説明

配管システムに使用されるステンレス鋼管の製造方法

低炭素の2相系(フェライト/マルテンサイト)及び/又は低炭素のマルテンサイト系ステンレス鋼管は、必要な降伏強さと耐腐食及び/又は耐侵食性を有する。従来のコストの高いビレットに孔を開けてシームレス管を製造する方法を用いたりUOE若しくはブレーキプレスを用いる方法ではなく、高速成形機を利用することにより処理済のプレート又はコイルから最大外径をした管を製造することができる。従来のレーザ、タングステンイナートガス、ガスメタルアーク、プラズマアーク、サブマージアーク若しくはダブルサブマージ溶接法を利用するのではなく、また炭素鋼管を溶接するのに従来用いられたERWのパラメータや手順を利用するものではないERW技術を用いる。管の用途における業務基準に合致する降伏強さ及び寸法公差を実現するように、熱処理工程及び連続的な成形機の能力に適合するような溶接管の寸法及び機械特性が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管の冶金及び製造方法に関し、特に、石油及びガス生産、液体、ガス及びスラリーの輸送のためのライン・パイプ、そして、採鉱、精製、発電及び石油化学プラント配管システム用のプロセス・パイプのための掘管の用途に用いられる耐腐食及び/又は耐浸食性のステンレス鋼管を製造するための電気抵抗溶接(Electric Resistant Welding:ERW)に適合する化学的性質を備えたステンレス鋼に係るものである。
【0002】
本発明によるステンレス鋼は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼、及び/又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)マルテンサイト系ステンレス鋼である。ここに説明するような溶加材を使用しないレーザ溶接法及び溶加材を使用せずに行われるERW法は、溶接ワイヤを溶かした溶接金属を排除し、溶加材を使用するタングステン・イナート・ガス(TIG)、ガス金属アーク溶接(MIG)、プラズマアーク(PLASMA)、サブマージアーク溶接(SAW)又はダブルサブマージアーク溶接(DSAW)法により溶接されて類似する化学的性質をしたものと比べて展延性の高い溶接部となる溶接熱影響部(Heat Affected Zone:HAZ)を少なくする。また、ERW製造方法は、類似する化学的性質をしたシームレス管、溶加材を用いずに類似する化学的性質をしたレーザ溶接管、及び、溶加材を用いて類似する化学的性質をした溶接管を製造するよりも費用効率がより高い。さらにこの方法は、マルテンサイト溶接熱影響部の選択的な連続的な誘導加熱又はガス加熱処理を含む。
【背景技術】
【0003】
掘管(Down-hole pipe)、ライン・パイプ及びプロセス・パイプは、石油及びガスの生産、石油化学、精製、発電及び採鉱産業における液体、ガス及び/又はスラリーの輸送システムに利用される。パイプ(管)は、利用される用途にしたがった面と垂直及び水平な面の両方に設置される。さらに、管は少量から多量の二酸化炭素及びその他の腐食する要素又は化合物を含む腐食環境にさらされる。さらに浸食の条件は、磨耗性の材料を含んでいる液体、ガス又はスラリーに存在する。近年、CO2応力腐食割れ及び腐食孔による破損に対する改善された耐腐食性、また、管によって輸送されている液体、ガス及びスラリー中の摩耗性の材料に対する改善された耐浸食性を示す管の開発が行われている。
【0004】
これらの条件にさらされる管は、応力腐食割れ、粒間腐食及び一般的な腐食による金属損失のような要因によって比較的短い時間で破損するかもしれない。壁の損失も浸食によって引き起こされるかもしれまない。鋼管の破損特性は、鋼の化学的性質、鋼の微細構造、鋼の機械的処理、及び提供される熱処理の性質を含む多くの要因によって影響を受ける。
【0005】
腐食については、現在管の腐食を防ぐのに一般に用いられている方法は、薄層の耐腐食性材料で管の内面をコーティングすることである。そのようなコーティングの主な目的は、腐食物質とベース金属との間に物的障壁を備えることにより、管の耐用年数を延長することである。一般的なコーティング材には塗料、フェノール化合物、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂及びナイロン化合物が含まれる。
【0006】
腐食及び/又は浸食を防ぐ他の方法は、”耐腐食/浸食性の合金”(Corrosion Erosion Resistant Alloy:CERA)で管を作ることである。そのようなCERA材料は、例えば、マルテンサイト系、2相系(マルテンサイト及びフェライト)、フェライト系、オーステナイト系及び複合(オーステナイト+フェライト)として定義された5つの合金ステンレスを含む。2相系(フェライト+マルテンサイト)は、室温における微細構造が特別なケミカルバランスによりフェライトとマルテンサイトから成るステンレス鋼である。マルテンサイト系ステンレス鋼はマルテンサイトの微細構造を有するステンレス鋼である。複合(オーステナイト/フェライト)は、室温におけるその微細構造が主として略等しい体積百分率のオーステナイト及びフェライトから成るステンレス鋼である。フェライトという用語は、フェライトの微細構造を備えたクロムステンレス鋼を意味する。クロムステンレス鋼は2つのクラスに分割される。すなわち、硬化性(hardenable)鋼、及び非硬化性(non-hardenable)鋼である。高い温度から急速に冷やされた時、非硬化性品質等級(フェライト)はフェライトの微細構造を持つ。急速に室温に冷やされた時、硬化性品質等級(マルテンサイト)はマルテンサイトの微細構造を示すであろう。オーステナイトは、低炭素、16%を超えるクロムと室温でオーステナイトの微細構造を安定させるのに十分なニッケルとを含んでいる鉄−クロム−ニッケル・ステンレス合金を意味する。これらの合金は熱処理によっては硬化しないが、冷間加工によって硬化し得る。このような品質等級は通常、非磁性であるが、冷間加工の構成及び量に左右されるわずかな磁性でありえる。個々のステンレス鋼の分類あるいは定義は、鋼のケミカルバランス及び生じる結晶構造によって以下のように決定される。
