説明

酸素燃焼発電プラントとその運転方法

【課題】酸素燃焼発電プラントにおいて、起動から定常運転に至るまで、プラント構成部材のSO3による腐食や紫煙放出の問題なく、排熱を有効利用して、発電効率の低下を抑制すること。
【解決手段】プラント起動時は、ボイラ17の燃焼用ガスには二次用燃焼ガス(空気)供給ライン67から供給される空気を使用して空気燃焼を行いながら、ボイラ排ガスは排ガス処理ライン14から排出ライン45に流し、排ガス熱回収器50で回収した熱を熱媒体循環ライン61により排ガス再加熱器23に流し、プラント定常運転時には、燃焼用酸素と再循環排ガスとの混合ガスを使用してボイラ17で酸素燃焼を行いながら、排ガス処理ライン14からの排ガスをCO2回収ライン69に流してCO2を回収し、同時に熱回収器50で回収した熱を熱媒体循環ライン61により給水加熱器56に流す酸素燃焼発電プラントとその運転方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は火力発電プラントに係わり、特に、排ガスに含まれるCO2を効率良く回収するに好適な酸素燃焼発電プラント及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭等の化石燃料を用いる火力発電プラントの排ガスに含まれるCO2を効率良く回収するため、空気から酸素(O2)と窒素(N2)とを分離し、N2を含まない燃焼用ガスを用いることで、排ガス中のCO2濃度を理論的に90%以上に高める酸素燃焼発電プラントが研究開発されている。
【0003】
純酸素燃焼では火炎温度が高くなりすぎて材料が損傷するので、排ガス(主成分CO2)の一部を再循環して酸素と混合し、酸素濃度を20%〜40%程度に希釈して火炎温度を抑制する方法が採られる。この酸素燃焼発電プラントは、高酸素濃度ガスを供給するための空気分離装置(ASU)やCO2回収装置の圧縮機等に多大な動力を必要とするため、発電効率が低下するといった課題がある。
【0004】
ところで、酸素燃焼でも空気燃焼と同様に、燃料中の硫黄(S)成分が燃焼すると三酸化硫黄(SO3)が生成する。SO3は煙道中で水と反応して硫酸となり、金属材料の腐食原因となる。排ガスをボイラに再循環させる酸素燃焼発電プラントでは、ガス中成分が濃縮するので、特にダクトや石炭搬送ライン等、酸露点以下となる領域において、SO3に起因する腐食の問題が顕著となりやすく、その除去が重要である。
【0005】
従来の空気燃焼発電プラントにおいて、排ガス中の煤塵捕集効率を向上させるため集塵装置(乾式電気集塵機)の前流側で熱回収して排ガス温度を低減し、回収した熱を脱硫装置(FGD)の後流で排ガスの再加熱に供する技術が特開平11−179147号公報等に開示されている。このような技術によれば、排ガス熱回収器内の伝熱チューブの付着灰と電気集塵機(EP)内の煤塵にSO3を吸着させて除去することができる。
【0006】
『新エネルギー・産業技術総合開発機構、平成17年度クリーンコールテクノロジー推進事業、既設微粉炭火力発電プラントへの酸素燃焼技術の適用に関する調査』報告書には、酸素燃焼発電プラントにおいて、このような排ガスの熱回収−再加熱が行われ、排ガス再加熱器の後段から排ガスを再循環させ、CO2を回収できるようにした例が開示されている。
【0007】
また、特開2006−308269号公報には空気燃焼発電プラントにおいて、排ガス熱回収器の排熱を蒸気タービン復水の再加熱器の熱源に利用してプラントの発電効率を上げる技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−179147号公報
【特許文献2】特開2006−308269号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】新エネルギー・産業技術総合開発機構編「平成17年度クリーンコールテクノロジー推進事業、既設微粉炭火力発電プラントへの酸素燃焼技術の適用に関する調査報告書」平成18年3月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、前記非特許文献1記載の内容では、排ガス再加熱器の後段でガス温度が高くなるため、CO2回収効率の点では最適とはいえない。
特許文献2に記載の発明では、蒸気タービンに蒸気が供給されないボイラ起動時からしばらく経過した段階では、復水の再加熱に回収熱が利用できない。したがって、排ガス熱回収器が空焚きの状態となって熱損傷しないように配慮する必要がある。
【0011】
酸素燃焼発電プラントは、定常的な発電時には酸素燃焼を行い、再循環されない排ガスは全量CO2回収装置に供給される。
上記酸素燃焼発電プラントの起動は空気燃焼で行われ、それからしばらくの間は、酸素を希釈する再循環ガスの量、再循環系統の温度等の条件が十分な水準に達するまで、定常時とは異なる運用条件で運転を行う必要がある。ここで、再循環されない排ガスはCO回収装置に供給しないで、煙突から系外に排出される。このとき、排ガス中の残留SO3が低温のまま紫煙(SO3フューム)として放出されないように配慮する必要がある。また、排ガスから回収した排熱を有効に利用しようとする場合、運転条件に応じた適切な切り換え運用が必要である。
【0012】
本発明は、酸素燃焼発電プラントにおいて、起動から定常運転に至るまで、プラント構成部材のSO3による腐食や紫煙放出の問題がなく、排熱を有効利用して発電効率の低下を抑制することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記課題は、次の解決手段により解決される。
