説明

部材締結構造

【課題】従来よりも防水性の向上した部材締結構造を提供する。
【解決手段】 開口を有する筐体本体と前記開口を覆う蓋部とをネジで締結して密着接続する部材締結構造において、
前記筐体本体と前記蓋部とを重ね合わせたときに前記筐体の縁部の端面と前記蓋部とによって押圧される位置に挿入されるガスケットと、
前記筐体の外側側面に前記開口の前記縁部から下方に所定の間隔あけて固着された支持部材と、
この支持部材上に設けられ、前記ネジと螺合する雌ネジ部と、
を備えたことを特徴とする部材締結構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現場設置型の伝送器等に用いられる部材締結構造に関し、詳しくは、第1部材と第2部材との間にガスケットを挿入してネジ止めし、これら第1および第2の部材を密着接続する部材締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は従来の部材締結構造の一例として、現場設置型の伝送器などに用いられる防水性を有する筐体の断面図を示したものである。図5の(a)は部品構成図、(b)は組み立て後の図であり、電気回路を収納する箱部100、この箱部100を覆う蓋部200、箱部100と蓋部200の間に挿入されるリング状のガスケット300、蓋部200と箱部100を締結するためのネジ400とワッシャー500、ネジ400の脱落防止用のOリング(またはスペーサーカラー)600から構成されている。110は箱部100と蓋部200とのネジ400によるネジ締結部である。
【0003】
図6はネジ締結部110の詳細構成図であり、図6の(a)は部品構成図、(b)は組み立て後の図である。
【0004】
図6の(a)において、蓋部200には箱部100側を向いたつば部200b,200cが設けられている。つば部200bは蓋部200の縁部に設けられており、つば部200cはつば部200bの内側に設けられている。このつば部200b,200cの間にネジ400用のネジ穴200aが形成されている。
【0005】
箱部100は上部の開口部分が水平方向外側に広がっており、その広がった部分にネジ穴100cとスタッド100aが設けられている。また、広がった部分の縁部に蓋部200側を向いたつば部100bが設けられている。
【0006】
箱部100に蓋部200を重ねると、つば部100bがつば部200bによって外側から覆われ、また、スタッド100aとつば部200cとがちょうど接触するようにそれぞれ形成位置が調整されている。また、ガスケット300は、つば部200cの内側にフィットするとともに、つば部200cよりも若干上下方向に厚くなるように形成されている。
【0007】
蓋部200のネジ穴200aと、箱部100のスタッド100a、ネジ穴100cは、箱部100と蓋部200を重ねた状態で一直線上になるように配置されている。Oリング600はスタッド100aとネジ穴200aの間に挿入される。
【0008】
図6の(b)において、箱部100と蓋部200とを重ね、ワッシャー500を介してこれらをネジ400で締結する。箱部100と蓋部200とが締結されると、ガスケット300は箱部100と蓋部200との間にかかる圧力によって圧縮する。これにより箱部100と蓋部200とが密着し、箱部100の内部に水が浸入するのを防ぐ防水機能が得られる。箱部100にはこのようなネジ締結部110が複数設けられている。
【0009】
下記特許文献1には、筐体との間にガスケットを挿入して取り付けられるプレート部品とを有する電子機器の筐体構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−158453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の部材締結構造では、締結構造と防水構造とが分離していないため、防水性能の確保が難しい。
すなわち、蓋部200に水がかかると、水はネジ400に沿って蓋部200と箱部100の間のスペースに浸入する。その浸入した水は、スタッド100aと箱部100の内壁をつたってガスケット300に到達する。ガスケット300に到達した水はガスケット300の下面に浸入してしまうことがある。そうすると結果的に箱部100の内部に水が入りこんでしまう。
【0012】
本発明は、従来よりも防水性の向上した部材締結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、
開口を有する筐体本体と前記開口を覆う蓋部とをネジで締結して密着接続する部材締結構造において、
前記筐体本体と前記蓋部とを重ね合わせたときに前記筐体の縁部の端面と前記蓋部とによって押圧される位置に挿入されるガスケットと、
前記筐体の外側側面に前記開口の前記縁部から下方に所定の間隔あけて固着された支持部材と、
