説明

部材を製造するための被覆方法および被覆装置、ならびに熱交換器およびその熱交換器の使用

【課題】 部材を製造するための被覆方法および被覆装置、ならびに熱交換器およびその熱交換器の使用を提供する。
【解決手段】 本発明は、部材、特に流体案内部を製造するための被覆方法、特に、熱交換器(1)、および/またはその囲まれた流体案内部の部材を製造するための被覆方法に関する。前記部材が、被覆のために設けられている少なくとも1つの面、特に内面を有する。被覆方法は、面を有する部材を設けるステップと、被覆形成中に、被覆材料を形成しおよび/または被覆材料を含む被覆流体(13)を少なくとも面に塗布し、特に流すことにより、面を被覆するステップと、部材の運動、特に回転運動を制御することによって、被覆を均一化するステップと、温度を上昇させて部材を乾燥するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆のために設けられている少なくとも1つの面を有する部材を製造するための被覆方法であって、面を有する部材を設けるステップと、被覆形成中に、被覆材料を形成しおよび/または被覆材料を含む被覆流体を少なくとも面に塗布することによって、面を被覆するステップとを含む被覆方法に関する。さらに、本発明は、被覆のために設けられている少なくとも1つの面を有する部材を製造するための被覆装置であって、被覆形成中に、被覆材料を形成しおよび/または被覆材料を含む被覆流体を少なくとも面に塗布することによって、面を被覆するための装置を備える被覆装置(構成、手段)に関する。さらに、本発明は、熱交換器およびその熱交換器の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、オットーエンジンまたはディーゼルエンジン等のような内燃機関には、多くの場合、過給システムが設けられており、この過給システムによって、充填流体、例えば、排ガス、または給気、または排ガスと給気の混合物等、ガスまたはガス混合物が、作動時の組み合わされた形態で内燃機関に供給される。このことは、内燃機関の出力の向上をもたらすだけでなく、燃費の低減および有害物質エミッションの低減ももたらす。内燃機関のこのような運転パラメータおよび他の運転パラメータを最適化するために、通常、圧力損失をできるだけ小さくしつつ、過給システムの圧縮により加熱された充填流体を冷却する必要がある。
【0003】
充填流体を冷却するために、通常、充填流体を露点以下の温度に冷却することができる充填流体熱交換器が使用される。熱交換器の他の用途についても、通常、冷却すべき流体の強力な冷却が行われる。このことは、通常、充填流体凝縮物の発生をもたらし、これらの充填流体凝縮物は、比較的攻撃的な化学的特性を有することがあり、特に、熱交換器の材料を腐食することがある。例えば、このことは、排ガス冷却器の場合、その材料の表面が、主に攻撃的な、特に腐食を生じさせる流体凝縮物にさらされている場合に当てはまる。
【0004】
したがって、熱交換器、特に充填流体熱交換器の抵抗の小さい面または表面には、保護層、特に腐食防止層を設けることができる。特に、このことは、内部空間の面、特に、作動時に流体を充填する熱交換器の空間の面に関する。
【0005】
さらに、排ガス、例えば煤の形態の充填流体の場合、冷却流体からの粒子の過度の付着を回避するために、保護層を使用することもできる。汚染物としても認識される熱交換器面の覆いは、熱伝達の低下、したがって、熱交換器内の圧力低下の増大をもたらすことがある。
【0006】
多数の被覆タイプおよび被覆方法が従来技術から知られている。
【0007】
例えば、管に通すべきモルによって熱交換器管の内部を被覆するための方法が、特許文献1から知られており、前記方法により、被覆樹脂を管の内部に塗布することができる。熱交換器にスプレー塗装を行うことが特許文献2から知られている。排ガス熱交換器の汚染を低減するために、排ガス熱交換器の内部を被覆することが、特許文献3から知られている。負圧を加えて熱交換器にSiO処理溶液が塗布されることによって、排ガス熱交換器にSiOガラス膜被覆を設けることが、特許文献4から知られている。貫通するプラスチックフィルムの形態で、熱交換器の管の内部を被覆することが、特許文献5から知られている。
【0008】
