説明

部材管理サーバおよび部材管理システム

【課題】積み重ねられて保管される鋼板等の部材を管理すること。
【解決手段】情報更新部22は、作業員が携帯する通信端末から部材保管を要求する部材保管要求並びに部材の識別情報、部材の属性情報、及び保管アドレスを受信した場合に、受信した識別情報に対応づけられる一連の情報を記憶部25に格納するとともに、記憶部25において、新たに格納した部材よりも上段に積まれている部材の情報が存在した場合には、それらの部材の段積みアドレスを1段ずつ増加させる部材管理サーバ10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、造船に使用される鋼板等の部材を管理する部材管理サーバおよび部材管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工場や倉庫等に置かれている部材を管理するシステムとして、特許文献1に開示される部材管理システムがある。
特許文献1には、散在する部材に無線タグを貼付し、この無線タグからの応答信号を複数の固定型無線基地により受信し、複数の固定型無線基地のうち、受信された応答信号が最も強い固定型無線基地を特定することで、検索対象とされている部材の置き場所の範囲を絞り込む技術が開示されている。
【特許文献1】特開2006−099255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、造船場等では、鋼板等の部材の保管場所の面積を小さくしたいなどの要請から任意に積み重ねて保管することが通常行われている。また、建造期間が長く同時に複数の建造しているため、鋼板等の部材は船毎に一括購入による固定資産税の無駄な増加を軽減する理由から、分割購入されているために納入時期も種類・数量もまちまちである。このため、鋼板等の部材の積み重ね方も様々であり、例えば、新たな部材が、保管されている部材と部材の間に入れ込まれて保管される場合もある。さらに、鋼板等の部材は同時に全て建造対象となる船に使用されるとは限らず、使用する部材以外は残材として別の船に利用することもあるので、使用された後の残材を保管場所に戻す際に元の場所とは異なる場所に保管されることもある。
このように、造船場等では、新品部材と残財の混在などから鋼板等の部材が無秩序な状態で積み重ねられて保管されることから、鋼板等の部材を使用したい時に「部材探し」が行われることがあり、無駄な工数を増加させ、迅速に部材を後工程に供給できない場合があった。このため、これらの問題を解決すると共に、作業者の負担増にならずにこれらの部材を効率的に管理し、造船に必要な部材を効率的に検索することのできるシステムが望まれていた。
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、積み重ねられて保管される鋼板等の部材を管理することのできる部材管理サーバ及び部材管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、積み重ねられて保管される部材を管理する部材管理サーバであって、部材の識別情報、部材の属性情報、及び平面方向における保管位置を示す水平アドレスと積み上げ段数を示す段積みアドレスとを含む保管アドレスを関連付けて格納する記憶手段と、前記記憶手段の情報を更新する情報更新手段とを備え、前記情報更新手段は、作業員が携帯する通信端末から部材保管を要求する部材保管要求並びに部材の識別情報、部材の属性情報、及び保管アドレスを受信した場合に、受信した識別情報、属性情報及び保管アドレスを関連付けて前記記憶手段に格納するとともに、新たに格納した該部材よりも上段に積まれている部材の情報が該記憶手段に存在した場合には、それらの部材の段積みアドレスを1段ずつ増加させる部材管理サーバを提供する。
【0006】
このような構成によれば、これから保管される部材が、今まで保管されていた部材の間に入れ込まれる場合には、その状況を自動的に認識し、今まで保管されていた部材の段積みアドレスを自動的に更新するので、例えば、従来の現場で行われていた納出管理ノートを使った場所管理のように、空間的な管理ができずに2次元的な管理、即ち、平面的と段積みのそれぞれを別々に管理しなければならないことや、時間の同期を確保するために時間経過に伴って搬入、搬出のイベント毎に追記、消し込みすることが困難であったなどの問題を解決することができる。これにより、作業員の手を煩わせることなく、正確に部材の保管位置を管理することが可能となる。
【0007】
