説明

酵素を回収する吸着剤、酵素回収ユニット、リグノセルロースのバイオリファイナリー、酵素を再利用する方法、および再生可能材料

本発明は、酵素を回収する吸着剤、酵素回収ユニット、リグノセルロースのバイオリファイナリー、酵素を再利用する方法、および再生可能材料に関する。本発明は、再生可能材料の生産に使用するのに適した溶菌酵素を回収する吸着剤を含む。本吸着剤は、基体と、基体に分散させた酵素結合材料とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素を回収する吸着剤、酵素回収ユニット、リグノセルロースのバイオリファイナリー、酵素を再利用する方法、および再生可能材料に関する。
【背景技術】
【0002】
石油の供給が厳しくなりエネルギーの値段が高騰していること、それに加えて再生不可能な資源に関する環境問題のために、再生可能材料および/または生物燃料に対してかなり関心が高まっており、調査が促進されてきた。また、炭素の放出と温室効果ガスを減らす努力も、再生可能材料および/または生物燃料への投資を活発にしてきた。
【0003】
再生可能材料生産にかかるコストの分野の1つは、加水分解酵素である。Stephanopoulosの“Challenges in Engineering Microbes for Biofuels Production”では、「セルロース分解酵素にかかるコストが実質的に減少しているにもかかわらず、バイオマスからの糖放出はなお高コストで時間がかかるものであり、これがおそらく全プロセス中で最も深刻である」と述べられている。
【0004】
Himmel et al, Biomass recalcitrance: Engineering plants and enzymes for biofuels productionでは、「現在のところ、生物燃料のコスト競争力のある生産は、バイオマス供給材料とバイオマスを糖類に変換するプロセスのコスト、すなわちバイオリファイナリーにおける熱化学的な前処理と酵素の加水分解ユニットの運転にかかるコストが高いことによって阻まれている」と述べられている。
【0005】
Sticklen, Plant genetic engineering to improve biomass characteristics for biofuelsでは、「アルコール燃料の生産に使用するための発酵性糖を農作物のバイオマスから誘導できるというアイデアは米国連邦政府には評判が良かったが、バイオマスリファイナリーの経済面での主要な欠点には、リグノセルロース系物質の前処理、および、バイオマスのセルロースを発酵性糖に変換するのに必要な微生物セルラーゼの生産コストが含まれる」と述べられている。
【0006】
国立再生可能エネルギー研究所(National Renewable Energy Laboratory)によって公開された、Aden et al., Lignocellulosic Biomass to Ethanol Process Design and Economics Utilizing Co-current Dilute Acid Prehydrolysis and Enzymatic Hydrolysis for Corn Stoverでは、供給材料にトウモロコシの茎や葉を用いたエタノールプラントのプロセス設計が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Stephanopoulos, Challenges in Engineering Microbes for Biofuels Production
【非特許文献2】Himmel et al, Biomass recalcitrance: Engineering plants and enzymes for biofuels production
【非特許文献3】Sticklen, Plant genetic engineering to improve biomass characteristics for biofuels
【非特許文献4】Aden et al., Lignocellulosic Biomass to Ethanol Process Design and Economics Utilizing Co-current Dilute Acid Prehydrolysis and Enzymatic Hydrolysis for Corn Stover
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のようなプロセスの改善があったとしても、使用酵素のコストを低くし、より費用効率が高い方式で再生可能材料を生産する必要と要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、酵素を回収する吸着剤、酵素回収ユニット、リグノセルロースのバイオリファイナリー、酵素を再利用する方法、および再生可能材料に関する。本発明は、使用酵素のコストを低くし、より費用効率が高い方式で再生可能材料を生産することが可能である。加水分解酵素は触媒として作用し、リグノセルロース系材料を解重合する反応中で消費されない。このような酵素を再利用する方法は、運転費用と再生可能材料の生産コストを低くすることができる。
【0010】
第一の実施態様によれば、本発明は、再生可能材料の生産に使用するのに適した溶菌酵素(lytic enzyme)を回収する吸着剤を含む。本吸着剤は、基体と、基体に分散している酵素結合材料とを含む。
【0011】
第二の実施態様によれば、本発明は、再生可能材料の生産に使用するのに適した溶菌酵素回収ユニットを含む。本ユニットは、溶菌酵素含有フィードストリームを受け取るためのフィードライン、および、溶菌酵素を吸着するための酵素吸着剤を有する少なくとも1つの酵素回収装置を含み、ここで少なくとも1つの酵素回収装置は、上記フィードラインに流体接続する。本ユニットはまた、少なくとも1つの酵素回収装置に放出材料を供給するための再生ラインも含み、ここでこの再生ラインは、少なくとも1つの酵素回収装置に流体接続する。本ユニットはまた、少なくとも1つの酵素回収装置から溶菌酵素を取り除くための再利用ラインも含み、ここでこの再利用ラインは、酵素回収装置に流体接続する。
【0012】
第三の実施態様によれば、本発明は、再生可能材料の生産に適したリグノセルロースのバイオリファイナリーを含む。本バイオリファイナリーは、溶菌酵素の使用によりセルロースおよびヘミセルロースを再生可能ベース供給材料へと解重合させるための加水分解ユニット、および、再生可能ベース供給材料の少なくとも一部を受け取り、再生可能材料に変換するための変換ユニットを含む。本バイオリファイナリーはまた、変換ユニットの流出物を受け取り、再生可能材料を含むストリームと副産物ストリームを形成するための分離ユニット、および、再生可能材料を含むストリームまたは副産物ストリームのいずれかを受け取る少なくとも1つの酵素回収ユニットも含み、ここでこの少なくとも1つの酵素回収ユニットは、再利用するために溶菌酵素を吸着する。本バイオリファイナリーはまた、少なくとも1つの酵素回収ユニットから溶菌酵素を放出させるための放出材料を供給する再生ライン、および、溶菌酵素を再利用するための少なくとも1つの酵素回収ユニットから加水分解ユニットへの再利用ラインも含む。本バイオリファイナリーはまた、少なくとも1つの酵素回収ユニットまたは変換ユニットから再生可能材料を排出するための生成物ライン、および、少なくとも1つの酵素回収ユニットまたは分離ユニットから副産物を排出するための副産物ラインも含む。
