説明

酸化ガリウム単結晶のウェットエッチング方法

【課題】半導体製造工程におけるウェットエッチングに関する技術を酸化ガリウム単結晶に対して適用可能にする酸化ガリウム単結晶のウェットエッチング方法を提供する。
【解決手段】酸化ガリウム単結晶をHF溶液でエッチングすることを特徴とする酸化ガリウム単結晶のウェットエッチング方法であり、例えば濃度47%以上のHF水溶液中に酸化ガリウム単結晶を浸漬して室温でエッチングすることで、酸化ガリウム単結晶を深さ方向に60nm/h以上のエッチング速度でエッチングすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、酸化ガリウム単結晶をウェットエッチングする方法に関し、特にバルクの酸化ガリウム単結晶をエッチングするのに好適なウェットエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程において、基板の形状加工には広くエッチング技術が利用されている。このエッチングは、不用部分を除去するために気相‐固相界面での化学的又は物理的反応を利用するドライエッチングと、液相‐固相界面での化学的反応を利用するウェットエッチングとに大別される。前者については、エッチングに方向性を持たせることが比較的容易であって微細加工に適しているものの、真空にしたチャンバー内でのプラズマ加工が必要など特殊な装置が必要であり、また、基板に対するダメージや不純物汚染等に注意する必要がある。後者については、一度に処理できる能力がドライエッチングに比べて勝る等の特徴を有するが、エッチングが等方的に進行するためサイドエッチの発生等に注意を要する。そのため、一般には、微細な回路形成等の場合にはドライエッチングが利用されている。一方、ウェットエッチングは、上記以外にもドライエッチングに比べて低コスト性、低ダメージ性、材料によるエッチング速度の違いを利用した選択エッチング性等に優位性があり、また、欠陥密度や極性等の評価のためのエッチングとしても用いられている。更には、下地基板に成長させた厚膜を自立基板にせしめるために下地基板を除去する場合をはじめ、大面積のエッチングやマイクロマシン等の作製などの場合にはウェットエッチングが利用されている。
【0003】
このうち、ウェットエッチングにおいては、基板に対して最適なエッチング溶液を見出すことが重要になってくる。例えば、GaAs基板上にGaN膜を成長させた後、アンモニア水と過酸化水素水とを所定の比率で混合したアンモニア系のエッチャントを用いてウェットエッチングすることで、GaAs基板を除去してGaNの自立基板を得る方法が既に報告されている。ところが、サファイア基板上にGaN膜を成長させた場合、GaNの自立基板を得るためには、サファイア基板の背後から研磨して自立基板を得るほか、サファイア基板の背面にレーザー光を照射してGaN膜を剥離したり(例えば特許文献1参照)、GaN膜を成長させたサファイア基板に温度降下を利用してそのGaN膜にクラックを生じさせ、サファイア基板からGaN膜を剥離し易くする方法(例えば特許文献2参照)等が検討されている。つまり、サファイア基板に対する最適なウェットエッチング方法が見出せていないことがこれらの種々の検討の要因になっている。
【0004】
ところで、窒化ガリウム(GaN)等のIII族の窒化物半導体を成長させる基板として知られるサファイアやGaAsに代わる新たな基板として、本発明者等は酸化ガリウム(Ga2O3)単結晶に着目し、例えば、酸化ガリウム単結晶をアンモニアガス雰囲気中で加熱処理し、表層部に窒化ガリウム層を備えた酸化ガリウム単結晶複合基板を提案している(特許文献3参照)。この基板によれば、表層部に設けられた窒化ガリウム層により、従来のサファイアやGaAs等の基板と比べて窒化物半導体に対する格子定数の不整合を低減させることができる。また、酸化ガリウム単結晶は、4.8eVのワイドバンドギャップを有して可視領域で透明であり、かつ、結晶中に酸素欠損が生ずることでn型半導体としての挙動を示すことから、酸化ガリウム単結晶を基板に利用すれば、垂直型発光素子など従来のサファイア基板を用いた場合とは異なる素子の開発も可能になる。
【0005】
