酸化物−イオンバッテリーのセルバンクおよびモジュール構成を備える蓄電デバイス
再充電可能な蓄電デバイスが開示され、ここでは一実施形態では、「A」のアニオン導電性電解質(18)および2つの電極(17、19)間のイオンの移動を利用し、ここでは1つの電極は好ましくは、金属および金属酸化物の混合物を含む金属電極19であり、その結果、作動の間、充電モードおよび放電モードにおける2つの電極(17、19)と金属電極(19)との間の酸化物−イオンのシャトルは、「A」のアニオンに関連する種のリザーバとして機能する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、酸化物−イオンバッテリーのセルバンクおよびモジュール構成を備える蓄電デバイス(ELECTRICAL STORAGE DEVICE INCLUDING OXIDE−ION BATTERY CELL BANK AND MODULE CONFIGURATIONS)という名称の2009年8月10日出願の米国仮特許出願第61/232,533号に対して、合衆国法典35巻(米国特許法)第119条(e)項により優先権を主張する。
【0002】
アニオン導電性電解質を備え、電解質のいずれかの側の上で電極間のイオン移動がある、蓄電デバイス。本発明はまた、2つの電極間で酸化物−イオンの移動がある、電解質酸化物−イオン導体を用いて電気エネルギーを蓄電するためのモジュール、セルのバンクおよびセルの電気化学的構成に関する。
【背景技術】
【0003】
高温の固体酸化物電解質燃料電池は、当該分野で周知であり、典型的には約500℃を超える温度で、化学的エネルギーを直流の電気エネルギーへ変換する。この温度は、固体の電解質を十分に導電性にするために必要である。安定化されたジルコニアが主な電解質である。このような燃料電池は、例えば、特許文献1(Isenberg)によって教示されている。固体酸化物燃料電池(「SOFC」)の一般的な作動原理および一般的な反応は、自明であり、先行技術として図1に示されている。空気および必要なガス燃料、例えば天然ガスは、共に、約800℃〜約1000℃で電気を生じるためだけに利用されている。この種のSOFCは、金属/セラミックの燃料電極10、ガス状に再形成された天然ガス燃料およびセラミックの高密度固体電解質11および多孔性セラミック空気電極12を利用する。セラミックスまたは金属セラミックのみが、これらの高温に耐え得るので、金属は用いられない。燃料13は、Fとして示しており、オキシダントまたは空気Aは14で示す。
【0004】
エヌ・キュー・ミン(N.Q.Minh)は、非特許文献1において、種々の燃料電池のデザイン、例としては、管状、三角形および他の構成、ならびに用いられる材料および伴う電気化学的反応を詳細に記載している。例えば、その論文は、セグメント化された連続セル(cell−in−series(バンド付きで(banded)かつ差し込み式(bell−and−spigot))、モノリシック(同時流および直交流)、および平板デザインを具体的に詳細に記載している。サーメットの燃料電極(アノード)材料、例えば、ニッケルまたはコバルト/イットリア安定化ジルコニアもまた検討されており、それらの熱膨張の係数の問題も同様である。
【0005】
エネルギーの発生に加えて、バッテリーはまた、エネルギーを蓄えもする。電力の蓄電は、電気の節約の効果的な増強にとって、および多くの再生可能なエネルギー技術の実施にとって重要である。過去20年間にわたって、電気エネルギーの蓄電の需要は、携帯、運輸、ならびに負荷平準化および中央バックアップ適用の分野でかなり大きくなった。現在の電気化学的なエネルギー蓄電システムは、重要な新しい市場に浸透するには単にコストがかさみ過ぎで、依然としてより高いパーフォーマンスが必要とされており、環境的に受入れ可能なものが望まれる。電力蓄電の科学および技術の大きな変化によって、大きい市場の拡大のために必要な、より低コストかつより高寿命で、より高くかつ速いエネルギー貯蔵を可能にする強い要請がある。これらの変化のほとんどは、カチオンおよび/またはアニオンとより急速かつ可逆的に反応する、より大きい酸化還元能力を示す、新規な材料および/または革新的な概念を必要とする。
【0006】
バッテリーは、電力を蓄電する最も一般的な形態であり、これは以下の範囲にわたる:標準通常型鉛−酸セル、Brownによって特許文献2に教示される原子力潜水艦の非標準型鉄−銀バッテリー、ならびにVenkatesan et.alの特許文献3や、Kitayamaの特許文献4、およびYoung et.alの特許文献5によって教示されるニッケル−金属ハイブリッド(NiMH)バッテリー。また、特許文献6(Buzzelli)、Isenbergの特許文献や7、特許文献8,特許文献9および特許文献10(それぞれ、Jang,BurchardtおよびChua et.al)において教示される金属−空気セル、ならびに特許文献11および特許文献12(それぞれ、Kashino et.al、およびOkuyama et.al)において教示される空気バッテリーも公知である。リチウム−イオンバッテリーは、Ohataの特許文献13に教示される。これらの後者の金属−空気、ニッケル−金属ハイブリッドおよびリチウム−イオンのバッテリーセルは、液体電解質のシステムを必要とする。
【0007】
バッテリーのサイズは、時計に用いられるボタン型のセルから、メガワットの負荷レベルの適用にまでおよぶ。それらは一般には、効率的な蓄電デバイスであって、出力エネルギーは典型的には、最大の電力密度を除けば、入力エネルギーの90%を超える。再充電可能なバッテリーは、長年にわたって、鉛−酸からニッケル−カドミウムおよびニッケル−金属ハイブリッド(NiMH)を経てリチウム−イオンまで進化してきた。NiMHバッテリーは、コンピューターおよび携帯電話などの電気的デバイスの最初の主力製品であったが、それらは、リチウム−イオンバッテリーの高い蓄電能力の理由で、リチウム−イオンのバッテリーによって市場がほぼ完全に置き換えられた。今日では、NiMHの技術は、ハイブリッドの電気自動車で用いられる主なバッテリーであるが、リチウムバッテリーの安全性および寿命が改善され得るならば、よりハイパワーのエネルギーおよびより低コストのリチウムバッテリーによって、置き換えられると考えられる。進歩したバッテリーの中でも、リチウム−イオンは、ほとんどの再充電可能な電気的デバイスの有力な電源である。
【0008】
大容量のエネルギーを、必要に応じて、迅速かつ可逆的に容易に放電および充電できる、劇的に新しい電気エネルギーの蓄電デバイスが必要とされている。また、簡易であって、かつ大きなメンテナンスなしに長年にわたって作動できるデバイスも必要とされている。炭素質燃料ガス、例えば、天然ガス燃料、炭化水素燃料、またはその改質されたH2燃料のようなもので作動する必要が無いデバイスも必要とされる。このデバイスは以下を有する必要がある:
・ 簡易なセルおよびモジュールの構造;
・ 一実施形態では、放電および充電の界面反応を容易に達成するための約400℃〜500℃を超える作動温度;
・ 高い理論的なエネルギー密度;
・ 全て固体状態の構成要素;
・ 低いシステムの費用;ならびに
・ 低電力損失の電流収集。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,395,468号明細書
【特許文献2】米国特許第4,078,125号明細書
【特許文献3】米国特許第5,856,047号明細書
【特許文献4】米国特許第6,399,247号(B1)明細書
【特許文献5】米国特許第7,261,970号明細書
【特許文献6】米国特許第3,977,901号明細書
【特許文献7】米国特許第4,054,729号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2006/0063051号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2007/0077491号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2007/0259234号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2003/0143457号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2004/0241537号明細書
【特許文献13】米国特許第7,396,612号(B2)明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】エヌ・キュー・ミン(N.Q.Minh),セラミック・フューエル・セルズ(Ceramic Fuel Cells),ジャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・ソアイアティー(Journal of American Ceramic Society),1993年,76巻、3号,563−588頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の主な目的は、上記のニーズの適応する、バッテリーセル、セルバンクおよびモジュール構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
アニオン導電性電解質および2つの電極を備える、蓄電デバイスであって、電解質のいずれかの側の上で電極間のイオン移動があり、一方の電極が、イオンのリザーバであり、かつイオンが2つの電極間で前後に移動され得る、蓄電デバイスを提供することによって、上記のニーズは提供され、かつ目的は達成される。このイオンとしてはO2-、CO32-、S2-、PO43-、I-、F-およびCl-、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される、負に荷電されたイオンが挙げられる。ここで、ガス燃料は作動のために必要ではない。基本的な動作は、後に述べる図2Aおよび図2Bに示される。
【0013】
充電モードおよび放電モードで作動して、上記金属の電極に電気エネルギーを蓄電し得る、酸化物−イオン電解質導体と組み合わせた金属の電極を用いるセルのバンクであって、ここで、前記放電モードが:
yMe+x/2O2=MeyOx
であり、かつ前記充電モードが:
MeyOx=x/2O2+yMeであり、ここでx/y=0.5〜3.0であり、かつMe=金属である、セルのバンクを提供することによって、上記のニーズは満たされ、かつ上記目的は達成される。
【0014】
本発明はまた、複数の電気接続された中実または中空の細長い管状のセルを含むセルのバンクであって、各々のセルは、充電モードおよび放電モードで作動可能であり、各々のセルは、単相または二相の金属の材料を有し、これらの材料は、400℃を超える融点を有する第一の電極として使用され、かつ電解質へ空気を移動することができる第二の電極材料として使用されるべく酸化されることが可能であり、さらに酸化物−イオンを移動し得るそれらの間の電解質を備え、ここで前記金属の電極は、酸素のリザーバであり、ここで前記放電モードは:
yMe+x/2O2=MeyOxであり、
前記充電モードは:
MeyOx=x/2O2+yMeであり、ここでx/y=0.5〜3.0であり、Me=金属であり、さらに、前記セルのバンクは電気エネルギーを蓄電し、かつ第二の電極材料に接触するための空気の供給源を有する、セルのバンクにある。好ましくは、複数のセルのバンクは最終的にモジュールを提供するために接続され得る。好ましくは、上記金属の第一の電極は、500℃を超える融点を有する。ガス燃料は用いられないことに注目することが重要である。さらに、図18Aに示されるような平面的な幾何形状を用いてもよい。これは、本明細書に記載される全てのセルのバンクに適用可能である。
【0015】
本明細書において用いる「リザーバ」という用語は、アニオンに関連する種が、電極中で捕獲/保持されることができ、かつ遊離可能であるということを意味するものとして定義される。「中空の細長い管状のセル」という用語は、本明細書において後で定義する。酸化物イオンは、O2-である。「固体セル」という用語は、管状、三角形および四角、三角などの断面などの任意の他の幾何形状の構成を含む。
【0016】
本発明はさらに、複数の電気的にインターコネクションされたセルのバンクを含む蓄電モジュールにあり、各々のセルのバンクは、複数の電気的に接続された中空の細長い管状のセルを備え、各々のセルは、充電モードおよび放電モードで作動でき、各々のセルは、単相または二相の金属材料であって、この材料が500℃を超える融点を有する第一の電極としての使用のために酸化され得る金属材料と、空気を電解質に移動し得る第二の電極材料と、それらの間の電解質であって、酸素イオンを移動し得る電解質とを備え、ここで前記金属の第一の電極は酸素のリザーバであり、かつ前記放電モードは:
yMe+x/2O2=MeyOxであり、かつ前記充電モードは:
MeyOx=x/2O2+yMe、x/y=0.5〜3.0であり、ここでMe=金属であり、
かつここで前記セルのバンクは電気エネルギーを蓄電し、かつ第二の電極材料に接触するための空気の供給源を有する。この蓄電モジュールは、550℃〜650℃という中温/高温で効果的に作動し得る。
本発明をさらによく理解するために、図面で示される、本発明の好ましい例示的な実施形態を参照することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】先行技術のSOFCの作動原理を図示する。
