部品内蔵配線板、部品内蔵配線板の製造方法
【課題】内蔵部品の接続信頼性を向上することができる部品内蔵配線板およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】端子を有する電気/電子部品と、この電気/電子部品の表面の少なくとも一部に密着して該電気/電子部品の少なくとも一部分を埋め込んだ板状絶縁層と、この板状絶縁層の上面上に設けられた第1の配線パターンと、板状絶縁層の上面に対向する下面上に設けられた、電気/電子部品の実装用のランドを含む第2の配線パターンと、電気/電子部品の端子と第2の配線パターンのランドとを電気的、機械的に接続するはんだ接続部材と、を具備し、このはんだ接続部材が、すずとアンチモンとを含有する、溶融温度が240℃以上でかつ266℃以下のはんだ接続部材である。
【解決手段】端子を有する電気/電子部品と、この電気/電子部品の表面の少なくとも一部に密着して該電気/電子部品の少なくとも一部分を埋め込んだ板状絶縁層と、この板状絶縁層の上面上に設けられた第1の配線パターンと、板状絶縁層の上面に対向する下面上に設けられた、電気/電子部品の実装用のランドを含む第2の配線パターンと、電気/電子部品の端子と第2の配線パターンのランドとを電気的、機械的に接続するはんだ接続部材と、を具備し、このはんだ接続部材が、すずとアンチモンとを含有する、溶融温度が240℃以上でかつ266℃以下のはんだ接続部材である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁板中に部品が埋設で実装された部品内蔵配線板およびその製造方法に係り、特に、内蔵部品の接続信頼性向上に好適な部品内蔵配線板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品が埋設で実装された部品内蔵配線板の例として、特開2003−197849号公報に記載されたものがある。同公報の図1に示されたその構造では、電気部品の配線層への電気的接続にははんだ(または導電性接着剤)が用いられている。その製造方法は、あらかじめ、コアとなる配線板にはんだ(または導電性接着剤)を用いて電気部品を電気的、機械的に接続する。またこれとは別の絶縁樹脂層に穴あけを行いこの穴に導電性組成物を充填し、先に部品実装したコア板と位置合わせ配置して積層、一体化する。
【0003】
部品内蔵配線板では、この配線板上に別の部品が外部実装されるときや部品内蔵配線板自体が別の配線板に実装されるとき(両者、2次実装ともいう)に、内蔵部品の接続信頼性が損なわれないことが重要である。具体的には、例えば、内蔵部品の接続材料としてはんだ(例えばSn−3Ag−0.5Cu;溶融温度217℃から221℃)が使用される場合、そのはんだの再溶融による接続不良や短絡が発生しないようにする必要がある。
【0004】
同文献には、再溶融を防ぐため溶融温度の高い高温はんだを用いることの記述がある(同文献段落0034)。ただしはんだの具体的組成は明らかではない。一般的には、高温はんだとして、Sn−Pb系のPbリッチ材が知られており、Pb−5Sn(溶融温度314℃から310℃)、Pb−10Sn(溶融温度302℃から275℃)のはんだがあるが、はんだ付け温度として300℃以上の高温を必要とする。このような高温では、配線板の絶縁板材料として一般的なエポキシ系の樹脂では耐熱性が不足し適用が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−197849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情を考慮してなされたもので、絶縁板中に部品が埋設で実装された部品内蔵配線板およびその製造方法において、内蔵部品の接続信頼性を向上することができる部品内蔵配線板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様である部品内蔵配線板は、端子を有する電気/電子部品と、前記電気/電子部品の表面の少なくとも一部に密着して該電気/電子部品の少なくとも一部分を埋め込んだ板状絶縁層と、前記板状絶縁層の上面上に設けられた第1の配線パターンと、前記板状絶縁層の前記上面に対向する下面上に設けられた、前記電気/電子部品の実装用のランドを含む第2の配線パターンと、前記電気/電子部品の前記端子と前記第2の配線パターンの前記ランドとを電気的、機械的に接続するはんだ接続部材と、を具備し、前記はんだ接続部材が、すずとアンチモンとを含有する、溶融温度が240℃以上でかつ266℃以下のはんだ接続部材であることを特徴とする。
【0008】
すなわち、この部品内蔵配線板では、板状絶縁層が、電気/電子部品の表面の少なくとも一部に密着してこの電気/電子部品を埋設している。板状絶縁層の下面上には電気/電子部品の端子との間ではんだ接続部材により接続がされたランドを含む配線パターン(第2の配線パターン)が設けられている。そして、このはんだ接続部材が、すずとアンチモンとを含有する、溶融温度が240℃以上でかつ266℃以下のはんだ接続部材となっている。
【0009】
よって、このはんだ接続部材は、2次実装で一般的に使われるはんだである例えばSn−3Ag−0.5Cuを良好にリフローさせるための温度(最大例えば235℃)では溶融しない。したがって、この部品内蔵配線板上に別の部品を実装するときや、この部品内蔵配線板自体を別の大きな配線板(例えばマザーボード)に実装するときにおいて、内部のはんだの再溶融による接続不良や短絡の発生を効果的に防止することでき、これにより内蔵部品の接続信頼性を向上することができる。
【0010】
また、本発明の別の態様である部品内蔵配線板の製造方法は、ダミー板上に、はんだ接続するための表面実装用ランドを含む配線パターンを形成する工程と、前記ダミー板の前記ランド上にSn−10Sbのはんだ成分を含有のペースト状はんだ組成物を付着させる工程と、前記ペースト状はんだ組成物を介した前記ランド上に、表面実装用端子を有する電気/電子部品の前記表面実装用端子が位置するように、前記ダミー板上に前記電気/電子部品をマウントする工程と、前記ペースト状はんだ組成物をリフローさせ前記電気/電子部品を前記ランド上に固定する工程と、前記ランド上の前記電気/電子部品の表面に密着して該電気/電子部品を埋め込むように、前記ダミー板上に板状絶縁層を積層する工程と、前記板状絶縁層の側に前記配線パターンが残存するように、前記ダミー板、前記配線パターン、および前記板状絶縁層を有する積層物から前記ダミー板を取り去る工程とを具備することを特徴とする。
【0011】
この製造方法は、上記の部品内蔵配線板を製造するためのひとつの方法である。この方法で使用されるSn−10Sbのはんだ成分は、溶融温度として、固相線で245℃、液相線で266℃であり、これを良好にリフローさせる場合、配線板の絶縁層材料として一般的なエポキシ系の樹脂が使用されていると、樹脂の耐熱性が不足する可能性が高い。よって、この製造方法では、はんだをリフローさせるとき、ダミー板上に配線パターンが形成され、その配線パターンのランド上にペースト状はんだ組成物を介して電気/電子部品がマウント(載置)された状態(板状絶縁層が介在しない状態)で、そのリフローが行われるようにしている。
【0012】
また、本発明のさらに別の態様である部品内蔵配線板は、金属箔上に、はんだ接続するための表面実装用ランドとなるべき領域を位置設定する工程と、前記金属箔の前記領域上にSn−10Sbのはんだ成分を含有のペースト状はんだ組成物を付着させる工程と、前記金属箔上の、前記ペースト状はんだ組成物を介した前記領域上に、表面実装用端子を有する電気/電子部品の前記表面実装用端子が位置するように、前記金属箔上に前記電気/電子部品をマウントする工程と、前記ペースト状はんだ組成物をリフローさせ前記電気/電子部品を前記金属箔上に固定する工程と、前記金属箔上の前記電気/電子部品の表面に密着して該電気/電子部品を埋め込むように、前記金属箔上に板状絶縁層を積層する工程と、前記板状絶縁層上の前記金属箔を、前記ランドとなるべき前記領域が導電パターンとして少なくとも残るようにパターニングする工程とを具備することを特徴とする。
【0013】
この製造方法は、上記の部品内蔵配線板を製造するための別のひとつの方法である。この方法で使用されるSn−10Sbのはんだ成分は、上記のように、溶融温度として、固相線で245℃、液相線で266℃であり、これを良好にリフローさせる場合、配線板の絶縁層材料として一般的なエポキシ系の樹脂が使用されていると、樹脂の耐熱性が不足する可能性が高い。よって、この製造方法では、はんだをリフローさせるとき、金属箔上の所定領域上にペースト状はんだ組成物を介して電気/電子部品がマウントされている状態(板状絶縁層が介在しない状態)で、リフローが行われるようにしている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、絶縁板中に部品が埋設で実装された部品内蔵配線板およびその製造方法において、内蔵部品の接続信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る部品内蔵配線板の構成を模式的に示す断面図。
【図2】図1に示した部品内蔵配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図。
【図3】図1に示した部品内蔵配線板の製造過程の別の一部を模式的断面で示す工程図。
【図4】図1に示した部品内蔵配線板の製造過程のさらに別の一部を模式的断面で示す工程図。
【図5】本発明の別の実施形態に係る部品内蔵配線板の構成を模式的に示す断面図。
【図6】図5に示した部品内蔵配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図。
【図7】図5に示した部品内蔵配線板の製造過程の別の一部を模式的断面で示す工程図。
【図8】図5に示した部品内蔵配線板の製造過程のさらに別の一部を模式的断面で示す工程図。
【図9】本発明のさらに別の実施形態に係る部品内蔵配線板の構成を模式的に示す断面図。
【図10】図9に示した部品内蔵配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施態様として、前記はんだ接続部材が、Sn−5.0Sb、またはSn−10Sbのはんだ接続部材である、とすることができる。Sn−5.0Sbは、溶融温度として、固相線で240℃、液相線で243℃であり、一般的に使われるはんだである例えばSn−3Ag−0.5Cuを良好にリフローさせるための温度(最大例えば235℃)では溶融しない。また、Sn−10Sbは、溶融温度として、固相線で245℃、液相線で266℃であり、やはり同じ性質を有している。
【0017】
また、実施態様として、前記第2の配線パターンが、前記板状絶縁層に接する面と対向する面上には多層化配線構造のない最外配線層のパターンである、とすることができる。これによれば、配線層数の増加が限られるが、より薄型の部品内蔵配線板を提供できる。
【0018】
また、実施態様として、前記板状絶縁層との間に前記第2の配線パターンを挟むように、前記第2の配線パターン上に積層位置する第2の板状絶縁層と、前記第2の板状絶縁層の、前記第2の配線パターンが位置する側とは反対の側の面上に設けられた第3の配線パターンとをさらに具備する、とすることができる。これによれば、半導体素子部品が実装されている第2の配線パターンは内層配線層のパターンとなる。そして、第2の板状絶縁層の面上に第3の配線パターンが設けられることにより、配線パターンの形成密度を増加させ、パターン設計の自由度が高い部品内蔵配線板とすることができる。
【0019】