ところが、酸化ガリウム単結晶のウェットエッチング、特にバルクの酸化ガリウム単結晶については、これまで十分に検討されているとは言えない。例えば、GaAs基板上に電子ビーム蒸着で形成したGa23薄膜を1:3 HCl:H2O混合溶液を用いてエッチングした報告例(非特許文献1参照)はあるが、これは薄膜に対する技術であってバルクに関するものではない。また、60℃の硝酸中に酸化ガリウム単結晶からなる基板を浸漬して、基板の表面を平滑にする技術が報告されているが(特許文献4参照)、これは、その後に形成する半導体膜のエピタキシャル成長を阻害するような不純物の除去を目的とするものであり、いわゆる基板洗浄に関する技術である。
【特許文献1】特開2002−57119号公報
【特許文献2】特開2006−173148号公報
【特許文献3】特開2005−239517号公報
【特許文献4】特開2006−32736号公報
【非特許文献1】F.Ren, M.Hong, J.P.Mannaerts, J.R.Lothian, and A.Y.Cho, J. Electrochem. Soc., Vol. 144, No. 9(1997), L239-L241
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者等は、自立基板を作製する場合、マイクロマシンを作製する場合、比較的大面積をエッチングする場合、エッチング速度の違いを利用して選択エッチングを行う場合、欠陥密度や極性等を評価する場合等を含め、いわゆる半導体製造工程でのウェットエッチングに関する技術を酸化ガリウム単結晶にも適用可能にすべく鋭意検討した結果、HF溶液を用いることで酸化ガリウム単結晶を効率的にエッチングすることができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
したがって、本発明の目的は、いわゆる半導体製造工程におけるウェットエッチングに関する技術を酸化ガリウム単結晶に対して適用可能にすることができるような酸化ガリウム単結晶のウェットエッチング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、酸化ガリウム単結晶(β-Ga2O3)をフッ酸溶液(HF溶液)でエッチングすることを特徴とする酸化ガリウム単結晶のウェットエッチング方法である。
【0009】
本発明で用いるHF溶液については、好ましくは濃度5質量%以上、より好ましくは濃度10質量%以上のHF水溶液であるのがよい。濃度が5質量%より低いとエッチング速度が遅くなりすぎてエッチングに時間がかかってしまう。HF水溶液の濃度については、高くなるにつれてエッチング速度が上昇して好都合であるが、現在市場で入手可能なものは濃度75質量%(ステラケミファ株式会社)が最も高い濃度であるため、現実的にはこの値が上限になる。
【0010】
また、エッチングの際のHF溶液の温度については、特に制限はないが、本発明のウェットエッチング方法では室温で行うことも可能である。
【0011】
本発明において、HF溶液を用いて酸化ガリウム単結晶をエッチングする具体的な処理方法については、ウェットエッチングで一般的に採用される処理方法を用いることができる。例えば、HF溶液中に酸化ガリウム単結晶を浸漬する浸漬処理、酸化ガリウム単結晶にHF溶液を噴霧する噴霧処理をはじめ、減圧、流水、スプレー、ジェット、電解等を例示することができるが、好ましくはHF溶液中に酸化ガリウム単結晶を浸漬する浸漬処理がよい。特に、後述するような手段によれば、浸漬処理による酸化ガリウム単結晶のエッチング量の評価を精度良く行うことができる。なお、酸化ガリウム単結晶をエッチングする際には、エッチングの目的や用途に応じ、酸化ガリウム単結晶の一部にマスク等を設けて必要な部分のみエッチングするようにしてもよい。
【0012】
浸漬処理により酸化ガリウム単結晶をエッチングする場合、浸漬処理後のHF溶液から検出されるGaの分析値に基づき、酸化ガリウム単結晶のエッチングの程度を評価することができる。具体的には、ICP分析(誘導結プラズマ)、原子吸光分析(AAS)等の定量分析を利用して、浸漬処理後のHF溶液中に溶出したGaを定量することで、酸化ガリウム単結晶のエッチング量(Ga2O3換算量)を求めることができる。また、下記式(1)を利用すれば、上記で求めた分析定量値(エッチングされたGa濃度)Mを深さ方向に単位時間あたりにエッチングされた酸化ガリウム単結晶の厚み(深さ方向のエッチングレート)tに変換することができる。尚、以下の式(1)では理解を容易にするために、酸化ガリウム単結晶からなる基板を全面エッチングした場合を想定する。
