説明

重ね板バネ

【課題】常に各ローラーが回動可能状態を維持し、ローラーが落下する心配もなく、板バネ間の摩擦係数を大幅に軽減させることができ、また、これに伴って摩擦音の軽減させることができる重ね板バネを提供する。
【解決手段】複数枚の板を重ねた重ね板バネにおいて、隣合う板と板の間にローラーにより前記板間の摩擦を軽減する摩擦軽減機構を配置したことを特徴とする重ね板バネと、前記各板の間の長手方向の中央部に中央スペーサーを介在させるとともに、前記各板と前記中央スペーサーを連結固定し、更に、前記各板のうち、最長板以外の板の端部に端部固定部材を取付け前記摩擦軽減機構を前記中央スペーサー及び端部固定部材に回転可能に固定したことを特徴とする重ね板バネの構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型トラックやバスを始めとする車両に装備される重ね板バネ(リーフスプリング)に関する。
【背景技術】
【0002】
重ね板バネ(リーフスプリング)としては、特許文献1に記載の考案等が提案されている。特許文献1に記載の自動車用重ね板バネ装置は、各板バネ11同士の接触面である各板バネ11の変移を許容する端部11a或いは端部対応部の少なくとも一方に凹所16を形成し、端部11aと端部対応部の間に介在し各板バネ11の弾性変形時に各板バネ11同士を転がり接触させるローラー17を凹所16に保持させたことを特徴とする(請求項1)。
【0003】
即ち、特許文献1に記載の自動車用重ね板バネ装置は、各板バネ同士の接触部分にローラーを介在させることで摩擦係数の低減を図っている。
【0004】
しかしながら、板バネの接触部分に凹所を設けて、その凹所内に位置を固定しない状態で1本のローラーを設けているため、例えばローラーが凹所の縁方向に移動しローラーと縁が接した場合や、凹所内でローラーが傾いた場合には、ローラーが上手く作用しないため板バネの効果を十分に発揮することができなかった。
【0005】
また、ローラー自体が一定の制御の下で凹所に取り付けられているものではないため、ローラー自体が板バネ間から落下する可能性があり、安全性にも問題があった。
【0006】
更に、精密機械や割れもの等を運搬する車両やバスでは、車体への振動を確実に軽減させることが要求されるため、現在では板バネに代わりエアーサスペンションが多く使用されているが、設置やメンテナンスなどのコストがかかるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平4−97130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、常に各ローラーが回動可能状態を維持し、ローラーが板バネから落下する心配もなく、板バネ間の摩擦係数を大幅に軽減させることができ、また、これに伴って摩擦音の軽減させることができる重ね板バネを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために、複数枚の板を重ねた重ね板バネにおいて、隣合う板と板の間にローラーにより前記板間の摩擦を軽減する摩擦軽減機構を配置したことを特徴とする重ね板バネの構成とした。
【0010】
また、前記各板の間の長手方向の中央部に中央スペーサーを介在させるとともに、前記各板と前記中央スペーサーを連結固定し、更に、前記各板のうち、最長板以外の板の端部に端部固定部材を取付け前記摩擦軽減機構を前記中央スペーサー及び端部固定部材に回転可能に固定したことを特徴とする重ね板バネの構成とした。
【0011】
また、前記摩擦軽減機構6を、挿通孔6kを形成して筒状となっている複数本のローラー6aと、両端部にプレート孔6jを穿設し前記ローラーの左右に配置される複数枚の連結プレート6bと、隣合う前記連結プレートを前記プレート孔の位置で重ね合わせ前記挿通孔及び重ね合わせてできた連結プレートのプレート孔に挿通し回転可能に固定されるローラー軸とからなり、両端の連結プレートは、それぞれ前記中央スペーサー及び端部固定部材に連結した摩擦軽減機構6としたことを特徴とする重ね板バネの構成とした。
【0012】
また、前記ローラー6aを、前記各板の幅と同じ長さであるローラー6aとしたことを特徴とする重ね板バネの構成とした。
【0013】
更に、前記ローラー6aを、前記各板の厚みに対して2倍若しくはそれ以上の直径であるローラー6aとしたことを特徴とする重ね板バネの構成とした。
【0014】
加えて、前記連結プレートのプレート孔を、前記ローラー軸の直径より大きくしたことを特徴とする重ね板バネの構成とした。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上のような構成であるから、板バネ間の摩擦を軽減することができ、それに伴って、板バネの摩擦音を軽減させることができる。
【0016】
また、板バネ間に配置される各ローラーは、移動範囲が一定の範囲内に制限された状態で、且つ、常に回動可能な状態で取り付けられているため、板バネ間の摩擦軽減やそれに伴う摩擦音の軽減が安定する。
【0017】