【0013】
第四の実施態様によれば、本発明は、再生可能材料の生産に適した溶菌酵素を再利用する方法を含む。本方法は、投入ストリームの残部から溶菌酵素を分離するために溶菌酵素を酵素吸着剤に吸着させる工程、および、酵素吸着剤から溶菌酵素を放出させる工程を含む。
【0014】
第五の実施態様によれば、本発明は、本明細書において説明されるような、溶菌酵素を回収する吸着剤を用いて作製された再生可能材料、溶菌酵素回収ユニット、リグノセルロースのバイオリファイナリー、および/または、酵素を再利用する方法を含む。
【0015】
添付の図面(これは、本明細書に包含され、その一部を構成する)は本発明の実施態様を説明するものであり、詳細な説明と共に本発明の特徴、利点および原理を説明するのに役立つ。図面は以下の通りである:
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、一実施態様に従って、溶液中の酵素およびリグニンを示す。
【図2】図2は、一実施態様に従って、溶液中のリグニンに結合した酵素を示す。
【図3】図3は、一実施態様に従って、溶液中の酵素および吸着剤を示す。
【図4】図4は、一実施態様に従って、吸着剤に結合した酵素を示す。
【図5】図5は、一実施態様に従って、吸着剤から放出された酵素を示す。
【図6】図6は、一実施態様に従って、酵素回収ユニットを示す。
【図7】図7は、一実施態様に従って、酵素回収ユニットを説明する。
【図8】図8は、一実施態様に従って、バイオリファイナリーを示す。
【図9】図9は、一実施態様に従って、単一の酵素回収ユニットを有するバイオリファイナリーを示す。
【図10】図10は、一実施態様に従って、エタノールプラントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、酵素を回収する吸着剤、酵素回収ユニット、リグノセルロースのバイオリファイナリー、酵素を再利用する方法、および/または、再生可能材料を含む。
一実施態様によれば、本発明は、リグノセルロースの加水分解溶液から酵素を回収する用途を含んでもよい。このような用途は、バルクの加水分解溶液から酵素を除去するために、固体支持体に固定されたリグニンにセルラーゼ酵素を吸収させることを含んでもよい。またこのような用途は、例えばリグニン−酵素複合体を分解させて、セルラーゼ酵素が放出するように適切に緩衝化および/またはpH調整された溶液に懸濁することも含んでいてもよい。
【0018】
望ましくは(ただし必ずではないが)、リグニンと酵素との相互作用は、適切に折り畳まれたタンパク質に対する選択性をもたらすタンパク質コンフォメーションに依存し得る。セルラーゼ酵素の回収および再利用は、リグノセルロースの再生可能材料への変換の経済的な実効可能性を改善することができる。
【0019】
一実施態様によれば、本発明は、溶菌酵素の回収および再利用方法を含んでもよい。固体支持体に固定されたリグニンを用いて、例えば、バルクの加水分解溶液から溶菌酵素を吸収することができる。固定されたリグニンと吸収された溶菌酵素を有する固体支持体は、適切に緩衝化および/またはpH調整された水溶液に懸濁させることができる。この溶液は、リグニンと酵素との相互作用を阻害して、バルクの加水分解溶液に戻して再利用するための酵素を放出させることができる。溶菌酵素を再利用することによって、リグノセルロースを加水分解し、燃料および/または化学物質などの再生可能材料へ変換するのに必要な溶菌酵素の総量を少なくすることができる。
【0020】
図1は、一実施態様に従って、溶液中の酵素10およびリグニン12を説明する。酵素10は、折り畳まれれていてよく、セルロースおよび/またはヘミセルロースの加水分解に有用であることができる。リグニン12は、あらゆる適切な源から得ることができ、例えば広葉樹、針葉樹および/または同種のものから得ることができる。適切なタイプのリグニン12としては、クラフトリグニン、クラソン(klason)リグニン、酸可溶性リグニン、酸不溶性リグニン、広葉樹リグニン、針葉樹リグニン、農業材料由来のリグニン、遺伝子組み換えリグニン、誘導体化リグニン、改変されたリグニン、および/または同種のものが挙げられる。リグニンはあらゆる適切な分子量を有していてもよく、例えば約1700グラム/モルである。望ましくは、リグニン12は、酵素10を受け入れるためのあらゆる適切な数の部位または位置を含んでいてもよく、例えば少なくとも約1つの部位、少なくとも約2つの部位、少なくとも約3つの部位、少なくとも約5つの部位、少なくとも約10個の部位等を含む。
【0021】
図2は、一実施態様に従って、溶液中のリグニン12に結合した酵素10を説明する。酵素10はリグニン12の一部と相互作用して、例えば強いおよび/または弱い化学結合によって互いに結合した状態になることができる。望ましくは、リグニン12および酵素10は、特定の結合方向および/または結合位置を有する。
【0022】
図3は、一実施態様に従って、溶液中の酵素10および吸着剤14を説明する。吸着剤14は、酵素結合材料18を基体16上に配置した、および/または、基体16に含浸させた基体16を含む。望ましくは、吸着剤14の粒子はそれぞれ、酵素10と結合するための位置を複数含む。
【0023】
図4は、一実施態様に従って、吸着剤14に結合した酵素10を説明する。望ましくは(ただし必ずではないが)、酵素結合材料18は少なくとも基体16に対して露出した部分を有する。
【0024】
図5は、一実施態様に従って、吸着剤14から放出された酵素10を説明する。このような放出は、あらゆる適切な変化によって起こる可能性があり、例えばpHの変化、浸透圧モル濃度の変化、極性の変化、温度の変化などによって起こる。
【0025】
図6は、一実施態様に従って、酵素回収ユニット22を説明する。酵素回収ユニット22は、酵素含有材料を酵素回収ユニット22に供給するためのフィードライン20を含む。酵素回収ユニット22はまた、酵素回収ユニット22に放出材料を供給するための再生ライン24も含む。酵素回収ユニット22はまた、酵素回収ユニット22で捕捉されそこから放出された酵素10(示さず)を送達するための再利用ライン26も含む。酵素回収ユニット22はまた、酵素回収ユニット22からのフィード中に含まれるその他の材料を送達するための出口ライン28も含む。上記その他の材料は、再生可能材料、糖類、炭水化物、生物燃料、副産物および/または同種のものを含みうる。
【0026】