上記部材管理サーバにおいて、作業員が携帯する通信端末から部材取り出しを示す部材取出要求並びに部材の識別情報を受信した場合に、前記情報更新手段は、受信した識別情報に対応づけられる一連の情報を前記記憶手段から削除するとともに、削除した該部材よりも上段に積まれている部材の情報が前記記憶手段に存在した場合には、それらの部材の段積みアドレスを1段ずつ減少させることとしてもよい。
【0008】
このような構成によれば、保管されていた部材を取り出して使用する場合に、その部材が最上段ではなく、部材間に保管されていた場合には、その状況を自動的に認識し、取り出される部材の情報を削除するとともに、該部材の上段に積まれていた部材の段積みアドレスを自動的に更新するので、作業員の手を煩わせることなく、正確に部材の保管位置を管理することができる。
【0009】
上記部材管理サーバにおいて、前記部材の属性情報には、その部材が使用される船に関する情報が含まれており、作業員が携帯する通信端末から部材検索要求および船に関する情報を受信した場合に、該船に関する情報を含む部材の属性情報を前記記憶手段から検出し、検出した部材の属性情報に関連付けられている一連の情報を前記記憶手段から読み出し、該情報を前記通信端末に送信する部材検索手段を備えることとしてもよい。
【0010】
このような構成によれば、船の製作に必要となる部材の保管場所とその識別情報、属性情報等が自動的に検索されて、作業員が携帯する通信端末に提供されるので、作業員はこれらの情報に基づいて効率的に部材を取り出すことが可能となる。
【0011】
上記部材管理サーバにおいて、前記部材の属性情報には、該部材の大きさ、板厚が含まれており、作業員が携帯する通信端末から部材検索要求および部材の大きさ並びに板厚を受信した場合に、該部材の大きさおよび板厚を満足する部材を前記記憶手段から検出し、検出した部材に関する情報を前記記憶手段から読み出し、読み出した情報を前記通信端末に送信する部材検索手段を備えることとしてもよい。
【0012】
このような構成によれば、作業員が所望する部材の大きさ、板厚を満足する部材の保管アドレスとその識別情報、属性情報等が自動的に検索されて、作業員が携帯する通信端末に提供されるので、作業員はこれらの情報に基づいて効率的に部材を取り出すことが可能となる。
【0013】
上記部材管理サーバにおいて、前記部材検索手段は、前記通信端末から受信した部材の大きさおよび板厚を満足する部材を読み出し、これらの部材の段積みアドレスを元に、上段に保管されている部材から順に高い優先度を設定し、これらの部材の情報を該優先度とともに前記通信端末に送信することとしてもよい。
【0014】
このように、上段に積まれている部材ほど高い優先度が付与され、この優先度とともに部材の情報が通信端末に提供されるので、作業員は優先度を参照することで、容易に部材を取り出すことが可能となる。
【0015】
上記部材管理サーバにおいて、作業員が携帯する通信端末から保管領域分割要求とともに保管アドレスを受信した場合に、受信した保管アドレスに保管されている部材の識別情報と部材の属性情報とを前記記憶手段から読み出し、該保管アドレスに保管されている部材数を取得し、該保管アドレスで特定される保管領域を該部材数に1を加えた数で分割し、分割した保管領域にサブアドレスを割り付け、割り当てたサブアドレスと該保管領域に保管されている部材の識別情報とを前記通信端末へ送信する領域分割手段を備え、該通信端末において部材の識別情報とサブアドレスとが関連付けられ、その情報を受信した場合に、前記情報更新手段が、受信した部材の識別情報とサブアドレスとに基づいて前記記憶手段における該保管領域の部材保管状態を更新することとしてもよい。
【0016】
このような構成によれば、作業員の要望に沿って、一つの保管領域を複数のエリアに分割することが可能となる。これにより、一つの保管領域に水平方向に複数の部材が並べて保管された場合でも、これらの保管状況を正確に管理することができる。
【0017】
本発明は、上記いずれかの部材管理サーバと、作業員に携帯され、前記部材管理サーバと通信を行う少なくとも1つの通信端末とを具備する部材管理システムを提供する。
【0018】
本発明に係る部材管理システムは、積み重なって保管される部材を管理する場合に広く適用可能であり、特に、船等の大型鋼構造体に使用される鋼板等の部材を管理するのに好適なシステムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、積み重ねられて保管される鋼板等の部材を管理することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明に係る部材管理サーバ及び部材管理システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、船の製作に使用される部材、特に、鋼板等の部材を管理するのに適用される場合を例示して説明する。
