説明

配線基板、その実装構造体、絶縁シートおよびそれを用いた配線基板の製造方法

【課題】本発明は、電気的信頼性を改善した配線基板を提供する。
【解決手段】本発明の一形態にかかる配線基板3は、複数の繊維12と、隣接する該繊維12同士の近接箇所にて該隣接する繊維12それぞれに接続した無機絶縁部材13とを有する無機絶縁層11aを備えている。本発明の一形態にかかる実装構造体1は、上記配線基板3と、該配線基板3に実装された電子部品2とを備えている。本発明の一形態にかかる絶縁シート22は、支持部材17xと、該支持部材17x上に配された無機絶縁層11aとを備え、該無機絶縁層11aは、複数の繊維12と、隣接する該繊維12同士の近接箇所にて該隣接する繊維12それぞれに接続した無機絶縁部材13とを有する。本発明の一形態にかかる配線基板3の製造方法は、上記絶縁シート22の無機絶縁層11aを基体7側に配しつつ、絶縁シート22を基体7に第1樹脂層10aを介して積層する工程を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器(たとえば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ機器およびその周辺機器)に使用される配線基板、その実装構造体、絶縁シートおよびそれを用いた配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器に用いられる配線基板として、ガラスクロスを含む配線基板が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、絶縁層と配線層とを積層してなり、該絶縁層がガラスクロスを含有する樹脂材によって形成された配線基板が記載されている。
【0004】
しかしながら、一般的に、ガラスクロスはガラス繊維が織り込まれてなるため、主面に凹凸が生じやすく、絶縁層の平坦性が低下しやすい。それ故、配線層の一部に応力が集中して断線が生じやすくなり、ひいては配線基板の電気的信頼性が低下しやすくなる。
【0005】
従って、電気的信頼性を改良した配線基板を提供することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−224739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電気的信頼性を改善した配線基板を提供することによって上記要求を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態にかかる配線基板は、複数の繊維と、隣接する該繊維同士の近接箇所にて該隣接する繊維それぞれに接続した無機絶縁部材とを有する無機絶縁層を備えている。
【0009】
本発明の一形態にかかる実装構造体は、上記配線基板と、該配線基板に実装された電子部品とを備えている。
【0010】
本発明の一形態にかかる絶縁シートは、支持部材と、該支持部材上に配された無機絶縁層とを備え、該無機絶縁層は、複数の繊維と、隣接する該繊維同士の近接箇所にて該隣接する繊維それぞれに接続した無機絶縁部材とを有する。
【0011】
本発明の一形態にかかる配線基板の製造方法は、上記絶縁シートの前記無機絶縁層を基体側に配しつつ、前記絶縁シートを前記基体に第1樹脂層を介して積層する工程を備えている。
【発明の効果】
【0012】
上記構成によれば、絶縁層の平坦性を高めることによって、導電層の断線を低減し、ひいては電気的信頼性を改善した配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(a)は、本発明の一実施形態にかかる配線基板を備えた実装構造体を厚み方向に切断した断面図であり、図1(b)は、図1(a)に示した実装構造体のR1部分を拡大して示した断面図である。
【図2】図2(a)は、図1(b)に示した実装構造体のR3部分を拡大して示した断面図であり、図2(b)は、2つの第1無機絶縁粒子が結合した様子を模式的に現したものである。
【図3】図3(a)は、図1(a)に示した実装構造体のR2部分を拡大して示した断面図であり、図3(b)は、図3(a)に示した実装構造体のR4部分を拡大して示した断面図である・
【図4】図4(a)ないし図4(f)は、図1(a)に示す配線基板の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図である。
【図5】図5(a)ないし図5(c)は、図1(a)に示す配線基板の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図である。
【図6】図6(a)および図6(b)は、図1(a)に示す配線基板の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態に係る配線基板を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1(a)に示した実装構造体1は、電子部品2と、該電子部品2を実装した配線基板3と、を含んでおり、例えば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ装置またはその周辺機器などの電子機器に使用されるものである。
【0016】
電子部品2は、例えばICまたはLSI等の半導体素子であり、配線基板3に半田等の導電材料からなるバンプ4を介してフリップチップ実装されている。この電子部品2は、母材が、例えばシリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム砒素リン、窒化ガリウムまたは炭化珪素等の半導体材料により形成されており、厚みが例えば0.1mm以上1mm以下に設定されており、平面方向および厚み方向への熱膨張率が例えば3ppm/℃以上5ppm/℃以下に設定されている。
【0017】
ここで、電子部品2の熱膨張率は、市販のTMA(Thermo-Mechanical Analysis)装置を用いて、JISK7197‐1991に準じた測定方法により測定される。以下、第1ないし第4樹脂層10aないし10dや第1、第2無機絶縁層11a、11bをはじめとする各部材の熱膨張率は、電子部品2と同様に測定される。
【0018】
一方、配線基板3は、コア基板5と、コア基板5の上下面に形成された一対の配線層6と、を含んでおり、電子部品2を支持するとともに、電子部品2を駆動もしくは制御するための電源や信号を電子部品2へ供給する機能を有する。
【0019】
以下、配線基板3の構成について詳細に説明する。
【0020】
(コア基板)
コア基板5は、配線基板3の剛性を高めつつ一対の配線層6間の導通を図るものであり、配線層6を支持する基体7と、基体7に設けられたスルーホールと、該スルーホール内に設けられ、一対の配線層6同士を電気的に接続する筒状のスルーホール導体8と、該スルーホール導体8に取り囲まれた絶縁体9と、を含んでいる。
【0021】
基体7は、第1樹脂層10aと、該第1樹脂層10a上下面に設けられた第1無機絶縁層11aと、基体7の最外層に配されるように該第1無機絶縁層11aの一主面に設けら
れた第2樹脂層10bと、を有する。
【0022】
第1樹脂層10aは、基体7の主要部をなすものであり、例えば樹脂部と該樹脂部に被覆された第1フィラーとを含む。本実施形態において、第1樹脂層10aは、ガラスクロス等の基材を含んでいない。それ故、第1樹脂層10aの厚みを小さくすることができる。
【0023】
この第1樹脂層10aは、厚みが例えば0.03mm以上0.40mm以下に設定され、弾性率が例えば0.1GPa以上5GPa以下に設定され、硬度が例えば0.02GPa以上0.5GPaに設定され、厚み方向および平面方向への熱膨張率が例えば20ppm/℃以上50ppm/℃以下に設定されている。
【0024】
ここで、第1樹脂層10aの弾性率および硬度は、ISO14577‐1:2002に準じた次の方法で測定される。まず、第1樹脂層10aを厚み方向に沿って切断し、切断面をアルゴンイオンで研摩する。次に、ナノインデンターを用いて、該ナノインデンターのダイヤモンドからなるバーコビッチ圧子に荷重を印加して、該圧子を研磨面に対して押し込む。次に、押し込まれた圧子に印加された荷重を該圧子の接触投影面積で除算することによって、硬度を算出する。また、押し込む際の荷重と押し込み深さの関係から荷重‐変位曲線を求め、該荷重‐変位曲線から弾性率を算出する。この測定は、例えば、MTS社製ナノインデンターXPを用いることができる。以下、第2、第3、第4樹脂層10b、10c、10dや第1、第2無機絶縁層11a、11bをはじめとする各部材の弾性率および硬度は、第1樹脂層10aと同様に測定される。
【0025】
第1樹脂層10aの樹脂部は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂またはポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂により形成することができる。
【0026】
