説明

酸素ガスおよび窒素ガスの併行分離方法および併行分離システム

【課題】 PSAガス分離装置により空気などから高純度酸素ガスを分離取得するとともに、当該PSAガス分離装置から連続的に供給される脱着ガスから高純度窒素ガスを連続的に効率よく分離取得することのできる、方法およびシステムを提供すること。
【解決手段】 本発明は、PSAガス分離装置1でのPSAガス分離工程および膜式ガス分離器2での膜式ガス分離工程を含む。PSAガス分離工程では、窒素を優先的に吸着する吸着剤が充填された吸着塔を用いて行う圧力変動吸着式ガス分離法により、空気などの酸素・窒素含有ガスから、酸素富化ガスと、窒素を主に含み且つ酸素も含む脱着ガスとを、取り出す。膜式ガス分離工程では、酸素を優先的に透過させるガス分離膜2Aの透過側を大気圧未満の圧力に減圧しつつ、ガス分離膜2Aにより、脱着ガスを、ガス分離膜2Aを透過するガスと透過しないガス(窒素富化ガス)とに分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素および窒素を含む混合ガス(例えば空気)から酸素ガスおよび窒素ガスを併行して分離するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
空気から分離して得られる酸素ガスおよび窒素ガスは、多様な用途に利用されている。酸素ガスは、例えば、ゴミ溶融炉や、灰溶融炉、ガラス溶融炉の高温化、製鋼用電気炉の燃焼効率向上、化学プラントでの酸化反応、廃水処理装置における酸素曝気などに、利用されている。一方、窒素ガスは、例えば、ゴミ溶融炉や化学プラントにおけるガスシールやパージング、熱処理炉の雰囲気ガス調整、食品の包装用ガスシールなどに、利用されている。
【0003】
空気から酸素ガスや窒素ガスを分離するのに実用的な手法の一つとして、圧力変動吸着法(PSA法)が知られている。PSA法によるガス分離では、所定成分を優先的に吸着するための吸着剤が充填された吸着塔を具備するPSAガス分離装置が用いられ、吸着塔において、少なくとも吸着工程および脱着工程が実行される。吸着工程では、吸着塔に混合ガスを導入して当該混合ガス中の易吸着成分を高圧条件下で吸着剤に吸着させ、難吸着成分からなるガスを塔から導出する。脱着工程では、塔内圧力を降下させて易吸着成分を吸着剤から脱着させ、当該易吸着成分を主に含むガスを吸着塔から導出する。例えば、酸素よりも窒素を優先的に吸着することのできる吸着剤を使用し且つ混合ガスとして空気を吸着塔に導入する場合、酸素は、吸着工程にて難吸着成分として塔外に導出され、窒素は、易吸着成分として、吸着工程にて吸着剤に吸着され且つ脱着工程にて塔外に導出される。
【0004】
PSA法においては、脱着工程にて減圧脱着されて塔外に導出される易吸着成分ガスよりも、吸着工程にて吸着塔を通過する難吸着成分ガスの方が、ガス濃度やガス量について安定している。そのため、PSA法では、取得目的のガスを易吸着成分ガスとするよりも難吸着成分ガスとする方が、当該目的ガスを効率よく取得しやすい。したがって、PSA法により空気から酸素を分離取得する際には、一般に、使用されるPSAガス分離装置の吸着塔に窒素吸着性の吸着剤が充填され、吸着工程にて当該吸着塔から導出される酸素富化ガスが製品ガスとして回収される。また、PSA法により空気から窒素を分離取得する際には、一般に、酸素吸着性の吸着剤が吸着塔に充填され、吸着工程にて当該吸着塔から導出される窒素富化ガスが製品ガスとして回収される。
【0005】
しかしながら、空気中の酸素を分離取得して利用するとともに空気中の窒素を分離取得して利用する必要が生ずる場合があり、この場合には、空気中に含まれる酸素および窒素を単一のシステムにより併行して分離取得することが可能な技術が望まれる。
【0006】
図6は、空気中の酸素および窒素を併行して分離するための従来システムの一例である酸素・窒素併行分離システムX3を表す。酸素・窒素併行分離システムX3は、PSAガス分離装置61と、膜式ガス分離器62と、貯蔵タンク63と、圧縮機64,65と、真空ポンプ66とを備え、これらは、配管を介して連結されている。配管における所定の箇所には複数の自動弁(図示略)が設けられており、システム稼動時には、各自動弁の開閉状態が適宜選択されることにより、システム内のガスの流れ状態が切り替えられる。PSAガス分離装置61は、酸素よりも窒素を優先的に吸着する吸着剤が充填された吸着塔(図示略)を備える。また、膜式ガス分離器62は、酸素を優先的に透過させるためのガス分離膜62aを有する。このような酸素・窒素併行分離システムは、例えば下記の特許文献1に記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開平5−253438号公報
【0008】