その他には、特許文献6等のニッケルベースの被覆、または亜鉛ベースの層が開示されており、これらの被覆または層は、特に、硬質半田付け工程の範囲で活性化することができる(例えば、特許文献7または特許文献8に記載)。硬質半田付けに耐性を有する被覆を塗布することが特許文献9から知られている。硬質半田層を塗布する他の方法は、例えば、特許文献10または特許文献11に開示されている。
【0009】
特許文献12には、金属または純アルミニウム製の別個の深絞り部によって、被覆を塗布することが開示されており、この層は、例えば予め、モデルの層として使用することができる。
【0010】
ナノテクノロジーに基づく被覆を用いるために、熱交換器に被覆流体を塗布することが、特許文献13または特許文献14のような出願から知られている。このような被覆は、例えば、ゾル−ゲル法の範囲でポリマ層を形成するために塗布することができる。特許文献14に記載されているように、対応する熱交換器にあるものを流入させ、次に、その熱交換器を空にし、その後、直接乾燥することができる。特許文献15には、熱交換器にSiO層を被覆するための方法が記載されており、この方法において、熱交換器がSiO処理溶液に浸漬されるかまたは熱交換器にSiO処理溶液が噴霧され、次に直接乾燥される。
【0011】
原則として、熱交換器の有利な被覆を提供するには、したがって、作動時に、攻撃的な、特に腐食性の媒体による熱交換器の表面の腐食に抵抗するだけでなく、このような熱交換器用の構造材料もより簡単またはより安価に構成するには、特に、最後に記載した被覆方法が適している。このようにして、例えば、有効な保護層において、ステンレス鋼の代わりに、アルミニウムを熱交換器の材料として使用することができる。さらに、このような材料の簡略化によって、重量節減およびコスト節減が期待される。上記製造方法は、依然として十分に確実ではないことが明らかである。特に、保護層の特性について特に確実に形成されている保護層を塗布できることが好ましい。特に、同じ形状の、および/または欠陥のないおよび/または密な被覆を使用すべきである。
【0012】
例えば、特許文献16には、改善された被覆方法が記載されており、この被覆方法において、熱交換器の内面に塗装が行われ、この場合、被覆された表面の塗装層の厚さは本質的に均一であり、内面は、空隙に塗料が詰まっていることにより独立している。新たに塗装された熱交換器を遠心分離機で遠心分離することによって、層の均一化が実現される。同様の浸漬によって、熱交換器の塗装を行うことができる。遠心力、遠心分離時間および塗料粘度の関数として、所望の層の厚さを調整することができる。また、このような制御方法は層の品質に関連してさらに改善するに足る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】韓国特許第20040063241号明細書
【特許文献2】特開昭63−148095号公報
【特許文献3】独国特許出願公開第102005061197A1号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第1012438A1号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第3228617A1号明細書
【特許文献6】G91120878.6号明細書
【特許文献7】独国特許発明第19617169C2号明細書
【特許文献8】国際公開第2003100337A2号パンフレット
【特許文献9】欧州特許第1817537B1号明細書
【特許文献10】独国特許出願公表第69033556T2号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第1906131A2号明細書
【特許文献12】独国特許出願公開第102004025621A1号明細書
【特許文献13】国際公開第2006/138394A2号パンフレット
【特許文献14】独国特許出願公開第102005043730A1号明細書
【特許文献15】独国特許出願公開第10124383A1号明細書
【特許文献16】欧州特許出願公開第0780162A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、部材、特に流体案内部の部材の特性を向上させつつ、被覆、特に保護層を比較的簡単に塗布することができる方法および装置を提供することである。特に、保護層は腐食防止層および/または汚染防止層として使用すべきである。上記課題は、特に、熱交換器の、および/またはその囲まれた流体案内部の部材の製造を考慮して解決する必要がある。特に、上記課題は、部材の内面を考慮して有利に解決する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の方法によれば、上記課題は、別のステップ、すなわち、
