説明

配線構造及び配線基板

【課題】 発生する電磁場により引き起こされる隣接信号線の電磁誘導を抑える配線構造を提供する。
【解決手段】 配線構造は、グランド線と、誘電体を介してグランド線に対向配置された信号線とを備え、信号線の前記グランド線に対向する面と、グランド線の前記信号線に対向する面とのいずれか一方に伝送方向に伸びる凹状の溝を備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、伝送線路の配線構造および配線基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の伝送線路の配線構造は、例えば特開平10−326783号公報において、開示されている。図12は、従来の配線構造を示す斜視図である。この伝送線路の配線構造は、図12に図示されているように、地導体101と、この地導体101に誘電体層102を介して対向配置された信号線103とを備え、信号線の地導体に向かい合う面104において、伝送方向に対して平行する方向の凹凸が伝送方向に対して直行する方向の凹凸よりも大きい。この凹凸は、導体の表面積を増やし表皮効果による導体損を効果的に減少させるように作用する。
【0003】また、関連する配線構造について、特開平9−36111号公報において開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の伝送線路の配線構造は、信号線の地導体に向かい合う面104に凹凸を設けることによって、表皮効果による導体損を効果的に減少させているものの、信号線の地導体に向かい合う面104の端部に設けられた凸により、信号線103と地導体101との間に発生する電磁場が、外部に広がりやすい。この電磁場が、隣接する信号線において電磁誘導を引き起こす。電磁誘導が生じた隣接する信号線は、波形が乱れるという問題がある。
【0005】本発明の目的は、上記問題を解決することであり、発生する電磁場により引き起こされる隣接信号線の電磁誘導を抑えるようにすることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本願の第1の発明に係る配線構造は、グランド線と、誘電体を介して前記グランド線に対向配置された信号線とを備え、前記信号線の前記グランド線に対向する面と、前記グランド線の前記信号線に対向する面とのいずれか一方に伝送方向に伸びる凹状の溝を備えることを特徴とするものである。
【0007】本願の第2の発明に係る配線構造は、本願の第1の発明に係る配線構造において、前記凹状の溝は、面のほぼ中心に位置することを特徴とするものである。
【0008】本願の第3の発明に係る配線構造は、本願の第1の発明に係る配線構造において、前記凹状の溝は、複数であることを特徴とするものである。
【0009】本願の第4の発明に係る配線基板は、配線基板上に設けられた誘電体の内部にグランド線と前記グランド線に対向配置された信号線とを備える配線基板において、前記信号線の前記グランド線に対向する面と、前記グランド線の前記信号線に対向する面とのいずれか一方に伝送方向に伸びる凹状の溝を備え、前記信号線の前記グランド線に対向する面と、前記グランド線の前記信号線に対向する面は、配線基板の表面に対して垂直であることを特徴とするものである。
【0010】本願の第5の発明に係る配線基板は、本願の第4の発明に係る配線基板において、前記信号線と前記グランド線と前記誘電体とで構成される配線構造を複数備えており、前記信号線の伝送方向が前記配線構造毎に異なっていることを特徴とするものである。
【0011】本願の第6の発明に係る配線基板は、本願の第5の発明に係る配線基板において、前記配線構造間にベタグランドを備えることを特徴とするものである。
【0012】本願の第7の発明に係る配線基板は、本願の第4、5、6の発明のいずれか1つに係る配線基板において、前記凹状の溝は、面のほぼ中心に位置することを特徴とするものである。
【0013】本願の第8の発明に係る配線基板は、本願の第4、5、6の発明の何れか1つに係る配線基板において、前記凹状の溝は、複数であることを特徴とするものである。
【0014】本願の第9の発明に係る配線基板は、本願の第4の発明の配線基板において、前記誘電体層内部に電源線を備え、前記信号線の前記電源線に対向する面と、前記グランド線の前記電源線に対向する面は、前記配線基板の表面に対して垂直であり、配線基板の表面に対して平行方向に、前記信号線に対して前記グランド線と前記電源線を交互に配置していることを特徴とするものである。