図7は、一実施態様に従って、酵素回収ユニット22を説明する。酵素回収ユニット22は、2つの充填層30、ならびにそれに連結された配管および/またはバルブを含み、ここでこのような配管および/またはバルブは、例えば連続フローおよび/または並列フローで稼働させるためのものである。充填層30は、適切であればどのようなフロー配列で使用してもよく、例えば上向流による吸着および上向流による再生、上向流による吸着および順流による再生、順流による吸着および順流による再生、これらの組み合わせ等のような配列で使用してもよい。
【0027】
図8は、一実施態様に従って、バイオリファイナリー32を説明する。バイオリファイナリー32は、例えばリグノセルロース系材料を供給するための、加水分解ユニット38に連結された供給材料ライン34を含む。バイオリファイナリー32はまた、加水分解ユニット38に連結された新鮮な酵素用ライン36も含み、このようなラインは、例えば補給用酵素を供給するためであってもよい。加水分解ユニット38は、リグノセルロース系材料を分解または解重合するものであり、適切であればどのような前処理工程、プロセスおよび/または装置を含んでもよい。前処理は、化学的、機械的および/または熱的処理を含んでいてもよく、このような処理としては、例えばヘミセルロースをペントースまたは五炭糖に変換するための、酸および/または塩基の使用が挙げられる。加水分解ユニット38は、セルロースをヘキソースまたは六炭糖に分解または解重合する。任意におよび/またはそれに加えて、加水分解ユニット38はまた、例えばヘミセルラーゼを用いて、ヘミセルロースをペントースまたは五炭糖に分解または解重合してもよい。
【0028】
バイオリファイナリー32はまた、加水分解ユニット38および変換ユニット42に連結された再生可能ベース供給材料ライン40も含み、これは例えば、ヘキソース含有材料を変換ユニット42に流動させるためのものである。変換ユニット42は、ヘキソースを再生可能材料46と副産物材料48とに変換し、これらは、変換ユニット42および分離ユニット50に連結された変換ユニットの流出物ライン44中を流動する。再生可能材料46は、バイオ燃料および/または同種のものであってもよい。副産物材料48は、リグニンを含んでもよい。変換ユニット42は、1またはそれより多くの発酵槽および/または1またはそれより多くの細胞培養装置を含んでもよい。
【0029】
分離ユニット50は、変換ユニットの流出物を、再生可能材料を含むライン52と副産物ライン54とに分離または分流させるために、機械的、熱的および/または化学的な原理を使用することができる。分離ユニット50で遠心分離機を用いてもよい。再生可能材料を含むライン52は、分離ユニット50と酵素回収ユニット56(例えば生成物酵素回収ユニット66)とを連結させる。副産物ライン54は、分離ユニット50と酵素回収ユニット56(例えば副産物酵素回収ユニット68)とを連結させる。
【0030】
再生ライン58は酵素回収ユニット56のそれぞれと連結しており、このようなユニットは例えば、酵素回収ユニット56に放出材料を供給するためのものである。再利用ライン60は酵素回収ユニット56のそれぞれと連結しており、このようなユニットは例えば、回収または再利用された酵素を加水分解ユニット38に供給するためのものである。
【0031】
生成物ライン62は生成物酵素回収ユニット66と連結しており、このようなユニットは例えば、再生可能材料を流動させて貯蔵し、続いて販売などのために加工するためのものである。副産物ライン64は副産物酵素回収ユニット68と連結しており、このようなユニットは例えば、副産物材料を流動または移動させて貯蔵や廃棄処分などにするためのものである。1つの酵素回収ユニット56を有するバイオリファイナリー32の立体配置は、本発明の範囲内である(生成物ラインのみ、または副産物ラインのみ)。
【0032】
図9は、一実施態様に従って、単一の酵素回収ユニット56を有するバイオリファイナリー32を説明する。バイオリファイナリー32は加水分解ユニット38に連結された供給材料ライン34を含み、これは例えば、リグノセルロース系材料を供給するためのものである。バイオリファイナリー32はまた、加水分解ユニット38に連結された新鮮な酵素用ライン36も含み、このようなラインは、例えば補給用酵素を供給するためであってもよい。
【0033】
バイオリファイナリー32はまた加水分解ユニット38および変換ユニット42に連結された再生可能ベース供給材料ライン40も含み、これは例えば、ヘキソース含有材料を変換ユニット42に流動させるためのものである。変換ユニット42は、ヘキソースを再生可能材料46と副産物材料48とに変換し、これらはいずれも、酵素回収ユニット56に連結された変換ユニットの流出物ライン44中を流動する。
【0034】
再生ライン58は酵素回収ユニット56と連結しており、これは例えば、酵素回収ユニット56に放出材料を供給するためのものである。再利用ライン60は酵素回収ユニット56と連結しており、これは例えば、回収または再利用された酵素を加水分解ユニット38に供給するためのものである。
【0035】
生成物ライン62は酵素回収ユニット56と連結しており、これは例えば、再生可能材料と副産物とを分離ユニット50に流動させるためのものである。分離ユニット50は、酵素回収ユニットの流れを再生可能材料を含むライン52と副産物ライン54とに分離または分流させる。バイオリファイナリー32のその他の立体配置は、本発明の範囲内である。
【0036】
図10は、一実施態様に従って、エタノールプラント80を説明する。エタノールプラント80は、供給材料を受け取り前処理ユニット86に送るためのリグノセルロースライン82を使用し、これは例えば、酸、塩基、水蒸気などでヘミセルロースを解重合するためのものである。前処理ユニット86は、触媒ライン84からの触媒を受け取り、さらに、ペントースライン88は、例えばその後の処理または変換のために、前処理ユニット86からの糖溶液を流動させる。前処理ユニット86は、例えばセルロースおよびリグニンを流動させるためのセルロースライン90で加水分解ユニット94に連結されている。
【0037】
加水分解ユニット94は、酵素ライン92から新鮮な酵素を受け取り、回収酵素ライン116および124からの酵素を再利用する。ヘキソース、リグニンおよび酵素は、加水分解ユニット94からヘキソースライン96中を流動し、発酵ユニット100に連結される。
【0038】
発酵ユニット100は、生物ライン98から生物を受け取る。生物は、細菌、菌類、藻類などを含んでいてもよい。発酵ユニット100は、ヘキソースをエタノールに変換する。エタノール、リグニンおよび酵素は、発酵ユニット100と分離ユニット104とを連結する発酵流出ライン102中を流動する。
【0039】
分離ユニット104は、エタノールライン106およびリグニンライン108を用いて固体リグニンをエタノールと水とに分離する。分離ユニット104からの酵素は、エタノールとリグニンの両方と共に流動する。エタノールライン106は、分離ユニット104と、例えば一次酵素回収ユニット中の酵素回収塔112とを連結する。リグニンライン108は、分離ユニット104を二次酵素回収ユニット118と連結する。回収緩衝液ライン110および120は、放出材料を、酵素回収塔112と二次酵素回収ユニット118に供給する。
