部品搭載方法とその装置
【課題】重い部品を保持しつつ、迅速な部品搭載動作が確保でき、部品の端子状況に関らず安定した保持をして、部品を回路基板に搭載する際には、部品の回路基板に対する角度や部品内での加圧量などの搭載条件を調整可能とする。
【解決手段】部品102を吸着ノズル108で吸着して、該部品102を移動させて回路基板104に搭載する部品搭載方法において、1つの部品102に対して吸着する吸着ノズル108が、複数からなると共に、互いに独立した駆動源116、117を備え、前記駆動源116、117のうちの前記回路基板104に垂直方向の移動機構の駆動源116に制御指令を伝えて、該複数の吸着ノズル108を外乱オブザーバ200と軸ねじれ反力推定オブザーバ202とを用いて共振比制御する。
【解決手段】部品102を吸着ノズル108で吸着して、該部品102を移動させて回路基板104に搭載する部品搭載方法において、1つの部品102に対して吸着する吸着ノズル108が、複数からなると共に、互いに独立した駆動源116、117を備え、前記駆動源116、117のうちの前記回路基板104に垂直方向の移動機構の駆動源116に制御指令を伝えて、該複数の吸着ノズル108を外乱オブザーバ200と軸ねじれ反力推定オブザーバ202とを用いて共振比制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品搭載方法とその装置に係り、特に、部品を吸着ノズルで吸着して、該部品を移動させて回路基板に搭載する部品搭載方法に用いるのに好適な、重い部品の吸着移動を可能とし、且つその部品の搭載条件を制御可能な部品搭載方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品を回路基板に搭載する部品搭載装置において、部品を部品供給部で保持するために、部品保持機構が用いられてきた。その従来の部品保持機構について、例えば、特許文献1の記載に基づき、図18を用いて説明する。部品保持機構4は、搭載ヘッド本体9によって保持された複数の吸着ノズル8を備えて、その吸着ノズル8の先端に生ずる吸引力で、部品2を保持することができる。そして、保持する部品2が吸着ノズル8の相互間の距離より大きい対角線を有する大型の部品2である場合には、そのうち1つの吸着ノズル8の先端部を他の吸着ノズルの先端部より搭載ヘッド本体9の一端面外方向(図18では下方向)へ突出させて、部品2を吸着するようにしている。こうして、大型の部品2においても、部品2と他の吸着ノズル8の先端部が干渉しないようにして、部品2を保持していた。
【0003】
又、特許文献2の記載においては、図19(A)に示す如く、部品22の保持手段である部品保持機構24は、本体26内で圧縮スプリング28を介してZ軸方向に移動可能な第1の移動部30と、第1の移動部30の下端に設けられたベアリング32によって自身の係合孔34AA、34BAに係合されると共に、ベアリング36A、36Bにより本体26内でZ軸方向に対して垂直であって相互に逆向きの方向(X軸方向)に移動可能な2つの第2の移動部34A、34Bと、第2の移動部34A、34Bにそれぞれ固定されている2つの保持部38A、38Bと、を備えている。このような構成により、第1の移動部30をZ軸方向に移動させることにより、第2の移動部34A、34Bと共に保持部38A、38BがそれぞれX軸方向の互いに逆側に移動する。それに伴い、本体26の中心軸Oに設けられたストッパ40を中心にして保持部38A、38Bの間隔がX軸方向で変化して、部品22を保持・開放することができる。
【0004】
具体的に、図19(B)を参照して、部品22を保持する動作を説明する。先ず、ストッパ40を部品22の上面に接触させて、2つの保持部38A、38Bを部品22の両側面の外側に位置決めする。そして、本体26の上部に設けられたバキューム孔26Aからエアを吸引する。すると圧縮スプリング28が縮んで、第1の移動部30が図面上方へ、即ちZ軸方向のプラス側へ移動する。この第1の移動部30の移動に伴い、ベアリング32もZ軸方向のプラス側へ移動する。このとき、係合孔34AA、34BAは、図19(B)に示す如く、斜めに形成された孔である。このため、ベアリング32が係合孔34AA、34BA内でZ軸方向のプラス側へ移動することにより、第2の移動部34A、34Bがベアリング36A、36Bの回転でX軸方向に、中心軸Oに向かって互いに接近するように移動する。これにより、2つの保持部38A、38Bの間隔が平行状態を保ちながら狭まるので、2つの保持部38A、38Bで部品22の両側面を挟み込むと共に、ストッパ40で部品22の上面を支持させてしっかりと保持することができる。
【0005】
又、別の従来の部品保持機構を、特許文献3の記載に基づき、図20を用いて説明する。部品52の保持手段である部品保持機構54は、部品52を挟む固定爪58と可動爪60とを有する。固定爪58は本体56に一体に形成されている。可動爪60は本体56のX軸方向に形成された吸引孔56Aに沿ってX軸方向に移動可能なピストン62に支持ピン64で軸支されている。このため、可動爪60は、支持ピン64を中心に回転可能である。吸引孔56Aは本体56のZ軸方向に設けられた吸引通路56Bを介して、吸着ノズル50の吸気口50Aに連通している。このため、吸着ノズル50の吸気口50Aからエアを吸引すると、ピストン62が図の右側(X軸方向のプラス側)に移動し、部品52に応じて、可動爪60の保持角度が可変して、部品52を保持する構造となっている。
【0006】
又、上記3つの部品保持機構を部品搭載装置に適用した場合には、部品保持機構の部品保持機構は部品を搭載する搭載ヘッドの備える吸着ノズルの先端に取付けられる。もしくは、吸着ノズルとして機能する。動作においては、部品保持機構が部品を保持して、その保持された部品の状態が部品搭載装置に配置された部品認識カメラで認識されて、部品搭載位置とのずれ量が演算・補正されて、部品が部品搭載位置へ移動される。
【0007】
【特許文献1】特開平5−114799公報
【特許文献2】特開2000−126949号公報
【特許文献3】特開平11−138484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、1つの部品の吸着を行う吸着ノズルは絶えず1つのみで部品の保持力は限られているので、重い部品を部品認識位置に移動する際や、部品搭載位置への移動をする際の急激な位置変化をさせると、慣性力により部品が脱落してしまうおそれが大きい。
【0009】
又、特許文献2、3では、2つの保持部で部品の両側面を挟み込むような構成の為、例えばQFPのようにICパッケージの横方向すべてから端子が出ている場合には、部品を保持することが困難である。
【0010】
又、特許文献1〜3では、1つの部品保持要素で部品を保持していることにより、回路基板が薄い、あるいは大型で回路基板にそりがあり、回路基板に垂直方向(Z軸方向)の傾きがある場合には、回路基板のそりに合わせて部品を基板と平行にして搭載することができない。このため、部品搭載時に部品全体に対して均等に押圧することが極めて困難である。
【0011】
更に、特許文献1〜3では、部品全体にかける加圧量の制御は可能であるが、1つの部品の中において、局所的に加圧量を変えることができない。このため、例えば、薄型部品などで部品の中央部に端子がなく、回路基板との間に支えがないような状態のときには、最悪の場合には加圧したときに部品を破損させるおそれもある。あるいは、例えば、部品中において、端子密度が場所ごとに異なる場合には、端子密度の高い場所で必要な加圧量が得られず、搭載不良を引き起こすおそれもある。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑み、重い部品を保持しつつ、迅速な部品搭載動作が確保でき、部品の端子状況に関らず安定した保持をして、部品を回路基板に搭載する際には、部品の回路基板に対する角度や部品内での加圧量などの搭載条件を調整可能とする部品搭載方法とその装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願の請求項1に係る発明は、部品を吸着ノズルで吸着して、該部品を移動させて回路基板に搭載する部品搭載方法において、1つの部品に対して吸着する前記吸着ノズルが、複数からなると共に、互いに独立した駆動源を備え、前記駆動源のうちの前記回路基板に垂直方向の移動機構の駆動源に制御指令を伝えて、該複数の吸着ノズルを外乱オブザーバと軸ねじれ反力推定オブザーバとを用いて共振比制御したことにより前記課題を解決したものである。
【0014】
本願の請求項2に係る発明は、制御手段により、部品を吸着ノズルで吸着して、該部品を移動させて回路基板に搭載する部品搭載装置において、1つの部品に対して吸着する前記吸着ノズルが、複数からなると共に、互いに独立した駆動源を備え、且つ、前記制御手段が、該複数の吸着ノズルを制御するための外乱オブザーバと、軸ねじれ反力推定オブザーバとを備え、該制御手段から前記駆動源のうちの前記回路基板に垂直方向の移動機構の駆動源への制御指令により該吸着ノズルが共振比制御されることを特徴とする部品搭載装置としたものである。
【0015】
本願の請求項3に係る発明は、前記吸着ノズルの少なくとも1つ以上が圧力検出手段を備えていることとしたものである。
【0016】
又、本願の請求項4に係る発明は、前記制御手段が、前記複数の吸着ノズルで前記部品を吸着保持後、該吸着ノズルの1つのみにより該部品の吸着を行い、他の吸着ノズルを上昇させて、該部品の角度補正を実施した後に、複数の吸着ノズルで該部品を吸着して、該部品を移動させる制御をすることとしたものである。
【0017】
又、本願の請求項5に係る発明は、前記制御手段が、前記複数の吸着ノズルで前記部品を吸着保持した状態で、前記回路基板の垂直方向において、それぞれの該吸着ノズルの位置を制御することで、該回路基板に対する該部品の平行度を制御して該部品を該回路基板に搭載させることとしたものである。
【0018】
又、本願の請求項6に係る発明は、前記制御手段が、前記複数の吸着ノズルで前記部品を吸着保持して部品搭載時に、前記回路基板の垂直方向で、それぞれの該吸着ノズルの位置を制御することで該部品が該回路基板に搭載される際の加圧量の分布状態を制御することとしたものである。
【0019】