−部材の運動を制御することによって被覆を均一化するステップと、
−温度を上昇させて部材を乾燥するステップとが含まれる冒頭に述べた種類の被覆方法によって解決される。
【0016】
本発明では特に、温度の上昇中、室温の温度、好ましくは、塗布された被覆の乾燥を促進するのに適切な温度が意図されている。特に、被覆を硬化および/または燃焼させるのに適切な温度が用いられている。
【0017】
さらに、被覆形成中に、被覆すべき面に被覆流体が流されることが特に有利であることが証明された。特に、制御された運動は、制御された回転運動である。
【0018】
本発明は、すなわち、従来技術において、被覆を均一化する措置が知られているが、それにもかかわらず、この措置が不十分であるという考えに基づいている。本発明によって認識されるように、部材の運動を制御することによって被覆を均一化することと、温度を上昇させて部材を乾燥することを交互に調整する方法を規定すべきである。本発明は、面にあるものを塗布し、特に流すことによって面を被覆した後に、部材の均一化および乾燥が交互に調整して行われることを認識している。
【0019】
上記課題は、本発明の装置によれば、被覆装置に加えて、
−部材の運動を制御することによって被覆を均一化するための装置と、
−温度を上昇させて部材を乾燥するための装置とをさらに備える冒頭に述べた種類の被覆装置によって解決される。
【0020】
面を被覆するための装置は、特に流動装置として構成されている。被覆を均一化するための装置は、特に回転運動装置として構成されている。
【0021】
本発明の概念により、部材において、被覆工程中またはその後に、被覆材料の制御できない流出が全体的に防止される。むしろ、部材の被覆の均一化および均一な乾燥が調整して実現される。これにより最終的には、被覆の特に適切な品質、特に、均一なおよび/または欠陥のないおよび/または密な被覆が得られる。特に、本発明の概念によれば、不均一な層の厚さを形成するかまたは例えば気泡等の層の封入物を生じさせることが防止され、すなわち、部材の箇所が被覆されないことがほぼ防止される。これらの利点は、例えば、流れ案内要素が設けられた熱交換器管の内面等のような比較的複雑な3次元構造でも実現される。
【0022】
このような結果は、1つのみの均一化ステップまたは1つのみの乾燥ステップを提供する従来公知の被覆方法では、これまで達成することができなかった。
【0023】
本発明の有利な発展形態は、従属請求項から明らかであるべきであり、有利な方法で詳細に示されており、課題設定の範囲においておよび別の利点について、上記概念を実現すべきである。
【0024】
面を被覆するために、部材全体に被覆流体が塗布されることが特に有利であることが証明された。さらに、目的に応じて、面を被覆するために、部材の少なくとも1つの内部空間に被覆流体を塗布することが有利であることを証明することができる。特に必要に応じて、作動時に作動流体を適用すべき部材の空間に、被覆流体を塗布し、特に流すことを単に意図することもできる。
【0025】
流れ方向が逆にされおよび/または被覆流体が吸引される被覆ステップの範囲で、特に優れた被覆の結果が得られた。これにより、被覆流体の反応成分の空間的に異なる解放によって生じることがあるような相違を補正することができる。
【0026】
一般に、本発明の概念は、例えば、部材の浸漬、スプレー噴霧またはCVD被覆による部材の他の種類の塗布も可能にする。
【0027】
原則として、種々の形態の、例えば、樹脂の、塗料の、またはSiOを形成する材料の形態の被覆流体を形成することができる。例えば、亜鉛またはニッケルを形成する材料の形態の、被覆流体を含む材料等の金属被覆を形成する被覆流体も可能である。
【0028】
それに加えて、特に、腐食防止層および/または汚染防止層を形成するために、本発明の本概念の範囲において、エポキシ樹脂の形態の被覆流体が有利であることが証明された。PTFE粒子(ポリテトラフルオロエチレン粒子)が添加されているエポキシ樹脂が特に有利であることが証明された。
【0029】
