説明

配線基板の製造方法

【課題】機械的手段によって露出した、他の部品や部材を接続するパッドのパッド面のクリーニングのためのエッチングを均一に施すことが困難な従来の配線基板の製造方法の課題を解決する。
【解決手段】基板の両面側に形成された他の部品や部材を接続するパッド24のパッド面が露出する配線基板を製造する際に、前記両面側に形成した銅から成るパターン20と、パターン20に電気的に接続された銅から成るパッド24とを形成した後、パッド24の銅から成るパッド面を銅と異なる種類の金属から成る保護皮膜48によって被覆し、次いで、パターン20及び保護被覆48を樹脂層28によって覆った後、樹脂層28をサンドブラストによって削って保護皮膜48を露出し、その後、保護皮膜48を、銅を溶解することなく保護皮膜48を形成する金属を溶解するエッチング液を用いて選択的にエッチングして除去し、パッド24のパッド面を露出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板の製造方法に関し、更に詳細には基板の一面側又は両面側に、他の部品や部材が接続されるパッドのパッド面が露出する配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の電極とフリップチップ接続される基板等の配線基板として、下記特許文献1には、図6に示す配線基板100が提案されている。配線基板100は、樹脂製であって、その一面側の半導体素子搭載面に、半導体素子102の電極104,104・・の各々とフリップチップ接続される円柱状のパッド106が形成されている。かかるパッド106,106・・の各々からはパターン108が延出されている。このパターン108は、半導体素子102の電極104,104・・の各々とフリップチップ接続されるパッド106のパッド面を除いて配線基板100の一面側を、配線基板100の絶縁層を形成する絶縁性能に優れた樹脂層によって被覆されている。
かかるパッド106,106・・の各々は、パターン108や配線基板100内に形成されたヴィア等の内部配線を介して配線基板100の他面側に形成された外部接続端子としてのはんだボール112が装着されるパッド114と電気的に接続されている。
尚、配線基板100の他面側の表面も、はんだボール112が装着されるパッド114のパッド面を除いて、配線基板100の絶縁層を形成する絶縁性能に優れた樹脂層によって覆われている。
【0003】
図6に示す配線基板100は、前掲の特許文献1によって提案されている配線基板の製造方法によって製造できる。その製造方法を、図7及び図8に示す。この図7及び図8には、半導体素子102の搭載面側について示しているが、はんだボール112の搭載面側も同様にして形成されている。
図7(a)に示す様に、樹脂製であって、スルーホール118,118・・を介して両面側にパターン122,122・・が形成されたコア基板120の両面側に、パターン122,122・・を覆う絶縁層124を形成する。この絶縁層124上には、パターン108,108・・が形成されている。このパターン108,108・・は、絶縁層124を貫通して形成されたヴィア126,126・・によって、パターン122,122・・と電気的に接続されている。かかるパターン108,108・・に形成されたパッド1310,110・・の各々には、円柱状のパッド106を形成する。
このパターン108及びパッド110,106を、図7(b)に示す様に、樹脂層124によって覆った後、図7(c)に示す様に、パッド106のパッド面に対応する樹脂層124上が開口されたサンドブラスト用マスク130を樹脂層124に被覆する。
【0004】
次いで、図7(c)に示すサンドブラスト用マスク130によって被覆した樹脂層124にサンドブラストを施すことによって、図8(a)に示す様に、パッド106,106・・のパッド面を覆う樹脂層を除去でき、パッド106,106・・の各パッド面を露出できる。
その後、図8(b)に示す様に、サンドブラスト用マスク130を剥離することによって、図6に示す配線基板100を得ることができる。
【特許文献1】特開2008−140886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7及び図8に示す配線基板の製造方法によれば、図6に示す配線基板100を容易に形成できる。
ところで、サンドブラストによって被覆していた樹脂層128を除去してパッド106の露出面は、図8(b)に示す部分拡大断面図に示す如く、凹凸面に形成されており、サンドブラストに用いた砥粒132が突き刺さっていることもある。
このため、通常、サンドブラストによって露出したパッド106のパッド面を平滑面とすると共に、砥粒132等を除去するクリーニングを施すべく、パッド106のパッド面にエッチングを施すことが行われる。