ここで、共振比制御とは、駆動源と駆動源に対する負荷(負荷側)が存在したときにそれぞれが共振周波数を有するが、当該駆動源の共振周波数を制御することにより、駆動源の共振周波数と負荷側の共振周波数との比(共振比)を制御して駆動源と負荷とを含めた移動機構の全体制御を行うことをいうものとする。又、外乱オブザーバとは、外乱成分を推定し、フィードフォワード的にこれを補償することで外乱の影響を打ち消すシステムをいうものとする。更に、軸ねじれ反力推定オブザーバとは、負荷側に生じる軸ねじれで発生する反力を推定し、フィードフォワード的にこれを補償することで軸ねじれで発生する反力の影響を打ち消すシステムをいうものとする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、外乱オブザーバと軸ねじれ反力推定オブザーバとを適用して制御しているので、摩擦、パラメータ変動等の外乱を排除したロバストな振動制御が可能となる。即ち部品搭載動作を制御指令に正しく追従させることができる。そして、2慣性共振系の振動抑制に有効な共振比制御を適用しているので、2慣性共振負荷の振動抑制制御が可能となる。このため、迅速な部品搭載を安定して行うことができる。そして、具体的には更に、以下のような効果をも有する。
【0021】
本発明は、1つの部品を複数の吸着ノズルで吸着するので、重い部品を保持しても、部品認識位置への移動や部品搭載位置への移動において急激な加速がなされても、慣性力で部品が脱落することを防ぐことができる。このため、高速な部品搭載動作を行うことができ、部品搭載において早いタクトが実現できる。
【0022】
又、部品を吸着して保持するので、例えば、QFPのような横方向全てから端子が出ている部品に対しても安定した吸着保持が可能である。
【0023】
又、制御手段が部品吸着した状態で吸着ノズルの高さを変える制御を行う場合には、回路基板の傾きに合わせて部品を回路基板と平行にして、部品を回路基板に搭載できる。このため、より歩留まりの高い部品搭載を実現することができる。
【0024】
又、1つの部品を複数の吸着ノズルで加圧するように制御した場合には、例えば、部品の中心と周辺で加圧量を変えることができ、部品の破損防止や、より確実な部品搭載を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明の第1実施形態に係る部品搭載装置の概略図、図2は部品搭載装置全体の制御系の構成を表すブロック図、図3は搭載ヘッドの概略図、図4は部品認識後に部品の回転補正を行う際のフローを示す図、図5は部品吸着時と回転補正時の一例を示す摸式図、図6は図5とは異なる部品を回転補正する際の一例を示す摸式図、図7は部品を傾けた際の摸式図、図8は加圧量が異なることを示す摸式図、図9は図8における部品保持状態を示す摸式図、図10は吸着ノズルの1つを駆動するためのブロック線図を示す図、図11は外部オブザーバのブロック線図を示す図、図12は軸ねじれ反力推定オブザーバのブロック線図を示す図、図13は加速度制御系のブロック線図を示す図、図14は3つの吸着ノズルを備える場合の吸着ノズルの重心位置、ヨーイング量、加圧量を独立して制御するためのモデル化されたブロック線図を示す図、図15は図14の具体的な行列パラメータを用いた3つの吸着ノズルを駆動するためのブロック線図を示す図、である。
【0027】
最初に、本実施形態の部品搭載装置の構成について説明する。
【0028】
図1、図2に示すように、部品搭載装置100は、部品102が供給される部品供給部106と、部品102を吸着ノズル108で吸着保持して回路基板104上に搭載する搭載ヘッド110と、吸着ノズル108で保持された部品102の認識を行う部品認識カメラ120と、を備える。更に、図1に示すように、部品搭載装置100は、搭載ヘッド110をXY軸方向に移動させるX軸移動機構112、Y軸移動機構114と、中央部から少し後方で左右方向に延在する基板搬送路118と、本体部130と、を備えている。本体部130には、図2で示す制御手段としてのコントローラ132が設けられている。このような構成により、部品搭載装置100は、制御手段であるコントローラ132により、部品102を吸着ノズル108で吸着して、部品102を移動させて回路基板104に搭載する。なお、吸着ノズル108は、複数であり、1つの部品102を複数の吸着ノズル108で吸着する。複数の吸着ノズル108は、互いに独立した駆動源を備えている。そして、制御手段であるコントローラ132は、複数の吸着ノズル108の駆動源のうちの回路基板104に垂直方向の移動機構であるZ軸移動機構の駆動源(Z軸モータ116)に制御指令を伝えて、複数の吸着ノズル108を後述する外乱オブザーバ200と軸ねじれ反力推定オブザーバ202とを用いて共振比制御している。これらの各構成要素について以下、詳細に説明する。
【0029】
図1、図2に示すように、前記X軸移動機構112は、吸着ノズル108を有する搭載ヘッド110をX軸方向に移動させる。X軸モータ113は、X軸移動機構112の駆動源である。又、Y軸移動機構114は、X軸移動機構112並びに搭載ヘッド110をY軸方向に移動させる。Y軸モータ115は、Y軸移動機構114の駆動源である。
【0030】
図1、図3に示すように、前記搭載ヘッド110は、例えば3*2列の6つの吸着ノズル108A〜108Fを備えている。2列側と3列側のピッチは、それぞれLである。本実施形態では、ピッチLは、例えば、17mmとすることができる。吸着ノズル108A〜108Fは、搭載ヘッド本体109に固定されて、それぞれ独立したZ軸モータ116A〜116Fとθ軸モータ117A〜117Fとを備えている。そして、各吸着ノズル108A〜108Fには、圧力検出手段である圧力センサ107(107A〜107F)がそれぞれ設けてある。なお、Z軸モータ116A〜116Fとθ軸モータ117A〜117Fは、モータエンコーダが内蔵された回転モータである。Z軸モータ116A〜116Fは、Z軸移動機構の駆動源であり、搭載ヘッド本体109に対して、吸着ノズル108A〜108Fを垂直方向(Z軸方向)に昇降可能に移動させることができる。θ軸モータ117A〜117Fは、θ軸移動機構の駆動源であり、搭載ヘッド本体109に対して、吸着ノズル108A〜108Fをそのノズル軸(吸着軸)を中心に回転させることができる。
【0031】
なお、吸着ノズル108A〜108Fは、図示しないエジェクタに接続されている。このため、エジェクダをON/OFFすることによりバキューム発生の制御が可能であり、吸着ノズル108A〜108Fで部品102の吸着・脱着を行うことができる。搭載ヘッド本体109には、回路基板104上に形成された基板マーク(図示せず)を撮像する基板認識カメラ122が配置されている。
【0032】
図1に示すように、前記部品認識カメラ120は、搭載ヘッド110の可動範囲内の適宜個所、例えば部品供給部106の側部に配置され、吸着ノズル108で保持された部品102を下方から撮像することができる。
【0033】
図2に示すように、本体部130に設けられたコントローラ132は、マイクロコンピュータ(CPU)、並びにRAM、ROMを有して、X軸モータ113、Y軸モータ115、Z軸モータ116、θ軸モータ117、表示装置134、記憶装置136、キーボード138、マウス140、そして画像認識装置142等に接続されて、部品搭載装置100全体を制御する。又、コントローラ132は、Z軸移動機構の駆動源であるZ軸モータ116の制御をする際には、少なくとも、外乱オブザーバ200と軸ねじれ反力推定オブザーバ202とを備えて、共振比制御を行うことが可能である。
【0034】
図2に示すように、前記表示装置(モニタ)134は、部品データ、演算データ、及び部品認識カメラ120で撮像した部品102の画像などをその表示面に表示する。
【0035】
図2に示すように、前記記憶装置136は、フラッシュメモリなどで構成され、キーボード138とマウス140により入力された部品102の端子数、端子配置、大きさ、形などの情報(部品データ)や部品供給部106に供給される部品102の位置や向きなどの情報(部品供給データ)や回路基板104上の各部品102の搭載される位置や角度などの部品レイアウト情報(基板データ)、及び不図示のホストコンピュータから伝送される部品データ、部品供給データ、基板データなどを格納するのに用いられる。また、基板認識カメラ122で撮像した基板マークによる回路基板104の基板補正データ等も格納される。
【0036】
図2に示すように、前記キーボード138と前記マウス140は、部品データなどのデータを入力するために用いられる。
【0037】
図2に示すように、前記画像認識装置142は、吸着ノズル108に保持された部品102の画像認識を行うもので、メモリ144、CPU146及びA/D変換器148から構成される。ここでは、保持された部品102を撮像した部品認識カメラ120から出力されるアナログの画像信号をA/D変換器148によりデジタル信号に変換してメモリ144に格納し、CPU146がその画像データに基づいて保持された部品102の認識を行う。すなわち、画像認識装置142は、部品102中心と傾き(部品認識データ)を演算し、部品102の保持状態を認識する。又、画像認識装置142は、基板認識カメラ122と接続されて、基板認識カメラ122で撮像された基板マークの画像を処理して基板マーク位置を認識し、回路基板104の基板補正データを演算することができる。画像認識装置142は、上述した部品認識データと基板補正データとをコントローラ132へ伝送することができる。
【0038】
次に、本実施形態の部品搭載装置100の部品保持から部品搭載までの動作について説明する。なお、この一連の動作は、コントローラ132によって制御される。
【0039】
最初に、部品102の保持から部品102の吸着姿勢の認識までの動作を以下に説明する。
【0040】
まず、搭載ヘッド110を部品供給部106の上方へ移動する。このとき、例えば、吸着ノズル108Dを部品102の中心となるように移動し、Z軸モータ116A、116B、116D、116Eを駆動させて、吸着ノズル108A、108B、108D、108Eを、部品102が吸着できる高さまで下降させる。
【0041】
次に、吸着ノズル108A、108B、108D、108Eにバキュームを発生させて、部品102の吸着を行う。
【0042】
次に、Z軸モータ116A、116B、116D、116Eを駆動して4本の吸着ノズル108A、108B、108D、108Eで部品102を保持したまま等速度で、部品102をXY移動高さまで上昇させる。そして、部品認識カメラ120の上方へ移動させて部品102の認識を行う(図5(A)、図5(B)の状態)。部品認識カメラ120で得られた画像に基づき画像認識装置142は、部品102中心と吸着角度を演算し、部品102の吸着姿勢を認識する。
【0043】
次に、部品102の吸着姿勢の認識後から角度補正動作までについて、図4、図5を用いて説明を行う。ここでは、部品102の吸着姿勢の認識により、部品102の角度がずれていた場合、具体的には、吸着ノズル108Dの中心位置が部品102の中心位置のときに、吸着姿勢を演算した結果、保持した部品102の角度が例えば、時計回りに1度ずれていた場合について説明する。
【0044】
まず、上面図が図5(A)で側面図が図5(B)の状態から、吸着ノズル108A、108B、108EのバキュームをOFFする(ステップS2)。
【0045】
次に、吸着ノズル108A、108B、108Eの高さをZ軸モータ116A、116B、116Eを駆動して例えば1mm上昇させる(ステップS4)。
