説明

部品実装用装置及び部品実装用装置における段取り替え方法

【課題】機種切り替えがなされた場合の作業効率の低下を防止することができる部品実装用装置及び部品実装用装置における段取り替え方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基板PBの機種切り替えがなされたことが検知された場合に、機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目の中に、オペレータが手作業で行うべき作業項目があるか否かの判断を行い(ステップST53)、オペレータが手作業で行うべき作業項目がない場合には作業実行部16の運転を停止させることなく、機種切り替えに必要な段取り替えの全ての作業項目を自動で実行する(ステップST54)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業位置に位置決めした基板に対して部品実装用の作業を実行する部品実装用装置及び部品実装用装置における段取り替え方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷機や部品実装機等の部品実装用装置では、基板搬送路等の基板位置決め手段によって基板を所定の作業位置に位置決めし、その作業位置に位置決めした基板に対してスクリーン印刷や部品の装着等の部品実装用の作業を実行する。このような部品実装用装置において、基板の機種切り替えをするときには、機種切り替え後の基板に応じた設備の変更(段取り替え)を行う必要がある(例えば、特許文献1)。段取り替えのための作業項目には、部品実装用装置が自動で行うことができるものもあるが、オペレータが手作業で行うべきものもあるため、基板の機種切り替えがなされたことを検知したときには、装置の作動を停止させたうえで、オペレータに段取り替えを行う状態になったことを報知するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−308596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の部品実装用装置では、実際にはオペレータの手作業を必要とする作業項目がない場合であっても、機種切り替えがなされたことを検知した場合には装置の作動を停止するようにしていたため、その分生産効率が低下してしまうという問題点があった。
【0005】
そこで本発明は、機種切り替えがなされた場合の作業効率の低下を防止することができる部品実装用装置及び部品実装用装置における段取り替え方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の部品実装用装置は、所定の作業位置に基板を位置決めする基板位置決め手段及び基板位置決め手段により作業位置に位置決めされた基板に対して部品実装用の作業を実行する作業実行手段を備えた部品実装用装置であって、基板の機種切り替えがなされたか否かの検出を行う機種切り替え検出手段と、機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目の中に、オペレータが手作業で行うべき作業項目があるか否かの判断を行う判断手段と、判断手段により、機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目の中に、オペレータが手作業で行うべき作業項目があると判断された場合に、オペレータが手作業で行うべき作業項目が表示されるディスプレイとを備え、機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目のうち自動実行できる作業項目を自動で実行する。
【0007】
請求項2に記載の部品実装用装置における段取り替え方法は、所定の作業位置に基板を位置決めする基板位置決め手段及び基板位置決め手段により作業位置に位置決めされた基板に対して部品実装用の作業を実行する作業実行手段を備えた部品実装用装置における段取り替え方法であって、機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目の中に、オペレータが手作業で行うべき作業項目があるか否かの判断を行う判断工程と、判断工程において、機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目の中に、オペレータが手作業で行うべき作業項目があると判断した場合に、オペレータが手作業で行うべき作業項目をディスプレイに表示してオペレータに報知する報知工程とを含み、機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目のうち自動実行できる作業項目を自動で実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、基板の機種切り替えがなされたことが検知された場合に、機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目の中に、オペレータが手作業で行うべき作業項目があるか否かの判断を行い、オペレータが手作業で行うべき作業項目があると判断した場合には、オペレータが手作業で行うべき作業項目をディスプレイに表示してオペレータに報知するようにしている。