説明

配線材の接続構造

【課題】温度検出器へ容易に接続することが可能な配線材の接続構造を提供すること。
【解決手段】電源装置のバッテリの温度を検出するサーミスタ14への配線材11の接続構造であって、サーミスタ14に設けられた配線接続部41に、フレキシブルプリント配線基板からなる配線材11の接続端13aが配置され、配線接続部41に露出されたリード部51と配線材11の回路パターン21とが半田付けされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車やハイブリッドカー等の車両の電源装置に設けられる温度検出器への配線材の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
環境にやさしい自動車として、電気自動車やハイブリッドカーが増加している。このような車両には、複数のバッテリを重ね合わせたバッテリ集合体からなる電源装置が搭載されている。
【0003】
この種の電源装置は、各バッテリの電圧を検出するために、各バッテリに接続されてバッテリの電圧を外部に出力する信号出力ラインが配線されている(例えば、特許文献1参照)。また、この電源装置には、温度検出器が設けられ、バッテリの温度を検出し、その検出結果に基づいて、バッテリの充放電電流の制限、あるいは遮断を行い、バッテリの電池温度の上昇を防ぐようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−345082号公報
【特許文献2】特開2008−304295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、温度検出器に電線やフレキシブルプリント配線基板(FPC)からなる配線材を接続するには、その配線材にリード線を接続し、さらに、そのリード線を温度検出器に半田付けした後、配線接続部に保護チューブを被せて保護するという煩雑な接続作業を要していた。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、温度検出器に容易に接続することが可能な配線材の接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 電源装置のバッテリの温度を検出する温度検出器への配線材の接続構造であって、前記温度検出器に設けられた配線接続部に、フレキシブルプリント配線基板からなる配線材の接続端が配置され、前記配線接続部に露出されたリード部と前記配線材の回路パターンとが半田付けされることを特徴とする配線材の接続構造。
【0008】
この配線材の接続構造によれば、温度検出器の配線接続部に露出されたリード部とフレキシブルプリント配線基板からなる配線材の回路パターンとが半田付けによって接続された構造を有するので、配線材にリード線を接続し半田付けして接続する場合と比較して、リード線の接続工程をなくすことができ、高い接続信頼性を確保しつつ極めて容易に温度検出器に配線材を接続することができる。
【0009】
(2) 上記(1)の構成の配線材の接続構造において、前記温度検出器は、前記配線接続部に形成された係止突起と、前記配線接続部に対して開閉可能なカバーとを有し、前記配線材の接続端に形成された係止孔が前記係止突起に係止されて位置決めされ、前記配線材は前記カバーが閉ざされて前記接続端が前記配線接続部に保持されていることを特徴とする配線材の接続構造。
【0010】
この配線材の接続構造によれば、配線材の係止孔に配線接続部の係止突起が係止されているので、配線材に引っ張り力等の外力が生じても温度検出器と配線材との接続箇所における大きな力の付与を防止することができる。また、配線材の接続端がカバーによって覆われて保持されているので、配線接続部に保護チューブを被せる場合と比較して、接続箇所への他の部品等の接触を容易に防止することができる。これにより、温度検出器への配線材の接続箇所における接続不良をさらに防止し、接続信頼性を高めることができる。
【0011】
(3) 上記(1)または(2)の構成の配線材の接続構造において、温度検出用配線の回路パターンとバッテリ電圧検出用配線の回路パターンとが前記配線材に設けられていることを特徴とする配線材の接続構造。
【0012】
この配線材の接続構造によれば、温度検出用配線の回路パターンとバッテリ電圧検出用配線の回路パターンとがフレキシブルプリント配線基板からなる配線材に設けられて共用化されているので、温度検出用の配線とバッテリ電圧検出用の配線を別々に配線する場合と比較して、配線の簡略化によって配線作業性の向上、配線スペースの削減を図ることができる。また、制御装置の回路基板等へ接続する接続端も一つとなるので、コネクタ等の接続部品数の削減によるコストダウン及び他の基板等への接続作業性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、温度検出器へ容易に接続することができ、接続作業性の向上を図ることができる。また、配線スペースの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】サーミスタ及びバスバーに接続された配線材の斜視図である。
【図2】サーミスタ及びバスバーに接続された配線材の一部の斜視図である。
【図3】配線材の配線構成を説明する概略配線図である。
【図4】本発明に係る配線材の接続構造によって配線材が接続されたサーミスタの斜視図である。
【図5】サーミスタへの配線材の接続状態を説明するサーミスタの斜視図である。
【図6】配線材が接続されるサーミスタの一方向側の斜視図である。