酸素・窒素併行分離システムX3の稼動時には、PSAガス分離装置61の吸着塔において、吸着工程および脱着工程を含む1サイクルが繰り返され、空気から酸素富化ガスが分離取得される。吸着工程では、圧縮機64が作動してPSAガス分離装置61の吸着塔に空気が供給され、塔内が所定の圧力にまで上昇した状態において、当該空気中の易吸着成分(主に窒素を含む)を吸着剤に吸着させ、当該吸着塔ないしPSAガス分離装置61から酸素富化ガスが導出される。この酸素富化ガスは、例えば、所定の用途に連続的に使用される。脱着工程では、真空ポンプ66の作動により塔内が所定の圧力にまで降下された状態において、当該吸着塔内の吸着剤から易吸着成分(主に窒素を含む)が脱着され、塔内に残存する酸素とともに当該易吸着成分は脱着ガスとして塔外ないしPSAガス分離装置61外に排出される。脱着ガス中の酸素濃度は、脱着工程初期においては比較的に高く、時間の経過とともに次第に低下する傾向にある。
【0009】
PSAガス分離装置61からの脱着ガスの酸素濃度は酸素モニタにより常時的に検知され、脱着工程初期の比較的に酸素濃度の高い脱着ガスは、矢印G’で示すように、システム外に廃棄される。そして、脱着ガスの酸素濃度が所定の値にまで低下した時点で、当該廃棄は停止され、貯蔵タンク63への脱着ガスの回収に切り替えられ、脱着ガスの回収が開始される。このような脱着ガスの廃棄およびその後の回収は、PSAガス分離装置61から脱着ガスが排出されるごとに実行される。
【0010】
貯蔵タンク63に回収された脱着ガスは、圧縮機65の作動により所定の圧力で膜式ガス分離器62に供給され、膜式ガス分離器62のガス分離膜62aを透過する透過ガスと透過しない非透過ガスとに分離される。脱着ガス中の酸素はガス分離膜62aを優先的に透過し、これにより、酸素濃度が低下して窒素純度が高められた窒素富化ガスが非透過ガスとして膜式ガス分離器62から排出される。この非透過ガスは、例えば、所定の用途に連続的に使用される。酸素・窒素併行分離システムX3によると、以上のようにして、空気から酸素富化ガスおよび窒素富化ガスが分離取得される。
【0011】
酸素・窒素併行分離システムX3においては、仮に、PSAガス分離装置61からの脱着ガスの全てが、貯蔵タンク63に一旦回収されずに連続的に圧縮機65を経て膜式ガス分離器62に供給され続けると、膜式ガス分離器62から非透過ガスとして排出される窒素富化ガスの量は、経時的に比較的大きく変動してしまう。膜式ガス分離器62に供給される脱着ガスの酸素分圧ないし酸素濃度が比較的大きく変動し、これにより、ガス分離膜62aにおける酸素透過のドライビングフォースが比較的大きく変動するからである。当該ドライビングフォースの変動は、ガス分離膜62aに対する酸素の透過量ないし酸素の非透過量の変動を来し、従って、膜式ガス分離器62から排出される非透過ガス(窒素富化ガス)の量の変動を来す。そのため、酸素・窒素併行分離システムX3において、PSAガス分離装置61からの脱着ガスの全てが貯蔵タンク63に一旦回収されずに連続的に膜式ガス分離器62に供給され続けると、非透過ガスとして取得される窒素富化ガスを、その供給量が不安定であるために不活性ガスとして適切に利用できない場合が生ずる。
【0012】
これに対し、上述したような本来の態様で稼動する酸素・窒素併行分離システムX3におては、PSAガス分離装置61からの脱着ガスの廃棄および回収が所定のタイミングで切り替えられることにより、所定の酸素濃度領域(即ち窒素濃度領域)の脱着ガスが貯蔵タンク63に一旦回収され、略一定の酸素濃度(即ち略一定の窒素純度)の脱着ガスが貯蔵タンク63から膜式ガス分離器62に供給される。そして、膜式ガス分離器62に供給される脱着ガスの酸素分圧(ないし酸素濃度)の変動が小さいため、ガス分離膜62aに対する酸素の透過量の変動は少なく、膜式ガス分離器62からは、略一定の流量で非透過ガス(窒素富化ガス)が排出されることとなる。
【0013】
しかしながら、PSAガス分離装置61から膜式ガス分離器62への脱着ガスの流れを分断する切替え用ライン構成および貯蔵タンク63は、窒素富化ガスの分離取得操作を不連続化してシステムの複雑化を招来するので、好ましくない。加えて、このような切替え用ライン構成および貯蔵タンク63は、システムの大型化を招来するので好ましくない。また、PSAガス分離装置61から膜式ガス分離器62への脱着ガスの流れを分断する期間が長いほど、貯蔵タンク63はより大きな容量を必要として大型化する。例えば、PSAガス分離装置61の吸着塔での30秒間の脱着工程の間において、脱着工程開始から20秒間の脱着初期・中期に排出される脱着ガス(酸素濃度は比較的高くて窒素純度は比較的に低い)を矢印G’で示すようにシステム外に廃棄し、脱着工程開始から20〜30秒間の脱着末期に排出される脱着ガス(酸素濃度は比較的低くて窒素純度は比較的に高い)を貯蔵タンク63に貯蔵する場合、脱着初期・中期の20秒間は貯蔵タンク63に脱着ガスが貯蔵されないので、この間に貯蔵タンク63から膜式ガス分離器62にガスを供給するためには、貯蔵タンク63には、予め、それまでの脱着工程において排出される脱着ガスを膜式ガス分離器62に送出せずに余分に貯蔵しておく必要がある。