【0015】本願の第10の発明に係る配線基板は、本願の第4の発明に係る配線基板において、前記誘電体層内部に電源線を備え、前記信号線の前記電源線に対向する面と、前記グランド線の前記電源線に対向する面は、前記配線基板の表面に対して垂直であり、配線基板の表面に対して平行方向に、各前記信号線間に前記グランド線と前記電源線を配置していることを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】実施の形態1.以下、図面を参照して実施の形態1における伝送線路の配線構造について説明する。図1は、誘電体内の伝送線路を透視的に表した斜視図である。信号線1とグランド線2は、いずれも対向する面に伝送方向に伸びる溝を有する。図1には示されていないが、信号線1とグランド線2との間には誘電体があり、その回りに誘電体があってもよい。図1では、信号線1とグランド線2の幅が等しいスタックトペア線路の形を示しているが、対向する面に伝送方向に伸びる溝を有するのであれば、マイクロストリップ線路やストリップ線路でもよい。
【0017】図2は、伝送線路の断面図である。図2は、信号線1とグランド線2において、それぞれの対向する面における溝の構造を示す。伝送線路は、信号線1と、グランド線2と、信号線1とグランド線2との間にある誘電体3とで構成されている。図1と同様に、信号線1とグランド線2は、それぞれの対向する面において伝送方向に伸びる溝を有する。
【0018】溝の形は、三角形(図2(a))や、矩形(図2(b))や、半円形(図2(c))のようにさまざまなものが可能である。溝の形は、磁場が隣接する信号線に影響を与えないような形であればどんな形でもよい。さらに、図2(d)のように複数の溝が信号線1とグランド線2の対向面に設けられてもよい。溝は、対向面のほぼ中心にあることが好ましい。溝の形は、溝の加工方法によって異なる。この溝の加工方法として、従来のダマシンプロセス、デュアルダマシン銅めっきプロセス等があり、さらに溝を付けた後の平坦化処理にバフ化学研磨法等の研磨がある。なお、溝は、信号線1またはグランド線2のいずれか一方のみに設けられてもよい。
【0019】図3は、伝送線路の断面図である。図3は、信号線1とグランド線2において、それぞれの対向する面における溝および切り欠きの構造を示す。溝が深くなり、溝が反対面まで貫通し結果的に切り欠きができる場合と、溝加工面の反対側から切り欠きを作成する場合の2通りが考えられる。図3(a)は、溝加工面の反対面、つまり信号線1のグランド線2と対向していない面から切り欠きを作成した例である。図3(b)、(c)は、溝加工面、つまり信号線1のグランド線2と対向している面から切り欠きを作成した例である。図3(a)から(c)のいずれも、信号線1に切り欠きがあるように図示されているが、信号線1に切り欠きが設けられず、グランド線2に切り欠きが設けられてもよく、さらに、信号線1とグランド線2の両方に切り欠きが設けられてもよい。
【0020】次に、伝送線路において、信号線とグランド線の対向する面に溝または切り欠きを設ける理由について説明する。図4は、表皮効果を説明する説明図である。図4(a)は、2本の電流線とそれらの電流線によって生じる磁力線とを示す。同じ方向に流れる電流線は同じ方向に磁力線を発生させる。この電流線が隣接する場合、互いに影響を与え合う。定常状態において、電流線5には、鉛直上向きに電流が流れており、電流が流れる方向に対して垂直な面において、その電流により反時計回りの磁力線6が生じる。図4(a)に示されているように、2本の電力線5間において、それぞれの電力線5によって生じる磁力線は反対方向であるために、打ち消し合い、磁力線6は、2本の電流線を取り巻く横長楕円に近い形となる。
【0021】また、電流変化のとき、磁力線が発生したり、消滅したりする。この磁力線が発生したり消滅したりする変化によって、つまり磁場の変化によって、磁場の変化を妨げる方向に誘導電流が生じる。この誘導電流の発生により、電流は磁場による影響を受けにくいところで流れようとする。一般的に、電流の変化が高速であればあるほど、つまり振動数(周波数)が大きければ大きいほど、大きな誘導電流が発生する。
