説明

配線基板の接続方法

【課題】簡便な方法で、リジット基板に接続させたフレキ基板の耐屈曲性を向上させることが可能な配線基板の接続方法を提供すること。
【解決手段】本発明の配線基板の接続方法は、フレキ基材11、フレキ配線12およびカバーレイ13を備えるフレキ基板1と、リジット基板2とを、異方性導電性ペースト3を用いて接続する。リジット基板2上に異方性導電性ペースト3を塗布する塗布工程と、フレキ基板1をリジット基板2に熱圧着する熱圧着工程と、を備え、前記熱圧着工程では、平面視にてリジット基板2とカバーレイ13とが重複する重複領域があり、かつ、前記重複領域におけるリジット基板2の端部からカバーレイ13の端部までの長さ寸法が0.3mm以上となるように、異方性導電性ペースト3上にフレキ基板1を配置し、平面視にてヒーター4の接触する箇所とカバーレイ13とが重複しないようにして、フレキ基板1上からヒーター4を接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性導電性ペーストを用いて配線基板同士を接続する配線基板の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フレキ基板(フレキシブル性を有する配線基板)とリジット基板(フレキシブル性を有しない配線基板)との接続には、異方性導電性ペーストなどの異方性導電材を用いた接続方式が利用されている(例えば、特許文献1)。フレキ基板とリジット基板とを接続する場合には、電極が形成されたフレキ基板と、電極のパターンが形成されたリジット基板との間に異方性導電材を配置し、フレキ基板とリジット基板とを熱圧着して電気的接続を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−54273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のような方法で、フレキ基板とリジット基板とを接続する場合には、リジット基板に接続させたフレキ基板の耐屈曲性が不十分となるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、簡便な方法で、リジット基板に接続させたフレキ基板の耐屈曲性を向上させることが可能な配線基板の接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決すべく、本発明は、以下のような配線基板の接続方法を提供するものである。
すなわち、本発明の配線基板の接続方法は、フレキシブル性を有し、フレキ基材、フレキ配線およびカバーレイを備えるフレキ基板と、リジット基板とを、異方性導電性ペーストを用いて接続する配線基板の接続方法であって、前記リジット基板上に前記異方性導電性ペーストを塗布する塗布工程と、前記フレキ基板を前記リジット基板に熱圧着する熱圧着工程と、を備え、前記熱圧着工程では、平面視にて前記リジット基板と前記カバーレイとが重複する重複領域があり、かつ、前記重複領域における前記リジット基板の端部から前記カバーレイの端部までの長さ寸法が0.3mm以上となるように、前記異方性導電性ペースト上に前記フレキ基板を配置し、平面視にてヒーターの接触する箇所と前記カバーレイとが重複しないようにして、前記フレキ基板上から前記ヒーターを接触させることを特徴とする方法である。
【0007】
本発明の配線基板の接続方法においては、前記熱圧着工程では、平面視にて前記リジット基板のリジット配線と前記カバーレイとが重複するように、前記異方性導電性ペースト上に前記フレキ基板を配置することが好ましい。
本発明の配線基板の接続方法においては、前記異方性導電性ペーストが、240℃以下の融点を有する鉛フリーはんだ粉末10質量%以上50質量%以下と、熱硬化性樹脂および有機酸を含有する熱硬化性樹脂組成物50質量%以上90質量%以下とを含有し、前記熱硬化性樹脂組成物の酸価が、20mgKOH/g以上50mgKOH/gであることが好ましい。
本発明の配線基板の接続方法においては、前記鉛フリーはんだ粉末が、スズ、銅、銀、ビスマス、アンチモン、インジウムおよび亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。
【0008】
なお、本発明において、異方性導電性ペーストとは、所定値以上の熱および所定値以上の圧力をかけた箇所では熱圧着方向(厚み方向)に導電性を持つようになるが、それ以外の箇所では面方向に絶縁性を有する異方性導電材を形成できるペーストのことをいう。
また、本発明の配線基板の接続方法によって、リジット基板に接続させたフレキ基板の耐屈曲性を向上させることができる理由は必ずしも定かではないが、本発明者は以下のように推察する。