t(nm/h)=
{1.3443×L(mL)×M(μg/mL)/[D(μg/mm3)×S(mm2)×T(hour)]}×106 … …(1)
t(nm/h):深さ方向のエッチングレート
L(mL):ICP測定時溶液量
1.3443:GaからGa23への変換係数
M(μg/mL):ICP分析定量値(エッチングされたGa濃度)
D(μg/mm3):酸化ガリウム単結晶(β-Ga2O3)の密度=5961
S(mm2):酸化ガリウム単結晶基板のエッチング面積
T(hour):エッチング時間(浸漬時間)
【0013】
従来、深さ方向に対するエッチングの厚み量を把握するためには、例えば表面粗さ計を用いてエッチング箇所を物理的に測定するか、或いはエッチング前後におけるエッチング対象物の重量変化を時間軸で測定し、エッチング速度(エッチングレート)を算出して求めている。ところが、表面粗さ計を用いる場合は測定が繁雑である。エッチングレートから算出する場合はエッチング対象物に重量変化がないと測定できず、エッチング対象物にはある程度の質量が必要となる。そのため、十分な質量がとれない場合にはエッチングされた厚みを把握することが難しく、また、エッチングレートから求めた値が必ずしも正確なエッチングの厚みを表しているかどうかは定かではない。そこで、上記のようにICP分析等の定量分析を利用し、浸漬処理後のエッチング溶液中に溶出した金属元素を定量することで、質量が十分にとれないエッチング対象物の場合でも正確にかつ簡便にエッチング量を求めることができる。また、上記式(1)を使えば、エッチング対象物の深さ方向に対するエッチングの厚みを正しく定量的に把握することもできる。更には、エッチング溶液中の金属元素の溶解量を指標にすれば、例えばエッチング液の交換時間の把握などができてエッチング溶液の管理が容易になる。
【0014】
そして、本発明における酸化ガリウム単結晶のウェットエッチング方法では、HF溶液の温度や濃度によっても異なるが、例えば濃度10質量%以上のHF水溶液中に酸化ガリウム単結晶を浸漬して室温でエッチングする場合、上記式(1)で算出されるエッチングレートtに基づけば、酸化ガリウム単結晶は深さ方向に11.3nm/h以上のエッチング速度でエッチングすることができる。また、濃度20質量%以上のHF水溶液であれば、同様に酸化ガリウム単結晶の深さ方向のエッチング速度は23.5nm/h以上であり、更に、濃度47質量%以上のHF水溶液であれば、同じく深さ方向のエッチング速度は65.9nm/h以上である。深さ方向のエッチング速度が60nm/h以上であれば、例えば比較的大面積をエッチングする場合、エッチング速度の違いを利用して選択エッチングを行う場合、欠陥密度や極性等を評価する場合、自立基板やマイクロマシンを作製する場合など、半導体製造工程におけるウェットエッチングに特に好適である。
【0015】
また、本発明においては、HF溶液でウェットエッチングした後は、例えば超純水洗浄など、通常行われる手段で酸化ガリウム単結晶を処理してもよい。
【0016】
本発明は、酸化ガリウム単結晶のウェットエッチング方法であり、エッチングの対象になる酸化ガリウム単結晶については特に制限されず、エッチングの目的やエッチング後の酸化ガリウム単結晶の用途等に応じ、種々の酸化ガリウム単結晶をエッチングすることができるが、本発明のウェットエッチング方法では上述したようなエッチング速度を示すことから、好適には、基板やウエハ状の形状をしたバルクの酸化ガリウム単結晶に対して適用するのがよいが、Ga23薄膜に対して適用してもよい。本発明のウェットエッチング方法の適用例について、いくつか挙げるとすると以下のとおりである。例えば、酸化ガリウム単結晶からなる基板上に窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、及びこれらの混晶等から形成されるIII族の窒化物半導体膜を成長させた後、本発明のウェットエッチング方法を利用して酸化ガリウム単結晶からなる基板を除去すれば、窒化物半導体膜からなる自立基板を得ることができる。