【図2A】ガス燃料を使用せずに、A含有ガスを利用しする、アニオンA導体に基づく本発明のエネルギー蓄電デバイスの最も広義の例を図示する。
【図2B】ガス燃料を使用せずに、空気を利用する、本発明の電気エネルギー蓄電デバイスの一実施形態の作動原理を図示する。
【図3】本発明の電気エネルギー蓄電デバイスの両方の電極の反応の例を図示する。
【図4A】固体内部金属電極基体を備える、本発明で用いられ得る、種々の可能な管状セル構成の1つを図示する。
【図4B】固体内部金属電極基体を備える、本発明で用いられ得る、種々の可能な管状セル構成の1つを図示する。
【図4C】固体内部金属電極基体を備える、本発明で用いられ得る、種々の可能な管状セル構成の1つを図示する。
【図5】種々の金属および酸化物材料に関する、EMF(対空気、電圧)対T(K)のグラフである。
【図6】種々の金属および酸化物材料に関する、理論的エネルギー密度対T(K)のグラフである。
【図7】種々の金属および酸化物材料に関する、熱力学的電気効率対T(K)のグラフである。
【図8】種々の金属および酸化物材料に関する、費用($/kWeh)対T(K)のグラフである。
【図9】種々の金属材料に関する、最大電流密度対時間のグラフである。
【図10A】850cm2というセル活性面積での、最大アンペア時対種々の金属材料のグラフである。
【図10B】1cm2あたりの最大アンペア時対種々の金属材料のグラフである。
【図11】放電過程の間に金属電極において生じる金属酸化物の2つの平行な機構の模式図であって、ここでは混合導電相は、界面で考慮されるだけである。
【図12】放電過程の間に金属電極で生じる金属酸化物の2つの平行な機構の模式図であって、ここでは混合導電相は、バルクで考慮される。
【図13】容積の安定な混合導電材料の電解質界面骨格に含まれる金属電極粒子の模式図である。
【図14】気相O2によって酸化されている金属スポンジを有する隔てられた金属電極および電流コレクタの模式図である。
【図15】電解質を保護するため、金属酸化の間、容積膨張問題を制御/軽減するための段階的な金属電極の模式図である。
【図16】多孔性空気電極基体に基づく管状モジュール中の基本的な反復性酸化物−イオンバッテリーセルユニットの模式的断面図である。
【図17】多孔性金属基体に基づく管状モジュール中の基本的な反復性酸化物バッテリーセルユニットを示す模式的断面図である。
【図18A】平面モジュールでの、基本的な反復性酸化物−イオンのバッテリーセルユニットの模式的断面図である。
【図18B】デルタモジュールまたは三角形モジュールでの、基本的な反復性酸化物−イオンバッテリーセルユニットの模式的断面図である。
【図19】化学的充電を用いる、酸化物−イオンバッテリーモジュールの基本的な反復性ユニットの模式図である。
【図20】本発明を最もよく示しており、平行なセルおよび直列のセルのバンクを有する各々のセルが管状シート中にろう付けされたセルのバンクの略図である。
【図21】電気的に直列に接続されたセルのバンクの三次元図で一実施形態を図示する。
【図22】セルのモジュールの一実施形態の三次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の電気的な蓄電デバイスの最も広義の作動原理を図2Aに示しており、ここでは、燃料を含まないガス16が、A−ガス電極17に接触し、かつA導電性導体/電解質18は、A−ガス電極および金属の電極19に接して配置され、ここには電気回路、負荷20およびDC供給21がある。さらに、アニオン導電性電解質があり、ここでは、電極のいずれかの側で電極間のイオンの移動があり、このようなイオンは、O2-、CO2-、S2-、PO43-、I-、F-およびCl-のうちの少なくとも1つから選択される。本発明の酸化物−イオンバッテリー構成の一実施形態の作動原理を、図2Bに模式的に示す。放電モードでは、酸化物−イオンであるアニオンは、酸素化学電位の勾配の駆動力のもとで、酸素側(この場合空気側)の高い分圧から酸素側(金属−金属酸化物電極)の低い分圧まで移動する。充電モードでは、酸化物−イオンは、電場の駆動力のもとで、酸素側の低い分圧から酸素側の高い分圧まで移動するように強制される。ここで、空気16’は空気電極17’に接触する。酸素イオン導体電解質は、空気電極と金属の(金属−金属酸化物)電極19’との間にある。負荷は、20’として、D.C.電力供給は21’として示される。充電および放電の経過の間に生じる対応する電極の反応を図3に図示する。放電モードのもとでは、金属は、発熱をともなって金属酸化物に酸化されるが、充電モードのもとでは、金属酸化物は、吸熱を伴って金属に還元される。前記放電過程は、Me=金属として:
yMe+x/2O2=MeyOxであり、
かつ前記充電過程は:
MeyOx=x/2O2+yMeであり、
ここでx/yは好ましくは0.5〜3.0である。ここで、空気電極は17”として、電解質は18”として、金属電極は19”として示される。
【0019】
管状のセル構成が好ましく、簡便のために全体を通して図示されている。しかし、これは決して限定的に解釈されるべきではない。なぜなら他の「中空、細長い管状のセル」構造としては、Isenbergによる米国特許第4,728,584号の波型のデザイン、および米国特許出願公開第2008/0003478号(A1)(Greiner et.al)に記載された三角形、四角形、楕円形、階段状三角形および蛇行構造が包含され、全てが本明細書における「中空の細長い管状の」セルと定義される。本発明において使用される種々の中空の細長い管状のセルデザインは、図4A、図4Bおよび図4Cに示される。また、三角形の「デルタ型のセル」(図18B)が有用である場合もある。図4A、図4Bおよび図4Cでは、空気またはオキシダントは24であり、精製された不活性な(燃料でない)ガスは25であり、空気電極は26であり、電解質は27であり、金属電極は28であり、セラミックインターコネクションは29であり、かつ金属「基体」は30である。本発明の複雑性のせいで、図にはある程度前後で見直しがあろう。
【0020】
セル構成は、管状の様式を図4Aに示すが、燃料ガスは用いず、空気のみである。全部で4つの機能的な層がある:内部多孔性金属支持基体30、空気電極26、電解質27および外側金属電極28。多孔性金属基体の管は、「ワンススルー」である。オキシダントである空気が、この多孔性金属の管の内面に供給される。外側金属または金属の電極は、不活性ガスによって保護された閉鎖環境にとどまる。
【0021】
図4Aの多孔性金属基体30は、主にFe、CrおよびMnの金属ならびにTi、Nb、Zr、Ce、LaおよびYのようなわずかな添加物を含むフェライト系ステンレス鋼から構成される。空気電極層は、導電性の相LaMnO3ベースのペロブスカイトおよび酸化物−イオン導電相の酸化スカンジウムドープしたジルコニアの二相混合物からなる。電解質層は、酸化スカンジウムドープジルコニアの単相からなる。
【0022】
多孔性金属基体はまた、多孔性の空気電極によって置き換えられてもよい。空気電極26は、図4Bでは、CaドープしたLaMnO3を含んでもよい。この場合、CaドープしたLaCrO3などを含むセラミックのインターコネクションストリップも、細長い管状表面の上に必要である。図4Bは、この空気電極支持された酸化物−イオンバッテリー構成の断面図を示しており、また、燃料ガスは用いられていない。
【0023】
別のセル構成を、図4Cに模式的に示す。図4Cでは、燃料ガスは用いておらず、金属電極の管または中実ロッド28を、セルの外側に空気を有する支持基体の例として用いる。中実の中央金属電極28は、環状、四角形、不整形または任意の幾何学的形状であってもよく、従って、「中実セル(solid cell)」という用語は、本明細書において用いる場合、それらの任意の形状であってもよい。金属電極ロッドは濃密であっても多孔性であってもいずれでもよい。電解質および空気電極層は連続して、金属電極基体上に配置される。このデザインでは、保護用の不活性ガスはもはや不必要である。本発明のセルの最も重要な構成要素は、酸素のリザーバとして機能する金属電極28である。400℃を超える融点を有するという要件以外に、他の重要な基準は以下である:
・ 熱力学的EMF(起電力);
・ 理論的なエネルギー密度(メガジュール/材料1kg);
・ 熱力学的電気効率;
・ 費用($/kワット時eh)[e=電力;h=時間];
・ 最大電流密度(能力を決定する);および
・ 最大電荷貯蔵(アンペア時/cm2)。
【0024】
これらの考慮に基づき、金属電極は、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、Ce、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Ta、V、Mo、PdおよびWのうちの任意の単相金属材料、ならびにSc−Sc2O3、Y−Y2O3、La−La2O3、Ti−TiO2、Zr−ZrO2、Hf−HfO2、Ce−CeO2、Cr−Cr2O3、Mn−Mn2O3、Mn−Mn3O4、Mn−MnO、Fe−FeO、Fe−Fe3O4、Fe−Fe2O3、Co−CoO、Co−Co3O4、Co−Co2O3、Ni−NiO、Cu−Cu2O、Cu−CuO、Nb−NbO、Nb−NbO2、Nb−Nb2O5、Ta−Ta2O5、V−V2O5、V−VO2、V−V2O3、V−VO、Mo−MoO2、Mo−MoO3、Pd−PdOおよびW−WO3のうちの任意の二相材料から構成され得る。二相組成物では、上記金属対金属酸化物の比は、0:100〜100:0であり、さらに狭めれば、50:50〜100:0である。しかし、好ましい材料を決定するためには、上記の基準をさらに考慮し、候補を図5〜図10Aおよび図10Bに示しており、全ての図が、それぞれ自己説明的である。図5は、Ti/TiO2、Cr/Cr2O3、Mn/Mn2O3、Mo/MoO2、Fe/FeO、W/WO3のシステムにおける高いEMF値を示す。図6はさらに、Ti/Ti2O2、Cr/Cr2O3、Mn/Mn2O3、Mo/MoO2、およびFe/FeOのシステムにおける高いエネルギー密度比を示す。図7はさらに、Ti/TiO2、Cr/Cr2O3、Fe/FeO、Mn/Mn2O3、およびFe/FeOのシステムにおける目的の温度範囲内の高い熱力学的電気効率を示す。図8はさらに、低いほど費用が安いことを示す。費用に優れている候補は、W/WO3、Fe/FeO、MnMn2O3、Cu/Cu2O、Ti/TiO2およびCr/Cr2O3である。図9はさらに、高い最大電流密度が、W/WO3、Fe/FeO、Mn/Mn2O3、およびCo/CoOのシステムで達成可能であることを示す。図10Aおよび図10Bはさらに、W/WO3、Fe/FeO、およびMn/Mn2O3のシステムにおける高い最大蓄電能力を示す。このデータおよび他の考慮に基づき、好ましい金属の電極は好ましくは、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、MoおよびWのうちの少なくとも1つの単相金属材料、ならびにTi−TiO2、Cr−Cr2O3、Mn−Mn2O3、Fe−FeO、Co−CoO、Ni−NiO、Cu−Cu2O、Mo−MoO2およびW−WO3のうちの任意の二相材料を含み;ここで最も好ましい材料は、Fe/FeO、Mn/Mn2O3、W/WO3およびMo/MoO2のうちの少なくとも1つであり;ここでW/WO3がこの時点で主な候補である。広い観点から、金属の電極は、2つおよび3つ以上の金属で形成した合金の任意の組み合わせおよび2つおよび3つ以上の酸化物で形成した固溶体の任意の組み合わせのいずれかから構成される。さらに、第二の空気電極は、ある一定の温度で一定の分圧の酸素を保持する任意の固相であってもよく、オキシダントガス供給は、任意の酸素含有ガスとすることができる。
【0025】
金属酸化の発生−これは、酸化物スケールの形成を包含し、そして周知のとおり、放電過程の間の金属容積の膨張は、図11に示されるように2つの平行な化学的機構で理解され得る。機構−1は、金属酸化物スケール33を形成する、金属電極32の固体状態の電気化学的な酸化である。この反応は、yMe+xO2=MeyOx+2xe’として記述可能であり、好ましくは、電解質(O2-)34と金属/電気的に導電性の酸化物スケール(e’)との間の界面35での三相の境界で生じる。機構−1は、形成された導電性の酸化物スケール、すなわちe’がO2-およびe’の両方を伝導する能力を有する限り、継続する。機構−2は、金属の気相酸化を含み、ここで分子O2は三相の境界において細孔中で最初に生成され、金属酸化物のスケールおよびバルク金属に対して電子を発生する。電気化学的な反応は、O2-=1/2O2+2e’、これに続いて、気相反応yMe+x/2O2=MeyOxと表現可能である。この酸化プロセスの継続は、形成された酸化物のスケールの電気的特性および微細構造の両方に依存する。混合O2-およびe’の導体および多孔性構造は、より高速の気相酸化のための2つの好ましい要因である。2つの同時の機構によって最終的には、電極上で金属粒子の表面上で酸化物スケール33の完全な被覆が生じる。両方の場合に関して、電流は、酸化物のスケールおよび金属粒子を通じて収集されなければならない。従って、形成された酸化物のスケールの電気的特性は、金属電極が十分機能するために極めて重要である。形成された酸化物が、電気の導体として劣る場合、酸素の流動または電流は急速に停止する。
【0026】