【0009】
すなわち、本発明の配線基板の接続方法においては、平面視にて前記リジット基板と前記カバーレイとが重複する重複領域があり、かつ、前記重複領域における前記リジット基板の端部から前記カバーレイの端部までの長さ寸法が0.3mm以上となるように、前記異方性導電性ペースト上に前記フレキ基板を配置して、熱圧着している。このような場合、熱圧着後にカバーレイがスペーサーとして機能して、リジット基材とフレキ基材との間隔を適当な範囲内にできるために、フレキ基板の耐屈曲性が向上していると本発明者は推察する。また、屈曲の影響を最も大きく受ける箇所は、フレキ基板におけるカバーレイの端部であるが、これがリジット基板上にあることで屈曲の影響が緩和されることによっても、フレキ基板の耐屈曲性が向上していると本発明者は推察する。なお、平面視にてヒーターの接触する箇所とカバーレイとが重複するようにして熱圧着する場合には、カバーレイが熱圧着を妨げるとともに、熱変形によりスペーサーとして機能が低下することから、本発明においては、平面視にてヒーターの接触する箇所とカバーレイとが重複しないようにして熱圧着している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡便な方法で、リジット基板に接続させたフレキ基板の耐屈曲性を向上させることが可能な配線基板の接続方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の配線基板の接続方法により、フレキ基板およびリジット基板が接続した状態を示す上面図である。
【図2】本発明の配線基板の接続方法により、フレキ基板およびリジット基板が接続した状態を示す一部断面の側面図である。
【図3】本発明の熱圧着工程において、フレキ基板とリジット基板とを熱圧着する前の接続部分を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の熱圧着工程において、フレキ基板とリジット基板とを熱圧着した後の接続部分を示す拡大断面図である。
【図5】実施例2において、フレキ基板とリジット基板とを熱圧着する前の接続部分を示す拡大断面図である。
【図6】比較例2において、フレキ基板とリジット基板とを熱圧着する前の接続部分を示す拡大断面図である。
【図7】比較例3において、フレキ基板とリジット基板とを熱圧着する前の接続部分を示す拡大断面図である。
【図8】比較例4において、フレキ基板とリジット基板とを熱圧着する前の接続部分を示す拡大断面図である。
【図9】折り曲げ試験の方法を説明するための拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の配線基板の接続方法の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図4は、本発明の配線基板の接続方法を説明するための図である。
本発明の配線基板の接続方法は、図1および図2に示すように、フレキ基板1と、リジット基板2とを、異方性導電性ペースト3を用いて接続する配線基板の接続方法であって、以下説明する塗布工程と、熱圧着工程と、を備える方法である。
なお、本明細書において、フレキ基板とは、フレキシブル性を有する配線基板のことをいい、リジット基板とは、フレキシブル性を有しない配線基板のことをいう。
【0013】
フレキ基板1は、図1および図2に示すように、フレキ基材11と、フレキ配線12と、カバーレイ13とを備える積層体である。また、フレキ基板1には、チップ、パッケージ部品などの電子部品(図示しない)が搭載されていてもよい。また、フレキ基板1は、単層基板であってもよく、多層基板であってもよい。さらに、フレキ基板1は、片面基板であってもよく、両面基板であってもよい。
フレキ基材11の厚みは、特に限定されないが、10μm以上40μm以下であることが好ましい。
フレキ配線12の厚みは、特に限定されないが、5μm以上25μm以下であることが好ましい。
カバーレイ13の厚みは、特に限定されないが、10μm以上100μm以下であることが好ましく、25μm以上70μm以下であることがより好ましい。本発明においては、カバーレイ13の厚みを調整することにより、熱圧着後のリジット基材21とフレキ基材11との間隔を調整できる。
【0014】
