠位側の位置にある前記膀胱から近位側の位置にある前記外尿道口へと流れるようにする部分長留置カテーテル(20)であって、
遠位端と近位端を有する本体(58)であって正位置を確立するのに十分な長さを有し、前記正位置にては、前記遠位端が前記膀胱内にあり、かつ前記近位端が前記外尿道括約筋に遠位方向から隣接し、前記本体は、前記遠位端から前記近位端まで延びて前記膀胱内の前記尿と連通する内側通路(56)を画定する本体と、
前記本体の前記遠位端に連結される遠位側固定要素(40)であって、前記膀胱から前記尿道前立腺部への前記開口部に隣接する前記膀胱頸部(46)と接触し、前記本体が前記正位置から近位方向に移動するのを抑止するように大きさが拡張可能な遠位側固定要素と、
前記本体の遠位端に連結され、前記外尿道括約筋(34)の開口部と前記尿道を通過し、前記外尿道口の外に位置する近位端まで延びるのに十分な長さを有する操作用要素(57)であって、前記操作用要素の前記近位端から前記本体に力を伝え、前記カテーテルの前記近位端を前記正位置から前記外尿道括約筋開口部を通って選択的に移動させ、前記膀胱からの尿を、前記内側通路を通って前記外尿道括約筋の近位側の位置にある前記尿道に導くことのできる制御用要素と、
を備えることを特徴とする留置カテーテル。
【請求項2】
前記操作用要素は、前記カテーテル全体を近位方向に移動させ、前記カテーテルの前記近位端を前記正位置から前記外尿道括約筋の前記開口部を通って前記近位方向に選択的に移動させるのに十分な力を伝えることを特徴とする請求項1に記載の留置カテーテル。
【請求項3】
前記操作用要素(57)は、前記本体に連結された操作用コードでなり、
前記操作用コードは、前記遠位側固定要素を膀胱頸部に圧迫し、前記カテーテル全体を前記近位方向に移動させ、これによって前記カテーテルの前記近位端を前記正位置から前記外尿道括約筋の前記開口部を通って近位方向に移動させるのに十分な引張力を伝えることを特徴とする請求項2に記載の留置カテーテル。
【請求項4】
前記遠位側固定要素(40)は、流体で膨張させられた膨張可能なバルーンでなり、
前記カテーテル全体が前記近位方向に移動され、これによって前記カテーテルの前記近位端が前記正位置から前記外尿道括約筋の前記開口部を通って近位方向に移動されると、前記膨張可能なバルーンが前記膀胱頸部に圧迫されることを特徴とする請求項3に記載の留置カテーテル。
【請求項5】
前記膨張可能なバルーンを前記膀胱頸部に圧迫し、前記カテーテルの前記近位端を、前記外尿道括約筋の前記開口部を通って前記遠位方向に移動させる力により、前記操作用コードへの前記力が解除されると、前記本体が前記正位置に戻ることを特徴とする請求項4に記載の留置カテーテル。
【請求項6】
前記本体(58)は、前記操作用要素(57)への前記力が、前記本体(58)が前記外尿道括約筋(34)の前記開口部の中に入り、これを開くのに十分であるときに、潰れないような機械的完全性を有することを特徴とする請求項1に記載の留置カテーテル。
【請求項7】
前記本体は伸展可能な近位端部(94,96)を有し、
前記操作用要素は、前記本体の前記伸展可能な近位端部に連結され、前記伸展可能な近位端部を前記正位置から前記外尿道括約筋の前記開口部を通って近位方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載の留置カテーテル。
【請求項8】
バイアス要素(98,104)は、前記伸展可能な近位端部と前記本体の間に連結され、前記操作用コードに引張力が加えられなくなると、前記伸展可能な近位端部を、伸展状態から、前記外尿道括約筋の前記開口部を通して戻すことを特徴とする請求項7に記載の留置カテーテル。
【請求項9】
前記本体の前記伸展可能な近位端部(94,96)は、前記本体に関して入れ子式に移動可能なチューブ部材でなることを特徴とする請求項7に記載の留置カテーテル。
【請求項10】
前記操作用要素は、前記入れ子式チューブ部材に連結された操作用コードでなり、
前記操作用コードは、前記入れ子式チューブ部材を前記本体に関して近位方向に、前記外尿道括約筋の前記開口部を通って移動させるのに十分な引張力を伝えることを特徴とする請求項9に記載の留置カテーテル。
【請求項11】
前記チューブ部材と前記本体の間に連結され、前記操作用コードに引張力が加えられなくなると、前記入れ子式チューブ部材を前記伸展状態から、前記外尿道括約筋の前記開口部を通って戻すバイアス要素(98)をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の留置カテーテル。
【請求項12】
前記本体の前記伸展可能な近位端部は、前記本体に関して拡張可能な柔軟スリーブ部材(96)でなることを特徴とする請求項7に記載の留置カテーテル。
【請求項13】
前記操作用要素は、前記スリーブ部材に連結された操作用コードでなり、