【0022】図4(b)、(c)は、1本の信号線の内部を9分割したときの電流線の様子を示す説明図である。電流が変化するとき、この均一な電流分布は不自然である。なぜならば、上記に記載されているように、誘導電流の発生により、他の電流による磁場の影響を受けやすい中心部には電流が流れにくくなるはずだからである。したがって、図4(c)に示されているように、隣接する電流による磁場の影響を受けにくい角および周辺を流れる電流が多くなる。このように、導体周辺の電流密度が高くなる現象を表皮効果とよび、特に高周波においてこの現象は顕著に現れる。この表皮効果を式で表すと、式(1)のようになる。
【0023】
【数1】


ここで、δsは表皮厚み、ωは交流の角周波数、μrは導体の透磁率、σは導体の導電率である。式(1)に示されているように、表皮厚みδsは、ωμrσの平方根に逆比例する。
【0024】さらに、線路が対向する伝送線路における表皮効果について、図5、6、7を用いて説明する。図5は、ペア伝送線路の電流分布を説明する説明図である。図5(a)は、スタックトペア線路の電流分布を説明する説明図である。図5(b)は、マイクロストリップ線路の電流分布を説明する説明図である。それぞれ信号線11とグランド線12が対向している。ペア伝送線路においても、表皮効果による不均一な電流分布が発生し、斜線部分10は、電流密度が他の部分より高いところを示している。なお、図5では、信号線11とグランド線12との間に何もないように図示されているが、信号線11とグランド線12との間には誘電体がある。誘電体として、例えば、ガラスエポキシ、テフロン(登録商標)、セラミックがある。
【0025】図6は、スタックトペア線路の電気力線と磁力線を示す説明図である。図6(a)は、導体内を電流が均一に流れる場合の電気力線と磁力線とを示す説明図である。図6(b)は、表皮効果による導体内の電流が不均一に流れる場合の電気力線と磁力線とを示す説明図である。
【0026】ガウスの法則によれば、電気力線と磁力線は常に直角に交わる。電気力線は導体内の+電荷から出発し、−電荷で終端する。電気力線が導体の表面と交差するときは、その導体は均一電位となっていれば、その表面に対して法線となるが、電荷分布の高いほうに偏る。電流線の電流の流れる方向に対して直角であり、かつその電流線を取り巻くように時計回りに磁力線ができる。電気力線と磁力線は空間分布として、エネルギミニマムの法則に従いながら隣接する電気力線と磁力線との間隔を保つ。電荷密度や電流に応じて、電気力線と磁力線の密度は高くなったり低くなったりする。
【0027】図6(a)においては、導体内を電流が均一に流れているので、導体内の電荷分布も均一であり、電気力線の間隔は、例えば信号線11とグランド線12との間の領域では、等間隔である。しかし、図6(b)においては、表皮効果により斜線部分10に電流が集中しているために、電荷も斜線部分10に集中しており、電気力線も電流が集中している斜線部分10付近で図6(a)と比べて密度が高くなっている。電気力線の密度が高くなっている領域、つまり電場が強い領域では、磁力線の密度も高く磁場も強くなっている。
【0028】また、本来電磁場は、無限遠にまで広がっている。しかし、電磁誘導の影響が無視できないほど強く作用する有効電磁場は、有限である。図6(a)において、有効電磁場の広がりは、W1であり、図6(b)において、有効電磁場の広がりは、W2である。これらの図よりW2は、W1より短く、表皮効果により有効電磁場の広がりが相対的に小さくなることが分かる。
【0029】電磁誘導について考えると、隣接する伝送線路である信号線14とグランド線15で構成されるスタックトペア線路において、それらの線を横切る分の電磁場が、隣接する信号線14とグランド線15に電磁誘導を引き起こす。つまり、電磁誘導によりエネルギが、信号線11とグランド線12とで構成されるスタックトペア線路から、隣接する信号線14とグランド線15とで構成されるスタックトペア線路に移ったわけである。このことをクロストークと呼ぶ。クロストークされた分だけ信号線11、14の波形は乱れ、減衰または増幅する。
【0030】表皮効果が起こった場合、有効な電磁場の広がりが相対的に小さくなるために、隣接する伝送線路の電磁誘導は小さくなるように感じられるが、高周波の場合必ずしも小さくならない。電磁誘導によるクロストークの基本的近似式は、次の式(2)、式(3)のようになる。
【0031】
【数2】


ここで、vは電磁誘導による起電力、Lは導体の自己リアクタンス、iは電流、ωは角速度である。
【0032】
【数3】


ここで、Cは導体間の静電容量である。
