説明

酸水素炎による炭化水素ガス改質方法と炭化水素ガス改質装置

【課題】 メタン、エタン、プロパンなどの炭化水素ガスから水素を改質、分離抽出することを目的とする。
【解決手段】 断熱材で囲われた改質塔の中に、ニッケル、白金、パラジウム、カーボンよりなる触媒を収容し、触媒を酸水素炎により直接400〜650℃に加熱し、改質塔内に炭化水素ガスを流入させ、加熱された触媒に炭化水素ガスを接触させることにより炭化水素ガスを炭素と水素に分離し、前記水素を冷却し水素を得るようにした酸水素炎による炭化水素ガス改質方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン、エタン、プロパンなどの炭化水素ガスから水素を改質、分離抽出する酸水素炎による炭化水素ガス改質方法と炭化水素ガス改質装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭化水素ガスを700℃以上の高温にすると、炭素原子と水素原子の結合が弛み、より小さい分子的結合に進み、最後に水素と炭素になることは公知である。この方法は、炭化水素ガス改質に際して、二酸化炭素を副生しない唯一の方法で重要である。
【0003】
しかし、この方法では改質のために高温が必要である。これを改質塔の外部から加熱するようでは燃料収支が合わず、特に化石燃料の使用によって二酸化炭素が多量に発生し、水素内燃機関や水素燃料電池の使用によって、地球環境の浄化に寄与しようにも肝心の水素の生産で二酸化炭素を発生するようでは問題にならないということで、この炭化水素ガス熱分解法は採用されなかった。
【0004】
しかし、炭化水素ガスのうち、メタンの熱収支は以下の通りである。
【0005】
(1) CH4 →C+2H2 −74.9KJ
(2) CH4 +2O2 →CO2 +2H2 O +840.2KJ
(3) C+O2 →CO2 +393.5KJ
(4) 2H2 +O2 →2H2 O +571.6KJ
よって、メタンの分解のための吸熱量は、74.9KJで、分解された水素の発熱量は571.6KJとなり、(4)− (1)は、+496.7KJとなる。改質塔の熱収支次第でメタンから水素を取り出し、利用することは可能である。
【0006】
問題は改質塔の熱収支である。
【0007】
上記 (1)に記載したメタン分解が、吸熱反応であるための損失と、原料メタンを分解温度に達せしめ、それを維持するための熱量、さらに改質塔の持つ熱損失などの合計が、加熱のための燃料の負担となり、メタンの熱分解は実現しなかった。
【0008】
メタンの熱分解のプロセスで必要な加熱温度は、一般的に700〜1000℃と考えられているが、この温度はもっと低い方が改質塔の素材や加熱方法を決定するうえで重要で、特に熱損失を少なくするためには、より低温での熱分解が必要で、そのための触媒が必要であった。
【特許文献1】特開2002−321904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
メタン、エタン、プロパンなどの炭化水素ガスから水素を得るためには、高熱の改質温度が必要である。そのための燃費と水素の収率が問題にされ、事業的採算がとれないとして一般の用途に供されることはなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑み、断熱材で囲まれた改質塔の内部に酸水素炎を直接吹き込み、これに炭化水素ガスを送り込む。熱分解温度を低くするために、触媒としてニッケル、白金、パラジウム、カーボンの混合材を使用して改質塔の内部を400〜650℃に保つよう、炭化水素ガスの送り込み量と酸水素炎の強さを塔内温度調整器により調節する。
【0011】
CH4 →C+2H2
上の反応式により、発生する炭素は触媒に絡みつかないように、振動装置と水素の流れにより改質塔の真下に連通させた炭素析出槽に排出される。
【0012】
発生した水素は冷却され、精製されてタンクに圧入される。一部の粗製水素は酸水素炎のために使用される。
【0013】
改質塔を囲う断熱材は、各種の素材を用いて電熱、放射熱によって逃げる熱を防ぐことが改質塔の熱収支の重要なファクターとなる。
【0014】
発生した水素が持っている熱エネルギーは熱交換機によって回収し、炭化水素ガスの予熱に使用することは改質塔の熱収支の上で重要である。
【0015】
本発明は、断熱材で囲われた改質塔の中に、ニッケル、白金、パラジウム、カーボンよりなる触媒を収容し、触媒を酸水素炎により直接400〜650℃に加熱し、改質塔内に炭化水素ガスを流入させ、加熱された触媒に炭化水素ガスを接触させることにより炭化水素ガスを炭素と水素に分離し、前記水素を冷却し水素を得るようにした酸水素炎による炭化水素ガス改質方法である。
【0016】
また、本発明は、触媒を収容した改質塔の下部に炭素析出槽を連通させて配置し、改質時に触媒上に付着したカーボンを改質塔に設けた振動除塵機で触媒を振動させ触媒をこすり合わせるようにして真下に振り払い、カーボンを回収すると共に触媒を再生させるようにした炭化水素ガス改質装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、断熱材で囲われた改質塔の中に、ニッケル、白金、パラジウム、カーボンよりなる触媒を収容し、触媒を酸水素炎により直接400〜650℃に加熱し、改質塔内に炭化水素ガスを流入させ、加熱された触媒に炭化水素ガスを接触させることにより炭化水素ガスを炭素と水素に分離し、前記水素を冷却し水素を得るようにした酸水素炎による炭化水素ガス改質方法であるので、メタン、エタン、プロパンなどの炭化水素ガスから水素を改質、分離抽出することができる。
【0018】