また、第1樹脂層10aの第1フィラーは、第1樹脂層10aを低熱膨張且つ高剛性にするものであり、無機絶縁材料により形成された多数の第1フィラー粒子からなり、該第1フィラー粒子は、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウムまたは炭酸カルシウム等の無機絶縁材料により形成することができる。第1フィラー粒子は、粒径が例えば0.5μm以上5.0μm以下に設定され、熱膨張率が例えば0ppm/℃以上15ppm/℃以下に設定される。また、第1樹脂層10aの樹脂部と第1フィラーの体積の合計に対する第1フィラーの体積の割合(以下、「第1フィラーの含有量」という)が例えば3体積%以上60体積%以下に設定されている。
【0027】
ここで、第1フィラー粒子の粒径は、次のように測定される。まず、第1樹脂層10aの研摩面若しくは破断面を電界放出型電子顕微鏡で観察し、20粒子数以上50粒子数以下の粒子を含むように拡大した断面を撮影する。次に、該拡大した断面にて各粒子の最大径を測定し、該測定された最大粒径を第1フィラー粒子の粒径とする。また、第1フィラーの含有量(体積%)は、第1樹脂層10aの研摩面を電界放出型電子顕微鏡で撮影し、画像解析装置等を用いて、第1樹脂層10aの樹脂部に占める第1フィラーの面積比率(面積%)を10箇所の断面にて測定し、その測定値の平均値を算出して含有量(体積%)とみなすことにより、測定される。
【0028】
一方、第1樹脂層10aの上下面に形成された第1無機絶縁層11aは、低熱膨張率である酸化ケイ素を含む無機絶縁材料により構成されており、樹脂材料と比較して剛性が高いことから、基体7の剛性を高める機能を有する。
【0029】
第1無機絶縁層11aの平面方向の熱膨張率は、一般的な樹脂材料の平面方向の熱膨張
率と比較して低いため、配線基板3の平面方向への熱膨張率を電子部品2の平面方向への熱膨張率に近づけることができ、熱応力に起因した配線基板3の反りを低減できる。
【0030】
第1無機絶縁層11aの厚み方向の熱膨張率は、平面方向の熱膨張率が低い樹脂フィルムの厚み方向の熱膨張率よりも小さいため、樹脂フィルムを用いた場合に比較して、基体7の厚み方向の熱膨張率を低減することができ、基体7とスルーホール導体8との熱膨張率の違いに起因した熱応力を小さくし、スルーホール導体8の断線を低減できる。
【0031】
この第1無機絶縁層11aに含まれる酸化ケイ素は、アモルファス(非晶質)状態である。アモルファス状態の酸化ケイ素は、結晶状態の無機絶縁材料と比較して、結晶構造に起因した熱膨張率の異方性を低減することができるため、配線基板3の加熱後配線基板3が冷却される際に、第1無機絶縁層11aの収縮を各方向にてより均一にすることができ、第1無機絶縁層11aにおけるクラックの発生を低減できる。なお、アモルファス状態である酸化ケイ素は、結晶相の領域が例えば10体積%未満に設定されており、なかでも5体積%未満に設定されていることが望ましい。
【0032】
ここで、酸化ケイ素の結晶相領域の体積比は、以下のように測定される。まず、100%結晶化した試料粉末と非晶質粉末とを異なる比率で含む複数の比較試料を作製し、該比較試料をX線回折法で測定することにより、該測定値と結晶相領域の体積比との相対的関係を示す検量線を作成する。次に、測定対象である調査試料をX線回折法で測定し、該測定値と検量線とを比較して、該測定値から結晶相領域の体積比を算出することにより、調査試料の結晶相領域の体積比が測定される。
【0033】
また、第1無機絶縁層11aは、図1(b)に示すように、複数の繊維12と、隣接する該繊維12同士の近接箇所にて、該隣接する繊維12それぞれに接続した無機絶縁部材13と、無機絶縁部材13を介して繊維12に接続した複数の粉砕粒子14と、繊維12および無機絶縁部材13に取り囲まれた複数の空隙Vとを含んでおり、厚みが例えば3μ
m以上100μm以下、および/または第1樹脂層10aの10%以上50%以下に設定されている。
【0034】
繊維12は、Eガラス、SガラスまたはTガラス等のガラス長繊維を粉砕してなる微細な短繊維(ミルドファイバー)を用いることができ、アモルファス状態の酸化ケイ素を例えば40重量%以上65重量%を含む無機絶縁材料により構成されている。該無機絶縁材料は酸化ケイ素の他に、例えば酸化アルミニウム、酸化チタニウム、酸化マグネシウムまたは酸化ジルコニウム等の無機絶縁材料を含んでも構わない。この繊維12は、幅が例えば4μm以上10μm以下に設定され、長さが例えば8μm以上500μm以下に設定され、長さが幅の例えば2倍以上50倍以下に設定され、ヤング率が例えば65GPa以上85GPa以下に設定され、各方向への熱膨張率が例えば2ppm/℃以上6ppm/℃以下に設定されている。
【0035】
この繊維12の内、隣接する繊維12同士は、一方の繊維12の端部(特に端面と側面との間の角部)と他方の繊維12の側面とが近接することによって、近接箇所をなしている。
【0036】
無機絶縁部材13は、図2(a)に示すように、後述する第1および第2無機絶縁粒子15a、15bにより形成することができ、アモルファス状態の酸化ケイ素を例えば酸化ケイ素を90重量%以上含む無機絶縁材料により構成されており、なかでも、酸化ケイ素を99重量%以上100重量%未満含む無機絶縁材料を用いることが望ましい。酸化ケイ素を90重量%以上100重量%未満含む無機絶縁材料を用いる場合は、該無機絶縁材料は酸化ケイ素の他に、例えば酸化アルミニウム、酸化チタニウム、酸化マグネシウムまた
は酸化ジルコニウム等の無機絶縁材料を含んでも構わない。
【0037】
この無機絶縁部材13の弾性率は、10GPa以上45GPa以下、および/または、第1樹脂層10aの樹脂部の5倍以上100倍以下に設定されている。また、無機絶縁部材13の硬度は、0.5GPa以上4GPa以下、および/または、第1樹脂層10aの樹脂部の2倍以上100倍以下に設定されている。また、無機絶縁部材13は、厚み方向および平面方向への熱膨張率が例えば0ppm/℃以上10ppm/℃以下に設定されている。
【0038】
上述した無機絶縁部材13は、複数の第1無機絶縁粒子15aと該第1無機絶縁粒子15aよりも粒径が大きい複数の第2無機絶縁粒子15bとを含む。この第1無機絶縁粒子15aおよび第2無機絶縁粒子15bは、例えば、上述した酸化ケイ素、酸化アルミニウム、または酸化マグネシウム等の無機絶縁材料により形成することができる。また、無機絶縁部材13aは、第1無機絶縁粒子15aと第2無機絶縁粒子15bの合計体積に対して第1無機絶縁粒子15aを20体積%以上90体積%以下含み、前記合計体積に対して第2無機絶縁粒子15bを10体積%以上80体積%以下含んでいる。
【0039】
第1無機絶縁粒子15aは、粒径が3nm以上110nm以下に設定されており、図2(b)に示すように、互いに結合することにより、無機絶縁部材13の内部が緻密に形成されている。なお、第1無機絶縁粒子15aの弾性率は、例えば10GPa以上30GPa以下に設定され、第1無機絶縁粒子15aの硬度は、例えば0.5GPa以上2GPa以下に設定されている。
【0040】
また、第2無機絶縁粒子15bは、粒径が0.5μm以上3μm以下に設定されており、第1無機絶縁粒子15aと結合することによって、第1無機絶縁粒子15aを介して互いに接着している。なお、第2無機絶縁粒子15bの弾性率は、例えば40GPa以上75GPa以下に設定され、および/または第1無機絶縁粒子15aの弾性率の例えば2倍以上7倍以下に設定されている。また、第2無機絶縁粒子15bの硬度は、例えば5GPa以上10GPa以下に設定され、および/または第1無機絶縁粒子15aの硬度の例えば3倍以上20倍以下に設定されている。
【0041】
ここで、第1無機絶縁粒子15aおよび第2無機絶縁粒子15bは、第1無機絶縁層11aの研摩面若しくは破断面を電界放出型電子顕微鏡で観察することにより確認される。また、第1無機絶縁粒子15aおよび第2無機絶縁粒子15bの体積%は、次のように算出される。まず、第1無機絶縁層11aの研摩面を電界放出型電子顕微鏡で撮影する。次に、撮影した画像から画像解析装置等を用いて、第1無機絶縁粒子15aおよび第2無機絶縁粒子15bの面積比率(面積%)を測定する。そして、該測定値の平均値を算出することにより第1および第2無機絶縁粒子15a、14bの体積%が算出される。また、第1無機絶縁粒子15aおよび第2無機絶縁粒子15bの粒径は、無機絶縁層11の研摩面若しくは破断面を電界放出型電子顕微鏡で観察し、20粒子数以上50粒子数以下の粒子を含むように拡大した断面を撮影し、該撮影した拡大断面にて各粒子の最大径を測定することにより、測定される。
【0042】
粉砕粒子14は、Eガラス、SガラスまたはTガラス等のガラス長繊維を粉砕してなる微細で不定形な粒子(パウダー)を用いることができ、幅が例えば1μm以上4μm以下に設定され、長さが例えば1μm以上4μm以下に設定され、長さが幅の例えば1倍以上1.5倍以下に設定されている。この粉砕粒子14は、繊維12と同様の材料からなり、繊維12と同様のヤング率および熱膨張率を有する。
【0043】
空隙Vは、第1無機絶縁層11aの厚み方向に沿った切断した断面において、繊維12
および無機絶縁部材13に取り囲まれており、第1樹脂層10aの一部が充填されている(樹脂部材16)。この空隙Vは、前記断面における第1無機絶縁層11aの厚み方向の高さが例えば0.3μm以上10μm以下に設定され、前記断面における第1無機絶縁層11aの平面方向の幅が例えば0.3μm以上50μm以下に設定され、第1無機絶縁層11aにおける含有量が例えば5体積%以上40体積%以下に設定されている。なお、空隙Vの含有量は、第1無機絶縁粒子15aおよび第2無機絶縁粒子15bと同様の方法で測定される。
