説明

配管振動低減装置

【課題】迅速かつ容易に配管に対して設置すること。
【解決手段】弾性を有する板部材1の一端1aと他端1bとの途中に板幅方向に連続する屈曲部または湾曲部からなる弾性手段1cが形成されており、板部材1の板面を配管10の軸方向に沿わせて当該板部材1の一端1aが配管10に固定され、板部材1の他端1bが配管10を支持すべき支持部11に固定される。すなわち、板部材1に屈曲部または湾曲部からなる弾性手段1cを形成した簡素な構成であり、当該板部材1の一端1aと他端1bとを固定するだけで、配管10と支持部11との間に介在させて、主に配管10の半径方向(上下方向Vおよび左右方向H)の振動を低減する。このため、プラントを停止する必要もなく、迅速かつ容易に配管10に対して設置することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管に生じる振動を低減する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種プラントには、多数の配管が配置されている。この配管は、固有振動数を有している。そして、管内を流動する流体や、配管と接続されている回転機械など、外部から作用する励振力の振動数が配管の固有振動数と一致すると、共振して配管が破損するおそれがある。しかし、プラントに数多く配置されている配管の固有振動数を解析することは現実的でなく、その都度、問題が生じるおそれのある配管に対して適した振動低減装置を設置することが、プラントを停止させずに対応でき好ましい。したがって、プラントにおいて迅速かつ容易に振動低減装置を設置することが切望されている。
【0003】
なお、従来、振動解析を行うものとして、例えば、特許文献1では、大口径の母管と母管より小口径の小径配管とを接続する配管系において、前記母管に母管振動測定装置を、小径配管に小径配管振動測定装置を設置すると共に、両振動測定装置により得た測定データにより解析を行う解析装置と、その解析結果に基づき共振の診断を行う診断装置と、その診断データを基にして小径配管の固有振動数を変更させる振動低減装置を設ける。
【0004】
また、従来、配管に簡単に装着できて制振させるものとして、例えば、特許文献2では、配管にクランプできるように半円筒形状とした各内側板に接合用突出片を設けて、接合用突出片同士をボルトで締め付けることにより各内側板が配管にクランプできるようにし、各内側板の外側に外側板をそれぞれ配置して固定し、各内側板と各外側板との端部間を閉塞板で塞いで部屋を形成して、部屋に流動物を内蔵させて質量を増加させ、配管系の質量を変えて固有振動数を変更させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−135729号公報
【特許文献2】特開平10−82482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した課題を解決するものであり、迅速かつ容易に配管に対して設置することのできる配管振動低減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の配管振動低減装置は、弾性を有する板部材の一端と他端との途中に板幅方向に連続する屈曲部または湾曲部からなる弾性手段が形成されており、前記板部材の板面を配管の軸方向に沿わせて当該板部材の一端が前記配管に固定され、前記板部材の他端が前記配管を支持すべき支持部に固定されることを特徴とする。
【0008】
板部材に屈曲部または湾曲部からなる弾性手段を形成した簡素な構成であり、当該板部材の一端と他端とを固定するだけで、配管と支持部との間に介在されて、主に配管の半径方向の固有振動数を変更する効果を与え、励振力の振動数から離調することで配管の共振を防ぎ、配管の損傷を防止する。すなわち、この配管振動低減装置によれば、プラントを停止する必要もなく、迅速かつ容易に配管に対して設置することができる。しかも、配管を固定するものでないことから、振動によって配管との摩擦が生じないので、配管の摩耗による損傷を防ぐこともできる。
【0009】
また、本発明の配管振動低減装置は、前記弾性手段は、前記板部材の一端と他端との間で屈曲部または湾曲部によって折返し状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
この配管振動低減装置によれば、簡素な構成で配管の半径方向に加えて配管の軸方向の振動も低減することができる。しかも、配管が軸方向に熱伸びした場合に、この熱伸びも吸収することができる。
