説明

酸素燃焼ボイラ及び酸素燃焼ボイラの制御方法

【課題】本発明の目的は、既存の空気燃焼ボイラとして運用している石炭ボイラを、酸素燃焼ボイラとして運用した場合に改造に要する費用が抑制でき、高温ガスによる酸素燃焼ボイラの損傷を防止して長期に亘って安定して運転可能な信頼性の高い酸素燃焼ボイラを提供する。
【解決手段】酸素燃焼ボイラ1において、空気を分離して酸素を製造し酸素燃焼ボイラ1に送給する酸素分離装置23と、ボイラから排出された排ガスの一部を酸素燃焼ボイラ1に送給して再循環させる再循環ファン26を設置し、酸素燃焼ボイラ1の火炉1aの各熱交換器に設置した蒸気、圧力、流量のセンサ14c〜14fで検出した測定値から火炉1aで蒸気が得た収熱量を演算し、演算した火炉1aの収熱量が所望の設定収熱量となるように再循環ファンの稼動を操作する制御装置150を設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2回収を目的とした石炭火力発電プラントに係わり、特に石炭火力発電プラントのCO2回収に好適な酸素燃焼ボイラ及び酸素燃焼ボイラの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化対策として、温室効果ガスの一つであるCO2(二酸化炭素)の排出削減の取り組みが世界的に実施されている。火力発電所はCO2の排出量が多い設備の一つであり、特に炭素含有量が多く燃焼排ガス中にCO2を多量に発生させる石炭を燃焼する石炭ボイラを備えた石炭火力発電プラントは発電量当りのCO2排出量が最も多く、早急なCO2削減対策が要望されている。
【0003】
石炭火力発電プラントのCO2削減対策としては、発電の高効率化に加えて、石炭ボイラでの燃焼によって発生した燃焼排ガス中からCO2の分離・回収が挙げられる。
【0004】
CO2の分離・回収とは、石炭火力発電プラントで発生した燃焼排ガス中からCO2のみを取り出して圧縮・液化し、パイプライン等を通してこの液化させたCO2を地下深部等に貯留させる方式である。
【0005】
石炭火力発電プラントに適用される燃焼排ガス中のCO2分離・回収の方法としては、(1)燃焼前回収、(2)燃焼後回収、(3)酸素燃焼、の三種類に大別できる。
【0006】
(1)の燃焼前回収方式とは、石炭と水蒸気の反応によって得られるH2(水素)とCO2の混合ガスから物理吸収法等によってCO2を回収し、残りのH2を燃料として使用する方法である。燃料がH2であれば、燃焼してもCO2は発生しない。
【0007】
(2)の燃焼後回収方式とは、通常の空気中での石炭燃焼(空気燃焼と呼ぶ)で得られる燃焼排ガスから膜分離法等によりCO2を回収する方法である。この場合、燃焼排ガスの主要成分は、空気に含まれるN2(窒素)と燃焼で発生したCO2であり、これらを分離してCO2のみを回収する。
【0008】
上記した二つのCO2分離・回収の方式に対し、(3)の酸素燃焼方式とは、空気から酸素を分離し、分離させた純酸素を石炭ボイラに供給して燃料の石炭を燃焼させて前記石炭ボイラを酸素燃焼ボイラとして使用するように構成したものであり、この酸素燃焼ボイラで石炭を燃焼して生成した燃焼排ガス(主要成分はCO2)の一部と純酸素とを混合させた混合ガスを支燃ガスとして酸素燃焼ボイラに供給して石炭を燃焼させる方式である。
【0009】
ところで空気燃焼ボイラで発生した燃焼排ガスには窒素(N2)が多く含まれるので、空気燃焼ボイラから排出される排ガスから二酸化炭素(CO2)を分離する処理が必要となるが、酸素燃焼ボイラで発生した燃焼排ガスは成分のほとんどがCO2であるため、排ガスからCO2の分離処理をしないで、そのままCO2を回収できる。
【0010】
この酸素燃焼ボイラに供給する支燃ガスとして酸素にCO2を混合させるのは、石炭ボイラ内で燃焼する火炎温度を抑制するためである。
【0011】
石炭ボイラに酸素のみを供給して微粉炭を燃焼させる燃焼(純酸素燃焼)では石炭ボイラ内で燃焼する火炎温度が高くなるので、ボイラ材料として高価な耐熱鋼が必要となる点、また、石炭ボイラに設置されたバーナでの支燃ガスの吹き出し流速が低下して火炎形成が困難になる点から、石炭ボイラでは純酸素燃焼は実施されていない。
【0012】
石炭ボイラを空気燃焼から酸素燃焼に改造する場合に、酸素燃焼での熱吸収量のバランスが空気燃焼での熱吸収量のバランスを再現できるのであれば、伝熱面積変更のための改造が不要になり、ボイラの改造コストを大幅に抑制することができる。
【0013】
ここで、酸素燃焼ボイラは酸素と混合する燃焼排ガスの量を変えて支燃ガスの酸素濃度を調整することで、熱交換器の熱吸収量のバランスやボイラ全体の収熱量を変えることができるので、これを利用して空気燃焼と近い状態を作り出す制御方式を採用することが考えられる。
【0014】
例えば、特開2007−147162号公報に記載された石炭ボイラを酸素燃焼させる酸素燃焼ボイラの制御方式では、あらかじめ負荷要求に応じたボイラ収熱量の目標値を設定し、収熱量の実測値が目標値となるように排ガス循環量を制御することにより、支燃ガスの酸素濃度を調整している。
【0015】
ここでの目標値は、既存の空気燃焼ボイラにおいて定められた目標の収熱量と同等になるように設定している。さらに、酸素供給量についても、負荷要求に対応した設定値を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2007−147162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、前記特開2007−147162号公報に記載された石炭ボイラを酸素燃焼させる酸素燃焼ボイラの制御方式では、ボイラ負荷に応じて石炭ボイラに供給する酸素量を設定値となるように制御すると共に、ボイラ収熱量が既存の空気燃焼ボイラと同等となるように排ガス循環量を制御している。このため、石炭ボイラに供給する酸素濃度が変更されると、前記したように、ボイラ全体の収熱量のみならず、ボイラを構成する各熱交換器の収熱量のバランスも変わってくる。
【0018】
そこで、ボイラ収熱量のみを制御の指標として、これが既存の空気燃焼ボイラと同等の目標値を満たすように石炭ボイラに供給する酸素濃度を上昇させるよう制御した場合、各熱交換器の収熱バランスが空気燃焼条件の場合と大きく異なる状況に陥ることが考えられる。しかも、一部の熱交換器で、空気燃焼の状態よりも収熱量が過大となれば、材料の耐熱性の限界点を超えてしまい、材料の損傷に至る可能性がある。
【0019】
特に、経年劣化によって石炭ボイラの収熱効率が低下した場合には、このボイラ収熱効率の低下を補うために供給する酸素濃度は増加する方向に制御されるので、火炉のガス温度もそれに合わせて上昇することにより火炉での収熱量が増加し、材料の熱的な損傷がさらに進行することになる。
【0020】
本発明の目的は、既存の空気燃焼ボイラとして運用している石炭ボイラを酸素燃焼ボイラとして運用した場合に、改造に要する費用が抑制でき、高温ガスによる酸素燃焼ボイラの損傷を防止して長期に亘って安定して運転可能な信頼性の高い酸素燃焼ボイラ及び酸素燃焼ボイラの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の酸素燃焼ボイラは、空気から分離した酸素と、燃料の石炭を燃焼して蒸気需要
設備に供給する蒸気を発生させたボイラから排出された排ガスから分岐した排ガスの一部とを混合し、石炭を燃焼させる支燃ガスとして該ボイラに供給するように構成した酸素燃焼ボイラにおいて、空気を分離して酸素を製造する酸素分離装置を設け、前記酸素分離装置で製造された酸素を該酸素燃焼ボイラに導く酸素供給系統を配設し、酸素燃焼ボイラから排出された排ガスから分岐した排ガスの一部を該酸素燃焼ボイラに導く再循環系統を配設し、前記再循環系統に排ガスを送給する再循環ファンを設け、前記酸素燃焼ボイラの火炉または水壁の各熱交換器に蒸気温度、流量、圧力を測定する測定センサをそれぞれ設置し、酸素燃焼ボイラに供給する燃料の指令信号を演算する燃料流量制御器と、前記測定センサによる測定値に基づいて火炉または水壁の熱交換器で蒸気が得た収熱量を演算する火炉収熱量演算器と、燃料流量制御器の指令信号に応じて火炉収熱量の所望の値を設定する収熱量設定器と、火炉収熱量演算器で演算した火炉または水壁の熱交換器の収熱量の演算値と収熱量設定器で設定された収熱量の設定値に基づいて前記再循環ファンの運転を調節する指令信号を出力する排ガス流量制御器をそれぞれ備えた制御装置を設置したことを特徴とする。