また、ウェットエッチングの選択エッチング性を利用してバルク単結晶やGa23薄膜のパターンニングも可能である。更には、欠陥密度や極性等を評価するためのエッチングにも応用可能である。これら以外にも、本発明によれば、半導体製造工程で一般的に利用されるウェットエッチングに係る技術を酸化ガリウム単結晶に対して適用することができるが、特に、濃度75質量%またはそれ以上のHF水溶液を用いて深さ方向へのエッチング速度が100nm/h以上になれば、例えば窒化物半導体膜等の自立基板の作製等の場合であっても短時間で効率良く行うことができるようになる。なお、バルク単結晶やGa23薄膜のパターンニングの場合は、残したい箇所にはレジストを塗布し、選択エッチング性を利用するようにすればよい。
【0017】
また、本発明のHF溶液は、本発明の目的から外れない範囲で他の成分を含有してもよい。例えばエッチング速度を上げるためにHCl、HNO3、H2SO4、H22等が添加されてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、半導体製造工程において利用されるようなウェットエッチングが、酸化ガリウム単結晶に対して適用可能になる。例えば濃度47質量%以上のHF水溶液を用いた場合には、室温でも酸化ガリウム単結晶の深さ方向に60nm/h以上の速度でエッチングが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、HF溶液及びそれ以外のエッチング溶液を用いて酸化ガリウム単結晶からなる基板をエッチングした結果に基づき、本発明をより具体的に説明する。
【0020】
純度99.99%の酸化ガリウム粉末(株式会社高純度化学研究所製)をラバーチューブに封入して静水圧で加工成型した後、電気炉に入れて大気中1500℃で10時間焼結して酸化ガリウム焼結体を得た。次いで、この酸化ガリウム焼結体を原料棒として、双楕円のFZ装置を用いて酸化ガリウム単結晶(β-Ga2O3)を育成した。この際、<001>方向の結晶成長速度が〜7.5mm/h、成長雰囲気がドライエア、圧力が〜1気圧の各条件とした。
【0021】
上記で得られた酸化ガリウム単結晶をダイヤモンドワイヤーソーで切断し、結晶面の(100)面を切り出して(100)面に平行に厚さ0.3mm程度に研磨してウエハ化した。この際、ムサシノ電子製MA‐200Dを使用し、研磨液にコロイダルシリカ(デュポン社製COMPOL80)を用いて、荷重なし、回転数75rpmの条件で化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)した。このようにして、主面が(100)面であって、両面積(上下面の面積合計)0.8619cm2、厚さ0.0552cm、重量0.2836g、及び密度5.961g/cm3の酸化ガリウム単結晶基板Aを得た。
【0022】
また、上記と同様に(001)面を切り出して化学機械研磨し、主面が(001)面であって、両面積0.3227cm2、厚さ0.705cm、重量0.1356g、及び密度5.961g/cm3の酸化ガリウム単結晶基板Bを準備し、更に、b軸に平行面(001面±13°)を切り出して化学機械研磨し、主面が(001)面から±13°のオフ角を有し、両面積0.2642cm2、厚さ0.717cm、重量0.1129g、及び密度5.961g/cm3の酸化ガリウム単結晶基板Cを準備した。
【0023】
また、エッチング溶液として、濃度10質量%のHF水溶液、濃度20質量%のHF水溶液、濃度47質量%のHF水溶液、濃度18質量%のHCl水溶液、濃度20質量%のNaOH水溶液、濃度48質量%のH2SO4水溶液、H22:H2SO4:H2O=1:4:1溶液、及び濃度60.5質量%のHNO3水溶液を用意し、上記で得た酸化ガリウム単結晶基板A〜Cを以下のようにしてウェットエッチングしてそれぞれのエッチング性能を評価した。
【0024】