このため、オペレータが段取り替え作業を手作業で行う必要がある場合に、オペレータはその作業項目を的確に把握することができる。また、機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目のうち自動実行できる作業項目については自動で実行するようにしているので、オペレータが手作業で作業を行う必要がない場合にまで作業実行部の運転が停止されることがなく、段取り替えが行われた場合の作業効率の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態における部品実装機の斜視図
【図2】本発明の一実施の形態における部品実装機の一部の模式的構成図
【図3】(a)(b)(c)本発明の一実施の形態における部品実装機に定められた読み取り位置候補及び基板の情報コードが設けられる位置の例を示す図
【図4】本発明の一実施の形態における部品実装機が行う部品実装作業の実行手順の流れを示すメインルーチンのフローチャート
【図5】本発明の一実施の形態における部品実装機が行う部品実装作業の実行手順の流れを示すサブルーチンのフローチャート
【図6】本発明の一実施の形態における部品実装機が行う部品実装作業の実行手順の流れを示すサブルーチンのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1において、部品実装用装置の一例である部品実装機1は、基台2と、基台2上に設けられ、水平面内の一方向に基板PBを搬送する一対のベルトコンベア3から成る基板搬送路4を備えている。以下、説明の便宜上、基板搬送路4による基板PBの搬送方向をX軸方向とし、X軸方向と直交する水平面内方向をY軸方向とする。また、上下方向をZ軸方向とする。
【0011】
図2において、基板搬送路4を構成する各ベルトコンベア3は駆動プーリ3aと従動プーリ3bの間に搬送ベルト3cが掛け渡された構成を有し、駆動プーリ3aを回転駆動することによって搬送ベルト3cがX軸方向に進行し、これにより基板PBが搬送される(図1及び図2中に示す矢印A)。基板搬送路4を構成する2つのベルトコンベア3の間には、基板搬送路4により部品実装機1内に搬入された基板PBの先頭部を検出して基板PBが所定の作業位置(図2に示す位置)に到達したことの検出を行う基板検出センサ5(図2)が設けられている。
【0012】
図2において、基板搬送路4の作動制御は、部品実装機1が備える制御装置6が行う。制御装置6は、基板搬送路4を構成する両ベルトコンベア3の駆動プーリ3aを作動させて基板PBの搬送を行い、基板検出センサ5からの検出情報に基づいて基板PBが作業位置に到達したことを検知したとき、基板搬送路4の作動を停止させて、基板PBの位置決めを行う。基板検出センサ5は、本実施の形態では、上方に投光した検査光Lが、基板搬送路4によって搬送される基板PBの一部によって下方に反射され、その反射光が受光されるようになるタイミングをもって基板PBの先頭部が作業位置に到達した状態を検知する反射型の光センサとしているが、基板検出センサ5は基板PBが作業位置に到達した状態を検出することができればよく、その構成は特に問わない。また、基板搬送路4に対して昇降自在に設けられ、基板搬送路4により搬送される基板PBの先端部と当接して基板PBを作業位置に位置決めするストッパを有した構成としてもよい。
【0013】
図1において、基台2上にはY軸方向に延びて設けられたY軸テーブル7a、X軸方向に延びてY軸テーブル7a上をY軸方向に移動自在に設けられた2つのX軸テーブル7b及び各X軸テーブル7bに沿ってX軸方向に移動自在に設けられた2つの移動ステージ7cから成るXYロボット7が設けられている。各移動ステージ7cには装着ヘッド8が取り付けられており、各装着ヘッド8には下方に延びた複数の吸着ノズル9が昇降及びZ軸回りに回転自在に設けられている。
【0014】
XYロボット7の作動による各装着ヘッド8の移動制御は、制御装置6が図示しないアクチュエータ等から成るXYロボット制御機構10(図2)を作動させることによって行い、各吸着ノズル9の装着ヘッド8に対する昇降及びZ軸回りの回転制御と各吸着ノズル9による部品Pの真空吸着(ピックアップ)及びその解除(離脱)制御は、制御装置6が図示しないアクチュエータ等から成るノズル制御機構11(図2)を作動させることによって行う。
【0015】