【0044】
上述したように、空隙Vは、厚み方向に沿った切断した断面においては、繊維12および無機絶縁部材13に取り囲まれているが、3次元形状においては、一部が断面に対する直交方向(Y方向)に沿って伸長するとともに、他の一部が第1無機絶縁層11aの厚み方向(Z方向)に沿って伸長することによって、第1無機絶縁層11aの第1樹脂層10aに接する一主面に形成された開口Oに接続されて開気孔となっている。それ故、第1樹脂層10aの一部は、開口Oを介して空隙Vに充填されている。
【0045】
なお、開口Oに第1樹脂層10aの一部を充填するようにしたが、第1樹脂層10aに代えて第2樹脂層10bの一部を充填するようにしても構わないし、第1樹脂層10aおよび第2樹脂層10bの双方の一部を充填するようにしても構わない。後者の場合、第2樹脂層10bよりも第1樹脂層10aの方が多く開口Oに充填されるのが好ましい。
【0046】
また、樹脂部材16は、空隙Vに完全に充填されている必要はなく、空隙Vに第1樹脂層10aの一部が配置されていれば良い。
【0047】
一方、第1無機絶縁層11aの一主面に形成された第2樹脂層10bは、第1無機絶縁層11aと後述する導電層17との間に介されており、第1無機絶縁層11aと導電層17との間の熱応力を緩和する機能、および第1無機絶縁層11aのクラックに起因した導電層17の断線を低減する機能を有するものであり、一主面が第1無機絶縁層11aと、他主面が導電層17と当接しており、例えば樹脂部と該樹脂部に被覆された第2フィラーとを含む。
【0048】
また、第2樹脂層10bは、厚みが例えば0.1μm以上5μm以下に設定され、弾性率が例えば0.01GPa以上1GPa以下に設定され、硬度が例えば0.01GPa以上0.3GPaに設定され、厚み方向および平面方向への熱膨張率が例えば20ppm/℃以上100ppm/℃以下に設定され、誘電正接が例えば0.005以上0.02以下に設定されている。
【0049】
第2樹脂層10bに含まれる樹脂部は、第2樹脂層10bの主要部をなすものであり、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂またはポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂からなる。
【0050】
第2樹脂層10bに含まれる第2フィラーは、第2樹脂層10bの難燃性を高める機能や後述する取り扱い時に積層シート同士が接着してしまうことを抑制する機能を有し、例えば酸化ケイ素等の無機絶縁材料により形成された多数の第2フィラー粒子から成る。この第2フィラー粒子は、粒径が例えば0.05μm以上0.7μm以下に設定されており、第2樹脂層10bにおける含有量が例えば0体積%以上10体積%以下に設定されている。なお、第2フィラー粒子の粒径や含有量は、第1フィラー粒子と同様に測定される。
【0051】
また、基体7には、該基体7を厚み方向に貫通し、例えば直径が0.1mm以上1mm以下の円柱状であるスルーホールが設けられている。スルーホールの内部には、コア基板5の上下の配線層6を電気的に接続するスルーホール導体8がスルーホールの内壁に沿っ
て筒状に形成されている。このスルーホール導体8としては、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケルまたはクロム等の導電材料により形成することができ、熱膨張率が例えば14ppm/℃以上18ppm/℃以下に設定されている。
【0052】
筒状に形成されたスルーホール導体8の中空部には、絶縁体9が柱状に形成されている。絶縁体9は、例えばポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂またはビスマレイミドトリアジン樹脂等の樹脂材料により形成することができる。
【0053】
(配線層)
一方、コア基板5の上下面には、上述した如く、一対の配線層6が形成されている。
【0054】
一対の配線層6のうち、一方の配線層6は電子部品2に対してバンプ4を介して接続され、他方の配線層6は、図示しない接合材を介して図示しない外部配線基板と接続される。
【0055】
各配線層6は、第2樹脂層10b上または後述する第4樹脂層10d上に部分的に形成された複数の導電層17と、該第2樹脂層10b上または第4樹脂層10d上の導電層17が形成されていない領域上に形成された複数の第3樹脂層10cと、該第3樹脂層10c上に形成された複数の第2無機絶縁層11bと、該第2無機絶縁層12b上に形成された複数の第4樹脂層10dと、第3樹脂層10c、第2無機絶縁層12bおよび第4樹脂層10dを貫通する複数のビア孔と、該ビア孔内に形成された複数のビア導体18と、を含んでいる。また、導電層17およびビア導体18は、互いに電気的に接続されており、接地用配線、電力供給用配線および/または信号用配線を構成している。
【0056】
複数の導電層17は、第3樹脂層10c、第2無機絶縁層11bおよび第4樹脂層10dを介して厚み方向に互いに離間するとともに、第3樹脂層10cを介して平面方向に互いに離間している。導電層17は、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケルまたはクロム等の導電材料により形成することができる。また、導電層17は、その厚みが3μm以上20μm以下に設定され、熱膨張率が例えば14ppm/℃以上18ppm/℃以下に設定されている。
【0057】
第3樹脂層10cは、導電層17の側面および他主面に当接しており、厚み方向または平面方向に沿って離間した導電層17同士の短絡を防止する絶縁部材として機能するものである。第3樹脂層10cは、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂またはポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂により形成することができる。
【0058】
第3樹脂層10cの厚みは、例えば3μm以上30μm以下に設定され、および/または第2樹脂層10bの厚みの例えば1.5倍以上20倍以下に設定されている。また、第3樹脂層10cの弾性率は、例えば0.2GPa以上20GPa以下に設定され、および/または第2樹脂層10bの弾性率の例えば2倍以上100倍以下に設定されている。また、第3樹脂層10cの硬度は、例えば0.05GPa以上2GPa以下に設定され、および/または第2樹脂層10bの硬度の例えば5倍以上20倍以下に設定されている。また、第3樹脂層10cの誘電正接は、例えば0.01以上0.02以下に設定され、第3樹脂層10cの厚み方向および平面方向への熱膨張率は、例えば20ppm/℃以上50ppm/℃以下に設定されている。なお、第3樹脂層10cの厚みは、第2樹脂層10b上または第4樹脂層10d上における厚みである。
【0059】
また、本実施形態においては、第3樹脂層10cは、無機絶縁材料により形成された多
数の第3フィラー粒子から成る第3フィラーを含有している。この第3フィラーは、第1フィラーと同様の材料により形成することができ、第3樹脂層10cの熱膨張率を低減するとともに、第3樹脂層10cの剛性を高めることができる。
【0060】
第2無機絶縁層11bは、第4樹脂層10dおよび第3樹脂層10cを介して隣接する第2無機絶縁層11bと接続しており、上述した基体7に含まれる第1無機絶縁層11aと同様に、樹脂材料と比較して剛性が高く熱膨張率および誘電正接が低い無機絶縁材料により構成されていることから、上述した基体7に含まれる第1無機絶縁層11aと同様の効果を奏する。なお、第2無機絶縁層11bは、第1無機絶縁層11aに隣接する場合、第2樹脂層10bおよび第3樹脂層10cを介して第1無機絶縁層11aと接続している。
【0061】
第2無機絶縁層11bの厚みは、例えば3μm以上30μm以下、および/または、第3樹脂層10cの厚みの0.5倍以上10倍以下(好ましくは0.7倍以上2倍以下)に設定されている。その他の構成は、図3(a)および(b)に示すように、上述した第1無機絶縁層11aと同様の構成である。
【0062】
第4樹脂層10dは、第2無機絶縁層11bと導電層17との間に介され、上述した基体7に含まれる第2樹脂層10bと同様の構成を有する。それ故、上述した基体7に含まれる第2樹脂層10bと同様の効果を奏する。
【0063】
ビア導体18は、厚み方向に互いに離間した導電層17同士を相互に接続するものであり、コア基板5に向って幅狭となる柱状に形成されている。ビア導体18は、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケルまたはクロム等の導電材料により形成することができ、熱膨張率が例えば14ppm/℃以上18ppm/℃以下に設定されている。
【0064】
ここで、便宜上、複数の繊維12の内、長手方向と第1および第2無機絶縁層11a、11bの平面方向との角度が0°以上40°以下である繊維を第1繊維12aとし、長手方向と第1および第2無機絶縁層11a、11bの平面方向との角度が50以上90°以下である第2繊維12bとする。