また、実施態様として、前記第2の配線パターンが、前記板状絶縁層の厚み方向に落ち込まずに該板状絶縁層上に設けられている、とすることができる。これは、配線パターン化される前の金属箔を用いて部品実装を行い、その後の積層プロセスを経て金属箔のパターニングがなされ得られる特有の構造である。配線パターン化される前の金属箔を用いて部品実装を行うことで、製造全体として、より簡易なプロセスで済む。
【0020】
また、実施態様として、前記第2の配線パターンが、前記板状絶縁層の厚み方向に落ち込んで該板状絶縁層上に設けられている、とすることができる。これは、第2の板状絶縁層上(またはダミー板上)に設けられた配線パターンを用いて部品実装を行い、その後の製造プロセスを経て得られる特有の構造である。第2の板状絶縁層上(またはダミー板上)に設けられた配線パターンを用いて部品実装を行うことで、部品実装は配線板における通常の部品マウントプロセスで済む。
【0021】
また、実施態様として、前記第3の配線パターンと電気導通して該第3の配線パターンから前記第2の板状絶縁層を貫通して、前記第2の配線パターンに電気導通するように延設された、層間接続体たるビアホール内めっきビアをさらに具備する、とすることができる。このビアホール内めっきビアは、第2の板状絶縁層を貫通して設けられるべき層間接続体のひとつの態様である。同じ機能としてほかに、導電性組成物印刷による導電性バンプを由来とする層間接続体を採用することもできる。
【0022】
以上を踏まえ、以下では本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る部品内蔵配線板の構成を模式的に示す断面図である。図1に示すように、この部品内蔵配線板は、絶縁層(板状絶縁層)11、同12、同13、同14、同15、配線層(配線パターン、導電パターン)21、同22、同23、同24、同25、同26、層間接続体31、同32、同34、同35、スルーホール導電体33、半導体素子部品(ウエハレベル・チップスケールパッケージによる電気/電子部品)41、チップ抵抗42(表面実装型受動素子部品である電気/電子部品)、はんだ接続部材51、52、はんだレジスト61、62を有する。
【0023】
この部品内蔵配線板は、内蔵、埋設の部品として、半導体素子部品41およびチップ抵抗42を有している。半導体素子部品41およびチップ抵抗42には、それぞれ表面実装技術が適用されている。すなわち、半導体素子部品41およびチップ抵抗42の端子41a、42aは、はんだ接続部材51、52を介して、配線層22が含むランドに電気的、機械的にそれぞれ接続されている。ここで、はんだ接続部材51、52が、すずとアンチモンとを含有する、溶融温度が240℃以上でかつ266℃以下のはんだ接続部材である点が特徴になっている。
【0024】
これにより、はんだ接続部材51、52は、2次実装で一般的に使われるはんだである例えばSn−3Ag−0.5Cu(溶融温度217℃から221℃)を良好にリフローさせるための温度(最大例えば235℃)では溶融しない。したがって、この部品内蔵配線板上に別の部品を実装するときや、この部品内蔵配線板自体を別の大きな配線板(例えばマザーボード)に実装するときにおいて、はんだ接続部材51、52の再溶融による接続不良や短絡の発生を効果的に防止することでき、これにより内蔵部品である半導体素子部品41およびチップ抵抗42の接続信頼性を向上することができる。
【0025】
すずとアンチモンとを含有する、溶融温度が240℃以上でかつ266℃以下のはんだとしては、例えば、千住金属工業(株)が供給するM10またはM14の品番のはんだ(状態としてクリームはんだ)を利用することができる。品番M10は、Sn−5.0Sbの合金組成であり、同社カタログによれば、溶融温度は、固相線で240℃、液相線で243℃である。品番M14は、Sn−10Sbの合金組成であり、同社カタログによれば、溶融温度は、固相線で245℃、液相線で266℃である。
【0026】
後者のはんだM14は、これを良好にリフローさせるには、その温度として少なくとも270℃以上(例えばピーク温度285℃)であることが好ましく、その点で、配線板の絶縁層材料として一般的なエポキシ系の樹脂が使用される場合、樹脂の耐熱性が不足する可能性が高い。この耐熱性不足を回避するためになされる製造上の工夫については後述する。
【0027】
以下では、図1に示した部品内蔵配線板について、はんだ接続部材51、52以外の構造等について補足する。
【0028】
半導体素子部品41は、ウエハレベル・チップスケールパッケージによる部品であり、半導体チップと、この半導体チップ上に形成されたグリッド状配列の表面実装用端子41aとを少なくとも備えている。表面実装用端子41aは、半導体チップがもともと有する端子パッドから再配線層を介して電気的に導通しつつその位置を再配置して設けられた端子である。このような再配置により、端子としての配置密度が半導体チップ上の端子パッドのそれより粗くなっていて、これにより、半導体素子部品41は、表面実装技術により、配線層22が含むランドにはんだ接続部材51を介して実装することができる。
【0029】
チップ抵抗42は、表面実装型の受動素子部品(抵抗器)であり、その平面的な大きさは例えば0.6mm×0.3mmである。両端に端子42aを有し、その下側が配線層22が含むランドに対向位置している。チップ抵抗42の端子42aとランドとははんだ接続部材52により電気的、機械的に接続されている。チップ抵抗42は、これに代えてチップキャパシタやチップインダクタであっても同様に内蔵、埋設され得る。
【0030】
配線層21、26は、配線板としての両主面上の配線層であり、その上に各種の部品(不図示)が実装され得る。実装ではんだ(不図示)が載るべき配線層21、26のランド部分を除いて両主面上には、はんだ接続時に溶融したはんだ(例えばSn−3Ag−0.5Cuのはんだ)をランド部分に留めかつその後は保護層として機能するはんだレジスト61、62が形成されている(厚さはそれぞれ例えば20μm程度)。ランド部分の表層には、耐腐食性の高いNi/Auのめっき層(不図示)を形成するようにしてもよい。
【0031】
配線層22、23、24、25は、それぞれ、内層の配線層であり、順に、配線層21と配線層22の間に絶縁層11が、配線層22と配線層23の間に絶縁層12が、配線層23と配線層24との間に絶縁層13が、配線層24と配線層25との間に絶縁層14が、配線層25と配線層26との間に絶縁層15が、それぞれ位置しこれらの配線層21〜26を隔てている。各配線層21〜26は、例えばそれぞれ厚さ18μmの金属(銅)箔からなっている。
【0032】
各絶縁層11〜15は、絶縁層13を除き例えばそれぞれ厚さ100μm、絶縁層13のみ例えば厚さ300μmで、それぞれ例えばガラスエポキシ樹脂からなるリジッドな素材である。特に絶縁層13は、内蔵された半導体素子部品41およびチップ抵抗42に相当する位置部分が開口部となっており、半導体素子部品41およびチップ抵抗42を埋設するための空間を提供する。絶縁層12、14は、内蔵された半導体素子部品41およびチップ抵抗42のための絶縁層13の上記開口部および絶縁層13のスルーホール導電体33内部の空間を埋めるように変形進入しており内部に空隙となる空間は存在しない。
【0033】
配線層21と配線層22とは、それらのパターンの面の間に挟設されかつ絶縁層11を貫通する層間接続体31により導通し得る。同様に、配線層22と配線層23とは、それらのパターンの面の間に挟設されかつ絶縁層12を貫通する層間接続体32により導通し得る。配線層23と配線層24とは、絶縁層13を貫通して設けられたスルーホール導電体33により導通し得る。配線層24と配線層25とは、それらのパターンの面の間に挟設されかつ絶縁層14を貫通する層間接続体34により導通し得る。配線層25と配線層26とは、それらのパターンの面の間に挟設されかつ絶縁層15を貫通する層間接続体35により導通し得る。
【0034】
層間接続体31、32、34、35は、それぞれ、導電性組成物のスクリーン印刷により形成される導電性バンプを由来とするものであり、その製造工程に依拠して軸方向(図1の図示で上下の積層方向)に径が変化している。その直径は、太い側で例えば200μmである。
【0035】
次に、図1に示した部品内蔵配線板の製造工程を図2ないし図4を参照して説明する。図2ないし図4は、それぞれ、図1に示した部品内蔵配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図である。これらの図において図1中に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。
【0036】
図2から説明する。図2は、図1中に示した各構成のうち絶縁層11を中心とした部分の製造工程を示している。まず、図2(a)に示すように、厚さ例えば18μmの金属箔(電解銅箔)22A上に例えばスクリーン印刷により、層間接続体31となるペースト状の導電性組成物をほぼ円錐形のバンプ状(底面径例えば200μm、高さ例えば160μm)に形成する。この導電性組成物は、ペースト状の樹脂中に銀、金、銅などの金属微細粒または炭素微細粒を分散させたものである。説明の都合で金属箔22Aの下面に印刷しているが上面でもよい。層間接続体31の印刷後これを乾燥させて硬化させる。
【0037】
次に、図2(b)に示すように、金属箔22A上に厚さ例えば公称100μmのFR−4のプリプレグ11Aを積層して層間接続体31を貫通させ、その頭部が露出するようにする。露出に際してあるいはその後その先端を塑性変形でつぶしてもよい(いずれにしても層間接続体31の形状は、積層方向に一致する軸を有しその軸方向に径が変化している。)。続いて、図2(c)に示すように、プリプレグ11A上に金属箔(電解銅箔)21Aを積層配置して加圧、加熱し全体を一体化する。このとき、金属箔21Aは層間接続体31と電気的導通状態となり、プリプレグ11Aは完全に硬化して絶縁層11になる。
【0038】
次に、図2(d)に示すように、片側の金属箔22Aに例えば周知のフォトリソグラフィによるパターニングを施し、これを、実装用ランドを含む配線パターン22に加工する。そして、加工により得られた実装用ランド上に、図2(e)に示すように、ペースト状はんだ組成物(クリームはんだ)51A、52Aを例えばスクリーン印刷で適用、付着させる。スクリーン印刷によれば容易に効率的に所定パターンに印刷できる。図示するような大きさの異なるペースト状はんだ組成物51A、52Aの付着も、例えば、スクリーン板のピット径を変えることで容易に実現する。なおスクリーン印刷に代えてディスペンサで適用することもできる。
【0039】
クリームはんだ51A、52Aは、すでに述べたように、ここでは例えば、千住金属工業(株)が供給するM10の品番のはんだ組成物を用いる。すなわち、ペースト状はんだ組成物51A、52Aは、フラックス中にSn−5.0Sbの組成のはんだの微細粒を分散させたものである。なお、同社のM14を使用するときには、これを良好にリフローさせることを考慮してリフロー温度を設定すると、絶縁層11が一般的なエポキシ系の樹脂の場合、その耐熱性が不足する可能性が高い。この製造方法においては、M10の品番のはんだ組成物の使用が向いている。
【0040】
ペースト状はんだ組成物51A、52Aの印刷のあと、半導体素子部品41およびチップ抵抗42をペースト状はんだ組成物51A、52Aを介して配線層22の実装用ランド上に例えばマウンタで載置し、さらにその後ペースト状はんだ組成物51A、52Aを例えばリフロー炉でリフローさせる。リフロー温度は、例えば最大で260℃とする。この温度であれば、絶縁層11の耐熱性の範囲である。以上により、図2(f)に示すように、はんだ接続部材51、52を介して半導体素子部品41およびチップ抵抗42が配線層22の実装用ランド上に接続された状態の積層部材1が得られる。この積層部材1を用いる後の工程については図4で述べる。
【0041】