【0040】
生成物のエタノールライン114は、例えば生成物の回収、蒸留、貯蔵等のために、酵素回収塔112からエタノールおよび水を流動させる。リグニンライン122は、例えばコンベヤー、オーガー、重力などによって、固体リグニンを流動または移動させる。図10のカラム2本の立体配置は連続運転を提供することができるとともに、酵素が充填された使用済みベッドの再生も提供する。
【0041】
再生可能材料は、広義には、自然の生態サイクルまたは資源で代用することができる源またはプロセスから少なくとも部分的に誘導された物質または物品を意味する。再生可能材料としては、広義には、化学物質、化学中間体、溶媒、単量体、オリゴマー、ポリマー、生物燃料、バイオ燃料中間体、バイオガソリン、バイオガソリンのブレンドストック、バイオディーゼル、環境に優しいディーゼル燃料(green diesel)、再生可能ディーゼル燃料、バイオディーゼルのブレンドストック、バイオディスティレートなどが挙げられる。望ましくは(ただし必ずではないが)、再生可能材料は、例えば植物、藻類、細菌、菌類などの生物から誘導されてもよい。
【0042】
バイオ燃料は、広義には、例えば持続的な生産が可能であり、および/または、大気への正味の炭素放出を減少させた、または、それらの放出がない、再生可能資源から誘導された燃料または燃焼源として使用するのに適した成分またはストリームを意味する。再生可能資源は、採掘したり穴を開けたりして例えば地中から得られた材料を考慮に入れない場合がある。望ましくは、再生可能資源としては、単細胞生物、多細胞生物、植物、菌類、細菌、藻類、栽培された農作物、栽培ではない農作物、木材などが挙げられる。
【0043】
バイオガソリンは、広義には、直接使用するか、および/または、ガソリンまたはオクタンのプールまたは再生可能資源から誘導された供給源にブレンドするのに適した成分またはストリームを意味し、例えばメタン、水素、合成ガス、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジメチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、エチルtert−ブチルエーテル、ヘキサノール、脂肪族化合物(直鎖、分岐鎖および/または環状)、ヘプタン、イソオクタン、シクロペンタン、芳香族化合物、エチルベンゼンなどが挙げられる。ブタノールは、広義には、1−ブタノール、2−ブタノール、イソ−ブタノール、その他の異性体のような生成物およびその誘導体を意味する。バイオガソリンは、例えば自動車用のガソリン内燃機関のような火花点火機関で使用することができる。一実施態様によれば、バイオガソリンおよび/またはバイオガソリンブレンドは、工業的に認められている燃料基準を満たしているか、または、それに準拠するものである。
【0044】
バイオディーゼルは、広義には、直接使用するか、および/または、ディーゼルまたはセタンのプールまたは再生可能資源から誘導された供給源にブレンドするのに適した成分またはストリームを意味し、例えば脂肪酸エステル、トリグリセリド、脂質、脂肪族アルコール、アルカン、ナフサ、所定の蒸留温度範囲で得られる材料(distillate range material)、パラフィン系材料、芳香族材料、脂肪族化合物(直鎖、分岐鎖および/または環状)などである。バイオディーゼルは、圧縮点火機関、例えば自動車用ディーゼル内燃機関で使用することができる。あるいは、バイオディーゼルは、ガスタービン、ヒーター、ボイラーなどで使用することも可能である。一実施態様によれば、バイオディーゼルおよび/またはバイオディーゼルのブレンドは、工業的に認められている燃料基準を満たしているか、または、それに準拠するものである。
【0045】
バイオディスティレートは、広義には、直接使用するか、および/または、再生可能資源から誘導された航空燃料(ジェット用)、潤滑剤のベースストック、ケロシン燃料などにブレンドするのに適しており、約100℃〜約700℃、約150℃〜約350℃などの範囲の沸点を有する成分またはストリームを意味する。
【0046】
一実施態様によれば、本発明は、再生可能材料の生産に使用するのに適した溶菌酵素を回収する吸着剤を含んでもよい。本吸着剤は、基体と、基体に分散させた酵素結合材料とを含んでもよい。
【0047】
溶菌(lytic)は、広義には、破壊、分解、融解、溶解などのプロセスまたは工程を意味するか、または、それらに関する。
酵素は、広義には、化学反応、生化学反応など触媒する、および/または、それらを促進するタンパク質またはその他の適切な分子を意味する。酵素は、生物および/または合成プロセスによって生産することができる。適切な酵素は、あらゆる望ましい特性を有するものであり得る。適切な酵素としては、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、リグニナーゼ、エンド−セルラーゼ、エキソセルラーゼ、グルコシダーゼ、セロビオースデヒドロゲナーゼ、マンガンペルオキシダーゼ、リグニンペルオキシダーゼ、および/または、例えばセルロースをより低分子量の糖単位および/または単量体に加水分解するのに役立つ同種のものが挙げられる。
【0048】
回収は、広義には、再使用、再利用、分離等のために元に戻すこと、および/または、その準備をする動作、プロセスおよび/または段階を意味する。
吸着剤は、広義には、原子または分子を例えば吸収、吸着、化学吸着、物理吸着、イオン交換等によって取り込み保持することができる物質を意味する。
【0049】
吸収は、広義には、原子、分子および/またはイオンが、例えば気体、液体、固体材料などのバルク相に入り込む物理的プロセスおよび/または化学的プロセスを意味する。
吸着は、広義には、気体溶質および/または液体溶質が固体吸着剤および/または液体吸着剤の表面に蓄積する際に起こるプロセスを意味し、それによって例えば吸着物および/または同種のものとして分子または原子の薄層が形成される。
【0050】
化学吸着は、広義には、吸着物と表面等との強い相互作用を特徴とする吸着の一つの分類を意味する。
物理吸着は、広義には、吸着物と表面等との弱いファンデルワールス力を特徴とする吸着の一分類を意味する。
【0051】
イオン交換は、広義には、2つの電解質間でのイオンの変換または交換、電解質溶液と複合体または分子との間のイオンの変換または交換、および/または同種のものを意味する。
【0052】
基体は、広義には、基礎となる支持体および/または土台を意味し、例えば主要部分の質が永久的に変らない物質および/または同種のものである。望ましくは、本吸着剤のための基体は、用いられる可能性があるプロセスまたは環境に対して少なくとも一般的に不活性である。また、基体が、基体の体積に対して少なくとも一般的に高い表面積を有することも望ましい場合がある。基体としては、あらゆる適切な材料および/または組成物が挙げられる。
【0053】
