説明

重合された無機−有機前駆物質溶液および焼結膜

【課題】
金属イオンを重合させることによって製造された重合された無機−有機前駆物質溶液を提供する。
【解決手段】
下記の工程:
(a) 少なくとも一種の金属カチオンおよび有機化合物の溶液を形成し、および
(b) 溶液を加熱して温度20 - 300℃ にしてナノサイズの酸化物用前駆物質の重合された溶液を形成し、および
(c) 溶液の室温粘度が10〜500mPa・sになった時に、加熱を完了する
を含むプロセスに従って得られるナノサイズの金属酸化物用の重合された無機−有機前駆物質溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属イオンを重合させることによって製造された重合された無機−有機前駆物質溶液を指向するものである。特に、本発明は、セラミック酸化物粉末の懸濁液における分散剤および焼結助剤として有用な重合された無機−有機前駆物質溶液および更に、無機−有機前駆物質溶液を用いて製造された焼結膜に関する。
【背景技術】
【0002】
焼結とは、粉末粒子を一緒に結合させることによって粉末または圧縮材料の強度を増大させる目的で、粉末または圧縮材料を主成分の融点より低い温度で熱処理することと定義される。焼結は、粉末または圧縮材料における多孔度の低下、材料の再配列および圧縮材料の収縮を生じる。
【0003】
焼結助剤は、焼結温度を低下させるかまたは焼結速度を増大させるかのいずれかのために使用され、それにより、所定の温度における焼結密度を増大させる。焼結するセラミック酸化物と異なる少量の金属酸化物かまたはセラミック酸化物のナノサイズの粒子のいずれかを、セラミック酸化物における焼結助剤として使用することができる。
【0004】
これらの2成分を機械的に混合することによって、焼結助剤をセラミック酸化物に加える。
【0005】
焼結助剤を加える際のセラミック酸化物の性質が研究された(非特許文献1)。ここで、市販されている少量のナノサイズのA1N粉末をドーパントとして加えることおよび焼結用添加剤Y2O3およびCaOを市販されているA1N原料粉末に使用することは、ナノサイズのA1N 粉末の存在がサンプルの熱伝導率を改良することを示すことが観測された。一層低い温度で緻密化が改良されそして焼結が増進された。
【0006】
基材に、金属カチオンおよび重合性有機溶媒を含む水溶液からの金属酸化物フィルムを塗被する方法が開示されている(特許文献1)。高分子前駆物質を使用して、多結晶性、金属酸化物フィルムを基材に被覆しそして生成した酸化物フィルムは、緻密でありそしてSOFCにおいて、電解質または電極としてまたはガス分離膜として使用することができる。
【0007】
均一なミクロ構造を有する、セラミック体、コーティングおよび多層デバイスのような緻密なナノ結晶性複合材料を製造するプロセスが開示されている(特許文献2)。ゾル-ゲル溶液が使用される。
【0008】
焼結材料および焼結助剤の重要な用途は、固体酸化物型電池、特に、固体酸化物型燃料電池(SOFC)および可逆固体酸化物型燃料電池または固体酸化物型電解槽セル(SOEC)の部材におけるものである。焼結材料は、また、ガス分離膜としてまたは電気化学的煙道ガス浄化用電池としても有用である。
【0009】
固体酸化物型燃料電池は、電気化学的エネルギー転換デバイスである。それは、固体電解質の存在において外部供給の燃料から電気(陽極側)および酸素 (陰極側)を発生する。陰極側の空気中に存在する酸素は、還元されて酸化物イオンになり、酸化物イオンは、酸素イオン伝導性電解質を通って移動して陽極に行き、そこで酸化物イオンは、燃料、代表的には水素を酸化し、電子(電気)に熱および水を与える。水素は、また、燃料電池内でメタンのような炭化水素を内部改質することによって生じさせることもできる。電解質は、ガスおよび電子を通してはならずそして酸化物イオンだけを通過させることを可能にすべきである。
【0010】
固体酸化物型燃料電池は、温度650-1000℃で作動する高温燃料電池である。それらは、SOFCを H2、メタン(およびそれより高級な炭化水素)、COおよびアンモニアのような多種類の燃料に関して作動させ得る点で、他のタイプ燃料電池と比べると特に有用である。
【0011】
動力発生におけるSOFCの使用は、内燃機関における化石燃料の燃焼のような源からの動力発生と比べて、環境上の潜在的な利点を供する。