図1において、基板搬送路4の両側方領域には交換用の複数種の吸着ノズル9を挿着してストックしておくことができるノズルストッカ12が設けられている。このノズルストッカ12に挿着されている吸着ノズル9と、現在装着ヘッド8に取り付けられている吸着ノズル9との交換は、制御装置6によるXYロボット制御機構10及びノズル制御機構11の作動制御によって自動で(オペレータの手作業を要することなく)行われる。
【0016】
図1において、基板搬送路4のY軸方向の両側方領域には、装着ヘッド8に部品Pを供給する複数の部品供給装置13がX軸方向に並んで設けられている。制御装置6は、各部品供給装置13の作動制御を行って、各部品供給装置13の基板搬送路4側の端部に設けられた部品供給口13a(図1)に部品Pを供給させる。
【0017】
図1及び図2において、XYロボット7の各移動ステージ7cには撮像視野を下方に向けた基板カメラ14が設けられており、基板搬送路4の両側方領域には撮像視野を上方に向けた部品カメラ15が設けられている。基板カメラ14は主として、基板搬送路4によって位置決めされた基板PBが備える位置ずれ検出用の基板マーク(図示せず)を上方から撮像するためのものであり、部品カメラ15は装着ヘッド8によりピックアップされた部品Pを下方から撮像するためのものである。基板カメラ14の視野は変更することができ、その変更制御は制御装置6による図示しない視野変更機構の作動制御によって自動で(オペレータの手作業を要することなく)行われる。基板カメラ14及び部品カメラ15の撮像動作制御は制御装置6によって行われ、基板カメラ14及び部品カメラ15の撮像動作によって得られた画像データは制御装置6に送られる。
【0018】
この部品実装機1では、制御装置6が基板搬送路4の作動制御を行って、部品実装機1の外部から投入された基板PBを部品実装機1内に搬入し、基板PBを作業位置に位置決めした後、部品供給装置13、XYロボット制御機構10及びノズル制御機構11の作動制御を行って、部品供給装置13の部品供給口13aに供給させた部品Pを吸着ノズル9に吸着させてピックアップし、そのピックアップした部品Pを基板PB上の目標装着位置に装着させる。吸着ノズル9に部品Pを吸着させるとき及び吸着させた部品Pを基板PB上に装着させるときは、吸着ノズル9を装着ヘッド8に対して下降させ、場合によっては吸着ノズル9を装着ヘッド8に対して回転させる。このように、部品供給装置13、XYロボット7、装着ヘッド8及び制御装置6は、基板搬送路4によって作業位置に位置決めした基板PBに対して部品Pの装着作業(部品実装用の作業)を実行する作業実行部16(図1)を構成している。
【0019】
このような部品実装機1では、外部から次々に送られてくる基板PBを搬入及び位置決めし、部品Pの装着を行って外部に搬出する動作を繰り返すが、基板PBの機種(種別)が途中で変更された(すなわち機種切り替えがなされた)場合には、これを検知したうえで、必要に応じて機種切り替えのための段取り替えを行う必要がある。このため、各基板PBにはその基板PBの種別等の情報(基板情報)が記録された情報コードD(図1及び図2)が設けられており、部品実装機1には、作業位置に位置決めした基板PBが備える情報コードDからその基板PBの基板情報を読み取る基板情報読み取り部17(図2)と、この基板情報読み取り部17が読み取った基板情報に基づき、必要に応じて基板PBの機種切り替えのための段取り替えの作業項目を自動で(オペレータによる手作業を必要とせずに)実行し、或いはオペレータが行うべき作業項目の実行をオペレータに要求する段取り替え実行部を有したものとなっている。なお、段取り替えの作業項目として、例えば、部品供給装置13の交換(すなわち基板PBに装着する部品Pの交換)や交換する部品Pに応じた吸着ノズル9の交換、基板PBに応じた基板カメラ14の視野の変更等がある。
【0020】
先ず、基板情報読み取り部17について説明する。図2において、制御装置6は読み取り位置候補記憶部21、撮像対象位置設定部22、撮像制御部23、画像認識判断部24、読み取り部25及び撮像対象位置変更部26を備えており、基板情報読み取り部17は、これら制御装置6の読み取り位置候補記憶部21、撮像対象位置設定部22、撮像制御部23、画像認識判断部24、読み取り部25及び撮像対象位置変更部26と、情報コードDの撮像を行うために用いられる基板カメラ14から構成される。情報コードDはここでは基板PBの上面に設けられており、基板カメラ14による上方からの撮像によって画像認識することができるようになっている。情報コードDは例えば、一次元情報コードであるバーコードや、二次元情報コードであるQRコード(登録商標)等から成る。
【0021】
部品実装機1には、作業位置に位置決めされた基板PBが備える情報コードDの読み取りを行い得る位置として予め複数の位置(読み取り位置)が定められており、各基板PBの情報コードDは、その基板PBが作業位置に位置決めされた状態で、これら複数の読み取り位置候補のひとつに位置するように設けられている。これらの読み取り位置候補は、部品実装機1を基準とした座標系の座標として与えられている。