【0022】
また、本発明の酸素燃焼ボイラは、空気から分離した酸素と、燃料の石炭を燃焼して蒸気需要設備に供給する蒸気を発生させたボイラから排出された排ガスから分岐した排ガスの一部とを混合し、石炭を燃焼させる支燃ガスとして該ボイラに供給するように構成した酸素燃焼ボイラにおいて、空気を分離して酸素を製造する酸素分離装置を設け、前記酸素分離装置で製造された酸素を該酸素燃焼ボイラに導く酸素供給系統を配設し、酸素燃焼ボイラから排出された排ガスから分岐した排ガスの一部を該酸素燃焼ボイラに導く再循環系統を配設し、前記再循環系統に排ガスを送給する再循環ファンを設け、前記酸素燃焼ボイラの水壁出口の蒸気温度を測定する温度センサ、または酸素燃焼ボイラの水壁の代表水管のメタル温度を測定するメタル温度センサを設置し、酸素燃焼ボイラに供給する燃料の指令信号を演算する燃料流量制御器と、燃料流量制御器の指令信号に応じて酸素燃焼ボイラの水壁出口の蒸気温度の所望の値を設定する蒸気温度設定器または酸素燃焼ボイラの水壁の水管のメタル温度の所望の値を設定するメタル温度設定器と、前記蒸気温度設定器の温度設定値と温度センサで測定した水壁出口の蒸気温度に基づいて、またはメタル温度設定器のメタル温度設定値とメタル温度センサで測定した水壁の代表水管のメタル温度に基づいて、前記再循環ファンの運転を調節する指令信号を出力する排ガス流量制御器をそれぞれ備えた制御装置を設置したことを特徴とする。
【0023】
本発明の酸素燃焼ボイラの制御方法は、空気から分離した酸素と、燃料の石炭を燃焼して蒸気需要設備に供給する蒸気を発生させたボイラから排出された排ガスから分岐した排ガスの一部とを混合し、石炭を燃焼させる支燃ガスとして該ボイラに供給するように構成した酸素燃焼ボイラの制御方法において、ボイラに供給される支援ガスとして混合される酸素は酸素分離装置によって空気から分離して製造し、製造された酸素は酸素供給系統を通じて該酸素燃焼ボイラに導き、ボイラに供給される支援ガスとして混合される排ガスは該ボイラから排出された排ガスの一部は再循環ファンによって再循環系統を通じて該酸素燃焼ボイラに送給し、この酸素分離装置で製造された酸素と再循環ファンから送給された排ガスとを混合した支援ガスを酸素燃焼ボイラに供給して該酸素燃焼ボイラでの石炭の燃焼に使用し、測定センサによって酸素燃焼ボイラの火炉または水壁の各熱交換器に蒸気温度、流量、圧力を測定し、制御装置にそれぞれ設置された、燃料流量制御器によって酸素燃焼ボイラに供給する燃料の指令信号を演算し、火炉収熱量演算器によって前記測定センサの測定値に基づいて火炉または水壁の熱交換器で蒸気が得た収熱量を演算し、燃料流量制御器の指令信号に応じて収熱量設定器によって火炉収熱量の所望の値を設定し、火炉収熱量演算器で演算した火炉または水壁の熱交換器の収熱量の演算値と収熱量設定器で設定された収熱量の設定値に基づいて排ガス流量制御器によって前記再循環ファンの運転を調節する指令信号を演算し、この排ガス流量制御器で演算した指令信号によって火炉または水壁の収熱量が所望の設定収熱量となるように再循環ファンから供給される排ガスの供給量を調節することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の酸素燃焼ボイラの制御方法は、空気から分離した酸素と、燃料の石炭を燃焼して蒸気需要設備に供給する蒸気を発生させたボイラから排出された排ガスから分岐した排ガスの一部とを混合し、石炭を燃焼させる支燃ガスとして該ボイラに供給するように構成した酸素燃焼ボイラの制御方法において、ボイラに供給される支援ガスとして混合される酸素は酸素分離装置によって空気から分離して製造し、製造された酸素は酸素供給系統を通じて該酸素燃焼ボイラに導き、ボイラに供給される支援ガスとして混合される排ガスは該ボイラから排出された排ガスの一部を再循環ファンによって再循環系統を通じて該酸素燃焼ボイラに送給し、この酸素分離装置で製造された酸素と再循環ファンから送給された排ガスとを混合した支援ガスを酸素燃焼ボイラに供給して該酸素燃焼ボイラでの石炭の燃焼に使用し、測定センサによって酸素燃焼ボイラの水壁出口の蒸気温度を測定、またはメタル温度センサによって酸素燃焼ボイラの水壁の代表水管のメタル温度を測定し、
制御装置にそれぞれ設置された、燃料流量制御器によって酸素燃焼ボイラに供給する燃料の指令信号を演算し、温度設定器によって燃料流量制御器の指令信号に応じて酸素燃焼ボイラの水壁出口の蒸気温度の所望の値を設定、または酸素燃焼ボイラの水壁の水管のメタル温度の所望の値を設定し、蒸気温度設定器の温度設定値と温度センサで測定した水壁出口の蒸気温度に基づいて、またはメタル温度設定器のメタル温度設定値とメタル温度センサで測定した水壁の水管のメタル温度に基づいて排ガス流量制御器によって再循環ファンの運転を調節する指令信号を演算し、この排ガス流量制御器で演算した指令信号によって酸素燃焼ボイラの水壁出口の蒸気温度が所望の設定蒸気温度、または酸素燃焼ボイラの水壁の水管のメタル温度の値が所望の設定メタル温度となるように再循環ファンから供給される排ガスの供給量を調節することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、既存の空気燃焼ボイラとして運用している石炭ボイラを酸素燃焼ボイ
ラとして運用した場合に、改造に要する費用が抑制でき、高温ガスによる酸素燃焼ボイラの損傷を防止して長期に亘って安定して運転可能な信頼性の高い酸素燃焼ボイラ及び酸素燃焼ボイラの制御方法が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施例である酸素燃焼ボイラを備えた石炭火力発電プラントを示す概略構成図。
【図2】図1に記載した第1実施例の酸素燃焼ボイラの構成を示す概略断面図。
【図3】図1に記載した第1実施例の酸素燃焼ボイラを制御する制御装置の構成を示す制御ブロック図。
【図4】図3に記載した制御装置の構成要素である排ガス循環量制御器の構成を示す制御ブロック図。
【図5】図3に記載した制御装置の構成要素である酸素供給量制御器の構成を示す制御ブロック図。
【図6】本発明の第2実施例である酸素燃焼ボイラを備えた石炭火力発電プラントを示す概略構成図。
【図7】図6に記載した第2実施例の酸素燃焼ボイラを制御する制御装置の構成を示す制御ブロック図。
【図8】本発明の第3実施例である酸素燃焼ボイラを備えた石炭火力発電プラントを示す概略構成図。
【図9】図8に記載した第3実施例の酸素燃焼ボイラを制御する制御装置の構成を示す制御ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施例である酸素燃焼ボイラ及び酸素燃焼ボイラの制御方法について図面を参照して以下に説明する。
【実施例1】
【0028】
本発明の第1実施例である酸素燃焼ボイラ及び酸素燃焼ボイラの制御方法について図1乃至図5を用いて以下に説明する。
【0029】
図1は、本発明の第1実施例である酸素燃焼ボイラを有するCO2回収に好適な石炭火力発電プラントの構成を示す概略図である。
【0030】
図1に示した本発明の第1実施例の酸素燃焼ボイラを有する石炭火力発電プラントは、微粉炭を燃料として、石炭ボイラにて別途供給された酸素によって微粉炭を燃焼させる酸素燃焼ボイラ1を備えている。前記酸素燃焼ボイラ1は微粉炭を燃料とし、空気を供給して微粉炭を燃焼させる通常の空気燃焼ボイラと構造は同じである。
【0031】
前記酸素燃焼ボイラ1は、燃料である石炭を石炭供給装置2で粉砕して微粉炭にして、この微粉炭を石炭供給装置2から石炭供給系統3を通じて酸素燃焼ボイラ1に供給して、別途供給された酸素と共に燃焼させる。
【0032】
前記酸素燃焼ボイラ1で燃料の微粉炭を酸素と共に燃焼して発生した燃焼排ガスは、酸素燃焼ボイラ1から排ガスとして酸素燃焼ボイラ1の下流に設置された脱硝装置4に排ガス系統41を通じて導入され、酸素燃焼ボイラ1から排出した排ガス中に含まれた窒素酸化物(NOx)の濃度を所望の値になるように低減させる。
【0033】
脱硝装置4を流下した排ガスは、脱硝装置4の下流に設置された酸素予熱器5に排ガス系統41を通じて導入され、この酸素予熱器5にて流下する排ガスの熱を利用して酸素燃焼ボイラ1に供給するガスを加熱する。
【0034】
酸素予熱器5を流下した排ガスは、酸素予熱器5の下流に設置された集塵装置6に排ガス系統41を通じて導入され、この集塵装置6にて排ガス中に含まれた粉塵を除去する。
【0035】