図11の電解質の界面に示される混合導電相が、金属電極のバルク中に伸ばされてもよい。図12は、このような配置の模式図を示す。反応表面積は、かなり高められて、より高速の酸化反応速度を生じる。さらに、図12の混合導体相38はまた、電流収集のための追加の電子経路を提供し得る。混合導電性活性化層が無い場合は、機構−1のみが普通である。このような状況では、酸化の反応速度は、形成された酸化物のスケールの電気的な特性によって完全に支配され、全体的な酸化の反応速度は一般にそれより遅い。従って、金属電極および電解質の界面39に位置する活性化の層は、酸化物−イオンバッテリーセルを十分に機能させるために必要である。金属電極は40として、スケールは41として示される。しかし、放電中の金属電極に関連する主な問題の1つは、その金属が酸化するにつれて容積が膨張することである。一般には、容積の膨張は、酸化物中の酸素分子の数によって2倍から3倍である。このような容積の変化は、下地層から離れた金属電極の潜在的な破砕を生じ、最終的には、金属電極の剥離の可能性をもたらす。破砕の問題を排除するかまたは少なくとも軽減する方法は、重要な技術上の課題となる。
【0027】
破砕の問題を解決するための有効な技術的アプローチの1つは、電極の延長として「骨格」を確立することであり、ここでこの骨格は、O2-およびe’の両方を伝導し、かつ充電過程および放電過程の両方で安定である材料の骨格である。候補材料の1つは、低い分圧の酸素で混合導体であることが公知のCeO2ベースの酸化物−イオン導体である。別の良好な候補は、電解質材料および有用な金属の混合物であって、ここで両方の相が酸化還元サイクルの際、真に容量的に安定である。図13は、金属電極43が混合導電性材料の骨格44内に部分的に含まれる方法を示す。金属酸化物のスケールを45として示す。骨格構造の混合導体の機能は2倍である。第一に、この構造は、金属−金属酸化物粒子の容積膨張を制御するために、かつ導電性通路を中断せずに保持するのに極めて有効である。第二に、機構−1および機構−2の酸化過程が生じるための反応性部位(領域)は、有意に増大され、かなり速い酸化の反応速度をもたらし、従って蓄電能力が高い。電流46は、混合導電性骨格構造および金属/金属酸化物相の両方を介して収集され、これが低いオーム抵抗をもたらす。
【0028】
酸化関連の破砕を解決する別の方法は、金属電極から離れて別にセットされた電流コレクタを用いることである。図14は、このような概念の配置を示す。金属酸化は、気相を介してのみ生じ、固体状態の電気化学的な経路を介するのではない。電解質の界面および界面の混合導体から発生したガス状のO2分子は、放電過程の間、逆もまた同様に充電過程の間も金属スポンジを酸化する。ここで、骨格材料は、48として、金属電極は49として、スケールは50として、電流路は51として示す。電流は、骨格材料48を通してのみ収集される。充電/放電サイクル間の金属および金属酸化物の容積変化は、骨格構造の細孔で生じる。
【0029】
酸化関連の破砕を解決する別の方法は、金属電極中の微小構造の濃度にグレーディングを用いることである。図15は、この概念の配置を模式的に示す。電解質54に近い界面の領域53で、酸化物電解質相の濃度は、70容積%より高く95容積%までであり、それより上では、この酸化物相は、位置55で示すように、金属相によって徐々に希釈され、ここでは電解質は、25容積%〜70容積%になる。全体の構造は、金属電極の外面で全ての金属相で終わる。このような構造であれば、酸化によるストレスは、機能的な層全体にわたって軽減される。
【0030】
微細な骨格を形成し、かつ金属電極粒子を沈着させるために利用可能な技術は、上記の概念を実現するのに重要である。それらの1つは、例えば、十分接着された微細構造の混合導電性骨格を形成するためのプラズマスプレー法を用いることであって、この方法では、金属電極粒子などの微細な金属構成要素のマトリクスが、湿式化学法によって浸潤され得る。マトリクス中の0.01〜1マイクロメートルのナノサイズの大きい表面積を有する金属粒子は、金属電極の反応性を有意に増大する。従って、この骨格は、微細な金属構成要素/粒子を含む。
【0031】
本発明のセルの他の構成要素は、図2を振り返れば、空気電極およびO2-(酸素イオン)導体/電解質を含む。空気電極17は、約10マイクロメートル〜1000マイクロメートル厚さの複合酸化物であって、LaMnO3、CaMnO3、LaNiO3、LaCoO3、LaCrO3(希土類の導電性混合酸化物、および/またはCo、Ni、Cu、Fe、Cr、Mnの酸化物およびそれらの組み合わせでドープされた)などの、ペロブスカイトファミリーのドープおよび非ドープの酸化物または酸化物の混合物を含んでもよい。
【0032】
電解質18は、酸素イオンを移動し、一般には、約20マイクロメートル〜100マイクロメートル厚さの固体イットリア安定化ジルコニアの濃密な、気密層である。
【0033】
ここで、図16および図17に示されるとおり、統合した酸化物−イオンバッテリーを提供する、セルのバンクによって得られる多くの利点が存在する:
1)セルバンクおよびモジュールシステムは、かなり簡易化され得る。ガス燃料は用いられないので、SOFCの関連のサブシステム、例えば、改質装置、脱硫器および減損燃料再循環ループは省くことが可能で、結果として、かなりの費用減少が得られる。さらに、SOFC中で遭遇される減損燃料および汚染空気の一般的燃焼はもはや存在しない。従って、このシステムの信頼性も、かなり改善される。
2)二倍充電した酸化物−イオンは、既存の電気的蓄電デバイスのうちでも最高の理論的エネルギー密度を可能にする。
3)酸化物−イオンバッテリー中のほとんどの金属−金属酸化物システムは、リチウム−イオンバッテリーで用いられる材料よりも優れた能力を有する。
4)全てのセルおよびモジュールの構成要素は、固体状態にあり、これによって、バッテリーシステムが必要とするメンテナンスは最小限である。
5)上昇した動作温度によって熱的に活性化される、より高速の充電および放電の速度が得られる。
6)高温での可逆的な酸化還元反応によって、各々の蓄電サイクル間の寿命の長さおよび最小限のエネルギー損失が保証される。
【0034】
セルバンクおよびモジュールレベルで、図16は、セラミックインターコネクション62を介して直列で接続された、好ましくは管状の、多孔性空気電極61によって支持される、基本的な反復性の2つの酸化物−イオンバッテリーセルユニット60を模式的に示す。空気電極管は、ワンススルーであり、すなわち、末端のキャップがない。電極は63として、薄膜電解質は64として、そして不活性ガス入力および出力はそれぞれ65および66として示す。このデザインでは、空気電極管が一端閉鎖方式である場合に用いられるような高価な空気供給管の使用が省かれる。さらに、図17は、多孔性金属基体、好ましくは管71に基づく、基本的な反復性の2つの酸化物−イオンバッテリーセルユニット70を模式的に示す。2つのセル間の電気的な接続は、大気温度で別のセルの金属基体内で1つのセルの金属電極を接続することによって達成される。金属基体の使用によって、金属電極区画の容易な包囲が可能になる。従来の溶着およびろう付けの技術が、バッテリーセルの外側チャンバを密閉するために容易に適用され得る。
【0035】
本発明の酸化物−イオンバッテリーはまた、平坦な幾何形状のモジュール80上に構築されてもよく、ここで図18Aは、このようなデザインの断面図を示す。管状の幾何形状のものと同じく、燃料も燃料システムも必要としない。バッテリーセルの基体は、空気電極カソード81、金属電極82、電解質83、および中央のオキシダント/空気のチャネル85を備えるフェライト系ステンレス鋼ベースの金属のインターコネクト84である。図17では、空気電極は72として、金属の電極は73として、電解質は、不活性ガスの入力出力をそれぞれ75および76として備える薄膜(フィルム)74として、ならびに濃密金属部分は、78として示される。図16および図17の両方で、不活性ガスの閉鎖チャンバは77および77’として示される。
【0036】
図18Bでは、デルタ型のDELTA/三角形の超高密度セル90が示される。その「三角形の構成」は、平坦なベース92、中央の空気通路91、任意のセラミック空気電極支持体93、固体電解質94、インターコネクター95、任意のニッケルまたは他のメッキ96および電極97を有する図18Bに示されるとおり、Δデルタのジグザグまたは波型の形状、および中空の内側91を、オキシダントのために有するセルとして定義される。
【0037】
図2および図3を振り返って、繰り返せば;充電過程は、放電過程の逆であり、すなわち、電解質内の酸化物−イオンが、電場のもとで、金属電極から空気電極に追いやられる。行われる電気化学的な反応は、以下で表される:
金属電極で:MeyOx+2xe’=yMe+xO2-
空気電極で:xO2-=x/2O2+2xe’
全体的反応MeyOx=x/2O2+yMe
熱力学的に言えば、充電過程および放電過程は、可逆性でなければならない。しかし、現実の反応速度が、酸化物−イオンバッテリーの蓄電容量およびサイクルの速度を厳密に決定してしまう。充電過程に関しては、金属酸化物分解の反応速度は、特に電場のもとでは不足している。充電過程および放電過程は、不可逆的であり、これによって充電速度が遅くなり、各蓄電周期でのエネルギー損失が高くなり、従って、電気効率が低くなる。図19は、化学的な充電の概念による、酸化物−イオンバッテリーモジュール110の模式図を示す。このような構成では、酸化物−イオンバッテリーは、まず放電されて、金属の第一の電極111において金属を酸化させる。酸化物−イオンバッテリーが完全に放電された後、次に、ガス115、例えば、5%のH2−N2混合物がこのモジュールチャンバへフラッシュされる。全ての金属酸化物類が金属中に移動された後、バッテリーは、再度、次の放電のために準備される。化学的な充電速度は、従来の電気的充電よりもかなり速いと期待される。ここで、空気の内部電極は112として、薄膜電解質は113として示す。電極および電解質を支持する、多孔性の金属の管114が示される。濃密管部分は116として示される。
【0038】
ここで図20を参照すると、セルのバンクを形成する、セルのグループの全体的な模式図を、少なくとも2つのセルで、詳細に示している。
【0039】
このシステムでは、複数の酸化物−イオンセルを、有用な電力バンクに組み込む。図20は、有用な電力バンクへ酸化物−イオンのセルを組み込むという機械的な概念を示す。セル180は、管板182に対して機械的にかつ電気的に接続される。この接続は、シートへのセルのろう付けによって行うことができる。
【0040】
金属支持セル180は、このセルの一方の側で利用可能な空気電極の接点、およびこのセルの反対の側で利用可能な金属電極の接点を有するように製造される。セルの両側に電極があれば、セルの間の電気的接続が簡易になる。1つの管板は全てのセルの空気電極を一緒に接続するが、反対側の管板は、全ての金属の電極を一緒に接続する。これらの管板は、それらの間で隔離ゾーンを創出する。これは、全てのバッテリーセルを電気的に平行に置く。この管板は、ガスケットを通じてお互いから電気的に隔離されなければならない。各々の管板は、バッテリー電流について電気的導体となる。
【0041】
空気は、酸素を提供する酸化物−イオンセルの中心を通って流れて、放電モードでイオン化される。空気は、セルの各々に対して等しい空気の流れを提供する空気プレナム184を通じてセルに入る。空気は、酸素を電気化学的反応に提供するだけでなく、セルを冷却もする。なぜなら放電の化学反応は、セルから除かれるべき熱を放出するからである。使用済み汚染空気がセルを離れた後、これは排気プレナム186中に収集される。排気プレナムはまた、各々のセルが等しい量の排気流を生じることを保証する。熱い排気は、このプレナムで収集され、次いで混合バルブに配管される。使用済みの熱い排出空気は、入ってくる新鮮な空気と混合されて、それが空気入口プレナム184に入る前に混合ガスを予熱する。空気は、セルを横切る軸方向の温度勾配を最小化するために予熱される必要がある。予熱温度は、2つのバルブ188および再循環ブロワ190によって制御される、入ってくる空気と混合された排気流の量によって制御される。この空気電極排気の再循環によって、外部の空気/排気の復熱装置のニーズが回避される。
【0042】
酸素を含まないガスを、隔離の容積/ゾーンに、従って、酸化物イオンのセルの金属電極に提供して、この電極の非電気化学的な酸化を防ぐことが必要である。窒素ガスが酸素ゲッターとともに、酸素のない環境を得るために用いられ得る。窒素(N2)プレナム192は、この環境を提供する。このプレナムは、最初に窒素が充填される。このプレナムは、漏れなく気密でなければならないが、わずかの漏れが存在する場合、補充用の構成窒素が必要である場合もある。本バッテリーバンクの概念では、金属の電極が、金属の電極の非電気化学的な酸化を防ぐために、酸素の無い環境で保持されなければならないことを必要とする。この酸素なしの環境では、別々のプレナムがバッテリーバンクに構築されること、およびこのプレナムができる限り漏れなく気密であることが必要である。さらに、このプレナムは、バッテリーセルの金属の電極を保護するために、酸素なしのガスを充填される必要がある場合がある。このプレナムおよびガスは、バッテリーシステムのデザインを複雑にして、費用を増す。プレナムおよび酸素なしのガスのニーズを省くための1方法は、バッテリーバンクの内側の空気が金属電極を酸化することを防ぐガスの気密層で金属の電極を被覆することであろう。従って、電極層を通って移動する酸化物のみが、金属電極の酸化に関与する。金属の電極に加えることができるガス気密薄層の1つのこのような例は、酸化スカンジウムドープのジルコニアであろう。これは、バッテリーセル電極に用いるものと同じ材料である。この層は、プラズマスプレー法で塗布できる。1セットの電気的に平行な酸化物イオンのセルは、バンクに集められる。各々のバンク中のセルの数は、バッテリーシステムに必要な電流によって決定される。次いで、セルのバンクは、より高いバッテリー電圧を生じるために電気的に直列に接続される。次いで、セルの各々のバンクが前のバンクの片側にのみ電気的に接続される。他の末端は、一連の電気的な配置を確実にするために、前のバンクから電気的に隔てられる。