請求項1記載の発明は、石炭又は石炭以外の燃料を燃焼させるボイラ(17)と、脱硝装置(18)、集塵装置(20)および脱硫装置(22)を含むボイラ(17)の燃焼排ガスを浄化する装置をそれぞれ前流側から後流側に順次設けた排ガス流路である排ガス処理ライン(14)と、ボイラ(17)の給水ライン(68)と、ボイラ(17)に燃焼用ガスとして用いる酸素を供給する酸素供給ライン(4,8)と、ボイラ(17)の燃焼用ガスに用いる空気と前記酸素供給ライン(4,8)から分岐した分岐酸素供給ライン(6)より供給される酸素とを混合して得られる一次用燃焼ガスと共に石炭を含む燃料をボイラ(17)に供給する一次用燃焼ガス供給ライン(66)と、ボイラ(17)の燃焼用ガスに用いる空気を酸素供給ライン(4,8)からの酸素と混合して燃焼ガスとしてボイラ(17)に供給する二次用燃焼ガス供給ライン(67)と、ボイラ排ガス中のCO2を回収する排ガス流路であるCO2回収ライン(69)と、集塵装置(20)より後流側の排ガス処理ライン(14)から分岐して燃焼排ガスをボイラ(17)の二次用燃焼用ガスとして戻すために二次用燃焼ガス供給ライン(67)へ接続する排ガス再循環ライン(34)と、浄化処理した燃焼排ガスを煙突(27)へ向けて流す排ガス処理ライン(14)の後流側に設けた排ガス流路である排出ライン(45)とを備えた酸素燃焼発電プラントであって、排ガス処理ライン(14)には、集塵装置(20)より排ガス流路前流側にある燃焼排ガスの熱を回収する熱交換器(36)を有する排ガス熱回収器(50)と脱硫装置(22)の排ガス流路後流側に設けた燃焼排ガスを再加熱する排ガス再加熱器(23)を備え、前記CO2回収ライン(69)は、脱硫装置(22)のある排ガス流路後流側であって、排ガス再加熱器(23)の排ガス流路前流側の排ガス処理ライン(14)から分岐して設けられ、前記給水ライン(68)には、ボイラ給水を加熱する給水加熱器(56)を設け、該給水加熱器(56)と排ガス熱回収器(50)との間及び前記給水加熱器(56)と排ガス再加熱器(23)との間に熱媒体が循環する熱媒体循環ライン(61)を設け、熱媒体循環ライン(61)は排ガス熱回収器(50)で回収した熱の供給先となる排ガス再加熱器(23)と給水加熱器(56)とを流れる熱媒体の流量をそれぞれ調節可能に構成したことを特徴とする酸素燃焼発電プラントである。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記排ガス再循環ライン(34)は、排ガス再加熱器(23)より後流側の排ガス処理ライン(14)から分岐して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の酸素燃焼発電プラントである。
【0015】
請求項3記載の発明は、前記排ガス再循環ライン(34)は、ボイラ(17)に燃料を搬送する一次用燃焼ガス供給ライン(66)と燃料を搬送しない二次用燃焼ガス供給ライン(67)に分岐して接続していることを特徴とする請求項1に記載の酸素燃焼発電プラントである。
【0016】
請求項4記載の発明は、前記排ガス再循環ライン(34)は、脱硫装置(22)より前流側の排ガス処理ライン(14)と脱硫装置(22)より後流側の排ガス処理ライン(14)から分岐してそれぞれ設けられた排ガス再循環ライン(34b)と排ガス再循環ライン(34a)からなり、排ガス再循環ライン(34a)は、ボイラ(17)に燃料を搬送する一次用燃焼ガス供給ライン(66)に接続し、排ガス再循環ライン(34b)は、ボイラ(17)に燃料を搬送しない二次用燃焼ガス供給ライン(67)に接続していることを特徴とする請求項1に記載の酸素燃焼発電プラントである。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の酸素燃焼発電プラントの運転方法であって、
プラント起動時は、ボイラ(17)の燃焼用ガスには二次用燃焼ガス供給ライン(67)から供給される空気を使用して空気燃焼を行いながら、ボイラ排ガスは排ガス処理ライン(14)から排出ライン(45)に流し、同時に排ガス熱回収器(50)で回収した熱を熱媒体循環ライン(61)により排ガス再加熱器(23)に流し、プラント定常運転時には、ボイラ(17)の燃焼用ガスとして酸素供給ライン(4,6,8)からの酸素と排ガス再循環ライン(34)からの排ガスとの混合ガスを使用して酸素燃焼を行いながら、排ガス処理ライン(14)からの排ガスをCO2回収ライン(69)に流して排ガスからCO2を回収し、同時に排ガス熱回収器(50)で回収した熱を熱媒体循環ライン(61)により給水加熱器(56)に流すことを特徴とする酸素燃焼発電プラントの運転方法である。
【0018】
請求項6記載の発明は、プラント起動時からボイラ(17)が設定した第1の温度条件に達するまでは、石炭以外の燃料を用いて空気燃焼により昇温させながらボイラ排ガスは排ガス処理ライン(14)から排出ライン(45)へ流し、その後、燃焼用ガスとして、徐々に空気の量を減じつつ、酸素供給ライン(4,6,8)からの酸素と排ガス再循環ライン(34)からの排ガスの量を増加させることで排ガス再循環ライン(34)内の排ガスを昇温させ、その過程において、石炭以外の燃料と石炭との混焼を開始し、ボイラ(17)が設定した第2の温度条件に達したら、燃料を石炭に切り換えて、ボイラ(17)の昇温を継続し、設定した第3の温度条件に達したら定常運転に移行し、前記熱媒体循環ライン(61)で回収した熱の供給先を排ガス再加熱器(23)側から給水加熱器(56)側に切り換え、排ガス中のCO濃度が90%以上になると、ボイラ排ガスの排出先を排出ライン(45)からCO2回収ライン(69)に切り換えることを特徴とする請求項5記載の酸素燃焼発電プラントの運転方法である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1,5記載の発明によれば、排ガスの廃熱をボイラ発電設備の給水加熱に利用でき、設備全体の有効な熱利用を図ることができる。さらに従来において低圧タービンのスチームの一部を抽出し、給水加熱の熱源としていたものが不要になり、タービン駆動力に使用できるため、酸素燃焼システムによる発電効率の低下を抑制できる。同時に、起動時の空気燃焼におけるSO3による紫煙発生を防止できる。