前記操作用コードは、前記スリーブ部材を前記本体に関して前記近位方向に、前記外尿道括約筋の前記開口部を通って拡張させるのに十分な引張力を伝えることを特徴とする請求項12に記載の留置カテーテル。
【請求項14】
前記スリーブ部材は、アコーディオンのように折れ曲がることによって拡張することを特徴とする請求項13に記載の留置カテーテル。
【請求項15】
前記スリーブ部材は、前記操作用コードに引張力が加えられなくなると、前記スリーブ部材を、伸展状態から、前記外尿道括約筋の前記開口部を通して引き込むバイアス要素(104)を備えることを特徴とする請求項13に記載の留置カテーテル。
【請求項16】
前記伸展可能な遠位端部は、前記本体の前記内側通路内に完全に位置付けられることを特徴とする請求項7に記載の留置カテーテル。
【請求項17】
前記遠位側固定要素(40)は、前記本体に取り付けられた膨張可能なバルーンでなり、さらに、
前記本体に連結された遠位端を有する膨張用チューブ(44)であって、前記本体から前記外尿道括約筋と前記尿道を通って、前記膨張用チューブの近位端がある前記外尿道口まで延びるのに十分な長さを有し、前記膨張用チューブは、前記膨張用チューブの前記近位端から延びて前記バルーンと連通状態にある膨張用通路を形成し、前記膨張用通路の中を前記バルーンを膨張させるための流体が輸送される膨張用チューブを備えることを特徴とする請求項1に記載の留置カテーテル。
【請求項18】
前記本体に連結され、前記遠位側固定要素が前記膀胱頸部に接触すると、前記外尿道括約筋の前記近位側のある位置に位置付けられる近位側固定要素(54)であって、前記本体を前記正位置から遠位方向に移動しないように制約し、前記外尿道括約筋の前記開口部が収縮すると、前記外尿道括約筋の近位側の位置において、前記尿道内に前記膨張用チューブのコイル部を有する近位側固定手段をさらに備えることを特徴とする請求項17に記載の留置カテーテル。
【請求項19】
人間男性における、尿道前立腺部の閉塞または膀胱収縮力低下のいずれか一方に起因する尿路閉塞を診断する方法であって、
遠位側の位置にある膀胱から、前立腺と外尿道括約筋の開口部と尿道を通過して、近位側の位置にある前記外尿道口から尿を流すステップと、
尿道前立腺部内に部分長留置カテーテルを設置し、前記カテーテルの内側通路を持った膀胱から、前記括約筋に遠位側から隣接する前記カテーテルの前記近位端における位置までの、流体連通を確立するステップと、
前記カテーテルの中に尿を流すステップと、
前記外尿道口からの尿流が、前記カテーテルを前記尿道前立腺部に設置していないときの尿流と比較して、前記カテーテルを前記尿道前立腺部に設置したときのほうが大きいか否かを判断するステップと、
前記カテーテルを前記尿道前立腺部に設置した場合の尿流が、前記カテーテルを前記尿道前立腺部に設置していないときの尿流より有意に大きい場合に、前記尿道前立腺部の閉塞と診断するステップと、
前記カテーテルを前記尿道前立腺部に設置したときの尿流が、前記カテーテルを前記尿道前立腺部に設置していないときの尿流と実質的に違わない場合に、膀胱収縮力低下と診断するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
膀胱収縮力低下の診断を、前記内側通路を膀胱内の尿と流体連通した状態に保ちながら、前記内側通路の前記近位端を、前記外尿道括約筋の前記開口部を通って近位方向に選択的に移動させることによって検証するステップと、
前記外尿道口からの尿流が、前記内側通路の前記近位端が前記外尿道括約筋の前記開口部から延びているときに、より大きいか否かを判断するステップと、もしそうであれば、
前記膀胱収縮力低下の診断を確認するステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
人間弾性における尿を、膀胱から、前立腺と外尿道括約筋の開口部を通して、外尿道口で終わる尿道へと排出し、前記尿が、遠位の位置にある前記膀胱から、近位の位置にある前記外尿道口まで流れる方法であって、
部分長留置カテーテルを正位置に位置決めするステップであって、前記正位置にて、前記カテーテルの遠位端が膀胱内にあり、かつ前記カテーテルの近位端が、前記外尿道括約筋の遠位側の位置にある前記尿道前立腺部内に配置されるステップと、
前記カテーテルを固定して、前記カテーテルの前記正位置からの近位方向への移動を妨げるステップと、
前記膀胱から、前記カテーテルの前記遠位端と近位端との間に延びる前記カテーテルの内側通路を通って尿を導くステップと、
前記カテーテルの前記近位端を、前記正位置から前記外尿道括約筋の前記開口部を通して、近位方向に選択的に移動させ、前記膀胱から前記内側通路と前記尿道を通して尿を導き、尿を前記膀胱から排出するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