基体の粒子または断片は、適切であればどのようなサイズおよび/または形状を有していてもよい。多孔質の基体は、比較的大きいサイズおよび/またはブロック形状を有していてもよい。あるいは、基体の粒子または断片は、少なくとも一般的に球状の形状を有していてもよい。基体粒子のサイズまたは有効径は、拡散プロセス等と相関しうる。基体の粒子は、約1マイクロメーター〜約10センチメートル、約1ミリメートル〜約2センチメートルの有効径および/または同種の有効径を有してもよい。
【0054】
酵素結合材料は、広義には、酵素またはその他の適切な分子と相互作用して、酵素を捕獲する、掴む、保持することができるあらゆる適切な物質および/または同種のものを意味する。このような結合相互作用は、あらゆる適切な力であってよく、例えばイオン結合、共有結合、水素結合、ファンデルワールス力、強い分子力、弱い分子力、物理的な力、機械的な力および/または同種のものが挙げられる。
【0055】
分散された、とは、広義には、広範囲にわたり分配または散布させること、および/または、ばらまかれることを意味する。望ましくは、分散された状態とは、媒体または材料(例えば基体)の表面上に少なくとも比較的均一に分配させること、および/または、その中に全体的に含浸させることを含む。一実施態様によれば、酵素結合材料は、他のまたは追加の支持体媒体を含まないような基体それ自身であってもよい。
【0056】
一実施態様によれば、基体は、アルギン酸塩、寒天、ポリアクリルアミド、コラーゲン、活性炭、多孔質セラミック、けいそう土、ナイロン、セルロース、ポリスルホン、ポリアクリレート、アルミナ、シリカ、ベントナイト、イオン交換樹脂、および/または同種のものを含んでいてもよい。
【0057】
一実施態様によれば、酵素結合材料は、リグニンおよび/または同種のものを含んでいてもよい。望ましくは(ただし必ずではないが)、結合材料として用いられるリグニンは、供給材料の原料中のリグニンと異なっていてもよく、例えば、溶菌酵素は、供給材料の原料中のリグニンに対して低い結合効率を有するが、結合材料のリグニンに対してはそれより高い結合効率を有する。酵素の供給材料の原料への結合効率に対する酵素の結合材料への結合効率の比は、少なくとも約2:1、少なくとも約5:1、少なくとも約10:1、少なくとも約50:1、および/または同種の比率であってもよい。
【0058】
あるいは、酵素結合材料は、リグニンの高分子の基礎構造を含んでいてもよく、例えば、パラクマリルアルコール、コニフェリルアルコール、シナピルアルコール、および/または同種のものを含んでいてもよい。酵素結合材料のためにリグニンとリグニンの高分子の基礎構造とを組み合わせることは、本発明の範囲内である。
【0059】
一実施態様によれば、酵素結合材料は、約300原子質量単位〜約1,000,000原子質量単位、約1,000原子質量単位〜約100,000原子質量単位、約5,000原子質量単位〜約50,000原子質量単位の平均分子量、および/またはそれと類似の平均分子量を有していてもよい。
【0060】
酵素結合材料は、モル濃度に基づき、および/またはその他の適切な単位に基づき、適切であればどのような酵素結合効率を有していてもよい。酵素結合効率は、広義には、例えば酵素が酵素結合材料と接触したときに、酵素結合材料によって捕獲および/または保持された酵素の量を意味する。一実施態様によれば、酵素結合材料は、モル濃度に基づき少なくとも約60パーセント、モル濃度に基づき少なくとも約70パーセント、モル濃度に基づき少なくとも約80パーセント、モル濃度に基づき少なくとも約90パーセント、モル濃度に基づき少なくとも約95パーセントの結合効率、および/または同種の結合効率を有する。
【0061】
望ましくは(ただし必ずではないが)、酵素結合材料は、溶菌酵素を可逆的に吸着しており、それにより、例えば条件および/または操作を変化させた際に酵素が放出されるようになる。一実施態様によれば、溶菌酵素を可逆的に吸着する動作または工程により、結合した酵素の少なくとも約70パーセント、結合した酵素の少なくとも約80パーセント、結合した酵素の少なくとも約90パーセント、結合した酵素の少なくとも約95パーセントが、再利用または処理等のために生じるか、得られる。溶菌酵素の多少の損失または分解が起こる可能性がある。
【0062】
適切であればどのような工程または動作で酵素結合材料から溶菌酵素を放出または遊離させてもよく、このような工程または動作としては、例えばpHの変化、温度変化、緩衝液の変化、溶媒の極性の変化、および/またはそれと同種の変化を適用させることが挙げられる。pHの変化としては、例えばpH調節剤(酸または塩基)を用いて中性の状態から酸性条件および/または塩基性条件にすることが挙げられる。温度の変化としては、例えば温度を約10℃上げることが挙げられる。緩衝液の変化としては、例えば溶液に異なる塩を添加することが挙げられる。溶媒の極性の変化としては、例えば水溶液からアルコール溶液に変化させることが挙げられる。酵素を放出させる工程において、酵素の分解および/または損失を最小化するように努めることが望ましい。
【0063】
一実施態様によれば、本発明は、上述の吸着剤を用いて作製された、または、それらから作製された再生可能材料を含んでもよい。
一実施態様によれば、本発明は、再生可能材料の生産に使用するのに適した溶菌酵素回収ユニットを含んでもよい。本ユニットは、溶菌酵素含有フィードストリームを受け取るためのフィードライン、および、溶菌酵素を吸着するための酵素吸着剤を有する少なくとも1つの酵素回収装置を含んでもよい。少なくとも1つの酵素回収装置は、フィードラインと流体接続していてもよい。本ユニットはまた、少なくとも1つの酵素回収装置に放出材料を供給するための再生ラインも含んでいてもよい。再生ラインは、少なくとも1つの酵素回収装置と流体接続していてもよい。本ユニットはまた、少なくとも1つの酵素回収装置から溶菌酵素を除去するための再利用ラインも含んでいてもよい。再利用ラインは、酵素回収装置と流体接続していてもよい。
【0064】
ユニットは、広義には、プロセスまたは作業で用いられる器具または装置の1個またはそれより多くの部品を意味する。酵素回収ユニットは、例えば、ストリームから酵素を取り除き、および/または、回収し、続いてそれらを再使用のために提供または供給することができる。
【0065】
ラインは、広義には、物質または材料をやり取りしたり、および/または、運搬するための装置を意味し、例えばパイプ、チャンネル、ダクト、通路および/または同種のものである。フィードラインは、例えば、本ユニットに注入口を提供することができ、それにより溶菌酵素が再利用できるようになる。再生ラインは、例えば、放出材料を提供して、酵素を再利用するために解離させることができる。再利用ラインは、例えば、ユニットからの溶菌酵素の出口を提供することができる。
【0066】
ストリームは、広義には、材料または物質のフローまたは流れを意味する。
酵素回収装置は、広義には、ストリームから酵素を捕捉するためのあらゆる適切なプロセス、器具または装置を意味する。酵素回収装置は、吸着材を含んでいてもよく、このような吸着材としては、例えば充填層、充填カラム、流動床、および/または同種のものが挙げられる。酵素回収装置は、複数の容器を含んでいてもよく、例えば、1個またはそれより多くの(オンラインの)吸着モードの容器、1個またはそれより多くの(準備が完了した)スタンバイモードの容器、1個またはそれより多くの(オフラインの)再生モードの容器および/または同種の容器を含んでいてもよい。