先ず、濃度47質量%のHF水溶液5mLに上記基板Aを浸漬し、室温で1時間のエッチングを行った(試験No.1)。エッチング終了後、基板を取り出し、加熱してHF水溶液を除去し、エッチング溶液に18質量%の塩酸を10mL添加して50mLに定容にしてICP分析を行った。ICP分析に使用した装置はSII社製SP 3100であり、RF出力1.2kW、周波数27.12MHz、プラズマガス量14〜16L/min、補助ガス量0.4〜1.0L/min、キャリア0.4L/min、導入液量1.8L/minの各条件で測定を行った。その結果、エッチング溶液中に基板のGaが溶出したことが確認された。この値を上記式(1)に基づき換算すると、深さ方向のエッチング速度は65.9nm/hであった。同様に、浸漬時間を変えた場合(試験No.2、3)、HF水溶液の濃度を変えた場合(試験No.4、5)、及び浸漬時間を3時間にして基板の種類を変えた場合(試験No.11、12)についてもエッチング性能を評価した。エッチング条件及び結果と共に表1にまとめて示す。
【0025】
また、HF水溶液以外のエッチング溶液を用いた場合について、エッチング条件及び結果を表1にまとめて示す。なお、濃度18質量%のHCl水溶液を用いた場合は、エッチング終了後、エッチング溶液を50mL定容して上記と同様にICP分析した。また、濃度20質量%のNaOH水溶液の場合は、エッチング終了後、エッチング溶液を250mL定容し、濃度48質量%のH2SO4水溶液の場合は、エッチング終了後、エッチング溶液を100mL定容し、H22:H2SO4:H2O=1:4:1溶液の場合は、エッチング終了後、エッチング溶液を100mL定容し、濃度60.5質量%のHNO3水溶液の場合は、エッチング終了後、エッチング溶液を50mL定容して、それぞれICP分析を行った。
【0026】
【表1】

【0027】
表1に示した結果によれば、HF水溶液を用いてエッチングした場合には、それ以外のエッチング溶液の場合に比べてエッチング速度が格段に優れることが分る。また、上記結果によれば、本発明のウェットエッチング方法は、エッチング時間(浸漬時間)とエッチング性能は比例関係にあることが分り、同じく、HF水溶液の濃度とエッチング性能についても比例関係にあることが分る。これらの関係によれば、HF水溶液の濃度と浸漬時間から、エッチング量(Ga2O3換算量)を求めることが可能になる。
【0028】
更に、試験No.3、11及び12の結果によれば、酸化ガリウム単結晶は(010)面に比べて(100)面の方がエッチングされ易いことが分る。つまり、上記のようなエッチング量の評価を利用すれば、酸化ガリウム単結晶の面方位によりエッチング量が異なることも容易に評価できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、半導体製造工程で通常利用されているウェットエッチングを酸化ガリウム単結晶に対し適用することができる。具体的には、酸化ガリウム単結晶基板上に窒化物半導体膜等を成長させた後、エッチングによって基板を除去して窒化物半導体の自立基板を得ることが可能になり、また、ウェットエッチングの選択エッチング性を利用したパターンニングを行うこともできる。更には、大面積やマイクロマシン等へのエッチングも可能であり、これら以外にも、欠陥密度や極性等の評価のためのエッチングにも本発明を適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ガリウム単結晶をHF溶液でエッチングすることを特徴とする酸化ガリウム単結晶のウェットエッチング方法。
【請求項2】
バルクの酸化ガリウム単結晶をエッチングする請求項1に記載の酸化ガリウム単結晶のウェットエッチング方法。
【請求項3】
濃度5質量%以上のHF水溶液中に酸化ガリウム単結晶を浸漬して室温でエッチングすることで、酸化ガリウム単結晶を深さ方向に5nm/h以上のエッチング速度でエッチングする請求項1又は2に記載の酸化ガリウム単結晶のウェットエッチング方法。

【公開番号】特開2008−282943(P2008−282943A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125250(P2007−125250)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】