【0046】
次に、図5(C)、図5(D)に示すように、吸着ノズル108Dのθ軸モータ116Dを駆動させて、吸着姿勢の認識結果から算出した補正量分として反時計回りに1度だけ、回転させる補正動作を行う(ステップS6、S8)。この時のθ軸モータ116Dは、部品102が落下しないように低速で回転を行う。
【0047】
部品102の角度補正が完了した後(ステップS8でYes)に、吸着ノズル108A、108B、108EのZ軸モータ116A、116B、116Eを駆動させてZ軸方向の元の位置(1mm)に下降させる(ステップS10)。
【0048】
次に、吸着ノズル108A、108B、108EのバキュームをONし、4本の吸着ノズル108A、108B、108D、108Eで部品102の保持を行う(ステップS12)。そして、回路基板104上の部品102の搭載される位置まで、部品102が搭載ヘッド110によって移動される。
【0049】
なお、回路基板102が図6(A)に示すように一方向に短い場合には、回転補正前には吸着ノズル108D、108Eを用いて部品102を吸着して、回転補正後には吸着ノズル108D、108Aを用いて部品102を吸着してもよい。又、回転補正する際の中心位置を吸着ノズル108Dとせずに、吸着ノズル108Eを回転補正する際の中心位置としてもよい。この場合には、回転補正角が小さければ、図6(B)に示す如く、回転補正前後で、3つの吸着ノズル108D、108E、108Fを用いることができ、大きな吸着力で部品102を保持することができる。
【0050】
即ち、制御手段としてのコントローラ132は、複数の吸着ノズル108で部品102を吸着保持後、吸着ノズル108の1つのみにより部品102の吸着を行い、他の吸着ノズル108を上昇させて、部品102の角度補正を実施した後に、複数の吸着ノズル108で部品102を吸着して、部品102を移動させている。
【0051】
次に、部品102の回路基板104への搭載動作について説明を行う。
【0052】
まず、部品102が回路基板104上の部品102の搭載される位置に搭載ヘッド110によって移動された後、吸着ノズル108A、108B、108D、108Eをすべて同じ速度で回路基板104上に降下させる。
【0053】
ここで、回路基板104が傾きを有する場合、具体的には図7に示すように回路基板104上の部品搭載位置が回路基板104のそり等によりZ軸方向に、例えば1度傾いている状態だった場合には、吸着ノズル108Eの高さを吸着ノズル108Dに対して上昇させて、部品102の平行度を調整する。
【0054】
この時の吸着ノズル108Eの上昇量zは、ノズル間距離Lと傾き角度ρから
z=L×tanρ=17×tan1=0.297[mm] (1)
と求めることができる。即ち、吸着ノズル108Dに対し、吸着ノズル108Eを0.297mm上昇させた後に、吸着ノズル108A、108B、108D、108Eをすべて同じ速度で回路基板104上に降下させる。そして、部品102に傾きを持たせることで、回路基板104の傾きに沿って部品102を安定に搭載することができる。
【0055】
即ち、制御手段であるコントローラ132は、複数の吸着ノズル108で部品102を吸着保持した状態で、回路基板104の垂直方向(Z軸方向)において、それぞれの吸着ノズル108の位置を制御することで、回路基板104に対する部品102の平行度を制御して部品102を回路基板104に搭載させることができる。
【0056】
なお、回路基板104が搬送され、基板搬送路118の所定の位置で位置決めされる。その後に、搭載ヘッド110に取付けられた不図示の高さセンサにより、部品102の搭載される位置周辺部最低3点の高さを測定し、測定した3点から平面を算出することで、回路基板104の水平方向の傾きの取得が行われる。
【0057】
ここで、回路基板104への部品搭載時の加圧量の調整方法について説明する。
【0058】
部品102が回路基板104に接して、吸着ノズル108D、108Eが部品102と接した状態(図9参照)において、各吸着ノズル108D、108Eに取付けられた圧力センサ107D、107Eは、部品102にかかる圧力を計測することができる。吸着ノズル108D、108Eが部品102と接した状態で吸着ノズル108D、108EをよりZ軸方向に降下させる(押し込み量を多くする)と、部品102は回路基板104に強く押付けられる。このため、部品102にかかる加圧量は上昇する。加圧量を弱めるのは、逆に、吸着ノズル108D、108Eを上昇させる(押し込み量を少なくする)ことで実現できる。
【0059】
部品102内の部位によって加圧量を変える場合、例えば、図8に示す吸着ノズル108Dは加圧量150Dを強く、吸着ノズル108Eは加圧量150Eを弱くする場合には、部品102の中心の押し込み量を多くし、外側で押し込み量を少なくすることで実現することができる。むろん、吸着ノズル108D、108Eの加圧量を均一に制御して、部品102の加圧分布を均一にすることも可能である。
【0060】
即ち、制御手段であるコントローラ132は、複数の吸着ノズル108で部品102を吸着保持して部品搭載時に、回路基板104の垂直方向で、それぞれの吸着ノズル108の位置を制御することで部品102が回路基板104に搭載される際の加圧量の分布状態を制御することができる。
【0061】
次に、吸着ノズル108A〜108Fを制御する制御手段であるコントローラ132による制御について説明する。コントローラ132は、外乱オブザーバ200と軸ねじれ反力推定オブザーバ202とを備えて、回路基板104への部品搭載時に共振比制御を行う。そして、本実施形態では6つの吸着ノズル108A〜108Fが制御される。即ち、コントローラ132から駆動源であるZ軸モータ116A〜116Fへの制御指令により、吸着ノズル108A〜108Fが共振比制御されている。
【0062】
最初に、図10に、部品搭載装置100の吸着ノズル108の1つを想定した共振比制御のブロック線図を示す。なお、外乱オブザーバ200を図11に、軸ねじれ反力推定オブザーバ202を図12に、それぞれ示す。
【0063】
ここで、図10において、θmcmdはZ軸モータ116への制御指令、Kp、Kr、Kvは任意に設定できるフィードバックゲインで、Kpは位置ゲイン、Krは反力ゲイン、Kvは速度ゲイン、d2θmref/dt2は加速度参照値、dθm/dtは速度参照値、JmはZ軸モータ116の慣性、nはノミナル値、(即ち、JmnはZ軸モータ116の慣性のノミナル値)、Ktはトルク定数、(即ち、Ktnはトルク定数のノミナル値)、Irefは電流参照値、τdismはZ軸モータ116に作用する外乱トルク、sはラプラス演算子、θmはZ軸モータ116の回転角度(Z軸モータ116の位置)、KfはZ軸モータ116と負荷側との間のばね定数、τreacは軸ねじれ反力、τreac*は推定軸ねじれ反力、τdislは負荷側に作用する外乱トルク、Jlは負荷側の慣性、θlは負荷側の回転角度(負荷の位置)、をそれぞれ表している。又、図11において、Fmはパラメータ変動によりZ軸モータ116に印加される変動外乱トルク、Dmは粘性摩擦トルク、Icmpは外乱トルクを補償してロバスト性を確保するための補償電流、Gdisは外乱オブザーバゲイン、τdism*は推定外乱トルク、をそれぞれ表している。又、図12において、Greacは、軸ねじれ反力推定オブザーバ202に含まれる1次のローパスフィルタのカットオフ周波数である。なお、添え字mはZ軸モータ116、添え字lは負荷側、添え字disは外乱、添え字reacは軸ねじれ反力を示している。
【0064】
図10に示す如く、本実施形態に係る制御系は、外乱オブザーバ200と軸ねじれ反力推定オブザーバ202とを備えて共振比制御系を構成し、負荷側に作用する外乱τdislに係らず、それらによる推定値をフィードバックしている。このため、本実施形態に係る制御系は、2慣性共振系の振動抑制において有効である。即ち、本実施形態に係る制御系は、外乱オブザーバ200と軸ねじれ反力推定オブザーバ202とに基づくため、Z軸モータ116に加わる外乱等を補償することが可能である。詳しく言うならば、Z軸モータ116に外乱オブザーバ200と軸ねじれ反力推定オブザーバ202とを適用しているので、Z軸モータ116に作用する各種外乱の影響を除去することができる。このため、図13に示すロバストな加速度制御系を構築することができる。図13に示す如く、外乱オブザーバゲインGdisを大きく設定すると、s/(s+Gdis*)を極めて小さくできるので、外乱トルクτdismの影響を極めて少なくすることが可能なことによるものである。なお、Gdis*は外乱オブザーバゲインの換算値を示している。そして、本実施形態に係る制御系は、共振比制御であるので、状態フィードバック制御やH∞制御などと異なり、図10に示す如く、比較的簡単な制御系のため、設計が容易であり、計算量も少なくて済むなど実用性が高い。
【0065】
次に、例えば3つの吸着ノズル108D、108E、108Fを、3つの独立したモードで制御(重心位置の制御、ヨーイング量の制御、加圧量の制御)する方法について説明する。
【0066】
最初に、上述した共振比制御を、3つのZ軸モータ116D〜116Fで駆動される吸着ノズル108D〜108Fに適用するために、Z軸モータ116D〜116Fの重心位置、ヨーイング量、加圧量の関係を求める。
【0067】
吸着ノズル108D〜108FのZ軸における位置をz1、z2、z3として、そのときの吸着ノズル108D〜108Fの加圧量をf1、f2、f3とすると、吸着ノズル108D〜108Fの重心位置g、ヨーイング量θ、加圧量fは以下の式(2)〜(4)のように求めることができる。
【0068】
g=(z1+z2+z3)/3 (2)
θ=(z1―z2)/L (3)
f=(2*f3)−f1−f2 (4)
【0069】
このとき、吸着ノズル108Fの加圧量が吸着ノズル108D、108Eの加圧量の合計と等しくなるように制御が行われることで、吸着ノズル108D〜108Fがバランス良く正しく部品102を回路基板104に対して加圧することが可能となる。
【0070】
ここで、式(2)〜(4)を行列Qにまとめると式(5)となる。なお、所定の比例係数で、f1はz1、f2はz2、f3はz3、それぞれに比例するものとしている。
【0071】
【数1】
【0072】
式(5)の逆行列Q−1を求めると、式(6)で表される。
【0073】
【数2】
【0074】
得られた行列Qと逆行列Q−1を用いると、図14のモデル化されたブロック線図が得られるので、重心位置の制御、ヨーイング量の制御、加圧量の制御の各モードに対応した3つの制御指令(cmd1〜cmd3)により、フィードバックをかけて各移動機構(System1〜System3)で出力される負荷側の位置(res1〜res3)を独立して制御することができることとなる。なお、K1〜K3は、重心位置、ヨーイング量、加圧量に対するゲインを示している。