【0020】
より具体的には次のような効果がある。
(1)排ガス熱回収器50により集塵装置20の入口の排ガス温度を酸露点以下になる90℃に下げることでSO3の高効率捕集が可能になり、後段の酸腐食防止及び煙突27からの紫煙削減に効果がある。
【0021】
また、プラント起動時のボイラ排ガス処理ライン14の排ガス温度を90℃に維持できないときは、熱媒体循環ライン61を経由してボイラ熱回収器50と排ガス再加熱器23を接続することでボイラ熱回収器50による排ガス冷却を行い、ガス状SO3が大気放出されることを防止できる効果がある。
【0022】
(2)給水用加熱器56と排ガス熱回収器50の間で熱交換を行うことで、それまでボイラ給水加熱に利用していたタービン52からの抽気を低減でき、これによりタービン52への蒸気量が増加し、タービン出力増加につながり、酸素燃焼システムによる発電効率低下を抑制できる。
【0023】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、排ガス再循環ライン34は長くなるが、排ガス再加熱器23で昇温された排ガスをボイラ17に再循環させることができるため、プラント起動後、図5の(2)〜(3)の循環ライン昇温モードにおいて、排ガス再循環ライン34の昇温に要する時間を短縮できる利点がある。
【0024】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、排ガス再循環ライン34から一次用燃焼ガス供給ライン66と二次用燃焼ガス供給ライン67に分岐して、ボイラ17に排ガス再循環ガスを搬送するので、燃焼搬送用と排ガス再循環ガス内の未燃焼燃料をボイラに供給できる。
【0025】
請求項4記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、大部分の酸素燃焼排ガスを脱硫装置22の前流側の排ガス処理ライン14から分岐して抜き出すため、脱硫装置22での処理ガス量が低減でき、脱硫装置22のコンパクト化、脱硫剤の低減による低ランニングコスト化などが図れる。さらに脱硫装置22出口で排ガス温度を90℃から50℃まで下げなくて済むため、排ガスの熱損失を大幅に防止できる。一次用排ガス再循環ライン65を流れるガスは脱硫装置22を通過することで硫黄分が除去されているため、該ライン65の酸露点による腐食を防止できるメリットがある。
【0026】
請求項6記載の発明によれば、請求項5記載の発明の効果に加えて、、COC濃度90%以上の排ガスを得ることで、排ガス中のCOC濃度が高いほどCOCの回収が容易であり、COC貯留やEOR(Enhanced Oil Recovery)への適用に有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1の酸素燃焼プラントのフロー図である。
【図2】本発明の実施例2の酸素燃焼プラントのフロー図である。
【図3】本発明の実施例3の酸素燃焼プラントのフロー図である。
【図4】本発明の実施例1〜3に係る排ガス熱回収器の概念図である。
【図5】本発明に係る運転方法の図である。
【図6】本発明の比較例の酸素燃焼プラントのフロー図である。
【図7】本発明の比較例の酸素燃焼プラントのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0029】
図1は本実施例の酸素燃焼発電プラントの構成を示す図である。主な構成は、ボイラ17に酸素を供給するための酸素供給ライン4とボイラ17から排出する燃焼排ガスを脱硝装置(SCR)18で脱硝し、予熱器(PH)19でボイラ17で使用する燃焼用空気を予熱し、電気集塵機(EP)20で集塵し、脱硫装置(FGD)22で脱硫する排ガス処理ライン14と、該排ガス処理ライン14から排ガス再加熱器23で再加熱して煙突27に浄化した排ガスを送る排出ライン45と、前記排ガス処理ライン14から分岐してボイラ17の二次用燃焼ガスとしてボイラ17のウインドボックス16へ二次用燃焼ガスライン67から混合器11を経由して循環される排ガス再循環ライン34と、該排ガス再循環ライン34への分岐点の後流側の排ガス処理ライン14から分岐したCO2回収ライン69と、ボイラ17で得られた蒸気51をタービン52で使用した後、復水器54で復水して再びボイラ17に給水する給水ライン68とを備えている。
【0030】
酸素燃焼発電プラントの発電時におけるボイラ17で使用する石炭を含む燃料を酸素を利用して燃焼させる酸素燃焼時のボイラ17の運転時には、空気1は空気分離装置(ASU)2(これを酸素供給装置ともいう)により窒素3と酸素に分離される。分離した酸素は酸素供給ライン4を経由して予熱ヒータ5で予熱され、酸素供給ライン4の2つに分岐した一次酸素(燃料搬送用)ライン(これを分岐酸素供給ラインともいう)6と二次酸素(燃焼用)ライン8にそれぞれ設けられた流量調節弁7と流量調節弁10によって分配される。
【0031】
一方、ボイラ17の起動時には燃料は空気を用いる燃焼(以後、空気燃焼という)が行われるが、該空気燃焼では一定条件に達するまで流量調節弁7と流量調節弁10は全閉され、ボイラ17へ燃料の二次燃焼用の燃焼ガス(空気)を供給するために設けられた二次用燃焼ガス供給ライン67の入口付近にある流量調節弁49が開き、再循環ガス用ブロア35により空気40が二次酸素(燃焼用)ライン8に配置された混合器11に供給される。また、二次用燃焼ガス供給ライン67には前記排ガス再循環ライン34からの燃焼排ガスが供給される。詳しい運転モードの切り換えについては、後述する。
【0032】
一次酸素(燃料搬送用)ライン6に供給される一次酸素は混合器9に送られ、該混合器9には二次用燃焼ガス供給ライン67に設置される予熱器19の前流側で分岐した一次用燃焼ガス供給ライン66から一次用燃焼ガス用ブロア44により再循環ガスの一部も搬送されるので混合器9で一次酸素は燃焼排ガスと混合され、次いで石炭粉砕器ミル13に供給される。ミル13では石炭12が粉砕されて微粉炭となり、得られた微粉炭はミル13に供給された一次酸素と燃焼排ガスとの混合ガスによって、乾燥されると同時に一次用燃焼ガス供給ライン66内を気流搬送されてバーナ15に供給される。