【0067】
一実施態様によれば、少なくとも1つの酵素回収装置は2またはそれより多くの充填層を含み、それぞれ吸着モードと再生モードとで機能することができる。
少なくとも1つの酵素回収装置で用いられる吸着剤は、適切であればどのような材料を含んでいてもよい。一実施態様によれば、酵素吸着剤は、リグニン、または、例えばパラクマリルアルコール、コニフェリルアルコール、シナピルアルコールなどのリグニン高分子構造の酵素結合材料を含んでいてもよい。酵素吸着剤はまた、酵素結合材料を支持するための基体も含んでいてもよく、このような基体は、アルギン酸塩、寒天、ポリアクリルアミド、コラーゲン、活性炭、多孔質セラミック、けいそう土、ナイロン、セルロース、ポリスルホン、ポリアクリレート、アルミナ、シリカ、ベントナイト、イオン交換樹脂の基体、および/または同種のものである。酵素結合材料は、例えば約300原子質量単位〜約1,000,000原子質量単位の平均分子量を有していてもよい。
【0068】
一実施態様によれば、少なくとも1つの酵素回収装置で用いられる酵素吸着剤は、モル濃度に基づき少なくとも約60パーセントの可逆結合効率を有していてもよい。
再生ラインからの放出材料は、捕捉された酵素を解離させるのに適したあらゆる動作または工程を提供してもよく、例えばpHの変化、温度の変化、緩衝液の変化、溶媒の極性の変化、および/または同種の変化を提供してもよい。
【0069】
一実施態様によれば、フィードストリームはまた、例えば発酵ユニットからの、再生可能ベース材料または副産物材料、および/または同種のものも含んでいてもよい。フィードストリーム中の再生可能ベース材料は、あらゆる適切な物質を含む可能性があり、このような物質としては、例えばエタノール、ブタノール、遊離脂肪酸、トリアシルグリセリド、アルキルエステル、イソプレノイド、乳酸、酢酸、酪酸、プロピオン酸、上述の生物燃料のいずれか、および/または同種のものが挙げられる。
【0070】
一実施態様によれば、フィードストリームはまた、リグノセルロースの加水分解物、例えば炭水化物、単糖類、二糖類、三糖類、多糖類および/または同種のものを含んでいてもよい。
【0071】
一実施態様によれば、本発明は、上述の溶菌酵素回収ユニットで製造された、または、それによって製造された再生可能材料を含んでもよい。
一実施態様によれば、本発明は、再生可能材料の生産に適したリグノセルロースのバイオリファイナリーを含んでもよい。本バイオリファイナリーは、溶菌酵素の使用によりセルロースおよび/またはヘミセルロースを再生可能ベース供給材料へと解重合させるための加水分解ユニット、および、再生可能ベース供給材料の少なくとも一部を受け取り、再生可能材料に変換するための変換ユニットを含んでいてもよい。本バイオリファイナリーはまた、変換ユニットの流出物を受け取り、再生可能材料を含むストリームと副産物ストリームを形成する分離ユニット、および、変換ユニットの流出物、再生可能材料を含むストリームまたは副産物ストリームを受け取る少なくとも1つの酵素回収ユニットも含んでいてもよい。少なくとも1つの酵素回収ユニットは、再利用のために溶菌酵素を吸収することができる。本バイオリファイナリーはまた、少なくとも1つの酵素回収ユニットから溶菌酵素を放出させるための放出材料を供給する再生ライン、および、溶菌酵素を再利用するための少なくとも1つの酵素回収ユニットから加水分解ユニットへの再利用ラインも含んでいてもよい。本バイオリファイナリーはまた、少なくとも1つの酵素回収ユニットまたは変換ユニットから再生可能材料を排出するための生成物ライン、および、少なくとも1つの酵素回収ユニットまたは分離ユニットから副産物を排出するための副産物ラインも含んでいてもよい。
【0072】
バイオリファイナリーは、広義には、再生可能材料を生産するのに用いられるプラントまたはユニットの集合体を意味する。
リグノセルロース系とは、広義には、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、および/または同種のものを含むものを意味し、例えば植物原料である。リグノセルロース系材料としては、あらゆる適切な材料が挙げられ、例えば蔗糖、サトウキビの絞りかす、サトウキビの絞りかす燃料、米、稲わら、穀類、穀類の茎や葉、コムギ、麦わら、トウモロコシ、トウモロコシの茎や葉、モロコシ、モロコシの茎や葉、サトウモロコシ(sweet sorghum)、サトウモロコシの茎や葉、綿繊維をとったあとの残り、砂糖大根、砂糖大根パルプ、ダイズ、ナタネ、ジャトロファ、アメリカクサキビ、ススキ、その他のイネ科植物、木材、針葉樹、広葉樹、廃材、おがくず、紙、廃棄の紙、農業廃棄物、都市ごみ、その他のあらゆる適切なバイオマス材料、および/または同種のものが挙げられる。
【0073】
本バイオリファイナリーのユニットおよび/またはラインは、上述したいずれかの、および/または全ての特徴および/または特色を含んでいてもよい。
加水分解ユニットは、溶菌酵素を使用することによって、リグニン、セルロースおよび/またはヘミセルロースを再生可能ベース供給材料に解重合するためのあらゆる適切な工程、器具および/またはプロセスを含んでいてもよい。望ましくは、再生可能ベース供給材料は、六炭糖および五炭糖(それぞれヘキソースおよびペントース)、グルコース、キシロース、および/または、再生可能材料に変換することができるその他の材料を含んでいてもよい。加水分解ユニットはまた、化学的、熱的および/または機械的なシステムのためのあらゆる適切な前処理プロセスまたは器具を含んでいてもよく、例えば、水蒸気との接触(温度)、酸との接触、塩基との接触、粉砕、細断等のためのあらゆる適切な前処理プロセスまたは器具を含んでいてもよい。加水分解ユニットは、容器、反応装置、タンク、たらいのような容器、かきまぜ機、バブラー、および/または同種のものを含んでいてもよい。加水分解ユニットは、再利用酵素ラインから回収された酵素または再利用の酵素を受け取ることができる。また、新鮮な酵素または新しい酵素が加水分解ユニットに供給されてもよい。
【0074】
解重合は、広義には、何かより大きいものを処理して、それより小さい単位または断片に分解することを意味する。解重合には、化学結合を破壊または切断することが含まれていてもよく、それによって例えば高分子の主鎖または鎖から単量体(1単位)を放出することができる。また解重合は、二量体(2つの単位)、三量体(3つの単位)、四量体(4つの単位)、その他のあらゆる適切なオリゴマー(複数の単位)および/または同種のものを生成してもよく、例えば中間体および/または最終的な生成物を生成してもよい。
【0075】
リグニンは、広義には、植物中の二次細胞壁の一部を構成してもよいバイオポリマーを意味し、例えばヘミセルロースに共有結合していてもよい複雑な高度に架橋された芳香族ポリマーである。
【0076】