【0043】
図21は、セルのバンクの概念を示しており、ここで各々のバンクは、バッテリー動作電圧を生じるために電気的に直列に接続されている。このバンクの各々の末端は、一方の側で次のバンクに電気的に接続される。管板は、バンクの間で電流を受け渡す電気的導体として働く。バンクの反対側の末端は、前のバンクから電気的に隔離される。3つのバンク210を例として示しており、ここでは電子流e’が進路によって示されている。
【0044】
別の新規な概念は、組み込み型の蓄熱の使用である。放電モードでは、酸化物イオンのセル反応は、発熱性であって、熱を放出する。充電モードでは、セルの反応は、吸熱であって、熱を必要とする。N2プレナム192は、蓄熱媒体で充填され、この媒体は、熱を吸収し得るが、セルは放電しており、充電モードの間にセルに対してこの熱を戻す。この蓄熱概念は、バッテリーシステムの全体的な効率を大きく改善する。
【0045】
本発明のセルのバンクの追加の利点としては以下が挙げられる:
1)重要なことに、ガス燃料を用いない。
2)大量生産されたシェルアンドチューブ型の熱交換器と同様の、高密度、低コストの酸化物イオンバッテリーモジュール構成構築技術である。
3)このバッテリーモジュールは、より高電圧を生じるための電気的に直列で接続される、平行の電流路バッテリーバンクからなる。
4)バッテリーセルと管板との間の低コストろう付けシール;このシールによって、機械的接続、電気的接続および空気環境と酸素なしの環境との間のシールが得られる。
5)管板は、電流を集め、セルの重さを支持し、かつセルのろう付けを容易にする。
6)非電気化学的な酸化を防ぐために必要である場合、バッテリーセルの金属電極側で不活性な環境を可能にする。
7)排出空気をリサイクルし、新鮮な流入する空気を予熱する。
8)充電と放電のサイクル間で蓄熱する。
9)ケースの材料は、熱膨張と適合するためにバッテリーの管の基体と同じである。
10)電流は管の基体を通過し;収率を増大するバッテリーセルの結束を省き、高価な工程段階を省き、従って、費用を削減する。
11)高価な工程段階を省き、収率を改善し、従って費用を削減する、バッテリーセル上に堆積されるインターコネクション層のニーズを省く。
12)管板電極間の隔離材料が低コスト。
13)550℃〜650℃の作動温度で、モジュール構築のための低コストのステンレス鋼材料の使用が可能になる。
14)ワンススルーの空気デザイン;空気の供給管を省き、モジュールのデザインを簡易化し、モジュールのパーツの数を少なくする。
15)必要に応じて、機械的な熱交換の過程を通じて入ってくる空気を直接加熱するための構成を用いることが可能。
【0046】
図22は、最大約500までのセルのバンクを収容するために用いるモジュール220を示す。一実施形態では、モジュールの寸法は、高さ3.4m×幅3.7m×深さ1.9mである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
電気エネルギー蓄電のニーズは大きい。必要な蓄電の大きさは、スマートカードデバイスのミリワットから、大型の負荷平準化サブステーションの数メガワットまでにおよぶ。本明細書に記載される再充電可能な酸化物イオンバッテリーは、種々の電子的構成要素、運輸、負荷レベル、電力特性ならびに太陽光発電および風力発電などの再生可能資源の商業化のための電力蓄電の要求に応え得る。これらの再生可能なエネルギー源は、連続的に変動する傾向であるにもかかわらず、社会的には、電力の一定で信頼できる供給を必要とする。解決法は、網状規模の、効率的かつ良心的な酸化物−イオンバッテリーの電気エネルギー蓄電ネットワークの開発であって、ここではエネルギーは、局地で蓄電されて、需要と供給の予測で分配され得る。このようなシステムは、電気的な有用性のビジネスに完全な革命をもたらすであろう。
【0048】
本発明の特定の実施形態を詳細に記載してきたが、当業者には、これらの詳細に対する種々の改変および変更が、開示の全体的な教示に照らして展開可能であるということが理解される。従って、開示される特定の実施形態は、例示でしかなく、本発明の範囲を限定しないことを意味し、本発明の範囲は、特許請求の範囲の全範囲およびその任意のかつ全ての等価物であるものとする。
【符号の説明】
【0049】
16 A含有ガス
17 A−ガス電極
18 A導電性導体
19 金属の電極
20 負荷
21 DC供給
24 空気(オキシダント)
25 ガス
26 空気電極
27 電解質
28 金属電極
29 セラミックインターコネクション
30 多孔性金属基体
【技術分野】
【0001】
本出願は、酸化物−イオンバッテリーのセルバンクおよびモジュール構成を備える蓄電デバイス(ELECTRICAL STORAGE DEVICE INCLUDING OXIDE−ION BATTERY CELL BANK AND MODULE CONFIGURATIONS)という名称の2009年8月10日出願の米国仮特許出願第61/232,533号に対して、合衆国法典35巻(米国特許法)第119条(e)項により優先権を主張する。
【0002】
アニオン導電性電解質を備え、電解質のいずれかの側の上で電極間のイオン移動がある、蓄電デバイス。本発明はまた、2つの電極間で酸化物−イオンの移動がある、電解質酸化物−イオン導体を用いて電気エネルギーを蓄電するためのモジュール、セルのバンクおよびセルの電気化学的構成に関する。
【背景技術】
【0003】
高温の固体酸化物電解質燃料電池は、当該分野で周知であり、典型的には約500℃を超える温度で、化学的エネルギーを直流の電気エネルギーへ変換する。この温度は、固体の電解質を十分に導電性にするために必要である。安定化されたジルコニアが主な電解質である。このような燃料電池は、例えば、特許文献1(Isenberg)によって教示されている。固体酸化物燃料電池(「SOFC」)の一般的な作動原理および一般的な反応は、自明であり、先行技術として図1に示されている。空気および必要なガス燃料、例えば天然ガスは、共に、約800℃〜約1000℃で電気を生じるためだけに利用されている。この種のSOFCは、金属/セラミックの燃料電極10、ガス状に再形成された天然ガス燃料およびセラミックの高密度固体電解質11および多孔性セラミック空気電極12を利用する。セラミックスまたは金属セラミックのみが、これらの高温に耐え得るので、金属は用いられない。燃料13は、Fとして示しており、オキシダントまたは空気Aは14で示す。
【0004】
エヌ・キュー・ミン(N.Q.Minh)は、非特許文献1において、種々の燃料電池のデザイン、例としては、管状、三角形および他の構成、ならびに用いられる材料および伴う電気化学的反応を詳細に記載している。例えば、その論文は、セグメント化された連続セル(cell−in−series(バンド付きで(banded)かつ差し込み式(bell−and−spigot))、モノリシック(同時流および直交流)、および平板デザインを具体的に詳細に記載している。サーメットの燃料電極(アノード)材料、例えば、ニッケルまたはコバルト/イットリア安定化ジルコニアもまた検討されており、それらの熱膨張の係数の問題も同様である。
【0005】
エネルギーの発生に加えて、バッテリーはまた、エネルギーを蓄えもする。電力の蓄電は、電気の節約の効果的な増強にとって、および多くの再生可能なエネルギー技術の実施にとって重要である。過去20年間にわたって、電気エネルギーの蓄電の需要は、携帯、運輸、ならびに負荷平準化および中央バックアップ適用の分野でかなり大きくなった。現在の電気化学的なエネルギー蓄電システムは、重要な新しい市場に浸透するには単にコストがかさみ過ぎで、依然としてより高いパーフォーマンスが必要とされており、環境的に受入れ可能なものが望まれる。電力蓄電の科学および技術の大きな変化によって、大きい市場の拡大のために必要な、より低コストかつより高寿命で、より高くかつ速いエネルギー貯蔵を可能にする強い要請がある。これらの変化のほとんどは、カチオンおよび/またはアニオンとより急速かつ可逆的に反応する、より大きい酸化還元能力を示す、新規な材料および/または革新的な概念を必要とする。
【0006】
バッテリーは、電力を蓄電する最も一般的な形態であり、これは以下の範囲にわたる:標準通常型鉛−酸セル、Brownによって特許文献2に教示される原子力潜水艦の非標準型鉄−銀バッテリー、ならびにVenkatesan et.alの特許文献3や、Kitayamaの特許文献4、およびYoung et.alの特許文献5によって教示されるニッケル−金属ハイブリッド(NiMH)バッテリー。また、特許文献6(Buzzelli)、Isenbergの特許文献や7、特許文献8,特許文献9および特許文献10(それぞれ、Jang,BurchardtおよびChua et.al)において教示される金属−空気セル、ならびに特許文献11および特許文献12(それぞれ、Kashino et.al、およびOkuyama et.al)において教示される空気バッテリーも公知である。リチウム−イオンバッテリーは、Ohataの特許文献13に教示される。これらの後者の金属−空気、ニッケル−金属ハイブリッドおよびリチウム−イオンのバッテリーセルは、液体電解質のシステムを必要とする。
【0007】
バッテリーのサイズは、時計に用いられるボタン型のセルから、メガワットの負荷レベルの適用にまでおよぶ。それらは一般には、効率的な蓄電デバイスであって、出力エネルギーは典型的には、最大の電力密度を除けば、入力エネルギーの90%を超える。再充電可能なバッテリーは、長年にわたって、鉛−酸からニッケル−カドミウムおよびニッケル−金属ハイブリッド(NiMH)を経てリチウム−イオンまで進化してきた。NiMHバッテリーは、コンピューターおよび携帯電話などの電気的デバイスの最初の主力製品であったが、それらは、リチウム−イオンバッテリーの高い蓄電能力の理由で、リチウム−イオンのバッテリーによって市場がほぼ完全に置き換えられた。今日では、NiMHの技術は、ハイブリッドの電気自動車で用いられる主なバッテリーであるが、リチウムバッテリーの安全性および寿命が改善され得るならば、よりハイパワーのエネルギーおよびより低コストのリチウムバッテリーによって、置き換えられると考えられる。進歩したバッテリーの中でも、リチウム−イオンは、ほとんどの再充電可能な電気的デバイスの有力な電源である。
【0008】
大容量のエネルギーを、必要に応じて、迅速かつ可逆的に容易に放電および充電できる、劇的に新しい電気エネルギーの蓄電デバイスが必要とされている。また、簡易であって、かつ大きなメンテナンスなしに長年にわたって作動できるデバイスも必要とされている。炭素質燃料ガス、例えば、天然ガス燃料、炭化水素燃料、またはその改質されたH2燃料のようなもので作動する必要が無いデバイスも必要とされる。このデバイスは以下を有する必要がある:
・ 簡易なセルおよびモジュールの構造;
・ 一実施形態では、放電および充電の界面反応を容易に達成するための約400℃〜500℃を超える作動温度;
・ 高い理論的なエネルギー密度;
・ 全て固体状態の構成要素;
・ 低いシステムの費用;ならびに
・ 低電力損失の電流収集。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,395,468号明細書
【特許文献2】米国特許第4,078,125号明細書
【特許文献3】米国特許第5,856,047号明細書
【特許文献4】米国特許第6,399,247号(B1)明細書
【特許文献5】米国特許第7,261,970号明細書
【特許文献6】米国特許第3,977,901号明細書
【特許文献7】米国特許第4,054,729号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2006/0063051号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2007/0077491号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2007/0259234号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2003/0143457号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2004/0241537号明細書
