説明

部品管理装置、部品管理システム、部品管理方法、および、部品管理プログラム

【課題】工作機械等の機器のユーザの利便性が向上される部品管理装置の提供。
【解決手段】コントローラの制御下で稼働する機器に装着して使用される部品を管理する部品管理装置であって、部品に付された部品識別子から部品識別情報を読み取る識別情報読取部と、部品識別情報にもとづいて、コントローラの機器に対する制御の設定を変更する指示をコントローラへ出力する変更指示部と、を有する部品管理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械等の機器に用いられる部品を管理するための装置およびシステムに関し、特に、IDタグを用いて部品を管理する装置およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機器等において本体に取り付けて使用する消耗品に関する情報を、該消耗品を取り付ける本体に認識させる手段として、消耗品の情報を記憶したICタグを消耗品に備え付けておき、本体がICタグから消耗品の情報を読み出して消耗品を認識する仕組みが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ICタグを用いて消耗品の着脱や該消耗品の使用累積時間を認識する家庭用電気機械器具(以下、「家電品」。)が提案されている。特許文献1の開示する技術においては、消耗品には、自身の識別情報を記憶したICタグが添付される。そして、家電品には、ICタグに記憶された識別情報を読み取ることで消耗品の着脱を検出する手段が備えられる。当該手段が新規装着を検出した場合には、家電品は、ICタグからの識別情報と該消耗品の使用累積時間を対応付けして本体に記憶する。また、識別情報と使用累積時間とを対応付けて記憶するため、家電品は、これまでの使用累積時間に加算して使用累積時間の計時を再開することができる。また、家電品は、消耗品の種別に応じて、使用累積時間の計時方法や、寿命判定基準の変更を行うことができる。
【0004】
また、特許文献2においては、複数の電気機器を制御するネットワークシステムが開示される。特許文献2のシステムでは、消耗品にICタグが付され、電気機器は、該ICタグを検知する手段を備える。電気機器においては、ICタグを検知すると該ICタグの位置、属性等の情報を収集し、管理する。そして、電気機器は、消耗品を交換する際には、管理している位置、属性等の情報にもとづいて消耗品の保管場所等をユーザに通知する。このようにして、特許文献2のシステムでは、消耗品の管理にかかるユーザの負担を軽減し、もって、消耗品の保管場所に詳しくないユーザでも迅速に消耗品交換作業を行うことができるようにしている。
【0005】
しかしながら、一般的な家電品等電気機器とは異なり、工作機械のような複雑な装置においては、消耗品や交換部品の種類は多岐にわたる。工作機械においても消耗品は、家電品における消耗品と同様、一定期間使用するとユーザが新規品に交換する必要がある。さらに、工作機械においては、部品がその使用耐久度(使用耐久回数、使用耐久年数等)を超えていなくとも、ユーザは、加工の目的に応じて部品を交換して工作機械を使用する。
【0006】
加工目的に応じて消耗品(部品)の種類を変更した場合、ユーザは、一般的に、工作機械の制御設定も同時に変更する必要がある。具体的には、消耗品(交換部品)交換と同時に、ユーザは、工作機械のコントローラの設定を手動で変更する。また、同一の種類の消耗品の個体を取り替える場合であっても、次回の交換時期を適切に報知するために、ユーザは、工作機械のコントローラが記憶している前回までの消耗品稼働時間をリセットするなどの操作を手動で行う必要がある。さらには、工作機械に非推奨の部品が装着された場合、工作機械側はそれを非推奨品であると認識することができず、推奨品と非推奨品との差違に起因し本来の性能を発揮できないこともあり、場合によっては、故障の原因ともなり得る。
【0007】
また、工作機械には、切削加工機や放電加工機などがあるが、これらの工作機械では、工作物を加工するために、とりわけ多数の工具や電極を適宜取り替えて使用する。これら多数の工具、電極(部品)は、切削加工機や放電加工機などの工作機械のストッカに格納され、格納番号(ストッカを区別する番号)とそれに格納された実際の工具、電極等部品の対応関係の情報は、工作機械のコントローラや、オフラインコントローラが管理する。そして、加工処理において、複数の部品が加工処理の内容に応じて適宜使い分けられる。格納番号と実際の工具、電極等の交換部品との対応(リンク)の情報は、予め操作者(ユーザ)が手動でコントローラに入力する必要がある。
【0008】
したがって、従来の工作機械等にあっては、工具、電極等の部品交換時にユーザがコントローラの設定変更を誤ると加工不良が生じるおそれがあり、ユーザに多大な負担を強いることになっている。
【0009】
また、工作機械に非推奨の部品が故意に取り付けられた場合であっても、工作機械にはそれを認識し対処するための手段がなく、工作機械が本来有する加工性能を最大限に発揮できない場合がある。
【0010】
また、切削加工機や放電加工機など、多数の工具や電極を使い分けて加工を行う工作機械においては、操作者(ユーザ)が設定した格納番号と部品との対応付けと異なる箇所に部品(ツール電極等)が格納されてしまった場合、間違った情報に基づいて加工が開始され、結果的に工作物が不良品となる。部品を格納する場所が足りなくなることもあり、そのような場合には、操作者(ユーザ)が、消耗品を新規品に交換する場合と同様に、部品交換とコントローラの設定変更入力をする必要があり、このような場合にも、人為的な設定ミスや設定忘れが発生することがあり、このこともユーザの精神的負担となっている。
【0011】
そこで、工作機械においても、上述のICタグを用いた消耗品管理システム従来例を導入することが考えられる。
【0012】
しかしながら、上述のICタグを用いて消耗品の着脱や該消耗品の使用累積時間を認識する従来例を工作機械に適用した場合、消耗品は、常に同一の工作機械で使用されることが前提とされる。なぜなら、一の消耗品を複数の工作機械で使用する場合、一の工作機械は、他の工作機械で使用された事実を認識することができないからである。例えば、一定期間にわたり工作機械Aで使用された消耗品を工作機械Bで使用し、再び、工作機械Aで使用した場合、工作機械Aは、当該消耗品が、工作機械Bで使用された事実を認識できないため、寿命判断などを正確に実施できない。さらに、上述の消耗品管理システム従来例では、多種の消耗品を装着することを考慮に入れられていないため、消耗品の種類に応じた制御設定など、各種設定変更を自動的に行うこともできない。