リジット基板2は、図1および図2に示すように、リジット基材21と、リジット配線22と、ソルダーレジスト23とを備える積層体である。また、リジット基板2には、チップ、パッケージ部品などの電子部品(図示しない)が搭載されていてもよい。また、リジット基板2は、単層基板であってもよく、多層基板であってもよい。さらに、リジット基板2は、片面基板であってもよく、両面基板であってもよい。なお、フレキ基板1を、2つのリジット基板2とそれぞれ接続を図ることで、リジット基板2同士をフレキ基板1を介して電気的に接続することもできる。
リジット基材21の厚みは、特に限定されないが、0.05mm以上1.6mm以下であることが好ましい。
リジット配線22の厚みは、特に限定されないが、10μm以上50μm以下であることが好ましく、15μm以上25μm以下であることがより好ましい。本発明において、平面視にてリジット配線22とカバーレイ13とが重複するように、フレキ基板1を配置する場合には、リジット配線22の厚みを調整することにより、熱圧着後のリジット基材21とフレキ基材11との間隔を調整できる。
ソルダーレジスト23の厚みは、特に限定されないが、10μm以上60μm以下であることが好ましい。
【0015】
塗布工程においては、リジット基板2上に異方性導電性ペースト3を塗布する。
ここで用いる塗布装置としては、例えば、ディスペンサー、スクリーン印刷機、ジェットディスペンスメタルマスク印刷機が挙げられる。
また、塗布膜の厚みは、特に限定されないが、50μm以上500μm以下であることが好ましく、100μm以上300μm以下であることがより好ましい。厚みが前記下限未満では、リジット基板の電極上にフレキ基板を搭載した際の付着力が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、接続部分以外にもペーストがはみ出しやすくなる傾向にある。
【0016】
熱圧着工程においては、先ず、図3に示すように、平面視にてリジット基板2とカバーレイ13とが重複する重複領域があり、かつ、前記重複領域におけるリジット基板2の端部からカバーレイ13の端部までの長さ寸法(X)が0.3mm以上となるように、異方性導電性ペースト3上にフレキ基板1を配置する。
このようにすることで、カバーレイ13をスペーサーとして機能させ、熱圧着後のリジット基材21とフレキ基材11との間隔を調整できる。また、カバーレイ13がリジット基板2のリジット配線22(ランドともいう)上にあれば、カバーレイ13だけでなく、リジット配線22の厚みでも、熱圧着後のリジット基材21とフレキ基材11との間隔を調整できるという観点から、平面視にてリジット配線22とカバーレイ13とが重複するように、異方性導電性ペースト3上にフレキ基板1を配置することがより好ましい。
【0017】
熱圧着工程においては、次に、図3に示すように、平面視にてヒーター4の接触する箇所とカバーレイ13とが重複しないようにして、フレキ基板1上からヒーター4を接触させて、図4に示すように、フレキ基板1をリジット基板2に熱圧着する。
平面視にてヒーター4の接触する箇所とカバーレイ13とが重複するようにして熱圧着する場合には、カバーレイ13が熱圧着を妨げるとともに、熱変形によりスペーサーとしての機能が低下する。
【0018】
前記熱圧着工程において、熱圧着時の圧力は、0.05MPa以上2MPa以下とすることが好ましく、0.1MPa以上1MPa以下とすることがより好ましい。圧力が前記上限未満では、配線基板同士の間に十分なはんだ接合を形成できず、配線基板同士の間の導電性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、配線基板にストレスがかかり、デッドスペースを広くとらなければならなくなる傾向にある。
熱圧着時の温度は、異方性導電性ペースト3中の鉛フリーはんだ粉末の融点よりも高いことが好ましく、鉛フリーはんだ粉末の融点よりも20℃以上高いことがより好ましい。この条件を満たさない場合には、鉛フリーはんだを十分に溶融させることができず、配線基板同士の間に十分なはんだ接合を形成できず、配線基板同士の間の導電性が不十分となる傾向にある。
熱圧着時の時間は、特に限定されないが、通常、5秒以上60秒以下であり、7秒以上20秒以下であることが好ましい。
【0019】
本発明の配線基板の接続方法によれば、前記の通り、熱圧着後のリジット基材21とフレキ基材11との間隔を調整できる。この間隔は、20μm以上100μm以下であることが好ましく、40μm以上80μm以下であることがより好ましい。この間隔が前記範囲内であれば、リジット基板2に接続させたフレキ基板1の耐屈曲性を向上させることができる。
【0020】
次に、本発明に用いる異方性導電性ペーストについて説明する。