図1は、本実施形態に係る部材管理システムの概略構成を示したブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る部材管理システムは、現場にいる作業員が携帯する通信端末1と、該通信端末1と通信を行うとともに、部材保管エリアに保管されている部材を一元管理する部材管理サーバ10とを備えている。
通信端末1は、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)等などであり、ハードディスク等の記憶部、処理部(CPU)、入力部、表示部、通信部等を備えている。
【0021】
部材管理サーバ10は、図2に示すように、例えば、コンピュータシステム(計算機システム)であり、CPU(中央演算処理装置)11、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置12、HDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置13、外部の機器と通信を行うことにより情報の授受を行う通信装置14などを備えている。また、更に、キーボードやマウスなどの入力装置、及びモニタやプリンタなどの出力装置を備えていても良い。補助記憶装置13には、各種プログラム(例えば、部材管理プログラム)が格納されており、CPU11が補助記憶装置13から主記憶装置12にプログラムを読み出し、実行することにより種々の処理を実現させる。
【0022】
図3は、部材管理サーバ10が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。図3に示されるように、部材管理サーバ10は、通信部21、情報更新部(情報更新手段)22、部材検索部(部材検索手段)23、領域分割部(領域分割手段)24、及び記憶部(記憶手段)25を主な構成として備えている。
記憶部25には、部材保管エリアに保管されている各部材の識別情報、属性情報、保管アドレスが対応付けられて格納されている。部材の属性情報は、例えば、部材の大きさ、板厚、形状、当該部材が使用される船の識別情報等が一例として挙げられる。また、保管アドレスについては、後述する。
部材管理サーバ10及び通信端末1は、例えば、無線LAN等を介してインターネット等の通信網に接続され、これらの通信媒体を介した情報の送受信が可能とされている。
【0023】
次に、部材が保管される部材保管エリアについて図4を参照して説明する。
図4は、部材保管エリアを上方から見た図である。図4に示すように、部材保管エリアは、区画分けされており、各区画にはそれぞれX1、X2、X3・・、Y1、Y2、Y3等の水平アドレスが割り当てられている。
また、各区画には、図5に示すように、部材を積み重ねて保管することができる。部材が何番目に積み重ねられているのかを示すアドレスとして、段積みアドレス(例えば、図5におけるT1,T2,T3,T4)が使用される。
従って、本実施形態においては、水平アドレスと段積みアドレスとの組み合わせにより、各部材がどこの区画の何段目に保管されているのかを正確に把握することができる。このように、本実施形態では、保管アドレスが水平アドレスと段積みアドレスとの組み合わせからなる。
【0024】
次に、上述した部材管理システムにおいて行われる部材の保管、部材の検索等に関するそれぞれの動作フローについて図を参照して説明する。
【0025】
〔部材の保管位置登録〕
まず、作業員は、新しい部材を所望の保管場所に保管させる場合、通信端末1の入力部を操作することにより、保管位置登録画面を表示部に表示させる(図6のステップSA1)。この保管位置登録画面には、例えば、これから保管する部材の識別情報、該部材の属性情報、並びに部材を保管する保管アドレスを入力するための入力欄と、保管位置登録を要求するためのボタン表示がなされている。
作業員は、この保管位置登録画面において、必要事項を入力し(図6のステップSA2)、保管位置登録を要求するためのボタンを操作する(図6のステップSA3)。
これにより、保管位置登録要求とともに、作業員により入力された部材の識別情報、部材の属性情報、及び保管アドレスが通信網を介して部材管理サーバ10に送信される。