更に、エアーサスペンションに比べて設置費用、メンテナンス費用等のコストを安く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明である重ね板バネの全体図である。
【図2】本発明である重ね板バネのA−B間の拡大図である。
【図3】本発明である重ね板バネのC−D間の拡大図である。
【図4】本発明である重ね板バネのE−E線の平面図及び一部断面図である。
【図5】本発明である重ね板バネのF−F線の平面図である。
【図6】本発明である重ね板バネの第2実施例の全体図である。
【図7】本発明である重ね板バネの第2実施例のG−H間の拡大図である。
【図8】本発明である重ね板バネの第2実施例のI−J間の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明である重ね板バネの全体図、図2は重ね板バネのA−B間の拡大図、図3は重ね板バネのC−D間の拡大図、図4は重ね板バネのE−E線の平面図及び一部断面図、図5は重ね板バネのF−F線の平面図である。
【0021】
図1に示すように、本発明である重ね板バネ1は、複数枚の板を重ねた重ね板バネにおいて、隣合う板と板の間にローラー6aにより前記板間の摩擦を軽減する摩擦軽減機構6を配置したことを特徴とする。
【0022】
また、図2及び図3に示すように、本発明である重ね板バネ1は、前記各板の間の長手方向の中央部に中央スペーサー6cを介在させるとともに、前記各板と前記中央スペーサー6cを連結固定し、更に、前記各板のうち、最長板(親板2)以外の板の端部に端部固定部材6dを取付け、前記摩擦軽減機構6を前記中央スペーサー6c及び端部固定部材6dに回転可能に固定したことを特徴とする。
【0023】
前記端部固定部材6dは、最長板である親板2以外の板(中板3、下板4)の端部上面に固定部材6gを介して固定されており、端部固定部材6dの上面は他の板の底面に接していない。
【0024】
尚、図2において符号6hは、前記端部固定部材6dの穿設された取付孔を示しており、符号4bは下板4の端部に穿設された取付孔を示している。前記親板2以外の各板の端部には取付孔4bと同様の取付孔が穿設されており、端部固定部材6dを各板の端部に取り付ける際に取付孔6hと各板端部の取付孔に固定部材6gを挿通し、ナット6iによりしっかりと固定される。
【0025】
図3に示すように、前記中央スペーサー6cは、各板(親板2、中板3、下板4)間の長手方向の中央部に介在されている部材であり、中心に取付孔6lが穿設されている。また、前記各板(親板2、中板3、下板4)の長手方向中央部には孔2b、3a、4aが穿設されており、前記中央スペーサー6cと各板(親板2、中板3、下板4)を連結する際に、前記取付孔6lと孔2b、3a、4aの位置を合わせてボルト5を挿通し、ナット5bによりしっかりと固定される。尚、図3中の符号5aはワッシャを示しているが、必須の部材ではないので、使用しなくても構わない。
【0026】
図4及び図5に示すように、前記摩擦軽減機構6は、挿通孔6kを形成して筒状となっている複数本のローラー6aと、両端部にプレート孔6jを穿設し前記ローラー6aの左右に配置される複数枚の連結プレート6bと、隣合う前記連結プレート6bを前記プレート孔6jの位置で重ね合わせ前記挿通孔6k及び重ね合わせてできた連結プレート6b、6bのプレート孔6j、6jに挿通し回転可能に固定されるローラー軸6eとからなり、両端の連結プレート6b、6bは、それぞれ前記中央スペーサー6c及び端部固定部材6dに連結したことを特徴とする。
【0027】
図4の(A)に示すように、摩擦軽減機構6は挿通孔6kを形成した筒状のローラー6aを等間隔に複数並べ、各ローラー6a同士を両端部にプレート孔6jを穿設した連結プレート6bで連結している。尚、前記ローラー6a同士の間隔については、等間隔に限定したものではなく、不規則な間隔での配置であっても構わない。
【0028】
まず、2本のローラー6a、6aを並べて各ローラー6a、6aの両端部に前記連結プレート6b、6bを載置する。このとき、各ローラー6a、6aの挿通孔6kの端部と連結プレート6bのプレート孔6jの位置が重なり合わせておく。
【0029】
図4(A)のように、以上のような組を複数並べ、隣り合う連結プレート6b、6bに跨るように他の連結プレート6b、6bを重ね合わせて、各重なり部分にローラー軸6eを挿通し、ローラー軸の端部に割りピン6fを取り付けて各組同士を連結する。
【0030】
図4(A)及び図5に示すように、摩擦軽減機構6の両端部にくる連結プレート6b、6bについては、一方を中央スペーサー6cに、他方を端部固定部材6dにローラー軸6eを介して連結する。
【0031】
以上のように、摩擦軽減機構6の各端部を中央スペーサー6c及び端部固定部材6dに取り付けることにより、摩擦軽減機構6が各板間から外れることはない。
【0032】
また、図4(A)(B)に示すように、前記ローラー6aは、前記各板(親板2、中板3、下板4)の幅と同じ長さであり、各ローラー6aを連結する連結プレート6bが各板(親板2、中板3、下板4)からはみ出た状態となっている、
【0033】