【0022】
例えば、図3(a)に示すように部品実装機1に5つの読み取り候補位置K1,K2,K3,K4,K5が定められている場合には、各基板PBの情報コードDは、その基板PBが作業位置に位置決めされた状態で、5つの読み取り候補位置K1,K2,K3,K4,K5のいずれかに位置するように設けられている。図3(b)は、基板PBが作業位置に位置決めされた状態で情報コードDが読み取り候補位置K2に位置するように設けられた場合の例であり、図3(c)は、基板PBが作業位置に位置決めされた状態で情報コードDが読み取り候補位置K4に位置するように設けられた場合の例である。なお、情報コードDは基板PBが同種である場合には基板PB上の同一の位置に設けられ、作業位置に位置決めされた状態では同一の読み取り位置候補に位置するようになっているものとする。
【0023】
制御装置6の読み取り位置候補記憶部21は、上述の複数の読み取り位置候補(例えば上記読み取り候補位置K1,K2,K3,K4,K5の座標)の座標を記憶しており、撮像対象位置設定部22は、基板PBが作業位置に位置決めされたとき、その基板PBに対し、読み取り位置候補記憶部21に記憶された複数の読み取り位置候補の座標の中からひとつの座標を選択してその選択した座標を撮像対象位置として設定する。撮像制御部23は、XYロボット7の作動制御を行って、撮像対象位置設定部22により設定された撮像対象位置の撮像を基板カメラ14に行わせる。
【0024】
画像認識判断部24は、基板カメラ14の撮像により得られた撮像対象位置の画像の画像認識を行い、撮像により得られた画像に情報コードDが含まれているか否かの判断を行う。ここでは、撮像対象位置設定部22により設定された撮像対象位置が、現在作業位置に位置決めしている基板PB上に設けられている情報コードDの位置と一致していたときには、撮像で得られた画像の中に情報コードDが含まれることになり、撮像対象位置設定部22により設定された撮像対象位置が、現在作業位置に位置決めしている基板PB上に設けられている情報コードDの位置と一致していないときには、撮像で得られた画像の中に情報コードDが含まれないことになる。
【0025】
読み取り部25は、画像認識判断部24により、基板カメラ14の撮像により得られた撮像対象位置の画像の中に情報コードDが含まれていると判断された場合に、その情報コードDから基板PBの種別等の基板情報の読み取りを行う。
【0026】
撮像対象位置変更部26は、画像認識判断部24により、基板カメラ14の撮像により得られた撮像対象位置の画像に情報コードDが含まれていないと判断した場合に、撮像対象位置設定部22が設定した撮像対象位置の変更を行う。この撮像対象位置の変更は、具体的には、読み取り位置候補記憶部21に記憶され、作業位置に位置決めされた基板PBが備える情報コードDの読み取りを行い得る位置として定められた複数の座標の中から新たな座標を選択し、その新たに選択した座標を新たな撮像対象位置として設定することによって行う。
【0027】
このように基板情報読み取り部17では、基板カメラ14の撮像で得られた撮像対象位置の画像に情報コードDが含まれていなかった場合には、新たに選択した座標を新たな撮像対象位置として設定したうえで改めて撮像対象位置の撮像を行うので、機種切り替えの前後で基板PB上の情報コードDの位置が異なる場合であっても、自動で(オペレータが別途作業を行うことなく)、基板情報の読み取りが継続される。
【0028】
次に、段取り替え実行部について説明する。図2において、制御装置6は、機種切り替え判断部27、ダウンロード制御部28、手作業項目判断部29及び段取り替え実行制御部30を備えており、段取り替え実行部は、これら制御装置6の機種切り替え判断部27、ダウンロード制御部28、手作業項目判断部29及び段取り替え実行制御部30と、上述の基板情報読み取り部17及び部品実装機1の外部に設けられたデータ記憶装置41(例えば上位のコンピュータ。図2)のほか、部品実装機1に備えられたディスプレイ42(図2)及び終了スイッチ43(図2)から構成される。
【0029】
制御装置6の機種切り替え判断部27は、基板情報読み取り部17が基板PBから基板情報を読み取った結果、前回基板情報を読み取った基板PBと今回基板情報を読み取った基板PBの間で基板PBの種別が同一であるか否かに基づいて、機種切り替えがなされたか否かの判断を行う。
【0030】