【0012】
SOFCの性能に関係する要因は、電解質の密度および酸化物イオン伝導度である。機密性を確実にするには、理論的密度の96%より大きい密度を必要とする。電解質は、高い電気伝導度を有して、できるだけ緻密であることが望ましい。電解質の緻密化の向上は、電解質を製造するのに使用される組成物において焼結助剤を使用することによって達成されることが知られている。
【0013】
可逆的固体酸化物型燃料電池は、電気および水およびおそらく二酸化炭素が転化されて水素およびおそらく一酸化炭素になる、固体酸化物型電解槽セルである。起きる反応は、固体酸化物型燃料電池と比べて逆にされそして電池は、電解槽として作用する。
【0014】
酸素分離膜は、緻密な、混合酸素イオンおよびどちらの側にも電極を有する電子伝導膜からなる。そのような膜の代表的な使用は、メタンの部分酸化から合成ガスを製造することである。燃焼プロセスおよび高温酸化プロセスの効率を増大させるために、膜は、望ましくない漏洩を防ぐのに気密であるべきである。これらの膜は、機械的強度を有するために、支持材上に製造されるのが代表的である。
【0015】
酸素を豊富に含む側の電極は、酸素を分解して酸化物イオンにするための良好な触媒でありそして高い酸化物イオンおよび電子伝導度を有すべきである。酸素不足の側の電極は、良好な酸化物イオンおよび電子伝導度を有すべきでありそして酸化用触媒を含有すべきである。
【0016】
酸素を豊富に含む側で使用される代表的な材料は、ドープされた酸化セリウム、ドープされた酸化ジルコニウム、ドープされたコバルタイト/フェライト またはそれらの混合物である。
【0017】
酸素不足の側で使用される代表的な材料は、ニッケル、ドープされた酸化セリウムおよびドープされたジルコニアである。この側は、機械的支持材として使用されるのが代表的である。
【0018】
不純物は、原料中どこにでもある。焼結する間および焼結材料の動作下で、シリカのような不純物は、粒子の表面および粒界の方向に移動しそして焼結材料の全体にわたって薄層として存在する。これは、焼結材料の伝導度のような性質をひどく落とす。この作用を軽減するために、シリカと反応しそしてシリカを固定するアルミナのような掃去剤を加えることができる。反応生成物は、ミクロ構造内のいくつかの三重境界において小さいポケットとして見出すことができる。これより、焼結材料内の表面および粒界が含有するシリカは一層少ない。これらの性質は研究されてきた(非特許文献2)。
【0019】
焼結助剤を不精確な量で加えると、焼結セラミック酸化物において、伝導度の低下ならびに高温における強度および耐クリープ性の低下のような望ましくない性質の変化に至る。
【0020】
これらの障害を来す変化を最小限に抑えるために、加える焼結助剤の量は、必要とされる量を超えるべきでない。
【0021】
従って、セラミック酸化物粒子の表面上で直接有効な焼結助剤についての要求がある、これが、それらが最も必要とされる所であるので。焼結助剤をセラミック酸化物と機械的に混合することは、効果のない方法である。
【非特許文献1】Qui,J-Y. et al., Enhancement of Densification and Thermal Conductivity in A1N Ceramics by Addition of Nano-sized Particles, J. Am. Ceram. Soc., 89[1] 377-380 (2006)
【特許文献1】US特許第5494700号
【特許文献2】WO特許出願第03/099741号
【非特許文献2】Lybye and Liu; a study of complex effects of alumina addition on conductivity of stabilised Zirconia,J. Europ. Ceram. Soc., 26, 599-604, (2006)
【特許文献3】WO特許出願第03/099741号
【特許文献4】WO2006/079800
【特許文献5】US特許第6,146,445
【特許文献6】US特許第 6,803,138
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
従って、本発明の目的は、分散剤として有用な重合された無機−有機前駆物質溶液を提供するにある。