【0013】
また、上述の別の従来例を工作機械に適用した場合では、工作機械に非推奨の消耗品が取り付けられた場合、警告情報を発生させることは可能であるが、それらの情報を元に能動的に工作機械機器の制御を変更し、非推奨の部品を使用した場合でも工作機械が故障しないように工作機械を動作させるなどの、制御シーケンスの変更をすることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−145053号公報
【特許文献2】特開2006−221426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記従来例における問題点を鑑み、工作機械等の機器のユーザの利便性を向上させる部品管理装置、部品管理システム、部品管理方法、および、部品管理プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
その一態様は、コントローラの制御下で稼働する機器に装着して使用される部品を管理する部品管理装置であって、部品に付された部品識別子から部品識別情報を読み取る識別情報読取部と、部品識別情報にもとづいて、コントローラの機器に対する制御の設定を変更する指示をコントローラへ出力する変更指示部と、を有する部品管理装置である。
【発明の効果】
【0017】
実施の形態にかかる部品管理装置等により、工作機械等の機器のユーザの利便性が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】実施の形態1による部品管理装置を備えた工作機械のブロック図
【図1B】実施の形態1による部品管理装置の詳細を示すブロック図
【図2】実施の形態1による部品管理装置が行う処理のフローチャート
【図3】実施の形態2による部品管理装置の詳細を示すブロック図
【図4】実施の形態2による部品管理装置が行う処理のフローチャート
【図5】ICタグ情報データベースの更新処理の詳細を示すフローチャート
【図6】悪環境下でのICタグ情報の読み出し/書き込み処理のフローチャート
【図7】実施の形態1および2の部品管理装置の変形例のブロック図
【図8】実施の形態3によるサプライヤ側部品管理装置のブロック図
【図9】実施の形態3による部品管理システムの概念図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施の形態について、詳細に説明する。
【0020】
実施の形態による部品管理システムは、工作機械等の機器に用いられる部品に付されたIDタグ(部品識別子)と、IDタグに記録されたIDタグ情報(部品識別情報)に基づいて部品を管理する部品管理装置とを有する。部品管理装置は、IDタグから抽出したIDタグ情報(部品識別情報)に基づき、工作機械の制御シーケンスの設定や各種設定パラメータ等の設定を変更することができ、従来ユーザが手動で行っていた操作を自動化することができる。
【0021】
なお、下記、実施の形態1および2の部品管理装置は、工作機械に限らず、コントローラの制御下で稼働する機器に装着されて使用される部品を管理するための装置として用いることができる。
【0022】
実施の形態1.
図1Aは、実施の形態1による部品管理装置を備えた工作機械のブロック図である。工作機械は、工作機械本体10と、本体10の動作を制御するコントローラ50と、コントローラ50と情報送受信可能に接続された部品管理装置40とを有する。部品管理装置40は、コントローラ50内に実装されてもよい。つまり、部品管理装置40の形態は、コントローラ50の外部に接続される形態に限定されず、コントローラ50に内蔵される形態でもよいし、または、コントローラ50のコンピュータが所定のプログラムを実行することで実現されてもよい。また、コントローラ50は、操作者(ユーザ)とのインタフェース(保守画面等)を有してよい。
【0023】
工作機械本体10は、未装着の部品を格納する部品格納部11を備えてもよい。部品格納部11は、複数の部品を未装着状態で格納するスペースを有し、コントローラ50は、各スペースに格納された部品の種類等を認識することが可能であってよい。工作機械本体10は、部品を装着して使用することができ、当該部品は、工具等でよく、工具等は消耗品であってよい。同図において、部品1(21)および部品2(22)は、工作機械本体10に取り付けられた状態にある。また、部品3(23)は、部品格納部11に格納され未装着の状態にある。部品1乃至3(21、22、23)は、例えば、各種消耗品や、切削加工用の工具や、放電加工用の電極が含まれる。消耗品は、サプライヤに戻されリサイクル工程を経ることでリサイクル可能な消耗品であってもよい。これら部品1乃至3(21、22、23)には、それぞれ、IDタグ(部品識別子)であるICタグ1乃至3(31、32、33)が付されている。つまり、各部品1乃至3(21、22、23)は、それぞれ、独立したICタグ1乃至3(31、32、33)が付された部品であればよく、部品の種類に特に限定はない。
【0024】
ICタグ1乃至3(31、32、33)には、それぞれ、予め、IDタグ情報(部品識別情報)としてICタグ情報が記録され、ICタグ情報は、部品が本体10に装着された状態、および、部品が部品格納部11に格納された状態において部品管理装置40が読み取り可能である。部品管理装置40は、ICタグ1乃至3(31、32、33)に接触する端子、あるいは、アンテナ等を備え、ICタグ1乃至3(31、32、33)からICタグ情報を読み取ることができる。
【0025】
なお、同図においては、IDタグ(部品識別子)には、ICタグ1乃至3(31、32、33)が用いられるが、IDタグとして、バーコード等が印刷された非ICのタグを使用してもよい。いずれの場合にあっても、部品管理装置40は、IDタグに記録された情報(部品情報)を読み取ることが可能な構成(ICタグリーダ、バーコードリーダ等)を備えればよく、IDタグの種類に特に限定はない。
【0026】