次に、図3を参照して説明する。図3は、図1中に示した各構成のうち絶縁層13および同12を中心とした部分の製造工程を示している。まず、図3(a)に示すように、両面に例えば厚さ18μmの金属箔(電解銅箔)23A、24Aが積層された例えば厚さ300μmのFR−4の絶縁層13を用意し、その所定位置にスルーホール導電体を形成するための貫通孔83をあけ、かつ内蔵する半導体素子部品41およびチップ抵抗42に相当する部分に部品用開口部81、82を形成する。
【0042】
次に、無電解めっきおよび電解めっきを行い、図3(b)に示すように、貫通孔83の内壁にスルーホール導電体33を形成する。このとき開口部81、82の内壁にも導電体が形成される。さらに、図3(c)に示すように、金属箔23A、24Aを周知のフォトリソグラフィを利用して所定にパターニングして配線層23、24を形成する。配線層23、24のパターニング形成により、開口部81、82の内壁に形成された導電体も除去される。
【0043】
次に、図3(d)に示すように、配線層23上の所定の位置に層間接続体32となる導電性バンプ(底面径例えば200μm、高さ例えば160μm)をペースト状導電性組成物のスクリーン印刷により形成する。続いて、図3(e)に示すように、絶縁層12とすべきFR−4のプリプレグ12A(公称厚さ例えば100μm)を配線層23側にプレス機を用い積層する。プリプレグ12Aには、絶縁層13と同様の、内蔵する半導体素子部品41およびチップ抵抗42に相当する部分の開口部をあらかじめ設けておく。
【0044】
図3(e)の積層工程では、層間接続体32の頭部をプリプレグ12Aに貫通させる。なお、図3(e)における層間接続体32の頭部の破線は、この段階でその頭部を塑性変形させてつぶしておく場合と塑性変形させない場合の両者あり得ることを示す。以上により得られた積層部材を積層部材2とする。
【0045】
以上の図3に示した工程は、以下のような手順とすることも可能である。図3(a)の段階では、貫通孔83のみ形成し内蔵部品用の開口部81、82を形成せずに続く図3(b)から図3(d)までの工程を行う。次に、図3(e)に相当する工程として、プリプレグ12A(開口のないもの)の積層を行う。そして、絶縁層13およびプリプレグ12Aに部品内蔵用の開口部を同時に形成する、という工程である。
【0046】
次に、図4を参照して説明する。図4は、上記で得られた積層部材1、2などを積層する配置関係を示す図である。同図で、図示上側の積層部材3は、下側の積層部材1と同様な工程を適用し、かつそのあと層間接続体34およびプリプレグ14Aを、図示中間の積層部材2における層間接続体32およびプリプレグ12Aと同様にして形成し得られたものである。
【0047】
ただし、積層部材3は、部品(半導体素子部品41およびチップ抵抗42)およびこれを接続するための部位(実装用ランド)のない構成であり、さらにプリプレグ14Aには半導体素子部品41用の開口部、チップ抵抗42用の開口部を設けない。そのほかは、金属箔(電解銅箔)26A、絶縁層15、層間接続体35、配線層25、プリプレグ14A、層間接続体34とも、それぞれ積層部材1の金属箔21A、絶縁層11、層間接続体31、配線層22、積層部材2のプリプレグ12A、層間接続体32と同じである。
【0048】
図4に示すような配置で各積層部材1、2、3を積層配置してプレス機で加圧、加熱する。これにより、プリプレグ12A、14Aが完全に硬化し全体が積層、一体化する。このとき、加熱により得られるプリプレグ12A、14Aの流動性により、半導体素子部品41およびチップ抵抗42の周りの空間およびスルーホール導電体33内部の空間にはプリプレグ12A、14Aが変形進入し空隙は発生しない。
【0049】
また、配線層22は、絶縁層11の側ではなく絶縁層12(プリプレグ12Aを由来)の厚み方向に落ち込んで位置することになり、配線層24は、絶縁層13の側ではなく絶縁層14(プリプレグ14Aを由来)の厚み方向に落ち込んで位置することになる。さらに、配線層22、24は、層間接続体32、34にそれぞれ電気的に接続される。
【0050】
図4に示す積層工程の後、上下両面の金属箔26A、21Aを周知のフォトリソグラフィを利用して所定にパターニングし、さらにはんだレジスト61、62の層を形成することにより、図1に示したような部品内蔵配線板を得ることができる。この実施形態は、半導体素子部品41、チップ抵抗42が実装されている配線パターン22が内層配線層のパターンになる。この配線パターン22とは別に、板状絶縁層11の外側の面上に配線パターン21が設けられるので、部品内蔵にもかかわらず、配線パターンの形成密度を増加させ、パターン設計の自由度の高い部品内蔵配線板とすることができる。
【0051】
また、板状絶縁層11上に設けられた配線パターン22上に部品実装を行い、その後の製造プロセスを経て得られたものであるため、その部品実装においては、はんだ接続部材51、52の材質が通常の場合と異なることを除けば、配線板における通常の部品マウントプロセスを用いることができる。すなわち、設備的な負担増加が小さい。
【0052】
次に、本発明の別の実施形態に係る部品内蔵配線板について図5を参照して説明する。図5は、別の実施形態に係る部品内蔵配線板の構成を模式的に示す断面図であり、すでに説明した図中に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。その部位については加える事項がない限り説明を省略する。
【0053】
この実施形態は、絶縁層11、15を貫通して設けられる層間接続体として、導電性組成物印刷によるバンプを由来の導電体に代えて、ビアホール内めっきビア31M、35Mを用いている点が、前述の実施形態(図1)の構成と異なる点である。部品41、42が実装されている内層の配線パターン22は、絶縁層11の側ではなく絶縁層12の厚み方向に落ち込んで位置する。同様に、内層の配線パターン25は、絶縁層15の側ではなく絶縁層14の厚み方向に落ち込んで位置する。この関係は、図1に示した実施形態と同じである。
【0054】
この部品内蔵配線板の製造過程について以下説明する。図6は、図5に示した部品内蔵配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図である。図6において、すでに説明した図中に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。
【0055】
この実施形態では、図6に示すような積層工程を行うことにより、絶縁層12(プリプレグ12Aを由来)、絶縁層13、絶縁層14(プリプレグ14Aを由来)を有する部材をまず、あらかじめ得る。図6中の積層部材1Aは、例えばステンレス製のダミー板100上に、配線パターン22、はんだ接続部材51、52、および半導体素子部品41、チップ抵抗42が設けられた積層部材である。また、積層部材3Aは、例えばステンレス製のダミー基板200上に、配線パターン25、層間接続体34、プリプレグ14Aが設けられた積層部材である。ダミー板100、200は、図6に示す積層がされた後に例えば機械的に剥離して取り払われる。
【0056】
積層部材1A、3Aを得る工程について多少補足すると、その配線パターン22、25は、ダミー板100、200上に当初積層されていた金属箔22、25を例えば周知のフォトリソグラフィ工程を用いてエッチングしパターニングすることで得ることができる。または、配線パターン22、25は、ダミー板100、200上に、パターン化がされたレジストマスクを形成し、レジストマスクの抜けた部分への電解めっき形成でアディティブに得ることもできる(厚さは例えば15μm程度)。ダミー板100、200上に配線パターン22、25が設けられたあとについては、すでに説明した積層部材1、3(図4中に示した)を得るための同様の工程を適用することができる。
【0057】
積層部材1Aを得るための部品実装においては、はんだ接続部材51、52として、千住金属工業(株)が供給するM10の品番のはんだを利用することに代えて、より溶融温度の高い同社のM14のはんだを用いることもできる。この部品実装では、はんだをリフローさせるとき、ダミー板100上に配線パターン22が形成され、その配線パターン22が含むランド上にM14のペースト状はんだ組成物を介して部品41、42がマウントされた状態になっており、耐熱性不足の恐れがある絶縁層11が介在しない状態になっているためである。
【0058】
M14を用いる場合、これを良好にリフローさせるには、その温度として少なくとも270℃以上(例えばピーク温度285℃)であることが好ましい。M14を用いた部品内蔵配線板は、M14がM10より溶融温度が高いため、この部品内蔵配線板が2次実装時に供されるときに、その溶融する可能性がより低く抑えられる。すなわち、2次実装で用いられる例えばSn−3Ag−0.5Cuのはんだを良好にリフローさせるための温度(最大例えば235℃)との違いが大きい分、2次実装時に余裕が生まれる。
【0059】
図7は、図5に示した部品内蔵配線板の製造過程の別の一部を模式的断面で示す工程図であり、図6に示した積層工程に続いて行われるさらなる積層工程を示している。図7において、すでに説明した図中に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。
【0060】
図7中の中間の積層部材2Cは、図6に示した積層工程により得られた部材である。図示するように、積層部材2Cは、図6に示した積層工程に依拠して、配線層22が絶縁層12の厚み方向に落ち込んで位置し、配線層25は、絶縁層14の厚み方向に落ち込んで位置する。図7に示すような配置で各積層部材を積層配置してプレス機で加圧、加熱する。これにより、プリプレグ11A、15Aが完全に硬化し全体が積層、一体化する。
【0061】
次に、図8は、図5に示した部品内蔵配線板の製造過程のさらに別の一部を模式的断面で示す工程図であり、図7に示した積層工程に続いて行われるビアホールの形成工程を示している。図8において、すでに説明した図中に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。
【0062】
ビアホールを形成するには、まず、図8に示すように、金属箔21A、26Aの露出面の側から、それぞれ、その必要な位置にビアホール31h、35hを例えばレーザ加工で形成する。ビアホール31hは、配線層21となる金属箔21Aと配線層22との層間接続が必要な位置に、金属箔21A、絶縁層11を連通、貫通して配線層22に達するように設ける。同様に、ビアホール35hは、配線層26となる金属箔26Aと配線層25との層間接続が必要な位置に、金属箔26A、絶縁層15を連通、貫通して配線層25に達するように設ける。
【0063】
ビアホール31h、35hの形成は、レーザ加工で金属箔21Aおよび絶縁層11(金属箔26Aおよび絶縁層15)を連続して順次消失させるように穴加工する方法のほかに、まず、金属箔21A(26A)のみをエッチング加工で貫通させその後に、そのエッチングされた金属箔21A(26A)をマスクにその後絶縁層11(15)をレーザ加工で消失させ穴加工するという2段階の工程とすることもできる。金属箔21A(26A)のみをエッチング加工する段階では、パターン化された、エッチング用のレジストマスクを金属箔21A(26A)上に形成しておく。前者の方法は、効率的に好ましいと考えられ、後者の方法は、効率で劣るものの穴形状の制御性に優れていると考えられる。
【0064】
図8に示すようにビアホール31h、35hの形成後、無電解めっきおよび電解めっきの工程を行い、金属箔21A(26A)と電気導通してこの金属箔21A(26A)から配線層22(25)に電気導通するように、ビアホール内めっきビア31M(35M)を形成する。めっき31M、35Mは、少なくともビアホール31h、35hの内壁上に形成されることが必要であるが、ビアホール31h、35h内をほとんど充填し埋めるように形成されてもよい。このようなビアとしての形状コントロールのためには、金属箔21A(26A)上に、パターン化されたレジストマスクを形成した上で上記のめっき工程を行ってもよい。