このとき、真空ポンプ66の作動により相応の圧力で脱着ガスを貯蔵タンク63に導入する必要があるが、真空ポンプ66の吐出圧力には一定の限界があるので、貯蔵タンク63に対して脱着ガスを適切に導入するためには、貯蔵タンク63には充分な容量が必要となる。上述の分断時間が長いほど、貯蔵タンク63に予め余分に貯蔵しておくべき脱着ガスの量は増大し、従って、貯蔵タンク63に要求される容量も増大して貯蔵タンク63が大型化するのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、このような事情の下で考え出されたものであって、PSAガス分離装置により酸素・窒素混合ガスから高純度酸素ガスを分離取得するとともに、当該PSAガス分離装置から連続的に供給される脱着ガスから高純度窒素ガスを連続的に効率よく分離取得することのできる、方法およびシステムを提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の側面によると、酸素および窒素を含む混合ガスから酸素ガスおよび窒素ガスを併行分離するための方法が提供される。この併行分離方法は、圧力変動吸着式ガス分離工程および膜式ガス分離工程を含む。圧力変動吸着式ガス分離工程では、窒素を優先的に吸着するための吸着剤が充填された吸着塔を用いて行う圧力変動吸着式ガス分離法により、吸着塔内が相対的に高圧である状態において、吸着塔に混合ガスを導入して当該混合ガス中の窒素を吸着剤に吸着させ、当該吸着塔から酸素富化ガスを導出し、且つ、吸着塔内が相対的に低圧である状態において、吸着剤から窒素を脱着させ、吸着塔内に残存する酸素と当該窒素とを含む酸素含有脱着ガスを当該吸着塔から導出する。膜式ガス分離工程では、酸素を優先的に透過させるためのガス分離膜の透過側を大気圧未満の圧力に減圧しつつ、当該ガス分離膜により、酸素含有脱着ガスを、ガス分離膜を透過する透過ガスおよび透過しない非透過窒素富化ガスに分離する。
【0016】
本併行分離方法においては、ガス分離膜の透過側を大気圧未満の所望の圧力に減圧することにより、圧力変動吸着式ガス分離工程における吸着塔から排出されて膜式ガス分離工程に付される酸素含有脱着ガスの酸素分圧(ないし、体積あたりの物質量で表される酸素濃度)と、当該酸素含有脱着ガスとはガス分離膜により隔てられている透過ガスの酸素分圧(ないし、体積あたりの物質量で表される酸素濃度)とについて、充分な差を設けることができる。酸素含有脱着ガスの酸素分圧(ないし酸素濃度)が変動する場合であっても、当該両酸素分圧について充分な差を設けることにより、ガス分離膜における酸素透過のための充分なドライビングフォースを確保することができるとともに当該ドライビングフォースの変動比率を抑制することができ、従って、ガス分離膜に対する酸素の充分な透過量を達成できるとともに当該透過量の変動比率を抑制することができる。ガス分離膜における酸素透過量が多いほど、当該膜における窒素透過量は少なく、従って、膜式ガス分離工程における非透過窒素富化ガスの発生量は多い。一方、ガス分離膜における酸素透過量の変動比率が小さいほど、膜式ガス分離工程における非透過窒素富化ガスの発生量の変動比率は小さい。このように、本併行分離方法によると、多量の非透過窒素富化ガスを安定した流量で供給することができる。したがって、本併行分離方法によると、PSAガス分離装置により酸素・窒素混合ガスから高純度酸素ガスを分離取得するとともに、PSAガス分離装置から連続的に供給される酸素含有脱着ガスから高純度窒素ガスを連続的に効率よく分離取得することが、可能なのである。そのため、本併行分離方法によると、PSAガス分離装置からの脱着ガスを一旦貯留するためのタンク等を用いる必要はない。
【0017】
好ましくは、本併行分離方法は、酸素含有脱着ガスが膜式ガス分離工程に付される前に当該酸素含有脱着ガスを圧縮するための圧縮工程を更に含む。この場合、圧縮工程では、酸素含有脱着ガスを0.6MPa以上の圧力に圧縮するのが好ましい。このような構成は、吸着塔からの酸素含有脱着ガスの酸素分圧と、当該酸素含有脱着ガスとはガス分離膜により隔てられている透過ガスの酸素分圧とについて、充分な差を設けるうえで、好適である。
【0018】
好ましくは、圧力変動吸着式ガス分離工程における吸着塔から酸素含有脱着ガスを導出するときの当該吸着塔内の減圧と、膜式ガス分離工程における透過側の減圧とは、単一の減圧手段により実現される。このような構成は、本併行分離方法を効率よく実施するうえで好適である。
【0019】