【特許文献13】米国特許第7,396,612号(B2)明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】エヌ・キュー・ミン(N.Q.Minh),セラミック・フューエル・セルズ(Ceramic Fuel Cells),ジャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・ソアイアティー(Journal of American Ceramic Society),1993年,76巻、3号,563−588頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の主な目的は、上記のニーズの適応する、バッテリーセル、セルバンクおよびモジュール構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
アニオン導電性電解質および2つの電極を備える、蓄電デバイスであって、電解質のいずれかの側の上で電極間のイオン移動があり、一方の電極が、イオンのリザーバであり、かつイオンが2つの電極間で前後に移動され得る、蓄電デバイスを提供することによって、上記のニーズは提供され、かつ目的は達成される。このイオンとしてはO2-、CO32-、S2-、PO43-、I-、F-およびCl-、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される、負に荷電されたイオンが挙げられる。ここで、ガス燃料は作動のために必要ではない。基本的な動作は、後に述べる図2Aおよび図2Bに示される。
【0013】
充電モードおよび放電モードで作動して、上記金属の電極に電気エネルギーを蓄電し得る、酸化物−イオン電解質導体と組み合わせた金属の電極を用いるセルのバンクであって、ここで、前記放電モードが:
yMe+x/2O2=MeyOx
であり、かつ前記充電モードが:
MeyOx=x/2O2+yMeであり、ここでx/y=0.5〜3.0であり、かつMe=金属である、セルのバンクを提供することによって、上記のニーズは満たされ、かつ上記目的は達成される。
【0014】
本発明はまた、複数の電気接続された中実または中空の細長い管状のセルを含むセルのバンクであって、各々のセルは、充電モードおよび放電モードで作動可能であり、各々のセルは、単相または二相の金属の材料を有し、これらの材料は、400℃を超える融点を有する第一の電極として使用され、かつ電解質へ空気を移動することができる第二の電極材料として使用されるべく酸化されることが可能であり、さらに酸化物−イオンを移動し得るそれらの間の電解質を備え、ここで前記金属の電極は、酸素のリザーバであり、ここで前記放電モードは:
yMe+x/2O2=MeyOxであり、
前記充電モードは:
MeyOx=x/2O2+yMeであり、ここでx/y=0.5〜3.0であり、Me=金属であり、さらに、前記セルのバンクは電気エネルギーを蓄電し、かつ第二の電極材料に接触するための空気の供給源を有する、セルのバンクにある。好ましくは、複数のセルのバンクは最終的にモジュールを提供するために接続され得る。好ましくは、上記金属の第一の電極は、500℃を超える融点を有する。ガス燃料は用いられないことに注目することが重要である。さらに、図18Aに示されるような平面的な幾何形状を用いてもよい。これは、本明細書に記載される全てのセルのバンクに適用可能である。
【0015】
本明細書において用いる「リザーバ」という用語は、アニオンに関連する種が、電極中で捕獲/保持されることができ、かつ遊離可能であるということを意味するものとして定義される。「中空の細長い管状のセル」という用語は、本明細書において後で定義する。酸化物イオンは、O2-である。「固体セル」という用語は、管状、三角形および四角、三角などの断面などの任意の他の幾何形状の構成を含む。
【0016】
本発明はさらに、複数の電気的にインターコネクションされたセルのバンクを含む蓄電モジュールにあり、各々のセルのバンクは、複数の電気的に接続された中空の細長い管状のセルを備え、各々のセルは、充電モードおよび放電モードで作動でき、各々のセルは、単相または二相の金属材料であって、この材料が500℃を超える融点を有する第一の電極としての使用のために酸化され得る金属材料と、空気を電解質に移動し得る第二の電極材料と、それらの間の電解質であって、酸素イオンを移動し得る電解質とを備え、ここで前記金属の第一の電極は酸素のリザーバであり、かつ前記放電モードは:
yMe+x/2O2=MeyOxであり、かつ前記充電モードは:
MeyOx=x/2O2+yMe、x/y=0.5〜3.0であり、ここでMe=金属であり、
かつここで前記セルのバンクは電気エネルギーを蓄電し、かつ第二の電極材料に接触するための空気の供給源を有する。この蓄電モジュールは、550℃〜650℃という中温/高温で効果的に作動し得る。
本発明をさらによく理解するために、図面で示される、本発明の好ましい例示的な実施形態を参照することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】先行技術のSOFCの作動原理を図示する。
【図2A】ガス燃料を使用せずに、A含有ガスを利用しする、アニオンA導体に基づく本発明のエネルギー蓄電デバイスの最も広義の例を図示する。
【図2B】ガス燃料を使用せずに、空気を利用する、本発明の電気エネルギー蓄電デバイスの一実施形態の作動原理を図示する。
【図3】本発明の電気エネルギー蓄電デバイスの両方の電極の反応の例を図示する。
【図4A】固体内部金属電極基体を備える、本発明で用いられ得る、種々の可能な管状セル構成の1つを図示する。
【図4B】固体内部金属電極基体を備える、本発明で用いられ得る、種々の可能な管状セル構成の1つを図示する。
【図4C】固体内部金属電極基体を備える、本発明で用いられ得る、種々の可能な管状セル構成の1つを図示する。
【図5】種々の金属および酸化物材料に関する、EMF(対空気、電圧)対T(K)のグラフである。
【図6】種々の金属および酸化物材料に関する、理論的エネルギー密度対T(K)のグラフである。
【図7】種々の金属および酸化物材料に関する、熱力学的電気効率対T(K)のグラフである。
【図8】種々の金属および酸化物材料に関する、費用($/kWeh)対T(K)のグラフである。
【図9】種々の金属材料に関する、最大電流密度対時間のグラフである。
【図10A】850cm2というセル活性面積での、最大アンペア時対種々の金属材料のグラフである。
【図10B】1cm2あたりの最大アンペア時対種々の金属材料のグラフである。
【図11】放電過程の間に金属電極において生じる金属酸化物の2つの平行な機構の模式図であって、ここでは混合導電相は、界面で考慮されるだけである。
【図12】放電過程の間に金属電極で生じる金属酸化物の2つの平行な機構の模式図であって、ここでは混合導電相は、バルクで考慮される。
【図13】容積の安定な混合導電材料の電解質界面骨格に含まれる金属電極粒子の模式図である。
【図14】気相O2によって酸化されている金属スポンジを有する隔てられた金属電極および電流コレクタの模式図である。
【図15】電解質を保護するため、金属酸化の間、容積膨張問題を制御/軽減するための段階的な金属電極の模式図である。
【図16】多孔性空気電極基体に基づく管状モジュール中の基本的な反復性酸化物−イオンバッテリーセルユニットの模式的断面図である。
【図17】多孔性金属基体に基づく管状モジュール中の基本的な反復性酸化物バッテリーセルユニットを示す模式的断面図である。
【図18A】平面モジュールでの、基本的な反復性酸化物−イオンのバッテリーセルユニットの模式的断面図である。
【図18B】デルタモジュールまたは三角形モジュールでの、基本的な反復性酸化物−イオンバッテリーセルユニットの模式的断面図である。
【図19】化学的充電を用いる、酸化物−イオンバッテリーモジュールの基本的な反復性ユニットの模式図である。
【図20】本発明を最もよく示しており、平行なセルおよび直列のセルのバンクを有する各々のセルが管状シート中にろう付けされたセルのバンクの略図である。
【図21】電気的に直列に接続されたセルのバンクの三次元図で一実施形態を図示する。
【図22】セルのモジュールの一実施形態の三次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の電気的な蓄電デバイスの最も広義の作動原理を図2Aに示しており、ここでは、燃料を含まないガス16が、A−ガス電極17に接触し、かつA導電性導体/電解質18は、A−ガス電極および金属の電極19に接して配置され、ここには電気回路、負荷20およびDC供給21がある。さらに、アニオン導電性電解質があり、ここでは、電極のいずれかの側で電極間のイオンの移動があり、このようなイオンは、O2-、CO2-、S2-、PO43-、I-、F-およびCl-のうちの少なくとも1つから選択される。本発明の酸化物−イオンバッテリー構成の一実施形態の作動原理を、図2Bに模式的に示す。放電モードでは、酸化物−イオンであるアニオンは、酸素化学電位の勾配の駆動力のもとで、酸素側(この場合空気側)の高い分圧から酸素側(金属−金属酸化物電極)の低い分圧まで移動する。充電モードでは、酸化物−イオンは、電場の駆動力のもとで、酸素側の低い分圧から酸素側の高い分圧まで移動するように強制される。ここで、空気16’は空気電極17’に接触する。酸素イオン導体電解質は、空気電極と金属の(金属−金属酸化物)電極19’との間にある。負荷は、20’として、D.C.電力供給は21’として示される。充電および放電の経過の間に生じる対応する電極の反応を図3に図示する。放電モードのもとでは、金属は、発熱をともなって金属酸化物に酸化されるが、充電モードのもとでは、金属酸化物は、吸熱を伴って金属に還元される。前記放電過程は、Me=金属として:
yMe+x/2O2=MeyOxであり、
かつ前記充電過程は:
MeyOx=x/2O2+yMeであり、
ここでx/yは好ましくは0.5〜3.0である。ここで、空気電極は17”として、電解質は18”として、金属電極は19”として示される。
【0019】
管状のセル構成が好ましく、簡便のために全体を通して図示されている。しかし、これは決して限定的に解釈されるべきではない。なぜなら他の「中空、細長い管状のセル」構造としては、Isenbergによる米国特許第4,728,584号の波型のデザイン、および米国特許出願公開第2008/0003478号(A1)(Greiner et.al)に記載された三角形、四角形、楕円形、階段状三角形および蛇行構造が包含され、全てが本明細書における「中空の細長い管状の」セルと定義される。本発明において使用される種々の中空の細長い管状のセルデザインは、図4A、図4Bおよび図4Cに示される。また、三角形の「デルタ型のセル」(図18B)が有用である場合もある。図4A、図4Bおよび図4Cでは、空気またはオキシダントは24であり、精製された不活性な(燃料でない)ガスは25であり、空気電極は26であり、電解質は27であり、金属電極は28であり、セラミックインターコネクションは29であり、かつ金属「基体」は30である。本発明の複雑性のせいで、図にはある程度前後で見直しがあろう。
【0020】
セル構成は、管状の様式を図4Aに示すが、燃料ガスは用いず、空気のみである。全部で4つの機能的な層がある:内部多孔性金属支持基体30、空気電極26、電解質27および外側金属電極28。多孔性金属基体の管は、「ワンススルー」である。オキシダントである空気が、この多孔性金属の管の内面に供給される。外側金属または金属の電極は、不活性ガスによって保護された閉鎖環境にとどまる。
【0021】
図4Aの多孔性金属基体30は、主にFe、CrおよびMnの金属ならびにTi、Nb、Zr、Ce、LaおよびYのようなわずかな添加物を含むフェライト系ステンレス鋼から構成される。空気電極層は、導電性の相LaMnO3ベースのペロブスカイトおよび酸化物−イオン導電相の酸化スカンジウムドープしたジルコニアの二相混合物からなる。電解質層は、酸化スカンジウムドープジルコニアの単相からなる。
【0022】
多孔性金属基体はまた、多孔性の空気電極によって置き換えられてもよい。空気電極26は、図4Bでは、CaドープしたLaMnO3を含んでもよい。この場合、CaドープしたLaCrO3などを含むセラミックのインターコネクションストリップも、細長い管状表面の上に必要である。図4Bは、この空気電極支持された酸化物−イオンバッテリー構成の断面図を示しており、また、燃料ガスは用いられていない。
【0023】
別のセル構成を、図4Cに模式的に示す。図4Cでは、燃料ガスは用いておらず、金属電極の管または中実ロッド28を、セルの外側に空気を有する支持基体の例として用いる。中実の中央金属電極28は、環状、四角形、不整形または任意の幾何学的形状であってもよく、従って、「中実セル(solid cell)」という用語は、本明細書において用いる場合、それらの任意の形状であってもよい。金属電極ロッドは濃密であっても多孔性であってもいずれでもよい。電解質および空気電極層は連続して、金属電極基体上に配置される。このデザインでは、保護用の不活性ガスはもはや不必要である。本発明のセルの最も重要な構成要素は、酸素のリザーバとして機能する金属電極28である。400℃を超える融点を有するという要件以外に、他の重要な基準は以下である:
・ 熱力学的EMF(起電力);
・ 理論的なエネルギー密度(メガジュール/材料1kg);
・ 熱力学的電気効率;
・ 費用($/kワット時eh)[e=電力;h=時間];
・ 最大電流密度(能力を決定する);および
・ 最大電荷貯蔵(アンペア時/cm2)。
【0024】