ダウンロード制御部28は、機種切り替え判断部27が、機種切り替えがなされたと判断した場合に、機種切り替え後の(すなわち今回基板情報を読み取った)基板PBの情報コードDに対応する詳細なデータ、すなわち、基板PBのどの位置にどの部品供給装置13から供給されるどのような種類の部品Pをピックアップして装着するのか等のデータ(以下「実装データ」と称する)と、機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目のデータ(以下、「切り替え作業項目データ」と称する)をデータ記憶装置41からダウンロードする。そして、このダウンロードによって得られたデータ(実装データ及び切り替え作業項目データ)を、基板情報読み取り部17において情報コードDから読み取った基板PBの種別等の情報と関連付ける(いわゆる「ひもづけ」する)。
【0031】
なお、ここでは、各情報コードDに対応する上記詳細なデータは、制御装置6とは別個に設けられたデータ記憶装置41に記憶されるとしているが、部品実装機1が備える制御装置6の記憶領域(図示せず)に記憶されるようにしてもよい。
【0032】
手作業項目判断部29は、機種切り替え判断部27により、基板PBの機種切り替えがなされたと判断された(基板PBの機種切り替えがなされたことが検出された)場合に、ダウンロード制御部28がデータ記憶装置41からダウンロードした切り替え作業項目データに基づいて、機種切り替えに必要な段取り替え作業項目の中に、オペレータが手作業で行うべき作業項目があるか否かの判断を行う。
【0033】
ここで、機種切り替えに必要な段取り替え作業項目としては、前述のように、部品供給装置13の交換、吸着ノズル9の交換、基板カメラ14の視野の変更等があるが、このうち部品供給装置13の交換はオペレータが手作業で行うべき作業項目であり、基板カメラ14の視野の変更は制御装置6の制御により自動で行うことができる作業項目である。吸着ノズル9の交換は、ノズルストッカ12に機種切り替え後の吸着ノズル9が既に挿着されている場合には制御装置6の制御により自動で行う作業項目となるが、機種切り替え後の吸着ノズル9がノズルストッカ12に挿着されていないときには、オペレータが手作業で行うべき作業項目となる。なお、ノズルストッカ12に現在挿着されている吸着ノズル9の種類は、ノズルストッカ12への吸着ノズル9の挿着時に制御装置6に把握される。
【0034】
段取り替え実行制御部30は、手作業項目判断部29が、機種切り替えに必要な段取り替え作業項目の中に、オペレータが手作業で行うべき作業項目があると判断した場合には、作業実行部16の運転を一時停止させたうえで、オペレータが手作業で行うべき作業項目をディスプレイ42に表示してオペレータに報知し、オペレータにその作業の実行を促す。そして、オペレータによる機種切り替え作業に必要な作業が実行され、終了スイッチ43の操作により作業終了の旨の入力がなされたら、作業実行部16の運転を再開させたうえで、残りの作業項目(自動実行できる作業項目)を自動で実行する。一方、手作業項目判断部29が、機種切り替えに必要な段取り替え作業項目の中に、オペレータが手作業で行うべき作業項目がないと判断した場合には、作業実行部16の運転を停止させることなく、機種切り替えに必要な段取り替えの全ての作業項目を自動で実行する。これにより、基板PBの機種切り替えがなされた場合に必要な段取り替えが終了し、機種切り替え後の基板PBに対する部品Pの装着作業が可能となる。
【0035】
次に、図4、図5及び図6を用いて部品実装機1が行う部品実装作業の実行手順を説明する。ここで図4は部品実装作業のメインルーチンのフローチャート、図5及び図6はそれぞれメインルーチンの中のサブルーチンのフローチャートである。
【0036】
制御装置6は、はじめに、基板搬送路4を作動させて、部品実装機1内部に基板PBを搬入し、基板検出センサ5からの検出情報に基づいて基板PBを作業位置に位置決めする(図4のステップST1)。この基板PBの位置決めの後には、制御装置6は、XYロボット制御機構10の作動制御を行って基板カメラ14を基板PBの上方に位置させ、基板PBに設けられた前出の基板マークの撮像を行わせ、得られた撮像画像から基板マークの画像認識を行うことによって、基板PBの基準位置からの位置ずれ検出を行う。
【0037】
制御装置6は、基板PBの基準位置からの位置ずれ検出を行ったら、基板カメラ14を用いて(すなわち基板情報読み取り部17により)、作業位置に位置決めした基板PBの情報(基板情報)の読み取りを行う基板情報の読み取り工程(図4のステップST2。図5に示すサブルーチン)を行う。
【0038】
ステップST2の基板情報の読み取り工程では先ず、制御装置6(撮像対象位置設定部22)は、読み取り位置候補記憶部21に記憶された複数の読み取り位置候補の座標の中からひとつの座標を選択し、その選択した座標を撮像対象位置として設定する(図5のステップST21)。
【0039】