本発明の第2の側面によると、酸素および窒素を含む混合ガスから酸素ガスおよび窒素ガスを併行分離するためのシステムが提供される。この併行分離システムは、圧力変動吸着式ガス分離装置、膜式ガス分離器、および減圧手段を備える。圧力変動吸着式ガス分離装置は、窒素を優先的に吸着するための吸着剤が充填された吸着塔を有し、当該吸着塔を用いて行う圧力変動吸着式ガス分離法により、吸着塔内が相対的に高圧である状態において、吸着塔に混合ガスを導入して当該混合ガス中の窒素を吸着剤に吸着させ、当該吸着塔から酸素富化ガスを導出し、且つ、吸着塔内が相対的に低圧である状態において、吸着剤から窒素を脱着させ、吸着塔内に残存する酸素と当該窒素とを含む酸素含有脱着ガスを当該吸着塔から導出するためのものである。膜式ガス分離器は、酸素を優先的に透過させるためのガス分離膜を有し、酸素含有脱着ガスを、ガス分離膜を透過する透過ガスおよび透過しない非透過窒素富化ガスに分離して導出するためのものである。減圧手段は、膜式ガス分離器のガス分離膜における透過側を大気圧未満の圧力に減圧するためのものである。本併行分離システムによると、本発明の第1の側面の方法を適切に行うことができる。したがって、本併行分離システムによると、その酸素・窒素併行分離過程において、第1の側面に関して上述したのと同様の効果が奏される。
【0020】
好ましくは、本併行分離システムは、酸素含有脱着ガスが膜式ガス分離器に供給される前に当該酸素含有脱着ガスを圧縮するための圧縮手段を更に備える。このような構成によると、第1の側面において上述した圧縮工程を行うことができる。
【0021】
好ましくは、減圧手段は、圧力変動吸着式ガス分離装置の吸着塔から酸素含有脱着ガスを導出するときに当該吸着塔内を減圧するための手段としても併せて機能する。このような構成は、本併行分離システムをコンパクトに構築するうえで好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る酸素・窒素併行分離システムX1を表す。酸素・窒素併行分離システムX1は、圧力変動吸着式(PSA)ガス分離装置1と、膜式ガス分離器2と、原料ガス供給装置3と、ポンプ4,5と、サイレンサ6と、圧縮機7と、気液分離器8と、酸素濃度制御機構9と、これらを連結する配管とを備え、空気(酸素・窒素含有原料ガス)から酸素富化ガスおよび窒素富化ガスを併行して分離すべく、圧力変動吸着式ガス分離工程、圧縮工程、および膜式ガス分離工程を含む酸素・窒素併行分離方法を実施するように構成されている。
【0023】
PSAガス分離装置1は、主に窒素を優先的に吸着するための吸着剤が充填された少なくとも一つの吸着塔(図示略)を備え、当該吸着塔を用いて行う圧力変動吸着式ガス分離法により酸素・窒素含有原料ガス(本実施形態では空気)から酸素富化ガスを取り出すことのできるものである。吸着塔に充填される吸着剤としては、Li−X型ゼオライトモレキュラーシーブ、Ca−X型ゼオライトモレキュラーシーブ、およびCa−A型ゼオライトモレキュラーシーブなどを採用することができる。単一の吸着塔には、一種類の吸着剤を充填してもよいし、複数種類の吸着剤を充填してもよい。
【0024】
PSAガス分離装置1にて実行される圧力変動吸着式ガス分離法では、単一の吸着塔について、吸着工程、脱着工程、および再生工程を含む1サイクルが繰り返される。吸着工程は、塔内が所定の高圧状態にある吸着塔に空気を導入して当該原料ガス中の窒素およびその他の成分(二酸化炭素,湿分など)を吸着剤に吸着させ、当該吸着塔から酸素富化ガスを導出するための工程である。脱着工程は、吸着塔内を減圧して吸着剤から窒素を脱着させ、当該窒素を塔外に排出するための工程である。再生工程は、再度の吸着工程に吸着塔を備えさせるべく、例えば洗浄ガスを塔内に通流させることにより、窒素に対する吸着剤の吸着性能を回復させるための工程である。このようなPSAガス分離装置1としては、公知のPSA酸素分離装置を用いることができる。
【0025】
膜式ガス分離器2は、導入口2aおよび導出口2b,2cを有し、酸素を優先的に透過させるガス分離膜2Aを備える。膜式ガス分離器2の内部には所定のガス流路(具体的には図示せず)が設けられ、導入口2aと導出口2bはガス流路の一部を介して連通している。また、導入口2aから導出口2cまでのガス流路の所定箇所に、ガス分離膜2Aは配設されている。ガス分離膜2Aは、例えば、ポリイミドやポリスルホンなどよりなる多孔質樹脂膜である。そのような多孔質樹脂膜としては、ユーピレックスPT(宇部興産(株)製)を用いることができる。
【0026】
原料ガス供給装置3は、酸素・窒素含有原料ガスである空気をPSAガス分離装置1の吸着塔に供給するためのものであり、例えば空気ブロアである。ポンプ4は、PSAガス分離装置1の吸着塔内を吸引減圧するためのものであり、例えば真空ポンプである。また、ポンプ5は、膜式ガス分離器2におけるガス分離膜2Aの透過側(ガス分離膜2Aから導出口2cまでのガス流路)を吸引減圧するためのものであり、例えば真空ポンプである。
【0027】
サイレンサ6は、ポンプ4からのガスの一部を圧縮機7に導きつつ、ポンプ4からのガスの残部をシステム外に排出するためのものであり、ポンプ4からのガスを圧縮機7に導くためのガス流路と、ポンプ4からのガスを消音しつつシステム外に排出するためのガス流路とを有する。
【0028】
圧縮機7は、サイレンサ6を経たガスを圧縮して気液分離器8に供給するためのものである。また、気液分離器8は、排出口8aを有しており、圧縮機7から送出されるガスに含まれる水分を当該ガスから分離するためのものである。排出口8aは、気液分離器8内に回収された水分を気液分離器8外に排出するためのものである。