これらの考慮に基づき、金属電極は、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、Ce、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Ta、V、Mo、PdおよびWのうちの任意の単相金属材料、ならびにSc−Sc2O3、Y−Y2O3、La−La2O3、Ti−TiO2、Zr−ZrO2、Hf−HfO2、Ce−CeO2、Cr−Cr2O3、Mn−Mn2O3、Mn−Mn3O4、Mn−MnO、Fe−FeO、Fe−Fe3O4、Fe−Fe2O3、Co−CoO、Co−Co3O4、Co−Co2O3、Ni−NiO、Cu−Cu2O、Cu−CuO、Nb−NbO、Nb−NbO2、Nb−Nb2O5、Ta−Ta2O5、V−V2O5、V−VO2、V−V2O3、V−VO、Mo−MoO2、Mo−MoO3、Pd−PdOおよびW−WO3のうちの任意の二相材料から構成され得る。二相組成物では、上記金属対金属酸化物の比は、0:100〜100:0であり、さらに狭めれば、50:50〜100:0である。しかし、好ましい材料を決定するためには、上記の基準をさらに考慮し、候補を図5〜図10Aおよび図10Bに示しており、全ての図が、それぞれ自己説明的である。図5は、Ti/TiO2、Cr/Cr2O3、Mn/Mn2O3、Mo/MoO2、Fe/FeO、W/WO3のシステムにおける高いEMF値を示す。図6はさらに、Ti/Ti2O2、Cr/Cr2O3、Mn/Mn2O3、Mo/MoO2、およびFe/FeOのシステムにおける高いエネルギー密度比を示す。図7はさらに、Ti/TiO2、Cr/Cr2O3、Fe/FeO、Mn/Mn2O3、およびFe/FeOのシステムにおける目的の温度範囲内の高い熱力学的電気効率を示す。図8はさらに、低いほど費用が安いことを示す。費用に優れている候補は、W/WO3、Fe/FeO、MnMn2O3、Cu/Cu2O、Ti/TiO2およびCr/Cr2O3である。図9はさらに、高い最大電流密度が、W/WO3、Fe/FeO、Mn/Mn2O3、およびCo/CoOのシステムで達成可能であることを示す。図10Aおよび図10Bはさらに、W/WO3、Fe/FeO、およびMn/Mn2O3のシステムにおける高い最大蓄電能力を示す。このデータおよび他の考慮に基づき、好ましい金属の電極は好ましくは、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、MoおよびWのうちの少なくとも1つの単相金属材料、ならびにTi−TiO2、Cr−Cr2O3、Mn−Mn2O3、Fe−FeO、Co−CoO、Ni−NiO、Cu−Cu2O、Mo−MoO2およびW−WO3のうちの任意の二相材料を含み;ここで最も好ましい材料は、Fe/FeO、Mn/Mn2O3、W/WO3およびMo/MoO2のうちの少なくとも1つであり;ここでW/WO3がこの時点で主な候補である。広い観点から、金属の電極は、2つおよび3つ以上の金属で形成した合金の任意の組み合わせおよび2つおよび3つ以上の酸化物で形成した固溶体の任意の組み合わせのいずれかから構成される。さらに、第二の空気電極は、ある一定の温度で一定の分圧の酸素を保持する任意の固相であってもよく、オキシダントガス供給は、任意の酸素含有ガスとすることができる。
【0025】
金属酸化の発生−これは、酸化物スケールの形成を包含し、そして周知のとおり、放電過程の間の金属容積の膨張は、図11に示されるように2つの平行な化学的機構で理解され得る。機構−1は、金属酸化物スケール33を形成する、金属電極32の固体状態の電気化学的な酸化である。この反応は、yMe+xO2=MeyOx+2xe’として記述可能であり、好ましくは、電解質(O2-)34と金属/電気的に導電性の酸化物スケール(e’)との間の界面35での三相の境界で生じる。機構−1は、形成された導電性の酸化物スケール、すなわちe’がO2-およびe’の両方を伝導する能力を有する限り、継続する。機構−2は、金属の気相酸化を含み、ここで分子O2は三相の境界において細孔中で最初に生成され、金属酸化物のスケールおよびバルク金属に対して電子を発生する。電気化学的な反応は、O2-=1/2O2+2e’、これに続いて、気相反応yMe+x/2O2=MeyOxと表現可能である。この酸化プロセスの継続は、形成された酸化物のスケールの電気的特性および微細構造の両方に依存する。混合O2-およびe’の導体および多孔性構造は、より高速の気相酸化のための2つの好ましい要因である。2つの同時の機構によって最終的には、電極上で金属粒子の表面上で酸化物スケール33の完全な被覆が生じる。両方の場合に関して、電流は、酸化物のスケールおよび金属粒子を通じて収集されなければならない。従って、形成された酸化物のスケールの電気的特性は、金属電極が十分機能するために極めて重要である。形成された酸化物が、電気の導体として劣る場合、酸素の流動または電流は急速に停止する。
【0026】
図11の電解質の界面に示される混合導電相が、金属電極のバルク中に伸ばされてもよい。図12は、このような配置の模式図を示す。反応表面積は、かなり高められて、より高速の酸化反応速度を生じる。さらに、図12の混合導体相38はまた、電流収集のための追加の電子経路を提供し得る。混合導電性活性化層が無い場合は、機構−1のみが普通である。このような状況では、酸化の反応速度は、形成された酸化物のスケールの電気的な特性によって完全に支配され、全体的な酸化の反応速度は一般にそれより遅い。従って、金属電極および電解質の界面39に位置する活性化の層は、酸化物−イオンバッテリーセルを十分に機能させるために必要である。金属電極は40として、スケールは41として示される。しかし、放電中の金属電極に関連する主な問題の1つは、その金属が酸化するにつれて容積が膨張することである。一般には、容積の膨張は、酸化物中の酸素分子の数によって2倍から3倍である。このような容積の変化は、下地層から離れた金属電極の潜在的な破砕を生じ、最終的には、金属電極の剥離の可能性をもたらす。破砕の問題を排除するかまたは少なくとも軽減する方法は、重要な技術上の課題となる。
【0027】
破砕の問題を解決するための有効な技術的アプローチの1つは、電極の延長として「骨格」を確立することであり、ここでこの骨格は、O2-およびe’の両方を伝導し、かつ充電過程および放電過程の両方で安定である材料の骨格である。候補材料の1つは、低い分圧の酸素で混合導体であることが公知のCeO2ベースの酸化物−イオン導体である。別の良好な候補は、電解質材料および有用な金属の混合物であって、ここで両方の相が酸化還元サイクルの際、真に容量的に安定である。図13は、金属電極43が混合導電性材料の骨格44内に部分的に含まれる方法を示す。金属酸化物のスケールを45として示す。骨格構造の混合導体の機能は2倍である。第一に、この構造は、金属−金属酸化物粒子の容積膨張を制御するために、かつ導電性通路を中断せずに保持するのに極めて有効である。第二に、機構−1および機構−2の酸化過程が生じるための反応性部位(領域)は、有意に増大され、かなり速い酸化の反応速度をもたらし、従って蓄電能力が高い。電流46は、混合導電性骨格構造および金属/金属酸化物相の両方を介して収集され、これが低いオーム抵抗をもたらす。
【0028】
酸化関連の破砕を解決する別の方法は、金属電極から離れて別にセットされた電流コレクタを用いることである。図14は、このような概念の配置を示す。金属酸化は、気相を介してのみ生じ、固体状態の電気化学的な経路を介するのではない。電解質の界面および界面の混合導体から発生したガス状のO2分子は、放電過程の間、逆もまた同様に充電過程の間も金属スポンジを酸化する。ここで、骨格材料は、48として、金属電極は49として、スケールは50として、電流路は51として示す。電流は、骨格材料48を通してのみ収集される。充電/放電サイクル間の金属および金属酸化物の容積変化は、骨格構造の細孔で生じる。
【0029】
酸化関連の破砕を解決する別の方法は、金属電極中の微小構造の濃度にグレーディングを用いることである。図15は、この概念の配置を模式的に示す。電解質54に近い界面の領域53で、酸化物電解質相の濃度は、70容積%より高く95容積%までであり、それより上では、この酸化物相は、位置55で示すように、金属相によって徐々に希釈され、ここでは電解質は、25容積%〜70容積%になる。全体の構造は、金属電極の外面で全ての金属相で終わる。このような構造であれば、酸化によるストレスは、機能的な層全体にわたって軽減される。
【0030】
微細な骨格を形成し、かつ金属電極粒子を沈着させるために利用可能な技術は、上記の概念を実現するのに重要である。それらの1つは、例えば、十分接着された微細構造の混合導電性骨格を形成するためのプラズマスプレー法を用いることであって、この方法では、金属電極粒子などの微細な金属構成要素のマトリクスが、湿式化学法によって浸潤され得る。マトリクス中の0.01〜1マイクロメートルのナノサイズの大きい表面積を有する金属粒子は、金属電極の反応性を有意に増大する。従って、この骨格は、微細な金属構成要素/粒子を含む。
【0031】
本発明のセルの他の構成要素は、図2を振り返れば、空気電極およびO2-(酸素イオン)導体/電解質を含む。空気電極17は、約10マイクロメートル〜1000マイクロメートル厚さの複合酸化物であって、LaMnO3、CaMnO3、LaNiO3、LaCoO3、LaCrO3(希土類の導電性混合酸化物、および/またはCo、Ni、Cu、Fe、Cr、Mnの酸化物およびそれらの組み合わせでドープされた)などの、ペロブスカイトファミリーのドープおよび非ドープの酸化物または酸化物の混合物を含んでもよい。
【0032】
電解質18は、酸素イオンを移動し、一般には、約20マイクロメートル〜100マイクロメートル厚さの固体イットリア安定化ジルコニアの濃密な、気密層である。
【0033】
ここで、図16および図17に示されるとおり、統合した酸化物−イオンバッテリーを提供する、セルのバンクによって得られる多くの利点が存在する:
1)セルバンクおよびモジュールシステムは、かなり簡易化され得る。ガス燃料は用いられないので、SOFCの関連のサブシステム、例えば、改質装置、脱硫器および減損燃料再循環ループは省くことが可能で、結果として、かなりの費用減少が得られる。さらに、SOFC中で遭遇される減損燃料および汚染空気の一般的燃焼はもはや存在しない。従って、このシステムの信頼性も、かなり改善される。
2)二倍充電した酸化物−イオンは、既存の電気的蓄電デバイスのうちでも最高の理論的エネルギー密度を可能にする。
3)酸化物−イオンバッテリー中のほとんどの金属−金属酸化物システムは、リチウム−イオンバッテリーで用いられる材料よりも優れた能力を有する。
4)全てのセルおよびモジュールの構成要素は、固体状態にあり、これによって、バッテリーシステムが必要とするメンテナンスは最小限である。
5)上昇した動作温度によって熱的に活性化される、より高速の充電および放電の速度が得られる。
6)高温での可逆的な酸化還元反応によって、各々の蓄電サイクル間の寿命の長さおよび最小限のエネルギー損失が保証される。
【0034】
セルバンクおよびモジュールレベルで、図16は、セラミックインターコネクション62を介して直列で接続された、好ましくは管状の、多孔性空気電極61によって支持される、基本的な反復性の2つの酸化物−イオンバッテリーセルユニット60を模式的に示す。空気電極管は、ワンススルーであり、すなわち、末端のキャップがない。電極は63として、薄膜電解質は64として、そして不活性ガス入力および出力はそれぞれ65および66として示す。このデザインでは、空気電極管が一端閉鎖方式である場合に用いられるような高価な空気供給管の使用が省かれる。さらに、図17は、多孔性金属基体、好ましくは管71に基づく、基本的な反復性の2つの酸化物−イオンバッテリーセルユニット70を模式的に示す。2つのセル間の電気的な接続は、大気温度で別のセルの金属基体内で1つのセルの金属電極を接続することによって達成される。金属基体の使用によって、金属電極区画の容易な包囲が可能になる。従来の溶着およびろう付けの技術が、バッテリーセルの外側チャンバを密閉するために容易に適用され得る。
【0035】
本発明の酸化物−イオンバッテリーはまた、平坦な幾何形状のモジュール80上に構築されてもよく、ここで図18Aは、このようなデザインの断面図を示す。管状の幾何形状のものと同じく、燃料も燃料システムも必要としない。バッテリーセルの基体は、空気電極カソード81、金属電極82、電解質83、および中央のオキシダント/空気のチャネル85を備えるフェライト系ステンレス鋼ベースの金属のインターコネクト84である。図17では、空気電極は72として、金属の電極は73として、電解質は、不活性ガスの入力出力をそれぞれ75および76として備える薄膜(フィルム)74として、ならびに濃密金属部分は、78として示される。図16および図17の両方で、不活性ガスの閉鎖チャンバは77および77’として示される。
【0036】
図18Bでは、デルタ型のDELTA/三角形の超高密度セル90が示される。その「三角形の構成」は、平坦なベース92、中央の空気通路91、任意のセラミック空気電極支持体93、固体電解質94、インターコネクター95、任意のニッケルまたは他のメッキ96および電極97を有する図18Bに示されるとおり、Δデルタのジグザグまたは波型の形状、および中空の内側91を、オキシダントのために有するセルとして定義される。
【0037】
図2および図3を振り返って、繰り返せば;充電過程は、放電過程の逆であり、すなわち、電解質内の酸化物−イオンが、電場のもとで、金属電極から空気電極に追いやられる。行われる電気化学的な反応は、以下で表される:
金属電極で:MeyOx+2xe’=yMe+xO2-
空気電極で:xO2-=x/2O2+2xe’
全体的反応MeyOx=x/2O2+yMe