更に集塵装置6を流下した排ガスは、集塵装置6の下流に設置された脱硫装置7に排ガス系統41を通じて導入され、この脱硫装置7にて排ガス中の硫黄酸化物(SOx)の濃度を所望の値になるように低減する。
【0036】
前記酸素燃焼ボイラ1には該酸素燃焼ボイラ1の内部を流下する燃焼排ガスによって加熱されて蒸気を発生させる複数の熱交換器(図示せず)が設置されている。
【0037】
そして酸素燃焼ボイラ1の前記熱交換器で発生した高圧の高温蒸気は、酸素燃焼ボイラ1から蒸気系統31を通じて蒸気需要設備である蒸気タービン設備50を構成する高圧蒸気タービン8に供給され、該高圧蒸気タービン8を駆動する。酸素燃焼ボイラ1から高圧蒸気タービン8に供給される高圧の蒸気流量は蒸気系統31に設置された加減弁10によって制御される。
【0038】
高圧蒸気タービン8を駆動して排出された蒸気は、蒸気系統33を通じて酸素燃焼ボイラ1に設置された熱交換器に供給され、該酸素燃焼ボイラ1の内部を流下する燃焼排ガスによって前記熱交換器で再度加熱された低圧の高温蒸気を酸素燃焼ボイラ1から蒸気系統32を通じて蒸気タービン設備50を構成する低圧蒸気タービン9に供給され、該低圧蒸気タービン9を駆動する。
【0039】
前記蒸気タービン設備50には高圧蒸気タービン8及び低圧蒸気タービン9の駆動によって回転され発電する発電機11が設置されている。そして低圧蒸気タービン9を駆動して排出された蒸気は蒸気系統34を通じて復水器12に流入し、この復水器12で冷却されて復水となる。
【0040】
復水器12で復水となった復水は、給水系統35に設置された給水ポンプ13によって昇圧され、前記酸素燃焼ボイラ1の図示していない熱交換器に給水として供給される。
【0041】
前記酸素燃焼ボイラ1のガス出口部分には、図2に示すようにプラントの状態量である燃焼排ガスのガス温度を計測するための排ガス温度センサ14aと、排ガスの酸素の濃度を計測するための排ガス組成センサ14bが設置されている。そして酸素燃焼ボイラ1を備えた石炭火力発電プラントには、種々の制御を行う制御装置150が設置されている。
【0042】
ここで、実際の石炭火力発電プラントでは、状態量を測定する各種のセンサは酸素燃焼ボイラ以外の主要の機器にも設置されており、前記制御装置150では石炭火力発電プラントを構成する主要の機器に設置された各種センサから測定されたプラントの状態量に基づいて前記主要機器を動作させる制御信号を送信して石炭火力発電プラントの運転の制御を行っている。
【0043】
尚、図1に示した本実施例の石炭火力発電プラントは、酸素燃焼ボイラ1の動作と関連のある構成を中心に図示したもので、他の構成は省略している。
【0044】
また、上記に説明した石炭火力発電プラントを構成する主要機器は、通常の空気燃焼ボイラを備えた石炭火力発電プラントにも備えられた機器である(酸素予熱器5については、通常の石炭火力発電プラントでは空気燃焼ボイラに供給する空気を加熱するので空気予熱器と呼ばれる)。
【0045】
本実施例の酸素燃焼ボイラ1を備えた石炭火力発電プラントにおいて、通常の空気燃焼ボイラを備えた石炭火力発電プラントと異なる構成は、図1に示すように、排ガス中のCO2を分離して回収するために必要な機器である冷却除湿装置21及び二酸化炭素液化設備22が設置されている。
【0046】
即ち、脱硫装置7を流下した排ガスを冷却して水分を取り除く冷却除湿装置21が該脱硫装置7の下流側の排ガス系統41に設置されており、冷却除湿装置21を流下した脱塵・脱硝・脱硫・除湿工程を経た排ガス(主にCO2)は、冷却除湿装置21の下流に設置された二酸化炭素液化設備22に排ガス系統41を通じて導入され、この二酸化炭素液化設備22にて排ガス中のCO2を分離して圧縮・液化する。
【0047】
二酸化炭素液化設備22による圧縮・液化によって液化されたCO2は、二酸化炭素液化設備22から二酸化炭素回収系統42を通って図示していない貯留施設へ運ばれて貯留される。
【0048】
更に、通常の空気燃焼ボイラを酸素燃焼ボイラ1に改造するために必要な設備として、本実施例においては、大気から取り入れた空気から酸素(O2)と窒素(N2)を分離する酸素分離装置23が酸素燃焼ボイラ1の上流側に設置されており、この酸素分離装置23で分離した酸素が酸素供給系統24を通じて前記酸素燃焼ボイラ1に供給され、再循環系統25を通じて再循環する排ガスと混合した支援ガスとして、石炭供給系統3から供給された微粉炭を酸素燃焼ボイラ1の内部で燃焼させる。
【0049】
酸素分離装置23で分離された純酸素、又は酸素(僅かではあるが不純物として窒素等も含む)を供給する酸素供給系統24は酸素予熱器5を経由して酸素燃焼ボイラ1に供給するように構成されているので、前記純酸素または酸素は、排ガス系統41を流下する排ガスによって酸素予熱器5で加熱した後に、該酸素供給系統24を通じて酸素燃焼ボイラ1へ供給して部粉炭の燃焼に使用される。また、酸素分離装置23にて空気から酸素を取り除いた後のガス(主にN2)は系外へ排出される。
【0050】
本実施例の酸素燃焼ボイラ1を備えた石炭火力発電プラントにおいては、通常の空気燃焼ボイラを酸素燃焼ボイラ1に改造するために必要な設備として、集塵装置6と脱硫装置7との間の排ガス系統41から分岐して排ガスの一部を導き、酸素燃焼ボイラ1に再循環させる再循環系統25を設置している。この再循環系統25には再循環ファン26を設置して、排ガス系統41から分岐した排ガスの一部を再循環する排ガスとして酸素燃焼ボイラ1に送り込むように構成されている。
【0051】
そして本実施例の酸素燃焼ボイラ1を備えた石炭火力発電プラントにおいては、通常の空気燃焼ボイラを酸素燃焼ボイラ1に改造するために必要な設備として、制御装置150が設置されている。この制御装置150の詳細な構成については後述する。
【0052】
本実施例の酸素燃焼ボイラ1では、前記再循環系統25は酸素予熱器5を経由して酸素燃焼ボイラ1に供給するように構成されているので、この再循環排ガスは酸素予熱器5にて排ガス系統41を流下する排ガスによって加熱された後に前記再循環系統25を通じて酸素燃焼ボイラ1へ供給され、酸素供給系統24を通じて供給された酸素と混合した支援ガスとして、石炭供給系統3から供給された微粉炭を酸素燃焼ボイラ1の内部で燃焼させる。
【0053】
前記したように酸素燃焼ボイラ1に供給される支燃ガスは、酸素供給系統24から供給された純酸素と再循環系統25を通じて供給された再循環排ガスとの混合ガスである。
【0054】
前記制御装置150では、純酸素の供給量を該制御装置150で演算した指令信号によって酸素分離装置23の稼動を制御することにより調整し、一方、排ガス循環量を該制御装置150で演算した指令信号によって再循環ファン26の回転数を制御することにより調整して、純酸素と循環排ガスとを混合した支燃ガスに含まれる酸素濃度を所望の値になるように制御する。
【0055】
酸素燃焼ボイラ1に供給される支燃ガスとしての供給量は、純酸素の供給量と循環排ガス量との合計値となる。また、支燃ガスに含まれる酸素は、酸素分離装置23から供給される酸素に加えて、循環排ガス中に僅かながら残存する酸素とを合わせた量が酸素燃焼ボイラ1に供給されることになる。
【0056】
酸素燃焼ボイラ1に供給される支燃ガスの酸素濃度を増やすは、酸素分離装置23の稼動を制御して純酸素の供給量を増やすか、または、再循環ファン26の回転数を制御して排ガス循環量を減らすことにより実施される。
【0057】
一方、酸素燃焼ボイラ1に供給される燃料である石炭の供給量は、石炭供給装置2の運転を制御することにより調整される。
【0058】
以上に述べた制御装置150による制御によって、酸素燃焼ボイラ1における燃焼状態を制御するためのパラメータである酸素供給量、排ガス循環量、石炭供給量の調節が行われる。
【0059】
本実施例の酸素燃焼ボイラを備えた石炭火力発電プラントの酸素燃焼ボイラ1に供給する支燃ガスの酸素濃度の制御では、酸素燃焼ボイラ1に供給する燃料(石炭)の流量に加えて、酸素燃焼ボイラ1の一部の熱交換器、例えば、火炉1aの部分でセンサの計測値を用いて蒸気が得た収熱量を計算し、この収熱量の計算値を基に支燃ガスの酸素濃度を制御する。
【0060】
本実施例の酸素燃焼ボイラを備えた石炭火力発電プラントにおける微粉炭を燃焼させる酸素燃焼ボイラ1は、図2に示すように火炉1aと後部伝熱面1bとの境界201の位置が火炉出口1cであり、この境界201の上流側を火炉1a、下流側を後部伝熱面1bと呼ぶ。
【0061】