IDタグに記録される情報(部品識別情報)には、当該IDタグが付された部品の種類および個体を特定するための情報が含まれる。部品識別情報は、部品種毎に予め決定されたIDコードを含んでよい。なお、部品識別情報には、IDタグが付された部品の特性を表した詳細情報(部品詳細情報)が含まれてよい。部品詳細情報は、例えば、部品の仕様、当該部品を使用する場合に工作機械に設定されるべき制御シーケンスを指定する情報、当該制御シーケンスの詳細、工作機械に設定されるべきパラメータの設定内容等が含まれてよい。また、部品詳細情報には、当該部品が推奨品であることを明示する情報が含まれてもよい。
【0027】
例えば、工作機械の一例、ワイヤ放電加工機の消耗部品であるワイヤ電極の場合、部品識別情報には、当該ワイヤ電極の型番を示す情報や個体を示すシリアルナンバー等が含まれてよい。また、部品詳細情報として、ワイヤ電極径の情報、当該ワイヤ電極径に依存して決定される加工溝幅や最小コーナ径等に関する情報が含まれてもよい。
【0028】
また、例えば、部品が、加工液をろ過するフィルタの場合、部品識別情報には、当該フィルタの型番を示す情報や個体を示すシリアルナンバー等が含まれてよい。また、部品詳細情報として、フィルタのメッシュ径や外装、内部構造や材質等、または、それらによって決定される加工液供給圧力等に関する情報が含まれてよい。
【0029】
また、例えば、部品が、加工液の比抵抗値を一定以上に制御するイオン交換樹脂の場合、部品識別情報には、当該イオン交換樹脂の型番を示す情報や個体を示すシリアルナンバー等が含まれてよい。また、部品詳細情報として、イオン樹脂とカチオン樹脂の混合比等の情報が含まれてよい。
【0030】
なお、上で挙げた部品識別情報および部品識別情報に含まれる部品詳細情報の例は一例であってこれらに限定されるものではない。また、部品詳細情報等は、IDタグに記録されず、代わりに部品管理装置40に予め格納され、部品管理装置40がIDタグから読み取った部品識別情報基づいて取得するような構成であってよい。部品管理装置40は、部品識別情報からその部品が推奨品であるか非推奨品であるかを判別する構成であってよい。
【0031】
図1Bは、実施の形態1による部品管理装置40の詳細を示すブロック図である。部品管理装置40は、IDタグであるICタグ1乃至3(31、32、33)から部品識別情報を読み取る識別情報読取部41と、読み取った部品識別情報からICタグ1乃至3(31、32、33)が付された部品1乃至3(21、22、23)の種類を判別する部品種類判別部42と、判別された部品の種類からコントローラの制御シーケンスや各種パラメータ等の設定を変更する必要があるか否かを判断する変更要否判断部43と、変更する必要があると判断した場合にコントローラ50に対して制御シーケンスや各種パラメータ等の設定の変更、および、その変更の内容を指示する変更指示部44とを有する。
【0032】
なお、識別情報読取部41は、定期的に、または、部品交換時に、部品1乃至3(21、22、23)に付されたICタグ1乃至3(31、32、33)から、部品識別情報を読み取るようにすればよい。
【0033】
図2は、部品管理装置40において行われる制御処理のフローチャートである。
【0034】
定期的に、または、部品交換時に、識別情報読取部41は、ICタグ1乃至3(31、32、33)から部品識別情報を読み取る(S101)。読み取られた部品識別情報は、部品種類判別部42へ送られる。
【0035】
部品種類判別部42は、部品識別情報からICタグ1乃至3(31、32、33)が付された部品1乃至3(21、22、23)の種類を判別する(S102)。当該判別のため、部品種類判別部42は、部品識別情報に含まれる部品の型番等のIDコードと、当該部品の種類との対応を記録したデータベースを備え、当該データベースから部品の種類を取得してよい。部品種類判別部42が判別した部品種類の情報は、変更要否判断部43へ送られる。
【0036】
変更要否判断部43は、部品種類の情報から、コントローラ50の設定を変更する必要があるか否かを判断する(S103)。変更要否判断部43は、部品の種類と、部品の仕様等との対応を記録したデータベースを備え、当該データベースからコントローラ50の制御シーケンスや各種パラメータ等の設定の内容を変更する必要があるか否かを判断すればよい。あるいは、部品識別情報に上述の部品詳細情報が含まれる場合には、変更要否判断部43は、ICタグから読み取った部品識別情報の部品詳細情報からコントローラ50の制御シーケンスや各種パラメータ等の設定の内容を変更する必要があるか否かを判断してもよい。
【0037】
変更要否判断部43が、コントローラ50の制御シーケンスや各種パラメータ等の設定の内容を変更する必要があると判断した場合(ステップS103における「YES」)、変更指示部44は、コントローラ50に対し、制御シーケンスや各種パラメータ等の設定の内容を変更する指示を送る(S104)。当該変更指示を受けたコントローラ50は、当該指示にもとづいて、制御シーケンスの変更等所定の設定内容の変更を実施する。
【0038】
変更要否判断部43が、制御シーケンス等の変更は不要であると判断すれば(ステップS103における「NO」)、変更指示部44は変更指示を出力せず、結果としてコントローラ50は制御シーケンス等の変更を行わない。この場合、コントローラ50は、現在設定されている制御シーケンスや設定内容を維持すればよい。あるいは、コントローラ50は、所定の通常制御シーケンスに復帰してもよい。
【0039】
工作機械の一例として、ワイヤ放電加工機における動作例を示す。ワイヤ放電加工機は、消耗部品としてワイヤ電極を使用する。ワイヤ放電加工機において、加工溝幅や最小コーナRは、ワイヤ電極径に依存して決定されるため、ユーザは、加工用途に応じてワイヤ電極を交換してその径を変更する必要がある。部品管理装置40は、ワイヤ電極の装着を認識すると、つまり、識別情報読取部41が当該ワイヤ電極の部品識別情報を読み取ると、部品種類判別部42においてワイヤ電極の種類を判別する。
【0040】
次に、変更要否判断部43は、データベース等から当該ワイヤ電極の仕様等を取得し、当該ワイヤ電極を適切に使用するためには、コントローラ50のワイヤ走行パラメータや加工条件等を変更する必要があると判断したとする。その場合には、変更指示部44が、コントローラ50に対し、制御シーケンスやワイヤ走行パラメータや加工条件等の設定を変更する指示を出力し、コントローラ50が当該指示にもとづいて制御シーケンス等の変更処理を行う。
【0041】