【0033】周波数をfとすると、ωとfは、ω=2πfの関係にあるので、周波数fに比例して角速度ωは増加する。したがって、周波数fが増加すると、式(2)、式(3)より、電磁誘導は増加することがわかる。高周波において、有効な電磁場の広がりは小さくなるものの、電磁誘導は増加する。つまり、高周波では、増加する電磁誘導をできるだけ避けようとする導体の自己防衛的行動により表皮効果が生じるといえる。
【0034】高周波において、クロストークが生じることは好ましくない。クロストークを抑えるためには、有効な電磁場の広がりを小さくしなければならない。
【0035】以下、導体の対向面に溝を設けることで、有効な電磁場の広がりを小さくできることについて、図面を用いて説明する。図7は、導体の対向面に溝を入れたときの有効電磁場の広がりを示す説明図である。斜線部分10は、電流が集中している、つまり電荷が集中している部分を示している。図6(b)において、電荷は信号線11とグランド線12の対向面および角に集中しているのに対して、図7において、電荷は信号線21とグランド線22の対向面のコーナー部分26、27に集中している。
【0036】このコーナー部分26、27は、図4(c)の角および周辺と同様に、隣接する電流による磁場の影響を受けにくい部分であり、電流が集中しやすい部分である。このコーナー部分26、27のために、スタックトペア伝送線路のカップリングが増大したと解釈できる。この結果対向面に溝を設けられたスタックトペア線路の特性インピーダンスは単純なスタックトペア線路より小さくなる。さらに、信号線21とグランド線22の対向面に溝が設けられていることによって、電磁場は外に広がるのではなく、中心に絞り込まれている。したがって、図7と図6(a)、(b)とを比較すると、有効な電磁場の広がりW3は、W1やW2より小さい。有効な電磁場の広がりW3が相対的に小さいことから、隣接する伝送線路である信号線24とグランド線25において、クロストークは少なくなる。
【0037】以上のことから、隣接する伝送線路におけるクロストークを少なくするために、有効な電磁場の広がりをより小さくすればよいので、対向面に溝を設ければよく、さらに、その溝の位置は、隣接する伝送線路からより遠い位置、つまり対向面のほぼ中心にあればより好ましい。
【0038】この実施の形態1における配線構造は、信号線とグランド線の対向面に溝が設けられることによって、クロストークが小さくなるために、高周波信号の伝送に適した伝送線路の配線構造となる。
【0039】実施の形態2.以下、図面を用いて実施の形態2について説明する。図8は、実施の形態2における配線基板の構造を示す断面図である。図8に示されているように、この配線基板は、基板35と、信号線31と、グランド線32と、信号線の表面取り出し部33と、誘電体34とで構成されている。
【0040】この配線基板において、基板35上に誘電体34が設けられ、誘電体34内部で信号線31とグランド線32が対向しており、ペア伝送線路を形成している。信号線31とグランド線32はいずれも、対向面に伝送方向に沿って溝が設けられている。この対向面は、基板35の表面に対して垂直である。なお、信号線31とグランド線32のいずれか一方のみに溝が設けられてもよい。信号線の表面取り出し部33は、信号線31の信号を表面に取り出すために設けられるものである。この信号線の表面取り出し部33が、表面に出ていることにより、フリップチップなどの接続が可能となる。誘電体34は、基板35上において、信号線31とグランド線32と信号線の表面取り出し部33とを包むように設けられている。
【0041】この配線基板は、信号線31が隣接する信号線31の電磁場の影響を受けにくい構造となっている。それは、以下の理由による。電場の強度および磁場の強度の空間的分布を示す尺度は、電気力線と磁力線の密度である。スタックトペア線路やマイクロストリップ線路において、電気力線の密度および磁力線の密度の高い空間は、ペア線路の横の開口面から放射状に伸びた空間である。
【0042】例えば図7において、信号線21の上部およびグランド線22の下部は、対向面から発生する電磁場に対して陰となる部分で、電磁場密度は、相対的に低い。図7における信号線21の上部およびグランド線22の下部は、図8における信号線31とグランド線32との間に相当する。図8における信号線31とグランド線32との間は、図7における信号線21とグランド線22との間と同様に、電磁場密度は高いものの、隣接する信号線31とグランド線32との対向面から発生する電磁場に対して陰となっている。
