説明

配線基板

【課題】信号線を伝送する高周波信号を低損失で伝送することが可能な配線基板を提供すること。
【解決手段】帯状の信号線1と、信号線1の上下に絶縁層2を挟んで配置された接地または電源導体層3と、信号線1の両側に信号線1に沿って並んでおり、上下の接地または電源導体層3同士を接続する貫通導体4の列とを具備して成る配線基板であって、上下の接地または電源導体層3の信号線1と対向する領域と貫通導体4の列との間に信号線1に沿って延びるスリット6が形成されている。信号線1を伝送される信号に対応して形成されるリターンパスの電磁的な結合が接地または電源導体層3におけるスリット6に挟まれた領域に大きく集中し、それにより信号線1を伝送する高周波信号を低損失で伝送することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストリップライン構造を有する配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波の信号を伝送する配線基板としてストリップライン構造を有する配線基板が多用されている。このストリップライン構造は、例えば図4(a),(b)に要部断面図およびその透視平面図で示すように、帯状の信号線11の上下に絶縁層12を挟んでベタ状の接地または電源導体層13を備えている。さらに、信号線11の両側に上下の接地または電源導体層13同士を接続する貫通導体14を等間隔で並べて配置することで信号線11に対する電磁的なシールドを強化し外部からのノイズの侵入や外部へのノイズの放射を防止している。なお、各絶縁層12を貫通する貫通導体14同士は、各絶縁層の間に配置された円形のランド15を介して互いに接続されている。
【0003】
しかしながら、このようなストリップライン構造を有する配線基板において信号線11を伝送される信号の周波数は、例えば車載レーダ用途やビームフォーミング用途等に使用される配線基板では60GHz以上と極めて高周波になってきている。このような60GHz以上の超高周波を伝送するための配線基板においては、信号線11を伝送される信号の反射損が低いことが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−24618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、信号線を伝送される高周波信号を低損失で伝送することが可能な配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の配線基板は、帯状の信号線と、この信号線の上下に絶縁層を挟んで配置された接地または電源導体層と、信号線の両側に信号線に沿って並んでおり、上下の接地または電源導体層同士を接続する貫通導体の列とを具備して成る配線基板であって、上下の接地または電源導体層の信号線と対向する領域と貫通導体の列との間に信号線に沿って延びるスリットが形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の配線基板によれば、信号線の上下に配置された接地または電源導体層は、信号線と対向する領域と信号線の両側に形成された接地または電源用の貫通導体の列との間に信号線に沿って延びるスリットを有していることから、信号線を伝送される信号に対応して形成されるリターンパスの電磁的な結合が接地または電源導体層におけるスリットに挟まれた領域に大きく集中し、それにより信号線を伝送する高周波信号を低損失で伝送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1(a),(b)は、本発明の配線基板の実施形態の一例を示す要部断面図およびその透視平面図である。
【図2】図2(a),(b)は、本発明の配線基板の実施形態の他の例を示す要部断面図およびその透視平面図である。
【図3】図3は、図1(a),(b)および図2(a),(b)ならびに図4(a),(b)に示す配線基板に対応する解析モデルを用いたシミュレーション結果を示すグラフである。
【図4】図4(a),(b)は、従来の配線基板の例を示す要部断面図およびその透視平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に本発明の配線基板の実施形態の一例を図1(a),(b)を基に説明する。図1(a),(b)は本例の配線基板の一部を示す要部断面図およびその透視平面図であり、図中、1は信号線、2は絶縁層、3は接地または電源導体層、4は貫通導体、5はランドである。
【0010】
信号線1は、例えば銅箔や銅めっき層から成り、線幅が10〜100μm程度、厚みが5〜20μm程度の帯状の配線である。この信号線1には接地または電源導体層3との電磁結合により例えば60GHzを超える高周波信号が伝送される。
【0011】
絶縁層2は、例えばエポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂から成り、厚みが25〜100μm程度である。この絶縁層2は、信号線1を上下から挟んでおり、信号線1と接地または電源導体層3とを電気的に絶縁している。
【0012】
信号線1の上下には、絶縁層2を挟んで接地または電源導体層3が配置されている。接地または電源導体層3は、信号線1と同様の銅箔や銅めっき層から成り、厚みが5〜20μm程度である。この接地または電源導体層3は、信号線1に対するシールド層として機能するとともに信号線1に伝送される高周波信号に対するリターンパスを提供する。
【0013】