本発明においては、公知の異方性導電性ペーストを用いてもよいが、以下説明する異方性導電性ペーストを用いることが好ましい。これによれば、熱圧着時の圧力を、従来の異方性導電性フィルムや異方性導電性ペーストを用いる場合と比較して、低い圧力範囲に設定することができる。
【0021】
本発明に用いる異方性導電性ペーストは、以下説明する鉛フリーはんだ粉末10質量%以上50質量%以下と、以下説明する熱硬化性樹脂組成物50質量%以上90質量%以下とを含有するものであることが好ましい。
この鉛フリーはんだ粉末の含有量が10質量%未満の場合(熱硬化性樹脂組成物の含有量が90質量%を超える場合)には、得られる異方性導電性ペーストを熱圧着した場合に、配線基板同士の間に十分なはんだ接合を形成できず、配線基板同士の間の導電性が不十分となり、他方、鉛フリーはんだ粉末の含有量が50質量%を超える場合(熱硬化性樹脂組成物の含有量が50質量%未満の場合)には、得られる異方性導電性ペーストにおける絶縁性、特に加湿状態に放置した場合の湿中絶縁性が不十分となり、結果として、はんだブリッジにより、異方性を示さなくなる。また、得られる異方性導電性ペーストにおいて、絶縁性と熱圧着した場合の導電性とのバランスをとるという観点から、この鉛フリーはんだ粉末の含有量は、20質量%以上45質量%以下であることが好ましく、30質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
【0022】
本発明に用いる鉛フリーはんだ粉末は、240℃以下の融点を有するものである。この鉛フリーはんだ粉末の融点が240℃を超えるものを用いる場合には、異方性導電性ペーストにおける通常の熱圧着温度では鉛フリーはんだ粉末を溶融させることができない。また、異方性導電性ペーストにおける熱圧着温度を低くするという観点からは、鉛フリーはんだ粉末の融点が220℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。
ここで、鉛フリーはんだ粉末とは、鉛を添加しないはんだ金属または合金の粉末のことをいう。ただし、鉛フリーはんだ粉末中に、不可避的不純物として鉛が存在することは許容されるが、この場合に、鉛の量は、100質量ppm以下であることが好ましい。
【0023】
前記鉛フリーはんだ粉末は、スズ(Sn)、銅(Cu)、銀(Ag)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)および亜鉛(Zn)からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。
また、前記鉛フリーはんだ粉末における具体的なはんだ組成(質量比率)としては、以下のようなものを例示できる。
2元系合金としては、例えば、95.3Ag/4.7BiなどのAg−Bi系、66Ag/34LiなどのAg−Li系、3Ag/97InなどのAg−In系、67Ag/33TeなどのAg−Te系、97.2Ag/2.8TlなどのAg−Tl系、45.6Ag/54.4ZnなどのAg−Zn系、80Au/20SnなどのAu−Sn系、52.7Bi/47.3InなどのBi−In系、35In/65Sn、51In/49Sn、52In/48SnなどのIn−Sn系、8.1Bi/91.9ZnなどのBi−Zn系、43Sn/57Bi、42Sn/58BiなどのSn−Bi系、98Sn/2Ag、96.5Sn/3.5Ag、96Sn/4Ag、95Sn/5AgなどのSn−Ag系、91Sn/9Zn、30Sn/70ZnなどのSn−Zn系、99.3Sn/0.7CuなどのSn−Cu系、95Sn/5SbなどのSn−Sb系が挙げられる。
3元系合金としては、例えば、95.5Sn/3.5Ag/1InなどのSn−Ag−In系、86Sn/9Zn/5In、81Sn/9Zn/10InなどのSn−Zn−In系、95.5Sn/0.5Ag/4Cu、96.5Sn/3.0Ag/0.5CuなどのSn−Ag−Cu系、90.5Sn/7.5Bi/2Ag、41.0Sn/58Bi/1,0AgなどのSn−Bi−Ag系、89.0Sn/8.0Zn/3.0BiなどのSn−Zn−Bi系が挙げられる。
その他の合金としては、Sn/Ag/Cu/Bi系などが挙げられる。
【0024】
また、前記鉛フリーはんだ粉末の平均粒子径は、1μm以上34μm以下であることが好ましく、3μm以上20μm以下であることがより好ましい。鉛フリーはんだ粉末の平均粒子径が前記下限未満では、配線基板同士の間の導電性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、異方性導電性ペーストにおける絶縁性が低下する傾向にある。
【0025】