【0029】
酸素濃度制御機構9は、膜式ガス分離器2の導出口2bに継合された配管L1に設けられた酸素センサ9aおよび自動弁9bからなり、配管L1内を通流するガスの酸素濃度に応じて、当該ガスの通流量(即ち、膜式ガス分離器2のガス分離膜2Aを透過しないガスの量)を調節することにより、当該ガスの酸素濃度を所望の値に調整するためのものである。酸素センサ9aは、配管L1内を通流するガスの酸素濃度を常時的に検知するためのものである。酸素濃度制御機構9においては、酸素センサ9aの検知結果に応じて自動弁9bの開口度が所望に調節されるように構成されている。
【0030】
以上の構成を有する酸素・窒素併行分離システムX1の稼動時には、原料ガス供給装置3の作動により、原料ガス供給装置3からPSAガス分離装置1へと空気が供給される。
【0031】
PSAガス分離装置1においては、空気は圧力変動吸着式ガス分離工程に付される。具体的には、PSAガス分離装置1では、圧力変動吸着式ガス分離法により、吸着塔ごとに、吸着工程、脱着工程、および再生工程を含む1サイクルが繰り返される。
【0032】
吸着工程では、塔内が所定の高圧状態にある吸着塔に、空気が導入される。当該吸着塔では、空気に含まれる窒素およびその他の成分(二酸化炭素,湿分など)が吸着剤により吸着除去され、高純度酸素ガス(酸素富化ガス)が塔外へ導出される。この高純度酸素ガスは、所定の配管を介して酸素・窒素併行分離システムX1外に取り出される。
【0033】
脱着工程では、ポンプ4の作動により、吸着塔が減圧されて吸着剤から窒素およびその他の成分が脱着され、塔内に残存する酸素と当該脱着成分とを含む酸素含有脱着ガスが塔外ないしPSAガス分離装置1外に排出される。脱着工程にある吸着塔から排出される酸素含有脱着ガスにおける圧力の時間変化の一例を表すグラフを、図2に示す。図2のグラフにおいて、横軸は、吸着塔における脱着時間(脱着工程開始からの経過時間)を表し、縦軸は、脱着圧力(酸素含有脱着ガスの圧力)を表す。本圧力変化例では、脱着工程開始時の圧力は大気圧であり、10秒経過時の圧力は0.0611MPaであり、30秒経過時の圧力は0.0332MPaである。また、図2には、脱着工程開始時、10秒経過時、および30秒経過時における、酸素含有脱着ガスの酸素濃度(酸素の体積割合)も併せて示した。
【0034】
再生工程では、例えば洗浄ガスが塔内に通流されることにより、主に窒素に対する吸着剤の吸着性能が回復される。再生工程を終えた吸着塔では上述の吸着が再び行われる。
【0035】
PSAガス分離装置1においては、以上のような圧力変動吸着式ガス分離工程が行われることにより、高純度酸素ガスが取り出されるとともに、酸素含有脱着ガスが取り出されるのである。高純度酸素ガスは、例えば、所定の用途に連続的に使用されるか、或は、所定のタンクに貯留される。一方、脱着工程にある吸着塔からPSAガス分離装置1外に排出された酸素含有脱着ガスは、所定の配管およびポンプ4を通ってサイレンサ6へと送られる。そして、酸素含有脱着ガスの一部は、サイレンサ6を通過して圧縮機7に至る。酸素含有脱着ガスの残部は、サイレンサ6にてシステム外に排出される。
【0036】
サイレンサ6を通過した酸素含有脱着ガスは、圧縮機7にて圧縮され(圧縮工程)、気液分離器8を経て、膜式ガス分離器2に供給される。好ましくは、酸素含有脱着ガスは圧縮機7により0.6MPa以上の圧力まで圧縮される。また、気液分離器8では、酸素含有脱着ガスから水分が分離される。この水分は、排出口8aを介して気液分離器8から外部に排出される。
【0037】
膜式ガス分離器2においては、酸素含有脱着ガスは膜式ガス分離工程に付される。具体的には、導入口2aから膜式ガス分離器2内に導入される酸素含有脱着ガスG1は、膜式ガス分離器2のガス流路内に配設されているガス分離膜2Aにより、ガス分離膜2Aを透過する透過ガスG2と、透過しない非透過ガスG3とに、分離される。透過ガスG2は、ガス分離膜2Aの透過特性に基づいて酸素濃度が高められた酸素富化ガスであり、非透過ガスG3は、ガス分離膜2Aの透過特性に基づいて窒素濃度が高められた高純度窒素ガス(窒素富化ガス)である。
【0038】
膜式ガス分離工程では、ポンプ5の作動により、ガス分離膜2Aの透過側は大気圧未満の圧力に減圧される。ポンプ5による減圧圧力は例えば0.02〜0.05MPaである。透過ガスG2は、導出口2cから膜式ガス分離器2外に導出され、この後、ポンプ5を通ってシステム外に排出される。
【0039】