1)オーステナイト:面心立方構造の1つ以上の要素の固溶体。
2)フェライト:体心立方晶構造の1つ以上の要素の固溶体。
3)マルテンサイト:正方結晶構造の1つ以上の要素の固溶体。
マルテンサイトの微細構造は、針状の、あるいは針のようなパターンの微細構造に特徴がある。そのようなクラスの材料の商品例としては、石油及びガス用の下げ孔の用途に用いられる、重量で13%のクロムを含むマルテンサイト系のシームレス管や、石油及びガスの下げ孔による生産に用いられる、重量で22%のクロム及び42%のニッケルを含むオーステナイト系の管、石油及びガスの下げ孔による生産に用いられる、重量で22%のクロム及び5%のニッケルを含む複合の管、そして、液体及びガスを輸送するライン・パイプ及び現場の(in-plant)プロセス・パイプに用いられるオーステナイト系ステンレス鋼316L管があり、これらはテキサス州コンローのジョン・ガンディ社(John Gandy Corporation)によって販売されている。タイプ316Lの耐腐食性を得るための主要な金属添加物は、腐食孔に対する優れた抵抗性を得るために加えられたモリブデンを含むクロムである。タイプ316Lのステンレス鋼は、腐食性の環境によって左右される不動態被膜を含み、或いは含まずに、両方の異なる耐腐食性を示す。不動態被膜は浸食性の条件下では存在しないだろう。
【0007】
上記の問題及び、その他の似たような腐食性及び/又は浸食性の条件においては、ステンレス鋼管の提供が望まれる。しかしながら、ステンレス鋼の導入は検討中であるタイプの管の製造に更なる課題をもたらす。石油及びガスの生産用の下げ孔の用途、液体、ガス及びスラリーの輸送用のライン・パイプ、及び、採鉱、精製、発電及び石油化学プラントの配管システム用のプロセス・パイプに使用されている鋼管のような、従来の鋼管の製造に用いられている方法として2つの周知の商業的方法がある。これらの方法は、”シームレス”鋼管を製造するか、”溶接”鋼管を製造するかのいずれかである。一般に、シームレス鋼管は次のように製造される。まず、中実のビレットを用意し、マンネスマン穿孔法のような方法で中空のシェルを形成し、穿孔又は熱間押出しを行い、そしてエロンゲータ(elongator)、プラグミル又はマンドレルミルのような圧延機により、形成された中空のシェルを圧延し、圧延された中空のシェルを寸法測定器(sizer)又は引張り絞り圧延機(stretch reducer)で行なわれるサイジング・ワークへ移す。これにより、予定したサイズの最終パイプ製品を得ることができる。
【0008】
一般的な先行技術の方法では、シームレス管は、例えば直径が10インチで長さが6〜8フィートの鋼のビレットから製造される。1000℃以上に熱した後に、非常に厚い壁のチューブを形成するために、中心に孔が穿孔される。その後、それが特定の最終目的の大きさとなるまで、熱間圧延及び低温延伸によってチューブの肉厚及び直径が縮小される。シームレス法は製造にコストのかかる方法であり、外径寸法及び長さの両方に制限を受ける。
【0009】
他方、溶接管はプレート又はコイルと呼ばれる平坦な帯板で作られている。平坦な帯板は管の形状にされて、プレート又はコイルの両長手方向の端部はPlPEの長さに沿って互いに溶接される。溶接管の製造に利用される一般的かつ慣習的な溶接方法には7つの方法がある。これらの方法は、レーザ、タングステン不活性ガス(Tungsten Inert Gas:TIG)、ガス金属アーク溶接(Gas Metal Arc Weld:MIG)、プラズマアーク、サブマージドアーク溶接(Submerged Arc Welding:SAW)、ダブルサブマージドアーク溶接(Double Submerged Arc Welding:DSAW)及び電気抵抗溶接(Elecric Resistance Welding:ERW)である。溶接及び溶接部の構造的及び表面的な欠陥を回避するためには、さらなる注意が必要である。そのような問題はシームレスパイプには生じえないので、シームレス管の製造方法には多くの状況において利点がある。しかしながら、そのような管を生産する公知の方法に付随する困難性、及び連続する管に関する均一性の不足と共に、シームレス管の製造に発生するコスト、及びある大きなサイズ及び長い長さのものを生産するときにかかる特有の制限が、溶接管を使用する方向へと産業界を導いてきた。溶接管は製造に最もコストのかからない方法であって、外径及び通常的には長さに制限されず、そして品質においてはシームレス管と同等である。
【0010】
シームレス管に対する溶接管の他の特性は、TIG、MIG、プラズマアーク、SAW又はDSAWによって製造された溶接管は、元来溶加材を使用するということである。レーザとERWの溶接方法は溶加材を使用しない。重量で10.5%〜24%のクロムを含む一般的な2相系(マルテンサイト+フェライト)、マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系及び複合(オーステナイト+フェライト)のステンレス鋼の溶接は、これまではTIG、MIG、プラズマアーク、SAW及びDSAWの溶接方法に限り成功している。出願人の知っている限りでは、ERW方法は、石油及びガス生産用の下げ孔の用途、液体、ガス及びスラリーの輸送用のライン・パイプ、そして、採鉱、精製、発電及び石油化学プラント配管システム用のプロセス・パイプに使用される、重量で10.5%〜14%のクロムを含む2相系(フェライト+マルテンサイト)、マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系及び複合(オーステナイト及びフェライト)のステンレス鋼に実施されていない。”ERW方法”は、抵抗加熱及び圧力により帯板(帯板は電気回路の一部である)、シート又はバンドからパイプを製造する方法を意味する。電流(それは電極を介して、又は誘導によって帯板にながれればよい)は、帯板の電気抵抗によって溶接熱を生じる。さらに、出願人の知っている限りでは、ERW方法は、石油及びガス生産用の下げ孔の用途、液体、ガス及びスラリーの輸送用のライン・パイプ、プロセス・プラント、発電、及び/又は精製配管システムに使用される、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼、及び/又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)マルテンサイト系ステンレス鋼管には実施されていない。