【0033】
また、二次酸素(燃焼用)ライン8に送られる二次酸素は混合器11に送られ、該混合器11には排ガス再循環ライン34と二次用燃焼ガス供給ライン67を経由して再循環ガスの一部も供給されるので混合器11で二次酸素は再循環ガスと混合された後に二次燃焼用酸化剤としてウィンドボックス16に導入後、バーナ15の二次燃焼気体供給口に供給される。
【0034】
石炭12と排ガス再循環ガスで希釈された一次酸素と二次酸素はボイラ17で燃料を酸素燃焼させる。このときの全酸素比(完全燃焼に必要な酸素量を1としたときの燃焼に必要な酸素量)は1以上である。石炭中の炭素分はほとんどが二酸化炭素(CO2)になり、水素、窒素、硫黄等の揮発分を含む石炭では、これらの揮発分が燃焼気体中の酸素により酸化され、窒素酸化物(NOx)、二酸化硫黄(SO2)、三酸化硫黄(SO3)等の酸性ガスを発生する。
【0035】
前記CO2、NOx、SO2、SO3等の成分と粉塵を含む酸素燃焼排ガスは、ボイラ17の後流の排ガス処理ライン14に配置した複数の浄化機器で処理される。即ち、酸素燃焼排ガスは脱硝装置(SCR)18でNOxが除去され、その後、予熱器(PH)19で、排ガス再循環ライン34からの再循環ガスと熱交換して、約350℃から200〜140℃に冷却され、次いで排ガス熱回収器50で約90℃まで降温される。約90℃の酸素燃焼排ガスは電気集塵装置(EP)20で煤塵とSO3が除去される。その後、排ガスは湿式脱硫装置(FGD)22でSO2が除去されて、排ガス温度が約50℃になる。続いて再循環ガスライン34にある流量調節弁33の開度を調整して、排ガス量の約50〜75%を再循環ガスライン34から抜き出して予熱器(PH)19に送って昇温させ、次いで混合機9とミル13を経由してバーナ15に送られ、また混合器11を経由してウィンドボックス16に再循環されるようになっている。
【0036】
上述のように排ガス再循環ガスは一次用燃焼ガス供給ライン66から燃料搬送用として利用できるだけでなく、二次用燃焼ガス供給ライン67から排ガス再循環ガス内の未燃焼燃料としてボイラ17に供給して燃焼させることができる。
なお、EP20とFGD22の間の排ガス処理ライン14には排ガスをスムーズに後流側に送り出すための排ガス用ブロア21を配置している。
【0037】
また、ボイラ17での燃料の酸素燃焼時は、排出ライン45の流量調節弁30を閉じ、該流量調節弁30の前流側の排出ライン45から分岐したCO2回収ライン69の流量調節弁31を開いて、ボイラ燃焼排ガスはCO2回収ライン69に送られ、残りの燃焼排ガスは、冷却機32を経て圧縮機24に導入される。冷却機32では燃焼排ガスが30℃まで冷却及び脱水され、圧縮機24では0.518〜50MPaの範囲で圧縮される。その後、冷却機25により燃焼排ガス中に含まれるCO2は−56.6℃〜31.1℃の範囲で冷却液化され、分離器26で気体と液化CO2に分離される。液化されないガス29は煙突27にて排出される。液化されたCO2はCO2貯蔵容器28に貯蔵される。
【0038】
ボイラ17の内部には給水が通るチューブが多数並べられている。チューブ表面が伝熱面となってボイラ17で発生した燃焼熱を吸収して、チューブの中を通る給水を加熱する。加熱された給水はスチーム51となってタービン52に導かれる。タービン52は多数の羽根が円周方向に埋め込まれた構造となっており、スチーム51のエネルギーを受けてタービン52が回転し、軸に直結された発電機53を回す。タービン52から排出されたスチーム51は低温、低圧の蒸気となって復水器54に導入される。
【0039】
復水器54はタービン52の下部に設けられたタンクである。復水器54の中には冷却水(海水等)が通るチューブが多数配置されており、スチーム51はこれに触れて凝縮して水に戻る。スチーム51が水になると体積が著しく小さくなるので、復水器54中は真空になっている。水は復水器54の底に貯まる。復水器54からの水はボイラ17の給水に必要な20MPa程度までポンプ55で昇圧された後、ボイラ17に供給される。
【0040】
次にSO3除去技術に関して述べる。
排ガスに接する固体表面上に液滴硫酸が出現する温度を一般に酸露点と呼ぶが、SO3濃度が高まるほど酸露点温度が上昇し、SO3が1ppm含まれるだけでも露点が100℃を超え130℃になる。これは、SO3が存在すると硫酸のような不揮発性溶液の溶質を含む液滴は蒸気圧が減少するためである。排ガス温度を100℃未満にするとガス状SO3が液滴として捕集可能になる。したがって、排ガス熱回収器50により電気集塵機20の入口での排ガス温度を酸露点以下となる90℃まで低下させると、ガス状SO3が凝縮し、それが煤塵に吸着し、排ガス熱回収器50及び電気集塵機20で煤塵と共にSO3が除去できる。
【0041】
本実施例に係る排ガス熱回収器50について図4を参照して説明する。
排ガス熱回収器50は熱回収する排ガスを導入する入口37と熱回収された排ガスを排出する出口41とを有する装置内に排ガスの熱を回収する伝熱管としてフィンチューブ36を配置し、フィンチューブ36の内部を熱媒体(水)39が流れ、排ガスと熱交換し、140〜200℃から90℃まで排ガス温度を下げる。
【0042】
排ガス熱回収器50内でフィンチューブ36に堆積した灰に90℃で気体から凝縮したSO3ミストが吸湿されて排ガス中からSO3が除去される。SO3吸着灰42は排ガス熱回収器50の下部の灰ホッパ50aに落下して系外に排出される。このときフィンチューブ36に堆積したSO3吸着灰はスートブロア38で高温高圧のスチームを吹き付けて落下させるものである。
【0043】