【0075】
具体的な制御系のブロック線図を図15に示す。ここで、□内の数字は、行列Q及び逆行列Q−1の具体的なパラメータ値によるゲインを示し、Kaは任意に設定できるトルクゲインを示している。なお、図15中の添え字m1、m2、m3は、それぞれ、Z軸モータ116D、116E、116Fに対応している。
【0076】
図15において、θm1cmdは重心位置の制御指令であり、吸着ノズル108D〜108Fの間の位置関係を保ったまま、全体をZ軸方向において平行移動制御することができる。θm2cmdはヨーイング量の制御指令であり、Z軸方向における部品102の角度を任意に補正することが可能である。なお、ヨーイング量の制御指令を0とすれば、部品102を水平にすることが可能である。τm1cmd〜τm3cmdは加圧量の制御指令である。この場合、θm3cmdを0に固定して使用する。
【0077】
このように、上述の共振比制御系を用いて行列Qと逆行列とQ−1をZ軸モータ116D〜116Fに適用することにより、摩擦やパラメータ変動等の外乱に対してロバストであり、防振制御だけでなく、吸着ノズル108D〜108Fの重心位置、ヨーイング量、加圧量の3種類を独立に制御することが可能である。
【0078】
更に、加圧量は、各吸着ノズル108D、108Eに設けられた圧力センサ107D、107Eで直接測定して加圧量のトルク指令τm1cmd〜τm3cmdに直接フィードバックすることができるので、加圧量のより正確な制御ができ、且つ高速に制御が可能となる。
【0079】
即ち、本発明によれば、外乱オブザーバ200と軸ねじれ反力推定オブザーバ202とを適用して制御しているので、摩擦、パラメータ変動等の外乱を排除したロバストな振動制御が可能となる。即ち部品搭載動作を制御指令に正しく追従させることができる。そして、2慣性共振系の振動抑制に有効な共振比制御を適用しているので、2慣性共振負荷の振動抑制制御が可能となる。このため、迅速な部品搭載を安定して行うことができる。そして、更に、以下のような効果をも有する。
【0080】
本実施形態では、1つの部品102を複数の吸着ノズル108で吸着するので、重い部品102を保持しても、部品認識位置への移動や部品搭載位置への移動において、急激な加速がなされても、慣性力で部品102が脱落することを防ぐことができる。このため、高速な部品搭載動作を行うことができ、部品搭載において早いタクトが実現できる。
【0081】
又、部品102を吸着して保持するので、例えば、QFPのような横方向全てから端子が出ている部品102に対しても安定した吸着保持が可能である。
【0082】
又、制御手段であるコントローラ132が部品102吸着した状態で吸着ノズル108の高さを変える制御を行うので、回路基板104の傾きに合わせて部品102を回路基板104と平行にして、部品102を回路基板104に搭載できる。このため、より歩留まりの高い部品搭載を実現することができる。
【0083】
又、1つの部品102を複数の吸着ノズル108で加圧するように制御しているので、例えば、部品102の中心と周辺で加圧量を変えることができ、部品102の破損防止や、より確実な部品搭載を実現することができる。
【0084】
本発明について第1実施形態を挙げて説明したが、本発明は第1実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでもない。
【0085】
例えば、第2実施形態として、圧力検出手段である圧力センサ107をまったく備えなくてもよい。この場合には、制御のためのブロック線図は図16のようになる。即ち、圧力センサ107が無い分制御が複雑とならず、部品搭載装置を低コストにすることができる。加圧量については、例えば、回路基板104のZ軸方向位置と部品102のZ軸方向の厚みから、吸着ノズル108の先端位置の押し込み位置に基づいて加圧量を推定することとしてもよい。また、圧力センサ107をいずれか1つの吸着ノズル108が備えてもよい。このとき、圧力センサ107の代わりに、圧力検出手段として歪ゲージを用いて、吸着ノズル108のいずれか1つ以上に貼り付けてそのたわみ量から加圧量を求めても良い。
【0086】
又、例えば、上記実施形態では、3つの吸着ノズル108で共振比制御系を構成したが、本発明は複数の吸着ノズルであれば適用することができる。例えば、第3実施形態として、2つの吸着ノズル108aa、108bbに共振比制御を適用することができる。その際、吸着ノズル108aa、108bbのZ軸における位置をz1、z2として、そのときの吸着ノズル108aa、108bbの加圧量をf1、f2とすると、吸着ノズル108aa、108bbの重心位置g、ヨーイング量θ、加圧量fは以下の式(7)〜(9)のように求めることができる。
【0087】
g=(z1+z2)/2 (7)
θ=(z1―z2)/L (8)
f=f1−f2 (9)
【0088】
ここで、式(7)〜(9)を行列Qにまとめると式(10)となる。なお、所定の比例係数で、f1はz1、f2はz2、それぞれに比例するものとしている。
【0089】
【数3】
【0090】
式(10)の逆行列Q−1を求めると、式(11)で表される。
【0091】
【数4】
【0092】
得られた行列Qと逆行列Q−1を用いると、図17のブロック線図を得ることができる。
【0093】
ここで、θcmdcomは和動モードの制御指令であり、吸着ノズル108aa、108bbの間の位置関係を保ったまま、全体をZ軸方向において平行移動制御することができる。θcmddifはヨーイング量の制御指令であり、Z軸方向における部品102の角度を任意に補正することが可能である。なお、ヨーイング量の制御指令を0とすれば、部品102を水平にすることが可能である。このように、2つの吸着ノズルであれば2つの吸着ノズルの共振比制御を、3の吸着ノズルであれば3つの吸着ノズルの共振比制御を、それぞれ適用することができる。4つ以上の吸着ノズルであれば、2つの吸着ノズル、あるいは3つの吸着ノズル毎に共振比制御系を組むこともできる。あるいは、例えば、吸着ノズルが6つであれば、3つずつに分けて、その3つのなかで重心位置に仮想的に吸着ノズルを想定して、仮想的に設けられた2つの吸着ノズルで共振比制御を行うこともできる。
【0094】
又、例えば、上記実施形態では、Z軸モータ116のエンコーダを用いてセミクローズドループで共振比制御系を構成していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、リニアエンコーダを用いたフルクローズドループで共振比制御系を構成することも可能である。又、Z軸モータ116として、回転モータを使用しているが、本発明は、リニアモータを使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の第1実施形態に係る部品搭載装置の概略図
【図2】同じく部品搭載装置全体の制御系の構成を表すブロック図
【図3】同じく搭載ヘッドの概略図
【図4】同じく部品認識後に部品の回転補正を行う際のフローを示す図
【図5】同じく部品吸着時と回転補正時の一例を示す摸式図
【図6】同じく図5とは異なる部品を回転補正する際の一例を示す摸式図
【図7】同じく部品を傾けた際の摸式図
【図8】同じく加圧量が異なることを示す摸式図
【図9】同じく図8における部品保持状態を示す摸式図
【図10】同じく吸着ノズルの1つを駆動するためのブロック線図を示す図
【図11】同じく外部オブザーバのブロック線図を示す図
【図12】同じく軸ねじれ反力推定オブザーバのブロック線図を示す図
【図13】同じく加速度制御系のブロック線図を示す図
【図14】同じく3つの吸着ノズルを備える場合の吸着ノズルの重心位置、ヨーイング量、加圧量を独立して制御するためのモデル化されたブロック線図を示す図
【図15】同じく図14の具体的な行列パラメータを用いた3つの吸着ノズルを駆動するためのブロック線図を示す図
【図16】本発明の第2実施形態に係る具体的な行列パラメータを用いた3つの吸着ノズルを駆動するためのブロック線図を示す図
【図17】本発明の第2実施形態に係る具体的な行列パラメータを用いた2つの吸着ノズルを駆動するためのブロック線図を示す図
【図18】従来の部品保持機構の模式図
【図19】別の従来の部品保持機構の模式図
【図20】更に別の従来の部品保持機構の模式図
【符号の説明】
【0096】
2、2A、22、52、102…部品
4、24、54…部品保持機構
100…部品搭載装置
104…回路基板
107、107A〜107F…圧力センサ(圧力検出手段)
108、108A〜108F、108aa、108bb…吸着ノズル
109…搭載ヘッド本体
110…搭載ヘッド
116、116A〜116F…Z軸モータ
117、117A〜117F…θ軸モータ
120…部品認識カメラ
132…コントローラ
136…記憶装置
142…画像認識装置
200…外乱オブザーバ
202…軸ねじれ反力推定オブザーバ
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品搭載方法とその装置に係り、特に、部品を吸着ノズルで吸着して、該部品を移動させて回路基板に搭載する部品搭載方法に用いるのに好適な、重い部品の吸着移動を可能とし、且つその部品の搭載条件を制御可能な部品搭載方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品を回路基板に搭載する部品搭載装置において、部品を部品供給部で保持するために、部品保持機構が用いられてきた。その従来の部品保持機構について、例えば、特許文献1の記載に基づき、図18を用いて説明する。部品保持機構4は、搭載ヘッド本体9によって保持された複数の吸着ノズル8を備えて、その吸着ノズル8の先端に生ずる吸引力で、部品2を保持することができる。そして、保持する部品2が吸着ノズル8の相互間の距離より大きい対角線を有する大型の部品2である場合には、そのうち1つの吸着ノズル8の先端部を他の吸着ノズルの先端部より搭載ヘッド本体9の一端面外方向(図18では下方向)へ突出させて、部品2を吸着するようにしている。こうして、大型の部品2においても、部品2と他の吸着ノズル8の先端部が干渉しないようにして、部品2を保持していた。
【0003】
又、特許文献2の記載においては、図19(A)に示す如く、部品22の保持手段である部品保持機構24は、本体26内で圧縮スプリング28を介してZ軸方向に移動可能な第1の移動部30と、第1の移動部30の下端に設けられたベアリング32によって自身の係合孔34AA、34BAに係合されると共に、ベアリング36A、36Bにより本体26内でZ軸方向に対して垂直であって相互に逆向きの方向(X軸方向)に移動可能な2つの第2の移動部34A、34Bと、第2の移動部34A、34Bにそれぞれ固定されている2つの保持部38A、38Bと、を備えている。このような構成により、第1の移動部30をZ軸方向に移動させることにより、第2の移動部34A、34Bと共に保持部38A、38BがそれぞれX軸方向の互いに逆側に移動する。それに伴い、本体26の中心軸Oに設けられたストッパ40を中心にして保持部38A、38Bの間隔がX軸方向で変化して、部品22を保持・開放することができる。