【0043】図8において、隣接する信号線31とグランド線32のペアが発生する電磁場をさらに弱めるために、グランド線32の幅を広くとるように図示されているが、グランド線32の幅は信号線31の幅と同じであってもよい。さらに、配線基板の表面の電極面積を広くするために、グランド線32は表面に出ないようにしてもよい。
【0044】図8におけるトレンチ構造は、従来の加工技術で形成可能である。例えば、ダマシンプロセスによってめっきで堆積する方法でもよく、積層切断法でもよく、さらにビルドアッププロセスでも形成可能である。
【0045】ここで、図8の配線構造とは異なる別の配線構造について説明する。図9(a)、(b)は、別の配線構造を説明する説明図である。図8の配線構造は、グランド線32と別のグランド線32との間に誘電体34と信号線31とが挟まれたストリップ線路であり、基板35の表面に対して平行方向に、信号線31とグランド線32が交互に配置されている。しかし、図9(a)のように、信号線41、グランド線42、信号線41、電源線43というように、信号線41に対してグランド線42と電源線43が交互に配置されてもよい。さらに、図9(b)のように、信号線41、電源線43、グランド線42、信号線41というように、信号線41と別の信号線41との間に、電源線43とグランド線42が配置されていてもよい。なお、グランド線42と電源線43の順番は逆でもよい。
【0046】図9(b)の配線構造の場合、電源線43とグランド線42による静電容量を大きくすることでバイパスコンデンサとしても作用するようにすることも可能である。この配線構造は、バイパスコンデンサとしても作用することで、高速に信号を伝送する際に非常に有効である。なお、図8、図9の配線構造を多層にしてもよい。
【0047】さらに別の配線構造として図8、図9の配線構造を多層にした構造について説明する。図10は、多層の配線構造を示す斜視図である。図11は、別の多層の配線構造を示す斜視図である。図10に示されているように、この配線構造は、Y方向信号線51と、Y方向グランド線52と、グランド線接続パッド55と、信号線接続コラム56と、X方向信号線61と、X方向グランド線62とで構成されている。
【0048】この配線構造において、Y方向信号線51とY方向グランド線52が、さらにX方向信号線61とX方向グランド線62が、それぞれ対向しており、ペア伝送線路を形成している。Y方向信号線51とY方向グランド線52はいずれも対向面に伝送方向に沿って溝が設けられている。同様に、X方向信号線61とX方向グランド線62もいずれも対向面に伝送方向に沿って溝が設けられている。ここで、信号線またはグランド線のいずれか一方のみに溝が設けられてもよい。Y方向信号線51とX方向信号線61は互いに直交しており、信号線接続コラム56を介して接続している。Y方向グランド線52とX方向グランド線62は互いに直交しており、グランド接続パッド55を介して接続している。X方向信号線61とY方向信号線51の伝送方向は直交している。
【0049】図10において図示されていないが、Y方向信号線51とY方向グランド線52とは、さらにX方向信号線61とX方向グランド線62とは、誘電体で覆われている。また、図示されていないがこの配線構造は基板上に設けられている。さらに、X方向およびY方向について、1組のペア線路しか図示されていないが、複数の信号線とグランド線とが同一方向に設けられてもよい。
【0050】なお、Y方向信号線51とX方向信号線61は、直交していなくてもよく、別別の方向であればよい。
【0051】この配線構造により、2方向の伝送線路を備える配線構造を有する配線基板が得られる。
【0052】別の配線構造として図11に示されているような配線構造がある。図11の配線構造は、図10の配線構造において、X方向のペア信号線路とY方向のペア信号線路との間にベタグランド65を備えたものである。この配線構造は、Y方向信号線51と、Y方向グランド線52と、信号線接続コラム56と、グランド線接続コラム57と、X方向信号線61と、X方向グランド線62と、穴58を備えるベタグランド65とで構成されている。
【0053】この配線構造において、Y方向信号線51とY方向グランド線52が、さらにX方向信号線61とX方向グランド線62が、それぞれ対向しており、ペア伝送線路を形成している。Y方向信号線51とY方向グランド線52はいずれも対向面に伝送方向に沿って溝が設けられている。同様に、X方向信号線61とX方向グランド線62もいずれも対向面に伝送方向に沿って溝が設けられている。溝は対向面のほぼ中心にあることが好ましい。ここで、信号線またはグランド線のいずれか一方のみに溝が設けられてもよい。