【0023】
本発明の目的は、また、セラミック材料の製造において焼結助剤として有用な前駆物質溶液の燃焼から得られるナノサイズの酸化物粉末も提供するにある。
【0024】
加えて、本発明の目的は、重合された前駆物質溶液を利用して不純物の作用を抑制するための掃去剤を提供するにある。
【0025】
更に、本発明の目的は、前駆物質溶液を利用して、固体酸化物型電池(SOFC/SOEC) のような電気化学的デバイスにおいてまたは電気化学的煙道ガス浄化用分離膜としておよび電池において有用な焼結膜を重合された提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記の目的は、本発明の重合された無機−有機前駆物質溶液によって達成され、重合された無機−有機前駆物質溶液は、金属イオンを重合させることによって製造される。重合された無機−有機前駆物質溶液をセラミック酸化物粉末の懸濁液に加えそして重合された無機−有機前駆物質溶液は、懸濁液中で分散剤として作用する。重合された無機−有機前駆物質溶液は、加熱する際に、転化されてナノサイズの粉末になり、ナノサイズの粉末は、セラミック酸化物を焼結する間焼結助剤として作用する。
【0027】
本発明は、金属カチオンと有機モノマーとを重合させることによって製造される懸濁液中で分散剤として有効な重合された無機−有機前駆物質溶液に関する。重合された無機−有機前駆物質溶液は、下記の工程:
(a) 少なくとも一種の金属カチオンおよび有機化合物の溶液を形成し、および
(b) 溶液を加熱して温度20 - 300℃にしてナノサイズの酸化物用前駆物質の重合された溶液を形成し、および
(c) 溶液の室温粘度が10〜500mPa・sになった時に、加熱を完了する
を含むプロセスに従って得られる。
【0028】
本発明は、また、上述した重合された無機−有機溶液から製造されるナノサイズの焼結助剤の現場製法にも関する。
【0029】
本発明は、更に、上述した重合された溶液から製造された不純物を中和するためのナノサイズの掃去剤の現場製法に関する。
【0030】
本発明は、また、下記の工程:
(a) 重合された無機−有機前駆物質溶液を、セラミック酸化物粉末、溶媒および場合により少なくとも一種の高分子化合物と混合して混合物を形成し、
(b) 混合物をボールミル粉砕して懸濁液を得,
(c) 懸濁液を成形し,
(d) 成形された懸濁液を焼結して焼結膜を得る
を含むプロセスに従って得られる焼結膜にも関する。
【0031】
その上に、本発明は、重合された無機−有機ナノ粒子をベースにした焼結膜を含む固体酸化物型電池(SOFC/SOEC)およびスタックに関する。
【0032】
本発明は、その上に、例えば、酸素または水素を分離するためまたは煙道ガスを清浄にする(煤粒子およびNOxを除去する)ための電池用に適したガス分離膜に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の重合された無機−有機前駆物質溶液は、懸濁液中で分散剤として使用するために適しておりおよび強固にされた懸濁液を加熱する際に、重合された無機−有機前駆物質溶液から得られた生成したナノ粒子は、それらのナノサイズ により、焼結膜の製造において焼結助剤および掃去剤として使用するために適している。
【0034】
ナノサイズの粒子は、中心(mean)平均直径10-9 mの範囲として定義されるサイズを有する。それらのサイズは、1〜100nmである。
【0035】
本発明の重合された無機−有機前駆物質溶液から製造された焼結助剤は、それらのナノサイズにより、ナノサイズでない材料に比べて非常に大きな表面積を有しそして従って、焼結のための一層大きな駆動力を有し、それにより、焼結用活性を増大させる。
【0036】
重合された無機−有機前駆物質溶液は、個々の正電荷を持つ金属イオン、すなわち各々が高分子骨格を有するカチオンの形態の無機−有機ポリマー前駆物質を含む。
【0037】
“無機−有機前駆物質溶液” なる用語は、前駆物質粒子の溶液を意味し、各々の粒子は、個々の正電荷を持つ金属イオンで作成される無機部分および高分子骨格からなる有機部分を有する。
【0038】