この支持部材上に設けられ、前記ネジと螺合する雌ネジ部と、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の部材締結構造において、
前記支持部材は、前記筐体本体の外部に通じる孔が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、
筐体本体と蓋部とを重ね合わせたときに筐体の縁部の端面と蓋部とによって押圧される位置に挿入されるガスケットと、筐体の外側側面に開口の縁部から下方に所定の間隔あけて固着された支持部材と、この支持部材上に設けられ、ネジと螺合する雌ネジ部とを備えたことにより、水がネジをつたって支持部材上に浸入しても、その浸入した水は筐体の外側側面に阻まれるため、従来よりも防水性の向上した部材締結構造を提供できる。
【0016】
請求項2の発明によれば、
支持部材は筐体本体の外部に通じる孔が形成されているため、
支持部材上に水が浸入してもその孔から水が外部に排出され、さらに防水性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】ガスケット3の構造を示す図である。
【図3】図1に示すネジ締結部10の詳細構成図である。
【図4】ネジの脱落防止構造の説明図である。
【図5】従来の部材締結構造の一例を示す構成図である。
【図6】図5に示すネジ締結部110の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0018】
図1は本発明の一実施例として、現場設置型の伝送器などに用いられる防水性を有する筐体の断面図を示したものである。図1の(a)は部品構成図、(b)は組み立て後の図であり、電気回路を収納するステンレス製の箱部1、この箱部1を覆うステンレス製の蓋部2、箱部1と蓋部2の間に挿入されるリング状のガスケット3、蓋部2と箱部1を締結するためのネジ4とワッシャー5から構成されている。10は箱部1と蓋部2とのネジ締結部である。
【0019】
箱部1は上側が開いた直方体である。箱部1の上端部分は後述の支持部材1’によって外側に広がっており、この広がった部分にネジ締結部が設けられる。蓋部2は箱部1の外側に広がった部分の大きさに合わせて矩形状に形成されている。
【0020】
図2はガスケット3の構造を示す図であり、図2の(a)は上面図、(b)は側面図である。
ガスケット3は柔軟性のある樹脂製で、矩形状に形成されている。ガスケット3の4隅にはネジ4に螺合する(かみ合う)ネジ穴3aが形成されている。
【0021】
図3はネジ締結部10の詳細図であり、図3の(a)は部品構成図、(b)は組み立て後の図である。
【0022】
図3の(a)において、蓋部2の縁部には箱部1側を向いたつば部2bが形成されている。つば部2bの内側にはネジ4に螺合するネジ穴2aが形成されている。
【0023】
箱部1の上端付近には水平方向に段1bが作られており、この段1bの先の部分は蓋部2側を向いたつば部1cを形成している。段1bの下面にはステンレス製で断面L字状の支持部材1’が固定して取り付られ、この支持部材1’のL字に折曲がった先が蓋部2側を向いたつば部1dを形成している。支持部材1’上にネジ4に螺合する雌ネジスタッド1aが固定されている。支持部材1’には、箱部1の外部に通じる孔1a’が形成されている。
【0024】
蓋部2のネジ穴2aと、箱部1の雌ネジスタッド1a、ガスケット3のネジ穴3aは、箱部1と蓋部2とガスケット3を重ねた状態で一直線上になるように配置されている。
【0025】
ガスケット3の外形は蓋部2のつば部2bの内側にフィットする大きさに形成されている。ガスケット3の下面の中央付近には突起部3bが形成されている。この突起部3bは、ガスケット3を箱部1に重ねたときに、つば部1cとスタンド1aの間の空間にちょうどフィットするように形成されている。
【0026】
図3の(b)において、箱部1にガスケット3と蓋部2を重ねると、つば部1bがつば部2bによって外側から覆われた状態となる。また、つば部1cの端面がガスケット3の下面3cに接触する。さらに、雌ネジスタッド1aとつば部1cとの間の空間がガスケット3の突起部3bによって埋められる。
【0027】
蓋部2と箱部1とを締結する際は、ガスケット3を間に挟んで蓋部2と箱部1とを重ね、ネジ4をワッシャー5を介して蓋部2のネジ穴2aから挿入し、ガスケット3のネジ穴3aに回し入れ、さらにその後雌ネジスタッド1aに回し入れる。
【0028】
箱部1と蓋部2とが締結されると、ガスケット3は、箱部1と蓋部2に挟み込まれることにより圧力がかかり、つば部1cとガスケット3との接触面は密着してシール面となる。これにより箱部1の内部に水が浸入するのを防ぐ防水構造になる。
【0029】