撮像対象位置を設定したら、制御装置6(撮像制御部23)は、XYロボット制御機構10の作動制御を行って基板カメラ14を移動させ、ステップST21で設定した撮像対象位置を基板カメラ14に撮像させる(図5のステップST22)。そして制御装置6(画像認識判断部24)は、基板カメラ14の撮像によって得られた画像の画像認識を行い(図5のステップST23)、その画像に情報コードDが含まれているか否かの判断を行う(図5のステップST24)。
【0040】
上記ステップST24において、ステップST22で得られた画像に情報コードDが含まれていると判断した場合には、制御装置6(読み取り部25)は、その画像の中に含まれる情報コードDから基板情報の読み取りを行ったうえで(図5のステップST25)、メインルーチンに戻る。これによりステップST2が終了する。一方、ステップST24において、ステップST22で得られた画像に情報コードDが含まれていないと判断した場合には、制御装置6(撮像対象位置変更部26)は、読み取り位置候補記憶部21から新たに選択した座標を新たな撮像対象位置として設定し、撮像対象位置を変更したうえで(図5のステップST26)、ステップST22に戻る。このように、ステップST22に戻ることによって、ステップST26で設定した新たな撮像対象位置の撮像が改めて行われるので、機種の切り替えの前後で基板PBの種別が異なり、情報コードDの基板PB上の位置が機種切り替えの前後で異なる場合であっても、オペレータが別途作業を行うことなく、基板情報の読み取りが継続されることになる。
【0041】
ステップST2の基板情報の読み取り工程が終了したら、制御装置6(機種切り替え判断部27)は基板情報の読み取り工程で読み取った基板PBの情報に基づいて、基板PBの種別の識別を行う(図4のステップST3)。そして、その基板PBの種別の識別の結果、前回位置決めした基板PBと今回位置決めした基板PBとの間に機種切り替えがあったかどうかの判断を行う(図4のステップST4)。ここでは、前回位置決めした基板PBの情報コードDから読み取った基板PBの種別と、今回位置決めした基板PBの情報コードDから読み取った基板PBの種別とを比較し、両基板PBが同種であったときには機種切り替えはなかったと判断し、両基板PBが異種であったときには機種切り替えがあったと判断する。そして、ステップST4において機種切り替えがあったと判断したときには、機種切り替え作業工程(図4のステップST5。図6に示すサブルーチン)に進む。
【0042】
ステップST5の機種切り替え作業工程では先ず、制御装置6(ダウンロード制御部28)は、データ記憶装置41から機種切り替え後の基板PBの機種についての実装データ及び切り替え作業項目データのダウンロードを行う(図6のステップST51及びステップST52)。切り替え作業項目データをダウンロードしたら、制御装置6(手作業項目判断部29)は、ダウンロードした切り替え作業項目データに基づいて、機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目の中に、オペレータが手作業で行うべき作業項目があるか否かの判断を行う(図6のステップST53)。そして、このステップST53において、オペレータが手作業で行うべき作業項目がないと判断した場合には、制御装置6(段取り替え実行制御部30)は、段取り替えに必要な全ての作業項目を自動で実行し(図6のステップST54)、メインルーチンに戻る。
【0043】
一方、ステップST53において、オペレータが手作業で行うべき作業項目があると判断した場合には、制御装置6(段取り替え実行制御部30)は、部品実装機1の運転を一時停止させたうえで(図6のステップST55)、オペレータが手作業で行うべき作業項目をディスプレイ42に表示してオペレータに報知し(図6のステップST56)、オペレータにその作業の実行を促す。そしてオペレータによる作業が実行され、オペレータによる終了スイッチ43の操作(終了操作)がなされたら(図6のステップST57)、部品実装機1の運転を再開したうえで(図6のステップST58)、残りの作業項目(すなわち、自動実行できる作業項目)を自動で実行し(図6のステップST59)、メインルーチンに戻る。
【0044】
ステップST54又はステップST59が終了してメインルーチンに戻ったら、ステップST5の機種切り替え工程が終了する。
【0045】
制御装置6は、ステップST5の機種切り替え工程が終了し、或いはステップST4で機種切り替えがなかったと判断したときには(このときステップST5はスキップする)、ダウンロードした実装データに基づいて、ステップST1で作業位置に位置決めした基板PBに対する部品Pの装着作業を行う(図4のステップST6)。
【0046】