均一化のために、特に回転運動が有利であることが証明された。特に、本発明の概念の範囲において、部材を遠心分離することにより、被覆を有利に実現することができる。一般に、可能な限り薄いにもかかわらず、均一かつ密な層の厚さが得られるように、運動の制御を構成することができる。特に有利には、このために、特に使用された被覆流体の調整において、回転数および/または回転時間を制御することができる。
【0030】
100〜300rpmの回転数の範囲の、特に、120〜200rpmの回転数の範囲の回転運動による均一化の場合において、特に適切な結果が達成されることが認識された。均一化のために、10秒〜10分の時間、特に、20秒〜60秒の時間の回転運動を実施した際に、特に有利な結果が得られた。目的に応じておよび層の厚さの制御下で、回転数および回転時間の調整を構成することができる。
【0031】
乾燥のために、提案された方法の範囲において、温度は、有利には、150℃〜300℃の温度に上昇させることができる。このことは特に保持温度に関する。目的に応じて、最低温度から保持温度までの温度推移を動的に行う試みをなすことができる。
【0032】
全体的に、乾燥ステップの範囲において、10分〜60分の時間にわたって、特に20分〜40分の時間にわたって、上昇した温度、特に保持温度を保持することができる。
【0033】
均一化の場合と同様に、乾燥に対しても、部材の運動、特に部材の回転運動が有利であり得る。全体的に、乾燥のための部材の回転周波数は、有利には、5〜100rpmの部材の回転数において、特に、20〜40rpmの回転数において、均一化のための部材の回転周波数未満であり得る。
【0034】
有利には、均一化および乾燥のための回転数および/または運動時間が適切に交互に調整されている。
【0035】
有利には、均一化および/または乾燥のために、軸を中心にまたは部材の軸方向に部材を回転させることができる。このようにして、特に、回転対称の部材において、部材の軸を中心とする回転運動を有利に実現することができる。例えば、完成した熱交換器等のより複雑な3次元構造では、部材の軸方向の回転運動が有利であることが証明された。全体的に、部材の開口部が半径方向外側に向いていることが有効であることが証明された。これによって、有利には、遠心力によって被覆流体の流出を制御することができる。
【0036】
本発明の特に好ましい発展形態の範囲において、乾燥および/または均一化のために、部材が揺動位置に保持されることが意図されており、この揺動位置は、部材の軸が水平位置に存在している部材の水平に向けられた位置とは異なる。特に、水平位置と揺動位置との間において、部材の揺動運動を例えば往復運動の形態で行うこともできる。好ましくは、作動時に作動流体を適用すべき部材の空間の方向において、揺動位置または揺動運動を得ることができる。言い換えれば、部材の回転運動と組み合わせた揺動位置および/または揺動運動により、比較的均一で、部材を完全に覆うにもかかわらず、十分に薄い層を得つつ、被覆流体の流出の制御を実現することができる。このような利点は、特に、被覆のための均一化ステップの範囲で得られる。有利には、乾燥ステップの範囲において、このような措置により、熱の影響で被覆材料が集積すること、したがって、被覆すべき面の箇所が覆われないことを防止することができる。
【0037】
さらに、本発明の概念は、本発明の概念による被覆方法および/または被覆装置によって製造された熱交換器を提供する。熱交換器は、一方の第1の流体と他方の第2の流体との間で熱交換を行うように構成されている。特に有利には、一方の排ガスおよび/または給気と他方の冷媒との間で熱交換を行うには、本方法および/または本装置に従って製造された熱交換器が適している。
【0038】
熱交換器は、特に、第1の流体と第2の流体とを互いに分離して熱交換するように案内するためのブロックを備え、このブロックは、第1の流体が貫流可能な複数の流路と、それらの流路を収容すると共に第2の流体が貫流可能な第1の室とを有する。有利には、熱交換器のハウジングは室および流路を収容する。
【0039】
特に有利には、本発明の概念による熱交換器は、使用の特許請求の範囲に記載されている使用の範囲で使用することができる。