【0065】
以上説明の工程の後、上下両面の金属箔26A、21Aを周知のフォトリソグラフィを利用して所定にパターニングし、さらにはんだレジスト61、62の層を形成することにより、図5に示したような部品内蔵配線板を得ることができる。
【0066】
この実施形態の変形例としては、その製造途上に得られる積層部材2C(図7参照)自体を、より薄型の部品内蔵配線板として供することができる(ただし製品とするためはんだレジストの層を両面に形成する)。このような変形例では、配線パターン22は、その板状絶縁層12に接する側の面と対向する面上には多層化配線構造のない最外配線層のパターンになる。これによれば、配線層数が限られるが、より薄型の部品内蔵配線板になる。
【0067】
図5に示した構成の部品内蔵配線板をM14のはんだを用いて製造しその信頼性を試験した結果について説明する。試験方法として、得られた部品内蔵配線板に30℃、70%RHで192時間吸湿させ、その後2次実装に擬して235℃のリフローを5回行った。結果として、このように複数回のリフローを行っても、配線板内部の部品41、42の接続不良や短絡の発生は特になかった。
【0068】
次に、本発明のさらに別の実施形態に係る部品内蔵配線板について図9を参照して説明する。図9は、さらに別の実施形態に係る部品内蔵配線板の構成を模式的に示す断面図であり、すでに説明した図中に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。その部位については加える事項がない限り説明を省略する。
【0069】
この実施形態は、上述の各実施形態とは異なり、部品41、42が実装されている内層の配線パターン22は、絶縁層12の側ではなく絶縁層11の厚み方向に落ち込んで位置する。また、内層の配線パターン25は、絶縁層14の側ではなく絶縁層15の厚み方向に落ち込んで位置する。
【0070】
この構成上の違いが生じる理由の説明を兼ねて、この部品内蔵配線板の製造過程について以下説明する。図10は、図9に示した部品内蔵配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図である。図10において、すでに説明した図中に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。
【0071】
この積層工程は、すでに説明した図4における積層工程と類似する点があるが異なる点もある。類似する点として、中ほどの積層部材2については同じ構成のものを使用する。下側の積層部材1Bについては、図4中に示した積層部材1とは異なり、絶縁層11、層間接続体31、金属箔21Aのない構成であり、さらに、パターン化がされている配線層22に代えてパターン化されていない金属箔22Aの状態のものが使用される。
【0072】
上側の積層部材3Bについても、図4中に示した積層部材3とは異なり、絶縁層15、層間接続体35、金属箔26Aのない構成であり、さらに、パターン化がされている配線層25に代えてパターン化されていない金属箔25Aの状態のものが使用される。この積層部材3Bの形成については、すでに説明した図2(b)を参照できる。
【0073】
積層部材1Bは、金属箔22A上に部品41、42を実装している点で、図4中に示した積層部材1とは異なる。このため、部品41、42の実装は、金属箔22A上の部品実装用ランドとなるべき領域への実装になる。このような状態での実装であることを考慮して、金属箔22A上においては、リフロー状態のはんだ接続部材51、52が、ランドとなるべき領域内に留まりその広がりが制御され得るようにあらかじめ対処しておくことが好ましい。
【0074】
そのための対処のひとつとして、金属箔22A上のランドとなるべき領域に、あらかじめニッケルめっき層(不図示)、およびその上に金めっき層(不図示)を形成しておく方法を採用し得る。金が溶融はんだとの濡れ性が比較的良好であることを利用してその範囲に溶融はんだを留めようとするものである。金めっき層は、リフロー後、はんだ接続部材51、52が含むすずの中に取り込まれ消失する。
【0075】
または、上記のめっき層を設ける方法に代えて、金属箔22A上に、溶融はんだを堰き止めるための樹脂パターン(不図示)を形成しておく方法を採用することもできる。このような樹脂パターンは、はんだ接続部材51、52の溶融時の広がりを制限するように、金属箔22A上に、ランドとなるべき領域に対応してそれを囲う例えば枠状に形成される。樹脂パターンの材質としては、例えばはんだレジストと同様の材質のものを使用できる。
【0076】
なお、積層部材1Bを得るための部品実装においては、図6中に示した積層部材1Aを得るための部品実装と同様に、はんだ接続部材51、52として、千住金属工業(株)が供給する、より溶融温度の高いM14のはんだを用いることができる。この部品実装では、はんだをリフローさせるとき、金属箔22A上にM14のペースト状はんだ組成物を介して部品41、42がマウントされた状態になっており、耐熱性不足の恐れがある絶縁層11がやはり介在しない状態になっているためである。
【0077】
図10に示す積層工程の後、得られた積層体における上下両面の金属箔25A、22Aは周知のフォトリソグラフィを利用して所定にパターニングされる。これにより得られた積層部材は、次の段階の積層工程として、図7に示した積層工程における積層部材2Cに代えて用いられる。したがって、その後については図7を参照することができる。これにより得られる構造においては、以上説明の製造工程に依拠して、図9に示したように、配線層22が絶縁層12の側ではなく絶縁層11の厚み方向に落ち込んで位置し、配線層25は、絶縁層14の側ではなく絶縁層15の厚み方向に落ち込んで位置することになる。
【0078】
この実施形態の変形例としては、やはり、その製造途上に得られる、図10に示した積層工程およびその後の配線層のパターニング形成による構造のもの自体を、より薄型の部品内蔵配線板として供することができる(ただし製品とするためはんだレジストの層を両面に形成する)。この実施形態は、このようは変形例の場合を含め、配線パターン化される前の金属箔を用いて部品実装を行うことで、製造全体として、より簡易なプロセスで済む利点がある。
【0079】
図9に示した構成の部品内蔵配線板をM14のはんだを用いて製造しその信頼性を試験した結果については以下である。試験方法として、図5に示した実施形態の場合と同様に、得られた部品内蔵配線板に30℃、70%RHで192時間吸湿させ、その後2次実装に擬して235℃のリフローを5回行った。結果として、このように複数回のリフローを行っても、配線板内部の部品41、42の接続不良や短絡の発生は特になかった。
【符号の説明】
【0080】
1,1A,1B…積層部材、2,2C…積層部材、3,3A,3B…積層部材、11…絶縁層(板状絶縁層)、11A…プリプレグ、12…絶縁層(板状絶縁層)、12A…プリプレグ、13…絶縁層(板状絶縁層)、14…絶縁層(板状絶縁層)、14A…プリプレグ、15…絶縁層(板状絶縁層)、15A…プリプレグ、21…配線層(配線パターン)、21A…金属箔(銅箔)、22…配線層(配線パターン)、22A…金属箔(銅箔)、23…配線層(配線パターン)、23A…金属箔(銅箔)、24…配線層(配線パターン)、24A…金属箔(銅箔)、25…配線層(配線パターン)、25A…金属箔(銅箔)、26…配線層(配線パターン)、26A…金属箔(銅箔)、31,32,34,35…層間接続体(導電性組成物印刷による導電性バンプ)、31h…ビアホール、31M…ビアホール内めっきビア、33…スルーホール導電体、35M…ビアホール内めっきビア、35h…ビアホール、41…半導体素子部品(ウエハレベル・チップスケールパッケージによる電気/電子部品)、41a…表面実装用端子、42…チップ抵抗(電気/電子部品)、42a…端子、51,52…はんだ接続部材、51A,52A…ペースト状はんだ組成物、61,62…はんだレジスト、81,82…部品用開口部、83…貫通孔、100,200…ダミー板(ステンレス板)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁板中に部品が埋設で実装された部品内蔵配線板およびその製造方法に係り、特に、内蔵部品の接続信頼性向上に好適な部品内蔵配線板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品が埋設で実装された部品内蔵配線板の例として、特開2003−197849号公報に記載されたものがある。同公報の図1に示されたその構造では、電気部品の配線層への電気的接続にははんだ(または導電性接着剤)が用いられている。その製造方法は、あらかじめ、コアとなる配線板にはんだ(または導電性接着剤)を用いて電気部品を電気的、機械的に接続する。またこれとは別の絶縁樹脂層に穴あけを行いこの穴に導電性組成物を充填し、先に部品実装したコア板と位置合わせ配置して積層、一体化する。
【0003】
部品内蔵配線板では、この配線板上に別の部品が外部実装されるときや部品内蔵配線板自体が別の配線板に実装されるとき(両者、2次実装ともいう)に、内蔵部品の接続信頼性が損なわれないことが重要である。具体的には、例えば、内蔵部品の接続材料としてはんだ(例えばSn−3Ag−0.5Cu;溶融温度217℃から221℃)が使用される場合、そのはんだの再溶融による接続不良や短絡が発生しないようにする必要がある。
【0004】
同文献には、再溶融を防ぐため溶融温度の高い高温はんだを用いることの記述がある(同文献段落0034)。ただしはんだの具体的組成は明らかではない。一般的には、高温はんだとして、Sn−Pb系のPbリッチ材が知られており、Pb−5Sn(溶融温度314℃から310℃)、Pb−10Sn(溶融温度302℃から275℃)のはんだがあるが、はんだ付け温度として300℃以上の高温を必要とする。このような高温では、配線板の絶縁板材料として一般的なエポキシ系の樹脂では耐熱性が不足し適用が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−197849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情を考慮してなされたもので、絶縁板中に部品が埋設で実装された部品内蔵配線板およびその製造方法において、内蔵部品の接続信頼性を向上することができる部品内蔵配線板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様である部品内蔵配線板は、端子を有する電気/電子部品と、前記電気/電子部品の表面の少なくとも一部に密着して該電気/電子部品の少なくとも一部分を埋め込んだ板状絶縁層と、前記板状絶縁層の上面上に設けられた第1の配線パターンと、前記板状絶縁層の前記上面に対向する下面上に設けられた、前記電気/電子部品の実装用のランドを含む第2の配線パターンと、前記電気/電子部品の前記端子と前記第2の配線パターンの前記ランドとを電気的、機械的に接続するはんだ接続部材と、を具備し、前記はんだ接続部材が、すずとアンチモンとを含有する、溶融温度が240℃以上でかつ266℃以下のはんだ接続部材であることを特徴とする。
【0008】
すなわち、この部品内蔵配線板では、板状絶縁層が、電気/電子部品の表面の少なくとも一部に密着してこの電気/電子部品を埋設している。板状絶縁層の下面上には電気/電子部品の端子との間ではんだ接続部材により接続がされたランドを含む配線パターン(第2の配線パターン)が設けられている。そして、このはんだ接続部材が、すずとアンチモンとを含有する、溶融温度が240℃以上でかつ266℃以下のはんだ接続部材となっている。