火炉1aの下部には燃焼用バーナ101が設置されており、この燃焼用バーナ101から供給した微粉炭と、酸素及び再循環排ガスとが混合した支援ガスとが燃焼して高温の燃焼ガスを発生させる。
【0062】
高温の燃焼ガスは酸素燃焼ボイラ1内にそれぞれ設置され、水管で構成された複数の熱交換器を流れる蒸気への伝熱を行いながら火炉1a内をボイラ出口1cの方向に向かって流下する構造になっている。
【0063】
前記火炉1aの下部壁面にはスパイラル管102と呼ばれる水管がスパイラル状に配設されおり、火炉1aの上部壁面にはオープンパス管103と呼ばれる水管が垂直状に配設されている。これらのスパイラル管102とオープンパス管103とを合わせて水壁と呼ばれる。
【0064】
また、図2に示した後部伝熱面1b側の壁面にもケージ壁と呼ばれる水管104が設置されている。前記水壁やケージ壁が壁面に設置された水管であるのに対し、酸素燃焼ボイラ1の内部には水管から構成された複数の熱交換器が設置されている。
【0065】
これらの熱交換器のうち、2次過熱器111は火炉1aの天井から吊り下げられて配置されている。また、2次過熱器111の下流側には、3次過熱器112、再熱器113、1次過熱器114、及び節炭器115の各熱交換器が燃焼ガスの流下方向に沿って順次配設されている。
【0066】
本実施例の酸素燃焼ボイラ1を備えた石炭火力発電プラントにおいて、酸素燃焼ボイラ1に酸素供給系統24から供給される純酸素と再循環系統25を通じて供給される再循環排ガスとが混合した支燃ガスの酸素濃度を調整することで、前記した各熱交換器の熱吸収量のバランスが変わるのは、対流伝熱・輻射伝熱と呼ばれる伝熱形態が関係している。
【0067】
対流伝熱とは、高温の燃焼ガスと水管との接触面において両者の温度差によって熱が移動する伝熱現象をいう。一方、輻射伝熱とは、高温の燃焼ガスから発せられた電磁波が水管で吸収され、これが熱エネルギーに変換することによって熱が移動する現象である。
【0068】
前記ボイラでの燃焼ガスから熱交換器への伝熱には、常に対流伝熱と輻射伝熱の両方が作用している。このとき、火炉1aのように燃焼ガスが高温の領域であれば輻射伝熱による伝熱が支配的であり、後部伝熱面1bのように燃焼ガスが比較的低温の領域であれば対流伝熱による伝熱が支配的となる。これは、輻射伝熱による伝熱量がガス温度の4乗に比例するという物理的な性質があるためである。
【0069】
このため、酸素燃焼ボイラ1において、再循環系統25を通じて酸素燃焼ボイラ1に供給される排ガス循環量を減らすことによって支燃ガスに含まれる酸素濃度を高くすると、火炉1a内の火炎温度が高くなるので火炉1aでの輻射伝熱量が大きくなり、火炉1a側の熱吸収量が増加する。
【0070】
一方、再循環系統25を通じて酸素燃焼ボイラ1に供給される排ガス循環量が少なくなると、酸素燃焼ボイラ1を流れるガス流量が低下してガス流速の低下をもたらす。このとき、前記した対流伝熱は、ガス流速が低下すると伝熱量が低くなるという物理的な性質がある。
【0071】
したがって、再循環系統25を通じて酸素燃焼ボイラ1に供給される排ガス循環量を減らして支燃ガスに含まれる酸素濃度を高くすると、対流伝熱が支配的な後部伝熱面1bでの熱吸収量が低下することになる。
【0072】
つまり、酸素燃焼ボイラ1では、酸素燃焼ボイラ1に供給される排ガス循環量を減らして支燃ガスに含まれる酸素濃度を高くすると、輻射伝熱が支配的な火炉1a側の熱吸収量が増加し、一方、対流伝熱が支配的な後部伝熱面1b側の熱吸収量が低下する傾向にある。
【0073】
また、酸素燃焼ボイラ1に供給される排ガス循環量を増やして支燃ガスに含まれる酸素濃度を低くした場合は、この逆に作用する。
【0074】
以上に述べた現象から、酸素燃焼ボイラ1に供給される支援ガスに含まれる酸素濃度を調整することによって、酸素燃焼ボイラ1に設置された熱交換器の熱吸収量のバランスを変えることができる。
【0075】
また、火炉1a側と後部伝熱面1b側とを合わせたボイラ全体の収熱量については、一般的な空気燃焼ボイラの構成の場合、排ガス循環量を減らして酸素濃度を高くした方がボイラ全体の収熱量が増加する傾向にある。これは、ガス温度が高い方が伝熱効率が高いためである。
【0076】
空気で微粉炭を燃焼させていた既存の空気燃焼ボイラを酸素で微粉炭を燃焼させる酸素燃焼ボイラ1に改造する場合、改造コストの観点から言えば、酸素燃焼にした場合でも、空気燃焼における各熱交換器の熱吸収量のバランスをそのまま再現できるのが好ましい。なぜなら、ボイラの設計段階において、各熱交換器の熱吸収量のバランス(水管内の蒸気温度と圧力、水管外のガス温度)を踏まえて、熱交換器の材料選定を行っているからである。
【0077】
ボイラに設置される熱交換器は、高温になる領域では耐熱性に優れた高価な材料を使用し、比較的低温の領域では耐熱的にはそれほど優れていない低価格の材料を使用する。このため、既存の空気燃焼ボイラを酸素燃焼ボイラに改造することで酸素燃焼の熱吸収のバランスが空気燃焼での熱吸収のバランスから大きく変化する場合には、設計段階で材料の選定基準となった温度等の条件が変わるので、そのままでは材料の耐熱的な観点から運転できなくなる事態が予想される。
【0078】
このような場合に対応するためには、酸素燃焼ボイラ1に備えられる各熱交換器で、材料の使用限界温度以下となるように、伝熱面積を変更する改造を行う(具体的には水管を追加したり、削除したりする)ことが考えられるが、この改造には相当のコストを要することが推測される。
【0079】
そこで、石炭火力発電プラントに備えた本実施例の酸素燃焼ボイラ1においては、酸素燃焼ボイラ1に供給する燃料の供給量に加えて、図2の火炉1aに設置したセンサの計測値を用いて制御装置150にて蒸気が得た収熱量を計算し、この収熱量の計算値を基に酸素燃焼ボイラ1に供給する支燃ガスの酸素濃度を制御する。
【0080】
前記制御装置150の構成について詳細に説明すると、この制御装置150には該制御装置150を構成する制御器及び演算器として、図3に示すように火炉1aの収熱量を演算する火炉収熱量演算器151が設置されており、この火炉収熱量演算器151によって、火炉1a側に位置する各熱交換器に設置した入口温度センサ14c、出口温度センサ14d、圧力センサ14e、流量センサ14fの各種センサで計測された各計測値に基づいて、火炉1aで蒸気が得た収熱量を演算する。
【0081】
図2に示した酸素燃焼ボイラ1の例では、火炉1aに設置された熱交換器としては、水壁102及び103と、2次過熱器111が該当する。
【0082】
前記火炉収熱量演算器151には、下記した(1)式と(2)式の各演算式の関数が備えられており、これら演算式の(1)式及び(2)式に基づいて、前記各種センサで計測された計測値を用いて各熱交換器の収熱量の総和を演算して、火炉1aで蒸気が得た収熱量を求める。
【0083】
まず、演算式の(1)式に基づいて、火炉1aに設置された各熱交換器の水壁102、103、及び2次過熱器111に設けた入口温度センサ14c、または出口温度センサ14d、及び圧力センサ14eの計測値を用いて、各熱交換器の入口蒸気エンタルピーまたは出口蒸気エンタルピーを演算する。
【0084】
次に、演算式の(2)式に基づいて、火炉1aに設置された各熱交換器の水壁102、103、及び2次過熱器111での収熱量を演算子してその総和を求めることにより、火炉1aの収熱量を演算する。
【0085】
【数1】

【0086】
演算式の(1)式において、H:熱交換器iの蒸気エンタルピー、f:蒸気の温度と圧力からエンタルピーに変換する関数、T:熱交換器iの蒸気温度、P:熱交換器iの蒸気圧力、である。
【0087】
【数2】

【0088】
演算式の(2)式において、Q:火炉の収熱量、F:熱交換器iの蒸気流量、Hout,i:熱交換器iの出口蒸気エンタルピー、Hin,i:熱交換器iの入口蒸気エンタルピー、である。
【0089】
本実施例の酸素燃焼ボイラ1の制御を行う制御装置150には、該制御装置150を構成する制御器及び演算器として、更に、酸素燃焼ボイラ1に供給する燃料が所望の燃料流量となるように石炭供給装置2の駆動状態を調節する指令信号を演算して該石炭供給装置2に対して出力する燃料流量制御器154と、所望の排ガス再循環量となるように再循環ファン26の駆動状態を調節する指令信号を演算して該再循環ファン26に対して出力する排ガス再循環量制御器160とが設置されている。
【0090】