本発明に用いる熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂および有機酸を含有するものである。そして、この熱硬化性樹脂組成物の酸価は、20mgKOH/g以上50mgKOH/gであることが好ましい。酸価が20mgKOH/g未満の場合には、得られる異方性導電性ペーストを熱圧着した場合に、はんだを十分に活性化することができず、配線基板同士の間の導電性が不十分となる傾向にあり、他方、50mgKOH/gを超えると、得られる異方性導電性ペーストにおける絶縁性、特に加湿状態に放置した場合の湿中絶縁性が不十分となる傾向にある。また、得られる異方性導電性ペーストにおいて、絶縁性と熱圧着した場合の導電性とのバランスをとるという観点から、この熱硬化性樹脂組成物の酸価は、30mgKOH/g以上45mgKOH/gであることが好ましい。
【0026】
本発明に用いる熱硬化性樹脂としては、公知の熱硬化性樹脂を適宜用いることができるが、フラックス作用を有するという観点から、特にエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
なお、本発明において、フラックス作用を有するとは、通常のロジン系フラックスのように、その塗布膜は被はんだ付け体の金属面を覆って大気を遮断し、はんだ付け時にはその金属面の金属酸化物を還元し、この塗布膜が溶融はんだに押し退けられてその溶融はんだと金属面との接触が可能となり、その残渣は回路間を絶縁する機能を有するものである。
【0027】
このようなエポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂を適宜用いることができる。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、ナフタレン型、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型などのエポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらのエポキシ樹脂は、常温で液状のものを含有することが好ましく、常温で固形のものを用いる場合には、常温で液状のものと併用することが好ましい。また、これらのエポキシ樹脂の型の中でも、金属粒子の分散性およびペースト粘度を調整でき、さらに硬化物の落下衝撃に対する耐性が向上できるという観点や、はんだの濡れ広がり性が良好となるという観点から、液状ビスフェノールA型、液状ビスフェノールF型、液状水添タイプのビスフェノールA型が好ましい。
前記エポキシ樹脂の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、70質量%以上92質量%以下であることが好ましく、75質量%以上85質量%以下であることがより好ましい。エポキシ樹脂の含有量が前記下限未満では、配線基板を固着させるために十分な強度が得られないため、落下衝撃に対する耐性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱硬化性樹脂組成物中の有機酸や硬化剤の含有量が減少し、エポキシ樹脂を硬化せしめる速度が遅延しやすい傾向にある。
【0028】
本発明に用いる有機酸としては、公知の有機酸を適宜用いることができる。このような有機酸の中でも、エポキシ樹脂との溶解性に優れるという観点、並びに保管中において結晶の析出が起こりにくいという観点から、アルキレン基を有する二塩基酸を用いることが好ましい。このようなアルキレン基を有する二塩基酸としては、例えば、アジピン酸、2,5−ジエチルアジピン酸、グルタル酸、2,4−ジエチルグルタル酸、2,2−ジエチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2−エチル−3−プロピルグルタル酸、セバシン酸、コハク酸、マロン酸、ジグリコール酸が挙げられる。これらの中でも、アジピン酸が好ましい。
前記有機酸の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、1質量%以上8質量%以下であることが好ましく、2質量%以上7質量%以下であることがより好ましい。有機酸の含有量が前記下限未満では、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を硬化せしめる速度が遅延することで硬化不良となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる異方性導電性ペーストにおける絶縁性が低下する傾向にある。
【0029】