【0011】
また、本発明の配管振動低減装置は、前記配管をクランプするクランプ部材を備え、前記板部材の一端が前記配管とともに前記クランプ部材によってクランプされることを特徴とする。
【0012】
この配管振動低減装置によれば、クランプ部材によって配管への板部材の固定を容易に行うことができ、迅速かつ容易に配管に対して設置する効果を顕著に得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、迅速かつ容易に配管に対して設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る配管振動低減装置の正面視の断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る配管振動低減装置の側面図である。
【図3−1】図3−1は、弾性手段の例を示す概略図である。
【図3−2】図3−2は、弾性手段の例を示す概略図である。
【図3−3】図3−3は、弾性手段の例を示す概略図である。
【図3−4】図3−4は、弾性手段の例を示す概略図である。
【図3−5】図3−5は、弾性手段の例を示す概略図である。
【図3−6】図3−6は、弾性手段の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0016】
図1は、本実施の形態に係る配管振動低減装置の正面視の断面図であり、図2は、本実施の形態に係る配管振動低減装置の側面図であり、図3−1〜図3−6は、弾性手段の例を示す概略図である。
【0017】
配管振動低減装置は、弾性を有する板状の板部材1によって構成されている。板部材1は、一端1aが配管10に固定され、他端1bが配管を支持すべき支持部11に固定される。配管10は、プラントに配置され、管内に流体が流動するもので、前記流体を流動させる回転機械などが接続される。また、支持部11は、プラント建屋の床、壁または天上や、プラントに配置された他の配管などがある。
【0018】
配管振動低減装置の板部材1は、一端1aと他端1bとの途中が連続して折り曲げられた屈曲部、または弓なりに曲げられた湾曲部としての弾性手段1cが形成されている。図1および図2において、弾性手段1cは、屈曲部によって複数のクランク型に形成されている。また、弾性手段1cは、図3−1に示すように屈曲部によって板部材1の一方の面側に凸型に形成されていたり、図3−2に示すように屈曲部によってジグザグ型に形成されていたり、図3−3に示すように屈曲部によって板部材1の一方の面側にV型に形成されていたり、図3−4に示すようにクランク型が湾曲部によって形成されていたり、図3−5に示すように凸型が湾曲部によって形成されていたり、図3−6に示すようにジグザグ型が湾曲部によって形成されていたりしてもよい。
【0019】
この板部材1は、その板面を配管10の軸Sの延在方向である軸方向Aに沿わせて設けられている。つまり、板部材1の板幅方向Wと配管10の軸方向Aとが平行な関係にある。そして、板部材1は、弾性手段1cによって図1に示すように配管10の上下方向V(上下の半径方向)および左右方向H(左右の半径方向)に弾性力を生じる。また、板部材1は、図1、図3−2、図3−4および図3−6に示すように、弾性手段1cが板部材1の一端と他端との間で屈曲部または湾曲部によって折返し状に形成されていることによって、図2に示すように配管10の軸方向A(板部材1の板幅方向W)にも弾性力を生じる。
【0020】
また、板部材1は、図1および図2に示すように、配管10に対してクランプ部材2によって一端1aが固定されている。クランプ部材2は、配管10の両側部の形状に沿うように、円筒を半割された各外殻2aと、当該各外殻2aの分割された端部に延出されたフランジ2bとを有している。このクランプ部材2は、各外殻2aによって配管10の両側を挟むようにし、突き合わされたフランジ2b同士をボルト2cによって締結することで、配管10に取り付けられる。そして、板部材1は、その一端1aがクランプ部材2の突き合わされたフランジ2bの間に挿入され、フランジ2bとともにボルト2cによって締結されることで、配管10に固定される。なお、板部材1は、クランプ部材2を用いずに配管10に対して溶接によって一端1aが固定されてもよい。
【0021】
また、板部材1は、支持部11に対しては、図には明示しないが、ボルトによる締結や、溶接によって他端1bが固定される。支持部11が配管である場合には、上述のクランプ部材2を用いて板部材1の他端1bが固定されていてもよく、溶接によって板部材1の他端1bが固定されてもよい。