【0065】
また、第1無機絶縁層11aにおいて、第1樹脂層10a側に配された領域を第1層領域19aとし、第1層領域19aよりも第2樹脂層10b側に配されて導電層17に隣接する領域を第2層領域19bとする。また、第2無機絶縁層11bにおいても同様に、第3樹脂層10c側に配された領域を第1層領域19aとし、第1層領域19aよりも第4樹脂層10d側に配されて導電層17に隣接する領域を第2層領域19bとする。なお、第1層領域19aの厚みは、例えば第1無機絶縁層11aの例えば15%以上50%以下に設定され、第2層領域19bの厚みは、例えば第1無機絶縁層11aにおける第1層領域19aの残部である。
【0066】
(第1および第2無機絶縁層)
以下、本実施形態における第1および第2無機絶縁層11a、11bについて詳細に説明する。
【0067】
本実施形態において、第1および第2無機絶縁層11a、11bは、複数の繊維12が、隣接する該繊維12同士の近接箇所にて、該隣接する繊維12それぞれに接続した無機絶縁部材13と、を含んでいる。その結果、繊維12同士を無機絶縁部材13によって接続させていることから、ガラス繊維を織り込んでなるため凹凸が生じやすいガラスクロスと比較して、第1および第2無機絶縁層11a、11bを平坦に形成することができるため、導電層17に印加される応力をより均一に分散させて導電層17の断線を低減するこ
とができ、ひいては電気的信頼性に優れた配線基板3を得ることができる。
【0068】
また、このように導電層17の断線を低減することによって、導電層17の電気的信頼性を担保しつつ微細化することができる。
【0069】
また、第1および第2無機絶縁層11a、11bは、繊維12同士を無機絶縁部材13によって接続させていることから、薄型化した場合に繊維同士がずれやすいガラスクロスと比較して、繊維12同士のずれを低減してクラックを低減することができるため、電気的信頼性を担保しつつ第1および第2無機絶縁層11a、11bを薄型化することができる。
【0070】
さらに、繊維12同士が無機絶縁部材13を介して接続されて一体化されているため、接続されていない複数の繊維を樹脂材料に含有させた場合と比較して、応力や熱が印加された際に、樹脂材料よりも高剛性且つ低熱膨張の無機絶縁部材13が個々の繊維12を拘束することにより、第1および第2無機絶縁層11a、11bの変形や熱膨張を低減し、高剛性且つ低熱膨張の第1および第2無機絶縁層11a、11bを得ることができる。
【0071】
特に、本実施形態において、配線基板3は、コア基板5と比較して配線の高密度化が要求される配線層6に第2無機絶縁層11bを含んでいるため、第2無機絶縁層11bを薄くすることによって配線層6を薄型化しつつ、低熱膨張で平坦性の高い第2無機絶縁層11bによって配線を微細化することによって、高密度配線の配線基板3を得ることができる。
【0072】
(繊維)
一方、本実施形態において、繊維12は、無機絶縁部材13よりも高剛性且つ低熱膨張である。その結果、接続部材である無機絶縁部材13と比較して、高剛性且つ低熱膨張にしやすい繊維12によって、第1および第2無機絶縁層11a、11bをより高剛性且つ低熱膨張にすることができる。
【0073】
また、繊維12は、上述した如く微細に形成されているため、第1および第2無機絶縁層11a、11bをより平坦にすることができる。
【0074】
また、本実施形態のように、第1および第2無機絶縁層11a、11bにおいて、複数の繊維12のうち、第1繊維12aの数は、第2繊維12bの数よりも多いことが望ましい。その結果、繊維12の長手方向を第1および第2無機絶縁層11a、11bの表面方向に近づけることによって、基板3の表面に生じたクラックが厚み方向に沿って伸長して
第1および第2無機絶縁層11a、11bに到達した場合に、高剛性の繊維12によってクラックの伸長を低減することができ、該クラックに起因した導電層17の断線を低減することができる。なお、繊維12は、第1繊維12aのみを含むことが望ましい。
【0075】
また、本実施形態のように、第1および第2無機絶縁層11a、11bにおいて、第2層領域19bにおける繊維12の長さの平均値は、第1層領域19aにおける繊維12の長さの平均値よりも大きいことが望ましい。その結果、導電層17に隣接する領域を第2層領域19bの剛性を高めてクラックを低減し、導電層17の断線を低減することができる。
【0076】
(粉砕粒子)
一方、本実施形態において、粉砕粒子14は、無機絶縁部材13を介して繊維12に接続しており、空隙Vに配されている。その結果、無機絶縁部材13よりも剛性の高い粉砕粒子14を繊維12同士の間に配することによって、第1および第2無機絶縁層11a、
11bの剛性を高めることができる。
【0077】
(無機絶縁部材)
一方、本実施形態において、無機絶縁部材13は、繊維12の表面を被覆している被覆部20と、近接箇所にて隣接する繊維12それぞれに接続している接続部21とを具備する。その結果、後述する如く低温で形成されていることから樹脂材料との反応性が繊維12よりも高い第1無機絶縁粒子15aを含む被覆部20が繊維12と樹脂部材16との間に介されているため、繊維12と樹脂部材16との接続強度を高めることができるとともに、接続部21によって繊維12同士を接続することができる。
【0078】
この被覆部20は、膜状に形成されており、厚みが例えば20nm以上2μm以下に設定
されている。また、接続部21の空隙V側の表面は、配線基板3を厚み方向に切断した断面にて、空隙V側から接続部21の内部へ窪んでなる凹曲線状であり、接続部21によって接続される繊維12同士の距離は例えば20nm以上2μm以下に設定されている。
【0079】
(第1および第2無機絶縁粒子)
ところで、例えば電子部品2と配線基板3の熱膨張率の違いに起因した熱応力や機械的応力等の応力が配線基板3に印加された場合、第1無機絶縁粒子15a同士が剥離することにより、無機絶縁部材13にクラックが生じることがある。
【0080】
一方、本実施形態の配線基板3においては、無機絶縁部材13は、第1無機絶縁粒子15aよりも粒径の大きい第2無機絶縁粒子15bを含む。従って、無機絶縁部材13にクラックが生じても、クラックが第2無機絶縁粒子15bに達した際に、粒径の大きい第2無機絶縁粒子15bによってクラックの伸長を阻止したり、あるいは、第2無機絶縁粒子の表面に沿ってクラックを迂回させたりすることができる。その結果、クラックが第1または第2無機絶縁層11a、11bを貫通して導電層17に達することが抑制され、該クラックを起点とした導電層17の断線を低減することができ、ひいては電気的信頼性に優れた配線基板3を得ることができる。クラックの伸長を阻止したり、クラックを迂回させたりするには、第2無機絶縁粒子の粒径が0.5μm以上である場合が特に好ましい。
【0081】
また、第2無機絶縁粒子15bは粒径が大きいため、無機絶縁部材13を第2無機絶縁粒子のみで構成すると、1つの第2無機絶縁粒子の周囲に多くの他の第2無機絶縁粒子を配置することが困難となり、結果的に、第2無機絶縁粒子15b同士の接触面積が小さくなり、第2無機絶縁粒子15b同士の接着強度は小さくなりやすい。これに対して、本実施形態の配線基板3においては、無機絶縁部材13は、粒径の大きな第2無機絶縁粒子15bのみならず粒径の小さい第1無機絶縁粒子15aを含み、第2無機絶縁粒子同士は、該第2無機絶縁粒子の周囲に配置された複数の第1無機絶縁粒子15aを介して接合している。それ故、第2無機絶縁粒子と第1無機絶縁粒子との接触面積を大きくすることができ、第2無機絶縁粒子15b同士の剥離を低減することができる。かかる効果は、第1無機絶縁粒子の粒径が110nm以下に設定されている場合に特に顕著となる。
【0082】
一方、本実施形態の配線基板3においては、第1無機絶縁粒子15aは、粒径が3nm以上110nm以下と微小に設定されている。このように、第1無機絶縁粒子15aの粒径が非常に小さいため、第1無機絶縁粒子15a同士が結晶化開始温度未満にて互いに強固に結合する。その結果、第1および第2無機絶縁粒子自体がアモルファス状態のままで該粒子同士が結合し、第1および第2無機絶縁層11a、11bがアモルファス状態となる。それ故、上述した如く、第1および第2無機絶縁層11a、11bの熱膨張率の異方性が小さくなる。なお、第1無機絶縁粒子15aの粒径が3nm以上110nm以下と微小に設定されていると、第1無機絶縁粒子15aの原子、特に表面の原子が活発に運動するため、結晶化開始温度未満といった低温下でも第1無機絶縁粒子15a同士が強固に結
合すると推測される。なお、結晶化開始温度は、非晶質の無機絶縁材料が結晶化を開始する温度、すなわち、結晶相領域の体積が増加する温度である。
【0083】
また、本実施形態においては、第2無機絶縁粒子15b同士が互いに離間するように、個々の第2無機絶縁粒子15bは複数の第1無機絶縁粒子15aによって被覆されている。その結果、接着強度が低く且つ剥離しやすい第2無機絶縁粒子15b同士の接触が防止され、第2無機絶縁粒子15bの剥離を抑制でき、ひいては、第2無機絶縁粒子に起因したクラックの発生および伸長を低減することができる。
【0084】