【0026】
部材管理サーバ10の通信部21により、上記情報が受信されると、受信された情報は、情報更新部22に転送される。
情報更新部22は、保管位置登録の要求を受け付けると、受信した保管アドレスにおける水平アドレスで特定される区画の最上段の段数を記憶部25から読み出す(図6のステップSA4)。これにより、部材を保管しようとしている区画に部材が何段積み重ねられているのかを把握する。
続いて、情報更新部22は、記憶部25から読み出した段数と、通信端末1から受信した段積みアドレスとを比較する。
【0027】
この結果、通信端末1から受信した段積みアドレスが、記憶部25から読み出した段数よりも上段であった場合には、通信端末1から受信した情報、即ち、部材の識別情報、部材の属性情報、及び保管アドレスを互いに関連付けて記憶部25に格納する(図6のステップSA5)。
例えば、通信端末1から受信した段積みアドレスが「4」であり、記憶部25から読み出した段数が「3」であった場合には、今回情報を受け付けた部材が当該区画の最上段に積まれたと判断し、受信した情報を記憶部25に格納する。
【0028】
一方、通信端末1から受信した段積みアドレスが、記憶部25から読み出した段数よりも下段であった場合には、情報更新部22は、通信端末1から受信した情報、即ち、部材の識別情報、部材の属性情報、及び保管アドレスを互いに関連付けて記憶部25に格納するとともに(図6のステップSA5)、通信端末1から受信した段積みアドレス以上の段積みアドレスを持つ部材の段積みアドレスを1段ずつ増加させる(図6のステップSA6)。
【0029】
例えば、通信端末1から受信した段積みアドレスが「2」であり、記憶部25から読み出した段数が「4」であった場合には、今回情報を受け付けた部材が当該区画に保管されている部材の間に入れ込まれたと判断できる。この場合には、受信した情報を記憶部25に格納するとともに、該部材よりも上に積まれている部材の段積みアドレスを1段ずつ増加させる。これにより、今まで段積みアドレスが「2」であった部材の段積みアドレスは「3」に、今まで段積みアドレスが「3」であった部材の段積みアドレスは「4」に、今まで段積みアドレスが「4」であった部材の段積みアドレスは「5」に更新される。これにより、この区画の最上段の段数は、「5」に更新される。
【0030】
このように、本実施形態に係る部材管理サーバ10では、これから保管される部材が、今まで保管されていた部材の間に入れ込まれる場合には、その状況を自動的に認識し、今まで保管されていた部材の段積みアドレスを自動的に更新するので、作業員の手を煩わせることなく、正確に部材の保管位置を管理することができる。
【0031】
そして、上記部材保管登録の処理が繰り返し行われることにより、記憶部25には、保管エリアに保管されている部材の情報が蓄積され、管理されることとなる。
【0032】
〔部材取り出し〕
作業員は、保管されている部材を取り出して使用したい場合には、通信端末1の入力部を操作することにより、部材取出画面を表示部に表示させる(図7のステップSB1)。
この部材取出画面には、例えば、これから取り出す部材の識別情報、該部材の属性情報、並びに部材が保管されている保管アドレスを入力するための入力欄と、当該部材情報の削除を要求するための部材情報削除ボタンが表示されている。
【0033】
作業員は、この部材取出画面において、必要事項を入力し(図7のステップSB2)、部材情報削除ボタンを操作する(図7のステップSB3)。
これにより、作業員により入力された部材の識別情報、部材の属性情報、及び保管アドレス並びに部材情報削除要求が通信網を介して部材管理サーバ10に送信される。
部材管理サーバ10の通信部21により、部材情報削除要求が受信されると、受信された一連の情報は、情報更新部22に転送される。
情報更新部22は、部材情報削除要求を受け付けると、受信した保管アドレスにおける水平アドレスで特定される区画の最上段の段数を記憶部25から読み出す(図7のステップSB4)。これにより、取り出そうとしている部材が保管されている区画に、部材が何段積み重ねられているのかがわかる。
続いて、情報更新部22は、記憶部25から読み出した段数と、通信端末1から受信した段積みアドレスとを比較する。
【0034】
この結果、通信端末1から受信した段積みアドレスが、記憶部25から読み出した段数と一致した場合には、通信端末1から受信した一連の情報、即ち、部材の識別情報、部材の属性情報、及び保管アドレスを記憶部25から削除する(図7のステップSB5)。
