説明

配向膜の液滴吐出方法及び液滴吐出装置

【課題】配向膜の膜厚が不均一に形成されても表示ムラが抑制される配向膜の液滴吐出方法を提供すること。
【解決手段】所定のピッチで配列される複数のノズル2aを有するインクジェットヘッド2を、基板30に対して相対的に移動させてノズル2aから配向膜の液滴6aを基板30上に吐出する方法において、インクジェットヘッド2の基板30に対して相対的に移動する方向Cが基板30に格子状に構成される絵素の配列方向X,Yに対して所定角度傾斜されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルなどに用いられる基板への配向膜の液滴吐出方法及び液滴吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、平面型の表示装置として例えば液晶パネルを備えた液晶表示装置が広く用いられている。液晶パネルは、2枚の基板の電極の間に液晶を封止し、これらの電極から液晶に対して電圧を印加し表示を行うものであり、電圧を印加した時に均一な表示を行うために、液晶分子にプレチルト角を予め与えるものとして配向膜がそれぞれの基板に形成されている。配向膜の形成は、電極等が形成された基板上に配向膜の材料からなる薄膜をオフセット印刷により形成する方法の他に、例えば図4に示すような長尺状のインクジェットヘッド50を用いて配向膜を形成する方法がある。
【0003】
図4(a)に示されるように、インクジェットヘッド50には、一列に並んだ複数のノズル51が設けられており、このインクジェットヘッド50を基板52に対して矢印Dに示す方向に相対的に移動させて、各ノズル51から配向膜の材料の液滴53が吐出される。滴下された液滴53は着弾の瞬間に基板52上で濡れ広がり、隣接する液滴53同士が接触すると、その接触位置からそれらの液滴53同士が繋がって一体となり、図4(b)に示されるように、単一の薄膜54として形成される。その後、乾燥などの所定の工程を経ることで、基板52上に配向膜が形成される。
【0004】
【特許文献1】特開平9−138410号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、完成した液晶パネルを点灯させると、図4(c)に示されるように基板52に対してノズル51の移動方向に沿うすじ(ムラ)55が確認される場合がある。このような表示ムラ55は、インクジェットヘッド50の隣り合うノズル51の間、つまり液滴53の着弾点間に沿って発生することがわかっている。これは、ちょうど液滴53が着弾点から濡れ広がって隣の液滴53に接触するまでに移動した部分に相当しており、この部分の配向膜の膜厚が着弾点位置の配向膜よりも薄く形成されてしまうのである。このような配向膜の膜厚の不均一を解消するには、滴下後の薄膜の膜厚が均一になるまで一定時間放置したり、又は振動手段により振動させて均一にさせることが考えられるが、工程数の増加等により製造コストがアップするという問題があった。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、上述したように配向膜の膜厚が不均一に形成されても表示ムラが抑制される配向膜の液滴吐出方法及び液滴吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は種々なる検討の結果、液滴の着弾点間に発生する配向膜の膜厚の不均一な部分は、インクジェットヘッドが移動する方向に沿って形成されることから、この配向膜の膜厚が不均一に形成される方向と、基板に構成される絵素の配列方向とが一致することによる干渉等が原因で、このようなムラが生じることに着目した。そこで、上記課題を解決するため、本発明に係る配向膜の液滴吐出方法は、所定のピッチで配列される複数のノズルを有するインクジェットヘッドを、基板に対して相対的に移動させて前記ノズルから配向膜の液滴を前記基板上に吐出する方法において、前記インクジェットヘッドの前記基板に対して相対的に移動する方向が前記基板に格子状に構成される絵素の配列方向に対して所定角度傾斜されていることを要旨とするものである。
【0008】
また、本発明に係る配向膜の液滴吐出装置は、所定のピッチで配列される複数のノズルを有するインクジェットヘッドと、このインクジェットヘッドを基板に対して相対的に移動させる移動手段とを備えて、前記ノズルから配向膜の液滴を前記基板上に吐出する配向膜の液滴吐出装置において、前記インクジェットヘッドの前記基板に対して相対的に移動する方向が前記基板に格子状に構成される絵素の配列方向に対して所定角度傾斜されていることを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0009】
上記構成を有する配向膜の液滴吐出方法及び液滴吐出装置によれば、インクジェットヘッドが基板に対して相対的に移動する方向が基板の絵素の配列方向に対して所定角度傾斜されている構成なので、配向膜の膜厚が不均一に形成される方向と、基板に構成される絵素の配列方向とが一致しない。これにより、表示の際のすじ状のムラの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明に係る配向膜の液滴吐出方法及び液滴吐出装置の実施の形態ついて、図面を参照して詳細に説明する。先ず、本発明に好適に用いられる液晶パネルについて説明する。図3は、液晶パネル10の平面図と1絵素の断面図の概略構成を示している。図示されるように液晶パネル10は、絵素がX方向及びY方向に複数配列された構成になっている。図中の断面図に示されるように、この液晶パネル10には、一対の相互に対向するガラス基板(TFTアレイ側基板)20とガラス基板(カラーフィルター側基板)30の間に、液晶層40が形成されている。下側のガラス基板20上には、1絵素ごとに設けられた絵素電極21が格子状に配列して形成され、上側のガラス基板30の下には、ほぼ全面にわたって設けられた共通電極31が形成されている。
【0011】
各絵素電極21の周囲には、ソース配線22と図示しないゲート配線とが相互に直交するように形成されている。ソース配線22とゲート配線は、その交差部において、ソース配線22が上側、ゲート配線が下側になるように交差しており、交差部には図示しないTFT(薄膜トランジスタ)が形成されている。
【0012】