前述のとおり、蒸気タービン52に蒸気が供給されない起動からしばらく経過した段階では、復水の再加熱には回収熱が利用できない。したがって、排ガス熱回収器50が空焚きの状態となって熱損傷しないように配慮する必要がある。また、プラントの起動時に空気を用いて燃料を燃焼させる空気燃焼を行うが、このとき排ガスの熱を排ガス熱回収器50により除熱しなかった場合には、排ガス中に含まれる強腐食性ガスである三酸化硫黄(SO3)は、電気集塵機20でほとんど除去されず、電気集塵機20より後流側のダクト配管の腐食の発生、さらに煙突27からの紫煙(SO3フューム)発生などの問題が生じる。
【0044】
従って、ボイラ燃料の空気燃焼時と酸素燃焼時で熱媒体の熱供給先を切り換えるため、排出ライン45に排ガス再加熱器23を設置し、給水加熱器56と排ガス再加熱器23にそれぞれ熱媒体を切り換えて循環可能にした熱媒体循環ライン61を設け、熱媒体循環ライン61に流量調節弁57、流量調節弁58、流量調節弁59、流量調節弁60を設置して排ガス熱回収器50からの熱媒体の流れが給水加熱器56と排ガス再加熱器23との間で切り換わるようにした。すなわち、排ガス熱回収器50から給水加熱器56への熱媒体循環ライン61には流量調節弁58を配置し、給水加熱器56から排ガス熱回収器50への熱媒体循環ライン61には流量調節弁57を配置し、排ガス熱回収器50から排ガス再加熱器23への熱媒体循環ライン61には流量調節弁60を配置し、排ガス再加熱器23から排ガス熱回収器50への熱媒体循環ライン61には流量調節弁59を配置している。また熱媒体循環ライン61には流量調節弁57と流量調節弁59を直列に配置し、されに流量調節弁58と流量調節弁60も熱媒体循環ライン61に直列に配置されているので、流量調節弁57〜60の開閉制御で熱媒体循環ライン61中の熱媒体は排ガス熱回収器50と給水加熱器56の間で循環されるか又は排ガス熱回収器50と排ガス再加熱器23の間で循環され、さらに場合によって給水加熱器56と排ガス再加熱器23の間で循環させることもできる。
【0045】
ボイラ燃料の酸素燃焼時には、排ガス熱回収器50でガス温度120℃〜200℃の温度域で熱回収した熱媒体を給水用加熱器56に送り、ここで25〜50℃付近の温度域の復水を加熱する。このとき熱媒体循環ライン61の流量調節弁57と流量調節弁58は全開し、流量調節弁59と流量調節弁60は全閉し、熱媒体が排ガス再加熱器23へ流れないようにする。
【0046】
一方、プラント起動時における燃料の空気燃焼時には、給水加熱器56に復水が流れておらず、熱媒体循環ライン61内の熱媒体を排出ライン45に設置した排ガス再加熱器23に流すために、流量調節弁57、流量調節弁58を閉じ、流量調節弁59、流量調節弁60を開いて運用する。
【0047】
以下に図5を用いてプラント起動手順のシーケンスを説明する。図5には火炉温度と発電負荷の時間変化と手順項目を示している。
【0048】
(1)点火:プラント起動時は天然ガスや軽油など着火性の良い石炭以外の燃料で空気燃焼を行い、ボイラ(火炉)17を昇温させる。このとき、一次酸素供給ライン6の流量調節弁7と二次酸素供給ライン8の流量調節弁10を閉じ、排ガス再循環ライン34の流量調節弁33を閉じ、二次用燃焼ガス供給ライン67に空気40を供給するため流量調節弁49を開く。また、排ガス中のCO2濃度は10数%のため、CO2回収ライン69の流量調節弁31を閉じ、排出ライン45の流量調節弁30を開き、排ガスが排ガス再加熱器23に流れるようにする。
また、排ガス熱回収器50の熱媒体は排ガス再加熱器23に流れるように熱媒体循環ライン61にある流量調節弁57、流量調節弁58を閉じ、流量調節弁59、流量調節弁60を開く。
【0049】
(2)燃焼モード変更:ボイラ17の火炉内温度が800℃に達したとき、排ガス再循環ライン34の流量調節弁33を開き、且つ一次酸素供給ライン6の流量調節弁7と二次酸素供給ライン8の流量調節弁10を開いて酸素をボイラ17に供給し、二次用燃焼ガス供給ライン67の流量調節弁49を除々に閉じながら空気40のボイラ17への供給量を除々に減らし、ボイラ17の燃料の空気燃焼を酸素燃焼に変更する。このときの燃料はまだ天然ガスや軽油である。これは、排ガス再循環ライン34及び石炭などの燃料搬送ラインである一次用燃焼ガス供給ライン66を100℃まで昇温させることで、凝縮水などで微粉炭や煤塵などが詰まることを防止するためである。
【0050】
また、発電負荷開始と同時に、今まで排ガス熱回収器50と排ガス再加熱器23の間を流れていた熱媒体を排ガス熱回収器50と給水加熱器56の間に流れるように熱媒体循環ライン61にある流量調節弁57と流量調節弁58を開き、流量調節弁59と流量調節弁60を閉じる。
【0051】
(3)燃料変更:火炉温度が石炭が着火する温度900℃以上に達し、且つ石炭などの燃料搬送ラインである一次用燃焼ガス供給ライン66が100℃に達した後、石炭の供給を開始する。このとき、天然ガス供給量を除々に減らし、一方、石炭は供給量を除々に増加させて、火炉内の圧力や温度、排ガス量の変動を抑えながら燃料を切換え、石炭専焼にする。
【0052】
(4)CO2回収開始:排ガス中のCO2濃度が90%以上であることを確認後、CO2回収ライン69の流量調節弁31を開き、排出ライン45の流量調節弁30を閉じる。
【0053】
上記各ステップおよび各ステップ間を次のように表現することができる。
(1)〜(2):ボイラ昇温モード
(2)前後:空気/酸素混合燃焼モード(除々に再循環ガスを供給)
(2)〜(3):循環ライン昇温モード
(3)前後:天然ガス/石炭の混焼モード
(3)〜(4):石炭専燃モード
(4)前後:炉内圧静定モード
(4)〜 :定常酸素燃焼モード
【0054】
次に実施例1の比較例として、従来の空気燃焼で用いられているSO3除去技術を酸素燃焼プラントに採用した場合について、図6と図7により説明する。