また、本発明は、触媒を収容した改質塔の下部に炭素析出槽を連通させて配置し、改質時に触媒上に付着したカーボンを改質塔に設けた振動除塵機で触媒を振動させ触媒をこすり合わせるようにして真下に振り払い、カーボンを回収すると共に触媒を再生させるようにした炭化水素ガス改質装置であるので、カーボンを回収すると共に触媒を再生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、炭化水素ガスの熱分解を、新規な方法と新規な触媒を使用することにより、分解温度を低くし、熱効率を高めて大量の水素を二酸化炭素の副生なしで、連続的に生産するものである。
【0020】
本発明は、炭化水素ガスの熱分解を充分に断熱装置を付けた改質塔の中に直接酸水素炎を吹き込み、酸水素炎の発する強力な熱で急速に加熱すると共に、酸水素炎の発する過熱水蒸気中の活性酸素が、炭化水素ガス中の炭素から水素を引き離す効果を持っていて、ニッケル、白金、パラジウム、カーボンの触媒の効果と共に炭化水素ガスの分解温度を400〜650℃に引下げ、改質塔の熱収支はこの熱分解法が産業上有用であることを示している。
【0021】
つまり、加熱用に使用される水素よりも生産される水素の方が圧倒的に多いからである。
【0022】
本発明は、断熱材で囲われた改質塔3の中に、ニッケル、白金、パラジウム、カーボンよりなる触媒4を収容し、触媒4を酸水素炎により直接400〜650℃に加熱し、改質塔3内に炭化水素ガスを流入させ、加熱された触媒4に炭化水素ガスを接触させることにより炭化水素ガスを炭素と水素に分離し、前記水素を冷却し水素を得るようにした酸水素炎による炭化水素ガス改質方法である。
【0023】
図1は、炭化水素ガス改質塔である。
【0024】
炭化水素ガス改質塔は、装置の中心部に改質塔3を配置し、改質塔3の周囲は断熱材層7で、幾層もの放射熱防止用の反射板により成り立っており、その間の空気は減圧され、改質塔3の下部には炭化析出槽10を連通させている。
【0025】
また、本発明は、触媒4を収容した改質塔3の下部に炭素析出槽10を連通させて配置し、改質時に触媒4上に付着したカーボンを改質塔3に設けた振動除塵機(振動モータ6、回転軸5、触媒棚16)で触媒4を振動させ触媒4をこすり合わせるようにして真下に振り払い、カーボンを回収すると共に触媒4を再生させるようにした炭化水素改質ガス装置である。
【0026】
触媒4は、改質塔3の内部に設けられた円形の触媒棚16の上や、その他の空間に充填されている。触媒棚16は、振動モーター6に連結する回転軸5によりゆっくりと正逆の回転をして触媒4に振動を与えるようになっており、内部は400〜650℃に加熱されている。
【0027】
熱分解温度を低くするために、触媒としてニッケル、白金、パラジウム、カーボンの混合材を使用して改質塔の内部を400〜650℃に保つよう、炭化水素ガスの送り込み量と酸水素炎の強さを塔内温度調整器15により調節する。
【0028】
改質塔3は、円筒形の金属製で、下部が炭素の微粉末13を収容する炭素析出槽10に連通されているが、その全体は内部のガスが外部に漏れないように密閉構造になっている。
【0029】
改質塔3の内部の加熱は、その下部の炭水素バーナー8・9から送り込まれる酸水素炎12・18によって、400〜650℃に加熱される。
【0030】
炭化水素ガスは、図1の送入口1より流量調節器2を通って改質塔3に送入され、加熱された触媒4に接触し、400〜650℃に加熱される。酸水素炎12・18が作る加熱水蒸気の活性酸素は、炭化水素ガスの炭素から水素をはぎ取る作用をして、従来の熱分解法よりははるかに低い温度で炭化水素ガスを分解し、水素を発生させる。
【0031】
生成した水素は、下部の炭素析出槽10を通って、出口11より熱量回収装置を経て水素精製装置に向かう。
【0032】
符号14は炭素取出口である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、酸水素炎による炭化水素ガス改質方法であるが、ここで生産される水素は水素ガスエンジンに利用できるほか、装置の排熱を使って冷暖房などのコジェネレーションにも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の炭化水素ガス改質塔の縦断面図である。
【符号の説明】
【0035】
4…触媒
3…改質塔
10…炭素析出槽
6・5・16…振動除塵機(振動モータ・回転軸・触媒棚)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材で囲われた改質塔の中に、ニッケル、白金、パラジウム、カーボンよりなる触媒を収容し、触媒を酸水素炎により直接400〜650℃に加熱し、改質塔内に炭化水素ガスを流入させ、加熱された触媒に炭化水素ガスを接触させることにより炭化水素ガスを炭素と水素に分離し、前記水素を冷却し水素を得るようにした酸水素炎による炭化水素ガス改質方法。
【請求項2】
触媒を収容した改質塔の下部に炭素析出槽を連通させて配置し、改質時に触媒上に付着したカーボンを改質塔に設けた振動除塵機で触媒を振動させ触媒をこすり合わせるようにして真下に振り払い、カーボンを回収すると共に触媒を再生させるようにした炭化水素ガス改質装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−23859(P2009−23859A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186909(P2007−186909)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(507147976)日本水素株式会社 (18)
【Fターム(参考)】