ヘミセルロースは、広義には、大部分がペントースで構成される分岐状の糖高分子を意味し、これらは例えば全般的にランダムな無定形構造を有していてもよく、典型的には何十万ものペントース単位を含むものもある。
【0077】
セルロースは、広義には、式(C10(式中zは、あらゆる適切な整数である)で示される有機化合物を意味する。例えば、セルロースは、直鎖の数百から1万を超えるヘキソース単位と高度な結晶構造を有する多糖類を含んでいてもよい。
【0078】
変換ユニットは、再生可能ベース供給材料の少なくとも一部を受け取り、再生可能材料に変換するためのあらゆる適切な工程、器具および/またはプロセスを含んでいてもよい。一実施態様によれば、変換ユニットは、発酵プロセスおよび/または細胞培養プロセスを利用する。
【0079】
発酵は、広義には、最終的な電子供与体が酸素ではない炭水化物の代謝を意味し、例えば嫌気的な炭水化物の代謝である。発酵は、高エネルギー化合物の酵素によって制御された嫌気性分解を含んでいてもよく、例えば炭水化物を二酸化炭素とアルコールおよび/または有機酸とに分解することを含んでいてもよい。あるいは、発酵は、広義には、生物学的に制御された有機化合物の変換を意味する。発酵プロセスではあらゆる適切な生物を用いることができ、例えば細菌、菌類、藻類、および/または同種のものを用いることができる。適切な発酵プロセスは、天然に存在する生物を含んでいてもよいし、および/または、遺伝子組換え生物を含んでいてもよい。
【0080】
細胞培養は、広義には、最終的な電子供与体が酸素である炭水化物の代謝を意味し、例えば好気的な炭水化物の代謝である。細胞培養プロセスではあらゆる適切な生物を用いることができ、例えば細菌、菌類、藻類、および/または同種のものを用いることができる。適切な細胞培養プロセスは、天然に存在する生物を含んでいてもよいし、および/または、遺伝子組換え生物を含んでいてもよい。
【0081】
分離ユニットは、変換ユニットの流出物を受け取り、再生可能材料含有ストリームと副産物ストリームを形成するための、あらゆる適切な工程、器具および/またはプロセスを含んでいてもよい。分離ユニットは、1またはそれより多くの蒸留塔、充填層、機械的な装置、遠心分離機、および/または同種のものを含んでいてもよい。
【0082】
一実施態様によれば、少なくとも1つの酵素回収ユニットが、生成物酵素回収ユニットと、副産物酵素回収ユニットとを含んでいてもよい。生成物酵素回収ユニットおよび副産物酵素回収ユニットは、器具および/またはプロセスの部品を共有していてもよいし、または、それらを組み合わせてもよい。生成物酵素回収ユニットは、例えばバイオ燃料のような再生可能生成物のストリームから酵素を回収することができる。副産物酵素回収ユニットは、例えばリグニンのような副産物ストリームから酵素を回収することができる。
【0083】
本バイオリファイナリーは、あらゆる適切な単位に基づきあらゆる適切な量の再利用された酵素を使用することが可能であり、例えば、加水分解ユニットに供給された溶菌酵素の少なくとも約35質量パーセントが再利用された酵素を含み、加水分解ユニットに供給された溶菌酵素の少なくとも約45質量パーセントが再利用された酵素を含み、加水分解ユニットに供給された溶菌酵素の少なくとも約55質量パーセントが再利用された酵素を含み、加水分解ユニットに供給された溶菌酵素の少なくとも約65質量パーセントが再利用された酵素を含み、加水分解ユニットに供給された溶菌酵素の少なくとも約75質量パーセントが再利用された酵素を含み、加水分解ユニットに供給された溶菌酵素の少なくとも約85質量パーセントが再利用された酵素を含み、加水分解ユニットに供給された溶菌酵素の少なくとも約95質量パーセントおよび/またはそれと類似の割合が再利用された酵素を含む。
【0084】
一実施態様によれば、本バイオリファイナリーは、リグノセルロース系供給材料を使用して、エタノール、ブタノール、遊離脂肪酸、トリアシルグリセリド、アルキルエステル、イソプレノイド、乳酸、酢酸、酪酸、プロピオン酸および/または同種のものを生産することができる。
【0085】
一実施態様によれば、本発明は、上述の本バイオリファイナリーで製造された、または、それによって製造された再生可能材料を含んでもよい。
一実施態様によれば、本発明は、再生可能材料の生産に適した溶菌酵素を再利用する方法を含んでもよい。本方法は、投入ストリームの残りから溶菌酵素を分離するために溶菌酵素を酵素吸着剤に吸着させる工程、および、酵素吸着剤から溶菌酵素を放出させる工程を含んでもよい。
【0086】
溶菌酵素を吸着する工程は、適切であればどのような効率を有していてもよく、例えばモル濃度に基づき少なくとも約60パーセントおよび/またはそれと類似の割合を有する。
【0087】
溶菌酵素を放出させる工程は、例えばpHの変化、温度の変化、緩衝液の変化、溶媒の極性の変化、および/または同種の変化のようなあらゆる適切な変化を含んでいてもよい。
【0088】
本方法はまた、セルロースまたはヘミセルロースを変換可能な材料に加水分解するために溶菌酵素を添加する工程、および、変換可能な材料を再生可能材料に変換する工程も含んでいてもよい。本方法はまた、再生可能材料から副産物を分離する工程、および、追加の加水分解に使用するために放出された酵素を戻す工程も含んでいてもよい。
【0089】
一実施態様によれば、本発明は、上述の方法で製造された、または、それによって製造された再生可能材料を含んでもよい。
本発明の範囲は単に溶菌酵素だけに限定されることはなく、概してその他の酵素または分子にも適用可能である。同様に本発明の範囲は再生可能材料の生産だけに限定されることはなく、概してその他の方法および/または適用と共に適用または使用することが可能である。
【0090】
当業者であれば当然のことながら、開示された構造および方法において、本発明の範囲または本質から逸脱することなく様々な改変およびバリエーションが可能である。具体的に言えば、いずれの一実施態様の説明も、説明またはその他の実施態様と自由に組み合わせることができ、それにより2またはそれより多くの要素または限定の組み合わせおよび/またはバリエーションを得ることができる。本発明のその他の実施態様は、明細書の考察や本明細書において開示された本発明の実施から当業者には明らかであると予想される。本明細書は単に一例とみなすこととし、本発明の本当の範囲および本質は以下の請求項で示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能材料の生産に使用するのに適した溶菌酵素を回収する吸着剤であって、該吸着剤は:
基体;および、
基体に分散している酵素結合材料、
を含む、上記吸着剤。
【請求項2】
前記基体が、アルギン酸塩、寒天、ポリアクリルアミド、コラーゲン、活性炭、多孔質セラミック、けいそう土、ナイロン、セルロース、ポリスルホン、ポリアクリレート、アルミナ、シリカ、ベントナイト、または、イオン交換樹脂を含む、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項3】