【0011】
本発明の一目的は、石油及びガス生産用の下げ孔の用途、液体、ガス及びスラリーの輸送用のライン・パイプ、プロセス・プラント、発電、及び/又は精製配管システムに使用される、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼、及び/又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)マルテンサイト系ステンレス鋼管からなり、溶加材を使用しない耐腐食及び/又は耐浸食性のERW溶接方法によるステンレス鋼管を製造することである。
【0012】
本発明の他の目的は、石油及びガス生産用の下げ孔の用途、液体、ガス及びスラリーの輸送用のライン・パイプ、プロセス・プラント、発電、及び/又は精製配管システムに使用される、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼、及び/又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)マルテンサイト系ステンレス鋼からなり、溶加材を使用しない耐腐食及び/又は耐浸食性のERW溶接管を製造することである。なお、当該ERW溶接管は、配管システムに用いるような溶加材を使用するTIG、MIG、プラズマアーク、SAW及びDSAWによって従来の通り溶接されたステンレス鋼管(重量で10.5%〜14%のクロムを含む)よりも商業的に経済的であり、従来のステンレス鋼管は、ERW方法と比べると、成形スピード及び溶接スピードの遅さと溶加材のコストのためによりコストがかかるものである。
【0013】
本発明の他の目的は、石油及びガス生産用の下げ孔の用途、液体、ガス及びスラリーの輸送用のライン・パイプ、プロセス・プラント、発電、及び/又は精製配管システムに使用される、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼、及び/又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)マルテンサイト系ステンレス鋼からなり、溶加材を使用しない耐腐食及び/又は耐浸食性のERW溶接管を製造することであり、当該ERW溶接管は、配管システムに用いるような溶加材を使用するTIG、MIG、プラズマアーク、SAW及びDSAWによって従来の通り溶接された他のステンレス鋼管(重量で10.5%〜14%のクロムを含む)と比べると、同等のベース金属の機械特性であるが、低入熱のために優れた溶接部の展延性を示し、溶接線及び熱影響部(heat affected zone:HAZ)が非常に狭くなったものである。
【0014】
本発明の他の目的は、石油及びガス生産用の下げ孔の用途、液体、ガス及びスラリーの輸送用のライン・パイプ、プロセス・プラント、発電、及び/又は精製配管システムに使用される、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼、及び/又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)マルテンサイト系ステンレス鋼からなり、溶加材を使用しない耐腐食及び/又は耐浸食性のERW溶接管を製造することであり、当該ERW溶接管は、溶加材を使用するTIG、MIG、プラズマアーク、SAW及びDSAWによって従来の通り溶接されたステンレス鋼管(重量で10.5%〜14%のクロムを含む)と比べると、同等若しくは同等以上の品質のものであり、ステンレス鋼管は、この方法によって生じる高熱のために過度に大きな溶接金属の析出及び広い熱影響部に低い展延性の溶接部を生成する問題をしばしば招く。この問題は、ベース金属による溶接金属(溶けた溶接ワイヤ)の稀釈によって悪化される。
【0015】
本発明の他の目的は、石油及びガス生産用の下げ孔の用途、液体、ガス及びスラリーの輸送用のライン・パイプ、プロセス・プラント、発電、及び/又は精製配管システムに使用される、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼、及び/又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)マルテンサイト系ステンレス鋼からなり、溶加材を使用しない耐腐食及び/又は耐浸食性のERW溶接管を製造することであり、当該ERW溶接管は、ビレットを穿孔する方法によって製造された10.5%〜14%のクロムを含むシームレス・ステンレス鋼管よりも商業的に経済的なものである。
【0016】
本発明の他の目的は、石油及びガス生産用の下げ孔の用途、液体、ガス及びスラリーの輸送用のライン・パイプ、プロセス・プラント、発電、及び/又は精製配管システムに使用される、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼、及び/又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)マルテンサイト系ステンレス鋼からなり、溶加材を使用しない耐腐食及び/又は耐浸食性のERW溶接管を製造することであり、当該ERW溶接管は、ビレットを穿孔する方法によって製造された10.5%〜14%のクロムを含むシームレス・ステンレス鋼管と同等の機械特性のものである。
【0017】