前記排ガス再循環量制御器160は、図4に示したように、排ガス再循環量の指令信号を演算するために2つの信号を取り込む。前記信号の一つは、制御装置150に設置された燃料流量制御器154が演算して出力する燃料流量の指令信号164である。
【0091】
そして前記信号の他の一つは、前記火炉収熱量演算器151で演算し出力した火炉収熱量と、制御装置150に設置された燃料流量制御器154で演算して出力した燃料流量の指令信号に応じて火炉収熱量の設定値を演算する収熱量設定器152が出力した設定値とを取り込んで比較し、両者の偏差を出力する比較演算器153の偏差信号165である。
【0092】
前記排ガス再循環量制御器160では、燃料流量制御器154から出力した燃料流量の指令信号164を該排ガス再循環量制御器160に設置された関数発生器161が取り込み、排ガス再循環量の指令信号166を演算する。
【0093】
さらに、比較演算器153から出力した火炉収熱量の演算値と設定値との偏差信号165を該排ガス再循環量制御器160に設置されたPI制御器162が取り込み、排ガス再循環量の補正信号167を演算して出力する。
【0094】
次に、前記排ガス再循環量制御器160に設置された加算器163で排ガス再循環量の指令信号166と補正信号167とが加算されて、火炉収熱量に応じて補正された最終的な排ガス再循環量の指令信号168を再循環ファン26に出力する。
【0095】
これらの演算は、演算式の式(3)〜式(5)に基づいて処理される。
【0096】
演算式の式(3)は、排ガス再循環量制御器160に設置された関数発生器161に備えられた関数における演算方法を表す。演算式の式(3)では、燃料流量と排ガス再循環量との対応関係を示す変換関数を基に、燃料流量の指令信号から排ガス再循環量の指令信号を演算する。変換関数は、あらかじめ設定しておく。
【0097】
演算式の式(4)は、排ガス再循環量制御器160に設置されたPI制御器162に備えられた関数における演算方法を表す。演算式の式(4)では、火炉収熱量の演算値と設定値との偏差信号を基に、火炉収熱量が設定値に追従するための排ガス再循環量の補正信号を演算する。
【0098】
このとき、比例ゲイン及び積分ゲインはあらかじめ設定しておく。
【0099】
演算式の式(5)は、排ガス再循環量制御器160に設置された加算器163での演算方法を表す。燃料流量の指令信号から演算した排ガス再循環量の指令信号に対して火炉収熱量の偏差信号に応じた補正信号を加算して、最終的な排ガス再循環量の指令信号を演算する。
【0100】
【数3】

【0101】
演算式の(3)式において、y(t):時刻tにおける排ガス再循環量の指令信号、F:燃料流量の指令信号から排ガス再循環量の指令信号への変換関数、x(t):時刻tにおける燃料流量の指令信号、である。
【0102】
【数4】

【0103】
演算式の(4)式において、Δy(t):時刻tにおける火炉収熱量に応じた排ガス再循環量の補正信号、K:PI制御の比例ゲイン、K:PI制御の積分ゲイン、x(t):時刻tにおける火炉収熱量の演算値と設定値との偏差信号、である。
【0104】
【数5】

【0105】
演算式の(5)式において、y(t):時刻tにおける火炉収熱量で補正された排ガス再循環量の指令信号、y(t):時刻tにおける燃料流量に応じた排ガス再循環量の指令信号、Δy(t):時刻tにおける火炉収熱量に応じた排ガス再循環量の補正信号、である。
【0106】
また、本実施例の酸素燃焼ボイラ1の制御を行う制御装置150には、該制御装置150を構成する制御器及び演算器として、更に、所望の酸素供給量となるように酸素分離装置23の駆動状態を調節する指令信号を出力する酸素供給量制御器170が設置されている。
【0107】
前記酸素供給量制御器170は、図5に示したように、酸素供給量の指令信号を演算するために2つの信号を取り込む。前記信号の一つは、制御装置150に設置された燃料流量制御器154が演算して出力する燃料流量の指令信号174である。この指令信号174は前記燃料流量の指令信号164と同値である。
【0108】
そして前記信号の他の一つは、前記排ガス温度センサ14aが計測したボイラ出口1cでのガス温度と前記排ガス組成センサ14bが計測した排ガス組成の排ガス組成とを取り込んで、制御装置150に設置されたボイラ出口酸素濃度検出器157にて検出した酸素濃度と、燃料流量制御器154から出力した燃料流量の指令信号に応じてボイラ出口酸素濃度の設定値を演算する酸素濃度設定器158から出力した設定値を取り込んで比較し、両者の偏差を出力する比較演算器159の偏差信号175である。
【0109】
前記酸素供給量制御器170では、燃料流量制御器154から出力した燃料流量の指令信号174を該酸素供給量制御器170に設置された関数発生器171が取り込み、酸素供給量の指令信号166を演算する。
【0110】
さらに、比較演算器173から出力したボイラ出口酸素濃度の検出値と設定値との偏差信号175を該酸素供給量制御器170に設置されたPI制御器172が取り込み、酸素供給量の補正信号177を演算して出力する。
【0111】
次に、該酸素供給量制御器170に設置された加算器173で酸素供給量の指令信号176と補正信号177とが加算されて、ボイラ出口酸素濃度に応じて補正された最終的な酸素供給量の指令信号178を酸素分離装置23に出力する。
【0112】
酸素供給量制御器170での演算処理における演算式は、前記排ガス再循環量制御器160における演算式の式(3)〜式(5)に基づく演算と同様であり、変換関数、比例ゲイン、積分ゲインは酸素供給量の演算に適した関数及び値をあらかじめ設定しておく。
【0113】
次に、本実施例の酸素燃焼ボイラ1による火炉収熱量の制御について以下に説明する。
【0114】
図1乃至図5に示した本実施例の酸素燃焼ボイラ1における制御装置150において、火炉1aの収熱量の制御は次のように行われる。
【0115】
まず、酸素燃焼ボイラ1を構成する火炉1aの各熱交換器102、103、111に設置された入口温度センサ14c、出口温度センサ14d、圧力センサ14e、流量センサ14fによって測定された各測定値に基づき、制御装置150に設置した火炉収熱量演算器151によって火炉1aの各熱交換器102、103、111にて蒸気が得た収熱量を計算する。
【0116】
そして制御装置150に設置した比較演算器153によって、前記火炉収熱量演算器151で計算した火炉集熱量と、収熱量設定器153の設定収熱量とを比較して、火炉収熱量演算器151で計算した火炉収熱量の計算値が、制御装置150の収熱量設定器152で設定された収熱量設定値よりも低い場合には、前記比較演算器153で比較した偏差信号に基づいた指令信号によって制御装置150に設置した排ガス再循環量制御器160を次のように制御する。
【0117】
即ち、排ガス再循環量制御器160から出力される指令信号によって再循環系統25に設置された再循環ファン26の駆動を弱めるように操作して該再循環系統25を流通する排ガスの循環量を減少させ、酸素燃焼ボイラ1に供給する支燃ガスに含まれる酸素濃度を増加して、火炉1aの収熱量を所望の値となるように制御する。
【0118】
また、前記比較演算器153から出力する指令信号によって、前記火炉収熱量演算器151で計算した火炉集熱量が、収熱量設定器152で設定された収熱量設定値よりも高い場合には、前記比較演算器153で比較した偏差信号に基づいた指令信号によって制御装置150に設置した排ガス再循環量制御器160を次のように制御する。
【0119】
即ち、排ガス再循環量制御器160から出力される指令信号によって再循環系統25に設置された再循環ファン26の駆動を強めるように操作して該再循環系統25を流通する排ガスの循環量を増加させ、酸素燃焼ボイラ1に供給する支燃ガスに含まれる酸素濃度を減少させて、火炉1aの収熱量を所望の値となるように制御する。
【0120】
次に、本実施例の酸素燃焼ボイラ1による補完的なボイラ出口の酸素濃度の制御について以下に説明する。
【0121】
図1乃至図5に示した本実施例の酸素燃焼ボイラ1における制御装置150において、ボイラ出口1cの酸素濃度の補完的な制御は次のように行われる。
【0122】
ボイラ出口1cに設置された排ガス温度センサ14aと排ガス組成センサ14bの測定値に基づき、制御装置150に設置したボイラ出口の酸素濃度検出器157にてボイラ出口1cの酸素濃度値を検出する。
【0123】