例えば、通信端末1から受信した段積みアドレスが「4」であり、記憶部25から読み出した段数が「4」であった場合には、今回取り出す部材が最上段に保管されていると認識し、情報更新部22は、受信した一連の情報を記憶部25から削除する。
【0035】
一方、通信端末1から受信した段積みアドレスが、記憶部25から読み出した段数と異なっていた場合には、通信端末1から受信した一連の情報、即ち、部材の識別情報、部材の属性情報、及び保管アドレスを記憶部25から削除するとともに(図7のステップSB5)、通信端末1から受信した段積みアドレス以上の段積みアドレスを持つ部材の段積みアドレスを1段ずつ減少させる(図7のステップSB6)。
【0036】
例えば、通信端末1から受信した段積みアドレスが「2」であり、記憶部25から読み出した段数が「4」であった場合には、部材間に保管されている部材が取り出されると判断できる。この場合には、情報更新部22は、受信した一連の情報を記憶部25から削除するとともに、該部材よりも上に積まれている部材の段積みアドレスを1段ずつ減少させる。これにより、今まで段積みアドレスが「3」であった部材の段積みアドレスは「2」に、今まで段積みアドレスが「4」であった部材の段積みアドレスは「3」に更新される。また、これにより、この区画の最上段の段数は、「3」に更新される。
【0037】
このように、本実施形態に係る部材管理サーバ10では、保管されていた部材を取り出して使用する場合に、その部材が最上段ではなく、部材間に保管されていた場合には、その状況を自動的に認識し、取り出される部材の情報を削除するとともに、該部材の上段に積まれていた部材の段積みアドレスを自動的に更新するので、作業員の手を煩わせることなく、正確に部材の保管位置を管理することができる。
【0038】
〔部材検索〕
例えば、本実施形態に係る部材管理システムにおいては、購入されたままで、一回も使用されていない状態の部材(以下「新品部材」という。)の属性情報には、該新品部材が使用される船を特定するための情報が含まれている。これに対し、一旦使用された部材(以下「残材」という)に関しては、新品部材のときの識別情報とは異なった識別情報が新たに付与され、新品部材とは異なる部材として使用される。例えば、新品部材は、属性情報に含まれている船にのみ使用されるのに対し、残材になった場合には、使用される船は特に特定されず、様々な船を作成していく過程で適切な大きさと厚みを持ったものが選択されて使用される。
このように、新品部材と、残材とでその使用形態が異なることから、部材の検索に際しては、新品部材を検索する方法と、適切な残材を検索する方法との2つの部材検索方法を用意している。
以下、新品部材を検索する方法を〔部材検索1〕として、残材を検索する方法を〔部材検索2〕として説明する。
【0039】
〔部材検索1〕
作業員は、船の作製に使用される新品部材を部材保管エリアから取り出すために、該新品部材の保管アドレスを知りたい場合には、通信端末1の入力部を操作することにより、部材検索画面1を表示部に表示させる(図8のステップSC1)。部材検索画面1は、新品部材を検索する場合に使用される検索画面である。
この部材検索画面1には、例えば、当該部材が使用される船を特定するための情報(本実施形態では、「船の識別情報」)を入力するための入力欄と、当該部材情報の検索を要求するための部材検索ボタンが表示されている。
【0040】
作業員は、この部材検索画面1において、必要事項を入力し(図8のステップSC2)、部材検索ボタンを操作する(図8のステップSC3)。
これにより、作業員により入力された船の識別情報および部材検索要求が通信網を介して部材管理サーバ10に送信される。
部材管理サーバ10の通信部21により、部材検索要求が受信されると、受信された一連の情報は、部材検索部23に転送される。
【0041】
部材検索部23は、部材検索要求を受け付けると、受信した船の識別情報を属性情報に含んでいる部材を記憶部25の中から検索し、該当する部材の一連の情報を記憶部25から読み出す(図8のステップSC4)。これにより、通信端末1から受信した船の識別情報によって特定される船に使用される新品部材の識別情報、属性情報、及び保管アドレスが記憶部25から抽出されることとなる。
部材検索部23は、記憶部25から読み出したこれらの情報を通信端末1に送信する(図8のステップSC5)。
これにより、通信端末1には、船の製作に必要となる部材の保管アドレスとその識別情報、属性情報等が表示され(図8のステップSC6)、作業員はこれらの情報に基づいて効率的に部材を取り出すことが可能となる。