熱力学的に言えば、充電過程および放電過程は、可逆性でなければならない。しかし、現実の反応速度が、酸化物−イオンバッテリーの蓄電容量およびサイクルの速度を厳密に決定してしまう。充電過程に関しては、金属酸化物分解の反応速度は、特に電場のもとでは不足している。充電過程および放電過程は、不可逆的であり、これによって充電速度が遅くなり、各蓄電周期でのエネルギー損失が高くなり、従って、電気効率が低くなる。図19は、化学的な充電の概念による、酸化物−イオンバッテリーモジュール110の模式図を示す。このような構成では、酸化物−イオンバッテリーは、まず放電されて、金属の第一の電極111において金属を酸化させる。酸化物−イオンバッテリーが完全に放電された後、次に、ガス115、例えば、5%のH2−N2混合物がこのモジュールチャンバへフラッシュされる。全ての金属酸化物類が金属中に移動された後、バッテリーは、再度、次の放電のために準備される。化学的な充電速度は、従来の電気的充電よりもかなり速いと期待される。ここで、空気の内部電極は112として、薄膜電解質は113として示す。電極および電解質を支持する、多孔性の金属の管114が示される。濃密管部分は116として示される。
【0038】
ここで図20を参照すると、セルのバンクを形成する、セルのグループの全体的な模式図を、少なくとも2つのセルで、詳細に示している。
【0039】
このシステムでは、複数の酸化物−イオンセルを、有用な電力バンクに組み込む。図20は、有用な電力バンクへ酸化物−イオンのセルを組み込むという機械的な概念を示す。セル180は、管板182に対して機械的にかつ電気的に接続される。この接続は、シートへのセルのろう付けによって行うことができる。
【0040】
金属支持セル180は、このセルの一方の側で利用可能な空気電極の接点、およびこのセルの反対の側で利用可能な金属電極の接点を有するように製造される。セルの両側に電極があれば、セルの間の電気的接続が簡易になる。1つの管板は全てのセルの空気電極を一緒に接続するが、反対側の管板は、全ての金属の電極を一緒に接続する。これらの管板は、それらの間で隔離ゾーンを創出する。これは、全てのバッテリーセルを電気的に平行に置く。この管板は、ガスケットを通じてお互いから電気的に隔離されなければならない。各々の管板は、バッテリー電流について電気的導体となる。
【0041】
空気は、酸素を提供する酸化物−イオンセルの中心を通って流れて、放電モードでイオン化される。空気は、セルの各々に対して等しい空気の流れを提供する空気プレナム184を通じてセルに入る。空気は、酸素を電気化学的反応に提供するだけでなく、セルを冷却もする。なぜなら放電の化学反応は、セルから除かれるべき熱を放出するからである。使用済み汚染空気がセルを離れた後、これは排気プレナム186中に収集される。排気プレナムはまた、各々のセルが等しい量の排気流を生じることを保証する。熱い排気は、このプレナムで収集され、次いで混合バルブに配管される。使用済みの熱い排出空気は、入ってくる新鮮な空気と混合されて、それが空気入口プレナム184に入る前に混合ガスを予熱する。空気は、セルを横切る軸方向の温度勾配を最小化するために予熱される必要がある。予熱温度は、2つのバルブ188および再循環ブロワ190によって制御される、入ってくる空気と混合された排気流の量によって制御される。この空気電極排気の再循環によって、外部の空気/排気の復熱装置のニーズが回避される。
【0042】
酸素を含まないガスを、隔離の容積/ゾーンに、従って、酸化物イオンのセルの金属電極に提供して、この電極の非電気化学的な酸化を防ぐことが必要である。窒素ガスが酸素ゲッターとともに、酸素のない環境を得るために用いられ得る。窒素(N2)プレナム192は、この環境を提供する。このプレナムは、最初に窒素が充填される。このプレナムは、漏れなく気密でなければならないが、わずかの漏れが存在する場合、補充用の構成窒素が必要である場合もある。本バッテリーバンクの概念では、金属の電極が、金属の電極の非電気化学的な酸化を防ぐために、酸素の無い環境で保持されなければならないことを必要とする。この酸素なしの環境では、別々のプレナムがバッテリーバンクに構築されること、およびこのプレナムができる限り漏れなく気密であることが必要である。さらに、このプレナムは、バッテリーセルの金属の電極を保護するために、酸素なしのガスを充填される必要がある場合がある。このプレナムおよびガスは、バッテリーシステムのデザインを複雑にして、費用を増す。プレナムおよび酸素なしのガスのニーズを省くための1方法は、バッテリーバンクの内側の空気が金属電極を酸化することを防ぐガスの気密層で金属の電極を被覆することであろう。従って、電極層を通って移動する酸化物のみが、金属電極の酸化に関与する。金属の電極に加えることができるガス気密薄層の1つのこのような例は、酸化スカンジウムドープのジルコニアであろう。これは、バッテリーセル電極に用いるものと同じ材料である。この層は、プラズマスプレー法で塗布できる。1セットの電気的に平行な酸化物イオンのセルは、バンクに集められる。各々のバンク中のセルの数は、バッテリーシステムに必要な電流によって決定される。次いで、セルのバンクは、より高いバッテリー電圧を生じるために電気的に直列に接続される。次いで、セルの各々のバンクが前のバンクの片側にのみ電気的に接続される。他の末端は、一連の電気的な配置を確実にするために、前のバンクから電気的に隔てられる。
【0043】
図21は、セルのバンクの概念を示しており、ここで各々のバンクは、バッテリー動作電圧を生じるために電気的に直列に接続されている。このバンクの各々の末端は、一方の側で次のバンクに電気的に接続される。管板は、バンクの間で電流を受け渡す電気的導体として働く。バンクの反対側の末端は、前のバンクから電気的に隔離される。3つのバンク210を例として示しており、ここでは電子流e’が進路によって示されている。
【0044】
別の新規な概念は、組み込み型の蓄熱の使用である。放電モードでは、酸化物イオンのセル反応は、発熱性であって、熱を放出する。充電モードでは、セルの反応は、吸熱であって、熱を必要とする。N2プレナム192は、蓄熱媒体で充填され、この媒体は、熱を吸収し得るが、セルは放電しており、充電モードの間にセルに対してこの熱を戻す。この蓄熱概念は、バッテリーシステムの全体的な効率を大きく改善する。
【0045】
本発明のセルのバンクの追加の利点としては以下が挙げられる:
1)重要なことに、ガス燃料を用いない。
2)大量生産されたシェルアンドチューブ型の熱交換器と同様の、高密度、低コストの酸化物イオンバッテリーモジュール構成構築技術である。
3)このバッテリーモジュールは、より高電圧を生じるための電気的に直列で接続される、平行の電流路バッテリーバンクからなる。
4)バッテリーセルと管板との間の低コストろう付けシール;このシールによって、機械的接続、電気的接続および空気環境と酸素なしの環境との間のシールが得られる。
5)管板は、電流を集め、セルの重さを支持し、かつセルのろう付けを容易にする。
6)非電気化学的な酸化を防ぐために必要である場合、バッテリーセルの金属電極側で不活性な環境を可能にする。
7)排出空気をリサイクルし、新鮮な流入する空気を予熱する。
8)充電と放電のサイクル間で蓄熱する。
9)ケースの材料は、熱膨張と適合するためにバッテリーの管の基体と同じである。
10)電流は管の基体を通過し;収率を増大するバッテリーセルの結束を省き、高価な工程段階を省き、従って、費用を削減する。
11)高価な工程段階を省き、収率を改善し、従って費用を削減する、バッテリーセル上に堆積されるインターコネクション層のニーズを省く。
12)管板電極間の隔離材料が低コスト。
13)550℃〜650℃の作動温度で、モジュール構築のための低コストのステンレス鋼材料の使用が可能になる。
14)ワンススルーの空気デザイン;空気の供給管を省き、モジュールのデザインを簡易化し、モジュールのパーツの数を少なくする。
15)必要に応じて、機械的な熱交換の過程を通じて入ってくる空気を直接加熱するための構成を用いることが可能。
【0046】
図22は、最大約500までのセルのバンクを収容するために用いるモジュール220を示す。一実施形態では、モジュールの寸法は、高さ3.4m×幅3.7m×深さ1.9mである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
電気エネルギー蓄電のニーズは大きい。必要な蓄電の大きさは、スマートカードデバイスのミリワットから、大型の負荷平準化サブステーションの数メガワットまでにおよぶ。本明細書に記載される再充電可能な酸化物イオンバッテリーは、種々の電子的構成要素、運輸、負荷レベル、電力特性ならびに太陽光発電および風力発電などの再生可能資源の商業化のための電力蓄電の要求に応え得る。これらの再生可能なエネルギー源は、連続的に変動する傾向であるにもかかわらず、社会的には、電力の一定で信頼できる供給を必要とする。解決法は、網状規模の、効率的かつ良心的な酸化物−イオンバッテリーの電気エネルギー蓄電ネットワークの開発であって、ここではエネルギーは、局地で蓄電されて、需要と供給の予測で分配され得る。このようなシステムは、電気的な有用性のビジネスに完全な革命をもたらすであろう。
【0048】
本発明の特定の実施形態を詳細に記載してきたが、当業者には、これらの詳細に対する種々の改変および変更が、開示の全体的な教示に照らして展開可能であるということが理解される。従って、開示される特定の実施形態は、例示でしかなく、本発明の範囲を限定しないことを意味し、本発明の範囲は、特許請求の範囲の全範囲およびその任意のかつ全ての等価物であるものとする。
【符号の説明】
【0049】
16 A含有ガス
17 A−ガス電極
18 A導電性導体
19 金属の電極
20 負荷
21 DC供給
24 空気(オキシダント)
25 ガス
26 空気電極
27 電解質
28 金属電極
29 セラミックインターコネクション
30 多孔性金属基体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン導電性電解質および2つの電極を備える、蓄電デバイスであって、電解質のいずれかの側の上で電極間のイオン移動があり、一方の電極が、イオンのリザーバであり、かつイオンが2つの電極間で前後に移動可能にしてなる、蓄電デバイス。
【請求項2】
電極の間でイオンが前後に移動し、該デバイスが充電モードおよび放電モードである場合、前記イオンとしてはO2-、CO32-、S2-、PO43-、I-、F-およびCl-からなる群より選択される負に荷電されたイオンを有し、かつガス燃料は用いられない、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
1つの電極が金属の電極であり、かつ第二の電極が、ガス電極であり、かつここで前記金属電極がイオンのリザーバである、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
1つの電極は、2つおよび3つ以上の金属で形成した合金の任意の組み合わせ、ならびに2つおよび3つ以上の酸化物で形成した固溶体の任意の組み合わせから構成される金属電極であり、前記金属電極は、金属成分を含む導電性骨格を含む、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
セルのバンクを得るために電気的に接続された、請求項1に記載の複数の蓄電デバイス。
【請求項6】
酸化物−イオン電解質導体および空気電極と組み合わせた金属の電極を用いるバッテリーセルであって、前記セルが充電モードおよび放電モードで作動して、前記金属の電極に電気エネルギーを蓄電可能とし、ここで、前記放電モードが:
yMe+x/2O2=MeyOx
であり、
前記充電モードが:
MeyOx=x/2O2+yMeであり、かつここでx/y=0.5〜3.0であり、かつMe=金属である、
バッテリーセル。
【請求項7】
前記金属の電極が、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、Ce、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Ta、V、Mo、PdおよびWからなる群より選択される任意の単相金属材料、ならびにSc−Sc2O3、Y−Y2O3、La−La2O3、Ti−TiO2、Zr−ZrO2、Hf−HfO2、Ce−CeO2、Cr−Cr2O3、Mn−Mn2O3、Mn−Mn3O4、Mn−MnO、Fe−FeO、Fe−Fe3O4、Fe−Fe2O3、Co−CoO、Co−Co3O4、Co−Co2O3、Ni−NiO、Cu−Cu2O、Cu−CuO、Nb−NbO、Nb−NbO2、Nb−Nb2O5、Ta−Ta2O5、V−V2O5、V−VO2、V−V2O3、V−VO、Mo−MoO2、Mo−MoO3、Pd−PdOおよびW−WO3からなる群より選択される任意の二相材料から構成される、請求項6に記載のバッテリーセル。
【請求項8】
前記二相の組成において、前記金属対金属酸化物の比が、0:100〜100:0であり、かつガス燃料は用いられない、請求項7に記載のバッテリーセル。
【請求項9】
前記金属の電極が、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、MoおよびWからなる群より選択される任意の単相の金属材料、ならびにTi−TiO2、Cr−Cr2O3、Mn−Mn2O3、Fe−FeO、Co−CoO、Ni−NiO、Cu−Cu2O、Mo−MoO2およびW−WO3からなる群より選択される任意の二相の金属材料から構成される、請求項6に記載のバッテリーセル。