しかし、配線基板100内に多数形成したパッド106の各パッド面を均一にエッチングすることは勿論のこと、通常、配線基板100の製造の際には、複数個の配線基板100,100・・を同時に製造することが行われており、複数の配線基板100,100・・の各パッド面を均一にエッチングすることを要する。
また、図9に示す如く、パッド106と樹脂層128との境界に、エッチング液が侵入し、パッド106の側面側にもエッチングを施して、隙間134が形成される場合がある。
この様に、均一エッチングを配線基板100内及び配線基板100,100・・間で施すことは、極めて困難である。
そこで、本発明は、機械的手段によって露出した、電子部品等の他の部品や外部接続端子等の部材を接続するパッドのパッド面のクリーニングのためのエッチングを均一に施すことが困難な従来の配線基板の製造方法の課題を解決し、他の部品や部材を接続するパッドのパッド面に、直接エッチングによるクリーニングを施すことを要しない配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を解決すべく検討した結果、銅から成るパッド106のパッド面に、ニッケルから成る保護皮膜を形成した後、樹脂層から露出した保護皮膜を、ニッケルを溶解するものの銅を溶解しないエッチング液によって除去し、パッド面を露出することによって、パッド面に直接エッチングを施すことなくクリーニング可能であること、パッド106をエッチングすることなく保護皮膜のみをエッチングによって除去でき、配線基板100内及び配線基板100,100・・の間に均一なエッチングを施すことができること、及びパッド106の側面側をエッチングすることがないことを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、基板の一面側又は両面側に、他の部品や部材が接続されるパッドのパッド面が露出する配線基板を製造する際に、前記基板の一面側又は両面側に形成した銅から成るパターンと、前記パターンに電気的に接続された銅から成るパッドとを形成した後、前記パッドの銅から成るパッド面を銅と異なる種類の金属から成る保護皮膜によって被覆し、次いで、前記パターン及び保護被覆を樹脂層によって覆った後、前記樹脂層を機械的手段によって削って前記保護皮膜を露出し、その後、前記保護皮膜を、銅を溶解することなく前記保護皮膜を形成する金属を溶解するエッチング液を用いて選択的にエッチングして除去し、前記パッドのパッド面を露出することを特徴とする配線基板の製造方法にある。
【0007】
かかる本発明において、保護皮膜を、ニッケル、ニッケル化合物又ははんだによって形成することが好適である。
また、保護皮膜を他の部品や部材との接続に用いる金属によって形成し、前記保護皮膜の一部が残存するように、前記保護皮膜を選択的にエッチングして、前記保護皮膜の表面をクリーニングすることによって、他の部品や部材との接続に残存した保護皮膜を用いることができる。
更に、保護皮膜を電解めっきによって形成することにより、パッド面のみに緻密な保護皮膜を容易に形成できる。この保護皮膜の厚さとしては、1μm以上とすることが好ましい。
尚、樹脂層を削る機械的手段としては、サンドブラストを好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板の一面側又は両面側に形成した、他の部品や部材と接続される銅から成るパッドのパッド面を被覆する、銅と異なる金属から成る保護皮膜を樹脂層で覆った後、樹脂層を機械的手段で削り、保護皮膜を露出する。次いで、この保護皮膜を、銅を溶解しないものの保護皮膜を形成する金属を溶解するエッチング液を用いて選択的にエッチングし、パッド面を露出する。このため、保護被覆用のエッチング液によって、パッド面をエッチングすることなく保護皮膜のみを除去できる。その結果、配線基板内及び配線基板間においても、各搭載用パッドの銅から成るパッド面をエッチングすることなく露出できる。また、搭載用パッドと樹脂層との境界にエッチング液が侵入しても、搭載用パッドの側面側にエッチングを施すことがない。
或いは、保護皮膜を他の部品や部材との接続に用いる金属によって形成し、この保護皮膜を選択的にエッチングして、保護皮膜の表面をクリーニングした後、残存した保護皮膜を電子部品の端子との接続に用いる場合でも、銅から成るパッド面をエッチングすることなくクリーニングを施すことができる。この場合、配線基板内及び配線基板間において、保護皮膜に対するエッチングに多少のバラツキが発生しても、残存した保護皮膜は他の部品や部材との接続に用いられるため、搭載用パッドのパッド面に施されるエッチングのバラツキに比較して、その影響は小さく問題ない。この場合も、搭載用パッドと樹脂層との境界に、エッチング液が侵入しても、パッドの側面側にエッチングは施されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る配線基板の製造方法の一例を図1〜図4に示す。図1〜図4に示す配線基板の製造方法では、図1(a)に示すコア基板14を用いる。このコア基板14は、樹脂製であって、スルーホール12,12・・を介して両面側にパターン16,16・・が形成されている。