また、部材を取り出した場合には、上述した部材取り出しの際の操作を通信端末1から行うことで、部材を取り出すことによる保管アドレスの変更を記憶部25に速やかに反映させることができる。
【0042】
〔部材検索2〕
作業員は、船の作製に使用される適切な大きさの残材を保管場所から取り出すために、該残材の保管位置を知りたい場合には、通信端末1の入力部を操作することにより、部材検索画面2を表示部に表示させる(図9のステップSD1)。部材検索画面2は、残材を検索する場合に使用される検索画面である。
この部材検索画面2には、例えば、必要となる部材の大きさ、板厚等を入力するための入力欄と、当該部材情報の検索を要求するための部材検索ボタンが表示されている。
【0043】
作業員は、この部材検索画面2において、必要事項を入力し(図9のステップSD2)、部材検索ボタンを操作する(図9のステップSD3)。
これにより、作業員により入力された部材の大きさ、板厚の情報並びに部材検索要求が通信網を介して部材管理サーバ10に送信される。
部材管理サーバ10の通信部により、部材検索要求が受信されると、受信された情報は、部材検索部23に転送される。
【0044】
部材検索部23は、部材検索の要求を受け付けると、受信した部材の大きさ及び板厚情報を元に記憶部25に格納されている各部材の属性情報を参照し、通信端末1から受信した板厚であって、かつ、通信端末1から受信した部材の大きさを満足する部材を検索し、その部材の識別情報、属性情報、及び保管アドレスからなる一連の情報を記憶部25から読み出す(図9のステップSD4)。
【0045】
続いて、部材検索部23は、読み出したこれら情報のうち、保管アドレスの段積みアドレスが上段である部材から順に高い優先度を付与する(図9のステップSD5)。そして、この優先度の情報とともに、記憶部25から読み出した部材の一連の情報を通信端末1に送信する(図9のステップSD6)。
【0046】
これにより、通信端末1には、作業員が所望する部材の保管場所と、その識別情報、属性情報等が優先度の高い順に表示される(図9のステップSD7)。この結果、作業員はこれらの情報に基づいて効率的に部材を取り出すことが可能となる。
また、部材を取り出した場合には、上述した部材取り出しの際の操作を通信端末1から行うことで、部材を取り出すことによる保管アドレスの変更を記憶部25に速やかに反映させることができる。
また、上段に積まれている部材ほど高い優先度を付与することにより、取り出しやすい部材から順に部材の情報を作業員に提供することができる。
【0047】
〔保管領域の分割〕
造船等の現場では、図10に示すように、一つの区画に新品部材と残材の混在により複数の部材が水平方向に並べられて保管される場合もある。このような場合、一つの水平アドレスに複数の異なる部材が保存されることとなり、1つの水平アドレス内における部材の保管位置の管理を行う必要がある。
本実施形態では、一つの水平アドレス内に複数の部材が水平方向に並べられて保管される場合には、水平アドレス、段積みアドレスに加えて、サブアドレスを付与し、この3つの組み合わせによって、部材の保管位置を管理する。
以下、保管領域の分割操作について説明する。
【0048】
作業員は、一つの区画に水平方向に部材を並べて保管したい場合には、通信端末1の入力部を操作することにより、保管領域分割画面を表示部に表示させる(図11のステップSE1)。この保管領域分割画面には、分割させたい保管領域の保管アドレス、つまり、水平アドレス及び段積みアドレスを入力するための入力欄と、当該アドレスの分割を要求するための分割要求ボタンが表示されている。
【0049】
作業員は、この保管領域分割画面において、必要事項を入力し(図11のステップSE2)、分割要求ボタンを操作する(図11のステップSE3)。
これにより、作業員により入力された保管アドレスの情報および保管領域分割要求が通信網を介して部材管理サーバ10に送信される。
部材管理サーバ10の通信部21により、保管領域分割要求が受信されると、受信された情報は、領域分割部24に転送される。
【0050】
領域分割部24は、保管領域分割要求を受け付けると、受信した保管アドレスに保管されている部材の識別情報と部材の属性情報とを記憶部25から読み出し、当該保管アドレスに保管されている部材数を取得する(図11のステップSE4)。
続いて、通信端末1から受信した保管アドレスで特定される保管領域を取得した部材数に1を加えた数で分割し、分割した各保管領域にサブアドレスを割り付ける(図11のステップSE5)。