本発明の他の目的は、石油及びガス生産用の下げ孔の用途、液体、ガス及びスラリーの輸送用のライン・パイプ、プロセス・プラント、発電、及び/又は精製配管システムに使用される、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼、及び/又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)マルテンサイト系ステンレス鋼からなり、溶加材を使用しない耐腐食及び/又は耐浸食性のERW溶接管を製造することであり、当該ERW溶接管は、ビレットを穿孔する方法によって製造された10.5%〜14%のクロムを含むシームレス・ステンレス鋼管と品質が同等のものである。
【0018】
本発明の他の目的は、石油及びガス生産用の下げ孔の用途、液体、ガス及びスラリーの輸送用のライン・パイプ、プロセス・プラント、発電、及び/又は精製配管システムに使用される、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼、及び/又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)マルテンサイト系ステンレス鋼からなり、溶加材を使用しない耐腐食及び/又は耐浸食性のERW溶接管を製造することであり、当該ERW溶接管は、TIG、MIG、プラズマアーク、SAW及びDSAWによって溶接されたステンレス鋼P(重量で10.5%〜14%のクロムを含む)の溶接よりも、低炭素ソフトマルテンサイトがはるかに展延性のある溶接を生成する熱影響部(HAZ)となるのに加えて、溶接線及びHAZが非常に狭くなる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、石油及びガス生産用の下げ孔の用途、液体、ガス及びスラリーの輸送用のライン・パイプ、プロセス・プラント、発電、及び石油化学プラント配管システムに使用されるERW溶接法による溶接管の製造に適し、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼、及び/又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)マルテンサイト系ステンレス鋼を提供する。より詳しくは、本発明は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼、及び/又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)マルテンサイト系ステンレス鋼からなり、溶加材を使用しないERW溶接法による溶接管の製造方法を提供する。当該ERW管は、特に応力腐食割れ、粒間腐食、及び摩損のために、中〜高強度すなわち、溶接熱影響部(HAZ)に強靭性と優れた耐腐食及び耐侵食性を有し、材料の熱的及び機械的処理が規定され利用されるステンレス鋼の品質等級に規定された化学成分に特徴がある。
【0020】
本発明の溶接方法は、溶加材を使用しない従来のレーザ溶接、又は溶加材を使用するTIG、MIG、プラズマアーク、SAW及びDSAW溶接法ではなく、溶加材を使用しないERW製造方法を用いるものであり、この溶加材は過熱を引き起こす溶接金属(溶けた溶接ワイヤ)の希釈及び広い熱影響部(HAZ)を要因となる。また、本発明の方法は、余分な幅を除去するためにエッジトリミングを用い、集積した酸化物を取り除いて清掃し、プレート又はコイルを高速ロール成形機に投入するのに先立って、プレート又はコイルの端部にあるクラックをすべて除去する。プレート又はコイルがロール成形機にある間、アプセット工程で生成される余分な柔軟な(pliable)ステンレス鋼(スクイズ(squeeze material)と呼ばれる)を熱間アプセットして押出すのに十分な圧力で、成形された管は両側の長手方向の端部を互いに押圧されて垂直及び水平に抑えられる。ERWの熱間アプセット工程により、耐熱性の酸化クロムはすべて確実に押出されるようになる。これにより溶接線はしっかりしたものになる。管の肉厚及び誘導溶接の電流周波数に左右される実際の速度であって、毎分100フィート以内の速度で管は縦方向に移動され、肉厚を管材の化学的性質と適合するように公式化された高温で、端部同士が接合される。そしてスクイズは管の内径及び外径からスカーフブレードによりパイプ本体のばりを取り除かれる。一部では、方法は、溶接方法に従って、管の溶接部及びその隣接部及び/又は全体を誘導若しくはガス燃焼加熱することによる、選択的な自動インラインの溶接後熱処理を直ちに必要とする。
【0021】
本発明の好的方法の最終ステップは、完全な溶接が行われたことを確認する溶接ラインの超音波検査若しくは電磁気検査を含む。
【0022】
更なる目的、特徴及び利点は、後述の明細書中で明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
ここで図1を参照すると、フローチャートが図示されており、これは本発明を実施するのに特に好適な方法である。11として図示される方法の第一のステップでは、本発明の管を製造する出発原料として、重量で10.5〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼、又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)マルテンサイト系ステンレス鋼からなる、耐腐食又は耐浸食性の完成したプレート又はコイルが提供される。選択された耐腐食及び/又は耐浸食性合金の化学的性質は、ステンレス鋼管などによって輸送される生成品の摩耗性と同様に、化学的性質、温度、内部圧力及び外部圧力を含む直面する特定の環境に左右されるであろう。テキサス州コンローのジョン・ガンディ社(John Gandy Corporation)から市販されているコンピュータ・プログラムにより、ユーザは、最終的に使用する用途に予期される環境を考慮に入れた最適のパイプ・ストリングを設計することができる。さらに、テキサス州コンローのジョン・ガンディ社から市販されている等級選択コンピュータ・プログラムにより、ユーザは、管が破損せずに、かつその目的の用途における管の耐用年数を増加させるのに適切なクロム含有量を選択することができる。