かかるコア基板14の両面側に、図1(b)に示す様に、絶縁層18,18を形成する。この絶縁層18,18は、感光剤等の電気絶縁性に悪影響を与える添加剤が無添加の樹脂によって形成されている。かかる絶縁層18,18の所定箇所にヴィア用凹部40,40を、レーザによって形成する。このヴィア用凹部40,40の底面には、パターン16の端部が露出している。
【0010】
絶縁層18,18のヴィア用凹部40,40の内壁面を含む全面に、図1(c)に示す様に、銅薄膜層42を形成する。この銅薄膜層42は、無電解銅めっき又はスパッタリングによって形成できる。
かかる銅薄膜層42上には、図1(c)に示す様に、銅薄膜層42がパターンやパッドを形成する部分の底面に露出するように、感光性樹脂44にパターニングを施した後、図1(d)に示す様に、銅薄膜層42を給電層とする電解銅めっきによってパターン20、ヴィア41及びパッド22を形成する。
更に、図1(e)に示す様に、感光性樹脂44を剥離して、パターン20とパッド22とを接続する銅薄膜層42を露出する。
【0011】
次いで、図2(a)に示す様に、パッド22上に立設するパッドを形成すべく、感光性樹脂44にパターニングを施す。パッドを立設する部分には、パッド22が露出する凹部が形成されている。
かかるパッド22及びパターン20は、銅薄膜層42によって接続されているため、図2(b)に示す様に、銅薄膜層42を給電層とする電解銅めっきによってパッド22上に立設する電子部品と接続される搭載用パッド24と外部接続端子が装着される外部接続端子用パッド26とを形成できる。
更に、感光性樹脂44を剥離した後、図2(c)に示す様に、感光性樹脂46によって、搭載用パッド24及び外部接続端子用パッド26の各パッド面のみが露出するようにパターングする。
その後、銅薄膜層42を給電層とする電解めっきによって、図2(d)に示す様に、搭載用パッド24及び外部接続端子用パッド26の各パッド面を被覆する保護皮膜48を形成する。
かかる保護皮膜48は、銅と異なる種類の金属、例えばニッケル、ニッケル化合物又ははんだによって形成し、その厚さを1μm以上、特に好ましくは1〜2μmとすることが好ましい。
尚、保護皮膜48は、無電解めっきによっても形成できるが、電解めっきによって形成することによって、緻密な保護皮膜48を形成できる。
【0012】
この様にして保護皮膜48,48・・を形成した後、感光性樹脂46を剥離し、銅薄膜層42をエッチングによって除去することによって、図3(a)に示す様に、隣接する搭載用パッド24,24の間、隣接する外部接続端子用パッド26の間、及び隣接するパターン20,20の間を絶縁状態とすることができる。
更に、コア基板14の両面側に形成したパターン20,20・・及び保護皮膜48,48・・を、図3(c)に示す様に、絶縁層28、28によって覆う。この絶縁層28,28は、絶縁層18を形成する樹脂と同一組成の樹脂によって形成されている。
次いで、絶縁層28,28の全面にサンドブラストを施して、図4(a)に示す様に、搭載用パッド24と外部接続端子用パッド26との各パッド面を被覆する保護皮膜48を露出する。
【0013】
図4(a)に示す様に、露出した保護皮膜48,48・・は、保護皮膜48を形成する金属を溶解するものの、搭載用パッド24及び外部接続端子用パッド26を形成する銅を溶解することのないエッチング液を用いて、図4(b)に示す様に、エッチングして除去する。このエッチングでは、保護皮膜48,48・・のみをエッチングして、搭載用パッド24及び外部接続端子用パッド26をエッチングしない。このため、全ての搭載用パッド24及び外部接続端子用パッド26の各パッド面を被覆する保護皮膜48を除去できるまで、エッチングを充分に施すことができる。
従って、配線基板内及び配線基板間においても、サンドブラストによる凹凸面や残留する砥粒等を充分に除去して、平滑なパッド面を露出できる。更に、図9に示す様に、樹脂層18と搭載用パッド24又は外部接続端子用パッド26との境界にエッチング液が侵入しても、各パッドはエッチングされることがない。
【0014】
図1〜図4に示す配線基板の製造方法では、保護皮膜48を完全に除去しているが、保護皮膜48として、電子部品の端子との接続に用いる金属、例えばはんだによって保護皮膜48を形成し、図5に示す様に、保護皮膜48の一部が残存するように、保護皮膜48にエッチングを除去して、残留する砥粒等のクリーニングを施してもよい。
この様にしても、搭載用パッド24と外部接続端子用パッド26との各パッド面にエッチングを施すことなくクリーニングできる。