【0054】Y方向信号線51とX方向信号線61は互いに直交しており、ベタグランドの穴58に設けられた信号線接続コラム56を介して接続している。Y方向グランド線52とX方向グランド線62は互いに直交しており、グランド接続パッド55を介してベタグランド65に接続している。X方向信号線61とY方向信号線51の伝送方向は直交している。
【0055】図11において、図示されていないが、Y方向信号線51とY方向グランド線52とは、さらにX方向信号線61とX方向グランド線62とは、誘電体で覆われている。また、図示されていないが、この配線構造は、基板上に設けられている。さらに、X方向およびY方向について、1組のペア線路しか図示されていないが、複数の信号線とグランド線とが同一方向に設けられてもよい。
【0056】なお、Y方向信号線51とX方向信号線61は、直交していなくてもよく、別別の方向であればよい。
【0057】この配線構造は、ベタグランド65がY方向信号線51とX方向信号線61との間に設けられていることによって、Y方向信号線51とX方向信号線61におけるクロストークを抑えることができる。
【0058】なお、実施の形態2において、矩形の溝について説明したが、図2のようなさまざまな形の溝であってもよく、複数であってもよい。さらに溝ではなく、図3のように切り欠きであってもよい。さらに、実施の形態2において、いずれの電源線も電源に接続されており、いずれの信号線も信号源に接続されており、いずれのグランド線も接地されている。
【0059】
【発明の効果】本願の第1の発明に係る配線構造は、信号線のグランド線に対向する面と、グランド線の信号線に対向する面とのいずれか一方に伝送方向に伸びる凹状の溝を備えることによって、発生する電磁場の広がりを小さくすることができ、さらに発生する電磁場により引き起こされる隣接信号線の電磁誘導を抑えることができる。
【0060】本願の第2の発明に係る配線構造は、凹状の溝が面のほぼ中心に位置することによって、発生する電磁場の広がりを小さくすることができ、さらに発生する電磁場により引き起こされる隣接信号線の電磁誘導を抑えることができる。
【0061】本願の第3の発明に係る配線構造は、凹状の溝が複数であることによって、発生する電磁場の広がりを小さくすることができ、さらに発生する電磁場により引き起こされる隣接信号線の電磁誘導を抑えることができる。
【0062】本願の第4の発明に係る配線基板は、信号線のグランド線に対向する面と、グランド線の信号線に対向する面とのいずれか一方に伝送方向に伸びる凹状の溝を備えることによって、発生する電磁場の広がりを小さくすることができ、さらに発生する電磁場により引き起こされる隣接信号線の電磁誘導を抑えることができる。
【0063】本願の第5の発明に係る配線基板は、発生する電磁場により引き起こされる隣接信号線の電磁誘導を抑えることができるとともに、複数方向の伝送線路を備える配線構造を有する配線基板が得られる。
【0064】本願の第6の発明に係る配線基板は、ベタグランドを備えることによって、発生する電磁場により引き起こされる隣接信号線の電磁誘導を抑えることができる。
【0065】本願の第7の発明に係る配線基板は、凹状の溝が面のほぼ中心に位置することによって、発生する電磁場の広がりを小さくすることができ、さらに発生する電磁場により引き起こされる隣接信号線の電磁誘導を抑えることができる。
【0066】本願の第8の発明に係る配線基板は、凹状の溝が複数であることによって、発生する電磁場の広がりを小さくすることができ、さらに発生する電磁場により引き起こされる隣接信号線の電磁誘導を抑えることができる。
【0067】本願の第9の発明に係る配線基板は、電源線を含む場合でも、発生する電磁場の広がりを小さくすることができ、さらに発生する電磁場により引き起こされる隣接信号線の電磁誘導を抑えることができる。
【0068】本願の第10の発明に係る配線基板は、電源線を含む場合でも、発生する電磁場の広がりを小さくすることができ、さらに発生する電磁場により引き起こされる隣接信号線の電磁誘導を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 誘電体内の伝送線路を透視的に表した斜視図である。
【図2】 伝送線路の断面図である。
【図3】 伝送線路の断面図である。
【図4】 表皮効果を説明する説明図である