前記酵素結合材料が、リグニン、または、パラクマリルアルコール、コニフェリルアルコールもしくはシナピルアルコールを含むリグニンの高分子構造を含む、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項4】
前記酵素結合材料が、約300原子質量単位〜約1,000,000原子質量単位の平均分子量を有する、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項5】
前記酵素結合材料が、モル濃度に基づき少なくとも約60パーセントの結合効率を有する、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項6】
前記酵素結合材料が、可逆的に溶菌酵素を吸着する、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項7】
前記酵素結合材料が、pHの変化、温度の変化、緩衝液の変化、または、溶媒の極性の変化が適用されたら溶菌酵素を放出する、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項8】
請求項1に記載の吸着剤を用いて作製された再生可能材料。
【請求項9】
再生可能材料の生産に使用するのに適した溶菌酵素回収ユニットであって、該ユニットは:
溶菌酵素含有フィードストリームを受け取るフィードライン;
フィードラインと流体接続しており、溶菌酵素を吸着するための酵素吸着剤を含む、少なくとも1つの酵素回収装置;
少なくとも1つの酵素回収装置と流体接続しており、少なくとも1つの酵素回収装置に放出材料を供給するための再生ライン;および、
少なくとも1つの酵素回収装置と流体接続しており、少なくとも1つの酵素回収装置から溶菌酵素を取り出すための再利用ライン、
を含む、上記ユニット。
【請求項10】
前記少なくとも1つの酵素回収装置が、2またはそれより多くの充填層を含み、それぞれ吸着モードと再生モードとで機能することができる、請求項9に記載のユニット。
【請求項11】
前記酵素吸着剤が:
リグニン、または、パラクマリルアルコール、コニフェリルアルコールもしくはシナピルアルコールを含むリグニンの高分子構造を含む酵素結合材料;および、
アルギン酸塩、寒天、ポリアクリルアミド、コラーゲン、活性炭、多孔質セラミック、けいそう土、ナイロン、セルロース、ポリスルホン、ポリアクリレート、アルミナ、シリカ、ベントナイト、または、イオン交換樹脂を含む、酵素結合材料を支持するための基体、
を含み、ここで該酵素結合材料は、約300原子質量単位〜約1,000,000原子質量単位の平均分子量を有する、請求項9に記載のユニット。
【請求項12】
前記酵素吸着剤が、モル濃度に基づき少なくとも約60パーセントの可逆結合効率を有する、請求項9に記載のユニット。
【請求項13】
前記放出材料が、pHの変化、温度の変化、緩衝液の変化、または、溶媒の極性の変化を提供する、請求項9に記載のユニット。
【請求項14】
前記フィードストリームはさらに、加水分解物、再生可能ベース材料、または、副産物材料を含む、請求項9に記載のユニット。
【請求項15】
前記再生可能ベース材料が、エタノール、ブタノール、遊離脂肪酸、トリアシルグリセリド、アルキルエステル、イソプレノイド、乳酸、酢酸、酪酸、または、プロピオン酸を含む、請求項14に記載のユニット。
【請求項16】
請求項9に記載のユニットで製造された再生可能材料。
【請求項17】
再生可能材料の生産に適したリグノセルロースのバイオリファイナリーであって、該バイオリファイナリーは:
溶菌酵素の使用によりセルロースおよびヘミセルロースを再生可能ベース供給材料へと解重合させるための加水分解ユニット;
再生可能ベース供給材料の少なくとも一部を受け取り、再生可能材料に変換するための変換ユニット;
変換ユニットの流出物を受け取り、再生可能材料含有ストリームと副産物ストリームとを形成するための分離ユニット;
変換ユニットの流出物、再生可能材料含有ストリーム、または、副産物ストリームを受け取り、再利用のための溶菌酵素を吸着する、少なくとも1つの酵素回収ユニット;
少なくとも1つの酵素回収ユニットから溶菌酵素を放出させるための放出材料を供給する再生ライン;
溶菌酵素を再利用するための、少なくとも1つの酵素回収ユニットから加水分解ユニットへの再利用ライン;
再生可能材料を排出するための、少なくとも1つの酵素回収ユニットまたは変換ユニットからの生成物ライン;および、
副産物を排出するための、少なくとも1つの酵素回収ユニットまたは分離ユニットからの副産物ライン、
を含む、上記バイオリファイナリー。
【請求項18】
前記少なくとも1つの酵素回収ユニットが、生成物酵素回収ユニットと、副産物酵素回収ユニットとを含む、請求項17に記載のバイオリファイナリー。
【請求項19】
前記加水分解ユニットに供給される溶菌酵素の少なくとも約35パーセントが、再利用された酵素を含む、請求項17に記載のバイオリファイナリー。
【請求項20】
前記バイオリファイナリーが、エタノール、ブタノール、遊離脂肪酸、トリアシルグリセリド、アルキルエステル、イソプレノイド、乳酸、酢酸、酪酸、または、プロピオン酸を生産するためにリグノセルロースの供給材料を使用する、請求項17に記載のバイオリファイナリー。
【請求項21】
請求項17に記載のバイオリファイナリーで製造された再生可能材料。
【請求項22】
再生可能材料の生産に適した溶菌酵素を再利用する方法であって、該方法は:
投入ストリームの残りから溶菌酵素を分離するために溶菌酵素を酵素吸着剤に吸着させること;および、
酵素吸着剤から溶菌酵素を放出させること、
を含む、上記方法
【請求項23】
前記溶菌酵素を吸着する工程が、モル濃度に基づき少なくとも約60パーセントの結合効率を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記溶菌酵素を放出させる工程が、pHの変化、温度の変化、緩衝液の変化、または、溶媒の極性の変化によって起こる、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
溶菌酵素を添加して、セルロースまたはヘミセルロースを変換可能な材料に加水分解すること;
変換可能な材料を再生可能材料に変換すること;
再生可能材料から副産物を分離すること;および、
放出された酵素を戻して次の加水分解に用いること、
をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
請求項22に記載の方法によって製造された再生可能材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−525841(P2012−525841A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509817(P2012−509817)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/028280
【国際公開番号】WO2010/129101
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】