図6に示す比較例は排ガスの廃熱を有効利用するために、予熱器(PH)19の後流側に排ガス熱回収器50を設け、該排ガス熱回収器50で回収した熱を給水ライン68の給水加熱器56の熱源として利用し、図1に示す実施例1のように、排出ライン45に排ガス再加熱器23を設けていない例である。
【0055】
SO3による紫煙問題は、ボイラ17の燃料の酸素燃焼時では大気放出する排ガスがほとんどゼロに近いため問題とならない。一方、ボイラ起動時に燃料の空気燃焼を開始して定常的な酸素燃焼に移行するまでのしばらくの間は、煙突27から排ガスを系外に放出するが、この図6に示す比較例の構成では、復水が給水加熱器56に流れていない発電前の段階では、排ガス熱回収器50では排ガス再加熱器23を設けていないために排ガスの除熱ができず、排ガス温度を90℃に下げることができない。このため、電気集塵機(EP)20でSO3を灰に吸着して十分に除去させることができず、そのままガス状のSO3がすり抜けて煙突27から大気放出され、ガス状SO3が凝縮してミスト状となって大気中で紫煙が発生するといった問題が生じる。
【0056】
また、図7に示す比較例はボイラ17からの燃焼排ガスを、熱媒体循環ライン61で接続した排ガス熱回収器50と排ガス再加熱器23の組み合わせにおいて、排ガス再加熱器23の後流側の排出ライン45から排ガス再循環ライン34及びCO2回収ライン69を分岐させた例を示す。
【0057】
ボイラ17における燃料の酸素燃焼時の排ガスの水分は約30%と高く、水分を除去するために、CO2回収ライン69の冷却機32で30℃程度まで除熱する必要がある。これは、凝縮水に排ガス中のCO2が溶けて炭酸水となって圧縮機24の腐食を引き起こすためである。本比較例のような構成であると、圧縮機24へ導入する前に、排ガスは排ガス再加熱器23で50℃から90℃まで昇温した後、水分を除去するために、冷却機32で30℃程度まで再度冷却する必要がある。このように排ガスを昇温後に再冷却することになるので、エネルギー損失が大きく、プラント効率の低下を招く。
【0058】
以下に実施例1の作用、効果を述べる。
排ガス熱回収器50により電気集塵機20の入口の排ガス温度を酸露点以下になる90℃に下げることでSO3の高効率捕集が可能になり、後段の酸腐食防止及び煙突からの紫煙削減に効果がある。
【0059】
給水用加熱器56と排ガス熱回収器50の間で熱交換を行うことで、それまでボイラ給水加熱に利用していたタービン52からの抽気を低減でき、これによりタービン52への蒸気量が増加し、タービン出力増加につながる。
【0060】
例えば、発電端出力500MWのプラントにおけるヒートバランスは、排ガス熱回収器50で燃焼排ガスの温度を約200℃から90℃に下げることによって熱媒体(水)の温度は約50℃から110℃にまで上がる。熱媒体が給水用加熱器56を通過することにより、復水温度が約70℃程度増加する。タービン出力は72MJ/sから換算して約20〜25MWth相当の出力増加が達成でき、酸素燃焼システムによる発電効率低下を約3%抑制できる。
【0061】
表1は酸素燃焼プラントにおける酸素燃焼運転時の熱収支を示したものである。排ガス熱回収器50と給水加熱器56の熱交換により、60MWthの廃熱を有効利用できることを示している。
【表1】

【0062】
このように従来ではボイラ給水の加熱をタービン52からの抽気により賄っていたが、本発明のように給水加熱器56によりボイラ給水の加熱ができるので、これまで行っていたタービン52からの抽気を一部低減可能となり、出力増加を図ることができる。
【0063】
同時にプラント起動時の給水加熱器56の熱交換ができずにボイラ排ガス処理ライン14の排ガス温度を90℃に維持できないときは、熱媒体循環ライン61を経由してボイラ熱回収器50と排ガス再加熱器23を接続することでボイラ熱回収器50による排ガス冷却を行い、ガス状SO3が大気放出されることを防止できる効果がある。
【0064】
このように、図1に示す実施例では、定常運転以外の段階でも排ガス中からのSO3の高効率除去を図ることができる(後述の実施例2、実施例3も同様)。表2はプラント起動時の各機器の温度と排ガス中のSO3濃度を示したものである。排ガス熱回収器50より後流側の排ガス処理ライン14において電気集塵機(EP)20で排ガス中のSO3が高効率で除去されるため、煙突27までの排ガス中のSO3濃度が0.1ppm未満となる。
【表2】

【0065】
本実施例の酸素燃焼システムに係る実施手段として以下のものを挙げる。
排ガス熱回収器50の熱交換の方式において、低温流体側の熱媒体流れ方向は、高温流体側の排ガスの熱を効率的に熱回収できる向流式が望ましいが、電気集塵機(EP)20の入口温度を90℃未満にできるならば、並流式でも十字流式でも良い。
排ガス再加熱器23の熱交換の方式において、高温流体側の熱媒体流れ方向は、低温流体側の排ガスに熱を効率的に供給できる向流式が望ましいが、煙突27の入口温度を90℃以上にできるならば、並流式でも十字流式でも良い。
給水加熱器56の熱交換の方式において、高温流体側の熱媒体流れ方向は、低温流体側の給水に熱を効率的に供給できる向流式が望ましいが、並流式でも十字流式でも良い。
【0066】
空気分離装置(ASU)2として、例えば深冷分離法による高純度酸素製造装置を利用できるが、これに限定されるものでなく、圧力スウィング吸着法や膜分離法などを利用した装置でも良い。
脱硝装置(SCR)18としては、触媒を用いるアンモニア接触還元法を利用した装置が挙げられるが、これに限定されるものでなく、無触媒還元法や活性炭吸着法などを利用した装置でも良い。
脱硫装置(FGD)22は、湿式脱硫方式のものが挙げられるがこれに限定されるものでなく、乾式脱硫、および半乾式脱硫などでも良い。
集塵装置20は電気集塵装置(EP)が挙げられるが、バグフィルタなどのろ布式などのものでも良い。
【0067】
酸素濃度は、高温によるボイラ17内の材料損傷を防止するため、約15〜40%−dry(無水状態基準)になるように再循環ガスライン34の流量を流量調節弁33および一次酸素供給ライン6の流量調節弁7、二次酸素供給ライン8の流量調節弁10で調整する。