【0004】
具体的に、図19(B)を参照して、部品22を保持する動作を説明する。先ず、ストッパ40を部品22の上面に接触させて、2つの保持部38A、38Bを部品22の両側面の外側に位置決めする。そして、本体26の上部に設けられたバキューム孔26Aからエアを吸引する。すると圧縮スプリング28が縮んで、第1の移動部30が図面上方へ、即ちZ軸方向のプラス側へ移動する。この第1の移動部30の移動に伴い、ベアリング32もZ軸方向のプラス側へ移動する。このとき、係合孔34AA、34BAは、図19(B)に示す如く、斜めに形成された孔である。このため、ベアリング32が係合孔34AA、34BA内でZ軸方向のプラス側へ移動することにより、第2の移動部34A、34Bがベアリング36A、36Bの回転でX軸方向に、中心軸Oに向かって互いに接近するように移動する。これにより、2つの保持部38A、38Bの間隔が平行状態を保ちながら狭まるので、2つの保持部38A、38Bで部品22の両側面を挟み込むと共に、ストッパ40で部品22の上面を支持させてしっかりと保持することができる。
【0005】
又、別の従来の部品保持機構を、特許文献3の記載に基づき、図20を用いて説明する。部品52の保持手段である部品保持機構54は、部品52を挟む固定爪58と可動爪60とを有する。固定爪58は本体56に一体に形成されている。可動爪60は本体56のX軸方向に形成された吸引孔56Aに沿ってX軸方向に移動可能なピストン62に支持ピン64で軸支されている。このため、可動爪60は、支持ピン64を中心に回転可能である。吸引孔56Aは本体56のZ軸方向に設けられた吸引通路56Bを介して、吸着ノズル50の吸気口50Aに連通している。このため、吸着ノズル50の吸気口50Aからエアを吸引すると、ピストン62が図の右側(X軸方向のプラス側)に移動し、部品52に応じて、可動爪60の保持角度が可変して、部品52を保持する構造となっている。
【0006】
又、上記3つの部品保持機構を部品搭載装置に適用した場合には、部品保持機構の部品保持機構は部品を搭載する搭載ヘッドの備える吸着ノズルの先端に取付けられる。もしくは、吸着ノズルとして機能する。動作においては、部品保持機構が部品を保持して、その保持された部品の状態が部品搭載装置に配置された部品認識カメラで認識されて、部品搭載位置とのずれ量が演算・補正されて、部品が部品搭載位置へ移動される。
【0007】
【特許文献1】特開平5−114799公報
【特許文献2】特開2000−126949号公報
【特許文献3】特開平11−138484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、1つの部品の吸着を行う吸着ノズルは絶えず1つのみで部品の保持力は限られているので、重い部品を部品認識位置に移動する際や、部品搭載位置への移動をする際の急激な位置変化をさせると、慣性力により部品が脱落してしまうおそれが大きい。
【0009】
又、特許文献2、3では、2つの保持部で部品の両側面を挟み込むような構成の為、例えばQFPのようにICパッケージの横方向すべてから端子が出ている場合には、部品を保持することが困難である。
【0010】
又、特許文献1〜3では、1つの部品保持要素で部品を保持していることにより、回路基板が薄い、あるいは大型で回路基板にそりがあり、回路基板に垂直方向(Z軸方向)の傾きがある場合には、回路基板のそりに合わせて部品を基板と平行にして搭載することができない。このため、部品搭載時に部品全体に対して均等に押圧することが極めて困難である。
【0011】
更に、特許文献1〜3では、部品全体にかける加圧量の制御は可能であるが、1つの部品の中において、局所的に加圧量を変えることができない。このため、例えば、薄型部品などで部品の中央部に端子がなく、回路基板との間に支えがないような状態のときには、最悪の場合には加圧したときに部品を破損させるおそれもある。あるいは、例えば、部品中において、端子密度が場所ごとに異なる場合には、端子密度の高い場所で必要な加圧量が得られず、搭載不良を引き起こすおそれもある。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑み、重い部品を保持しつつ、迅速な部品搭載動作が確保でき、部品の端子状況に関らず安定した保持をして、部品を回路基板に搭載する際には、部品の回路基板に対する角度や部品内での加圧量などの搭載条件を調整可能とする部品搭載方法とその装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願の請求項1に係る発明は、部品を吸着ノズルで吸着して、該部品を移動させて回路基板に搭載する部品搭載方法において、1つの部品に対して吸着する前記吸着ノズルが、複数からなると共に、互いに独立した駆動源を備え、前記駆動源のうちの前記回路基板に垂直方向の移動機構の駆動源に制御指令を伝えて、該複数の吸着ノズルを外乱オブザーバと軸ねじれ反力推定オブザーバとを用いて共振比制御したことにより前記課題を解決したものである。
【0014】
本願の請求項2に係る発明は、制御手段により、部品を吸着ノズルで吸着して、該部品を移動させて回路基板に搭載する部品搭載装置において、1つの部品に対して吸着する前記吸着ノズルが、複数からなると共に、互いに独立した駆動源を備え、且つ、前記制御手段が、該複数の吸着ノズルを制御するための外乱オブザーバと、軸ねじれ反力推定オブザーバとを備え、該制御手段から前記駆動源のうちの前記回路基板に垂直方向の移動機構の駆動源への制御指令により該吸着ノズルが共振比制御されることを特徴とする部品搭載装置としたものである。
【0015】
本願の請求項3に係る発明は、前記吸着ノズルの少なくとも1つ以上が圧力検出手段を備えていることとしたものである。
【0016】
又、本願の請求項4に係る発明は、前記制御手段が、前記複数の吸着ノズルで前記部品を吸着保持後、該吸着ノズルの1つのみにより該部品の吸着を行い、他の吸着ノズルを上昇させて、該部品の角度補正を実施した後に、複数の吸着ノズルで該部品を吸着して、該部品を移動させる制御をすることとしたものである。
【0017】
又、本願の請求項5に係る発明は、前記制御手段が、前記複数の吸着ノズルで前記部品を吸着保持した状態で、前記回路基板の垂直方向において、それぞれの該吸着ノズルの位置を制御することで、該回路基板に対する該部品の平行度を制御して該部品を該回路基板に搭載させることとしたものである。
【0018】
又、本願の請求項6に係る発明は、前記制御手段が、前記複数の吸着ノズルで前記部品を吸着保持して部品搭載時に、前記回路基板の垂直方向で、それぞれの該吸着ノズルの位置を制御することで該部品が該回路基板に搭載される際の加圧量の分布状態を制御することとしたものである。
【0019】
ここで、共振比制御とは、駆動源と駆動源に対する負荷(負荷側)が存在したときにそれぞれが共振周波数を有するが、当該駆動源の共振周波数を制御することにより、駆動源の共振周波数と負荷側の共振周波数との比(共振比)を制御して駆動源と負荷とを含めた移動機構の全体制御を行うことをいうものとする。又、外乱オブザーバとは、外乱成分を推定し、フィードフォワード的にこれを補償することで外乱の影響を打ち消すシステムをいうものとする。更に、軸ねじれ反力推定オブザーバとは、負荷側に生じる軸ねじれで発生する反力を推定し、フィードフォワード的にこれを補償することで軸ねじれで発生する反力の影響を打ち消すシステムをいうものとする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、外乱オブザーバと軸ねじれ反力推定オブザーバとを適用して制御しているので、摩擦、パラメータ変動等の外乱を排除したロバストな振動制御が可能となる。即ち部品搭載動作を制御指令に正しく追従させることができる。そして、2慣性共振系の振動抑制に有効な共振比制御を適用しているので、2慣性共振負荷の振動抑制制御が可能となる。このため、迅速な部品搭載を安定して行うことができる。そして、具体的には更に、以下のような効果をも有する。
【0021】
本発明は、1つの部品を複数の吸着ノズルで吸着するので、重い部品を保持しても、部品認識位置への移動や部品搭載位置への移動において急激な加速がなされても、慣性力で部品が脱落することを防ぐことができる。このため、高速な部品搭載動作を行うことができ、部品搭載において早いタクトが実現できる。
【0022】
又、部品を吸着して保持するので、例えば、QFPのような横方向全てから端子が出ている部品に対しても安定した吸着保持が可能である。
【0023】
又、制御手段が部品吸着した状態で吸着ノズルの高さを変える制御を行う場合には、回路基板の傾きに合わせて部品を回路基板と平行にして、部品を回路基板に搭載できる。このため、より歩留まりの高い部品搭載を実現することができる。
【0024】
又、1つの部品を複数の吸着ノズルで加圧するように制御した場合には、例えば、部品の中心と周辺で加圧量を変えることができ、部品の破損防止や、より確実な部品搭載を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明の第1実施形態に係る部品搭載装置の概略図、図2は部品搭載装置全体の制御系の構成を表すブロック図、図3は搭載ヘッドの概略図、図4は部品認識後に部品の回転補正を行う際のフローを示す図、図5は部品吸着時と回転補正時の一例を示す摸式図、図6は図5とは異なる部品を回転補正する際の一例を示す摸式図、図7は部品を傾けた際の摸式図、図8は加圧量が異なることを示す摸式図、図9は図8における部品保持状態を示す摸式図、図10は吸着ノズルの1つを駆動するためのブロック線図を示す図、図11は外部オブザーバのブロック線図を示す図、図12は軸ねじれ反力推定オブザーバのブロック線図を示す図、図13は加速度制御系のブロック線図を示す図、図14は3つの吸着ノズルを備える場合の吸着ノズルの重心位置、ヨーイング量、加圧量を独立して制御するためのモデル化されたブロック線図を示す図、図15は図14の具体的な行列パラメータを用いた3つの吸着ノズルを駆動するためのブロック線図を示す図、である。
【0027】
最初に、本実施形態の部品搭載装置の構成について説明する。
【0028】