前記膀胱からの排尿が完了した後に、前記カテーテルの前記近位端を、前記外尿道括約筋の前記開口部を通して、遠位方向に移動させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記カテーテルが前記正位置にある間、前記外尿道括約筋の前記開口部の自然の収縮によって、前記カテーテルの前記遠位端から前記尿道への尿の排出を防止するステップをさらに含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記カテーテルの遠位側の固定を維持し、前記内側通路を前記膀胱内の尿と連通状態に保ちながら、前記カテーテルの前記近位端を、前記正位置から、前記外尿道括約筋の前記開口部を通して近位方向に選択的に移動させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項25】
操作用コードを、前記カテーテルから、前記外尿道括約筋の前記開口部と前記尿道を通して、前記外尿道口の外の位置まで延ばすステップと、
前記操作用コードを動かして、前記カテーテルの前記近位端を、前記正位置から前記外尿道括約筋の前記開口部を通して近位方向に移動させるステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記カテーテル全体を前記近位方向に動かすことにより、前記カテーテルの前記近位端を、前記正位置から前記外尿道括約筋の前記開口部を通して近位方向に選択的に移動させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記カテーテルから、前記外尿道括約筋の前記開口部と前記尿道を通して、前記外尿道口の外側の地点まで操作用コードを延ばすステップと、
前記操作用コードを動かして、前記カテーテル全体を近位方向に選択的に移動させることによって、前記カテーテルの前記近位端を、前記正位置から、前記外尿道括約筋の前記開口部を通して近位方向に移動させるステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記カテーテルの前記遠位端に連結された遠位側固定要素を、膀胱内に延ばして、前記膀胱から前記尿道前立腺部への前記開口部に隣接する前記膀胱頸部に接触させることにより、前記カテーテルを前記遠位端で固定するステップと、
前記カテーテル全体を前記近位方向に移動させることによって、前記カテーテルの近位端を前記正位置から前記外尿道括約筋の前記開口部を通して近位方向に移動させる際に、前記遠位側固定要素を前記膀胱頸部に圧迫するステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記膀胱からの排尿が終了した後に、前記操作用コードに引張力を加えるのを止めるステップと、
前記膀胱からの排尿が終了した後に、前記遠位側固定要素を前記膀胱頸部に圧迫することによって生じる自然の力により、前記カテーテルの前記近位端を前記外尿道括約筋の前記開口部を通して遠位方向に移動させるステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
膨張可能なバルーンを前記遠位側固定要素として使用するステップと、
前記バルーンを膨張させるステップと、
前記カテーテル全体を前記近位側に移動させるときに、前記膨張したバルーンを前記膀胱頸部に圧迫し、これによって前記カテーテルの前記近位端を、前記正位置から前記外尿道括約筋の前記開口部を通して近位方向に移動させるステップと、
前記膀胱からの排尿が終了した後に、前記膨張可能なバルーンを前記膀胱頸部に圧迫することによって生じる力により、前記カテーテルの前記近位端を、前記外尿道括約筋の前記開口部を通して遠位方向に移動させるステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記カテーテルを固定し、前記カテーテルの前記正位置からの遠位方向への移動を抑止するステップをさらに含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記カテーテルの伸展可能な近位端部を近位方向に移動させることにより、前記カテーテルの前記近位端を、前記正位置から前記外尿道括約筋の前記開口部を通して近位方向に選択的に移動させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項33】
前記操作用コードを、前記カテーテルの前記伸展可能な近位端部から、前記外尿道括約筋の前記開口部と前記尿道を通して、前記外尿道口の外の地点まで延ばすステップと、
前記操作用コードを移動させ、前記カテーテルの前記伸展可能な近位端部を、前記正位置から前記外尿道括約筋の前記開口部を通して近位方向に選択的に移動させるステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記カテーテルの本体に関して入れ子式に延びるチューブ部材を、前記カテーテルの前記伸展可能な近位端部として使用するステップをさらに含むことを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記操作用コードを前記チューブ部材から延ばすステップと、