【図7】配線材が接続されるサーミスタの他方向側の斜視図である。
【図8】参考例に係るサーミスタへの電線からなる配線材の接続構造を示すサーミスタの斜視図である。
【図9】電線からなる配線材の端部の斜視図である。
【図10】参考例に係る配線材の配線構成を説明する概略配線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る好適な実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1はサーミスタ及びバスバーに接続された配線材の斜視図、図2はサーミスタ及びバスバーに接続された配線材の一部の斜視図、図3は配線材の配線構成を説明する概略配線図、図4は本発明に係る配線材の接続構造によって配線材が接続されたサーミスタの斜視図、図5はサーミスタへの配線材の接続状態を説明するサーミスタの斜視図、図6は配線材が接続されるサーミスタの一方向側の斜視図、図7は配線材が接続されるサーミスタの他方向側の斜視図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、配線材11は、フレキシブルプリント配線基板(FPC)から構成されている。この配線材11は、直線部12を有しており、この直線部12の一側部に、サーミスタ接続分岐線部13を有している。このサーミスタ接続分岐線部13は、温度検出器であるサーミスタ14に接続されている。
【0017】
また、この配線材11は、バッテリの電圧検出用の配線も有しており、直線部12におけるサーミスタ接続分岐線部13と反対側に、複数のバッテリ接続分岐線部15を有している。これらのバッテリ接続分岐線部15は、電源装置のバッテリ集合体を構成する複数の図示せぬバッテリの端子を相互に接続する複数のバスバー16に半田付けして接続されている。
【0018】
このように、この配線材11は、図3に示すように、一枚のフレキシブルプリント配線基板に、温度検出用配線の回路パターン21とバッテリ電圧検出用配線の回路パターン22とを形成し、これらの温度検出用配線とバッテリ電圧検出用配線を共用化している。そして、この配線材11では、その端部に、単一のコネクタ23が接続されており、このコネクタ23が、制御装置等の温度検出回路及び電圧検出回路が設けられた回路基板(図示略)に接続される。
【0019】
図4に示すように、サーミスタ14は、内部に温感素子からなる温度検出体が設けられた絶縁樹脂製の矩形ブロック状の本体部31を有している。この本体部31には、その両側部から斜め上方へ延在されたアーム部32が一体に成形され、また、このアーム部32には、その側部に枝部33が成形されている。
【0020】
このサーミスタ14は、アーム部32がフレーム等に固定されて支持され、本体部31の底面が、被検出体であるバッテリの表面にアーム部32の弾性力によって押し付けられる。
【0021】
図5から図7に示すように、サーミスタ14の本体部31には、その上部に、配線材11のサーミスタ接続分岐線部13を接続する配線接続部41が設けられている。この配線接続部41には、サーミスタ接続分岐線部13の延伸方向に、ヒンジ部42によって回動可能に設けられたカバー43が連結されており、このカバー43は、ヒンジ部42により回動して配線接続部41を覆うことができる。また配線接続部41には、サーミスタ接続分岐線部13の接続側における両側部に、ロック爪44が形成されており、カバー43は、配線接続部41を覆うように重ねられて閉じた状態において、その両側部がロック爪44によって係止され、閉じた状態が維持される。また、カバー43には、逃げ溝45が形成されており、この逃げ溝45には、配線接続部41に重ねられた閉状態において、後述する位置決め係止突起52が配置される。
【0022】
配線接続部41には、本体部31内の温度検出体から延びる一対のリード部51が露出されており、また、配線接続部41には、幅方向の中央位置に、位置決め係止突起52が突設されている。
【0023】
図5に示すように、配線接続部41に接続される配線材11のサーミスタ接続分岐線部13には、その接続端13aにおける回路パターン21の端部位置に、一対の接続孔(図示略)が形成されており、これらの接続孔に、配線接続部41に突出したリード部51が挿通される。そして、リード部51と回路パターン21とが半田付けされ、半田53によって接合される。
【0024】
また、サーミスタ接続分岐線部13の接続端13aには、回路パターン21の間に、係止孔54が形成されており、この係止孔54には、配線接続部41に形成された位置決め係止突起52が嵌合される。
【0025】
次に、サーミスタ14を配線材11のサーミスタ分岐線部13に接続する場合について説明する。
まず、本体部31に対してカバー43を開いた状態において、接続端13aの接続孔及び係止孔54へ、配線接続部41のリード部51及び位置決め係止突起52がそれぞれ挿通するように、配線接続部41にサーミスタ接続分岐線部13を配置させる。
この状態において、リード部51と回路パターン21とを半田付けして半田53によって接合する。
【0026】
次に、カバー43をヒンジ部42において回動させ、配線接続部41を覆うように重ねて閉じる。このようにすると、カバー43の両側部がロック爪44によって係止され、このカバー43が閉じた状態に維持される。
【0027】
以上、説明したように、上記実施形態に係る配線材の接続構造によれば、サーミスタ14の配線接続部41に露出されたリード部51とフレキシブルプリント配線基板からなる配線材11の回路パターン21とが半田付けによって接続された構造を有するので、配線材にリード線を接続してリード線をサーミスタへ半田付けして接続する場合と比較して、リード線の接続工程をなくすことができ、高い接続信頼性を確保しつつ極めて容易にサーミスタ14に配線材11を接続することができる。