【0040】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態について以下に説明する。これらの図面は、実施形態を必ずしも寸法通りに示しておらず、むしろ、説明に有用な図面は、概略化されたおよび/または僅かに変形された形態で作成されている。図面から直接認識可能な教示の補助については、関連する従来技術を参照されたい。この場合、本発明の概念を逸脱することなく、本実施形態の形態および詳細の種々の修正および変更を行うことができることを考慮すべきである。説明に、図面におよび請求項に開示される本発明の特徴は、本発明の発展形態について、単独でも任意の組み合わせでも重要であり得る。さらに、本発明の範囲には、説明、図面および/または請求項に開示される特徴の少なくとも2つからなる全ての組み合わせが含まれる。本発明の概念は、以下に図示および説明する好ましい実施形態の正確な形態または詳細に限定されず、あるいは請求項で請求される対象と比較して限定的である対象に限定されない。示される規定範囲において、上限値以内のものを限界値として開示することができ、任意に用いることができ、そして要求することができる。
【0041】
図面は、本発明の概念による被覆構成の特に好ましい実施形態を詳細に示している。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】被覆材料を含む被覆流体を熱交換器の内部空間に流すことによって熱交換器を被覆するための装置の図である。
【図2】被覆を均一化するための部材用の遠心分離機のような形態の好ましい装置の図である。
【図3】温度を上昇させて熱交換器を乾燥するための炉の形態の好ましい装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1〜図3に全体が示されている被覆装置(構成)100は、本発明の概念によれば、被覆形成中に面にあるものを流すことによって面を被覆するための装置10を備える。さらに、被覆構成100は、運動を制御することによって、本発明では遠心分離機によって部材の被覆を均一化するための図2に示した装置を備える。その上、被覆装置100は、温度を上昇させて部材を乾燥するための図3に詳細に示した装置30を備え、この装置30は、本発明では本質的に炉として形成されている。被覆装置100は、本実施形態の範囲において、熱交換器1を被覆するための被覆構成として構成されており、この場合、被覆すべき面は熱交換器1の内面の形態で形成されており、これらの面は、作動に応じた充填流体の使用において、流れに直接接触し、したがって、特に高い腐食傾向および/または汚染傾向にある。
【0044】
本発明では、図1の被覆装置10は、ソケット11.2および揺動ヘッド11.3を有する揺動コンソール11を備え、揺動ヘッド11.3は、予め設定された角度11.1で揺動させることができる。揺動ヘッド11.3には保持装置15が取り付けられており、この保持装置15は、それに保持ロッド16を固定するための固定部17を有する保持ロッド16を備える。保持ロッド16には接続板18が取り付けられており、この接続板18は、一方では、被覆流体用の流入ライン19.1および流出ライン19.2を有する流れライン19を接続するために使用される。他方では、流れライン19への接続中、接続板18には、被覆すべき部材として熱交換器1を取り付けることができる。このために、接続板18に部分的に取り付けられている対応するテンション装置18.1と18.2が使用される。
【0045】
必要に応じて、被覆流体の流出およびその他の方法の遅延を防止するために、流出する被覆流体が必要に応じて液槽12により収容されるように、揺動コンソール11が、流れライン19、保持板18および被覆すべき熱交換器1と共に液槽12に配置されている。本発明において、被覆流体は、PTFE粒子を添加したエポキシ樹脂の形態で形成されている。本方法を実施するために、被覆流体13は、流れライン19の流入ライン19.1に導入され、熱交換器1の内部空間に貫通案内され、流れライン19の流出ライン19.2を介して再び排出される。
【0046】