また、本発明に用いる熱硬化性樹脂組成物は、前記熱硬化性樹脂および前記有機酸の他に、チクソ剤および硬化剤を用いることが好ましい。
本発明に用いるチクソ剤としては、公知のチクソ剤を適宜用いることができる。このようなチクソ剤としては、例えば、ソルビトール誘導体、脂肪酸アマイド、水添ヒマシ油が挙げられる。これらの中でも、ソルビトール誘導体、脂肪酸アマイドが好ましい。
前記チクソ剤の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。チクソ剤の含有量が前記下限未満では、チクソ性が得られず、配線基板の電極上でダレが生じやすくなり、配線基板の電極上に他の配線基板を搭載した際の付着力が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、チクソ性が高すぎてシリンジニードルの詰まりにより塗布不良となりやすい傾向にある。
【0030】
本発明に用いる硬化剤としては、適宜公知の硬化剤を用いることができる。例えば、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂を用いる場合には、以下のようなものを用いることができる。
潜在性硬化剤としては、例えば、ノバキュアHX−3722、HX−3721、HX−3748、HX−3088、HX−3613、HX−3921HP、HX−3941HP(旭化成エポキシ社製、商品名)が挙げられる。
脂肪族ポリアミン系硬化剤としては、例えば、フジキュアFXR−1020、FXR−1030、FXR−1050、FXR−1080(富士化成工業社製、商品名)が挙げられる。
エポキシ樹脂アミンアダクト系硬化剤としては、例えば、アミキュアPN−23、PNF、MY−24 、VDH、UDH、PN−31、PN−40(味の素ファインテクノ製、商品名)、EH−3615S、EH−3293S、EH−3366S、EH−3842、EH−3670S、EH−3636AS、EH−4346S(ADEKA社製、商品名)が挙げられる。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2P4MHZ、2MZA、2PZ、C11Z、C17Z、2E4MZ、2P4MZ、C11Z−CNS、2PZ−CNZ(以上、商品名)が挙げられる。
【0031】
前記硬化剤の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、10質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。硬化剤の含有量が前記下限未満では、熱硬化性樹脂を硬化せしめる速度が遅延しやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、反応性が速くなり、ペースト使用時間が短くなる傾向にある。
【0032】
本発明に用いる熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、前記エポキシ樹脂、前記有機酸、前記チクソ剤および前記硬化剤以外に、界面活性剤、カップリング剤、消泡剤、粉末表面処理剤、反応抑制剤、沈降防止剤などの添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。添加剤の含有量が前記下限未満では、それぞれの添加剤の効果を奏しにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱硬化性樹脂組成物による接合強度が低下する傾向にある。
【実施例】
【0033】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を以下に示す。
熱硬化性樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名「EPICLON 860」、DIC社製
チクソ剤:商品名「ゲルオールD」、新日本理化社製
有機酸:アジピン酸、関東電化工業社製
硬化剤:商品名「キュアゾール2P4MHZ」、四国化成工業社製
界面活性剤:商品名「BYK361N」、ビックケミージャパン社製
消泡剤:商品名「KS−66」、信越シリコーン社製
鉛フリーはんだ粉末:平均粒子径は5μm、はんだの融点は139℃、はんだの組成は42Sn/58Bi
[実施例1]
熱硬化性樹脂82.9質量%、チクソ剤2質量%、有機酸2.6質量%、硬化剤11.5質量%、界面活性剤0.5質量%および消泡剤0.5質量%を容器に投入し、らいかい機を用いて混合して熱硬化性樹脂組成物を得た。なお、この熱硬化性樹脂組成物の酸価は20mgKOH/gであった。