本発明の焼結される膜を製造する間に、無機−有機ポリマー前駆物質は、セラミック酸化物粉末の粒子の表面に引き付けられる。各々のセラミック酸化物粒子は、これより、多数の無機−有機ポリマー前駆物質によって囲まれ、各々の金属カチオンは、各々のセラミック酸化物粒子の表面に吸着されそして高分子骨格は、後方におよびセラミック酸化物粒子から離れて伸長する。
【0039】
これは、懸濁液中の粒子に同様の電荷 (正のまたは負の) を提供し、それにより、それらを分散された状態にに保つ。高分子骨格は、焼結する間に、燃焼によって除かれ、ナノサイズの金属酸化物層を有するセラミック酸化物粒子がその表面上に後に残る。このナノサイズの金属酸化物は、セラミック酸化物を焼結する間、焼結助剤としてまたは不純物用掃去剤として作用する。
【0040】
一種以上のポリマーを混合物に加えているならば、その場合、これらのポリマーもまた、燃焼によって除かれる。これは、焼結プロセスを助成しそして従って、それは、慣用の値より低い温度で実施することができる。掃去剤の場合に、セラミック酸化物粒子の表面上のナノサイズの金属酸化物は、不純物と反応しそしてそれらを固定させる。
【0041】
これより、ナノサイズの金属酸化物は、無機−有機ポリマー前駆物質溶液から現場で誘導されそして焼結すべき慣用サイズのセラミック酸化物と比べて、それらの構造およびナノサイズにより、焼結助剤として有効である。各々の無機−有機ポリマー前駆物質中に高分子骨格が存在することは、各々のセラミック酸化物粒子の表面上にこれらの前駆物質を均一に分布させることを可能にする。高分子骨格が存在しないことは、均一性の一層低い分布に至りそして重合された無機−有機ポリマー粒子は、焼結助剤としての有効性が一層低くなろう。
【0042】
重合された無機−有機ポリマー前駆物質溶液から現場で誘導されたナノサイズの金属酸化物の焼結助剤として使用することにより、焼結膜重合された無機−有機前駆物質溶液を加えないで焼結した膜と比べて、焼結膜の密度が一層高くなりおよび/または焼結膜の焼結温度が一層低くくなるに至る。焼結される膜の電気伝導度は、多孔度に依存し、一層低い多孔度は、高い電子伝導度を生じる。
【0043】
重合された無機−有機前駆物質溶液は、また、ポリマー鎖および可能な電荷の存在により分散剤としても有効である。それらは、懸濁されたセラミック酸化物粒子の表面上に吸着することによりそしてそれらを静電気力および立体力より、分離されたままにに保つことによって機能する。セラミック酸化物懸濁液を強固にしまたは成形して要求される形状にしそして焼結した後に、先に述べた前駆物質溶液からナノサイズの金属酸化物が得られる。
【0044】
重合された無機−有機前駆物質溶液から現場で得られたナノサイズの金属酸化物は、その上にまた、不純物の掃去剤として有効でありそしてそれらは、不純物を、それと反応することによって固定させる改良された能力を示す。上で検討した通りに、無機−有機ポリマー前駆物質は、懸濁液中の不純な粒子の表面上に吸着しそして加熱する際に、不純な粒子の表面上にナノサイズの金属酸化物が残る。不純物は、加熱する際に、表面の方向に移動する。これにより、掃去剤を、それらが必要とされる領域に向けることを確実にする。
【0045】
加えた焼結助剤が、それが最も必要とされる粒子の表面に直接行くことを確実にする。これは、焼結助剤をセラミック酸化物と機械的に混合することよりも一層良好である。加えて、重合された前駆物質は、懸濁液中でセラミック酸化物粒子に結合される場合に、分散剤として作用する。
【0046】
本発明の重合された無機−有機前駆物質溶液は、初めに少なくとも一種の金属カチオンの水溶液を形成することによって合成する。引き続いて、少なくとも一種の有機化合物を加えそして溶液のpHおよび/または温度を制御することによって、金属カチオンを重合させる。重合度は、金属カチオンの濃度、有機化合物および所定の温度およびpHにおいてかけた時間の長さによって制御する。
【0047】
カチオンとして有用な金属は、下記からなる群より選ぶ:Ce、Gd、Co、Al、Mg、Fe、Ni、La、Sr、Mn、Y、Zr、Sc、Sm、Tiおよびそれらの混合物。好ましいのは、Ce、Co、AlおよびGdのカチオンである。カチオン源化合物は、金属それら自体に加えて、相当の水溶液への溶解度を示しそして適切な金属の硝酸塩、塩化物、炭酸塩、アルコキシドおよび水酸化物を含むものである。好ましいのは、硝酸塩、塩化物および炭酸塩、水和したかまたは 無水のいずれかである。
【0048】