【0009】
よって、このはんだ接続部材は、2次実装で一般的に使われるはんだである例えばSn−3Ag−0.5Cuを良好にリフローさせるための温度(最大例えば235℃)では溶融しない。したがって、この部品内蔵配線板上に別の部品を実装するときや、この部品内蔵配線板自体を別の大きな配線板(例えばマザーボード)に実装するときにおいて、内部のはんだの再溶融による接続不良や短絡の発生を効果的に防止することでき、これにより内蔵部品の接続信頼性を向上することができる。
【0010】
また、本発明の別の態様である部品内蔵配線板の製造方法は、ダミー板上に、はんだ接続するための表面実装用ランドを含む配線パターンを形成する工程と、前記ダミー板の前記ランド上にSn−10Sbのはんだ成分を含有のペースト状はんだ組成物を付着させる工程と、前記ペースト状はんだ組成物を介した前記ランド上に、表面実装用端子を有する電気/電子部品の前記表面実装用端子が位置するように、前記ダミー板上に前記電気/電子部品をマウントする工程と、前記ペースト状はんだ組成物をリフローさせ前記電気/電子部品を前記ランド上に固定する工程と、前記ランド上の前記電気/電子部品の表面に密着して該電気/電子部品を埋め込むように、前記ダミー板上に板状絶縁層を積層する工程と、前記板状絶縁層の側に前記配線パターンが残存するように、前記ダミー板、前記配線パターン、および前記板状絶縁層を有する積層物から前記ダミー板を取り去る工程とを具備することを特徴とする。
【0011】
この製造方法は、上記の部品内蔵配線板を製造するためのひとつの方法である。この方法で使用されるSn−10Sbのはんだ成分は、溶融温度として、固相線で245℃、液相線で266℃であり、これを良好にリフローさせる場合、配線板の絶縁層材料として一般的なエポキシ系の樹脂が使用されていると、樹脂の耐熱性が不足する可能性が高い。よって、この製造方法では、はんだをリフローさせるとき、ダミー板上に配線パターンが形成され、その配線パターンのランド上にペースト状はんだ組成物を介して電気/電子部品がマウント(載置)された状態(板状絶縁層が介在しない状態)で、そのリフローが行われるようにしている。
【0012】
また、本発明のさらに別の態様である部品内蔵配線板は、金属箔上に、はんだ接続するための表面実装用ランドとなるべき領域を位置設定する工程と、前記金属箔の前記領域上にSn−10Sbのはんだ成分を含有のペースト状はんだ組成物を付着させる工程と、前記金属箔上の、前記ペースト状はんだ組成物を介した前記領域上に、表面実装用端子を有する電気/電子部品の前記表面実装用端子が位置するように、前記金属箔上に前記電気/電子部品をマウントする工程と、前記ペースト状はんだ組成物をリフローさせ前記電気/電子部品を前記金属箔上に固定する工程と、前記金属箔上の前記電気/電子部品の表面に密着して該電気/電子部品を埋め込むように、前記金属箔上に板状絶縁層を積層する工程と、前記板状絶縁層上の前記金属箔を、前記ランドとなるべき前記領域が導電パターンとして少なくとも残るようにパターニングする工程とを具備することを特徴とする。
【0013】
この製造方法は、上記の部品内蔵配線板を製造するための別のひとつの方法である。この方法で使用されるSn−10Sbのはんだ成分は、上記のように、溶融温度として、固相線で245℃、液相線で266℃であり、これを良好にリフローさせる場合、配線板の絶縁層材料として一般的なエポキシ系の樹脂が使用されていると、樹脂の耐熱性が不足する可能性が高い。よって、この製造方法では、はんだをリフローさせるとき、金属箔上の所定領域上にペースト状はんだ組成物を介して電気/電子部品がマウントされている状態(板状絶縁層が介在しない状態)で、リフローが行われるようにしている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、絶縁板中に部品が埋設で実装された部品内蔵配線板およびその製造方法において、内蔵部品の接続信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る部品内蔵配線板の構成を模式的に示す断面図。
【図2】図1に示した部品内蔵配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図。
【図3】図1に示した部品内蔵配線板の製造過程の別の一部を模式的断面で示す工程図。
【図4】図1に示した部品内蔵配線板の製造過程のさらに別の一部を模式的断面で示す工程図。
【図5】本発明の別の実施形態に係る部品内蔵配線板の構成を模式的に示す断面図。
【図6】図5に示した部品内蔵配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図。
【図7】図5に示した部品内蔵配線板の製造過程の別の一部を模式的断面で示す工程図。
【図8】図5に示した部品内蔵配線板の製造過程のさらに別の一部を模式的断面で示す工程図。
【図9】本発明のさらに別の実施形態に係る部品内蔵配線板の構成を模式的に示す断面図。
【図10】図9に示した部品内蔵配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施態様として、前記はんだ接続部材が、Sn−5.0Sb、またはSn−10Sbのはんだ接続部材である、とすることができる。Sn−5.0Sbは、溶融温度として、固相線で240℃、液相線で243℃であり、一般的に使われるはんだである例えばSn−3Ag−0.5Cuを良好にリフローさせるための温度(最大例えば235℃)では溶融しない。また、Sn−10Sbは、溶融温度として、固相線で245℃、液相線で266℃であり、やはり同じ性質を有している。
【0017】
また、実施態様として、前記第2の配線パターンが、前記板状絶縁層に接する面と対向する面上には多層化配線構造のない最外配線層のパターンである、とすることができる。これによれば、配線層数の増加が限られるが、より薄型の部品内蔵配線板を提供できる。
【0018】
また、実施態様として、前記板状絶縁層との間に前記第2の配線パターンを挟むように、前記第2の配線パターン上に積層位置する第2の板状絶縁層と、前記第2の板状絶縁層の、前記第2の配線パターンが位置する側とは反対の側の面上に設けられた第3の配線パターンとをさらに具備する、とすることができる。これによれば、半導体素子部品が実装されている第2の配線パターンは内層配線層のパターンとなる。そして、第2の板状絶縁層の面上に第3の配線パターンが設けられることにより、配線パターンの形成密度を増加させ、パターン設計の自由度が高い部品内蔵配線板とすることができる。
【0019】
また、実施態様として、前記第2の配線パターンが、前記板状絶縁層の厚み方向に落ち込まずに該板状絶縁層上に設けられている、とすることができる。これは、配線パターン化される前の金属箔を用いて部品実装を行い、その後の積層プロセスを経て金属箔のパターニングがなされ得られる特有の構造である。配線パターン化される前の金属箔を用いて部品実装を行うことで、製造全体として、より簡易なプロセスで済む。
【0020】
また、実施態様として、前記第2の配線パターンが、前記板状絶縁層の厚み方向に落ち込んで該板状絶縁層上に設けられている、とすることができる。これは、第2の板状絶縁層上(またはダミー板上)に設けられた配線パターンを用いて部品実装を行い、その後の製造プロセスを経て得られる特有の構造である。第2の板状絶縁層上(またはダミー板上)に設けられた配線パターンを用いて部品実装を行うことで、部品実装は配線板における通常の部品マウントプロセスで済む。
【0021】
また、実施態様として、前記第3の配線パターンと電気導通して該第3の配線パターンから前記第2の板状絶縁層を貫通して、前記第2の配線パターンに電気導通するように延設された、層間接続体たるビアホール内めっきビアをさらに具備する、とすることができる。このビアホール内めっきビアは、第2の板状絶縁層を貫通して設けられるべき層間接続体のひとつの態様である。同じ機能としてほかに、導電性組成物印刷による導電性バンプを由来とする層間接続体を採用することもできる。
【0022】
以上を踏まえ、以下では本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る部品内蔵配線板の構成を模式的に示す断面図である。図1に示すように、この部品内蔵配線板は、絶縁層(板状絶縁層)11、同12、同13、同14、同15、配線層(配線パターン、導電パターン)21、同22、同23、同24、同25、同26、層間接続体31、同32、同34、同35、スルーホール導電体33、半導体素子部品(ウエハレベル・チップスケールパッケージによる電気/電子部品)41、チップ抵抗42(表面実装型受動素子部品である電気/電子部品)、はんだ接続部材51、52、はんだレジスト61、62を有する。
【0023】
この部品内蔵配線板は、内蔵、埋設の部品として、半導体素子部品41およびチップ抵抗42を有している。半導体素子部品41およびチップ抵抗42には、それぞれ表面実装技術が適用されている。すなわち、半導体素子部品41およびチップ抵抗42の端子41a、42aは、はんだ接続部材51、52を介して、配線層22が含むランドに電気的、機械的にそれぞれ接続されている。ここで、はんだ接続部材51、52が、すずとアンチモンとを含有する、溶融温度が240℃以上でかつ266℃以下のはんだ接続部材である点が特徴になっている。
【0024】
これにより、はんだ接続部材51、52は、2次実装で一般的に使われるはんだである例えばSn−3Ag−0.5Cu(溶融温度217℃から221℃)を良好にリフローさせるための温度(最大例えば235℃)では溶融しない。したがって、この部品内蔵配線板上に別の部品を実装するときや、この部品内蔵配線板自体を別の大きな配線板(例えばマザーボード)に実装するときにおいて、はんだ接続部材51、52の再溶融による接続不良や短絡の発生を効果的に防止することでき、これにより内蔵部品である半導体素子部品41およびチップ抵抗42の接続信頼性を向上することができる。
【0025】
すずとアンチモンとを含有する、溶融温度が240℃以上でかつ266℃以下のはんだとしては、例えば、千住金属工業(株)が供給するM10またはM14の品番のはんだ(状態としてクリームはんだ)を利用することができる。品番M10は、Sn−5.0Sbの合金組成であり、同社カタログによれば、溶融温度は、固相線で240℃、液相線で243℃である。品番M14は、Sn−10Sbの合金組成であり、同社カタログによれば、溶融温度は、固相線で245℃、液相線で266℃である。
【0026】
後者のはんだM14は、これを良好にリフローさせるには、その温度として少なくとも270℃以上(例えばピーク温度285℃)であることが好ましく、その点で、配線板の絶縁層材料として一般的なエポキシ系の樹脂が使用される場合、樹脂の耐熱性が不足する可能性が高い。この耐熱性不足を回避するためになされる製造上の工夫については後述する。
【0027】
以下では、図1に示した部品内蔵配線板について、はんだ接続部材51、52以外の構造等について補足する。
【0028】
半導体素子部品41は、ウエハレベル・チップスケールパッケージによる部品であり、半導体チップと、この半導体チップ上に形成されたグリッド状配列の表面実装用端子41aとを少なくとも備えている。表面実装用端子41aは、半導体チップがもともと有する端子パッドから再配線層を介して電気的に導通しつつその位置を再配置して設けられた端子である。このような再配置により、端子としての配置密度が半導体チップ上の端子パッドのそれより粗くなっていて、これにより、半導体素子部品41は、表面実装技術により、配線層22が含むランドにはんだ接続部材51を介して実装することができる。
【0029】