【0022】
このように構成された配管振動低減装置は、板部材1の弾性手段1cによって、配管10の上下方向Vおよび左右方向Hに弾性力(ばね力)を与えることで配管の固有振動数を変更することができ、励振力の振動数と配管の固有振動数を離調し、配管の共振を防ぎ、配管の損傷を防止する。また、板部材1の弾性手段1cが軸方向Aに弾性力を有する場合は、配管10の軸方向Aの振動にも同様の効果を与えることができる。
【0023】
すなわち、本実施の形態の配管振動低減装置は、弾性を有する板部材1の一端1aと他端1bとの途中に板幅方向Wに連続する屈曲部または湾曲部からなる弾性手段1cが形成されており、板部材1の板面を配管10の軸方向Aに沿わせて当該板部材1の一端1aが配管10に固定され、板部材1の他端1bが配管10を支持すべき支持部11に固定される。
【0024】
この配管振動低減装置によれば、板部材1に屈曲部または湾曲部からなる弾性手段1cを形成した簡素な構成であり、当該板部材1の一端1aと他端1bとを固定するだけで、配管10と支持部11との間に介在させて、主に配管10の半径方向(上下方向Vおよび左右方向H)の固有振動数を変更する効果を与え、励振力の振動数から離調することで配管の共振を防ぎ、配管の損傷を防止する。このため、本実施の形態の配管振動低減装置は、プラントを停止する必要もなく、迅速かつ容易に配管10に対して設置することが可能になる。しかも、配管10を固定するものでないことから、振動によって配管10との摩擦が生じないので、配管10の摩耗による損傷を防ぐことも可能である。
【0025】
また、本実施の形態の配管振動低減装置では、弾性手段1cは、板部材1の一端1aと他端1bとの間で屈曲部または湾曲部によって折返し状に形成されている。
【0026】
この配管振動低減装置によれば、簡素な構成で配管10の半径方向(上下方向Vおよび左右方向H)に加えて配管10の軸方向Aの振動も低減することが可能になる。しかも、配管10が軸方向Aに熱伸びした場合に、この熱伸びも吸収することが可能である。
【0027】
また、本実施の形態の配管振動低減装置は、配管10をクランプするクランプ部材2を備え、板部材1の一端1aが配管10とともにクランプ部材2によってクランプされる。
【0028】
この配管振動低減装置によれば、クランプ部材2によって配管10への板部材1の固定を容易に行うことができ、迅速かつ容易に配管10に対して設置する効果を顕著に得ることが可能になる。
【符号の説明】
【0029】
1 板部材
1a 一端
1b 他端
1c 弾性手段
2 クランプ部材
2a 外殻
2b フランジ
2c ボルト
10 配管
11 支持部
A 軸方向
H 左右方向(半径方向)
S 軸
V 上下方向(半径方向)
W 板幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有する板部材の一端と他端との途中に板幅方向に連続する屈曲部または湾曲部からなる弾性手段が形成されており、前記板部材の板面を配管の軸方向に沿わせて当該板部材の一端が前記配管に固定され、前記板部材の他端が前記配管を支持すべき支持部に固定されることを特徴とする配管振動低減装置。
【請求項2】
前記弾性手段は、前記板部材の一端と他端との間で屈曲部または湾曲部によって折返し状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の配管振動低減装置。
【請求項3】
前記配管をクランプするクランプ部材を備え、前記板部材の一端が前記配管とともに前記クランプ部材によってクランプされることを特徴とする請求項1または2に記載の配管振動低減装置。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図3−5】
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【図3−6】
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【公開番号】特開2012−189159(P2012−189159A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53852(P2011−53852)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】