第1無機絶縁粒子15aは、本実施形態のように、球状であることが望ましい。その結果、第2無機絶縁粒子間の空隙に多くの第1無機絶縁粒子15aを充填しやすくなる上、第1無機絶縁粒子15a間の空隙の体積が低減され、無機絶縁部材13の内部構造を緻密にでき、無機絶縁部材13の剛性を向上させることができる。
【0085】
また、第2無機絶縁粒子15bは、本実施形態のように、曲面状であることが望ましく、さらには球状であることがより望ましい。その結果、第2無機絶縁粒子15bの表面が滑らかになり、該表面における応力が分散され、第2無機絶縁粒子15bの表面を起点とした無機絶縁部材13のクラックの発生を低減することができる。
【0086】
第2無機絶縁粒子15bは、本実施形態のように、第1無機絶縁粒子15aよりも硬度が高いことが望ましい。第2無機絶縁粒子15bの硬度を大きくすることによって、クラックが第2無機絶縁粒子15bに達した際に、該クラックが第2無機絶縁粒子15bの内部へ伸長することを低減し、ひいては無機絶縁部材13におけるクラックの伸長を低減することができる。また、第2無機絶縁粒子15bは、本実施形態のように、第1無機絶縁粒子15aよりも弾性率が高いことが望ましい。
【0087】
このような第2無機絶縁粒子15bは、分子同士が環状に結合した多員環構造における3員環構造の占める割合が第1無機絶縁粒子15aよりも大きい。その結果、第2無機絶縁粒子15bは、第1無機絶縁粒子15aと比較して、分子同士が密に配置される3員環構造が多く、密度が大きいため、弾性率及び硬度が大きい。なお、この多員環構造は、ラマン分光法を用いることによって、詳細に分析することができ、例えば、ラマンシフトが600cm−1以上620cm−1以下の範囲におけるラマン散乱強度のピークの値は、多員環構造における3員環構造の占める割合を示すことが知られている。
【0088】
ここで、第1および第2無機絶縁粒子15a、15bのラマン散乱強度は、レーザーラマン分光装置を用いて、第1および第2無機絶縁粒子15a、15bに対するレーザー(波長514.53nm)の照射によって生じるラマンスペクトルを観察することにより、測定される。この測定には、例えば、株式会社堀場製作所製レーザーラマン分光装置LabRAM HR‐800を用いることができる。
【0089】
一方、無機絶縁部材13において、接続部21は、被覆部20よりも第2無機絶縁粒子15bを多く含む。その結果、被覆部20にて第2無機絶縁粒子15bを少なくすることによって、被覆部20における第1無機絶縁粒子15aを多くして、被覆部20と樹脂部材16との接続強度を高めるとともに、接続部21にて第2無機絶縁粒子15bを多くすることによって、接続部21におけるクラックを低減することができ、該接続部21による繊維12同士の接続強度を高めることができる。
【0090】
また、本実施形態のように、被覆部20の第2無機絶縁粒子15bは、第1無機絶縁粒子15aを介して繊維12に接続しているとともに樹脂部材16に向かって突出している。その結果、粒径の大きい第2無機絶縁粒子15bのアンカー効果によって、被覆部20
と樹脂部材16との接続強度を高めて剥離を低減することができる。この第2無機絶縁粒子15bが突出した長さは、例えば0.2μm以上1.5μm以下に設定されている。
【0091】
(樹脂部材)
一方、本実施形態においては、樹脂部材16は、第1無機絶縁層11aの厚み方向に沿った切断した断面において、繊維12および無機絶縁部材13に取り囲まれた空隙Vに配されている。その結果、配線基板3に応力が印加され、第1無機絶縁層11aにクラックが生じたとしても、該クラックの伸長を樹脂部材16によって阻止したり、迂回させたりすることができる。従って、該クラックに起因した導電層17の断線を低減することができ、電気的信頼性に優れた配線基板3を得ることができる。
【0092】
また、樹脂部材16は、無機絶縁材料と比較してヤング率の低い樹脂材料を第1無機絶縁層11aよりも多く含むことから、配線基板3に応力が印加された場合、第1無機絶縁層11a内の空隙に配された樹脂部材16により第1無機絶縁層11aに印加される応力を緩和することができ、該応力に起因した第1無機絶縁層11aにおけるクラックの発生を低減することができる。
【0093】
(第2および第4樹脂層)
一方、本実施形態の配線基板3において、第2および第4樹脂層10b、10dは、第1および第3樹脂層10a、10cと比較して、厚みが小さく設定され、且つ弾性率が低く設定されている。この場合、薄く弾性変形しやすい第2および第4樹脂層10b、10dによって、第1および第2無機絶縁層11a、11bと導電層17との熱膨張量の違いに起因した熱応力が緩和される。したがって、第1および第2無機絶縁層11a、11bより導電層17が剥離することが抑制され、導電層17の断線を低減することができ、ひいては電気的信頼性に優れた配線基板3を得ることが可能となる。なお、第2および第4樹脂層10b、10dは、第1および第3樹脂層10a、10cだけではなく、第1および第2無機絶縁層11a、11bと比較して、厚みが小さく設定され、且つ弾性率が低く設定されていることが望ましい。
【0094】
また、第2および第4樹脂層10b、10dは、第1および第2無機絶縁層11a、11b上面と導電層17下面との間に介在されている。それ故、第2および第4樹脂層10b、10dは、平面方向にて隣接する導電層17同士の絶縁部材として機能する第3樹脂層10cと比較して厚み増加の要求が少なく厚みを容易に小さくすることができる。
【0095】
さらに、第2および第4樹脂層10b、10dは、弾性率が低いことから、第1および第2無機絶縁層11a、11bとの接着強度および導電層17との接着強度が高いため、第2および第4樹脂層10b、10dによって第1および第2無機絶縁層11a、11bと導電層17との接着強度を高めることができる。
【0096】
また、第2および第4樹脂層10b、10dは、第1および第3樹脂層10a、10cよりも弾性率が低く剛性が低いが、第2および第4樹脂層10b、10dの厚みを第1および第3樹脂層10a、10cよりも小さく設定して薄いものとしているため、配線基板3の剛性に対する第2および第4樹脂層10b、10dの影響を小さなものとし、配線基板3の剛性を高めることができる。
【0097】
また、第2および第4樹脂層10b、10dは、熱膨張率が第1および第2無機絶縁層11a、11bおよび導電層17よりも高くなりやすいが、第2および第4樹脂層10b、10dを薄いものとしているため、第1および第2無機絶縁層11a、11bと導電層17の熱膨張に対する第2および第4樹脂層10b、10dの影響を小さなものとし、第1および第2無機絶縁層11a、11と導電層17との剥離を低減することができる。
【0098】
また、第3樹脂層10cは、導電層17の側面に当接し、平面方向に離間した導電層17の間に配されることによって、該導電層17同士の間の絶縁性を高める機能を有し、該絶縁機能を担保するため、平面方向に隣接した導電層17同士の間に少なくとも一部が配されているが、第2および第4樹脂層10b、10dよりも第3樹脂層10cの厚みを大きくするともに弾性率を大きくしているため、該絶縁機能を担保しつつ、配線基板3の剛性を高めることができる。
【0099】
また、第3樹脂層10cは、厚み方向に離間した第1および第2無機絶縁層11a、11b同士を接着させる機能を有し、該接着機能を担保するため、厚みが導電層17よりも大きく設定されているが、第3樹脂層10cの弾性率を第2および第4樹脂層10b、10dよりも大きくしているため、該接着機能を担保しつつ、配線基板3の剛性を高めることができる。
【0100】
第1および第3樹脂層10a、10cは、本実施形態のように、第2および第4樹脂層10b、10dよりも低熱膨張率であることが望ましい。その結果、厚みの大きい第1および第3樹脂層10a、10cを低熱膨張とすることによって、配線基板3を低熱膨張にすることができる。
【0101】
第2および第4樹脂層10b、10dに含まれる樹脂材料は、第3樹脂層10cに含まれる樹脂材料と比較して、低弾性率および高熱膨張率のものを用いることができる。この場合、第2および第4樹脂層10b、10dと導電層17との接続強度を高くすることができる。このような樹脂材料の組み合わせとしては、例えば、第1樹脂層10aにシアネート樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂を、第2および第4樹脂層10b、10dにエポキシ樹脂を、第3樹脂層10cにポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂またはエポキシ樹脂を用いることができる。
【0102】
第2および第4樹脂層10b、10dに含まれる第2フィラーの含有量は、第1および第3フィラーよりも小さいことが望ましい。その結果、第2および第4樹脂層10b、10dを低弾性率とし、第1樹脂層10aおよび第3樹脂層10cを低熱膨張率とすることができる。
【0103】
また、第2フィラーは、粒径が、第1および第3フィラーよりも小さいことが望ましい。その結果、第2および第4樹脂層10b、10dを低弾性率とし、第1樹脂層10aおよび第3樹脂層10cを低熱膨張率とすることができる。
【0104】
<配線基板の製造方法>
次に、上述した配線基板3の製造方法を、図4から図6に基づいて説明する。