チップ抵抗42は、表面実装型の受動素子部品(抵抗器)であり、その平面的な大きさは例えば0.6mm×0.3mmである。両端に端子42aを有し、その下側が配線層22が含むランドに対向位置している。チップ抵抗42の端子42aとランドとははんだ接続部材52により電気的、機械的に接続されている。チップ抵抗42は、これに代えてチップキャパシタやチップインダクタであっても同様に内蔵、埋設され得る。
【0030】
配線層21、26は、配線板としての両主面上の配線層であり、その上に各種の部品(不図示)が実装され得る。実装ではんだ(不図示)が載るべき配線層21、26のランド部分を除いて両主面上には、はんだ接続時に溶融したはんだ(例えばSn−3Ag−0.5Cuのはんだ)をランド部分に留めかつその後は保護層として機能するはんだレジスト61、62が形成されている(厚さはそれぞれ例えば20μm程度)。ランド部分の表層には、耐腐食性の高いNi/Auのめっき層(不図示)を形成するようにしてもよい。
【0031】
配線層22、23、24、25は、それぞれ、内層の配線層であり、順に、配線層21と配線層22の間に絶縁層11が、配線層22と配線層23の間に絶縁層12が、配線層23と配線層24との間に絶縁層13が、配線層24と配線層25との間に絶縁層14が、配線層25と配線層26との間に絶縁層15が、それぞれ位置しこれらの配線層21〜26を隔てている。各配線層21〜26は、例えばそれぞれ厚さ18μmの金属(銅)箔からなっている。
【0032】
各絶縁層11〜15は、絶縁層13を除き例えばそれぞれ厚さ100μm、絶縁層13のみ例えば厚さ300μmで、それぞれ例えばガラスエポキシ樹脂からなるリジッドな素材である。特に絶縁層13は、内蔵された半導体素子部品41およびチップ抵抗42に相当する位置部分が開口部となっており、半導体素子部品41およびチップ抵抗42を埋設するための空間を提供する。絶縁層12、14は、内蔵された半導体素子部品41およびチップ抵抗42のための絶縁層13の上記開口部および絶縁層13のスルーホール導電体33内部の空間を埋めるように変形進入しており内部に空隙となる空間は存在しない。
【0033】
配線層21と配線層22とは、それらのパターンの面の間に挟設されかつ絶縁層11を貫通する層間接続体31により導通し得る。同様に、配線層22と配線層23とは、それらのパターンの面の間に挟設されかつ絶縁層12を貫通する層間接続体32により導通し得る。配線層23と配線層24とは、絶縁層13を貫通して設けられたスルーホール導電体33により導通し得る。配線層24と配線層25とは、それらのパターンの面の間に挟設されかつ絶縁層14を貫通する層間接続体34により導通し得る。配線層25と配線層26とは、それらのパターンの面の間に挟設されかつ絶縁層15を貫通する層間接続体35により導通し得る。
【0034】
層間接続体31、32、34、35は、それぞれ、導電性組成物のスクリーン印刷により形成される導電性バンプを由来とするものであり、その製造工程に依拠して軸方向(図1の図示で上下の積層方向)に径が変化している。その直径は、太い側で例えば200μmである。
【0035】
次に、図1に示した部品内蔵配線板の製造工程を図2ないし図4を参照して説明する。図2ないし図4は、それぞれ、図1に示した部品内蔵配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図である。これらの図において図1中に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。
【0036】
図2から説明する。図2は、図1中に示した各構成のうち絶縁層11を中心とした部分の製造工程を示している。まず、図2(a)に示すように、厚さ例えば18μmの金属箔(電解銅箔)22A上に例えばスクリーン印刷により、層間接続体31となるペースト状の導電性組成物をほぼ円錐形のバンプ状(底面径例えば200μm、高さ例えば160μm)に形成する。この導電性組成物は、ペースト状の樹脂中に銀、金、銅などの金属微細粒または炭素微細粒を分散させたものである。説明の都合で金属箔22Aの下面に印刷しているが上面でもよい。層間接続体31の印刷後これを乾燥させて硬化させる。
【0037】
次に、図2(b)に示すように、金属箔22A上に厚さ例えば公称100μmのFR−4のプリプレグ11Aを積層して層間接続体31を貫通させ、その頭部が露出するようにする。露出に際してあるいはその後その先端を塑性変形でつぶしてもよい(いずれにしても層間接続体31の形状は、積層方向に一致する軸を有しその軸方向に径が変化している。)。続いて、図2(c)に示すように、プリプレグ11A上に金属箔(電解銅箔)21Aを積層配置して加圧、加熱し全体を一体化する。このとき、金属箔21Aは層間接続体31と電気的導通状態となり、プリプレグ11Aは完全に硬化して絶縁層11になる。
【0038】
次に、図2(d)に示すように、片側の金属箔22Aに例えば周知のフォトリソグラフィによるパターニングを施し、これを、実装用ランドを含む配線パターン22に加工する。そして、加工により得られた実装用ランド上に、図2(e)に示すように、ペースト状はんだ組成物(クリームはんだ)51A、52Aを例えばスクリーン印刷で適用、付着させる。スクリーン印刷によれば容易に効率的に所定パターンに印刷できる。図示するような大きさの異なるペースト状はんだ組成物51A、52Aの付着も、例えば、スクリーン板のピット径を変えることで容易に実現する。なおスクリーン印刷に代えてディスペンサで適用することもできる。
【0039】
クリームはんだ51A、52Aは、すでに述べたように、ここでは例えば、千住金属工業(株)が供給するM10の品番のはんだ組成物を用いる。すなわち、ペースト状はんだ組成物51A、52Aは、フラックス中にSn−5.0Sbの組成のはんだの微細粒を分散させたものである。なお、同社のM14を使用するときには、これを良好にリフローさせることを考慮してリフロー温度を設定すると、絶縁層11が一般的なエポキシ系の樹脂の場合、その耐熱性が不足する可能性が高い。この製造方法においては、M10の品番のはんだ組成物の使用が向いている。
【0040】
ペースト状はんだ組成物51A、52Aの印刷のあと、半導体素子部品41およびチップ抵抗42をペースト状はんだ組成物51A、52Aを介して配線層22の実装用ランド上に例えばマウンタで載置し、さらにその後ペースト状はんだ組成物51A、52Aを例えばリフロー炉でリフローさせる。リフロー温度は、例えば最大で260℃とする。この温度であれば、絶縁層11の耐熱性の範囲である。以上により、図2(f)に示すように、はんだ接続部材51、52を介して半導体素子部品41およびチップ抵抗42が配線層22の実装用ランド上に接続された状態の積層部材1が得られる。この積層部材1を用いる後の工程については図4で述べる。
【0041】
次に、図3を参照して説明する。図3は、図1中に示した各構成のうち絶縁層13および同12を中心とした部分の製造工程を示している。まず、図3(a)に示すように、両面に例えば厚さ18μmの金属箔(電解銅箔)23A、24Aが積層された例えば厚さ300μmのFR−4の絶縁層13を用意し、その所定位置にスルーホール導電体を形成するための貫通孔83をあけ、かつ内蔵する半導体素子部品41およびチップ抵抗42に相当する部分に部品用開口部81、82を形成する。
【0042】
次に、無電解めっきおよび電解めっきを行い、図3(b)に示すように、貫通孔83の内壁にスルーホール導電体33を形成する。このとき開口部81、82の内壁にも導電体が形成される。さらに、図3(c)に示すように、金属箔23A、24Aを周知のフォトリソグラフィを利用して所定にパターニングして配線層23、24を形成する。配線層23、24のパターニング形成により、開口部81、82の内壁に形成された導電体も除去される。
【0043】
次に、図3(d)に示すように、配線層23上の所定の位置に層間接続体32となる導電性バンプ(底面径例えば200μm、高さ例えば160μm)をペースト状導電性組成物のスクリーン印刷により形成する。続いて、図3(e)に示すように、絶縁層12とすべきFR−4のプリプレグ12A(公称厚さ例えば100μm)を配線層23側にプレス機を用い積層する。プリプレグ12Aには、絶縁層13と同様の、内蔵する半導体素子部品41およびチップ抵抗42に相当する部分の開口部をあらかじめ設けておく。
【0044】
図3(e)の積層工程では、層間接続体32の頭部をプリプレグ12Aに貫通させる。なお、図3(e)における層間接続体32の頭部の破線は、この段階でその頭部を塑性変形させてつぶしておく場合と塑性変形させない場合の両者あり得ることを示す。以上により得られた積層部材を積層部材2とする。
【0045】
以上の図3に示した工程は、以下のような手順とすることも可能である。図3(a)の段階では、貫通孔83のみ形成し内蔵部品用の開口部81、82を形成せずに続く図3(b)から図3(d)までの工程を行う。次に、図3(e)に相当する工程として、プリプレグ12A(開口のないもの)の積層を行う。そして、絶縁層13およびプリプレグ12Aに部品内蔵用の開口部を同時に形成する、という工程である。
【0046】
次に、図4を参照して説明する。図4は、上記で得られた積層部材1、2などを積層する配置関係を示す図である。同図で、図示上側の積層部材3は、下側の積層部材1と同様な工程を適用し、かつそのあと層間接続体34およびプリプレグ14Aを、図示中間の積層部材2における層間接続体32およびプリプレグ12Aと同様にして形成し得られたものである。
【0047】
ただし、積層部材3は、部品(半導体素子部品41およびチップ抵抗42)およびこれを接続するための部位(実装用ランド)のない構成であり、さらにプリプレグ14Aには半導体素子部品41用の開口部、チップ抵抗42用の開口部を設けない。そのほかは、金属箔(電解銅箔)26A、絶縁層15、層間接続体35、配線層25、プリプレグ14A、層間接続体34とも、それぞれ積層部材1の金属箔21A、絶縁層11、層間接続体31、配線層22、積層部材2のプリプレグ12A、層間接続体32と同じである。
【0048】
図4に示すような配置で各積層部材1、2、3を積層配置してプレス機で加圧、加熱する。これにより、プリプレグ12A、14Aが完全に硬化し全体が積層、一体化する。このとき、加熱により得られるプリプレグ12A、14Aの流動性により、半導体素子部品41およびチップ抵抗42の周りの空間およびスルーホール導電体33内部の空間にはプリプレグ12A、14Aが変形進入し空隙は発生しない。
【0049】
また、配線層22は、絶縁層11の側ではなく絶縁層12(プリプレグ12Aを由来)の厚み方向に落ち込んで位置することになり、配線層24は、絶縁層13の側ではなく絶縁層14(プリプレグ14Aを由来)の厚み方向に落ち込んで位置することになる。さらに、配線層22、24は、層間接続体32、34にそれぞれ電気的に接続される。
【0050】
図4に示す積層工程の後、上下両面の金属箔26A、21Aを周知のフォトリソグラフィを利用して所定にパターニングし、さらにはんだレジスト61、62の層を形成することにより、図1に示したような部品内蔵配線板を得ることができる。この実施形態は、半導体素子部品41、チップ抵抗42が実装されている配線パターン22が内層配線層のパターンになる。この配線パターン22とは別に、板状絶縁層11の外側の面上に配線パターン21が設けられるので、部品内蔵にもかかわらず、配線パターンの形成密度を増加させ、パターン設計の自由度の高い部品内蔵配線板とすることができる。
【0051】
また、板状絶縁層11上に設けられた配線パターン22上に部品実装を行い、その後の製造プロセスを経て得られたものであるため、その部品実装においては、はんだ接続部材51、52の材質が通常の場合と異なることを除けば、配線板における通常の部品マウントプロセスを用いることができる。すなわち、設備的な負担増加が小さい。