絵素電極21が設けられたガラス基板20には、この絵素電極21を覆うように配向膜23が形成されている。また、共通電極31が設けられたガラス基板30には、この共通電極31を覆うように配向膜32が形成されている。これら配向膜23,32に、絹布等を用いて表面を所定の方向に擦るラビング処理を施すと、ティルト角を形成して液晶分子を配向させることができる。
【0013】
また、ガラス基板20の絵素電極21は、通常、層間絶縁膜24を介して設けられている。一般的に、絵素電極21及び共通電極31にはITO(indium-tin oxide:インジウム酸化スズ)材料、そして配向膜23,32にはポリイミド材料が用いられる。
【0014】
共通電極31が設けられたガラス基板30には、ブラックマトリクス33が形成されている。このブラックマトリクス33により、ガラス基板30側のソース配線22及びゲート配線等が形成された領域が遮光されるようになっている。また、このガラス基板30には、各絵素毎に赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)のうちのいずれか1色のカラーフィルタ34が形成されている。
【0015】
図1は、上述した構成の液晶パネル10の例えばガラス基板(カラーフィルター側基板)30への配向膜32の形成に用いられる液滴吐出装置の概略構成を示した図である。図示される液滴吐出装置1は、インクジェットヘッド2と搬送ステージ3を備えている。長尺状のインクジェットヘッド2には、タンク4から供給管5を介して配向膜32の材料を含む配向膜溶液(例えば、ポリイミド樹脂5%,溶剤95パーセント)6が供給される。
【0016】
このインクジェットヘッド2には、複数のノズル2aがピッチAで配列されている。それぞれのノズル2aには図示しないピエゾ素子が備えられており、制御回路7からの制御信号によって、任意のノズル2aから配向膜溶液6の液滴を吐出することが可能になっている。
【0017】
また、制御回路7は、ガラス基板30が載置された搬送ステージ3を矢印B方向に移動させる際の速度等を制御する。搬送ステージ3には、ガラス基板30を搬送ステージ3の移動方向に対して斜めに配置するためのガイド3aが、ガラス基板30の四辺を支持するように設けられている。
【0018】
このような液滴吐出装置1を用いて配向膜溶液6をガラス基板30上に塗布する手順を図2を用いて説明する。図示されるように、インクジェットヘッド2に対して例えば45°傾斜させて配置されたガラス基板30上を、インクジェットヘッド2が矢印Cに示す方向に相対的に移動しながら、各ノズル2aから液滴6aが吐出される。このとき各ノズル2aの吐出は、それぞれのノズル2aがガラス基板30の吐出エリア35内に入った際に吐出を開始するように制御回路7により制御されている。したがって、図示されるように、先ず中央のノズル2aから吐出を開始し、その後、順に左右のノズル2a,2a,2a,・・・が吐出を開始するようになっている。
【0019】
このように滴下された液滴6aは着弾の瞬間にガラス基板30上で濡れ広がり、隣接する液滴6a同士が接触すると、その接触位置からそれらの液滴6a同士が繋がって一体となり、単一の薄膜が形成され、そして乾燥などの所定の工程を経ると、ガラス基板30上に配向膜32が形成される。
【0020】
図2に示すように、インクジェットヘッド2がガラス基板30に対して相対的に移動する方向Cがガラス基板30の絵素の配列方向X,Yに対して所定角度傾斜されていることにより、配向膜の膜厚が不均一に形成される方向と、ガラス基板に構成される絵素の配列方向とが一致しない構成になっている。したがって、従来技術で説明したような配向膜の膜厚が不均一に形成される方向と、ガラス基板に構成される絵素の配列方向とが一致しないことによる干渉等が原因で生じる表示ムラ等の発生を抑制することができる。
【0021】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、上記実施の形態ではカラーフィルター側基板に適用した例を示したが、勿論TFTアレイ側基板にも適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態である液滴吐出装置の概略構成を示した図である。
【図2】図1の液滴吐出装置を用いて基板上に液滴を吐出する手順を示した図である。
【図3】図1の液滴吐出装置に好適に用いられる表示パネルの概略構成を示した図である。
【図4】従来用いられてきた液滴吐出装置を用いて基板上に配向膜を形成する手順を示した図である。
【符号の説明】
【0023】
1 液滴吐出装置
2 インクジェットヘッド
2a ノズル
3 搬送ステージ
4 タンク
5 供給管
6 配向膜溶液
6a 液滴
7 制御回路
10 液晶パネル
20 ガラス基板(TFT側アレイ基板)
21 絵素電極
22 ソース配線
23 配向膜
24 層間絶縁膜
30 ガラス基板(カラーフィルター側基板)
31 共通電極
32 配向膜
33 ブラックマトリックス
34 カラーフィルター
35 吐出エリア
40 液晶層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のピッチで配列される複数のノズルを有するインクジェットヘッドを、基板に対して相対的に移動させて前記ノズルから配向膜の液滴を前記基板上に吐出する方法において、前記インクジェットヘッドの前記基板に対して相対的に移動する方向が前記基板に格子状に構成される絵素の配列方向に対して所定角度傾斜されていることを特徴とする配向膜の液滴吐出方法。
【請求項2】
所定のピッチで配列される複数のノズルを有するインクジェットヘッドと、このインクジェットヘッドを基板に対して相対的に移動させる移動手段とを備えて、前記ノズルから配向膜の液滴を前記基板上に吐出する配向膜の液滴吐出装置において、前記インクジェットヘッドの前記基板に対して相対的に移動する方向が前記基板に格子状に構成される絵素の配列方向に対して所定角度傾斜されていることを特徴とする配向膜の液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−320839(P2006−320839A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146484(P2005−146484)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】