但し、保護皮膜48のエッチング程度は、配線基板内及び配線基板間において、多少のバラツキが発生するが、搭載用パッド24と外部接続端子用パッド26との各パッド面に残存する保護皮膜48は、電子部品の端子との接続に用いられるため、各パッド面がエッチングされる場合に比較して、その影響は小さい。
【0015】
これまで説明してきた図1〜図5に示す配線基板の製造方法では、搭載用パッド24と外部接続端子用パッド26との各パッド面の形状は、円形状であってもよく、長方形状であってもよい。
また、絶縁層28,28を削って搭載用パッド24と外部接続端子用パッド26との各先端面を露出する際に、サンドブラストに代えて、研磨機による研磨を施してもよい。
更に、図1〜図5に示す配線基板の製造方法では、基板の両面側に本発明を適用しているが、基板の電子部品の端子と接続される接続面側のみに本発明を適用してもよい。
以上、説明してきたサンドブラストでは、絶縁層28,28の全面を削って搭載用パッド24と外部接続端子用パッド26との各先端面を露出していたが、絶縁層28,28上にサンドブラスト用のマスク樹脂を形成し、搭載用パッド24と外部接続端子用パッド26とを覆う絶縁層28,28のみを削って、搭載用パッド24と外部接続端子用パッド26との各先端面を露出させてもよい。
尚、図1〜図5では、配線基板の一面側に電子部品を搭載するパッドとしての搭載用パッド24を形成し、配線基板の他面側に外部接続端子を装着するパッドとしての外部接続端子用パッド26を形成しているが、必要に応じて配線基板の他面側に搭載用パッド24を形成してもよく、配線基板の一面側又は両面側に、搭載用パッド24と外部接続端子用パッド26とを混在して形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る配線基板の製造方法の一例の一部を説明する工程図である。
【図2】図1に示す工程の次の工程を説明する工程図である。
【図3】図2に示す工程の次の工程を説明する工程図である。
【図4】図3に示す工程の次の工程を説明する工程図である。
【図5】本発明に係る配線基板の製造方法の他の例を説明する説明図である。
【図6】配線基板の一例を説明する縦断面図である。
【図7】図6に示す配線基板を製造する従来の製造工程の一部を説明する工程図である。
【図8】図6に示す工程の次の工程を説明する工程図である。
【図9】パッドと絶縁層との境界に隙間が形成されている状態を説明する部分断面図である。
【符号の説明】
【0017】
14 コア基板
16,20 パターン
18 樹脂層
24 搭載用パッド
26 外部接続端子用パッド
28 絶縁層
40 ヴィア用凹部
42 銅薄膜層
44,46 感光性樹脂
48 保護皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一面側又は両面側に、他の部品や部材が接続されるパッドのパッド面が露出する配線基板を製造する際に、
前記基板の一面側又は両面側に形成した銅から成るパターンと、前記パターンに電気的に接続された銅から成るパッドとを形成した後、前記パッドの銅から成るパッド面を銅と異なる種類の金属から成る保護皮膜によって被覆し、
次いで、前記パターン及び保護被覆を樹脂層によって覆った後、前記樹脂層を機械的手段によって削って前記保護皮膜を露出し、
その後、前記保護皮膜を、銅を溶解することなく前記保護皮膜を形成する金属を溶解するエッチング液を用いて選択的にエッチングして除去し、前記パッドのパッド面を露出することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
保護皮膜を、ニッケル、ニッケル化合物又ははんだによって形成する請求項1記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
保護皮膜を他の部品や部材との接続に用いる金属によって形成し、前記保護皮膜の一部が残存するように、前記保護皮膜を選択的にエッチングして、前記保護皮膜の表面をクリーニングする請求項1又は請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
保護皮膜を、電解めっきによって形成する請求項1〜3のいずれか一項記載の配線基板の製造方法。
【請求項5】
保護皮膜の厚さを、1μm以上とする請求項1〜4のいずれか一項記載の配線基板の製造方法。
【請求項6】
樹脂層を削る機械的手段として、サンドブラストを採用する請求項1〜5のいずれか一項記載の配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−114289(P2010−114289A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286215(P2008−286215)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】