【0068】
排ガス熱回収器50には熱交換用伝熱管に付着した灰を払い落とすスートブロア38を設ける。スートブロア38には、高温高圧スチームの他にCO2の気体でも構わないが、空気は窒素が含まれると、CO2回収率が低下するため、望ましくない。
排ガス熱回収器50の熱交換する伝熱管は、熱回収効率及び煤塵の付着面積が増大するフィン付のフィンチューブ36とすることが望ましい。排ガスとフィンチューブ36内の熱媒体の流れ方向は、向流でも並行流でも構わないが熱交換性の高い向流が望ましい。フィンチューブ36の配置は水平方向でも鉛直方向でも良いが、煤塵が堆積し易い水平方向が望ましい。
排ガス熱回収器50内に流す熱媒体39として、例えば温度が70〜180℃程度の水/蒸気やオイル、または窒素等の気体を用いることができる。
【0069】
燃料は可燃性であれば何でも良く、一般に発電用燃料としては化石燃料である石油、石炭、天然ガスなどが使用される。他にバイオマス燃料を混ぜたものでも構わない。
【実施例2】
【0070】
実施例1の変形例として図2に示す構成からなる実施例2を採用することもできる。
図1との相違点は、再循環ガスライン34を排ガス再加熱器23の後流側の排出ライン45から分岐させ、流量調節弁30を排ガス再加熱器23の後流側の排出ライン45に設けるように構成した点である。
【0071】
この例では、図1に示す例に比べ、排ガス再循環ライン34は長くなるが、排ガス再加熱器23で昇温された排ガスを再循環させることができるため、プラント起動後、図5の(2)〜(3):循環ライン昇温モードにおいて、排ガス再循環ライン34の昇温に要する時間を短縮できる利点がある。
本実施例2における、その他の作用・効果については、いずれも実施例1と同様である。
【実施例3】
【0072】
図3に実施例3の酸素燃焼フロー図を示す。実施例1との差異は、排ガス処理ライン14からボイラ17に再循環させる排ガスのラインを一次用排ガス再循環ライン34aと二次用排ガス再循環ライン34bの複数系統に分割した点である。
【0073】
流量調節弁33を有する二次用排ガス再循環ライン34bは、EP20の後流側の排ガス処理ライン14と二次用燃焼ガス供給ライン67の間に設ける。一方、流量調節弁61を有する一次用排ガス再循環ライン34aは、FGD22の後流側の排ガス処理ライン14と一次用燃焼ガス供給ライン66の間に設ける。
【0074】
また二次用燃焼ガス供給ライン67の入口には流量調節弁49を備え、空気40が導入できる構成であり、二次用燃焼ガス供給ライン67の流量調節弁49の前流側には一次用排ガス再循環ライン34aへの空気導入用ライン70があり、この空気導入用ライン70には流量調節弁63を設けている。
本実施例3の起動方法とその後の運転方法は実施例1に準じる。
【0075】
実施例3の効果は、大部分の酸素燃焼排ガスをEP20の後流側の排ガス処理ライン14から分岐して抜き出すため、脱硫装置(FGD)22での処理ガス量が低減でき、FGD22のコンパクト化、脱硫剤の低減による低ランニングコスト化及びブロア21の低容量化などが図れる。さらにFGD22出口で排ガス温度を90℃から50℃まで下げなくて済むため、排ガスの熱損失を大幅に防止できる。一次用排ガス再循環ガスは、FGD22を通過することで硫黄分が除去されているため、ミル13までの一次用燃焼ガス供給ライン66での酸露点による腐食を防止できるメリットがある。
【0076】
なお、図示しないが図3に示す実施例3において、一次用排ガス再循環ライン34aを図2に示す実施例2と同様に、排ガス再加熱器23の後流側の排出ライン45から分岐させるように構成しても良く、この場合も排ガス再加熱器23で昇温された排ガスを再循環させることができるため、プラント起動後、一次用排ガス再循環ライン34aの昇温に要する時間を短縮できる利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明に係る酸素燃焼プラントは、排ガス熱回収器による排ガスの廃熱を発電設備の給水の加熱に利用することができ、プラント全体の発電効率の向上を図ることができると同時に、酸腐食や紫煙発生の原因となるガス状SO3を、効率よく除去ができ、酸素燃焼プラントに用いるのに適している。
【符号の説明】
【0078】
1 空気(大気) 2 空気分離装置(ASU)
3 窒素(N2) 4 酸素供給ライン
5 予熱ヒータ
6 一次酸素(燃料搬送用)ライン
7 流量調節弁
8 二次酸素(燃焼用)ライン
9 混合器 10 流量調節弁
11 混合器 12 燃料(Coal)
13 ミル 14 排ガス処理ライン
15 バーナ 16 ウィンドボックス
17 ボイラ 18 脱硝装置(SCR)
19 予熱器(PH) 20 電気集塵機(EP)
21 ブロア(IDF)22 脱硫装置(FGD)
23 排ガス再加熱器 24 圧縮機
25 冷却機 26 分離器
27 煙突 28 CO2貯蔵容器
29 液化されないガス
30 流量調節弁 31 流量調節弁
32 冷却機 33 流量調節弁
34 再循環ガスライン
34b 二次用再循環ガスライン
34a 一次用再循環ガスライン
35 2次用ブロア 36 フィンチューブ
37 入口 38 スートブロア
39 熱媒体 40 空気
41 出口 42 SO3吸着灰
43 液化CO2 44 一次用ブロア
45 排出ライン 49 流量調節弁
50 排ガス熱回収器 50a 灰ホッパ
51 スチーム 52 タービン
53 発電機 54 復水器
55 ポンプ 56 給水加熱器
57〜60 流量調節弁
61 熱媒体循環ライン
62 一次用再循環ガス
63 流量調節弁
66 一次用燃焼ガス供給ライン
67 二次用燃焼ガス供給ライン
68 給水ライン 69 CO2回収ライン