図1、図2に示すように、部品搭載装置100は、部品102が供給される部品供給部106と、部品102を吸着ノズル108で吸着保持して回路基板104上に搭載する搭載ヘッド110と、吸着ノズル108で保持された部品102の認識を行う部品認識カメラ120と、を備える。更に、図1に示すように、部品搭載装置100は、搭載ヘッド110をXY軸方向に移動させるX軸移動機構112、Y軸移動機構114と、中央部から少し後方で左右方向に延在する基板搬送路118と、本体部130と、を備えている。本体部130には、図2で示す制御手段としてのコントローラ132が設けられている。このような構成により、部品搭載装置100は、制御手段であるコントローラ132により、部品102を吸着ノズル108で吸着して、部品102を移動させて回路基板104に搭載する。なお、吸着ノズル108は、複数であり、1つの部品102を複数の吸着ノズル108で吸着する。複数の吸着ノズル108は、互いに独立した駆動源を備えている。そして、制御手段であるコントローラ132は、複数の吸着ノズル108の駆動源のうちの回路基板104に垂直方向の移動機構であるZ軸移動機構の駆動源(Z軸モータ116)に制御指令を伝えて、複数の吸着ノズル108を後述する外乱オブザーバ200と軸ねじれ反力推定オブザーバ202とを用いて共振比制御している。これらの各構成要素について以下、詳細に説明する。
【0029】
図1、図2に示すように、前記X軸移動機構112は、吸着ノズル108を有する搭載ヘッド110をX軸方向に移動させる。X軸モータ113は、X軸移動機構112の駆動源である。又、Y軸移動機構114は、X軸移動機構112並びに搭載ヘッド110をY軸方向に移動させる。Y軸モータ115は、Y軸移動機構114の駆動源である。
【0030】
図1、図3に示すように、前記搭載ヘッド110は、例えば3*2列の6つの吸着ノズル108A〜108Fを備えている。2列側と3列側のピッチは、それぞれLである。本実施形態では、ピッチLは、例えば、17mmとすることができる。吸着ノズル108A〜108Fは、搭載ヘッド本体109に固定されて、それぞれ独立したZ軸モータ116A〜116Fとθ軸モータ117A〜117Fとを備えている。そして、各吸着ノズル108A〜108Fには、圧力検出手段である圧力センサ107(107A〜107F)がそれぞれ設けてある。なお、Z軸モータ116A〜116Fとθ軸モータ117A〜117Fは、モータエンコーダが内蔵された回転モータである。Z軸モータ116A〜116Fは、Z軸移動機構の駆動源であり、搭載ヘッド本体109に対して、吸着ノズル108A〜108Fを垂直方向(Z軸方向)に昇降可能に移動させることができる。θ軸モータ117A〜117Fは、θ軸移動機構の駆動源であり、搭載ヘッド本体109に対して、吸着ノズル108A〜108Fをそのノズル軸(吸着軸)を中心に回転させることができる。
【0031】
なお、吸着ノズル108A〜108Fは、図示しないエジェクタに接続されている。このため、エジェクダをON/OFFすることによりバキューム発生の制御が可能であり、吸着ノズル108A〜108Fで部品102の吸着・脱着を行うことができる。搭載ヘッド本体109には、回路基板104上に形成された基板マーク(図示せず)を撮像する基板認識カメラ122が配置されている。
【0032】
図1に示すように、前記部品認識カメラ120は、搭載ヘッド110の可動範囲内の適宜個所、例えば部品供給部106の側部に配置され、吸着ノズル108で保持された部品102を下方から撮像することができる。
【0033】
図2に示すように、本体部130に設けられたコントローラ132は、マイクロコンピュータ(CPU)、並びにRAM、ROMを有して、X軸モータ113、Y軸モータ115、Z軸モータ116、θ軸モータ117、表示装置134、記憶装置136、キーボード138、マウス140、そして画像認識装置142等に接続されて、部品搭載装置100全体を制御する。又、コントローラ132は、Z軸移動機構の駆動源であるZ軸モータ116の制御をする際には、少なくとも、外乱オブザーバ200と軸ねじれ反力推定オブザーバ202とを備えて、共振比制御を行うことが可能である。
【0034】
図2に示すように、前記表示装置(モニタ)134は、部品データ、演算データ、及び部品認識カメラ120で撮像した部品102の画像などをその表示面に表示する。
【0035】
図2に示すように、前記記憶装置136は、フラッシュメモリなどで構成され、キーボード138とマウス140により入力された部品102の端子数、端子配置、大きさ、形などの情報(部品データ)や部品供給部106に供給される部品102の位置や向きなどの情報(部品供給データ)や回路基板104上の各部品102の搭載される位置や角度などの部品レイアウト情報(基板データ)、及び不図示のホストコンピュータから伝送される部品データ、部品供給データ、基板データなどを格納するのに用いられる。また、基板認識カメラ122で撮像した基板マークによる回路基板104の基板補正データ等も格納される。
【0036】
図2に示すように、前記キーボード138と前記マウス140は、部品データなどのデータを入力するために用いられる。
【0037】
図2に示すように、前記画像認識装置142は、吸着ノズル108に保持された部品102の画像認識を行うもので、メモリ144、CPU146及びA/D変換器148から構成される。ここでは、保持された部品102を撮像した部品認識カメラ120から出力されるアナログの画像信号をA/D変換器148によりデジタル信号に変換してメモリ144に格納し、CPU146がその画像データに基づいて保持された部品102の認識を行う。すなわち、画像認識装置142は、部品102中心と傾き(部品認識データ)を演算し、部品102の保持状態を認識する。又、画像認識装置142は、基板認識カメラ122と接続されて、基板認識カメラ122で撮像された基板マークの画像を処理して基板マーク位置を認識し、回路基板104の基板補正データを演算することができる。画像認識装置142は、上述した部品認識データと基板補正データとをコントローラ132へ伝送することができる。
【0038】
次に、本実施形態の部品搭載装置100の部品保持から部品搭載までの動作について説明する。なお、この一連の動作は、コントローラ132によって制御される。
【0039】
最初に、部品102の保持から部品102の吸着姿勢の認識までの動作を以下に説明する。
【0040】
まず、搭載ヘッド110を部品供給部106の上方へ移動する。このとき、例えば、吸着ノズル108Dを部品102の中心となるように移動し、Z軸モータ116A、116B、116D、116Eを駆動させて、吸着ノズル108A、108B、108D、108Eを、部品102が吸着できる高さまで下降させる。
【0041】
次に、吸着ノズル108A、108B、108D、108Eにバキュームを発生させて、部品102の吸着を行う。
【0042】
次に、Z軸モータ116A、116B、116D、116Eを駆動して4本の吸着ノズル108A、108B、108D、108Eで部品102を保持したまま等速度で、部品102をXY移動高さまで上昇させる。そして、部品認識カメラ120の上方へ移動させて部品102の認識を行う(図5(A)、図5(B)の状態)。部品認識カメラ120で得られた画像に基づき画像認識装置142は、部品102中心と吸着角度を演算し、部品102の吸着姿勢を認識する。
【0043】
次に、部品102の吸着姿勢の認識後から角度補正動作までについて、図4、図5を用いて説明を行う。ここでは、部品102の吸着姿勢の認識により、部品102の角度がずれていた場合、具体的には、吸着ノズル108Dの中心位置が部品102の中心位置のときに、吸着姿勢を演算した結果、保持した部品102の角度が例えば、時計回りに1度ずれていた場合について説明する。
【0044】
まず、上面図が図5(A)で側面図が図5(B)の状態から、吸着ノズル108A、108B、108EのバキュームをOFFする(ステップS2)。
【0045】
次に、吸着ノズル108A、108B、108Eの高さをZ軸モータ116A、116B、116Eを駆動して例えば1mm上昇させる(ステップS4)。
【0046】
次に、図5(C)、図5(D)に示すように、吸着ノズル108Dのθ軸モータ116Dを駆動させて、吸着姿勢の認識結果から算出した補正量分として反時計回りに1度だけ、回転させる補正動作を行う(ステップS6、S8)。この時のθ軸モータ116Dは、部品102が落下しないように低速で回転を行う。
【0047】
部品102の角度補正が完了した後(ステップS8でYes)に、吸着ノズル108A、108B、108EのZ軸モータ116A、116B、116Eを駆動させてZ軸方向の元の位置(1mm)に下降させる(ステップS10)。
【0048】
次に、吸着ノズル108A、108B、108EのバキュームをONし、4本の吸着ノズル108A、108B、108D、108Eで部品102の保持を行う(ステップS12)。そして、回路基板104上の部品102の搭載される位置まで、部品102が搭載ヘッド110によって移動される。
【0049】
なお、回路基板102が図6(A)に示すように一方向に短い場合には、回転補正前には吸着ノズル108D、108Eを用いて部品102を吸着して、回転補正後には吸着ノズル108D、108Aを用いて部品102を吸着してもよい。又、回転補正する際の中心位置を吸着ノズル108Dとせずに、吸着ノズル108Eを回転補正する際の中心位置としてもよい。この場合には、回転補正角が小さければ、図6(B)に示す如く、回転補正前後で、3つの吸着ノズル108D、108E、108Fを用いることができ、大きな吸着力で部品102を保持することができる。
【0050】
即ち、制御手段としてのコントローラ132は、複数の吸着ノズル108で部品102を吸着保持後、吸着ノズル108の1つのみにより部品102の吸着を行い、他の吸着ノズル108を上昇させて、部品102の角度補正を実施した後に、複数の吸着ノズル108で部品102を吸着して、部品102を移動させている。
【0051】
次に、部品102の回路基板104への搭載動作について説明を行う。
【0052】
まず、部品102が回路基板104上の部品102の搭載される位置に搭載ヘッド110によって移動された後、吸着ノズル108A、108B、108D、108Eをすべて同じ速度で回路基板104上に降下させる。
【0053】
ここで、回路基板104が傾きを有する場合、具体的には図7に示すように回路基板104上の部品搭載位置が回路基板104のそり等によりZ軸方向に、例えば1度傾いている状態だった場合には、吸着ノズル108Eの高さを吸着ノズル108Dに対して上昇させて、部品102の平行度を調整する。
【0054】
この時の吸着ノズル108Eの上昇量zは、ノズル間距離Lと傾き角度ρから
z=L×tanρ=17×tan1=0.297[mm] (1)
と求めることができる。即ち、吸着ノズル108Dに対し、吸着ノズル108Eを0.297mm上昇させた後に、吸着ノズル108A、108B、108D、108Eをすべて同じ速度で回路基板104上に降下させる。そして、部品102に傾きを持たせることで、回路基板104の傾きに沿って部品102を安定に搭載することができる。
【0055】
即ち、制御手段であるコントローラ132は、複数の吸着ノズル108で部品102を吸着保持した状態で、回路基板104の垂直方向(Z軸方向)において、それぞれの吸着ノズル108の位置を制御することで、回路基板104に対する部品102の平行度を制御して部品102を回路基板104に搭載させることができる。