そして制御装置150に設置した比較演算器159によって酸素濃度検出器157で検出したボイラ出口1cの酸素濃度値と酸素濃度設定器158で設定された酸素濃度設定値とを比較して、酸素濃度検出器157で検出したボイラ出口1cの酸素濃度の実測値が酸素濃度設定器158で設定された酸素濃度設定値よりも低い場合には、比較演算器159で比較した偏差信号に基づく指令信号によって制御装置150に設置した酸素供給量制御器170を次のように制御する。
【0124】
即ち、酸素供給量制御器170から出力される指令信号によって酸素供給装置23の稼動が増加するように操作して、前記酸素供給装置23から酸素供給系統24を通じて酸素燃焼ボイラ1に供給する酸素の供給量を増加させて、ボイラ出口1cの酸素濃度が所定の濃度となるように制御する。
【0125】
また、前記比較演算器159によって酸素濃度検出器157で検出したボイラ出口1dの酸素濃度の実測値が酸素濃度設定器158で設定された酸素濃度設定値よりも高い場合には、比較演算器159で比較した偏差信号に基づく指令信号によって制御装置150に設置した酸素供給量制御器170を次のように制御する。
【0126】
即ち、酸素供給量制御器170から出力される指令信号によって酸素供給装置23の稼動が減少するように操作して、前記酸素供給装置23から酸素供給系統24を通じて酸素燃焼ボイラ1に供給する酸素供給量を減少させて、ボイラ出口1cの酸素濃度を所定の濃度となるように制御する。
【0127】
上述した本発明の実施例である酸素燃焼ボイラ1による火炉収熱量の制御では、火炉1aの収熱量を基準として排ガス循環量を制御したが、輻射伝熱の影響がより大きい範囲に絞った部分の収熱量、例えば、火炉1aの水壁102、103のみの収熱量を基準として排ガス循環量を制御することも考えられる。
【0128】
この場合は、上述した制御において、火炉1aを水壁に置き換えれば同様の装置構成で酸素燃焼ボイラ1を制御することができる。
【0129】
上述した本発明の実施例である酸素燃焼ボイラによれば、既存の空気燃焼ボイラとして運用している石炭ボイラを、酸素燃焼ボイラとして運用した場合に改造に要する費用が抑制でき、高温ガスによる酸素燃焼ボイラの損傷を防止して長期に亘って安定して運転可能な信頼性の高い酸素燃焼ボイラ及び酸素燃焼ボイラの制御方法が実現できる。
【実施例2】
【0130】
次に、本発明の第2実施例である酸素燃焼ボイラ及び酸素燃焼ボイラの制御方法について図6及び図7を用いて以下に説明する。
【0131】
図6は、本発明の第2実施例である酸素燃焼ボイラを有するCO2回収に好適な石炭火力発電プラントの構成を示す概略図である。
【0132】
本発明の第2実施例の酸素燃焼ボイラ1は、図1乃至図5に示した本発明の第2実施例の酸素燃焼ボイラ1と基本的な構成は実質的に同一であるので、両者に共通した構成についての説明は省略し、相違する構成についてのみ以下に説明する。
【0133】
図6及び図7に示した本発明の第2実施例の酸素燃焼ボイラ1では、図1乃至図5に示した第1実施例の酸素燃焼ボイラと比較して、制御に使用するセンサを少なくして構成した点が相違している。
【0134】
即ち、第1実施例の酸素燃焼ボイラ1における排ガス循環量の制御では、火炉1aまたは水壁102及び103の収熱量を計算するために計測に使用するセンサは入口温度センサ14c、圧力センサ14e、出口温度センサ14d、流量センサ14fであったが、第1実施例の酸素燃焼ボイラ1における排ガス循環量の制御では、計測に使用するセンサとして火炉1aの水壁103の出口に設置した出口温度センサ14dのみを使用する。
【0135】
次に、第2実施例の酸素燃焼ボイラ1において、第1実施例の酸素燃焼ボイラ1と異なっている制御装置150の構成、及び、排ガス循環量の制御について説明する。
【0136】
図7は、図6に示した本発明の第2実施例の酸素燃焼ボイラ1における制御装置150の構成を示している。
【0137】
図7に示した本発明の第2実施例である酸素燃焼ボイラ1の制御装置150の構成においては、図3に示された第1実施例の酸素燃焼ボイラ1における制御装置150と比較して、火炉収熱量演算器151が備えられていないこと、収熱量設定器152が蒸気温度設定器252aに置き換えられていること、制御装置150に取り込むセンサの情報が少なくなっていることが相違しているが、その他の構成は第1実施例の制御装置150と同一である。
【0138】
また、図3に示した第1実施例の制御装置150では、火炉1aまたは水壁102及び103に設置した温度、圧力、流量を計測する各種センサの計測値に基づいて、火炉1aまたは水壁102及び103の収熱量を演算し、この演算した収熱量の値とその設定値とを比較して排ガス循環量の制御信号を補正している。
【0139】
これに対して、第2実施例の制御装置150では、火炉1aの水壁102及び103の出口に設置した温度センサの計測値と、この計測点に対応した設定値を比較して排ガス循環量の制御信号を補正するように構成されている。
【0140】
ところで、前述した図3に示した第1実施例の制御装置150では、火炉1aの水壁102及び103の収熱量を演算するに際して、センサで計測された蒸気の温度と圧力を用いてエンタルピー(単位質量あたりの熱量)を求め、このエンタルピーの値とセンサで計測された蒸気流量の計測値を用いて熱量を演算している。
【0141】
このとき、火炉1aの水壁102及び103の入口の蒸気温度が一定で、かつ、蒸気の流量及び圧力が、運転条件(発電機出力の要求値、石炭供給量など)に応じて、給水制御装置により決められた値に制御されるとすれば、前記第1実施例の制御装置150において排ガス循環量の制御に必要な収熱量の計測値と設定値の比較に係る処理は、水壁102及び103の出口蒸気温度の計測値と設定値を比較することで代用できる。
【0142】
そこで、図6及び図7に示した第2実施例の制御装置150において、該制御装置150に設置した比較演算器153によって、火炉1aの水壁102及び103の出口に設置した温度センサ14dの計測値と、制御装置150の燃料流量制御器154から出力した燃料流量の指令信号に応じて水壁出口温度の設定値を演算して設定する、制御装置150に設置した蒸気温度設定器252aから出力した蒸気温度設定値とを取り込んで比較し、両者の偏差を出力して再循環ファン26の運転を調節する排ガス再循環量制御器160を制御するように構成した。
【0143】
次に、第2実施例の酸素燃焼ボイラ1における火炉1aの水壁102及び103の出口の蒸気温度の制御について以下に説明する。
【0144】
図6及び図7に示した第2実施例である酸素燃焼ボイラ1の制御装置150において、火炉1aの水壁102及び103の出口蒸気温度の制御は次のように行われる。
【0145】
まず、火炉1aの水壁102及び103に設置された出口温度センサ14dの測定値に基づき、制御装置150の比較演算器153によって前記出口温度センサ14dの測定値と蒸気温度設定器252aの設定収熱量とを比較して、出口温度センサ14dの測定値が蒸気温度設定器252aで設定された蒸気温度設定値よりも低い場合には、比較演算器153で比較した偏差信号に基づいて排ガス再循環量制御器160から指令信号を出力して再循環系統25に設けた再循環ファン26の駆動を弱めるように操作して再循環系統25を流通する排ガスの循環量を減少させ、酸素燃焼ボイラ1に供給する支燃ガスに含まれる酸素濃度を増加して、火炉1aの水壁102及び103の出口温度センサ14dで測定される出口蒸気温度が所望の値になるように制御する。
【0146】
また、前記比較演算器153による比較によって出口温度センサ14dの測定値が蒸気温度設定器252aで設定された蒸気温度設定値よりも高い場合には、比較演算器153で比較した偏差信号に基づいて排ガス再循環量制御器160から指令信号を出力して再循環系統25に設けた再循環ファン26の駆動を強めるように操作して再循環系統25を流通する排ガスの循環量を増加させ、酸素燃焼ボイラ1に供給する支燃ガスに含まれる酸素濃度を減少させて、火炉1aの水壁102及び103の出口蒸気温度が所望の値になるように制御する。
【0147】
上述した本発明の実施例によれば、火炉または水壁の収熱量を演算することなく、水壁出口に設置した温度センサの計測値のみを用いて、排ガス再循環量を制御するので、第1実施例に比べて簡便な装置及び方法で、長期に亘って安定して運転可能な信頼性の高い酸素燃焼ボイラ及び酸素燃焼ボイラの制御方法が実現できる。
【実施例3】
【0148】
次に、本発明の第3実施例である酸素燃焼ボイラ及び酸素燃焼ボイラの制御方法について図8及び図9を用いて以下に説明する。
【0149】