続いて、各保管領域に割り当てたサブアドレスと、該保管領域に保管されている部材の識別情報の情報を通信端末1に送信する(図11のステップSE6)。
【0051】
これにより、通信端末1の表示部には、例えば、図13に示すようなサブアドレスと部材の識別情報及び属性情報とが対応付けられた画面が表示される(図12のステップSE7)。図13には、保管アドレス「X1−T1」で特定される保管領域を3つに分割した場合の表示例が示されている。ここで、サブアドレス「C1」、「C2」には既に保管されている部材の識別情報及び属性情報が対応付けられている。また、サブアドレス「C3」は、今回の分割要求に従って追加された保管領域であるため、部材の識別情報及び属性情報が対応付けられていない状態となっている。
【0052】
作業員は、この画面において、実際の部材の保管状態に応じて、各サブアドレスと各部材の識別情報及び属性情報とを対応付けて入力する(図12のステップSE8)。
例えば、図13において、サブアドレス「C1」に新たな部材を保管し、サブアドレス「C2」に既に保管されていた識別番号「0001」の部材を保管し、サブアドレス「C3」に既に保管されていた識別番号「0002」の部材を保管したい場合には、作業員は、サブアドレス「C2」に対応付けられている識別情報及び属性情報をサブアドレス「C3」に移動させ、サブアドレス「C1」に対応付けられている識別情報及び属性情報をサブアドレス「C2」に移動させ、サブアドレス「C1」に今回保存する部材の識別番号及び属性情報を入力する。この結果、図13の表示画面は、図14に示される表示画面に変わる。
【0053】
作業員は、上記入力操作を行うと、情報更新ボタンを押下する(図12のステップSE9)。これにより、各サブアドレスと対応付けられた各部材の情報が部材管理サーバ10へ送信される。部材管理サーバ10の通信部21により、情報更新要求が受信されると、受信された情報は、情報更新部22に転送される。
【0054】
情報更新部22は、情報更新の要求を受け付けると、受信した部材の識別情報とサブアドレスとに基づいて記憶部25における該保管アドレスの部材保管状態を更新する(図12のステップSE10)。これにより、保管場所の分割処理が完了し、各サブアドレスと各部材の識別情報及び属性情報とが対応付けられて記憶部25に格納されることとなる。
【0055】
以上説明してきたように、本実施形態に係る部材管理サーバ及び部材管理システムによれば、例えば、既に保管されている部材の間に新たに部材を保管する場合、部材の間に保管されていた部材を取り出す場合には、保管や取り出しの対象となる部材の保管アドレスだけでなく、この部材の上段に置かれていた部材に関する保管アドレスについても自動的に更新するので、作業員の手を煩わせることなく、常に正確な部材の管理が行われることとなる。
また、部材を検出する場合にも、自動的に適切な部材が検索されて、作業員が携帯する通信端末に提供されるので、作業員はこの情報を参照して効率的に部材を取り出すことが可能となる。
これにより、新品部材と残材を混在しても、「部材探し」をすることがなくなり迅速に部材を後工程に供給することができると共に作業者の負担も増えることなく部材を効率的に管理できるようになる。更に、生産計画によって事前に部材の配置位置を入れ替えるなどにより更に部材供給の効率化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る部材管理システムの全体構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る部材管理サーバのハードウェア構成を示した図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る部材管理サーバの機能を展開して示した機能ブロック図である。
【図4】保管エリアにおける水平アドレスを説明するための図である。
【図5】一区画における段積みアドレスについて説明するための図である。
【図6】保管位置の登録に関する処理手順を示した動作フローである。
【図7】部材の取り出しに関する処理手順を示した動作フローである。
【図8】部材検索1に関する処理手順を示した動作フローである。
【図9】部材検索2に関する処理手順を示した動作フローである。
【図10】領域分割について説明するための図である。
【図11】領域分割に関する処理手順を示した動作フローである。
【図12】領域分割に関する処理手順を示した動作フローである。