【0056】
なお、回路基板104が搬送され、基板搬送路118の所定の位置で位置決めされる。その後に、搭載ヘッド110に取付けられた不図示の高さセンサにより、部品102の搭載される位置周辺部最低3点の高さを測定し、測定した3点から平面を算出することで、回路基板104の水平方向の傾きの取得が行われる。
【0057】
ここで、回路基板104への部品搭載時の加圧量の調整方法について説明する。
【0058】
部品102が回路基板104に接して、吸着ノズル108D、108Eが部品102と接した状態(図9参照)において、各吸着ノズル108D、108Eに取付けられた圧力センサ107D、107Eは、部品102にかかる圧力を計測することができる。吸着ノズル108D、108Eが部品102と接した状態で吸着ノズル108D、108EをよりZ軸方向に降下させる(押し込み量を多くする)と、部品102は回路基板104に強く押付けられる。このため、部品102にかかる加圧量は上昇する。加圧量を弱めるのは、逆に、吸着ノズル108D、108Eを上昇させる(押し込み量を少なくする)ことで実現できる。
【0059】
部品102内の部位によって加圧量を変える場合、例えば、図8に示す吸着ノズル108Dは加圧量150Dを強く、吸着ノズル108Eは加圧量150Eを弱くする場合には、部品102の中心の押し込み量を多くし、外側で押し込み量を少なくすることで実現することができる。むろん、吸着ノズル108D、108Eの加圧量を均一に制御して、部品102の加圧分布を均一にすることも可能である。
【0060】
即ち、制御手段であるコントローラ132は、複数の吸着ノズル108で部品102を吸着保持して部品搭載時に、回路基板104の垂直方向で、それぞれの吸着ノズル108の位置を制御することで部品102が回路基板104に搭載される際の加圧量の分布状態を制御することができる。
【0061】
次に、吸着ノズル108A〜108Fを制御する制御手段であるコントローラ132による制御について説明する。コントローラ132は、外乱オブザーバ200と軸ねじれ反力推定オブザーバ202とを備えて、回路基板104への部品搭載時に共振比制御を行う。そして、本実施形態では6つの吸着ノズル108A〜108Fが制御される。即ち、コントローラ132から駆動源であるZ軸モータ116A〜116Fへの制御指令により、吸着ノズル108A〜108Fが共振比制御されている。
【0062】
最初に、図10に、部品搭載装置100の吸着ノズル108の1つを想定した共振比制御のブロック線図を示す。なお、外乱オブザーバ200を図11に、軸ねじれ反力推定オブザーバ202を図12に、それぞれ示す。
【0063】
ここで、図10において、θmcmdはZ軸モータ116への制御指令、Kp、Kr、Kvは任意に設定できるフィードバックゲインで、Kpは位置ゲイン、Krは反力ゲイン、Kvは速度ゲイン、d2θmref/dt2は加速度参照値、dθm/dtは速度参照値、JmはZ軸モータ116の慣性、nはノミナル値、(即ち、JmnはZ軸モータ116の慣性のノミナル値)、Ktはトルク定数、(即ち、Ktnはトルク定数のノミナル値)、Irefは電流参照値、τdismはZ軸モータ116に作用する外乱トルク、sはラプラス演算子、θmはZ軸モータ116の回転角度(Z軸モータ116の位置)、KfはZ軸モータ116と負荷側との間のばね定数、τreacは軸ねじれ反力、τreac*は推定軸ねじれ反力、τdislは負荷側に作用する外乱トルク、Jlは負荷側の慣性、θlは負荷側の回転角度(負荷の位置)、をそれぞれ表している。又、図11において、Fmはパラメータ変動によりZ軸モータ116に印加される変動外乱トルク、Dmは粘性摩擦トルク、Icmpは外乱トルクを補償してロバスト性を確保するための補償電流、Gdisは外乱オブザーバゲイン、τdism*は推定外乱トルク、をそれぞれ表している。又、図12において、Greacは、軸ねじれ反力推定オブザーバ202に含まれる1次のローパスフィルタのカットオフ周波数である。なお、添え字mはZ軸モータ116、添え字lは負荷側、添え字disは外乱、添え字reacは軸ねじれ反力を示している。
【0064】
図10に示す如く、本実施形態に係る制御系は、外乱オブザーバ200と軸ねじれ反力推定オブザーバ202とを備えて共振比制御系を構成し、負荷側に作用する外乱τdislに係らず、それらによる推定値をフィードバックしている。このため、本実施形態に係る制御系は、2慣性共振系の振動抑制において有効である。即ち、本実施形態に係る制御系は、外乱オブザーバ200と軸ねじれ反力推定オブザーバ202とに基づくため、Z軸モータ116に加わる外乱等を補償することが可能である。詳しく言うならば、Z軸モータ116に外乱オブザーバ200と軸ねじれ反力推定オブザーバ202とを適用しているので、Z軸モータ116に作用する各種外乱の影響を除去することができる。このため、図13に示すロバストな加速度制御系を構築することができる。図13に示す如く、外乱オブザーバゲインGdisを大きく設定すると、s/(s+Gdis*)を極めて小さくできるので、外乱トルクτdismの影響を極めて少なくすることが可能なことによるものである。なお、Gdis*は外乱オブザーバゲインの換算値を示している。そして、本実施形態に係る制御系は、共振比制御であるので、状態フィードバック制御やH∞制御などと異なり、図10に示す如く、比較的簡単な制御系のため、設計が容易であり、計算量も少なくて済むなど実用性が高い。
【0065】
次に、例えば3つの吸着ノズル108D、108E、108Fを、3つの独立したモードで制御(重心位置の制御、ヨーイング量の制御、加圧量の制御)する方法について説明する。
【0066】
最初に、上述した共振比制御を、3つのZ軸モータ116D〜116Fで駆動される吸着ノズル108D〜108Fに適用するために、Z軸モータ116D〜116Fの重心位置、ヨーイング量、加圧量の関係を求める。
【0067】
吸着ノズル108D〜108FのZ軸における位置をz1、z2、z3として、そのときの吸着ノズル108D〜108Fの加圧量をf1、f2、f3とすると、吸着ノズル108D〜108Fの重心位置g、ヨーイング量θ、加圧量fは以下の式(2)〜(4)のように求めることができる。
【0068】
g=(z1+z2+z3)/3 (2)
θ=(z1―z2)/L (3)
f=(2*f3)−f1−f2 (4)
【0069】
このとき、吸着ノズル108Fの加圧量が吸着ノズル108D、108Eの加圧量の合計と等しくなるように制御が行われることで、吸着ノズル108D〜108Fがバランス良く正しく部品102を回路基板104に対して加圧することが可能となる。
【0070】
ここで、式(2)〜(4)を行列Qにまとめると式(5)となる。なお、所定の比例係数で、f1はz1、f2はz2、f3はz3、それぞれに比例するものとしている。
【0071】
【数1】
【0072】
式(5)の逆行列Q−1を求めると、式(6)で表される。
【0073】
【数2】
【0074】
得られた行列Qと逆行列Q−1を用いると、図14のモデル化されたブロック線図が得られるので、重心位置の制御、ヨーイング量の制御、加圧量の制御の各モードに対応した3つの制御指令(cmd1〜cmd3)により、フィードバックをかけて各移動機構(System1〜System3)で出力される負荷側の位置(res1〜res3)を独立して制御することができることとなる。なお、K1〜K3は、重心位置、ヨーイング量、加圧量に対するゲインを示している。
【0075】
具体的な制御系のブロック線図を図15に示す。ここで、□内の数字は、行列Q及び逆行列Q−1の具体的なパラメータ値によるゲインを示し、Kaは任意に設定できるトルクゲインを示している。なお、図15中の添え字m1、m2、m3は、それぞれ、Z軸モータ116D、116E、116Fに対応している。
【0076】
図15において、θm1cmdは重心位置の制御指令であり、吸着ノズル108D〜108Fの間の位置関係を保ったまま、全体をZ軸方向において平行移動制御することができる。θm2cmdはヨーイング量の制御指令であり、Z軸方向における部品102の角度を任意に補正することが可能である。なお、ヨーイング量の制御指令を0とすれば、部品102を水平にすることが可能である。τm1cmd〜τm3cmdは加圧量の制御指令である。この場合、θm3cmdを0に固定して使用する。
【0077】
このように、上述の共振比制御系を用いて行列Qと逆行列とQ−1をZ軸モータ116D〜116Fに適用することにより、摩擦やパラメータ変動等の外乱に対してロバストであり、防振制御だけでなく、吸着ノズル108D〜108Fの重心位置、ヨーイング量、加圧量の3種類を独立に制御することが可能である。
【0078】
更に、加圧量は、各吸着ノズル108D、108Eに設けられた圧力センサ107D、107Eで直接測定して加圧量のトルク指令τm1cmd〜τm3cmdに直接フィードバックすることができるので、加圧量のより正確な制御ができ、且つ高速に制御が可能となる。
【0079】
即ち、本発明によれば、外乱オブザーバ200と軸ねじれ反力推定オブザーバ202とを適用して制御しているので、摩擦、パラメータ変動等の外乱を排除したロバストな振動制御が可能となる。即ち部品搭載動作を制御指令に正しく追従させることができる。そして、2慣性共振系の振動抑制に有効な共振比制御を適用しているので、2慣性共振負荷の振動抑制制御が可能となる。このため、迅速な部品搭載を安定して行うことができる。そして、更に、以下のような効果をも有する。
【0080】
本実施形態では、1つの部品102を複数の吸着ノズル108で吸着するので、重い部品102を保持しても、部品認識位置への移動や部品搭載位置への移動において、急激な加速がなされても、慣性力で部品102が脱落することを防ぐことができる。このため、高速な部品搭載動作を行うことができ、部品搭載において早いタクトが実現できる。
【0081】
又、部品102を吸着して保持するので、例えば、QFPのような横方向全てから端子が出ている部品102に対しても安定した吸着保持が可能である。
【0082】
又、制御手段であるコントローラ132が部品102吸着した状態で吸着ノズル108の高さを変える制御を行うので、回路基板104の傾きに合わせて部品102を回路基板104と平行にして、部品102を回路基板104に搭載できる。このため、より歩留まりの高い部品搭載を実現することができる。
【0083】
又、1つの部品102を複数の吸着ノズル108で加圧するように制御しているので、例えば、部品102の中心と周辺で加圧量を変えることができ、部品102の破損防止や、より確実な部品搭載を実現することができる。
【0084】
本発明について第1実施形態を挙げて説明したが、本発明は第1実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでもない。