これとともに、膜式ガス分離工程では、酸素濃度制御機構9の作動により、直接的には非透過ガス量が調節されて、非透過ガスG3の酸素濃度が一定に維持される。酸素濃度制御機構9の酸素センサ9aは、導出口2bから膜式ガス分離器2外に導出されて配管L1内を通る非透過ガスG3について酸素濃度を常時的に検知する。検知濃度が所望値を上回る場合には、自動弁9bの開口度が小さくされ、配管L1内を通る非透過ガスG3の流量、ひいては膜式ガス分離器2での膜式ガス分離工程にて生ずる非透過ガスG3の量(単位時間あたりの発生量)は、低減される。一方、検知濃度が所望値を下回る場合には、自動弁9bの開口度が大きくされ、配管L1内を通る非透過ガスG3の流量、ひいては膜式ガス分離器2での膜式ガス分離工程にて生ずる非透過ガスG3の量は、増加される。膜式ガス分離工程での非透過ガスG3の純度および酸素濃度は、当該非透過ガスG3の発生量に依存して変化し得るので、このような非透過ガスG3の流量調節により当該非透過ガスG3の酸素濃度を制御することができるのである。
【0040】
膜式ガス分離器2においては、以上のような膜式ガス分離工程が行われることにより、酸素濃度制御が施されつつ高純度窒素ガスが取り出されるのである。この高純度窒素ガスは、例えば、所定の用途に連続的に使用されるか、或は、所定のタンクに貯留される。
【0041】
酸素・窒素併行分離システムX1によると、以上のようにして、空気から高純度酸素ガスおよび高純度窒素ガスを併行して分離することができる。
【0042】
酸素・窒素併行分離システムX1による酸素・窒素併行分離方法おいては、圧力変動吸着式ガス分離工程が行われるPSAガス分離装置1の吸着塔から排出されて膜式ガス分離器2での膜式ガス分離工程に付される酸素含有脱着ガスG1の酸素分圧(ないし、体積あたりの物質量で表される酸素濃度)と、当該酸素含有脱着ガスG1とはガス分離膜2Aにより隔てられている透過ガスG2の酸素分圧(ないし、体積あたりの物質量で表される酸素濃度)とについて、ガス分離膜2Aの透過側を大気圧未満の所望の圧力に減圧することにより、充分な差を設けることができる。また、圧縮機7での圧縮工程も、吸着塔からの酸素含有脱着ガスG1の酸素分圧と、ガス分離膜2Aにより隔てられている透過ガスG2の酸素分圧とについて、充分な差を設けるのに寄与している。酸素含有脱着ガスG1の酸素分圧(ないし酸素濃度)が変動する場合であっても、当該両酸素分圧について充分な差を設けることにより、ガス分離膜2Aにおける酸素透過のための充分なドライビングフォースを確保することができるとともに当該ドライビングフォースの変動比率を抑制することができ、従って、ガス分離膜2Aに対する酸素の充分な透過量を得ることができるとともに当該透過量の変動を抑制することができる。ガス分離膜2Aにおける酸素透過量が多いほど、ガス分離膜2Aにおける窒素透過量は少ない傾向にあり、従って、膜式ガス分離器2での膜式ガス分離工程における非透過ガス(高純度窒素ガス)G3の発生量は多い傾向にある。一方、ガス分離膜2Aにおける酸素透過量の変動比率が小さいほど、膜式ガス分離工程における非透過ガス(高純度窒素ガス)G3の発生量の変動比率は小さい傾向にある。
【0043】
このように、本発明に係る酸素・窒素併行分離システムX1による酸素・窒素併行分離方法によると、多量の非透過窒素富化ガスを安定した流量で供給することができる。したがって、本併行分離方法によると、PSAガス分離装置1により空気から高純度酸素ガスを分離取得するとともに、PSAガス分離装置1から連続的に供給される酸素含有脱着ガスから高純度窒素ガスを連続的に効率よく分離取得することが、可能なのである。そのため、本併行分離方法によると、PSAガス分離装置1からの酸素含有脱着ガスを一旦貯留するためのタンク等を用いる必要はない。
【0044】
本発明においては、膜式ガス分離器2に導入される酸素含有脱着ガスG1について、圧力をP1(MPa)、酸素濃度(酸素の体積割合)をX1、ガス量をQ1(Nm3/hour)とし、膜式ガス分離器2から導出される透過ガスG2について、圧力(即ち、ガス分離膜2Aの透過側の圧力)をP2(MPa)、酸素濃度をX2、ガス量をQ2(Nm3/hour)とし、膜式ガス分離器2から導出される非透過ガス(高純度窒素ガス)G3について、酸素濃度をX3、ガス量をQ3(Nm3/hour)とし、ガス分離膜2Aの面積および厚さをS(m2)およびL(m)とし、ガス分離膜2Aの酸素の透過係数をK(Nm2/hour・MPa)とすると、ガス分離膜2Aによるガス分離について、理論上は下記の式(1)〜(3)が成立する。式(1)はガス量バランスを表し、式(2)は酸素量バランスを表し、式(3)はガス分離膜2Aの酸素透過特性を表す。
【0045】
【数1】

【0046】
例えば、ガス分離膜2Aとしてポリイミド多孔質膜であるユーピレックスPT(宇部興産(株)製)を採用して式(3)のK(S/L)の値を186に設定し、PSAガス分離装置1から図2に示すように排出されていくこととなる、脱着工程開始時(脱着初期)において酸素濃度(X1)が20.6%の酸素含有脱着ガスを、圧縮機7により0.79MPa(P1)に圧縮して膜式ガス分離器2に125Nm3/hour(Q1)の供給量で導入し、ガス分離膜2Aの透過側の圧力を0.0332MPa(P2)に減圧し、残存酸素濃度(X3)が1%の非透過ガス(高純度窒素ガス)が得られるように酸素濃度制御機構9により非透過ガス流量を調整する場合には、3つの未知数X2,Q2,Q3を、上記式(1)〜(3)からなる連立方程式の解として求めることができ、脱着初期には、酸素濃度(X2)が88.9%の透過ガスが27.9Nm3/hour(Q2)発生し、非透過ガス量(Q3)は97.1Nm3/hourとなることが判る。脱着初期におけるこれらの値は、図3の表に掲げる。