【図5】 ペア伝送線路の電流分布を説明する説明図である。(a)は、スタックトペア線路の電流分布を説明する説明図である。(b)は、マイクロストリップ線路の電流分布を説明する説明図である。
【図6】 スタックトペア線路の電気力線と磁力線を示す説明図である。(a)は、導体内を電流が均一に流れる場合の電気力線と磁力線とを示す説明図である。(b)は、表皮効果による導体内の電流が不均一に流れる場合の電気力線と磁力線とを示す説明図である。
【図7】 導体の対向面に溝を入れたときの有効電磁場の広がりを示す説明図である。
【図8】 実施の形態2における配線基板の構造を示す断面図である。
【図9】 別の配線構造を説明する説明図である。
【図10】 多層の配線構造を示す斜視図である。
【図11】 別の多層の配線構造を示す斜視図である。
【図12】 従来の配線構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
1、11、21、31、41 信号線、 2、12、22、32、42 グランド線、 3 誘電体、 5 電流線、 6 磁力線、 10 斜線部分、 14、24 隣接する信号線、 15、25 隣接する信号線、 26、27 コーナー部分、 33 信号線の表面取りだし部、 34 誘電体、 35 基板、 43 電源線、 44 グランド線、 51 Y方向信号線、 52 Y方向グランド線、 55 グランド線接続パッド、 56 信号線接続コラム、57 グランド線接続コラム、 58 穴、 61 X方向信号線、 62 X方向グランド線、 65 ベタグランド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 グランド線と、誘電体を介して前記グランド線に対向配置された信号線とを備え、前記信号線の前記グランド線に対向する面と、前記グランド線の前記信号線に対向する面とのいずれか一方に伝送方向に伸びる凹状の溝を備えることを特徴とする配線構造。
【請求項2】 前記凹状の溝は、面のほぼ中心に位置することを特徴とする請求項1記載の配線構造。
【請求項3】 前記凹状の溝は、複数であることを特徴とする請求項1記載の配線構造。
【請求項4】 配線基板上に設けられた誘電体の内部にグランド線と前記グランド線に対向配置された信号線とを備える配線基板において、前記信号線の前記グランド線に対向する面と、前記グランド線の前記信号線に対向する面とのいずれか一方に伝送方向に伸びる凹状の溝を備え、前記信号線の前記グランド線に対向する面と、前記グランド線の前記信号線に対向する面は、配線基板の表面に対して垂直であることを特徴とする配線基板。
【請求項5】 前記信号線と前記グランド線と前記誘電体とで構成される配線構造を複数備えており、前記信号線の伝送方向が前記配線構造毎に異なっていることを特徴とする請求項4記載の配線基板。
【請求項6】 前記配線構造間にベタグランドを備えることを特徴とする請求項5記載の配線基板。
【請求項7】 前記凹状の溝は、面のほぼ中心に位置することを特徴とする請求項4、5、6のいずれか1つに記載の配線基板。
【請求項8】 前記凹状の溝は、複数であることを特徴とする請求項4、5、6のいずれか1つに記載の配線基板。
【請求項9】 前記誘電体層内部に電源線を備え、前記信号線の前記電源線に対向する面と、前記グランド線の前記電源線に対向する面は、前記配線基板の表面に対して垂直であり、配線基板の表面に対して平行方向に、前記信号線に対して前記グランド線と前記電源線を交互に配置していることを特徴とする請求項4記載の配線基板。
【請求項10】 前記誘電体層内部に電源線を備え、前記信号線の前記電源線に対向する面と、前記グランド線の前記電源線に対向する面は、前記配線基板の表面に対して垂直であり、配線基板の表面に対して平行方向に、各前記信号線間に前記グランド線と前記電源線を配置していることを特徴とする請求項4記載の配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2002−158507(P2002−158507A)
【公開日】平成14年5月31日(2002.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−350904(P2000−350904)
【出願日】平成12年11月17日(2000.11.17)
【出願人】(598042633)
【出願人】(598168807)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】