基板PBに対する部品Pの装着作業では先ず、制御装置6は、部品供給装置13の部品供給口13aに部品Pを供給させるとともに、装着ヘッド8を部品供給口13aの上方に移動させて、吸着ノズル9に部品Pをピックアップさせる。そして、ピックアップした部品Pが部品カメラ15の直上に位置するように装着ヘッド8を移動させ、部品カメラ15に部品Pの撮像を行わせて画像認識(いわゆる部品認識)を行い、吸着ノズル9に対する部品Pの位置ずれ(吸着ずれ)を検出する。次いで、装着ヘッド8を基板PBの上方に移動させ、吸着ノズル9に吸着させた部品Pを基板PB上で離間させて、部品Pを目標装着位置に装着させる。なお、部品Pの基板PB上への装着時には、制御装置6は、既に求めている基板PBの基準位置からの位置ずれと、部品認識時に検出した部品Pの吸着ノズル9に対する位置ずれが修正されるように、基板PBに対する吸着ノズル9の相対位置の補正を行うようにする。
【0047】
制御装置6は、ひとつの部品Pについての基板PBへの装着作業(ステップST6)が終了したら、現在作業位置に位置決めしている基板PBに装着すべき全ての部品Pの装着作業が終了したかどうかの判断を行う(図4のステップST7)。その結果、全ての部品Pの装着作業が終了していなかったときにはステップST6に戻ってまだ基板PBに装着していない部品Pの装着を行い、全ての部品Pの装着作業が終了していたときには、基板搬送路4を作動させて、基板PBを部品実装機1の外部に搬出する(図4のステップST8)。そして、予定していた全ての基板PBについての部品実装作業が終了したかどうかの判断を行い(図4のステップST9)、その結果、予定していた全ての基板PBについての部品実装作業が終了していなかった場合にはステップST1に戻って新たに基板PBの搬入を行い、予定していた全ての基板PBについての部品実装作業が終了していた場合には、全ての作業の終了となる。
【0048】
なお、ステップST9からステップST1に戻った後の基板情報の読み取り工程(ステップST2)では、制御装置6(撮像対象位置設定部22)は、作業位置に位置決めされた基板PBに対して最初に選択する座標として、直前に(前回の基板PBにおいて)読み取り部25が情報の読み取りを行った基板PBに対して最後に選択した座標を用いるようにする。このようにすれば、機種切り替えの後は、基板PBは同種のものが続いて供給されるのが普通であるので、最初に選択する情報コードDの読み取り位置候補がそのまま実際の情報コードDの読み取り位置になる可能性が高く、情報コードDの読み取りに要する時間を短縮してタクトタイムの向上を図ることができる。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態における部品実装機1は、所定の作業位置に基板PBを位置決めする基板位置決め手段(基板搬送路4)及び基板位置決め手段により作業位置に位置決めされた基板PBに対して部品Pの装着作業(部品実装用の作業)を実行する作業実行部16を備えたものにおいて、基板PBの機種切り替えがなされたか否かの検出を行う機種切り替え検出手段(基板情報読み取り部17及び制御装置6の機種切り替え判断部27)、機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目の中に、オペレータが手作業で行うべき作業項目があるか否かの判断を行う判断手段(制御装置6の手作業項目判断部29)、判断手段により、機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目の中に、オペレータが手作業で行うべき作業項目があると判断された場合に、オペレータが手作業で行うべき作業項目が表示されるディスプレイ42を備え、機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目のうち自動実行できる作業項目を自動で実行するものとなっている。
【0050】
また、本実施の形態における部品実装機1における段取り替え方法は、機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目の中に、オペレータが手作業で行うべき作業項目があるか否かの判断を行う判断工程(ステップST53)、判断工程において、機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目の中に、オペレータが手作業で行うべき作業項目があると判断した場合に、オペレータが手作業で行うべき作業項目をディスプレイに表示してオペレータに報知する報知工程(ステップST56)を含み、機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目のうち自動実行できる作業項目を自動で実行する(ステップSTST54)ものとなっている。
【0051】