前記操作用コードを引き、前記チューブ部材を、前記外尿道括約筋の前記開口部を通して近位方向に延ばすステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記操作用コードに引張力を加えるのを停止したときに、前記カテーテル内にて前記チューブ部材と前記本体との間に連結されたバイアス要素を使用して、前記チューブ部材を、前記伸展位置から、前記外尿道括約筋の前記開口部を通して引き込むステップをさらに含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記カテーテルの本体に関して延びる柔軟スリーブ部材を、前記カテーテルの伸展可能な近位端部として使用するステップをさらに含むことを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記スリーブ部材から前記操作用コードを延ばすステップと、
前記操作用コードを引き、前記スリーブ部材を、前記外尿道括約筋の前記開口部を通して近位方向に延ばすステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
アコーディオンのように折れ曲がるスリーブ部材を使用するステップをさらに含むことを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記操作用コードに引張力が加えるのを停止したときに、前記スリーブ部材内に連結されたバイアス要素を使用して、前記スリーブ部材を、伸展位置から前記外尿道括約筋の前記開口部を通して引き込むステップをさらに含むことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記膀胱内の前記カテーテルの前記近位端にある膨張可能なバルーンを膨張させ、前記膨張したバルーンを、前記膀胱から前記尿道前立腺部への前記開口部に隣接する前記膀胱頸部に、接触させることにより、前記カテーテルを固定して近位方向への運動を抑止するステップと、
前記カテーテルから、前記外尿道括約筋の前記開口部と前記尿道を通して、外尿道口の外へと膨張用チューブを延ばすステップと、
前記膨張用チューブから前記バルーンの中に流体を送ることによって、前記バルーンを膨張させるステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項42】
前記膨張したバルーンが前記膀胱頸部と接触している間に、前記カテーテルの前記近位端を、前記正位置から前記外尿道括約筋の前記開口部を通して近位方向に選択的に移動させ、尿を膀胱から、前記内側通路を通して前記尿道へと導き、前記膀胱から尿を排出するステップをさらに含むことを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記カテーテルが前記正位置にある間、前記膨張用チューブの周辺の前記外尿道括約筋の前記開口部の通常の収縮によって、前記カテーテルの前記遠位端から前記尿道に尿が排出されるのを防止することを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記外尿道括約筋の前記開口部が収縮しているときに、前記尿道内の、前記外尿道括約筋の近位側の位置に前記膨張用チューブのコイル部を位置付けることにより、前記カテーテルを固定して遠位方向への移動を抑止するステップと、
前記膨張用チューブの前記コイル部が前記尿道内の前記外尿道括約筋の近位側の位置にある間に、前記カテーテルの前記近位端を、前記正位置から前記外尿道括約筋の前記開口部を通して近位方向に選択的に移動させ、尿を、膀胱から前記内側通路を通して前記尿道へと導き、前記膀胱から尿を排出するステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項43に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2009−511114(P2009−511114A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534489(P2008−534489)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際出願番号】PCT/SE2006/001129
【国際公開番号】WO2007/043940
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(500155154)プロスタルンド オペラションス アーベー (2)
【Fターム(参考)】