信号線1の両側には、絶縁層2を貫通して上下の接地または電源導体層3を互いに接続する複数の貫通導体4が信号線1に沿って列を成して並んでいる。貫通導体4は、例えば一般的にビアホールとかスルーホールと呼ばれる貫通孔の内部に被着または充填させた銅めっきや硬化した導体ペーストから成り、直径が30〜100μm程度であり、信号線1から50〜200μm程度離間した位置に150〜1000μmのピッチで配列されている。これらの貫通導体4は、信号線1に対する電磁的なシールドを強化し外部からのノイズの侵入や外部へのノイズの放射を防止している。なお、上層の絶縁層2を貫通する貫通導体4と下層の絶縁層2を貫通する貫通導体4との間には、信号線1と同様の銅箔や銅めっき層から成るランド5が設けられている。ランド5は。その厚みが信号線1と実質的に同じ厚みであり、直径が50〜200μm程度の円形である。
【0014】
そして本例の配線基板においては、信号線1の上下に配置された接地または電源導体層3における信号線1と対向する領域と貫通導体4の列との間に信号線1に沿って断続的に延びる複数のスリット6が信号線1の両側に並行して形成されている。これらのスリット6は、例えばその幅が30〜50μm、長さが50〜500μmであり、長さ方向に互いの隣接間隔が50〜500μmで信号線1と対向する領域からの距離が30〜100μm、貫通導体4の列からの距離が50〜150μmで並んでいる。
【0015】
このように、本例の配線基板では、信号線1の上下に配置された接地または電源導体層3における信号線1と対向する領域と貫通導体4の列との間に信号線1に沿って断続的に延びる複数のスリット6が信号線1の両側に並行して形成されていることから、信号線1を伝送される信号に対応して形成されるリターンパスの電磁的な結合がスリット6の列の間に挟まれた領域、即ち接地または電源導体層3における信号線1と対向する領域およびその近傍に大きく集中し、それにより信号線1を伝送される高周波信号を低損失で伝送することができる。
【0016】
なお、本発明は上述の実施形態の一例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば図2(a),(b)に本発明の配線基板の実施形態の他の例を示す。なお、この例において上述した一例と同様の箇所には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0017】
図2(a),(b)に示す例では、上述の一例と同様に信号線1と、この信号線1を上下から挟む絶縁層2と、信号線1の上下に絶縁層2を挟んで配置された接地または電源導体層3と、これら上下の接地または電源導体層3を接続する貫通導体4と、上下の貫通導体4に接続されたランド5を有している。ただし、この例では、接地または電源導体層3に形成されたスリット6が断続的ではなく、連続的に形成されている点で上述の一例とは異なる。
【0018】
さらにこの例では、上下の接地または電源導体層3の上および下に絶縁層2Aを介してベタ状の接地または電源導体層3Aが形成されている。絶縁層2Aおよび接地または電源導体層3Aは、上述の一例における絶縁層2および接地または電源導体層3と同様の材料および厚みから成る。そして、この接地または電源導体層3Aは、貫通導体4Aを介して接地または電源導体3に電気的に接続されている。なお、貫通導体4Aは上述の一例における貫通導体4と同様の材料および直径ならびに間隔で形成されている。
【0019】
またさらに、スリット6で挟まれた領域の上下の接地または電源導体層3は、貫通導体7により上下の接地または電源導体層3Aに接続されている。貫通導体7は、貫通導体4Aと同様の材料および直径ならびに間隔で形成されている。このような構成をとることにより、スリット6を信号線1に沿って連続的に設けることができる。そして、この場合にも信号線1を伝送される信号に対応して形成されるリターンパスの電磁的な結合がスリット6の間に挟まれた領域、即ち接地または電源導体層3における信号線1と対向する領域およびその近傍に大きく集中し、それにより信号線1を伝送する高周波信号を低損失で伝送することができる。
【実施例1】
【0020】
つぎに、図1(a),(b)および図2(a),(b)で示した本発明の配線基板の解析モデルおよび図4(a),(b)で示した従来の配線基板の解析モデルを用いて電磁界シミュレータにより信号の反射損を解析した結果を図3に示す。
【0021】
図3に示すように、本発明の配線基板の解析モデルにおいては従来の配線基板の解析モデルよりも、各周波数において反射損が約−10dB程度良好なことが分かる。特に上述した本発明の他の例に対応する解析モデルでは、60GHzを超える領域でも反射損が略−50dB以下であり、極めて優れた特性を有していることが分かる。
【符号の説明】
【0022】
1 信号線
2 絶縁層
3 接地または電源導体層
4 貫通導体
6 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の信号線と、該信号線の上下に絶縁層を挟んで配置された接地または電源導体層と、前記信号線の両側に該信号線に沿って並んでおり、上下の前記接地または電源導体層同士を接続する貫通導体の列とを具備して成る配線基板であって、上下の前記接地または電源導体層の前記信号線と対向する領域と前記貫通導体の列との間に前記信号線に沿って延びるスリットが形成されていることを特徴とする配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−138471(P2012−138471A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289893(P2010−289893)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(304024898)京セラSLCテクノロジー株式会社 (213)
【Fターム(参考)】