【0105】
配線基板3の製造方法は、コア基板5の作製工程と、配線層6のビルドアップ工程と、からなっている。
【0106】
(コア基板の作製工程)
(1)繊維成分(繊維12および粉砕粒子14)および無機絶縁粒子成分(第1および第2無機絶縁粒子15a、15b)を含む固形分と、溶剤と、を有する無機絶縁ゾル11xを準備する。
【0107】
無機絶縁ゾル11xは、例えば、固形分を10%体積以上50体積%以下含み、溶剤を50%体積以上90体積%以下含む。これにより、無機絶縁ゾル11xの粘度を低く保持しつつ、無機絶縁ゾル11xより形成される無機絶縁層の生産性を高く維持できる。
【0108】
無機絶縁ゾル11xの固形分は、例えば、繊維成分を15体積%以上60体積%以下含み、無機絶縁粒子成分を40体積%以上85体積%以下含む。これにより、無機絶縁層のクラックを低減することができる。
【0109】
さらに、無機絶縁ゾル11xの繊維成分は、例えば、繊維12を20体積%以上90体積%以下含み、粉砕粒子14を10体積%以上80体積%以下含む。これにより、無機絶縁層の硬度と弾性率を高くすることができる。
【0110】
また、無機絶縁ゾル11xの無機絶縁粒子成分は、例えば、第1無機絶縁粒子15aを20体積%以上90体積%以下含み、第2無機絶縁粒子15bを10体積%以上80体積%以下含む。これにより、後述する(3)の工程にて第1無機絶縁層11aにおけるクラックの発生を効果的に低減できる。
【0111】
ここで、繊維成分は、例えば白金製の金型の孔から溶解したガラスを流して引き伸ばして作製したガラス長繊維をハンマーミルまたはボールミル等で粉砕することによって、作製することができる。これにより、硬度および弾性率の高い繊維12を得ることができる。なお、粉砕時間を調節すること、または、ガラス長繊維を粉砕した後に空気を用いて分級することによって、繊維成分における繊維12および粉砕粒子14の比率を調節することができる。
【0112】
また、第1無機絶縁粒子15aは、例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス)等のケイ酸化合物を精製し、化学的に酸化ケイ素を析出させることにより、作製することができる。この場合、低温条件下で第1無機絶縁粒子15aを作製することができるため、アモルファス状態であり、且つ3員環の占める割合が小さい第1無機絶縁粒子15aを作製することができる。また、第1無機絶縁粒子15aの粒径は、酸化ケイ素の析出時間を調整することによって調整され、具体的には、析出時間を長くするほど第1無機絶縁粒子15aの粒径は大きくなる。それ故、第3無機絶縁粒子15cおよび第4無機絶縁粒子15dを含んだ第1無機絶縁粒子15aを作製するには、酸化ケイ素の析出時間を互いに異ならせて形成された2種類の無機絶縁粒子を混合すれば良い。
【0113】
一方、第2無機絶縁粒子15bは、酸化ケイ素から成る場合、例えばケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス)等のケイ酸化合物を精製し、化学的に酸化ケイ素を析出させた溶液を火炎中に噴霧し、凝集物の形成を低減しつつ800℃以上1500℃以下に加熱することにより、作製することができる。それ故、第2無機絶縁粒子15bは、第1無機絶縁粒子15aと比較して粒径が大きいことから、高温加熱時における凝集体の形成を低減しやすく、高温加熱で容易に作製することができ、ひいては3員環の占める割合を増加させるとともに硬度を高めることができる。
【0114】
また、第2無機絶縁粒子15bを作製する際の加熱時間は、1秒以上180秒以下に設定されていることが望ましい。その結果、該加熱時間を短縮することにより、800℃以上1500℃以下に加熱した場合においても、第2無機絶縁粒子15bの結晶化を抑制し、アモルファス状態を維持することができる。
【0115】
一方、無機絶縁ゾル11xに含まれる溶剤は、例えばメタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアセトアミド、および/またはこれらから選択された2種以上の混合物を含んだ有機溶剤を使用することができる。なかでも、メタノール、イソプロパノールまたはプロピレングリコールモノメ
チルエーテルを含んだ有機溶剤が望ましい。その結果、無機絶縁ゾル11xを均一に塗布することができる上、後述する(3)の工程にて、溶剤を効率良く蒸発させることができる。
【0116】
(2)次に、図4(a)および(b)に示すように、第2樹脂層10bと銅等の導電材料からなる金属箔17xとを有する樹脂付き金属箔を準備し、第2樹脂層10bの一主面に無機絶縁ゾル11xを塗布して無機絶縁ゾル11xを層状に形成する。
【0117】
樹脂付き金属箔は、金属箔17xにバーコーター、ダイコーター、カーテンコーターなどを用いて樹脂ワニスを塗布し、乾燥することにより、形成することができる。本工程にて形成された第2樹脂層10bは、例えばBステージまたはCステージである。
【0118】
無機絶縁ゾル11xの塗布は、例えば、ディスペンサー、バーコーター、ダイコーターまたはスクリーン印刷を用いて行うことができる。このとき、上述した如く、無機絶縁ゾル11xの固形分が50体積%以下に設定されていることから、無機絶縁ゾル11xの粘度が低く設定され、塗布された無機絶縁ゾル11xの平坦性を高くすることができる。
【0119】
また、第1無機絶縁粒子15aの粒径は、上述したように、3nm以上に設定されているため、これによっても無機絶縁ゾル11xの粘度が良好に低減され、塗布された無機絶縁ゾル11xの平坦性を向上させることができる。
【0120】
(3)続いて、無機絶縁ゾル11xを乾燥させて溶剤を蒸発させる。
【0121】
ここで、溶剤の蒸発に伴って無機絶縁ゾル11xが収縮するが、かかる溶剤は無機絶縁ゾル11xの固形分の間隙に含まれており、該固形分自体には含まれていない。このため、無機絶縁ゾル11xが無機絶縁粒子成分よりも体積の大きい繊維成分を含んでいると、その分、溶剤が充填される領域が少なくなり、無機絶縁ゾル11xの溶剤の蒸発時、無機絶縁ゾル11xの収縮量が小さくなる。すなわち、第2無機絶縁粒子15bによって無機絶縁ゾル11xの収縮が規制されることとなる。その結果、無機絶縁ゾル11xの収縮に起因するクラックの発生を低減することができる。また、仮にクラックが生じても、体積の大きい繊維成分、なかでも細長形状である繊維12によって該クラックの伸長を妨げることができる。
【0122】
ここで、無機絶縁ゾル11xの固形分は、繊維成分を25体積%以上含ませると、繊維成分同士が互いに接近し、この繊維成分に取り囲まれた領域が数多く形成される。この状態で繊維成分間の間隙に充填された溶剤を蒸発させると、該間隙内で無機絶縁粒子成分の収縮が起きて、無機絶縁粒子成分が繊維成分を被覆しつつ、空隙Vが形成される。その結果、繊維成分および無機絶縁粒子成分に取り囲まれた空隙Vを形成することができる。
【0123】
また、繊維成分を25体積%以上含ませると、繊維成分同士が近接しやすい。一方、溶剤は繊維成分同士の対向領域に残留しやすく、該残留した溶剤中には多くの無機絶縁粒子成分が含まれている。そして、残留した溶剤を蒸発させると、溶剤の蒸発に伴って溶剤中に含まれていた無機絶縁粒子成分が繊維成分の対向領域で凝集する。その結果、繊維成分同士の間に無機絶縁粒子成分を介在させることができる。無機絶縁粒子成分を良好に繊維成分同士の間に介在させるには、無機絶縁ゾル11xの固形分は、無機絶縁粒子成分を20体積%以上含むことが望ましい。
【0124】
また、このように、繊維成分同士が近接する間隙に無機絶縁粒子成分を残存させつつ空隙Vを形成することによって、開口Oを有する開気孔の空隙Vを形成することができる。
【0125】
ここで、溶剤の蒸発に伴って溶剤中に含まれていた無機絶縁粒子成分が繊維成分の対向領域で凝集する際に、繊維成分を被覆する領域に無機絶縁粒子成分が少量残存するため、粒径の大きい第2無機絶縁粒子15bは、繊維成分を被覆する領域に残存しにくく、繊維成分の対向領域に多く凝集しやすい。また、繊維成分を被覆する領域に第2無機絶縁粒子15bが残存すると、溶剤が蒸発して無機絶縁ゾル11xが収縮する際に、粒径の大きい第2無機絶縁粒子15bが空隙Vに向かって突出しやすい。
【0126】
さらに、繊維成分は、細長形状の繊維12と、粉砕されて粒子状となった粉砕粒子14と、を含んでいるため、細長形状の繊維12同士の空隙Vに弾性率および硬度の高い粉砕粒子14を配することによって、無機絶縁層の弾性率および硬度を高くすることができる。
【0127】
また、無機絶縁粒子成分は、粒径の大きい第2無機絶縁粒子15bと、粒径が小さい第1無機絶縁粒子15aと、を含んでいるため、繊維成分同士の間隙における無機絶縁ゾル11xの収縮は、第2無機絶縁粒子15bによっても規制されることとなり、繊維成分同士の間隙におけるクラックの発生が更に低減される。
【0128】
上述した無機絶縁ゾル11xの乾燥は、例えば加熱および風乾により行われる。乾燥温度が、例えば、20℃以上溶剤の沸点(二種類以上の溶剤を混合している場合には、最も
沸点の低い溶剤の沸点)未満に設定され、乾燥時間が、例えば20秒以上30分以下に設
定される。その結果、溶剤の沸騰が低減され、沸騰の際に生じる気泡の圧力によって無機絶縁ゾル11xの固形分が押し出されることが抑制され、該固形分の分布をより均一にすることが可能となる。