このようにして、作動状態全体で比較的攻撃的な充填流体にさらされる熱交換器1の内部空間、すなわち、特に、充填流体を案内する熱交換器1の流路には、被覆流体が流入される。必要に応じて、流入方向、すなわち流れ方向を逆にすることができる。このことは、被覆流体に関する参照番号13の二重矢印で示されている。すなわち、流入ライン19.1を流出ラインとして用いることもでき、一方、その場合には、同時に設けられた流出ライン19.2は流入ラインとして用いられる。これによって、熱交換器1の入口領域における被覆流体の過度の解放と被覆傾向の低下とを補償することができ、すなわち、その間に流れを逆にすることにより、熱交換器1の出口領域における被覆流体の過度の解放が今や阻止され、このことにより、熱交換器1の入口領域に向かう傾向が低下する。これにより、全体的に、熱交換器1内の全ての被覆経路にわたって、比較的均一な被覆特性を実現することができる。さらに、被覆領域の熱交換器1には超音波を印加することもでき、このことにより、欠陥のない比較的均一かつ優れた被覆の塗布が提供される。特に、例えば、被覆流体の過度の粘着または表面付着によって、詰まりまたは所望でない狭まりを生じさせることなく、比較的密な3次元構造を薄く被覆するために、超音波印加を用いることができる。
【0047】
図2は、被覆装置100の範囲において、安全ケージ20内に取り付けられた、被覆を均一化するための遠心分離機の形態の装置を示している。遠心分離機は、架台に取り付けられた回転モータ、特に電動モータ22を備え、このモータ22は、軸24を介してプロペラ25を駆動し、このプロペラ25のプロペラ軸には熱交換器1を軸方向に取り付けることができる。このようにして、プロペラの駆動中、熱交換器1に導入された被覆材料が遠心力の作用下で制御して流出される。20〜60秒の遠心分離時間において、本発明で設定された120〜220rpmの遠心分離機の回転数にわたって、層の厚さを正確に調整することにより、本発明では比較的厚い層が得られる。提案された被覆方法によって、最大5μmの層の厚さを問題なく実現することができる。それに加えて、有利には、異なる部材についても、回転数および回転時間をより大きく調整することができる。より厚い層について、回転数および回転時間が比較的小さく調整される。
【0048】
別の方法ステップでは、目標とする層の厚さに応じて、図3に示されている炉として形成された装置30内で、熱交換器1の乾燥が行われる。このために、装置30は、ソケット31.2および揺動ヘッド31.3を有する揺動コンソール31を備え、揺動ヘッドは所定の角度31.1で揺動させることができる。揺動ヘッド31.3には保持板32が取り付けられており、この保持板32は、一方では、モータ33を支持し、他方では、熱交換器1を保持するための、モータによって駆動可能なシャフト34を支持する。図3は、本発明において、第1の水平位置Iと、濃淡で示されている第2の揺動位置IIとで揺動コンソール31を使用して乾燥するための装置30を示している。第2の揺動位置IIの場合、被覆流体が、作動流体を適用すべき熱交換器1の空間の方向に逆流するように、熱交換器1が角度αだけ揺動されている。熱交換器1は、乾燥を行うために、水平位置Iにおいても揺動位置IIにおいても、装置30の炉35内に存在する。
【0049】
炉には加熱ライン36を介して熱気を供給することができ、この熱気37は空気加熱器38で加熱された。排気シャフト39を介して、熱気37を炉から上方に排出することができる。
【0050】
モータ33により駆動される軸34を用いた熱交換器1の回転と、位置Iから位置IIへの熱交換器1の対応する揺動運動とによって、本発明では特に、炉35内の熱の影響による被覆材料の集積が防止される。むしろ、均一化ステップの場合と同様に、乾燥ステップにおいても、熱交換器1を移動させることによって、均一かつ密な欠陥のない特に有利な熱交換器1の被覆が実現される。本実施形態自体によれば、このこと自体は、熱交換器1の流路の内部等のような比較的密で複雑な3次元内部構造が被覆される場合に保証されている。
【0051】
要約すると、本発明の概念は、部材を製造するための、特に、本発明に記載した熱交換器1、および/またはその囲まれた流体案内部の部材を製造するための被覆方法および被覆装置を提供する。部材、本発明では熱交換器1は、被覆のために設けられている少なくとも1つの面、本発明では内面を有する。被覆方法は、連続するステップ、すなわち、
−面を有する部材を設けるステップと、
−被覆形成中に、特に被覆構成100の被覆装置10によって、被覆材料を形成しおよび/または被覆材料を含む被覆流体を少なくとも面に塗布し、特に流すことにより、面を被覆するステップと、
−特に被覆構成100の均一化装置において、部材の運動、特に回転運動を制御することにより、被覆を均一化するステップと、
−特に被覆構成100の乾燥装置30において、温度を上昇させて部材を乾燥するステップとを含む。
【0052】