【0052】
次に、本発明の別の実施形態に係る部品内蔵配線板について図5を参照して説明する。図5は、別の実施形態に係る部品内蔵配線板の構成を模式的に示す断面図であり、すでに説明した図中に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。その部位については加える事項がない限り説明を省略する。
【0053】
この実施形態は、絶縁層11、15を貫通して設けられる層間接続体として、導電性組成物印刷によるバンプを由来の導電体に代えて、ビアホール内めっきビア31M、35Mを用いている点が、前述の実施形態(図1)の構成と異なる点である。部品41、42が実装されている内層の配線パターン22は、絶縁層11の側ではなく絶縁層12の厚み方向に落ち込んで位置する。同様に、内層の配線パターン25は、絶縁層15の側ではなく絶縁層14の厚み方向に落ち込んで位置する。この関係は、図1に示した実施形態と同じである。
【0054】
この部品内蔵配線板の製造過程について以下説明する。図6は、図5に示した部品内蔵配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図である。図6において、すでに説明した図中に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。
【0055】
この実施形態では、図6に示すような積層工程を行うことにより、絶縁層12(プリプレグ12Aを由来)、絶縁層13、絶縁層14(プリプレグ14Aを由来)を有する部材をまず、あらかじめ得る。図6中の積層部材1Aは、例えばステンレス製のダミー板100上に、配線パターン22、はんだ接続部材51、52、および半導体素子部品41、チップ抵抗42が設けられた積層部材である。また、積層部材3Aは、例えばステンレス製のダミー基板200上に、配線パターン25、層間接続体34、プリプレグ14Aが設けられた積層部材である。ダミー板100、200は、図6に示す積層がされた後に例えば機械的に剥離して取り払われる。
【0056】
積層部材1A、3Aを得る工程について多少補足すると、その配線パターン22、25は、ダミー板100、200上に当初積層されていた金属箔22、25を例えば周知のフォトリソグラフィ工程を用いてエッチングしパターニングすることで得ることができる。または、配線パターン22、25は、ダミー板100、200上に、パターン化がされたレジストマスクを形成し、レジストマスクの抜けた部分への電解めっき形成でアディティブに得ることもできる(厚さは例えば15μm程度)。ダミー板100、200上に配線パターン22、25が設けられたあとについては、すでに説明した積層部材1、3(図4中に示した)を得るための同様の工程を適用することができる。
【0057】
積層部材1Aを得るための部品実装においては、はんだ接続部材51、52として、千住金属工業(株)が供給するM10の品番のはんだを利用することに代えて、より溶融温度の高い同社のM14のはんだを用いることもできる。この部品実装では、はんだをリフローさせるとき、ダミー板100上に配線パターン22が形成され、その配線パターン22が含むランド上にM14のペースト状はんだ組成物を介して部品41、42がマウントされた状態になっており、耐熱性不足の恐れがある絶縁層11が介在しない状態になっているためである。
【0058】
M14を用いる場合、これを良好にリフローさせるには、その温度として少なくとも270℃以上(例えばピーク温度285℃)であることが好ましい。M14を用いた部品内蔵配線板は、M14がM10より溶融温度が高いため、この部品内蔵配線板が2次実装時に供されるときに、その溶融する可能性がより低く抑えられる。すなわち、2次実装で用いられる例えばSn−3Ag−0.5Cuのはんだを良好にリフローさせるための温度(最大例えば235℃)との違いが大きい分、2次実装時に余裕が生まれる。
【0059】
図7は、図5に示した部品内蔵配線板の製造過程の別の一部を模式的断面で示す工程図であり、図6に示した積層工程に続いて行われるさらなる積層工程を示している。図7において、すでに説明した図中に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。
【0060】
図7中の中間の積層部材2Cは、図6に示した積層工程により得られた部材である。図示するように、積層部材2Cは、図6に示した積層工程に依拠して、配線層22が絶縁層12の厚み方向に落ち込んで位置し、配線層25は、絶縁層14の厚み方向に落ち込んで位置する。図7に示すような配置で各積層部材を積層配置してプレス機で加圧、加熱する。これにより、プリプレグ11A、15Aが完全に硬化し全体が積層、一体化する。
【0061】
次に、図8は、図5に示した部品内蔵配線板の製造過程のさらに別の一部を模式的断面で示す工程図であり、図7に示した積層工程に続いて行われるビアホールの形成工程を示している。図8において、すでに説明した図中に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。
【0062】
ビアホールを形成するには、まず、図8に示すように、金属箔21A、26Aの露出面の側から、それぞれ、その必要な位置にビアホール31h、35hを例えばレーザ加工で形成する。ビアホール31hは、配線層21となる金属箔21Aと配線層22との層間接続が必要な位置に、金属箔21A、絶縁層11を連通、貫通して配線層22に達するように設ける。同様に、ビアホール35hは、配線層26となる金属箔26Aと配線層25との層間接続が必要な位置に、金属箔26A、絶縁層15を連通、貫通して配線層25に達するように設ける。
【0063】
ビアホール31h、35hの形成は、レーザ加工で金属箔21Aおよび絶縁層11(金属箔26Aおよび絶縁層15)を連続して順次消失させるように穴加工する方法のほかに、まず、金属箔21A(26A)のみをエッチング加工で貫通させその後に、そのエッチングされた金属箔21A(26A)をマスクにその後絶縁層11(15)をレーザ加工で消失させ穴加工するという2段階の工程とすることもできる。金属箔21A(26A)のみをエッチング加工する段階では、パターン化された、エッチング用のレジストマスクを金属箔21A(26A)上に形成しておく。前者の方法は、効率的に好ましいと考えられ、後者の方法は、効率で劣るものの穴形状の制御性に優れていると考えられる。
【0064】
図8に示すようにビアホール31h、35hの形成後、無電解めっきおよび電解めっきの工程を行い、金属箔21A(26A)と電気導通してこの金属箔21A(26A)から配線層22(25)に電気導通するように、ビアホール内めっきビア31M(35M)を形成する。めっき31M、35Mは、少なくともビアホール31h、35hの内壁上に形成されることが必要であるが、ビアホール31h、35h内をほとんど充填し埋めるように形成されてもよい。このようなビアとしての形状コントロールのためには、金属箔21A(26A)上に、パターン化されたレジストマスクを形成した上で上記のめっき工程を行ってもよい。
【0065】
以上説明の工程の後、上下両面の金属箔26A、21Aを周知のフォトリソグラフィを利用して所定にパターニングし、さらにはんだレジスト61、62の層を形成することにより、図5に示したような部品内蔵配線板を得ることができる。
【0066】
この実施形態の変形例としては、その製造途上に得られる積層部材2C(図7参照)自体を、より薄型の部品内蔵配線板として供することができる(ただし製品とするためはんだレジストの層を両面に形成する)。このような変形例では、配線パターン22は、その板状絶縁層12に接する側の面と対向する面上には多層化配線構造のない最外配線層のパターンになる。これによれば、配線層数が限られるが、より薄型の部品内蔵配線板になる。
【0067】
図5に示した構成の部品内蔵配線板をM14のはんだを用いて製造しその信頼性を試験した結果について説明する。試験方法として、得られた部品内蔵配線板に30℃、70%RHで192時間吸湿させ、その後2次実装に擬して235℃のリフローを5回行った。結果として、このように複数回のリフローを行っても、配線板内部の部品41、42の接続不良や短絡の発生は特になかった。
【0068】
次に、本発明のさらに別の実施形態に係る部品内蔵配線板について図9を参照して説明する。図9は、さらに別の実施形態に係る部品内蔵配線板の構成を模式的に示す断面図であり、すでに説明した図中に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。その部位については加える事項がない限り説明を省略する。
【0069】
この実施形態は、上述の各実施形態とは異なり、部品41、42が実装されている内層の配線パターン22は、絶縁層12の側ではなく絶縁層11の厚み方向に落ち込んで位置する。また、内層の配線パターン25は、絶縁層14の側ではなく絶縁層15の厚み方向に落ち込んで位置する。
【0070】
この構成上の違いが生じる理由の説明を兼ねて、この部品内蔵配線板の製造過程について以下説明する。図10は、図9に示した部品内蔵配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図である。図10において、すでに説明した図中に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。
【0071】
この積層工程は、すでに説明した図4における積層工程と類似する点があるが異なる点もある。類似する点として、中ほどの積層部材2については同じ構成のものを使用する。下側の積層部材1Bについては、図4中に示した積層部材1とは異なり、絶縁層11、層間接続体31、金属箔21Aのない構成であり、さらに、パターン化がされている配線層22に代えてパターン化されていない金属箔22Aの状態のものが使用される。
【0072】
上側の積層部材3Bについても、図4中に示した積層部材3とは異なり、絶縁層15、層間接続体35、金属箔26Aのない構成であり、さらに、パターン化がされている配線層25に代えてパターン化されていない金属箔25Aの状態のものが使用される。この積層部材3Bの形成については、すでに説明した図2(b)を参照できる。
【0073】
積層部材1Bは、金属箔22A上に部品41、42を実装している点で、図4中に示した積層部材1とは異なる。このため、部品41、42の実装は、金属箔22A上の部品実装用ランドとなるべき領域への実装になる。このような状態での実装であることを考慮して、金属箔22A上においては、リフロー状態のはんだ接続部材51、52が、ランドとなるべき領域内に留まりその広がりが制御され得るようにあらかじめ対処しておくことが好ましい。
【0074】
そのための対処のひとつとして、金属箔22A上のランドとなるべき領域に、あらかじめニッケルめっき層(不図示)、およびその上に金めっき層(不図示)を形成しておく方法を採用し得る。金が溶融はんだとの濡れ性が比較的良好であることを利用してその範囲に溶融はんだを留めようとするものである。金めっき層は、リフロー後、はんだ接続部材51、52が含むすずの中に取り込まれ消失する。
【0075】
または、上記のめっき層を設ける方法に代えて、金属箔22A上に、溶融はんだを堰き止めるための樹脂パターン(不図示)を形成しておく方法を採用することもできる。このような樹脂パターンは、はんだ接続部材51、52の溶融時の広がりを制限するように、金属箔22A上に、ランドとなるべき領域に対応してそれを囲う例えば枠状に形成される。樹脂パターンの材質としては、例えばはんだレジストと同様の材質のものを使用できる。
【0076】