【0028】
また、厚さの薄いフレキシブルプリント配線基板からなる配線材11を用いているので、電線による配線と比べて、配線スペースの削減を図ることができる。
しかも、配線材11の係止孔54に配線接続部41の位置決め係止突起52が係止されているので、配線材11に引っ張り力等が生じてもサーミスタ14と配線材11との接続箇所における大きな力の付与を防止することができる。また、配線材11の接続端13aがカバー43によって覆われて保持されているので、接続箇所への他の部品等の接触を防止することができる。これにより、サーミスタ14への配線材11の接続箇所における接続不良をさらに防止し、接続信頼性を高めることができる。
【0029】
また、温度検出用配線の回路パターン21とバッテリ電圧検出用配線の回路パターン22とがフレキシブルプリント配線基板からなる配線材11に設けられて共用化されているので、温度検出用の配線とバッテリ電圧検出用の配線を別々に配線する場合と比較して、配線の簡略化によって配線作業性の向上、配線スペースの削減を図ることができる。具体的に述べれば、従前の配線作業では、バッテリ電圧用の配線と電圧検出端子とは加締め圧着する一方、温度検出用の配線とサーミスタとはスプライス接続するという異なった接続方法により接続を行っているため、配線作業に手間を要するのに対し、本発明に係る配線作業では、バスバー、サーミスタ及びフレキシブルプリント配線基板からなる配線材を組み込んだ電源収容ケースに対し、バスバーと配線材、サーミスタと配線材を夫々同一工程の半田接続で行うことができ、配線作業性の向上を図ることができる。また、制御装置の回路基板等へ接続する接続端も一つとなるので、コネクタ等の接続部品数の削減によるコストダウン及び他の基板等への接続作業性の向上を図ることができる。
【0030】
ここで、本発明の更なる優位性を説明するため、図8から図10に参考例を示す。
図8は参考例に係るサーミスタへの電線からなる配線材の接続構造を示すサーミスタの斜視図、図9は電線からなる配線材の端部の斜視図、図10は参考例に係る配線材の配線構成を説明する概略配線図である。
【0031】
図8に示すように、このサーミスタ61は、配線材である電線62が接続される。このサーミスタ61の場合、接続する電線62の端末処理を行う。具体的には、電線62の端部において、電線62の導体にカシメ材63によってリード線64を圧着させるなどによって接続し、この接続箇所を、熱収縮チューブなどの保護材65を装着することにより保護する。このように、電線62に端末処理を行ったらリード線64を、サーミスタ61の端子に半田付けして接続する。
【0032】
このように、電線62からなる配線材をサーミスタ61へ接続するには、煩雑な電線62の端末処理作業を伴う。また、電線62が引っ張られると、接続箇所に大きな力が作用し、接続不良が生じるおそれがある。
また、このサーミスタ61では、図10に示すように、バッテリ電圧検出用の電線67とは別に、温度検出用の電線62を配索しなければならず、配線作業の煩雑化及び配線の複雑化を招き、さらに、大きな配線スペースが必要となってしまう。しかも、温度検出用の電線62及びバッテリ電圧検出用の電線67のそれぞれの端部にコネクタ62a,67aを接続し、これらを制御装置の回路基板にそれぞれ接続しなければならず、部品点数の増加によるコストアップ及び接続作業の煩雑化を招いてしまう。
【0033】
また、サーミスタ61の取り付け位置によって電線62の長さが変わってしまい、サーミスタ61の品番が増えてしまう。
【0034】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0035】
11 配線材
13a 接続端
14 サーミスタ(温度検出器)
21,22 回路パターン
41 配線接続部
43 カバー
51 リード部
52 位置決め係止突起(係止突起)
54 係止孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置のバッテリの温度を検出する温度検出器への配線材の接続構造であって、
前記温度検出器に設けられた配線接続部に、フレキシブルプリント配線基板からなる配線材の接続端が配置され、
前記配線接続部に露出されたリード部と前記配線材の回路パターンとが半田付けされることを特徴とする配線材の接続構造。
【請求項2】
前記温度検出器は、前記配線接続部に形成された係止突起と、前記配線接続部に対して開閉可能なカバーとを有し、
前記配線材の接続端に形成された係止孔が前記係止突起に係止されて位置決めされ、前記配線材は前記カバーによって前記接続端が覆われて前記配線接続部に保持されていることを特徴とする請求項1に記載の配線材の接続構造。
【請求項3】
温度検出用配線の回路パターンとバッテリ電圧検出用配線の回路パターンとが前記配線材に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配線材の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−227000(P2011−227000A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99195(P2010−99195)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】