本発明に記載した実施形態の範囲において、均一化のために、20〜60秒の時間で120〜200rpmの回転を有する制御された回転運動が特に有利であることが証明された。均一化ステップで調整された20〜40rpmの回転数の回転運動による、20〜40分の時間の150〜300℃の乾燥により、熱交換器1の特に優れた被覆が得られる。
【符号の説明】
【0053】
1 熱交換器
3 揺動ヘッドの衝突点
10 被覆装置
11、31 揺動コンソール
11.1、31.1 角度
11.2、31.2 ソケット
11.3、31.3 揺動ヘッド
12 液槽
13 被覆流体
15 保持装置
16 保持ロッド
17 固定部
18、32 接続板、保持板
18.1、18.2 テンション装置
19 流れライン
19.1 流入ライン
19.2 流出ライン
20 安全ケージおよび収容容器
21 伝熱体
22 電動モータ
23 シャフト
24 軸
25 プロペラ
30 乾燥装置
33 モータ
34 シャフト
35 炉
36 加熱ライン
37 熱気
38 空気加熱器
39 排気シャフト
100 被覆装置
I 水平位置
II 揺動位置
α 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材、特に流体案内部を製造するための被覆方法、特に、熱交換器(1)、および/または熱交換器(1)の前記流体案内部を製造するための被覆方法であって、前記部材が、被覆のために設けられている少なくとも1つの面、特に内面を有し、
−前記面を有する前記部材を設けるステップと、
−被覆形成中に、被覆材料を形成しおよび/または該被覆材料を含む被覆流体(13)を少なくとも前記面に塗布し、特に流すことにより、前記面を被覆するステップと、
−前記部材の運動、特に回転運動を制御することによって、被覆を均一化するステップと、
−温度を上昇させて前記部材を乾燥するステップと、
を含む被覆方法。
【請求項2】
前記面を被覆するために、前記部材全体、特に、前記部材の少なくとも1つの内部空間、特に、作動時に作動流体を適用すべき前記部材の空間には、被覆流体(13)が塗布されることを特徴とする請求項1に記載の被覆方法。
【請求項3】
前記被覆のために、流れ方向が逆にされることを特徴とする請求項1または2に記載の被覆方法。
【請求項4】
前記被覆のために、被覆流体(13)が吸引されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の被覆方法。
【請求項5】
樹脂の、塗料の、SiOxを形成する材料の、あるいは亜鉛またはニッケルを形成する材料の形態の被覆流体(13)が使用されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の被覆方法。
【請求項6】
特にPTFE粒子を有するエポキシ樹脂の形態の被覆流体(13)が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の被覆方法。
【請求項7】
前記均一化のために、特に、層の厚さをできるだけ薄く調整する間、回転運動、特に遠心分離機の回転数および/または回転時間が制御されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の被覆方法。
【請求項8】
前記均一化のために、軸を中心にまたは前記部材の軸方向に回転運動が行われることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の被覆方法。
【請求項9】
前記均一化のために、回転運動が、100〜300rpmの回転数で、特に120〜200rpmの回転数で行われることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の被覆方法。
【請求項10】
前記均一化のために、10秒〜10分、特に20秒〜60秒の時間で回転運動が行われることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の被覆方法。
【請求項11】
前記乾燥のために、温度が燃焼温度の高さ、特に150〜300℃に上昇されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の被覆方法。
【請求項12】
前記乾燥のために、上昇した温度が10分〜60分、特に20分〜40分の時間保持されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の被覆方法。