なお、積層部材1Bを得るための部品実装においては、図6中に示した積層部材1Aを得るための部品実装と同様に、はんだ接続部材51、52として、千住金属工業(株)が供給する、より溶融温度の高いM14のはんだを用いることができる。この部品実装では、はんだをリフローさせるとき、金属箔22A上にM14のペースト状はんだ組成物を介して部品41、42がマウントされた状態になっており、耐熱性不足の恐れがある絶縁層11がやはり介在しない状態になっているためである。
【0077】
図10に示す積層工程の後、得られた積層体における上下両面の金属箔25A、22Aは周知のフォトリソグラフィを利用して所定にパターニングされる。これにより得られた積層部材は、次の段階の積層工程として、図7に示した積層工程における積層部材2Cに代えて用いられる。したがって、その後については図7を参照することができる。これにより得られる構造においては、以上説明の製造工程に依拠して、図9に示したように、配線層22が絶縁層12の側ではなく絶縁層11の厚み方向に落ち込んで位置し、配線層25は、絶縁層14の側ではなく絶縁層15の厚み方向に落ち込んで位置することになる。
【0078】
この実施形態の変形例としては、やはり、その製造途上に得られる、図10に示した積層工程およびその後の配線層のパターニング形成による構造のもの自体を、より薄型の部品内蔵配線板として供することができる(ただし製品とするためはんだレジストの層を両面に形成する)。この実施形態は、このようは変形例の場合を含め、配線パターン化される前の金属箔を用いて部品実装を行うことで、製造全体として、より簡易なプロセスで済む利点がある。
【0079】
図9に示した構成の部品内蔵配線板をM14のはんだを用いて製造しその信頼性を試験した結果については以下である。試験方法として、図5に示した実施形態の場合と同様に、得られた部品内蔵配線板に30℃、70%RHで192時間吸湿させ、その後2次実装に擬して235℃のリフローを5回行った。結果として、このように複数回のリフローを行っても、配線板内部の部品41、42の接続不良や短絡の発生は特になかった。
【符号の説明】
【0080】
1,1A,1B…積層部材、2,2C…積層部材、3,3A,3B…積層部材、11…絶縁層(板状絶縁層)、11A…プリプレグ、12…絶縁層(板状絶縁層)、12A…プリプレグ、13…絶縁層(板状絶縁層)、14…絶縁層(板状絶縁層)、14A…プリプレグ、15…絶縁層(板状絶縁層)、15A…プリプレグ、21…配線層(配線パターン)、21A…金属箔(銅箔)、22…配線層(配線パターン)、22A…金属箔(銅箔)、23…配線層(配線パターン)、23A…金属箔(銅箔)、24…配線層(配線パターン)、24A…金属箔(銅箔)、25…配線層(配線パターン)、25A…金属箔(銅箔)、26…配線層(配線パターン)、26A…金属箔(銅箔)、31,32,34,35…層間接続体(導電性組成物印刷による導電性バンプ)、31h…ビアホール、31M…ビアホール内めっきビア、33…スルーホール導電体、35M…ビアホール内めっきビア、35h…ビアホール、41…半導体素子部品(ウエハレベル・チップスケールパッケージによる電気/電子部品)、41a…表面実装用端子、42…チップ抵抗(電気/電子部品)、42a…端子、51,52…はんだ接続部材、51A,52A…ペースト状はんだ組成物、61,62…はんだレジスト、81,82…部品用開口部、83…貫通孔、100,200…ダミー板(ステンレス板)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子を有する電気/電子部品と、
前記電気/電子部品の表面の少なくとも一部に密着して該電気/電子部品の少なくとも一部分を埋め込んだ板状絶縁層と、
前記板状絶縁層の上面上に設けられた第1の配線パターンと、
前記板状絶縁層の前記上面に対向する下面上に設けられた、前記電気/電子部品の実装用のランドを含む第2の配線パターンと、
前記電気/電子部品の前記端子と前記第2の配線パターンの前記ランドとを電気的、機械的に接続するはんだ接続部材と、を具備し、
前記はんだ接続部材が、すずとアンチモンとを含有する、溶融温度が240℃以上でかつ266℃以下のはんだ接続部材であること
を特徴とする部品内蔵配線板。
【請求項2】
前記はんだ接続部材が、Sn−5.0Sb、またはSn−10Sbのはんだ接続部材であることを特徴とする請求項1記載の部品内蔵配線板。
【請求項3】
前記第2の配線パターンが、前記板状絶縁層に接する面と対向する面上には多層化配線構造のない最外配線層のパターンであることを特徴とする請求項1記載の部品内蔵配線板。
【請求項4】
前記板状絶縁層との間に前記第2の配線パターンを挟むように、前記第2の配線パターン上に積層位置する第2の板状絶縁層と、
前記第2の板状絶縁層の、前記第2の配線パターンが位置する側とは反対の側の面上に設けられた第3の配線パターンと
をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の部品内蔵配線板。
【請求項5】
前記第2の配線パターンが、前記板状絶縁層の厚み方向に落ち込まずに該板状絶縁層上に設けられていることを特徴とする請求項3または4記載の部品内蔵配線板。
【請求項6】
前記第2の配線パターンが、前記板状絶縁層の厚み方向に落ち込んで該板状絶縁層上に設けられていることを特徴とする請求項3または4記載の部品内蔵配線板。
【請求項7】
前記第3の配線パターンと電気導通して該第3の配線パターンから前記第2の板状絶縁層を貫通して、前記第2の配線パターンに電気導通するように延設された、層間接続体たるビアホール内めっきビアをさらに具備することを特徴とする請求項4記載の部品内蔵配線板。
【請求項8】
ダミー板上に、はんだ接続するための表面実装用ランドを含む配線パターンを形成する工程と、
前記ダミー板の前記ランド上にSn−10Sbのはんだ成分を含有のペースト状はんだ組成物を付着させる工程と、
前記ペースト状はんだ組成物を介した前記ランド上に、表面実装用端子を有する電気/電子部品の前記表面実装用端子が位置するように、前記ダミー板上に前記電気/電子部品をマウントする工程と、
前記ペースト状はんだ組成物をリフローさせ前記電気/電子部品を前記ランド上に固定する工程と、
前記ランド上の前記電気/電子部品の表面に密着して該電気/電子部品を埋め込むように、前記ダミー板上に板状絶縁層を積層する工程と、
前記板状絶縁層の側に前記配線パターンが残存するように、前記ダミー板、前記配線パターン、および前記板状絶縁層を有する積層物から前記ダミー板を取り去る工程と
を具備することを特徴とする部品内蔵配線板の製造方法。
【請求項9】
金属箔上に、はんだ接続するための表面実装用ランドとなるべき領域を位置設定する工程と、
前記金属箔の前記領域上にSn−10Sbのはんだ成分を含有のペースト状はんだ組成物を付着させる工程と、
前記金属箔上の、前記ペースト状はんだ組成物を介した前記領域上に、表面実装用端子を有する電気/電子部品の前記表面実装用端子が位置するように、前記金属箔上に前記電気/電子部品をマウントする工程と、
前記ペースト状はんだ組成物をリフローさせ前記電気/電子部品を前記金属箔上に固定する工程と、
前記金属箔上の前記電気/電子部品の表面に密着して該電気/電子部品を埋め込むように、前記金属箔上に板状絶縁層を積層する工程と、
前記板状絶縁層上の前記金属箔を、前記ランドとなるべき前記領域が導電パターンとして少なくとも残るようにパターニングする工程と
を具備することを特徴とする部品内蔵配線板の製造方法。
【請求項1】
端子を有する電気/電子部品と、
前記電気/電子部品の表面の少なくとも一部に密着して該電気/電子部品の少なくとも一部分を埋め込んだ板状絶縁層と、
前記板状絶縁層の上面上に設けられた第1の配線パターンと、
前記板状絶縁層の前記上面に対向する下面上に設けられた、前記電気/電子部品の実装用のランドを含む第2の配線パターンと、
前記電気/電子部品の前記端子と前記第2の配線パターンの前記ランドとを電気的、機械的に接続するはんだ接続部材と、を具備し、
前記はんだ接続部材が、すずとアンチモンとを含有する、溶融温度が240℃以上でかつ266℃以下のはんだ接続部材であること
を特徴とする部品内蔵配線板。
【請求項2】
前記はんだ接続部材が、Sn−5.0Sb、またはSn−10Sbのはんだ接続部材であることを特徴とする請求項1記載の部品内蔵配線板。
【請求項3】
前記第2の配線パターンが、前記板状絶縁層に接する面と対向する面上には多層化配線構造のない最外配線層のパターンであることを特徴とする請求項1記載の部品内蔵配線板。
【請求項4】
前記板状絶縁層との間に前記第2の配線パターンを挟むように、前記第2の配線パターン上に積層位置する第2の板状絶縁層と、
前記第2の板状絶縁層の、前記第2の配線パターンが位置する側とは反対の側の面上に設けられた第3の配線パターンと
をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の部品内蔵配線板。
【請求項5】
前記第2の配線パターンが、前記板状絶縁層の厚み方向に落ち込まずに該板状絶縁層上に設けられていることを特徴とする請求項3または4記載の部品内蔵配線板。
【請求項6】
前記第2の配線パターンが、前記板状絶縁層の厚み方向に落ち込んで該板状絶縁層上に設けられていることを特徴とする請求項3または4記載の部品内蔵配線板。
【請求項7】
前記第3の配線パターンと電気導通して該第3の配線パターンから前記第2の板状絶縁層を貫通して、前記第2の配線パターンに電気導通するように延設された、層間接続体たるビアホール内めっきビアをさらに具備することを特徴とする請求項4記載の部品内蔵配線板。
【請求項8】
ダミー板上に、はんだ接続するための表面実装用ランドを含む配線パターンを形成する工程と、
前記ダミー板の前記ランド上にSn−10Sbのはんだ成分を含有のペースト状はんだ組成物を付着させる工程と、
前記ペースト状はんだ組成物を介した前記ランド上に、表面実装用端子を有する電気/電子部品の前記表面実装用端子が位置するように、前記ダミー板上に前記電気/電子部品をマウントする工程と、
前記ペースト状はんだ組成物をリフローさせ前記電気/電子部品を前記ランド上に固定する工程と、
前記ランド上の前記電気/電子部品の表面に密着して該電気/電子部品を埋め込むように、前記ダミー板上に板状絶縁層を積層する工程と、
前記板状絶縁層の側に前記配線パターンが残存するように、前記ダミー板、前記配線パターン、および前記板状絶縁層を有する積層物から前記ダミー板を取り去る工程と
を具備することを特徴とする部品内蔵配線板の製造方法。
【請求項9】
金属箔上に、はんだ接続するための表面実装用ランドとなるべき領域を位置設定する工程と、
前記金属箔の前記領域上にSn−10Sbのはんだ成分を含有のペースト状はんだ組成物を付着させる工程と、
前記金属箔上の、前記ペースト状はんだ組成物を介した前記領域上に、表面実装用端子を有する電気/電子部品の前記表面実装用端子が位置するように、前記金属箔上に前記電気/電子部品をマウントする工程と、
前記ペースト状はんだ組成物をリフローさせ前記電気/電子部品を前記金属箔上に固定する工程と、
前記金属箔上の前記電気/電子部品の表面に密着して該電気/電子部品を埋め込むように、前記金属箔上に板状絶縁層を積層する工程と、
前記板状絶縁層上の前記金属箔を、前記ランドとなるべき前記領域が導電パターンとして少なくとも残るようにパターニングする工程と
を具備することを特徴とする部品内蔵配線板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−249457(P2011−249457A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119330(P2010−119330)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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