【0024】
耐腐食及び/又は耐浸食性のクロムに基づく合金材料の代表的実施例は、次のものを含んでいる。すなわち、(1)8%〜10%のクロム(2)10%〜14%のクロム(3)3.5%〜4.5%のニッケルと1.8%〜2.5%のモリブデンとを含む12%〜14%のクロム(4)4.5%〜5.5%のニッケルと1.8%〜2.5%のモリブデンとを含む12%〜14%のクロム(5)1.5%のニッケルと0.5%のモリブデンとを含む13%〜16%のクロムである。腐食及び/又は浸食性のクロム材料のこの一般的な分類には実際には無数の選択肢があり、この分類は考慮される特定の腐食及び/又は浸食環境に左右され、単に本発明を明確にするのに役立つものとして記載したものである。図4は、ステンレス鋼に示される2相系ラインを備えたガンマ・ループ相図を示す。また図4には、カルテンホイサー係数(Kaltenhauser Factor)を導く公式が示されており、これはステンレス鋼の微細構造を予測するケミカルバランスの公式である。2相系ステンレス鋼の微細構造ではカルテンホイサー係数の公式の解は、Km=8〜10.7の範囲になければならず、マルテンサイト系ステンレス鋼の微構造ではKm=<7.5でなければならず、これらは、Km=クロム+6シリコン+8のチタン+4モリブデン+2アルミニウム−2マンガン−4ニッケル−40(炭素+窒素)−20リン−5銅、の公式を用いることにより決定される。なお、要素は重量%で示している。調整された微細構造は、フェライト・マトリクスに素晴らしい炭化物の列を示すであろう。前述の公式から、次の一般的な鋼組成(%)を使用する例を下記に示す。

C Mn P S Si Cu Ni
0.011 1.38 0.020 0.003 0.55 0.09 0.42

Cr Mo V Ti Ai N
11.7 0.23 0.023 0.001 0.006 0.0127

上記の一般的な鋼組成に公式が適用される場合、カルテンホイサー係数は9.702であって、2相系の範囲(8〜10.7)内にある。

Km=Cr+6Si+8Ti+4Mo+2Al−2Mn−4Ni
−40(C+N)−20P−5Cu
Km=11.7+(6)(0.55)+(8)(0.001)
+(4)(0.23)+(2)(0.006)-(2)(1.38)
-(4)(0.42)-(40)(0.011+0.0127)
-(20)(0.020)-(5)(0.09)
Km=11.7+3.3+0.008+0.92+0.012-2.76
-1.68-0.948-0.40-0.45=9.702
【0025】
図1に示されるフローチャートに則して本発明の好適な方法について説明する。ここで説明する本発明の好適な実施形態では、重量で10.5%〜14%のクロムを含む完成した低炭素(最大含有量が重量で0.080%)2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼、及び/又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)マルテンサイト系ステンレス鋼板は、ペンシルベニア州コーツヴィルのベスレヘム・ルーケンズ・プレイト社(Bethlehem Lukens Plate Company)から入手した。完成したプレートは、電気炉で融解し、VOD炉で取鍋精錬することにより製造され、9インチの厚さのスラブを生成する連続鋳造が後に続く。その後、スラブはスラブ再加熱炉の中で熱され、続いて熱いスラブを0.375ストリップ厚のコイルへ熱間ロール成形する。その後、曲げられたコイルは、台車式炉の中で焼き戻し熱処理をされた。その後、焼き戻しされたコイルはプレートを作る長さへカットされた。その後、プレートは検査されテストされた。必要に応じてプレートを酸洗いし、或いはショットブラストする選択肢もある。
【0026】
ステップ11で端部が完成されたプレートは、規定のプレート幅、及び、プレートの端部の互いへの完全な溶接を防ぐエッジクラッキング及び酸化物の除去を得るためにステップ13で端部をトリミングされる。ステップ13の後、プレートはステップ16の高速ロール成形機に渡される。処理能力における重要な進歩は、より低速な従来のUOE成形加工ミル又は従来のTIG、MIG、プラズマアーク、SAW及びDSAW溶接と共にステンレス鋼板をパイプに形成するために利用されるブレーキプレス(break press)の代わりに、クロムステンレス鋼管を形成する高速ロール成形機の利用により、このステップで達成される。例えば、標準的UOE成形加工ミルは一般的に、40〜50フィートの長さのプレートを毎時4〜6枚の生産量を有し、また、20フィートのプレートを毎時約1枚生産するブレーキプレスが、伝統的にかつ最も一般的に用いられている。ERWの高速ロール成形機は、実際の速度は肉厚に左右されるが、毎分100フィートまでの生産速度を達成することができる。図2は鋼板21に作用する長手方向のローラセット17及び20を備えた一般的な商業用高速ロール成形機を示す。図3の単純化されたフローに示されるように、図1のステップ16で生産された管は、肉厚「t」、長さ「l」及び、長手方向の継手部23を有しており、これは重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼、及び/又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼のプレート又はコイルを高速ロール成形機に供給することによって形成される。
【0027】