【0047】
K(S/L),P1,Q1,P2,X3の値を一定に保ちつつ、脱着工程開始から10秒経過時(脱着中期)において酸素含有脱着ガスの酸素濃度(X1)が図2に示すように10.0%に至ったときには、上記式(1)〜(3)からなる連立方程式の解としてX2,Q2,Q3を求めることにより、当該脱着中期には、酸素濃度(X2)が52.2%の透過ガスが22.0Nm3/hour(Q2)で発生し、非透過ガス量(Q3)は103.2Nm3/hourとなることが判る。脱着中期におけるこれらの値も、図3の表に掲げる。
【0048】
K(S/L),P1,Q1,P2,X3の値を一定に保ちつつ、脱着工程開始から30秒経過時(脱着末期)において酸素含有脱着ガスの酸素濃度(X1)が図2に示すように5.0%に至ったときには、上記式(1)〜(3)からなる連立方程式の解としてX2,Q2,Q3を求めることにより、当該脱着末期には、酸素濃度(X2)が35.7%の透過ガスが14.4Nm3/hourの量(Q2)で発生し、非透過ガス量(Q3)は110.6Nm3/hourとなることが判る。脱着末期におけるこれらの値も、図3の表に掲げる。
【0049】
一方、ガス分離膜2Aの透過側を減圧せずに大気圧(0.101MPa)とする以外は、上述の条件と同様にして、PSAガス分離装置1から図2に示すように酸素含有脱着ガスが排出される場合の脱着初期、脱着中期、および脱着末期のX2,Q2,Q3を式(1)〜(3)に基づいて求めると、その結果は、図4の表に示すとおりである。
【0050】
図3の表および図4の表の比較から理解できるように、膜式ガス分離工程においてガス分離膜2Aの透過側を減圧しない場合には(図4参照)、透過ガス量(Q2)は脱着初期から脱着末期にわたって比較的に多く、従って、非透過ガス量(Q3)は脱着初期から脱着末期にわたって比較的に少ない。また、酸素含有脱着ガスの酸素濃度(X1)の低下に伴う透過ガス量(Q2)の変化量(ないし変動比率)は大きく、従って、非透過ガス量(Q3)の変化量(ないし変動比率)も大きい。これに対し、膜式ガス分離工程においてガス分離膜2Aの透過側を大気圧未満に減圧する場合には(図3参照)、透過ガス量(Q2)は脱着初期から脱着末期にわたって比較的に少なく、従って、非透過ガス量(Q3)は脱着初期から脱着末期にわたって比較的に多い。また、酸素含有脱着ガスの酸素濃度(X1)の低下に伴う透過ガス量(Q2)の変化量(ないし変動比率)は小さく、従って、非透過ガス量(Q3)の変化量(ないし変動比率)も小さい。以上のことから、酸素・窒素併行分離システムX1における膜式ガス分離工程によると、多量の高純度窒素ガスを安定した流量で供給することができることが、理解できよう。
【0051】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る酸素・窒素併行分離システムX2を表す。酸素・窒素併行分離システムX2は、ポンプ5を備えない点、および、膜式ガス分離器2の導出口2cとポンプ4の吸引側とを継合する配管L2を備える点において、酸素・窒素併行分離システムX1と異なる。
【0052】
酸素・窒素併行分離システムX2におけるポンプ4は、PSAガス分離装置1の吸着塔内を減圧するための減圧手段として機能するとともに、膜式ガス分離器2におけるガス分離膜2Aの透過側を減圧するための減圧手段としても機能する。このような構成は、システムをコンパクトに構築するうえで好適である。
【0053】
酸素・窒素併行分離システムX2の稼動時には、PSAガス分離装置1において、酸素・窒素併行分離システムX1に関して上述したのと同様に圧力変動吸着式ガス分離工程が行われることにより、高純度酸素ガスおよび酸素含有脱着ガスが取り出される。また、膜式ガス分離器2において、ガス分離膜2Aの透過側の減圧手法以外は酸素・窒素併行分離システムX1に関して上述したのと同様に、膜式ガス分離工程が行われることにより、高純度窒素ガスが取り出される。本実施形態における膜式ガス分離工程では、ポンプ4の作動により、ガス分離膜2Aの透過側は大気圧未満の圧力に減圧される。例えば、ポンプ4の作動により、吸着工程にある吸着塔内が吸引減圧されるのと同時に、ガス分離膜2Aの透過側も減圧される。
【0054】
したがって、酸素・窒素併行分離システムX2による酸素・窒素併行分離方法によると、酸素・窒素併行分離システムX1によるのと略同様に、高純度酸素ガスを供給することができるのに加え、多量の高純度窒素ガスを安定した流量で供給することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る酸素・窒素併行分離システムの概略構成を表す。