その後、得られた熱硬化性樹脂組成物62.5質量%、および鉛フリーはんだ粉末37.5質量%を容器に投入し、混練機にて2時間混合することで異方性導電性ペーストを調製した。
次に、図3に示すように、リジット基板2(電極:銅電極に水溶性プリフラックス処理(タムラ製作所製、商品名「WPF−8」)、リジット配線22の厚み:18μm)上に、得られた異方性導電性ペースト3を塗布した(厚み:0.2mm)。そして、塗布後の異方性導電性ペースト3上に、フレキ基板1(電極:銅電極に金メッキ処理(Cu/Ni/Au)、カバーレイ13の厚み:50μm)を配置し、熱圧着装置(アドバンセル社製)を用いて、温度190℃、圧力0.23MPa(接続荷重10N)、圧着時間12秒の条件で、フレキ基板1をリジット基板2に熱圧着した。なお、熱圧着時においては、図3に示すように、フレキ基板1、リジット基板2、異方性導電性ペースト3およびヒーター4を配置している。
なお、実施例1の熱圧着時においては、重複領域におけるリジット基板2の端部からカバーレイ13の端部までの長さ寸法(X)は0.5mmである。
【0034】
[実施例2]
熱圧着時における、フレキ基板1、リジット基板2、異方性導電性ペースト3およびヒーター4の配置を図5に示すようにした以外は実施例1と同様にして、フレキ基板1をリジット基板2に熱圧着した。
なお、実施例2の熱圧着時においては、平面視にてヒーターの接触する箇所とソルダーレジスト23とが重複するようになっている。
【0035】
[比較例1]
実施例1で用いた異方性導電性ペーストに代えて、異方性導電性フィルム(金メッキ処理樹脂粉末を含有するもの、商品名「FP1830V」、ソニーケミカル社製)を用いた以外は実施例1と同様にして、フレキ基板1をリジット基板2に熱圧着した。
[比較例2]
熱圧着時における、フレキ基板1、リジット基板2、異方性導電性ペースト3およびヒーター4の配置を図6に示すようにした以外は実施例1と同様にして、フレキ基板1をリジット基板2に熱圧着した。
なお、比較例2の熱圧着時においては、重複領域におけるリジット基板2の端部からカバーレイ13の端部までの長さ寸法(X)は0.1mmである。
【0036】
[比較例3]
熱圧着時における、フレキ基板1、リジット基板2、異方性導電性ペースト3およびヒーター4の配置を図7に示すようにした以外は実施例1と同様にして、フレキ基板1をリジット基板2に熱圧着した。
なお、比較例3の熱圧着時においては、平面視にてヒーターの接触する箇所とカバーレイ13とが重複するようになっている。
[比較例4]
フレキ基板1、リジット基板2、異方性導電性ペースト3およびヒーター4の配置を図8に示すようにした以外は実施例1と同様にして、フレキ基板1をリジット基板2に熱圧着した。
なお、比較例4の熱圧着時においては、平面視にてヒーターの接触する箇所と異方性導電性ペースト3とがほとんど重複しておらず、平面視にてカバーレイ13と異方性導電性ペースト3とが重複するようになっている。
【0037】
<配線基板の接続方法の評価>
配線基板の接続方法の評価(初期抵抗値、ピール強度、折り曲げ試験)を以下のような方法で評価または測定した。得られた結果を表1に示す。なお、比較例1、3および4については、初期抵抗値が導通不可で測定できなかったため、折り曲げ試験の評価をしなかった。
(1)初期抵抗値
回路パターンとして0.2mmピッチランド(ライン/スペース=100μm/100μm)を有するリジット基板2(リジット配線22の厚み:18μm)を準備した。そして、このリジット基板2のランド上に、それぞれ前記の実施例および比較例に記載の方法で、0.2mmピッチランド(ライン/スペース=100μm/100μm)を有するフレキ基板1(カバーレイ13の厚み:50μm)を熱圧着した。そして、デジタルマルチメーター(Agilent社製、商品名「34401A」)を用いて、接続したランドの端子同士の間の抵抗値を測定した。なお、抵抗値が高すぎて(100MΩ以上)、導通できなかった場合には、「導通不可」と判定した。
(2)ピール強度(接着強度)
前記(1)において初期抵抗値を測定した基板を用いて評価する。フレキ基板1およびリジット基板2をそれぞれ治具に固定して、フレキ基板1をリジット基板2の基板面に対して90°の角度をなす方向に引張り速度50mm/minで引張り、そのときのピール強度を測定した。なお、フレキ基板1とリジット基板2との接続部分で剥離せずに、フレキ基板1が破壊された場合には、「破壊」と判定した。「破壊」という判定は、フレキ基板1とリジット基板2との接続部分の接着強度が十分であることを示す。
(3)折り曲げ試験