このように、実施の形態1による部品管理装置40を有する工作機械においては、工作機械に装着される部品が変更された場合には、装着された部品に付されたICタグの部品識別情報に基づいてコントローラ50の各種設定が自動的に変更される。そのため、ユーザは、工作機械に装着される部品を交換した場合であっても、手動でコントローラ50の設定を変更する必要がない。また、ユーザの手動による変更に伴う設定ミスや設定忘れが無くなり、加工不良を防止することが可能である。これらの作用により、ユーザの利便性は格段に向上される。
【0042】
また、工作機械の消耗部品としては、上記ワイヤ電極の他にも、加工液をろ過するためのフィルタ(加工液フィルタ)や、加工液の比抵抗値を一定以上に制御するためのイオン交換樹脂などがあげられる。これら消耗部品は、一般的には複数種類が存在し、それぞれに応じて適切な加工機(工作機械)の動作制御が必要となる。
【0043】
例えば、加工液フィルタには、メッシュ径や外装、内部構造や材質に応じて、加工機からの加工液供給圧力を変化させたり、想定寿命の導出過程を変更する制御が必要となる。また、イオン交換樹脂にも、アニオン樹脂とカチオン樹脂の混合比の異なる種類が存在し、それぞれに応じて比抵抗制御アルゴリズムを切り替えることにより、最善の結果が得られる。通常、このような適切な制御シーケンスは、推奨された消耗部品(推奨品)に最適化されているため、非推奨の消耗部品が使用された場合、工作機械の加工性能の保証が困難となる。この様な場合には、つまり、部品管理装置40が装着された部品が非推奨の部品であると認識した場合には、部品管理装置40は、推奨品の部品に最適化され加工性能を最大限に維持するために特別に設計された制御シーケンスを停止し、標準的な制御シーケンスに切り替えるようにコントローラ50に変更指示を送ることができる。
【0044】
従来の工作機械においては、装着された消耗部品が推奨品であるか否かを判別することができなかったが、本実施の形態による部品管理装置40を備えた工作機械においては、的確に判断することができ、さらに、消耗部品の種別に応じた適切な制御シーケンスに自動的に切り替えることができる。そのため、消耗部品が推奨品/非推奨品であるかを問わず、工作機械は、最大限の加工性能を発揮することができる。
【0045】
なお、非推奨の消耗部品に別の推奨部品のICタグが故意に付された場合には、上記のようなシステムにおいても誤判断を防ぐことができない。その場合には、推奨部品に付されたICタグを取り外そうとしたときに、ICタグに作用する外力によってICタグが容易に破損する構造とし、取り外されたICタグを再度別の部品(非推奨品等)に付されてもICタグが機能しないようにICタグおよびその取付け部を構成することで、問題の発生を防ぐことができる。
【0046】
また、従来の切削加工機や放電加工機などにおいて多数の工具や電極を使い分けて加工が行われる場合、これら多数の工具や電極は、部品格納部において各格納スペースに付された格納番号と工具や電極の部品識別情報とを対応付けするため、操作者(ユーザ)がコントローラに情報を入力するなどの手動作業が必要であった。本実施の形態による部品管理装置40を備える工作機械(10、50)では、部品格納部11に部品3(23)(工具や電極等)を装着すれば、部品管理装置40が部品3(23)に付されたICタグ3(33)から部品識別情報を読み取り、部品格納部11に格納された部品3(23)の種類を認識するため、操作者(ユーザ)が手動で割付作業を実施する必要が無くなる。さらに、部品格納部11の格納スペースが不足することにより、ユーザが、部品格納部11に格納された使用済みの工具や電極から新規の工具や電極に交換した場合でも、操作者(ユーザ)による手動でのコントローラ50の設定変更を要さずに、各格納スペースに付された格納番号と工具や電極との対応付けの情報が更新されるため、設定ミスや設定忘れにともなう加工不良を防止することができ、ユーザの利便性が向上される。
【0047】
本実施の形態による部品管理システムは、部品に付されたIDタグと、IDタグに記録された部品識別情報を読み込む手段を備え、工作機械等の機器に接続可能な部品管理装置を有する。当該部品管理装置は、部品識別情報にもとづき、工作機械の制御シーケンスや各種パラメータ等の設定の内容を変更することができる。
【0048】
このように、本実施の形態による部品管理システムによれば、部品識別情報にもとづいて工作機械の制御シーケンス等を自動的に切り替えることができるため、消耗部品や交換部品を取り替える際に、部品の種類、用途毎にユーザが手動で工作機械の設定等を変更する必要がなくなり、ユーザの手動設定変更入力に起因した設定忘れや設定ミスが無くなり、加工不良を防止する効果がある。また、非推奨の消耗部品等が故意に装着された場合には、工作機械は、制御シーケンスを適切な制御シーケンスに自動的に変更することにより、故障を防止しつつ、その加工性能を最大限に発揮することができる。
【0049】
また、IDタグを、外力により容易に破損する構造とすることにより、第3者による模造を防止し、模造された消耗部品の使用に伴う機械誤動作や機械故障を防止することができる効果を有する。
【0050】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2による部品管理装置のブロック図である。実施の形態1と同様の構成については同様の参照数字を付し、その説明を適宜省略する。
【0051】
実施の形態2による部品管理システムにおいては、IDタグとして、RFIDのような情報を読み書きすることが可能なICタグを使用する。また、部品管理装置40wは、ICタグ1(31)から部品識別情報を読み取り、かつ、ICタグ1(31)が付された部品(不図示)の寿命判断のための指標である寿命指標情報(使用履歴情報)を部品識別情報の一部としてICタグ1(31)へ適宜書き込むことができる識別情報読取/書込部41wを備える。識別情報読取/書込部41wは、例えば、RFIDリーダ・ライタである。
【0052】
また、部品管理装置40wは、実施の形態1による部品管理装置40と同等の構成に加え、さらに、定期的にICタグから部品識別情報を読み取って部品の交換や取り替えが行われた否かを読み取った部品識別情報にもとづいて判別する交換有無判別部45と、ICタグに記録された部品識別情報(寿命指標情報を含む。)や内蔵する他のデータベース(不図示)等からの情報をもとに装着中の部品に関する使用履歴等の情報(装着部品情報)を蓄積する装着部品情報データベース(DB)46と、装着部品情報に含まれる使用履歴等の情報等から装着中の部品の稼働時間や残余寿命を導出してコントローラ50へ出力する通知部47と、定期的にICタグの部品識別情報の寿命指標情報(使用履歴情報)を更新する識別情報更新部48とを有する。