本発明の方法によって製造された管の外径は重要な意味を持つものではないが、一般的には2〜6インチよりも大きく、約12〜36インチ若しくはそれ以上であり得る。管の直径が増大するにしたがって本発明の有用性が高くなる。本発明の方法の次のステップでは、ステップ16で製造された管は、電気抵抗溶接(ERW)法によって、図1のステップ19で継ぎ目部に沿って溶接される。ERWという用語は、一般的に産業界では、チューブ及びパイプの製造に利用可能ないくつかの電気抵抗溶接法をいうものとして使用されている。方法によって特性が異なる。プレート又はコイルの端部に熱及び圧力或いは鍛造力を加えることにより、端部の接合部を形成するが、接合工程の前に端部を加熱するために、その結果として熱影響部が形成されることとなる。通常ステンレス鋼の融点より僅かに低い最適な温度で、熱した端部を互いに押付けるチューブ断面の円周圧力を略同時に加えることにより接合は成功する。鋼の電流に対する抵抗の結果として溶接熱が発生する。その圧力は、チューブを完成形へと押し込むロールにより与えられる。2つの主なタイプのERWは、高周波技術及び回転接触ホイール技術である。本発明の好適な方法である高周波技術では誘導溶接が使用されている。高周波の誘導溶接の場合には、溶接電流が溶接点前方のワークコイルに流される。ワークコイルはチューブに接触せず、チューブを囲む磁界によって材料に電流が誘導される。高周波の誘導溶接は接触痕を生成せず、チューブ・サイズを変更するときに必要となるセットアップ時間が短縮される。さらに、必要とされるメンテナンスは接触溶接よりも少ない。
【0028】
ここに説明した本発明の好適な実施形態において、ERW溶接法は、テキサス州ブリビレ(Beliville)のブリビレ・チューブ部門(Beliville Tube Division)で溶接鋼管のリーディング・メーカーであるロン・スター・スチール社(Lone Star Steel Company)によって製造された、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼、及び/又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)マルテンサイト系ステンレス鋼管を用いて行われた。加えて、メキシコ、N.L.、モンテレイ(Monterrey)で大きな外径の溶接スチール・ライン・パイプのリーディング・メーカーであるトゥバセロ社(Tubacero)(S.A. de C.V.)では、オイルサンドの採鉱における液体スラリーの輸送に利用され、外径が24インチの、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼、及び/又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)マルテンサイト系ステンレス鋼管を溶接した。出願人の知っている限りでは、ERW法による誘導溶接は、出願人の、ロン・スター・スチール社により溶接された外径の小さな薄厚鋼管、及び、試験としてERW法によってトゥバセロ社(S.A. de C.V.)にて溶接された外径の大きな肉厚鋼管の出願人による試験的製品を製造する前には、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)2相系(フェライト+マルテンサイト)の、又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)マルテンサイト系ステンレス鋼管の図3の継ぎ目部23を結合するために、ERW法による誘導溶接は使用されていない。そのような技術は、重量炭素含有量が高くしかもクロム及びニッケル含有量の低い鋼については好適であることが見出されたが、10.5%〜14%のクロムを含むステンレス鋼の合金を溶接する場合は、溶接強度を弱める耐火性の酸化クロムが接合ラインに残らないようにするために、端部を熱する時間及び熱間アプセット圧力のような特別のライン条件が必要である。熱間アプセット法で酸化クロムを除去することは、炭素鋼及び合金鋼に関連する酸化鉄を除去するよりもはるかに難しい。
【0029】
上記以外の6つの異なる溶接法は、大量生産に本発明を適用するためには経済的に不満足であることが見出された。従来の溶接法は、溶加材のコストが高く、UOE及びブレーキプレス成形加工が多大な時間を要し、特に溶接が低速であるために非経済的であることが見出された。溶加材を使用しない本発明の好適な方法と異なり、溶加材を利用するその他の従来の溶接法は、溶接部の展延性の点において満足であるとは言い難いことがと見出された。しかしながら、小さな欠陥が生産検査ステップの間に発見された場合などのように、出願人の改善した方法によって製造されたパイプが修理される場合、修理を行なうために溶加材を使用してもよいことを了解されたい。
【0030】
本発明の特に好適な方法では、プレートの端部は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼、及び/又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)マルテンサイト系ステンレス鋼管に形成された全長に渡る長手方向の端部を誘導溶接するのに必要な基準を満たすような準備がされた。ERW法が行われている間に、形成されたプレートの端部が圧縮されることにより、熱間アプセットの結果として形成された部分が溶接管の内周及び外周側へ押出される。その後、図1のステップ19におけるERW法により、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)2相系(フェライト+マルテンサイト)の、及び/又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(最大含有量が重量で0.080%)マルテンサイト系ステンレス鋼は、誘導溶接機の電流周波数、肉厚、及び溶接機を通過するパイプの長手方向の移動速度に基づいた計算にしたがった正確な温度へと加熱され、適切な量の押出しが生成される。その後、図1のステップ22において、金属スクイズが溶接温度によって柔軟である間に、図1のステップ19のERWに続いて内側及び外側のスカーフィング器具によって余分なスクイズが直ちに除去される。