図4はネジの脱落防止構造の説明図である。図4の(a)はネジ4の構造を示す図であり、41はネジ4の軸部、41aは軸部41の首下部分、41bは軸部41のネジ先部分である。ネジ先部分41bは首下部分41aよりも若干太く形成され、ネジ溝が形成されている。
【0030】
図4の(b)はネジ4とガスケット3を示す図であり、ネジ4のネジ先部分41bがガスケット3のネジ穴3aを通っている様子を示したものである。ネジ穴3aはネジ先部分41bの太さに合わせて穴の径が設定されている。また、ネジ穴3aのネジ溝は、ネジ先部41bのネジ溝にかみ合う(螺合する)ように形成されており、ネジ先部分41bをネジ穴3aを通す際にはネジ溝に沿ってネジ4を回転させる。実質的には、ガスケット3は柔軟性のある素材でできているため、ネジ4は回し入れずにネジ穴3aに押し込むだけで、ネジ穴3aに入れ込むことができる。
【0031】
図4の(c)はネジ4とガスケット3を示す図であり、ネジ4のネジ先部分41bがガスケット3のネジ穴3aを通過した後の様子を示したものである。ネジ4の首下部分41aはネジ先部分41bよりも細いため、ネジ4と雌ネジスタッド1aとが固定状態にない場合は、ネジ4はネジ穴3a内を上下方向に自由に動くことができる。そのような状態においては、蓋部2は箱部1から取り外しがきき、自由に開閉できる。しかし、ネジ4は、図中上方側に抜けようとしても、ネジ先部分41bがネジ穴3aにひっかかり、自然に抜けることはない。そのため、ネジ4が雌ネジスタッド1aから緩んでしまった場合でも、ネジ4が蓋部2から脱落することはない。ガスケット3にこのようなネジの抜け止め構造を一体化させることにより、ネジ4の脱落を防止する。
【0032】
なお、箱部1には複数のネジ締結部10が設けられており、それぞれのネジ締結部10において図4に示すようなネジの脱落防止構造が設けられている。
【0033】
本実施例は以上のように構成され、
箱部1と蓋部2とを重ね合わせたときに箱部1の縁部の端面と蓋部2とによって押圧される位置に挿入されるガスケット3と、箱部1の外側側面に開口の縁部から下方に所定の間隔あけて固着された支持部材1’と、この支持部材1’上に設けられ、ネジ4と螺合する雌ネジスタッド1aとを備えたことにより、水がネジ4をつたって支持部材上に浸入しても、その浸入した水は箱部1の外側側面に阻まれるため、従来よりも防水性の向上した部材締結構造を提供できる。
【0034】
また、支持部材1’は箱部1の外部に通じる孔1a’が形成されているため、
支持部材1’上に水が浸入しても孔1a’から水が外部に排出され、さらに防水性が向上する。
【0035】
なお、本実施例では、部材締結構造を現場設置型の伝送器などに用いられる防水性を有する筐体に適用した例について説明したが、本発明は、屋内・屋外を問わず、防水性が必要な環境で使用される全ての筐体に好適である。筐体の防水ガスケットと蓋部と箱部を締結するためのネジを有する構造であれば、容易に水平展開が可能である。
【0036】
また、本実施例では、ネジ穴3aにネジ溝を設けたが、ネジ溝を設けなくてもよい。ネジ溝を設けない場合には、ネジ穴3aへのネジ4の抜き差しは、常に、ネジ4を押し込んだり、引き出したりして行う。
【0037】
また、本実施例では箱部1、蓋部2、支持部材1’をステンレス製としたが、他の種類の金属製であってもよい。また、金属に限らず、プラスチックなど他の素材であってもよい。
【0038】
なお、本実施例における箱部1は請求範囲における筐体本体に相当し、雌ネジスタッド1aは雌ネジ部に相当し、孔1a’が筐体本体の外部に通じる孔に相当する。
【符号の説明】
【0039】
1 箱部
1a 雌ネジスタッド
1’ 支持部材
1a’ 孔
2 蓋部
3 ガスケット
4 ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する筐体本体と前記開口を覆う蓋部とをネジで締結して密着接続する部材締結構造において、
前記筐体本体と前記蓋部とを重ね合わせたときに前記筐体の縁部の端面と前記蓋部とによって押圧される位置に挿入されるガスケットと、
前記筐体の外側側面に前記開口の前記縁部から下方に所定の間隔あけて固着された支持部材と、
この支持部材上に設けられ、前記ネジと螺合する雌ネジ部と、
を備えたことを特徴とする部材締結構造。
【請求項2】
前記支持部材は、前記筐体本体の外部に通じる孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の部材締結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−117485(P2011−117485A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273271(P2009−273271)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】