このように本実施の形態における部品実装機1又は部品実装機1における段取り替え方法では、基板PBの機種切り替えがなされたことが検知された場合に、機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目の中に、オペレータが手作業で行うべき作業項目があるか否かの判断を行い、オペレータが手作業で行うべき作業項目があると判断した場合には、オペレータが手作業で行うべき作業項目をディスプレイに表示してオペレータに報知するようにしている。このため、オペレータが段取り替え作業を手作業で行う必要がある場合に、オペレータはその作業項目を的確に把握することができる。また、機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目のうち自動実行できる作業項目については自動で実行するようにしているので、オペレータが手作業で作業を行う必要がない場合にまで作業実行部16の運転が停止されることがなく、段取り替えが行われた場合の作業効率の低下を防止することができる。
【0052】
これまで本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上述の実施の形態に示したものに限定されない。例えば、上述の実施の形態において示した機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目は例示に過ぎず、他の作業項目を対象とするものであってもよい。
【0053】
また、上述の実施の形態において部品実装用装置とは、基板PBを作業位置に位置決めして部品実装用の作業を行う装置のことであり、上述の部品実装機1に限られず、基板PBに対してスクリーン印刷を行うスクリーン印刷機や基板PBに対して接着剤の塗布を行う接着剤塗布機、基板PBの外観検査を行う外観検査機等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
機種切り替えがなされた場合の作業効率の低下を防止することができる部品実装用装置及び部品実装用装置における段取り替え方法を提供する。
【符号の説明】
【0055】
1 部品実装機(部品実装用装置)
4 基板搬送路(基板位置決め手段)
16 作業実行部(作業実行手段)
17 基板情報読み取り部(機種切り替え検出手段)
27 機種切り替え判断部(機種切り替え検出手段)
29 手作業項目判断部(判断手段)
42 ディスプレイ
PB 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の作業位置に基板を位置決めする基板位置決め手段及び基板位置決め手段により作業位置に位置決めされた基板に対して部品実装用の作業を実行する作業実行手段を備えた部品実装用装置であって、
基板の機種切り替えがなされたか否かの検出を行う機種切り替え検出手段と、
機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目の中に、オペレータが手作業で行うべき作業項目があるか否かの判断を行う判断手段と、
判断手段により、機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目の中に、オペレータが手作業で行うべき作業項目があると判断された場合に、オペレータが手作業で行うべき作業項目が表示されるディスプレイとを備え、
機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目のうち自動実行できる作業項目を自動で実行することを特徴とする部品実装用装置。
【請求項2】
所定の作業位置に基板を位置決めする基板位置決め手段及び基板位置決め手段により作業位置に位置決めされた基板に対して部品実装用の作業を実行する作業実行手段を備えた部品実装用装置における段取り替え方法であって、
機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目の中に、オペレータが手作業で行うべき作業項目があるか否かの判断を行う判断工程と、
判断工程において、機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目の中に、オペレータが手作業で行うべき作業項目があると判断した場合に、オペレータが手作業で行うべき作業項目をディスプレイに表示してオペレータに報知する報知工程とを含み、
機種切り替えに必要な段取り替えの作業項目のうち自動実行できる作業項目を自動で実行することを特徴とする部品実装用装置における段取り替え方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−34015(P2013−34015A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−246141(P2012−246141)
【出願日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【分割の表示】特願2012−194649(P2012−194649)の分割
【原出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】