70 空気導入用ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭又は石炭以外の燃料を燃焼させるボイラ(17)と、
脱硝装置(18)、集塵装置(20)および脱硫装置(22)を含むボイラ(17)の燃焼排ガスを浄化する装置をそれぞれ前流側から後流側に順次設けた排ガス流路である排ガス処理ライン(14)と、
ボイラ(17)の給水ライン(68)と、
ボイラ(17)に燃焼用ガスとして用いる酸素を供給する酸素供給ライン(4,8)と、
ボイラ(17)の燃焼用ガスに用いる空気と前記酸素供給ライン(4,8)から分岐した分岐酸素供給ライン(6)より供給される酸素とを混合して得られる一次用燃焼ガスと共に石炭を含む燃料をボイラ(17)に供給する一次用燃焼ガス供給ライン(66)と、
ボイラ(17)の燃焼用ガスに用いる空気を酸素供給ライン(4,8)からの酸素と混合して燃焼ガスとしてボイラ(17)に供給する二次用燃焼ガス供給ライン(67)と、
ボイラ排ガス中のCO2を回収する排ガス流路であるCO2回収ライン(69)と、
集塵装置(20)より後流側の排ガス処理ライン(14)から分岐して燃焼排ガスをボイラ(17)の二次用燃焼用ガスとして戻すために二次用燃焼ガス供給ライン(67)へ接続する排ガス再循環ライン(34)と、
浄化処理した燃焼排ガスを煙突(27)へ向けて流す排ガス処理ライン(14)の後流側に設けた排ガス流路である排出ライン(45)と
を備えた酸素燃焼発電プラントであって、
排ガス処理ライン(14)には、集塵装置(20)より排ガス流路前流側にある燃焼排ガスの熱を回収する熱交換器(36)を有する排ガス熱回収器(50)と脱硫装置(22)の排ガス流路後流側に設けた燃焼排ガスを再加熱する排ガス再加熱器(23)
を備え、
前記CO2回収ライン(69)は、脱硫装置(22)のある排ガス流路後流側であって、排ガス再加熱器(23)の排ガス流路前流側の排ガス処理ライン(14)から分岐して設けられ、
前記給水ライン(68)には、ボイラ給水を加熱する給水加熱器(56)を設け、該給水加熱器(56)と排ガス熱回収器(50)との間及び前記給水加熱器(56)と排ガス再加熱器(23)との間に熱媒体が循環する熱媒体循環ライン(61)を設け、熱媒体循環ライン(61)は排ガス熱回収器(50)で回収した熱の供給先となる排ガス再加熱器(23)と給水加熱器(56)とを流れる熱媒体の流量をそれぞれ調節可能に構成したことを特徴とする酸素燃焼発電プラント。
【請求項2】
前記排ガス再循環ライン(34)は、排ガス再加熱器(23)より後流側の排ガス処理ライン(14)から分岐して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の酸素燃焼発電プラント。
【請求項3】
前記排ガス再循環ライン(34)は、ボイラ(17)に燃料を搬送する一次用燃焼ガス供給ライン(66)と燃料を搬送しない二次用燃焼ガス供給ライン(67)に分岐して接続していることを特徴とする請求項1に記載の酸素燃焼発電プラント。
【請求項4】
前記排ガス再循環ライン(34)は、脱硫装置(22)より前流側の排ガス処理ライン(14)と脱硫装置(22)より後流側の排ガス処理ライン(14)から分岐してそれぞれ設けられた排ガス再循環ライン(34b)と排ガス再循環ライン(34a)からなり、
排ガス再循環ライン(34a)は、ボイラ(17)に燃料を搬送する一次用燃焼ガス供給ライン(66)に接続し、
排ガス再循環ライン(34b)は、ボイラ(17)に燃料を搬送しない二次用燃焼ガス供給ライン(67)に接続していることを特徴とする請求項1に記載の酸素燃焼発電プラント。
【請求項5】
請求項1記載の酸素燃焼発電プラントの運転方法であって、
プラント起動時は、ボイラ(17)の燃焼用ガスには二次用燃焼ガス供給ライン(67)から供給される空気を使用して空気燃焼を行いながら、ボイラ排ガスは排ガス処理ライン(14)から排出ライン(45)に流し、同時に排ガス熱回収器(50)で回収した熱を熱媒体循環ライン(61)により排ガス再加熱器(23)に流し、
プラント定常運転時には、ボイラ(17)の燃焼用ガスとして酸素供給ライン(4,6,8)からの酸素と排ガス再循環ライン(34)からの排ガスとの混合ガスを使用して酸素燃焼を行いながら、排ガス処理ライン(14)からの排ガスをCO2回収ライン(69)に流して排ガスからCO2を回収し、同時に排ガス熱回収器(50)で回収した熱を熱媒体循環ライン(61)により給水加熱器(56)に流す
ことを特徴とする酸素燃焼発電プラントの運転方法。
【請求項6】
プラント起動時からボイラ(17)が設定した第1の温度条件に達するまでは、石炭以外の燃料を用いて空気燃焼により昇温させながらボイラ排ガスは排ガス処理ライン(14)から排出ライン(45)へ流し、その後、燃焼用ガスとして、徐々に空気の量を減じつつ、酸素供給ライン(4,6,8)からの酸素と排ガス再循環ライン(34)からの排ガスの量を増加させることで排ガス再循環ライン(34)内の排ガスを昇温させ、その過程において、石炭以外の燃料と石炭との混焼を開始し、ボイラ(17)が設定した第2の温度条件に達したら、燃料を石炭に切り換えて、ボイラ(17)の昇温を継続し、設定した第3の温度条件に達したら定常運転に移行し、
前記熱媒体循環ライン(61)で回収した熱の供給先を排ガス再加熱器(23)側から給水加熱器(56)側に切り換え、排ガス中のCO濃度が90%以上になると、ボイラ排ガスの排出先を排出ライン(45)からCO2回収ライン(69)に切り換えることを特徴とする請求項5記載の酸素燃焼発電プラントの運転方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−141075(P2011−141075A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1655(P2010−1655)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】