【図2】図1に示す圧力変動吸着式ガス分離装置から排出される酸素含有脱着ガスについて、圧力の時間変化の一例を表す。
【図3】図1に示す酸素・窒素併行分離システムを使用して実行される本発明の酸素・窒素併行分離方法における膜式ガス分離工程に関し、図2に示すようにPSAガス分離装置から酸素含有脱着ガスが排出される場合の、脱着初期(脱着工程開始時)、脱着中期(10秒経過時)、および脱着末期(30秒経過時)にわたる各物理量の変化の一例をまとめた表である。
【図4】図1に示す酸素・窒素併行分離システムの膜式ガス分離器におけるガス分離膜の透過側を減圧せずに実行される膜式ガス分離工程に関し、図2に示すようにPSAガス分離装置から酸素含有脱着ガスが排出される場合の、脱着初期(脱着工程開始時)、脱着中期(10秒経過時)、および脱着末期(30秒経過時)にわたる各物理量の変化の一例をまとめた表である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る酸素・窒素併行分離システムの概略構成を表す。
【図6】従来の酸素・窒素併行分離システムの概略構成を表す。
【符号の説明】
【0056】
X1,X2,X3 酸素・窒素併行分離システム
1 PSAガス分離装置
2 膜式ガス分離器
2A ガス分離膜
3 原料ガス供給装置
4,5 ポンプ
6 サイレンサ
7 圧縮機
8 気液分離器
9 酸素濃度制御機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素および窒素を含む混合ガスから酸素ガスおよび窒素ガスを併行分離するための方法であって、
窒素を優先的に吸着するための吸着剤が充填された吸着塔を用いて行う圧力変動吸着式ガス分離法により、前記吸着塔内が相対的に高圧である状態において、前記吸着塔に前記混合ガスを導入して当該混合ガス中の窒素を前記吸着剤に吸着させ、当該吸着塔から酸素富化ガスを導出し、且つ、前記吸着塔内が相対的に低圧である状態において、前記吸着剤から前記窒素を脱着させ、前記吸着塔内に残存する酸素と当該窒素とを含む酸素含有脱着ガスを当該吸着塔から導出するための、圧力変動吸着式ガス分離工程と、
酸素を優先的に透過させるためのガス分離膜の透過側を大気圧未満の圧力に減圧しつつ、当該ガス分離膜により、前記酸素含有脱着ガスを、前記ガス分離膜を透過する透過ガスおよび透過しない非透過窒素富化ガスに分離するための、膜式ガス分離工程と、を含む、酸素ガスおよび窒素ガスの併行分離方法。
【請求項2】
前記酸素含有脱着ガスが前記膜式ガス分離工程に付される前に当該酸素含有脱着ガスを圧縮するための圧縮工程を更に含む、請求項1に記載の併行分離方法。
【請求項3】
前記圧縮工程では、前記酸素含有脱着ガスを0.6MPa以上の圧力に圧縮する、請求項2に記載の併行分離方法。
【請求項4】
前記圧力変動吸着式ガス分離工程における前記吸着塔から前記酸素含有脱着ガスを導出するときの当該吸着塔内の減圧と、前記膜式ガス分離工程における前記透過側の前記減圧とは、単一の減圧手段により実現される、請求項1から3のいずれか一つに記載の併行分離方法。
【請求項5】
酸素および窒素を含む混合ガスから酸素ガスおよび窒素ガスを併行分離するためのシステムであって、
窒素を優先的に吸着するための吸着剤が充填された吸着塔を用いて行う圧力変動吸着式ガス分離法により、前記吸着塔内が相対的に高圧である状態において、前記吸着塔に前記混合ガスを導入して当該混合ガス中の窒素を前記吸着剤に吸着させ、当該吸着塔から酸素富化ガスを導出し、且つ、前記吸着塔内が相対的に低圧である状態において、前記吸着剤から前記窒素を脱着させ、前記吸着塔内に残存する酸素と当該窒素とを含む酸素含有脱着ガスを当該吸着塔から導出するための、圧力変動吸着式ガス分離装置と、
酸素を優先的に透過させるためのガス分離膜を有し、前記酸素含有脱着ガスを、前記ガス分離膜を透過する透過ガスおよび透過しない非透過窒素富化ガスに分離して導出するための、膜式ガス分離器と、
前記膜式ガス分離器の前記ガス分離膜における透過側を大気圧未満の圧力に減圧するための減圧手段と、を備える、酸素ガスおよび窒素ガスの併行分離システム。
【請求項6】
前記酸素含有脱着ガスが前記膜式ガス分離器に供給される前に当該酸素含有脱着ガスを圧縮するための圧縮手段を更に備える、請求項5に記載の併行分離システム。
【請求項7】
前記減圧手段は、前記圧力変動吸着式ガス分離装置の前記吸着塔から前記酸素含有脱着ガスを導出するときに当該吸着塔内を減圧するための手段としても併せて機能する、請求項5または6に記載の併行分離システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−43599(P2006−43599A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228966(P2004−228966)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】