前記(1)において初期抵抗値を測定した基板を用いて評価する。フレキ基板1およびリジット基板2をそれぞれ治具に固定して、図9に示すように、フレキ基板1とリジット基板2とのなす角度が90°となるまでフレキ基板1を折り曲げる。その後、フレキ基板1とリジット基板2とのなす角度が0°となる初期状態に戻す。このような操作を行う毎に抵抗値を測定し、この抵抗値が、初期抵抗値×0.9の値よりも小さくなるか、或いは、初期抵抗値×1.1の値より大きくなった場合における操作回数を評価する。操作回数が大きいほど、耐屈曲性に優れることを示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明の配線基板の接続方法(実施例1〜2)によれば、簡便な方法で、リジット基板に接続させたフレキ基板の耐屈曲性を向上させることができることが確認された。
これに対し、金メッキ処理樹脂粉末を含有する異方性導電性フィルムを用いた場合(比較例1)には、熱圧着時における圧力が足りず、配線基板同士の導電性を確保できないことが確認された。
また、熱圧着時において、重複領域におけるリジット基板2の端部からカバーレイ13の端部までの長さ寸法は0.1mmである場合(比較例2)には、耐屈曲性に劣ることが確認された。
また、熱圧着時において、平面視にてヒーターの接触する箇所とカバーレイ13とが重複するようになっている場合(比較例3)、および、熱圧着時において、平面視にてヒーターの接触する箇所と異方性導電性ペースト3とがほとんど重複しておらず、平面視にてカバーレイ13と異方性導電性ペースト3とが重複するようになっている場合(比較例4)には、配線基板同士の導電性を確保できないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の配線基板の接続方法は、配線基板同士を接続するための技術として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
1…フレキ基板
2…リジット基板
3…異方性導電性ペースト
4…ヒーター
11…フレキ基材
12…フレキ配線
13…カバーレイ
22…リジット配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル性を有し、フレキ基材、フレキ配線およびカバーレイを備えるフレキ基板と、リジット基板とを、異方性導電性ペーストを用いて接続する配線基板の接続方法であって、
前記リジット基板上に前記異方性導電性ペーストを塗布する塗布工程と、
前記フレキ基板を前記リジット基板に熱圧着する熱圧着工程と、を備え、
前記熱圧着工程では、
平面視にて前記リジット基板と前記カバーレイとが重複する重複領域があり、かつ、前記重複領域における前記リジット基板の端部から前記カバーレイの端部までの長さ寸法が0.3mm以上となるように、前記異方性導電性ペースト上に前記フレキ基板を配置し、
平面視にてヒーターの接触する箇所と前記カバーレイとが重複しないようにして、前記フレキ基板上から前記ヒーターを接触させる
ことを特徴とする配線基板の接続方法。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板の接続方法において、
前記熱圧着工程では、平面視にて前記リジット基板のリジット配線と前記カバーレイとが重複するように、前記異方性導電性ペースト上に前記フレキ基板を配置する
ことを特徴とする配線基板の接続方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の配線基板の接続方法において、
前記異方性導電性ペーストが、240℃以下の融点を有する鉛フリーはんだ粉末10質量%以上50質量%以下と、熱硬化性樹脂および有機酸を含有する熱硬化性樹脂組成物50質量%以上90質量%以下とを含有し、
前記熱硬化性樹脂組成物の酸価が、20mgKOH/g以上50mgKOH/gである
ことを特徴とする配線基板の接続方法。
【請求項4】
請求項3に記載の配線基板の接続方法において、
前記鉛フリーはんだ粉末が、スズ、銅、銀、ビスマス、アンチモン、インジウムおよび亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む
ことを特徴とする配線基板の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−51352(P2013−51352A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189376(P2011−189376)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】