【0129】
(4)残存した無機絶縁ゾル11xの固形分を加熱し、第1無機絶縁粒子15a同士を接続させるとともに第1無機絶縁粒子15aと繊維12、粉砕粒子14および第2無機絶縁粒子15bとを接続させて無機絶縁部材13を形成することによって、無機絶縁ゾル11xから第1無機絶縁層11aを形成する。その結果、図4(c)に示すような金属箔17xと第2樹脂層10bと第1無機絶縁層11aとを有する絶縁シート22が得られる。
【0130】
ここで、本実施形態の無機絶縁ゾル11xは、粒径が110nm以下に設定された第1無機絶縁粒子15aを有している。その結果、無機絶縁ゾル11xの加熱温度が比較的低温、例えば、第1樹脂層10aの熱分解開始温度未満の温度であっても、第1無機絶縁粒子15a同士を強固に結合させるとともに、第1無機絶縁粒子15aと繊維12、粉砕粒子14および第2無機絶縁粒子15bとを強固に結合させることができる。このように第1無機絶縁粒子15aを強固に結合させることができる温度は、例えば、第1無機絶縁粒子15aの粒径を110nm以下に設定した場合は250℃程度であり、前記粒径を15nm以下に設定した場合は150℃程度である。また、第1樹脂層10aの熱分解開始温度は280℃程度である。
【0131】
また、本実施形態においては、無機絶縁ゾル11xの加熱温度を、第2樹脂層10bの熱分解開始温度未満に設定している。その結果、第2樹脂層10bの特性低下を抑制することができる。なお、第2樹脂層10bがエポキシ樹脂から成る場合、その熱分解開始温度は280℃程度である。また、熱分解開始温度は、ISO11358:1997に準ずる熱重量測定において、樹脂の質量が5%減少する温度である。
【0132】
また、無機絶縁ゾル11xの加熱温度は、残存した溶剤を蒸発させるため、溶剤の沸点以上で行うことが望ましい。また、前記加熱温度は、無機絶縁ゾル11xの固形分の結晶化開始温度未満に設定されていることが望ましい。この場合、無機絶縁ゾル11xの固形分の結晶化を低減し、アモルファス状態の割合を高めることができる。その結果、結晶化
した第1無機絶縁層11aが相転移によって収縮することを低減し、第1無機絶縁層11aにおけるクラックの発生を低減できる。
【0133】
上述した無機絶縁ゾル11xの加熱は、温度が例えば100度以上220度未満に設定され、時間が例えば0.5時間以上24時間以下に設定されており、例えば大気雰囲気中で行われる。なお、加熱温度を150℃以上にする場合、金属箔17xの酸化を抑制するため、無機絶縁ゾル11xの加熱は、真空、アルゴン等の不活性雰囲気または窒素雰囲気にて行われることが望ましい。
【0134】
(5)図4(d)に示すような第1樹脂前駆体シート10axを準備し、第1樹脂前駆体シート10axの上下面に絶縁シート22を積層する。
【0135】
第1樹脂前駆体シート10axは、第1樹脂層10aを構成する上述した未硬化の熱硬化性樹脂により形成される。なお、未硬化は、ISO472:1999に準ずるA‐ステージまたはB‐ステージの状態である。
【0136】
絶縁シート22は、金属箔17xおよび第2樹脂層12aと第1樹脂前駆体シート10axとの間に第1無機絶縁層11aが介在されるように積層される。
【0137】
(6)次に、前記積層体を上下方向に加熱加圧することにより、図4(e)に示すように、第1樹脂前駆体シート10axを硬化させて第1樹脂層10aを形成するとともに、開口Oを介して第1樹脂層10aの一部を空隙Vに充填する。
【0138】
前記積層体の加熱温度は、第1樹脂前駆体シート10axの硬化開始温度以上熱分解温度未満に設定されている。具体的には、第1樹脂前駆体シートがエポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂またはポリフェニレンエーテル樹脂からなる場合、前記加熱温度が例えば170℃以上230℃以下に設定される。また、前記積層体の圧力は、例えば2MPa以上3MPa以下に設定され、加熱時間および加圧時間は、例えば0.5時間以上2時間以下に設定されている。
【0139】
なお、硬化開始温度は、樹脂が、ISO472:1999に準ずるC‐ステージの状態となる温度である。また、熱分解温度は、ISO11358:1997に準ずる熱重量測定において、樹脂の質量が5%減少する温度である。
【0140】
(7)図4(f)に示すように、基体7を厚み方向に貫通するスルーホール導体8およびスルーホール導体8の内部に絶縁体9を形成し、しかる後、基体7上にスルーホール導体8に接続される導電層17を形成する。
【0141】
スルーホール導体8および絶縁体9は、次のように形成される。まず、例えばドリル加工やレーザー加工等により、基体7および金属箔17xを厚み方向に貫通したスルーホールを複数形成する。次に、例えば無電解めっき、蒸着法、CVD法またはスパッタリング法等により、スルーホールの内壁に導電材料を被着させることにより、円筒状のスルーホール導体8を形成する。次に、円筒状のスルーホール導体8の内部に、樹脂材料等を充填することにより、絶縁体9を形成する。
【0142】
また、導電層17は、金属箔17xに形成されたスルーホール内より露出する絶縁体9およびスルーホール導体8上に、例えば無電解めっき法、蒸着法、CVD法またはスパッタリング法等により、金属箔17xと同じ金属材料からなる金属層を被着させる。次に、フォトリソグラフィー技術、エッチング等を用いて金属箔17xおよび/または金属層をパターニングすることにより、導電層17を形成する。なお、金属箔17xを一旦剥離さ
せた後、金属層を基体7上に形成し、該金属層をパターニングして導電層17を形成しても良い。
【0143】
以上のようにして、コア基板5を作製することができる。
【0144】
(配線層6のビルドアップ工程)
(8)第3樹脂前駆体シート10cxと、金属箔17x、第4樹脂層10dおよび第2無機絶縁層11bを有する絶縁シート22と、を新たに準備した後、図5(a)に示すように、第3樹脂前駆体シート10cx上に絶縁シート22を積層する。
【0145】
第3樹脂前駆体シート10cxは、第3樹脂層10cを構成する上述した未硬化の熱硬化性樹脂により形成される。
【0146】
また、絶縁シート22は、例えば工程(1)ないし(4)と同様の工程により作製されるものであり、第3樹脂前駆体シート10cxと金属箔17xおよび第4樹脂層10dとの間に第2無機絶縁層11bが介在されるように第3樹脂前駆体シート10cx上に載置する。
【0147】
(9)次に、コア基板5の上下面それぞれに第3樹脂前駆体シート10cxを介して絶縁シート22を積層する。
【0148】
(10)コア基板5と絶縁シート22との積層体を上下方向に加熱加圧することにより、図5(b)に示すように、第3樹脂前駆体シート10cxの熱硬化性樹脂を硬化させて第3樹脂前駆体シート10cxを第3樹脂層10cにする。
【0149】
なお、前記積層体の加熱加圧は、例えば工程(6)と同様に行うことができる。
【0150】
(11)図5(c)に示すように、例えば硫酸および過酸化水素水の混合液、塩化第二鉄溶液または塩化第二銅溶液等を用いたエッチング法により、第4樹脂層10dから金属箔17xを剥離する。
【0151】
(12)図6(a)に示すように、第3樹脂層10cおよび第2無機絶縁層11bを厚み方向に貫通するビア導体18を形成するとともに、第2無機絶縁層11b上に導電層17を形成する。
【0152】
ビア導体18および導電層17は、具体的に次のように形成される。まず、例えばYAGレーザー装置または炭酸ガスレーザー装置により、第3樹脂層10c、第2無機絶縁層11bおよび第4樹脂層10dを貫通するビア孔を形成する。次に、例えばセミアディティブ法、サブトラクティブ法またはフルアディティブ法等により、ビア孔にビア導体18を形成するとともに第4樹脂層10d上に導電材料を被着させて導電層17を形成する。なお、この導電層17は、工程(11)において金属箔13を剥離せず、該金属箔13をパターニングすることにより形成しても良い。
【0153】
(13)図6(b)に示すように、工程(8)ないし(12)を繰り返すことにより、コア基板5の上下に配線層6を形成する。なお、本工程を繰り返すことにより、配線層6をより多層化することができる。
【0154】
以上のようにして、配線基板3を作製することができる。なお、得られた配線基板3に対してバンプ4を介して電子部品2をフリップ実装することにより、図1(a)に示した実装構造体1を作製することができる。
【0155】
なお、電子部品2は、ワイヤボンディングにより配線基板3と電気的に接続しても良いし、あるいは、配線基板3に内蔵させても良い。
【0156】
本発明は、上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、改良、組合せ等が可能である。
【0157】
上述した実施形態においては、本発明を配線基板に適用した例について説明したが、配線基板に限らず、上述した無機絶縁層を有する全ての構造体に適用可能である。例えば、本発明は、本発明の無機絶縁層は内部に空隙を形成することによって、樹脂繊維等で形成したフィルター表面を被覆するフィルター用多孔体として使用できる。この場合、特に樹脂フィルターの使用が困難な高温で使用可能である。この場合、ガソリンエンジンの触媒担体やディーゼルエンジン用の粉塵除去フィルターに使用することができる。