【0085】
例えば、第2実施形態として、圧力検出手段である圧力センサ107をまったく備えなくてもよい。この場合には、制御のためのブロック線図は図16のようになる。即ち、圧力センサ107が無い分制御が複雑とならず、部品搭載装置を低コストにすることができる。加圧量については、例えば、回路基板104のZ軸方向位置と部品102のZ軸方向の厚みから、吸着ノズル108の先端位置の押し込み位置に基づいて加圧量を推定することとしてもよい。また、圧力センサ107をいずれか1つの吸着ノズル108が備えてもよい。このとき、圧力センサ107の代わりに、圧力検出手段として歪ゲージを用いて、吸着ノズル108のいずれか1つ以上に貼り付けてそのたわみ量から加圧量を求めても良い。
【0086】
又、例えば、上記実施形態では、3つの吸着ノズル108で共振比制御系を構成したが、本発明は複数の吸着ノズルであれば適用することができる。例えば、第3実施形態として、2つの吸着ノズル108aa、108bbに共振比制御を適用することができる。その際、吸着ノズル108aa、108bbのZ軸における位置をz1、z2として、そのときの吸着ノズル108aa、108bbの加圧量をf1、f2とすると、吸着ノズル108aa、108bbの重心位置g、ヨーイング量θ、加圧量fは以下の式(7)〜(9)のように求めることができる。
【0087】
g=(z1+z2)/2 (7)
θ=(z1―z2)/L (8)
f=f1−f2 (9)
【0088】
ここで、式(7)〜(9)を行列Qにまとめると式(10)となる。なお、所定の比例係数で、f1はz1、f2はz2、それぞれに比例するものとしている。
【0089】
【数3】
【0090】
式(10)の逆行列Q−1を求めると、式(11)で表される。
【0091】
【数4】
【0092】
得られた行列Qと逆行列Q−1を用いると、図17のブロック線図を得ることができる。
【0093】
ここで、θcmdcomは和動モードの制御指令であり、吸着ノズル108aa、108bbの間の位置関係を保ったまま、全体をZ軸方向において平行移動制御することができる。θcmddifはヨーイング量の制御指令であり、Z軸方向における部品102の角度を任意に補正することが可能である。なお、ヨーイング量の制御指令を0とすれば、部品102を水平にすることが可能である。このように、2つの吸着ノズルであれば2つの吸着ノズルの共振比制御を、3の吸着ノズルであれば3つの吸着ノズルの共振比制御を、それぞれ適用することができる。4つ以上の吸着ノズルであれば、2つの吸着ノズル、あるいは3つの吸着ノズル毎に共振比制御系を組むこともできる。あるいは、例えば、吸着ノズルが6つであれば、3つずつに分けて、その3つのなかで重心位置に仮想的に吸着ノズルを想定して、仮想的に設けられた2つの吸着ノズルで共振比制御を行うこともできる。
【0094】
又、例えば、上記実施形態では、Z軸モータ116のエンコーダを用いてセミクローズドループで共振比制御系を構成していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、リニアエンコーダを用いたフルクローズドループで共振比制御系を構成することも可能である。又、Z軸モータ116として、回転モータを使用しているが、本発明は、リニアモータを使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の第1実施形態に係る部品搭載装置の概略図
【図2】同じく部品搭載装置全体の制御系の構成を表すブロック図
【図3】同じく搭載ヘッドの概略図
【図4】同じく部品認識後に部品の回転補正を行う際のフローを示す図
【図5】同じく部品吸着時と回転補正時の一例を示す摸式図
【図6】同じく図5とは異なる部品を回転補正する際の一例を示す摸式図
【図7】同じく部品を傾けた際の摸式図
【図8】同じく加圧量が異なることを示す摸式図
【図9】同じく図8における部品保持状態を示す摸式図
【図10】同じく吸着ノズルの1つを駆動するためのブロック線図を示す図
【図11】同じく外部オブザーバのブロック線図を示す図
【図12】同じく軸ねじれ反力推定オブザーバのブロック線図を示す図
【図13】同じく加速度制御系のブロック線図を示す図
【図14】同じく3つの吸着ノズルを備える場合の吸着ノズルの重心位置、ヨーイング量、加圧量を独立して制御するためのモデル化されたブロック線図を示す図
【図15】同じく図14の具体的な行列パラメータを用いた3つの吸着ノズルを駆動するためのブロック線図を示す図
【図16】本発明の第2実施形態に係る具体的な行列パラメータを用いた3つの吸着ノズルを駆動するためのブロック線図を示す図
【図17】本発明の第2実施形態に係る具体的な行列パラメータを用いた2つの吸着ノズルを駆動するためのブロック線図を示す図
【図18】従来の部品保持機構の模式図
【図19】別の従来の部品保持機構の模式図
【図20】更に別の従来の部品保持機構の模式図
【符号の説明】
【0096】
2、2A、22、52、102…部品
4、24、54…部品保持機構
100…部品搭載装置
104…回路基板
107、107A〜107F…圧力センサ(圧力検出手段)
108、108A〜108F、108aa、108bb…吸着ノズル
109…搭載ヘッド本体
110…搭載ヘッド
116、116A〜116F…Z軸モータ
117、117A〜117F…θ軸モータ
120…部品認識カメラ
132…コントローラ
136…記憶装置
142…画像認識装置
200…外乱オブザーバ
202…軸ねじれ反力推定オブザーバ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を吸着ノズルで吸着して、該部品を移動させて回路基板に搭載する部品搭載方法において、
1つの部品に対して吸着する吸着ノズルが、複数からなると共に、互いに独立した駆動源を備え、
前記駆動源のうちの前記回路基板に垂直方向の移動機構の駆動源に制御指令を伝えて、該複数の吸着ノズルを外乱オブザーバと軸ねじれ反力推定オブザーバとを用いて共振比制御することを特徴とする部品搭載方法。
【請求項2】
制御手段により、部品を吸着ノズルで吸着して、該部品を移動させて回路基板に搭載する部品搭載装置において、
1つの部品に対して吸着する前記吸着ノズルが、複数からなると共に、互いに独立した駆動源を備え、且つ、
前記制御手段が、該複数の吸着ノズルを制御するための外乱オブザーバと、軸ねじれ反力推定オブザーバとを備え、
該制御手段から前記駆動源のうちの前記回路基板に垂直方向の移動機構の駆動源への制御指令により該吸着ノズルが共振比制御されることを特徴とする部品搭載装置。
【請求項3】
前記吸着ノズルの少なくとも1つ以上が圧力検出手段を備えていることを特徴とする請求項2に記載の部品搭載装置。
【請求項4】
前記制御手段が、前記複数の吸着ノズルで前記部品を吸着保持後、該吸着ノズルの1つのみにより該部品の吸着を行い、他の吸着ノズルを上昇させて、該部品の角度補正を実施した後に、複数の吸着ノズルで該部品を吸着して、該部品を移動させる制御をすることを特徴とする請求項2又は3に記載の部品搭載装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記複数の吸着ノズルで前記部品を吸着保持した状態で、前記回路基板の垂直方向において、それぞれの該吸着ノズルの位置を制御することで、該回路基板に対する該部品の平行度を制御して該部品を該回路基板に搭載させることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の部品搭載装置。
【請求項6】
前記制御手段が、前記複数の吸着ノズルで前記部品を吸着保持して部品搭載時に、前記回路基板の垂直方向で、それぞれの該吸着ノズルの位置を制御することで該部品が該回路基板に搭載される際の加圧量の分布状態を制御することを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の部品搭載装置。
【請求項1】
部品を吸着ノズルで吸着して、該部品を移動させて回路基板に搭載する部品搭載方法において、
1つの部品に対して吸着する吸着ノズルが、複数からなると共に、互いに独立した駆動源を備え、
前記駆動源のうちの前記回路基板に垂直方向の移動機構の駆動源に制御指令を伝えて、該複数の吸着ノズルを外乱オブザーバと軸ねじれ反力推定オブザーバとを用いて共振比制御することを特徴とする部品搭載方法。
【請求項2】
制御手段により、部品を吸着ノズルで吸着して、該部品を移動させて回路基板に搭載する部品搭載装置において、
1つの部品に対して吸着する前記吸着ノズルが、複数からなると共に、互いに独立した駆動源を備え、且つ、
前記制御手段が、該複数の吸着ノズルを制御するための外乱オブザーバと、軸ねじれ反力推定オブザーバとを備え、
該制御手段から前記駆動源のうちの前記回路基板に垂直方向の移動機構の駆動源への制御指令により該吸着ノズルが共振比制御されることを特徴とする部品搭載装置。
【請求項3】
前記吸着ノズルの少なくとも1つ以上が圧力検出手段を備えていることを特徴とする請求項2に記載の部品搭載装置。
【請求項4】
前記制御手段が、前記複数の吸着ノズルで前記部品を吸着保持後、該吸着ノズルの1つのみにより該部品の吸着を行い、他の吸着ノズルを上昇させて、該部品の角度補正を実施した後に、複数の吸着ノズルで該部品を吸着して、該部品を移動させる制御をすることを特徴とする請求項2又は3に記載の部品搭載装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記複数の吸着ノズルで前記部品を吸着保持した状態で、前記回路基板の垂直方向において、それぞれの該吸着ノズルの位置を制御することで、該回路基板に対する該部品の平行度を制御して該部品を該回路基板に搭載させることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の部品搭載装置。
【請求項6】
前記制御手段が、前記複数の吸着ノズルで前記部品を吸着保持して部品搭載時に、前記回路基板の垂直方向で、それぞれの該吸着ノズルの位置を制御することで該部品が該回路基板に搭載される際の加圧量の分布状態を制御することを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の部品搭載装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−272410(P2009−272410A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120671(P2008−120671)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】
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