【図13】領域分割に関する処理において、通信端末に表示される表示画面の一例を示した図である。
【図14】領域分割に関する処理において、通信端末に表示される表示画面の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0057】
1 通信端末
10 部材管理サーバ
11 CPU
12 主記憶装置
13 補助記憶装置
14 通信装置
21 通信部
22 情報更新部
23 部材検索部
24 領域分割部
25 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積み重ねられて保管される部材を管理する部材管理サーバであって、
部材の識別情報、部材の属性情報、及び平面方向における保管位置を示す水平アドレスと積み上げ段数を示す段積みアドレスとを含む保管アドレスを関連付けて格納する記憶手段と、
前記記憶手段の情報を更新する情報更新手段と
を備え、
前記情報更新手段は、
作業員が携帯する通信端末から部材保管を要求する部材保管要求並びに部材の識別情報、部材の属性情報、及び保管アドレスを受信した場合に、受信した識別情報、属性情報及び保管アドレスを関連付けて前記記憶手段に格納するとともに、新たに格納した該部材よりも上段に積まれている部材の情報が該記憶手段に存在した場合には、それらの部材の段積みアドレスを1段ずつ増加させる部材管理サーバ。
【請求項2】
作業員が携帯する通信端末から部材取り出しを示す部材取出要求並びに部材の識別情報を受信した場合に、前記情報更新手段は、受信した識別情報に対応づけられる一連の情報を前記記憶手段から削除するとともに、削除した該部材よりも上段に積まれている部材の情報が前記記憶手段に存在した場合には、それらの部材の段積みアドレスを1段ずつ減少させる請求項1に記載の部材管理サーバ。
【請求項3】
前記部材の属性情報には、その部材が使用される船に関する情報が含まれており、
作業員が携帯する通信端末から部材検索要求および船に関する情報を受信した場合に、該船に関する情報を含む部材の属性情報を前記記憶手段から検出し、検出した部材の属性情報に関連付けられている一連の情報を前記記憶手段から読み出し、該情報を前記通信端末に送信する部材検索手段を備える請求項1または請求項2に記載の部材管理サーバ。
【請求項4】
前記部材の属性情報には、該部材の大きさ、板厚が含まれており、
作業員が携帯する通信端末から部材検索要求および部材の大きさ並びに板厚を受信した場合に、該部材の大きさおよび板厚を満足する部材を前記記憶手段から検出し、検出した部材に関する情報を前記記憶手段から読み出し、読み出した情報を前記通信端末に送信する部材検索手段を備える請求項1または請求項2に記載の部材管理サーバ。
【請求項5】
前記部材検索手段は、前記通信端末から受信した部材の大きさおよび板厚を満足する部材を読み出し、これらの部材の段積みアドレスを元に、上段に保管されている部材から順に高い優先度を設定し、これらの部材の情報を該優先度とともに前記通信端末に送信する請求項4に記載の部材管理サーバ。
【請求項6】
作業員が携帯する通信端末から保管領域分割要求とともに保管アドレスを受信した場合に、受信した保管アドレスに保管されている部材の識別情報と部材の属性情報とを前記記憶手段から読み出し、該保管アドレスに保管されている部材数を取得し、該保管アドレスで特定される保管領域を該部材数に1を加えた数で分割し、分割した保管領域にサブアドレスを割り付け、割り当てたサブアドレスと該保管領域に保管されている部材の識別情報とを前記通信端末へ送信する領域分割手段を備え、
該通信端末において部材の識別情報とサブアドレスとが関連付けられ、その情報を受信した場合に、前記情報更新手段が、受信した部材の識別情報とサブアドレスとに基づいて前記記憶手段における該保管領域の部材保管状態を更新する請求項1から請求項5のいずれかに記載の部材管理サーバ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の部材管理サーバと、
作業員に携帯され、前記部材管理サーバと通信を行う少なくとも1つの通信端末と
を具備する部材管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−116258(P2010−116258A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292323(P2008−292323)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】