【請求項13】
前記乾燥が、前記部材の制御された運動、特に回転運動中に行われることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の被覆方法。
【請求項14】
前記乾燥のために、前記部材の回転運動が軸を中心にまたは前記部材の軸方向に行われることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の被覆方法。
【請求項15】
前記乾燥のために、5〜100rpmの回転数、特に20〜40rpmの回転数を有する前記部材が得られることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の被覆方法。
【請求項16】
前記均一化のためにおよび/または前記乾燥のために、前記部材の制御された運動、特に前記部材の回転運動が、特に前記部材の揺動運動により前記部材の揺動位置において、好ましくは、作動時に作動流体を適用すべき前記部材の空間の方向に行われることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の被覆方法。
【請求項17】
部材、特に流体案内部を製造するための被覆装置、特に、熱交換器(1)、および/または熱交換器(1)の前記流体案内部を製造するための被覆構成(100)であって、前記部材が、被覆のために設けられている少なくとも1つの面、特に内面を有し、
−被覆形成中に、被覆材料を形成しおよび/または該被覆材料を含む被覆流体(13)を少なくとも前記面に塗布し、特に流すことにより、前記面を被覆するための装置(10)と、
−前記部材の運動、特に回転運動を制御することによって、被覆を均一化するための装置と、
−温度を上昇させて前記部材を乾燥するための装置(30)と、
を備える被覆装置(100)。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の被覆方法、および/または請求項17に記載の被覆装置(100)によって製造される熱交換器(1)であって、一方の第1の流体、特に排ガスおよび/または給気と、他方の第2の流体、特に冷媒との間で熱交換を行うための熱交換器(1)。
【請求項19】
前記第1の流体と前記第2の流体とを互いに分離して熱交換するように案内するためのブロックであって、前記第1の流体が貫流可能な複数の流路を有するブロックと、
前記流路を収容すると共に前記第2の流体が貫流可能な第1の室と、
前記室および前記流路が配置されているハウジングと、
を備える請求項18に記載の熱交換器(1)。
【請求項20】
高温熱交換器または低温熱交換器としての、請求項18または19に記載の熱交換器(1)の使用。
【請求項21】
自動車の内燃機関の排ガス循環系における排ガス冷却のための排ガス冷却器としての、請求項18または19に記載の熱交換器(1)の、特に排ガス熱交換器の使用。
【請求項22】
自動車の内部空間を加熱するための補助ヒータとしての、請求項18または19に記載の熱交換器(1)の、特に排ガス熱交換器の使用。
【請求項23】
自動車の内燃機関用の給気供給系で給気を直接的または間接的に冷却するための給気冷却器としての、請求項18または19に記載の熱交換器(1)の使用。
【請求項24】
特に、エンジンオイルおよび/またはトランスミッションオイルを冷却するためのオイルクーラとしての、請求項18または19に記載の熱交換器(1)の使用。
【請求項25】
自動車の空調装置の冷却剤回路または冷媒回路における冷却剤冷却器または冷媒冷却器、および/または冷却剤凝縮器または冷媒凝縮器としての、請求項18または19に記載の熱交換器(1)の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−142802(P2010−142802A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280622(P2009−280622)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(594042033)ベール ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー (222)
【Fターム(参考)】