【0031】
図1の25として図示される次のステップでは、接合部及び隣接する熱影響部の熱処理、或いは熱影響部を展延性のあるものにする全体熱処理のいずれかが行われる。展延性のあるものとはすなわち、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(0.080%の最大含有量)2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼、及び/又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(0.080%の最大含有量)マルテンサイト系ステンレス鋼管の非溶接部分の物理的特性のようなものである。熱処理法の種類は時として、管の所望の用途に期待される強度要件と関連して予想される腐食及び/又は浸食条件に左右される。
【0032】
上記手順そしてすべての状況にしたがって、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(0.080%の最大含有量)2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼、及び/又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(0.080%の最大含有量)マルテンサイト系ステンレス鋼管は、ステップ30において溶接継目又は鋼管全体を超音波検査若しくは電磁検査される。図1のステップ32では、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(0.080%の最大含有量)2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼、及び/又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(0.080%の最大含有量)マルテンサイト系ステンレス鋼管は完成される。
【0033】
本発明はいくつかの利点を有する。本発明の方法は、穿孔によるシームレス・ビレット及び/又はレーザ、FIG、MIG、プラズマ、SAW及びDSAW溶接方法によって製造された、クロムステンレス鋼管に対する経済的な代替品を提供するものである。さらに、この方法は、溶加材を使用する他の溶接方法によって製造された管よりも高い展延性を有し、溶接熱影響部が非常に狭い管を提供する。この方法の1ステップで用いられたERW溶接機に直列に配置された連続的な高速成形機は、従来の低速のUOE/ブレーキプレス法を超える顕著な処理能力における利点を提供する。UOE/ブレーキプレスは、TIG、MIG、プラズマ、SAWあるいはDSAW溶接される管の成形加工の製造工程に従来から使用されている。重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(0.080%の最大含有量)2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼、及び/又は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素(0.080%の最大含有量)マルテンサイト系ステンレス鋼からなるコイルを利用することで、ERW及びレーザ法によって、長さの制限を受けない管を得ることができ、連続的なロール成形機も長さを制約しない。シームレス・ビレット及びシームレス・パイプ製造ミルにより製造される管は、従来から50フィート未満の長さに制限されていた。従来のUOEミルは50フィート以下の長さの管を製造し得るのみであり、従来のブレーキプレスは20フィート以下の長さの管を製造し得るのみである。
【0034】
本発明は1つの形態について示されているが、本発明はこれに制限されるものではなく、その思想から外れることなく様々な変更及び修正を行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の方法のステップを示すフローチャートである。
【図2】本発明の方法の一ステップにおいて使用される高速ロール成形機中をフィードされる処理済のステンレス鋼板の一部を示す斜視図である。
【図3】本発明の溶接方法を用いて溶接されたステンレス鋼管の一部を示す斜視図である。
【図4】2相系の微細構造のケミカルバランスラインが示されたステンレス鋼のγ環相図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体、ガス及びスラリーの輸送のためのライン・パイプとして、そして、採鉱、精製、発電及び石油化学プラント配管システム用のプロセス・パイプとして、石油及びガス生産のための掘管の用途に有用な管であって、
重量で約0.080%未満の炭素と重量で10.5%〜14%のクロムとを含む耐腐食及び/又は耐浸食性のステンレス鋼から形成された側壁を有する管本体部を含み、
前記管本体部は、電気抵抗溶接で溶接されている継目部を全長に渡り有することを特徴とする管。
【請求項2】
前記耐腐食及び/又は耐浸食性のステンレス鋼は、低炭素2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼であることを特徴とする請求項1に記載の管。
【請求項3】
前記耐腐食及び/又は耐浸食性のステンレス鋼は、8〜10.7のカルテンホイサー係数(Kaltenhauser Factor)により決定されるケミカルバランス(chemical balance)を有することを特徴とする請求項2に記載の管。
【請求項4】
前記耐腐食及び/又は耐浸食性のステンレス鋼は、低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼であることを特徴とする請求項1に記載の管。
【請求項5】
前記耐腐食及び/又は耐浸食性のステンレス鋼は、7.5未満のカルテンホイサー係数により決定されるケミカルバランスを有することを特徴とする請求項4に記載の管。
【請求項6】