図8は、本発明の第3実施例である酸素燃焼ボイラを有するCO2回収に好適な石炭火力発電プラントの構成を示す概略図である。
【0150】
本発明の第3実施例の酸素燃焼ボイラ1は、図6及び図7に示した本発明の第2実施例の酸素燃焼ボイラ1と基本的な構成は実質的に同一であるので、両者に共通した構成についての説明は省略し、相違する構成についてのみ以下に説明する。
【0151】
図8及び図9に示した本発明の第2実施例の酸素燃焼ボイラ1では、図6及び図7に示した第2実施例の酸素燃焼ボイラと比較して、火炉1aの水壁102及び103の出口に設置した温度センサ14dの替わりに、火炉1aの水壁102又は103の代表水管にメタル温度を測定するメタル温度センサ14gを設置した点が相違している。
【0152】
次に、第3実施例の酸素燃焼ボイラ1における火炉1aを構成する水壁102又は103の水管のメタル温度の制御について以下に説明する。
【0153】
図8及び図9に示した第3実施例の制御装置150において、該制御装置150に設置した比較演算器153によって、火炉1aの水壁102又は103の代表水管に設置されたメタル温度センサ14gの測定値と、制御装置150の燃料流量制御器154から出力した燃料流量の指令信号に応じて火炉1aの水壁102又は103のメタル温度を演算して設定する、制御装置150に設置したメタル温度設定器252bから出力したメタル温度設定値とを取り込んで比較し、両者の偏差を出力して再循環ファン26の運転を調節する排ガス再循環量制御器160を制御するように構成した。
【0154】
そして、メタル口温度センサ14gの測定値がメタル温度設定器252bで設定されたメタル温度設定値よりも低い場合には、比較演算器153で比較した偏差信号に基づいて排ガス再循環量制御器160から指令信号を出力して再循環系統25に設けた再循環ファン26の駆動を弱めるように操作して再循環系統25を流通する排ガスの循環量を減少させ、酸素燃焼ボイラ1に供給する支燃ガスに含まれる酸素濃度を増加して、火炉1aの水壁102又は103の代表水管で測定されるメタル温度センサ14gのメタル温度が所望の値になるように制御する。
【0155】
また、メタル口温度センサ14gの測定値がメタル温度設定器252bで設定されたメタル温度設定値よりも高い場合には、比較演算器153で比較した偏差信号に基づいて排ガス再循環量制御器160から指令信号を出力して再循環系統25に設けた再循環ファン26の駆動を強めるように操作して再循環系統25を流通する排ガスの循環量を増加させ、酸素燃焼ボイラ1に供給する支燃ガスに含まれる酸素濃度を減少して、火炉1aの水壁102又は103の代表水管で測定されるメタル温度センサ14gのメタル温度が所望の値になるように制御する。
【0156】
本実施例における排ガス循環流量の制御で使用する火炉1aの水壁102又は103の代表水管に設置されるメタル温度センサ14gは、例えば、火炉1aの水壁102又は103を構成する水管の中で最もメタル温度が高くなる場所に設置すればよい。
【0157】
このようにメタル温度センサ14gを設置して制御装置150で制御することにより、火炉1aの水壁102又は103が昇温する最大メタル温度が水壁材料の耐熱性に基づく制限値を超えないように制御することが可能となり、材料過熱による火炉1aの水壁102又は103の損傷を防止することができる。
【0158】
また、火炉1aの水壁102又は103で加熱する蒸気温度を所望の値に制御する場合には、火炉1a内で燃焼した燃焼ガスによって発生した熱が火炉1aの水壁102又は103の水管のメタルに伝熱し、さらに、その熱が水管内の蒸気に伝熱した後に蒸気温度が変化するので、火炉1a内の燃焼状態が変化してから、その影響が蒸気温度に現れるまでの時間の遅れが大きくなる。
【0159】
そこで、本実施例の酸素燃焼ボイラ1のように、メタル温度センサ14gを火炉1aの水壁102又は103の代表水管に設置して、直接、水管のメタル温度を測定したメタル温度の測定値を用いて排ガス循環流量を制御すれば、前記の時間の遅れが短くなり、火炉1a内の燃焼状態の変化に対する制御の追従性を向上させることが出来る。
【0160】
上述した本発明の実施例である酸素燃焼ボイラによれば、既存の空気燃焼ボイラとして運用している石炭ボイラを、酸素燃焼ボイラとして運用した場合に改造に要する費用が抑制でき、高温ガスによる酸素燃焼ボイラの損傷を防止して長期に亘って安定して運転可能な信頼性の高い酸素燃焼ボイラ及び酸素燃焼ボイラの制御方法が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明は石炭火力発電プラントのCO2回収に好適な酸素燃焼ボイラ及び酸素燃焼ボイラの制御方法に適用できる。
【符号の説明】
【0162】
1:酸素燃焼ボイラ、1a:火炉、2:石炭供給装置、3:石炭供給系統、4:脱硝装置、5:酸素予熱器、6:集塵装置、7:脱硫装置、8:高圧蒸気タービン、9:低圧蒸気タービン、10:加減弁、11:発電機、12:復水器、13:給水ポンプ、14a:排ガス温度センサ、14b:排ガス組成センサ、14c:入口温度センサ、14d:出口温度センサ、14e:圧力センサ、14f:流量センサ、14g:メタル温度センサ、21:冷却除湿装置、22:二酸化炭素液化装置、23:酸素分離装置、24:酸素供給系統、25:再循環系統、26:再循環ファン、31、32、33、34:蒸気系統、35:給水系統、41:排ガス系統、42:二酸化炭素回収系統、50:蒸気タービン設備、102、103:水壁、150:制御装置、151:火炉収熱量演算器、152:収熱量設定器、153、159:比較演算器、154:燃料流量制御器、157:ボイラ出口酸素濃度検出器、158、159:酸素濃度設定器、160:排ガス再循環量制御器、161、171:関数発生器、162、172:PI制御器、163、173:加算器、170:酸素供給量制御器、172:、252a:蒸気温度設定器、252b:メタル温度設定器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気から分離した酸素と、燃料の石炭を燃焼して蒸気需要設備に供給する蒸気を発生させたボイラから排出された排ガスから分岐した排ガスの一部とを混合し、石炭を燃焼させる支燃ガスとして該ボイラに供給するように構成した酸素燃焼ボイラにおいて、
空気を分離して酸素を製造する酸素分離装置を設け、前記酸素分離装置で製造された酸素を該酸素燃焼ボイラに導く酸素供給系統を配設し、酸素燃焼ボイラから排出された排ガスから分岐した排ガスの一部を該酸素燃焼ボイラに導く再循環系統を配設し、前記再循環系統に排ガスを送給する再循環ファンを設け、前記酸素燃焼ボイラの火炉または水壁の各熱交換器に蒸気温度、流量、圧力を測定する測定センサをそれぞれ設置し、
酸素燃焼ボイラに供給する燃料の指令信号を演算する燃料流量制御器と、前記測定センサによる測定値に基づいて火炉または水壁の熱交換器で蒸気が得た収熱量を演算する火炉収熱量演算器と、燃料流量制御器の指令信号に応じて火炉収熱量の所望の値を設定する収熱量設定器と、火炉収熱量演算器で演算した火炉または水壁の熱交換器の収熱量の演算値と収熱量設定器で設定された収熱量の設定値に基づいて前記再循環ファンの運転を調節する指令信号を出力する排ガス流量制御器をそれぞれ備えた制御装置を設置したことを特徴とする酸素燃焼ボイラ。
【請求項2】
請求項1に記載の酸素燃焼ボイラにおいて、
前記酸素燃焼ボイラの火炉または水壁の各熱交換器に蒸気温度、流量、圧力を測定する測定センサを第1群の測定センサとし、該酸素燃焼ボイラ出口の排ガス温度と排ガス組成を測定する第2群の測定センサを設置し、
前記第2群の測定センサによる測定値に基づいて酸素燃焼ボイラ出口の酸素濃度を検出するボイラ出口酸素濃度検出器と、ボイラ出口酸素濃度の所望の値を設定する酸素濃度設定器と、ボイラ出口酸素濃度検出器で検出した酸素燃焼ボイラ出口の酸素濃度の検出値と酸素濃度設定器で設定されたボイラ出口酸素濃度の設定値に基づいて前記酸素分離装置の運転を調節する指令信号を出力する酸素供給量制御器をそれぞれ備えた制御装置を設置したことを特徴とする酸素燃焼ボイラ。
【請求項3】
空気から分離した酸素と、燃料の石炭を燃焼して蒸気需要設備に供給する蒸気を発生させたボイラから排出された排ガスから分岐した排ガスの一部とを混合し、石炭を燃焼させる支燃ガスとして該ボイラに供給するように構成した酸素燃焼ボイラにおいて、