【0158】
また、上述した本発明の実施形態においては、本発明に係る配線基板の例としてコア基板および配線層からなるビルドアップ多層基板を挙げたが、本発明に係る配線基板の例としては、ビルドアップ多層基板以外にも、例えば、インターポーザー基板、コアレス基板またはコア基板のみからなる単層基板やセラミック基板、金属基板、金属板を含んだコア基板も含まれる。
【0159】
また、上述した本発明の実施形態においては、無機絶縁層は粉砕粒子を含んでいたが、無機絶縁層は粉砕粒子を含んでいなくても構わない。
【0160】
また、上述した本発明の実施形態においては、無機絶縁部材は第1無機絶縁粒子および第2無機絶縁粒子を含んでいたが、無機絶縁部材は第2無機絶縁粒子を含まずに第1無機絶縁粒子のみを含んでいても構わないし、第1無機絶縁粒子および第2無機絶縁粒子とは粒径の異なる無機絶縁粒子が無機絶縁部材に含まれていても構わない。
【0161】
また、上述した本発明の実施形態においては、樹脂基体の樹脂部および第2樹脂層が熱硬化性樹脂により形成されていたが、樹脂基体の樹脂部および第2樹脂層の少なくとも一方、もしくは双方が熱可塑性樹脂により形成されていても構わない。この熱可塑性樹脂としては、例えばフッ素樹脂、芳香族液晶ポリエステル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂またはポリイミド樹脂等を用いることができる。
【0162】
また、上述した本発明の実施形態においては、配線基板が第2および第4樹脂層を備えていたが、第2および第4樹脂層を備えていなくても構わない。この場合、第1および第2無機絶縁層上に導電層が形成される。また、工程(2)にて金属箔上に無機絶縁ゾルが塗布される。
【0163】
また、上述した本発明の実施形態においては、第2および第4樹脂層は第1および第3樹脂層と比較して弾性率が低く設定されていたが、第1および第3樹脂層と第2樹脂層とは弾性率が同一でも構わない。この場合、例えば、第1および第3樹脂層と第2樹脂層としては、同一の樹脂材料により形成されたものを用いることができる。
【0164】
また、上述した本発明の実施形態においては、コア基板および配線層の双方が無機絶縁層を備えていたが、配線基板はコア基板または配線層の少なくともいずれか一方が無機絶縁層を備えていれば良い。
【0165】
また、上述した本発明の実施形態においては、金属箔を有する絶縁シートを用いたが、支持部材として金属箔以外の部材を有していてもよく、例えば金属箔の代わりに熱可塑性
樹脂からなる樹脂フィルムを用いても構わない。この場合、工程(7)においては、樹脂フィルムを剥離して除去した後、工程(12)と同様にして導電層を形成することができる。
【0166】
また、上述した本発明の実施形態においては、工程(3)における溶剤の蒸発と工程(4)における溶剤の加熱を別々に行っていたが、工程(3)と工程(4)を同時に行っても構わない。
【0167】
また、上述した本発明の実施形態においては、工程(6)にて未硬化の樹脂前駆体シートを第2無機絶縁層上に載置したが、未硬化で液状の樹脂層前駆体を第2無機絶縁層に塗布しても構わない。
【符号の説明】
【0168】
1 実装構造体
2 電子部品
3 配線基板
4 バンプ
5 コア基板
6 配線層
7 基体
8 スルーホール導体
9 絶縁体
10a 第1樹脂層
10b 第2樹脂層
10c 第3樹脂層
10d 第4樹脂層
11a 第1無機絶縁層
11b 第2無機絶縁層
11x 無機絶縁ゾル
12 繊維
12a 第1繊維
12b 第2繊維
13 無機絶縁部材
14 粉砕粒子
15a 第1無機絶縁粒子
15b 第2無機絶縁粒子
16 樹脂部材
17 導電層
17x 金属箔
18 ビア導体
19a 第1層領域
19b 第2層領域
20 被覆部
21 接続部
22 絶縁シート
V 空隙
O 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維と、隣接する該繊維同士の近接箇所にて該隣接する繊維それぞれに接続した無機絶縁部材とを有する無機絶縁層を備えたことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板において、
前記無機絶縁層は、前記繊維および前記無機絶縁部材に取り囲まれた空隙をさらに有し、該空隙には樹脂部材が配されていることを特徴とする配線基板。
【請求項3】
請求項2に記載の配線基板において、
前記無機絶縁層の一主面側に配された第1樹脂層をさらに備え、
前記樹脂部材は、前記第1樹脂層の一部が前記空隙に配されてなることを特徴とする配線基板。
【請求項4】
請求項1に記載の配線基板において、
前記無機絶縁部材は、粒径が3nm以上110nm以下である、互いに接続した複数の第1無機絶縁粒子を含んでおり、
該複数の第1無機絶縁粒子のうち、一部の前記第1無機絶縁粒子が前記繊維に接続していることを特徴とする配線基板。
【請求項5】
請求項4に記載の配線基板において、
前記繊維および前記第1無機絶縁粒子は、酸化ケイ素を含有することを特徴とする配線基板。
【請求項6】
請求項4に記載の配線基板において、
前記無機絶縁部材は、粒径が0.5μm以上3μm以下である、前記第1無機絶縁粒子を介して互いに接続した複数の第2無機絶縁粒子をさらに含んでいることを特徴とする配線基板。
【請求項7】
請求項1に記載の配線基板において、
前記近接箇所においては、一方の前記繊維の端部と他方の前記繊維の側面とが近接していることを特徴とする配線基板。
【請求項8】
請求項1に記載の配線基板において、
前記無機絶縁部材は、前記繊維の表面を被覆している被覆部と、前記近接箇所にて前記隣接する繊維それぞれに接続している接続部とを具備することを特徴とする配線基板。
【請求項9】
請求項8に記載の配線基板において、
前記無機絶縁部材は、粒径が3nm以上110nm以下である、互いに接続した複数の第1無機絶縁粒子と、粒径が0.5μm以上3μm以下である、前記第1無機絶縁粒子を介して互いに接続した複数の第2無機絶縁粒子とを含んでおり、
前記接続部は、前記被覆部よりも前記第2無機絶縁粒子を多く含むことを特徴とする配線基板。
【請求項10】
請求項9に記載の配線基板において、
前記無機絶縁層は、前記繊維および前記無機絶縁部材に取り囲まれた空隙をさらに有し、該空隙には樹脂部材が配されており、
前記被覆部の前記第2無機絶縁粒子は、前記第1無機絶縁粒子を介して前記繊維に接続しているとともに前記樹脂部材に向かって突出していることを特徴とする配線基板。
【請求項11】
請求項1に記載の配線基板において、
前記複数の繊維は、長手方向と前記無機絶縁層の平面方向との角度が10°以上40°以下である第1繊維と、長手方向と前記無機絶縁層の平面方向との角度が50以上80°以下である第2繊維とを含んでおり、
前記第1繊維の数は、前記第2繊維の数よりも多いことを特徴とする配線基板。
【請求項12】
請求項1に記載の配線基板において、
前記無機絶縁層の一主面側に配された第1樹脂層と、前記無機絶縁層の他主面側に配された第2樹脂層と、該第2樹脂層の前記無機絶縁層とは反対側に配された導電層とをさらに備え、
前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層よりも厚みおよびヤング率が小さいことを特徴とする配線基板。
【請求項13】
請求項12に記載の配線基板において、
前記無機絶縁層は、第1層領域と、該第1層領域よりも前記他主面側に配された第2層領域とを具備し、
該第2層領域における前記繊維の長さの平均値が、前記第1層領域における前記繊維の長さの平均値よりも大きいことを特徴とする配線基板。
【請求項14】
請求項1に記載の配線基板において、
前記繊維は、長さが幅の2倍以上50倍以下であることを特徴とする配線基板。
【請求項15】
請求項14に記載の配線基板において、
前記繊維は、幅が4μm以上10μm以下であり、長さが8μm以上500μm以下であることを特徴とする配線基板。
【請求項16】
請求項1に記載の配線基板において、
前記無機絶縁層は、前記無機絶縁部材を介して前記繊維に接続した粉砕粒子をさらに有することを特徴とする配線基板。
【請求項17】
請求項1に記載の配線基板と、該配線基板に実装された電子部品とを備えたことを特徴とする実装構造体。
【請求項18】
支持部材と、該支持部材上に配された無機絶縁層とを備え、
該無機絶縁層は、複数の繊維と、隣接する該繊維同士の近接箇所にて該隣接する繊維それぞれに接続した無機絶縁部材とを有することを特徴とする絶縁シート。
【請求項19】
請求項18に記載の絶縁シートの前記無機絶縁層を基体側に配しつつ、前記絶縁シートを前記基体に第1樹脂層を介して積層する工程を備えたことを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−178392(P2012−178392A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39333(P2011−39333)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】