前記耐腐食及び/又は耐浸食性のステンレス鋼は、マルテンサイト鋼、2相(フェライト+マルテンサイト)鋼、フェライト鋼、オーステナイト鋼及び複合(オーステナイト+フェライト)鋼からなる群から選択された1種であることを特徴とする請求項1に記載の管。
【請求項7】
前記管本体部は、約2インチ〜6インチより大きな外径を有することを特徴とする請求項1に記載の管。
【請求項8】
前記管本体部は、約12インチより大きな外径を有することを特徴とする請求項6に記載の管。
【請求項9】
前記継目部は、高周波誘導溶接で溶接されていることを特徴とする請求項1に記載の管。
【請求項10】
耐腐食及び/又は耐浸食性のステンレス鋼で形成された溶接管の製造方法であって、
クロム、モリブデン及び炭素族、及びこれらの混合物のステンレス鋼からなる群から選択される耐腐食及び/又は耐浸食性の金属で形成されている完成したプレート又はコイルのいずれかを出発原料として提供する工程と、
前記出発原料を連続的な高速成形機に通し、長手方向の継目部と肉厚とを有する形成された本体部を生成する工程と、
高周波誘導溶接法を用いて前記形成された本体部を前記長手方向の継目部に沿って溶接する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記出発原料は、重量で約0.080%未満の炭素と重量で10.5%〜14%のクロムとを含む耐腐食及び/又は耐浸食性のステンレス鋼から選択されたことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記耐腐食及び/又は耐浸食性のステンレス鋼は、マルテンサイト鋼、2相(フェライト+マルテンサイト)鋼、フェライト鋼、オーステナイト鋼及び複合(オーステナイト+フェライト)鋼からなる群から選択された1種であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
溶接は、長手方向の継目部に沿って行われ、溶加材を用いずに前記形成された本体部の前記肉厚に渡って完全な溶け込みをすることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記溶接管は、前記長手方向の継目部に沿った酸化物のない溶接線を有することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記耐腐食及び/又は耐浸食性のステンレス鋼は、低炭素2相系(フェライト+マルテンサイト)ステンレス鋼であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記耐腐食及び/又は耐浸食性のステンレス鋼は、8〜10.7のカルテンホイサー係数により決定されるケミカルバランスを有することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記耐腐食及び/又は耐浸食性のステンレス鋼は、低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記耐腐食及び/又は耐浸食性のステンレス鋼は、7.5未満のカルテンホイサー係数により決定されるケミカルバランスを有することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記耐腐食及び/又は耐浸食性のステンレス鋼は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素2相系ステンレス鋼であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記耐腐食及び/又は耐浸食性のステンレス鋼は、重量で10.5%〜14%のクロムを含む低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記管本体部は、約2インチ〜6インチより大きな外径を有することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項22】
前記管本体部は、約12インチより大きな外径を有することを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記溶接法は前記管の柔らかい低炭素マルテンサイトの熱影響部を生じさせ、
前記長手方向の継目部に沿った溶接部の展延性を改良する焼き戻し熱処理工程において、前記熱影響部を選択的に誘導加熱又はガス加熱する工程と、
完成した管の全体検査及び/又は溶接部の検査を行う工程と
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項24】
前記管本体部及び熱影響部に仕様から外れる欠陥がないように、前記検査は超音波探傷検査法及び/又は電磁検査法を用いて行われることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記製造された管の最大外径は、連続的なロール成形機の最大寸法以外の制限を受けないことを特徴とする請求項10に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−516351(P2007−516351A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533198(P2006−533198)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/015598
【国際公開番号】WO2004/104464
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(505428961)トルクロック・コーポレイション (1)
【氏名又は名称原語表記】TORQUELOCK CORPORATION
【住所又は居所原語表記】200 River Pointe Drive, Suite 110, Conroe, Texas 77304, U.S.A.
【Fターム(参考)】