空気を分離して酸素を製造する酸素分離装置を設け、前記酸素分離装置で製造された酸素を該酸素燃焼ボイラに導く酸素供給系統を配設し、酸素燃焼ボイラから排出された排ガスから分岐した排ガスの一部を該酸素燃焼ボイラに導く再循環系統を配設し、前記再循環系統に排ガスを送給する再循環ファンを設け、
前記酸素燃焼ボイラの水壁出口の蒸気温度を測定する温度センサ、または酸素燃焼ボイラの水壁の代表水管のメタル温度を測定するメタル温度センサを設置し、
酸素燃焼ボイラに供給する燃料の指令信号を演算する燃料流量制御器と、燃料流量制御器の指令信号に応じて酸素燃焼ボイラの水壁出口の蒸気温度の所望の値を設定する蒸気温度設定器または酸素燃焼ボイラの水壁の水管のメタル温度の所望の値を設定するメタル温度設定器と、前記蒸気温度設定器の温度設定値と温度センサで測定した水壁出口の蒸気温度に基づいて、またはメタル温度設定器のメタル温度設定値とメタル温度センサで測定した水壁の代表水管のメタル温度に基づいて、前記再循環ファンの運転を調節する指令信号を出力する排ガス流量制御器をそれぞれ備えた制御装置を設置したことを特徴とする酸素燃焼ボイラ。
【請求項4】
請求項3に記載の酸素燃焼ボイラにおいて、
前記酸素燃焼ボイラの水壁出口の蒸気温度を測定する蒸気温度センサ、または酸素燃焼ボイラの水壁の代表水管のメタル温度を測定するメタル温度センサを第1群の測定センサとし、該酸素燃焼ボイラ出口の排ガス温度と排ガス組成を測定する第2群の測定センサを設置し、
前記第2群の測定センサによる測定値に基づいて酸素燃焼ボイラ出口の酸素濃度を検出するボイラ出口酸素濃度検出器と、ボイラ出口酸素濃度の所望の値を設定する酸素濃度設定器と、ボイラ出口酸素濃度検出器で検出した酸素燃焼ボイラ出口の酸素濃度の検出値と酸素濃度設定器で設定されたボイラ出口酸素濃度の設定値に基づいて前記酸素分離装置の運転を調節する指令信号を出力する酸素供給量制御器をそれぞれ備えた制御装置を設置したことを特徴とする酸素燃焼ボイラ。
【請求項5】
空気から分離した酸素と、燃料の石炭を燃焼して蒸気需要設備に供給する蒸気を発生させたボイラから排出された排ガスから分岐した排ガスの一部とを混合し、石炭を燃焼させる支燃ガスとして該ボイラに供給するように構成した酸素燃焼ボイラの制御方法において、
ボイラに供給される支援ガスとして混合される酸素は酸素分離装置によって空気から分離して製造し、製造された酸素は酸素供給系統を通じて該酸素燃焼ボイラに導き、
ボイラに供給される支援ガスとして混合される排ガスは該ボイラから排出された排ガスの一部を再循環ファンによって再循環系統を通じて該酸素燃焼ボイラに送給し、
この酸素分離装置で製造された酸素と再循環ファンから送給された排ガスとを混合した支援ガスを酸素燃焼ボイラに供給して該酸素燃焼ボイラでの石炭の燃焼に使用し、
測定センサによって酸素燃焼ボイラの火炉または水壁の各熱交換器に蒸気温度、流量、圧力を測定し、
制御装置にそれぞれ設置された、燃料流量制御器によって酸素燃焼ボイラに供給する燃料の指令信号を演算し、火炉収熱量演算器によって前記測定センサの測定値に基づいて火炉または水壁の熱交換器で蒸気が得た収熱量を演算し、燃料流量制御器の指令信号に応じて収熱量設定器によって火炉収熱量の所望の値を設定し、火炉収熱量演算器で演算した火炉または水壁の熱交換器の収熱量の演算値と収熱量設定器で設定された収熱量の設定値に基づいて排ガス流量制御器によって前記再循環ファンの運転を調節する指令信号を演算し、この排ガス流量制御器で演算した指令信号によって火炉または水壁の収熱量が所望の設定収熱量となるように再循環ファンから供給される排ガスの供給量を調節することを特徴とする酸素燃焼ボイラの制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の酸素燃焼ボイラの制御方法において、
第1群の測定センサとしての測定センサによって酸素燃焼ボイラの火炉または水壁の各熱交換器に蒸気温度、流量、圧力を測定し、第2群の測定センサとしての測定センサによって酸素燃焼ボイラ出口の排ガス温度と排ガス組成を測定し、
制御装置に設置された、火炉収熱量演算器によって前記第1群の測定センサによる測定値に基づいて火炉または水壁の熱交換器で蒸気が得た前記収熱量を演算し、
ボイラ出口酸素濃度検出器によって前記第2群の測定センサによる測定値に基づき酸素燃焼ボイラ出口の酸素濃度を検出し、酸素濃度設定器によってボイラ出口酸素濃度の所望の値を設定し、ボイラ出口酸素濃度検出器で検出した酸素燃焼ボイラ出口の酸素濃度の検出値と酸素濃度設定器で設定されたボイラ出口酸素濃度の設定値に基づいて酸素供給量制御器によって前記酸素分離装置の運転を調節する指令信号を演算し、この酸素供給量制御器で演算した指令信号によって酸素燃焼ボイラ出口の酸素濃度が所望の設定酸素濃度となるように酸素分離装置から供給される酸素の供給量を調節することを特徴とする酸素燃焼ボイラの制御方法。
【請求項7】
空気から分離した酸素と、燃料の石炭を燃焼して蒸気需要設備に供給する蒸気を発生させたボイラから排出された排ガスから分岐した排ガスの一部とを混合し、石炭を燃焼させる支燃ガスとして該ボイラに供給するように構成した酸素燃焼ボイラの制御方法において、
ボイラに供給される支援ガスとして混合される酸素は酸素分離装置によって空気から分離して製造し、製造された酸素は酸素供給系統を通じて該酸素燃焼ボイラに導き、
ボイラに供給される支援ガスとして混合される排ガスは該ボイラから排出された排ガスの一部を再循環ファンによって再循環系統を通じて該酸素燃焼ボイラに送給し、
この酸素分離装置で製造された酸素と再循環ファンから送給された排ガスとを混合した支援ガスを酸素燃焼ボイラに供給して該酸素燃焼ボイラでの石炭の燃焼に使用し、
測定センサによって酸素燃焼ボイラの水壁出口の蒸気温度を測定、またはメタル温度センサによって酸素燃焼ボイラの水壁の代表水管のメタル温度を測定し、
制御装置にそれぞれ設置された、燃料流量制御器によって酸素燃焼ボイラに供給する燃料の指令信号を演算し、温度設定器によって燃料流量制御器の指令信号に応じて酸素燃焼ボイラの水壁出口の蒸気温度の所望の値を設定、または酸素燃焼ボイラの水壁の水管のメタル温度の所望の値を設定し、蒸気温度設定器の温度設定値と温度センサで測定した水壁出口の蒸気温度に基づいて、またはメタル温度設定器のメタル温度設定値とメタル温度センサで測定した水壁の水管のメタル温度に基づいて排ガス流量制御器によって再循環ファンの運転を調節する指令信号を演算し、この排ガス流量制御器で演算した指令信号によって酸素燃焼ボイラの水壁出口の蒸気温度が所望の設定蒸気温度、または酸素燃焼ボイラの水壁の水管のメタル温度の値が所望の設定メタル温度となるように再循環ファンから供給される排ガスの供給量を調節することを特徴とする酸素燃焼ボイラの制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の酸素燃焼ボイラの制御方法において、
第1群の測定センサとしての蒸気温度センサによって酸素燃焼ボイラの水壁出口の蒸気温度を測定、またはメタル温度センサによって酸素燃焼ボイラの水壁の代表水管のメタル温度を測定し、第2群の測定センサとしての測定センサによって酸素燃焼ボイラ出口の排ガス温度と排ガス組成を測定し、
制御装置に設置された、燃料流量制御器の指令信号に応じて蒸気温度設定器によって酸素燃焼ボイラの水壁出口の蒸気温度の所望の値を設定、またはメタル温度設定器によって酸素燃焼ボイラの水壁の水管のメタル温度の所望の値を設定し、
ボイラ出口酸素濃度検出器によって前記第2群の測定センサによる測定値に基づき酸素燃焼ボイラ出口の酸素濃度を検出し、酸素濃度設定器によってボイラ出口酸素濃度の所望の値を設定し、ボイラ出口酸素濃度検出器で検出した酸素燃焼ボイラ出口の酸素濃度の検出値と酸素濃度設定器で設定されたボイラ出口酸素濃度の設定値に基づいて酸素供給量制御器によって前記酸素分離装置の運転を調節する指令信号を演算し、この酸素供給量制御器で演算した指令信号によって酸素燃焼ボイラ出口の酸素濃度が所望の設定酸素濃度となるように酸素分離装置から供給される酸素の供給量を調節することを特徴とする酸素燃焼ボイラの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−21781(P2011−21781A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165492(P2009−165492)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】