【0053】
また、交換有無判別部45は、装着中の部品が新規品(未使用品)であるか、または、既に部品管理装置40が接続されている工作機械もしくはその他の工作機械において使用されたことがある部品であるかを、部品識別情報にもとづいて(例えば、部品識別情報の寿命指標情報の内容、または、寿命指標情報の有無にもとづいて)判断し、装着部品情報の一部として装着部品情報DB46に蓄積することができる。装着部品情報DB46の装着部品情報は、例えば、交換有無判別部45が部品の交換等を認識するたびに更新されてよい。また、装着部品情報DB46の装着部品情報は、工作機械が一定期間稼働するたびに更新されてよい。
【0054】
ICタグに記録される寿命指標情報には、ICタグが付された部品が装着された工作機械のシリアルナンバー、部品が装着された日時、部品が最後に使用された日時(最終使用日時)、部品交換後(部品装着後)の工作機械累積電源オン時間、部品が加工に使用された時間(累積加工時間)、部品である加工液ろ過フィルタに通水された時間(累積通水時間)、同加工液ろ過フィルタの最終液圧、などの少なくともいずれか1つが含まれてよく、また、これらに限定されない。寿命指標情報は、部品の残余寿命を判断するうえで有用な情報であればよい。また、寿命指標情報は、部品の種類に応じて内容を変更してもよい。寿命指標情報のICタグへの書き込みは、識別情報更新部48が定期的に実施すればよい。
【0055】
図4は、部品管理装置40wにおいて行われる処理のフローチャートである。なお、部品管理装置40wは、図2に示した処理と独立して並列的に図4に示す処理を実行することができる。
【0056】
部品管理装置40wは、定期的に、つまり、所定の定期的部品識別情報読取タイミングが来ると、ICタグ1(31)から部品識別情報を読み取る(S201およびS202)。読み取られた部品識別情報は、交換有無判別部45へ送られる。
【0057】
なお、時間的に隣接する定期的部品識別情報読取タイミングの時間間隔は、短いことが好ましい。当該時間間隔が短ければ短いほど、部品管理装置40wは、部品交換を直ちに認識することができるようになる。具体的な時間間隔は、工作機械の使用態様等により変化してよく、部品管理装置40wが部品交換を遅滞なく認識することができる程度の時間間隔にすればよい。
【0058】
交換有無判別部45は、装着部品情報DB46等を参照し、部品の交換が行われたか否かを判別する(S203)。
【0059】
部品の交換があったと判別されると(S203における「YES」)、交換有無判別部45は、装着中の部品にかかる最新の情報(使用履歴の情報等を含んだ装着部品情報)を装着部品情報DB46へ記録する(S204)。
【0060】
そして、通知部47は、装着中の部品の装着部品情報の使用履歴情報等から装着中の部品の稼働時間や残余寿命を導出してコントローラ50へ出力する(S205)。コントローラ50は、通知部47から受けた稼働時間や残余寿命の情報にもとづき、ユーザが認識可能な態様で装着中の部品の稼働時間や残余寿命を出力する。例えば、コントローラ50は、工作機械の保守画面(不図示)に装着中の部品の稼働時間や残余寿命を表示する。
【0061】
また、部品管理装置40wは、定期的に、つまり、所定の定期的部品識別情報書込タイミングが来ると、ICタグ1(31)へ最新の部品識別情報を書き込む(S206およびS207)。部品管理装置40wは、装着中の部品の寿命指標情報(使用履歴情報)等を更新する。
【0062】
図5は、図4のステップS204、すなわち、装着された部品にかかる装着部品情報DB46のレコードの更新処理の詳細を示すフローチャートである。
【0063】
交換有無判別部45は、装着された部品の(ICタグの部品識別情報の)寿命指標情報にもとづき、当該部品は、未使用品であるか否かを判断する(S2041)。
【0064】
装着中の部品が未使用品であれば(ステップS2041における「YES」)、交換有無判別部45は、装着中の部品にかかる装着部品情報DB46のレコードの使用履歴情報を初期化する(S2042)。
【0065】
装着中の部品が既に自装置が接続された工作機械もしくは他の工作機械において使用されたことがある部品であれば(ステップS2041における「NO」)、交換有無判別部45は、ステップS202(図4)において読み取られた部品識別情報の寿命指標情報(使用履歴情報)等に基づいて、装着部品情報DB46の当該装着中の部品のレコードの使用履歴情報を記録する(S2043)。
【0066】
このように、実施の形態1による部品管理装置40wを有する工作機械においては、消耗部品を、別個独立した複数の工作機械で兼用する場合においても、消耗部品のトータル使用時間や、部品が装着された工作機械の情報などの情報が、ICタグにおいて部品識別情報の一部(寿命指標情報(使用履歴情報))として蓄積され、常に、最新の状態に保たれる。そのため、当該消耗部品の残余寿命を判断する際に誤判断が発生しない。
【0067】
例えば、ある消耗部品が工作機械Aで使用され、次に、工作機械Bで使用され、再び、工作機械Aで使用されたような場合であっても、工作機械Aに接続された部品管理装置40wは、当該消耗部品が工作機械AおよびBで使用された事実を把握することができ、同時に使用された累積時間等、当該消耗部品の残余寿命を導出する上で有用な情報を取得することができるため、正確な残余寿命判断をすることができる。
【0068】
このように、本実施の形態による部品管理システムは、部品に付され、情報の読み書きが可能なIDタグと、IDタグに対して部品識別情報の読み取りおよび書き込みを行う手段を備え、工作機械等に接続可能な部品管理装置を有する。当該部品管理装置は、工作機械に部品が装着されると、直ちに、当該装着された部品に付されたIDタグから部品識別情報を読み取って、装着された部品の稼働時間や残余寿命をユーザに通知することができるとともに、IDタグに記録された部品識別情報を常に最新の状態に保つようにIDタグに対して部品識別情報の書き込みを行う。
【0069】
本実施の形態による部品管理システムによれば、部品交換後直ちに部品管理装置がIDタグの部品識別情報を読み込み、また、工作機械稼働中には、定期的に工作機械の情報等を部品識別情報としてIDタグに書き込むことにより、一の消耗部品が複数の機器で兼用されるような場合でも、部品管理装置が消耗部品の最新の使用履歴等状態を的確に把握して、正確な残余寿命判断が可能になる。