【請求項10】
前記金属の電極が、Mn、Fe、MoおよびWからなる群より選択される任意の単相の金属材料、ならびにMn−Mn2O3、Fe−FeO、Mo−MoO2およびW−WO3からなる群より選択される任意の好ましい二相の金属材料から構成される、請求項6に記載のバッテリーセル。
【請求項11】
前記金属の電極が、Fe−FeO、Mn−Mn2O3、W−WO3およびMo−MO2からなる群より選択される、請求項6に記載のバッテリーセル。
【請求項12】
前記金属の電極が、2つの金属で形成した合金の任意の組み合わせ、および2つの酸化物で形成した固溶体の任意の組み合わせから構成される、請求項6に記載のバッテリーセル。
【請求項13】
前記電解質がアニオンを伝導し、かつ前記金属の電極が、金属組成を含む導電性骨格を備える、請求項6に記載のバッテリーセル。
【請求項14】
複数の電気接続された中実または中空の細長い管状のセルを含むセルのバンクであって、各々のセルは、充電モードおよび放電モードで作動可能であり、各々のセルは、単相または二相の金属の材料を有し、これらの材料は、400℃を超える融点を有する第一の電極として使用され、かつ電解質へ空気を移動することができる第二の電極材料として使用されるべく酸化されることが可能であり、さらに酸化物−イオンを移動し得るそれらの間の電解質を備え、ここで前記金属の電極は、酸素のリザーバであり、ここで前記放電モードは:
yMe+x/2O2=MeyOxであり、
前記充電モードは:
MeyOx=x/2O2+yMeであり、ここでx/y=0.5〜3.0であり、Me=金属であり、さらに、前記セルのバンクは電気エネルギーを蓄電し、かつ第二の電極材料に接触するための空気の供給源を有する、セルのバンク。
【請求項15】
前記第一の電極が500℃を超える融点を有し、ガス燃料は用いられず、前記固体のセルは、任意の幾何形状を有し得る、請求項14に記載のセルのバンク。
【請求項16】
請求項14に記載のセルのバンクであって、前記第二の電極が、ある一定の温度で酸素の一定の分圧を保持する任意の固相であり、かつ前記オキシダントガス供給が任意の酸素含有ガスである、セルのバンク。
【請求項17】
前記金属の電極が、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、Ce、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Ta、V、Mo、PdおよびWからなる群より選択される任意の単相金属材料、ならびにSc−Sc2O3、Y−Y2O3、La−La2O3、Ti−TiO2、Zr−ZrO2、Hf−HfO2、Ce−CeO2、Cr−Cr2O3、Mn−Mn2O3、Mn−Mn3O4、Mn−MnO、Fe−FeO、Fe−Fe3O4、Fe−Fe2O3、Co−CoO、Co−Co3O4、Co−Co2O3、Ni−NiO、Cu−Cu2O、Cu−CuO、Nb−NbO、Nb−NbO2、Nb−Nb2O5、Ta−Ta2O5、V−V2O5、V−VO2、V−V2O3、V−VO、Mo−MoO2、Mo−MoO3、Pd−PdOおよびW−WO3からなる群より選択される任意の二相材料から構成される、請求項14に記載のセルのバンク。前記二相の組成では、前記金属対金属酸化物の比は、0:100〜100:0であり、かつガス燃料は用いられない。
【請求項18】
前記二相の組成において、前記金属対金属酸化物の比が、0:100〜100:0であり、かつガス燃料は用いられない、請求項14に記載のセルのバンク。
【請求項19】
前記金属の電極が、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、MoおよびWからなる群より選択される任意の単相の金属材料、ならびにTi−TiO2、Cr−Cr2O3、Mn−Mn2O3、Fe−FeO、Co−CoO、Ni−NiO、Cu−Cu2O、Mo−MoO2およびW−WO3からなる群より選択される任意の二相の金属材料から構成される、請求項14に記載のセルのバンク。
【請求項20】
前記金属の電極が、Mn、Fe、MoおよびWからなる群より選択される任意の単相の金属材料、ならびにMn−Mn2O3、Fe−FeO、Mo−MoO2およびW−WO3からなる群より選択される任意の二相の好ましい金属材料から構成される、請求項14に記載のセルのバンク。
【請求項1】
アニオン導電性電解質および2つの電極を備える、蓄電デバイスであって、電解質のいずれかの側の上で電極間のイオン移動があり、一方の電極が、イオンのリザーバであり、かつイオンが2つの電極間で前後に移動可能にしてなる、蓄電デバイス。
【請求項2】
電極の間でイオンが前後に移動し、該デバイスが充電モードおよび放電モードである場合、前記イオンとしてはO2-、CO32-、S2-、PO43-、I-、F-およびCl-からなる群より選択される負に荷電されたイオンを有し、かつガス燃料は用いられない、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
1つの電極が金属の電極であり、かつ第二の電極が、ガス電極であり、かつここで前記金属電極がイオンのリザーバである、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
1つの電極は、2つおよび3つ以上の金属で形成した合金の任意の組み合わせ、ならびに2つおよび3つ以上の酸化物で形成した固溶体の任意の組み合わせから構成される金属電極であり、前記金属電極は、金属成分を含む導電性骨格を含む、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
セルのバンクを得るために電気的に接続された、請求項1に記載の複数の蓄電デバイス。
【請求項6】
酸化物−イオン電解質導体および空気電極と組み合わせた金属の電極を用いるバッテリーセルであって、前記セルが充電モードおよび放電モードで作動して、前記金属の電極に電気エネルギーを蓄電可能とし、ここで、前記放電モードが:
yMe+x/2O2=MeyOx
であり、
前記充電モードが:
MeyOx=x/2O2+yMeであり、かつここでx/y=0.5〜3.0であり、かつMe=金属である、
バッテリーセル。
【請求項7】
前記金属の電極が、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、Ce、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Ta、V、Mo、PdおよびWからなる群より選択される任意の単相金属材料、ならびにSc−Sc2O3、Y−Y2O3、La−La2O3、Ti−TiO2、Zr−ZrO2、Hf−HfO2、Ce−CeO2、Cr−Cr2O3、Mn−Mn2O3、Mn−Mn3O4、Mn−MnO、Fe−FeO、Fe−Fe3O4、Fe−Fe2O3、Co−CoO、Co−Co3O4、Co−Co2O3、Ni−NiO、Cu−Cu2O、Cu−CuO、Nb−NbO、Nb−NbO2、Nb−Nb2O5、Ta−Ta2O5、V−V2O5、V−VO2、V−V2O3、V−VO、Mo−MoO2、Mo−MoO3、Pd−PdOおよびW−WO3からなる群より選択される任意の二相材料から構成される、請求項6に記載のバッテリーセル。
【請求項8】
前記二相の組成において、前記金属対金属酸化物の比が、0:100〜100:0であり、かつガス燃料は用いられない、請求項7に記載のバッテリーセル。
【請求項9】
前記金属の電極が、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、MoおよびWからなる群より選択される任意の単相の金属材料、ならびにTi−TiO2、Cr−Cr2O3、Mn−Mn2O3、Fe−FeO、Co−CoO、Ni−NiO、Cu−Cu2O、Mo−MoO2およびW−WO3からなる群より選択される任意の二相の金属材料から構成される、請求項6に記載のバッテリーセル。
【請求項10】
前記金属の電極が、Mn、Fe、MoおよびWからなる群より選択される任意の単相の金属材料、ならびにMn−Mn2O3、Fe−FeO、Mo−MoO2およびW−WO3からなる群より選択される任意の好ましい二相の金属材料から構成される、請求項6に記載のバッテリーセル。
【請求項11】
前記金属の電極が、Fe−FeO、Mn−Mn2O3、W−WO3およびMo−MO2からなる群より選択される、請求項6に記載のバッテリーセル。
【請求項12】
前記金属の電極が、2つの金属で形成した合金の任意の組み合わせ、および2つの酸化物で形成した固溶体の任意の組み合わせから構成される、請求項6に記載のバッテリーセル。
【請求項13】
前記電解質がアニオンを伝導し、かつ前記金属の電極が、金属組成を含む導電性骨格を備える、請求項6に記載のバッテリーセル。
【請求項14】
複数の電気接続された中実または中空の細長い管状のセルを含むセルのバンクであって、各々のセルは、充電モードおよび放電モードで作動可能であり、各々のセルは、単相または二相の金属の材料を有し、これらの材料は、400℃を超える融点を有する第一の電極として使用され、かつ電解質へ空気を移動することができる第二の電極材料として使用されるべく酸化されることが可能であり、さらに酸化物−イオンを移動し得るそれらの間の電解質を備え、ここで前記金属の電極は、酸素のリザーバであり、ここで前記放電モードは:
yMe+x/2O2=MeyOxであり、
前記充電モードは:
MeyOx=x/2O2+yMeであり、ここでx/y=0.5〜3.0であり、Me=金属であり、さらに、前記セルのバンクは電気エネルギーを蓄電し、かつ第二の電極材料に接触するための空気の供給源を有する、セルのバンク。
【請求項15】
前記第一の電極が500℃を超える融点を有し、ガス燃料は用いられず、前記固体のセルは、任意の幾何形状を有し得る、請求項14に記載のセルのバンク。
【請求項16】
請求項14に記載のセルのバンクであって、前記第二の電極が、ある一定の温度で酸素の一定の分圧を保持する任意の固相であり、かつ前記オキシダントガス供給が任意の酸素含有ガスである、セルのバンク。
【請求項17】
前記金属の電極が、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、Ce、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Ta、V、Mo、PdおよびWからなる群より選択される任意の単相金属材料、ならびにSc−Sc2O3、Y−Y2O3、La−La2O3、Ti−TiO2、Zr−ZrO2、Hf−HfO2、Ce−CeO2、Cr−Cr2O3、Mn−Mn2O3、Mn−Mn3O4、Mn−MnO、Fe−FeO、Fe−Fe3O4、Fe−Fe2O3、Co−CoO、Co−Co3O4、Co−Co2O3、Ni−NiO、Cu−Cu2O、Cu−CuO、Nb−NbO、Nb−NbO2、Nb−Nb2O5、Ta−Ta2O5、V−V2O5、V−VO2、V−V2O3、V−VO、Mo−MoO2、Mo−MoO3、Pd−PdOおよびW−WO3からなる群より選択される任意の二相材料から構成される、請求項14に記載のセルのバンク。前記二相の組成では、前記金属対金属酸化物の比は、0:100〜100:0であり、かつガス燃料は用いられない。
【請求項18】
前記二相の組成において、前記金属対金属酸化物の比が、0:100〜100:0であり、かつガス燃料は用いられない、請求項14に記載のセルのバンク。
【請求項19】
前記金属の電極が、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、MoおよびWからなる群より選択される任意の単相の金属材料、ならびにTi−TiO2、Cr−Cr2O3、Mn−Mn2O3、Fe−FeO、Co−CoO、Ni−NiO、Cu−Cu2O、Mo−MoO2およびW−WO3からなる群より選択される任意の二相の金属材料から構成される、請求項14に記載のセルのバンク。
【請求項20】
前記金属の電極が、Mn、Fe、MoおよびWからなる群より選択される任意の単相の金属材料、ならびにMn−Mn2O3、Fe−FeO、Mo−MoO2およびW−WO3からなる群より選択される任意の二相の好ましい金属材料から構成される、請求項14に記載のセルのバンク。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2013−502039(P2013−502039A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524715(P2012−524715)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/039919
【国際公開番号】WO2011/019455
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(599078705)シーメンス エナジー インコーポレイテッド (57)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/039919
【国際公開番号】WO2011/019455
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(599078705)シーメンス エナジー インコーポレイテッド (57)
【Fターム(参考)】
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