更に、前記連結プレート6bのプレート孔6jは、前記ローラー軸6eの直径より大きく遊びを設けてある。尚、図4(B)に示すように、ローラー軸6eの一端の直径は前記プレート孔6jの直径よりも大きい。これにより、ローラー軸6eの他端側に割りピン6fを取り付けるだけで各部材を連結できる。
【0034】
尚、図においては親板2、中板3、下板4の3枚からなる重ね板バネとしたが、この板の枚数については特に限定したものではなく、図示した枚数よりも多くの板を重ねた重ね板バネであっても良い。
【実施例2】
【0035】
次に図6から図8を使用して、本発明である重ね板バネの第2実施例を説明することとする。図6は本発明である重ね板バネの第2実施例の全体図、図7は重ね板バネの第2実施例のG−H間の拡大図、図8は重ね板バネの第2実施例のI−J間の拡大図である。
【0036】
図6から図8に示すように、本発明である重ね板バネ1aは、実施例1で示した重ね板バネ1とほぼ同様の構造をしている。
【0037】
即ち、異なる点は、前記ローラー6aを、前記各板(親板2、中板3、下板4)の厚みに対して2倍若しくはそれ以上の直径であるローラー6aとしたことを特徴とし、それ以外の基本的構造に変更はない。
【0038】
以上のようにローラー6aの直径を各板の厚みよりも大きくすることで、各板バネ間における大幅な摩擦軽減やそれに伴う摩擦音の軽減が期待できる。
【0039】
尚、図7及び図8に示すように、ローラー6aの直径を2倍で図示すると同時に、各ローラー6aを連結する連結プレート6bのプレート幅も2倍で図示したが、これは特に限定したものではなく、各ローラー6aの連結を維持するのに最適なプレート幅であればよい。
【0040】
最後に上記説明において触れなかった符号について説明することとする。図1及び図6に示す符号7は、クリップバンドを示しており、各板(親板2、中板3、下板4)の端部を他の板に固定するためのものである。また、符号2aは親板2の端部に形成されるスプリングアイを示している。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明である重ね板バネは、従来よりも長期間に渡って安全に使用することができるため交換コストを抑えることができ、また大幅な摩擦軽減及び摩擦軽減に伴い摩擦音の軽減を可能とし重ね板バネを使用する車両に多大な貢献をもたらす。
【符号の説明】
【0042】
1 重ね板バネ
2 親板
2a スプリングアイ
2b 孔
3 中板
3a 孔
4 下板
4a 孔
4b 取付孔
5 ボルト
5a ワッシャ
5b ナット
6 摩擦軽減機構
6a ローラー
6b 連結プレート
6c 中央スペーサー
6d 端部固定部材
6e ローラー軸
6f 割りピン
6g 固定部材
6h 取付孔
6i ナット
6j プレート孔
6k 挿通孔
6l 取付孔
7 クリップバンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の板を重ねた重ね板バネにおいて、隣合う板と板の間にローラーにより前記板間の摩擦を軽減する摩擦軽減機構を配置したことを特徴とする重ね板バネ。
【請求項2】
前記各板の間の長手方向の中央部に中央スペーサーを介在させるとともに、前記各板と前記中央スペーサーを連結固定し、更に、前記各板のうち、最長板以外の板の端部に端部固定部材を取付け、前記摩擦軽減機構を前記中央スペーサー及び端部固定部材に回転可能に固定したことを特徴とする重ね板バネ。
【請求項3】
前記摩擦軽減機構6を、
挿通孔6kを形成して筒状となっている複数本のローラー6aと、両端部にプレート孔6jを穿設し前記ローラーの左右に配置される複数枚の連結プレート6bと、隣合う前記連結プレートを前記プレート孔の位置で重ね合わせ前記挿通孔及び重ね合わせてできた連結プレートのプレート孔に挿通し回転可能に固定されるローラー軸とからなり、両端の連結プレートは、それぞれ前記中央スペーサー及び端部固定部材に連結した摩擦軽減機構6としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の重ね板バネ。
【請求項4】
前記ローラー6aを、
前記各板の幅と同じ長さであるローラー6aとしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の重ね板バネ。
【請求項5】
前記ローラー6aを、
前記各板の厚みに対して2倍若しくはそれ以上の直径であるローラー6aとしたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の重ね板バネ。
【請求項6】
前記連結プレートのプレート孔を、
前記ローラー軸の直径より大きくしたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の
重ね板バネ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−231784(P2011−231784A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99687(P2010−99687)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(593130289)
【Fターム(参考)】