【0070】
部品識別情報の一部としてIDタグに書き込まれる寿命指標情報(使用履歴情報)は、工作機械のシリアルナンバー、部品の装着日時、部品の最終使用日時、部品交換後の工作機械累積電源オン時間、累積加工時間、累積通水時間、最終液圧などを含んでよい。その場合には、部品管理装置は、当該消耗部品の残余寿命を正確に判断することできる。また、部品サプライヤが、使用済みの消耗部品をリサイクル品として回収する場合には、当該消耗部品のトレーサビリティ管理や消耗部品を使用したユーザ毎に消耗部品の実際の寿命を把握することができるという効果を有する。
【0071】
本実施の形態による部品管理装置40wは、IDタグから部品識別情報を読み取り、読み取った部品識別情報から当該IDタグが付された部品が未使用品であるか否かを判断することができる。部品管理装置40wは、当該部品が未使用品である場合にはコントローラ50の保守画面に表示される情報を初期化し、当該部品が使用済み品である場合には、可動時間や残余寿命を工作機械のコントローラ50の保守画面等に表示させることができる。
【0072】
本実施の形態による部品管理装置40wは、部品の稼働時間や残余寿命を工作機械のコントローラ50の保守画面等に表示させることができるので、ユーザは、常時、消耗部品の正確な残余寿命を把握することができ、交換用の消耗部品を事前に準備できるため、消耗部品交換に伴う機械停止時間を最小限にすることができ、ユーザの利便性の向上に資する。
【0073】
実施の形態1および2の部品管理装置の変形例1.
変形例1は、部品に付されたICタグが悪環境下にある場合の対策例である。IDタグとして使用されるRFIDが、UHF帯の電波を使用するタイプである場合、RFIDに水か付着する環境においては正確な通信が困難になる場合がある。
【0074】
工作機械の代表的な消耗部品である加工液フィルタは、常時液体が通水される。そのため、加工液フィルタの表面に付されたRFIDの表面に水などの液体が接触する可能性がある。図6は、そのような状況における部品管理装置−RFID間通信の処理のフローチャートである。
【0075】
部品管理装置とRFIDとの間の情報の送受(RFIDの読み書き)は定期的に行われる。部品管理装置は、情報の送受を実行する際、部品である加工液フィルタに加工液が通水されている状態にあるか否かを判断する(S301)。
【0076】
非通水状態である場合(ステップS301における「NO」)、分品管理装置とRFIDとの間の通信に問題は無いため、ICタグ(RFID)への情報の読み書きが実行される(S307)。一方、部品である加工液フィルタに加工液が通水されている状態である場合(ステップS301における「YES」)、部品管理装置は、通信期間にわたって加工液の通水を遮断してよいか否かの判断を行う(S302)。
【0077】
一般的に通信期間は短時間であるため、わずかな通水時間の遮断が工作機械の運転に影響を及ばすことはほとんど無い。問題ないと判断した場合には(ステップS302における「YES」)、部品管理装置は、工作機械のコントローラに対し加工液の通水遮断を指示し、加工液の通水が遮断される(S304)。そして、加工液の通水が遮断されている状態で、部品管理装置は、ICタグ(RFID)への情報読み書きを行う(S305)。通信が完了すると、部品管理装置は、工作機械のコントローラに対し加工液の通水を復帰させる指示を送る。そして、工作機械は、再び、加工液フィルタへの通水を行う(S306)。
【0078】
他方、加工液の通水を遮断することが不可能である場合(ステップS302における「NO」)、部品管理装置は、現タイミングでRFIDとの通信を行わない(S303)以上のシーケンスにより、部品管理装置は、水などが付着する環境下で使用される消耗部品に対しても、安定した部品管理装置−IDタグ間の通信を確保する。
【0079】
このように、本変形例による部品管理装置は、IDタグが水等の液体に曝される環境にある部品については、定期的に水等の液体の流れを遮断して通信し通信後に液体の流れを回復させる制御シーケンスを備える。なお、図6は、部品例として加工液フィルタを採って説明したが、その他の部品、および、その他の通信環境を悪化させる要因についても同様である。つまり、部品管理装置は、通信期間のみ通信環境を改善させることが可能であるかどうかを判断し、可能であれば、通信機関のみ通信環境を改善して通信を行うことができる。
【0080】
変形例による部品管理装置は、通信環境が悪い状態にあるIDタグとの通信において、通信期間のみ当該通信環境を改善してから通信を実施することができる。そのため、通信距離は大きいものの、通信環境による影響を受けやすいICタグ(RFID等)を使用しても、部品管理装置は、安定してICタグとの通信を行うことができる。
【0081】
実施の形態1および2の部品管理装置の変形例2.
変形例2は、部品管理装置−ICタグ間の誤通信を防止するための対策例である。部品管理装置とICタグとの間の通信を無線通信で的確に行うためには、部品管理装置に電波受信用のアンテナを接続する必要がある。
【0082】
通信距離の長い通信方式を採用したICタグを使用する場合、部品管理装置は、1つのアンテナを備えることで、複数のICタグとの通信が可能である。しかしながら、通信距離が長いために、工作機械本体外であってその近傍に仮置きしている消耗部品や、隣接する他の工作機械に装着されている消耗部品に付されたICタグとも通信し、装着・非装着を誤判断する恐れがある。この問題を解決する方策としては、アンテナ形状を小さくして通信可能な範囲を限定したり、ICタグの通信形式を変更したりすることが考えられる。
【0083】
図7は、本変形例による部品管理装置40(40w)のブロック図である。上記問題を解決するため、本変形例による部品管理装置40(40w)では、消耗部品が装着される位置や、部品格納部11等の近傍にアンテナ1乃至3(61、62、63)を配置する。アンテナ1乃至3を介したICタグとの通信可能範囲は、それぞれ、500ミリメートル程度以下にすることが望ましい。また、アンテナ1乃至3(61、62、63)の位置は、部品1乃至3(21、22、23)の取付位置および格納位置に応じて可変であってよい。このように構成される本変形例においては、所定の位置に存在するICタグ1乃至3(31、32、33)のみと適格な通信を行うことができ、工作機械本体外に位置する消耗部品を誤検出することを防止することができる。
【0084】
実施の形態3.
実施の形態3は、リサイクル可能な消耗部品を回収してリサイクル工程を実施し、再び消耗部品をユーザへ提供するサプライヤ(メーカーやサービス会社など)における部品管理システムについて説明する。サプライヤは、本システムを利用することで、ユーザに対し高付加価値のサービスを提供することが可能となる。
【0085】
工作機械に装着され使用された消耗部品に読み書き可能なICタグが付されていた場合、ICタグの部品識別情報には、ユーザの部品管理装置40wとの定期的な通信により、寿命指標情報(使用履歴情報)として、最新の使用情報や、工作機械の情報等が記録されている。リサイクルのために当該部品を回収したサプライヤは、使用済み消耗部品のICタグから部品識別情報を読み取り、消耗部品の実使用状況や工作機械の情報を入手することができる。これらの情報は、データベースに蓄積されることにより、顧客ごとの消耗部品情報管理や、顧客の環境毎の消耗部品寿命の管理や、消耗部品のトレーサビリティ管理に用いられる。
【0086】
図8は、サプライヤにおける部品管理システムのブロック図である。サプライヤの部品管理システムは、部品リサイクル装置80に接続されるサプライヤ側部品管理装置70を有する。但、サプライヤ側部品管理装置70と部品リサイクル装置80とは必ずしも接続されなくともよい。なお、本システムは、実施の形態2による部品管理装置40wと協働することも可能であり、そうすることで、ユーザに高付加価値のサービスを提供するための部品管理システムを構成することができる。
【0087】
サプライヤ側部品管理装置70は、リサイクル可能な消耗部品1(21)に付されたICタグ31の部品識別情報を読み書き可能な部品識別情報読取/書込部71と、読み取った部品識別情報から部品1(21)の使用状況等の情報を抽出して使用状況情報として蓄積する部品使用状況データベース(DB)72と、部品1(21)に対するリサイクル工程が行われる際にICタグ1(31)の部品識別情報をクリア(初期化)する部品識別情報初期化部73と、部品使用状況DB72に蓄積された使用状況情報にもとづいてユーザの部品使用状況を分析する使用状況分析部74と、使用状況分析部74が行った分析結果をもとに、ユーザごとにまとめた情報を顧客情報として蓄積する顧客情報データベース(DB)75と、顧客情報DB75に蓄積された顧客情報にもとづいてユーザに提供するべきサービスの内容をサービス実行指示として出力するサービス実行指示出力部76と、を有する。また、サプライヤ側部品管理装置70は、サービス実行指示の内容をサプライヤのスタッフに示す出力装置77(ディスプレイ等)と接続されてもよい。
【0088】
図9は、サプライヤ側部品管理装置70、読み書き可能なIDタグ(ICタグ)、および、ユーザの工作機械に接続された部品管理装置40wとで構成される部品管理システムの概念図である。以下、同図を参照して実施の形態3による部品管理システムについて説明する。ここでは、サプライヤに回収された部品をワイヤ放電加工機用の加工液ろ過フィルタとして説明する。
【0089】
サプライヤは、ユーザが使用した消耗部品1(21)をユーザから回収し、当該部品に対し部品リサイクル装置80によるリサイクル工程を実施する。このとき、サプライヤ側部品管理装置70の部品識別情報読取/書込部71は、リサイクルのために回収された部品1に付されたICタグ1から部品識別情報を読み取る。読み取られた部品識別情報には、ユーザの部品管理装置40wがICタグ1へ書き込んだ情報(寿命指標情報(使用履歴情報))が含まれている。寿命指標情報(使用履歴情報)には、具体的には、図9に示すように部品1(21)を使用した工作機械のシリアルナンバー、部品が工作機械に装着された日時や最後に使用された日時、工作機械が待機状態(準備ON)にあった時間、工作機械が操業状態(加工ON)にあった時間、通水時間、最終液圧、その他の工作機械の情報、が含まれてよい。
【0090】
部品識別情報がICタグから読み取られると、部品識別情報初期化部73は、部品識別情報読取/書込部71に指示を送ってICタグの部品識別情報をクリア(初期化)する。それと同時に部品リサイクル装置80は、部品1に対してリサイクル工程を実施する。リサイクル工程が完了すると、部品識別情報読取/書込部71は、消耗部品の再出荷の日時の情報を新たな部品識別情報としてICタグに書き込む。
【0091】
また、サプライヤ側部品管理装置70は、読み取った部品識別情報から当該部品についての使用状況をまとめ、使用状況情報として部品使用状況DB72に蓄積する。使用状況分析部74は、部品使用状況DB72に蓄積された使用状況情報を用いて、消耗部品の実際の寿命を把握したり、次回の部品交換の日程を予測してサポート計画を策定したり、消耗部品の情報を当該部品を使用した顧客と関係づけて顧客情報として顧客情報DB75に蓄積する。また、使用状況分析部74は、とくに部品の実寿命が短かかった顧客に関する情報を抽出することもできる。
【0092】
サービス実行指示出力部76は、顧客情報DB75に蓄積された顧客情報にもとづき、サービス実行指示を生成し出力する。サプライヤのスタッフは、当該サービス実行指示に基づいてサービスを実施することで、顧客(工作機械ユーザ)に対し高付加価値のサービスを提供することが可能になる。
【0093】
サービス実行指示には、例えば、使用状況分析部74が予測した次回部品交換日程が近づくと顧客に消耗部品の回収や提供の要否を確認する指示や、とくに部品の実寿命が短かった顧客について、顧客訪問や現地調査を行い消耗部品の実寿命の短期化に対する対策を提案する指示等が含まれる。
【0094】
このように、本実施の形態の部品管理システムは、回収した部品に付されたIDタグに記録された部品識別情報の寿命指標情報(使用履歴情報)に基づき、出荷した部品のトレーサビリティ管理やユーザ毎の実寿命の把握等を行うことにより、必要に応じて顧客毎の個別対策を実施可能となり、顧客満足度を向上させる効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本実施の形態は、工作機械等の機器で用いられる部品を管理するためのシステム等を提供する。本システム等は、ユーザの利便性を向上させることができ、有用である。
【符号の説明】
【0096】
10 工作機械本体 11 部品格納部
21 部品1 22 部品2
23 部品3 31 ICタグ1
32 ICタグ2 33 ICタグ3
40 部品管理装置(ユーザ側) 41 識別情報読取部
41w 識別情報読取/書込部 42 部品種類判別部
43 変更要否判断部 44 変更指示部
45 交換有無判別部 46 装着部品情報データベース
47 通知部 48 部品識別情報更新部
50 工作機械コントローラ 61 アンテナ1
62 アンテナ2 63 アンテナ3
70 サプライヤ側部品管理装置 71 部品識別情報読取/書込部
72 部品使用状況データベース 73 部品識別情報初期化部
74 使用状況分析部 75 顧客情報データベース
76 サービス実行指示出力部 77 出力装置
80 部品リサイクル装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラの制御下で稼働する機器に装着して使用される部品を管理する部品管理装置であって、
前記部品に付された部品識別子から部品識別情報を読み取る識別情報読取部と、
前記部品識別情報にもとづいて、前記コントローラの前記機器に対する制御の設定を変更する指示を前記コントローラへ出力する変更指示部と、を有する部品管理装置。
【請求項2】
さらに、前記部品識別子に記録された部品識別情報を更新する識別情報書込部を有し、
前記識別情報書込部は、前記部品の使用履歴を前記部品識別子の部品識別情報に記録することで前記部品識別情報を更新する、請求項1に記載の部品管理装置。
【請求項3】
さらに、前記部品識別情報にもとづいて前記部品の残余寿命を導出して前記コントローラに対して残余寿命情報として出力する通知部を有する、請求項2に記載の部品管理装置。
【請求項4】
前記識別情報書込部は、前記部品が装着された前記機器のシリアルナンバー、前記部品が前記機器に装着された日時、前記部品が最後に使用された日時、前記部品が装着された後の前記機器の累積電源オン時間、前記部品が機器において使用された時間、前記部品に通水された時間、前記部品に作用した最終液圧、の少なくともいずれか1つを、前記部品の使用履歴として前記部品識別子に書き込む、請求項2に記載の部品管理装置。
【請求項5】
前記部品識別情報にもとづいて前記部品が未使用品であるか否かを判別する、請求項2に記載の部品管理装置。
【請求項6】
前記部品識別子は、RFIDであり、
前記識別情報読取部または前記識別情報書込部が、前記RFIDと通信を行う期間において前記通信にかかる通信環境を改善するための動作を前記機器に実行させる指示を前記コントローラに出力する、請求項2に記載の部品管理装置。
【請求項7】
前記部品識別子は、無線通信可能なICタグであり、
前記部品管理装置は、前記ICタグとの通信のためのアンテナを備え、
前記アンテナは、所定の位置に配され、前記ICタグとの通信可能距離が500ミリメートル以下である、請求項1に記載の部品管理装置。
【請求項8】
コントローラの制御下で稼働する機器に装着して使用される部品に取付可能であり、当該部品を識別するための情報である部品識別情報を保持可能な部品識別子と、
前記部品を管理する部品管理装置であって、前記部品識別子から前記部品識別情報を読み取る識別情報読取部と、前記部品識別情報にもとづいて前記コントローラの前記機器に対する制御の設定を変更する変更指示部と、を有する第1部品管理装置と、を有する部品管理システム。
【請求項9】
前記部品識別子は、前記部品に付された状態において前記部品から取り外す外力が作用することにより破損し、前記識別情報読取部が前記部品識別子から前記部品識別情報を読み取ることができない状態に変化する、請求項8に記載の部品管理システム。
【請求項10】
前記部品管理装置は、さらに、前記部品識別子に記録された部品識別情報を更新する識別情報書込部を有し、前記識別情報書込部は、前記部品の使用履歴を前記部品識別子の部品識別情報に記録することができ、
前記部品管理システムは、前記部品識別子から前記使用履歴を読み取って、読み取った使用履歴に基づいて、前記機器のユーザに提供されるサービスの内容を決定する第2部品管理装置を有する、請求項8に記載の部品管理システム。
【請求項11】
コントローラの制御下で稼働する機器に装着して使用される部品を管理する部品管理装置がする部品管理方法であって、
識別情報読取部が、前記部品に付された部品識別子から部品識別情報を読み取るステップと、
変更指示部が、前記部品識別情報にもとづいて、前記コントローラの前記機器に対する制御の設定を変更する指示を前記コントローラへ出力するステップと、を有する部品管理方法。
【請求項12】
機器を制御して当該機器稼働させるためのコントローラのコンピュータが実行可能な部品管理プログラムであって、前記コンピュータに、
前記コントローラに接続された識別情報読取部に、前記機器に装着して使用される部品に付された部品識別子から部品識別情報を読み取らせるステップと、
前記部品識別情報にもとづいて、前記コントローラの前記機器に対する制御の設定内容を変更するステップと、を実行させるための部品管理プログラム。
【請求項13】
コントローラの制御下で稼働する工作機械であって、
コントローラと、
工作機械本体と、
前記工作機械本体に装着して使用される部品に付された部品識別子から部品識別情報を読み取る識別情報読取部と、前記部品識別情報にもとづいて、前記コントローラの制御の設定を変更する指示を前記コントローラへ出力する変更指示部と、を備えた部品管理装置と、を有する工作機械。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−48287(P2012−48287A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187014(P2010−187014)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】