適した有機化合物は、モノマー化合物または重合用カルボニル基を有する化合物である。有機化合物は、エチレングリコール、アセチルアセトンまたは クエン酸であるのが一層好ましい。
【0049】
最終のナノサイズの金属酸化物が精確な組成を有することを確実にするために、カチオン源を熱重量的に標準化した後に溶解してそれらの実際の金属含有量を確認するのが好ましい。引き続いて、適切な量の金属塩を、有機化合物と共に、水のような溶媒に溶解する。溶液のpHを制御してカチオンを溶解状態に保つ。PHは、溶液に加える中性、酸性または塩基性剤を使用して制御することができる。好適な酸性剤は硝酸であるのに対し、塩基性剤は水酸化アンモニウムである。
【0050】
溶液中のカチオンおよび有機化合物は、温度を20℃〜300℃に制御することによって重合させる。重合温度は20 - 100℃であるのが好ましい。重合の程度は、重合温度においてかけた時間の長さによって制御する。
【0051】
重合は粘度測定によってモニターする。溶液を冷却して室温にした後に、粘度測定する。粘度が所定値に達していないならば、その場合、溶液を再加熱して重合温度にしそして重合を続ける。粘度が所定値に達した場合に、好ましくは溶液を冷却して下げることによって重合を停止させることができる。
【0052】
室温の水溶液について適した粘度は、10〜500 mPa・sの範囲である。好ましいのは、20 - 200 mPa・sの範囲の粘度である。
【0053】
このようにして生成した溶液は、焼結膜を分散剤としておよび焼結助剤として製造する際に使用するために適したナノサイズの金属酸化物用の重合された前駆物質を含有する。
【0054】
本発明の焼結膜は、セラミック酸化物粉末を溶媒に懸濁させそしてを重合された無機−有機前駆物質溶液および場合により、少なくとも一種の高分子化合物を加えて混合物を形成することによって製造する。
【0055】
焼結膜は、下記の工程:
(a) 少なくとも一種の金属カチオンおよび少なくとも一種の有機化合物の溶液を形成し、および
(b) 溶液を加熱して温度20 - 300℃にしてナノサイズの金属酸化物用前駆物質の重合された無機−有機溶液を形成し、および
(c) 溶液の室温粘度が10〜500mPa・sになる時に、加熱を完了し、
(d) 重合された無機−有機前駆物質溶液に、セラミック酸化物粉末、溶媒および場合により、少なくとも一種の高分子化合物を混合して混合物を形成し、
(e) 混合物をボールミル粉砕して懸濁液を得,
(f) 懸濁液を成形し,
(g) 成形された懸濁液を焼結して焼結膜を得る
を含むプロセスよって得られる。
【0056】
固体酸化物型燃料電池用焼結膜を製造するために適したセラミック酸化物粉末に含有される金属の例は、Ce、Gd、Sr、Co、Mn、La、Ni、Ti、Sc、Fe、YおよびZrである。しかし、SOFC 製造用に慣用的に使用される他のセラミック酸化物もまた、適している。
【0057】
セラミック酸化物粉末用に適した溶媒は、例えば、エタノール、メチルエチルケトン、テルピネオールおよび水である。
【0058】
ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリビニルアルコールのようなポリマーの形態の有機バインダーは、また、懸濁液に加えて懸濁液を成形しおよび強化する選定した方法のための粘度のような必要とされる懸濁液性質を達成することもできる。
【0059】
少なくとも一種の高分子化合物を混合物に加えることは、混合物(また、懸濁液)の粘度を調整して好適な値にするためおよび乾燥部材を取り扱う間の必要とする強度を備えるために有用である。
【0060】
懸濁液を成形しおよび強化するために選定したルートに応じて、所望の懸濁液性質を達成するために、一種以上のポリマーを加えなければならない。高分子化合物は、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)またはポリビニルアルコール(PVA)にすることができる。好ましいのはPVPおよびPVBである。
【0061】
次いで、混合物をボールミル粉砕して懸濁液を得、懸濁液を、次いで、例えば、成形し、スプレーし、テープキャストしまたは当分野で知られている強化する他の手段によって成形する。次いで、成形された懸濁液を焼結して焼結膜を得る。
【0062】
本発明の好適な実施態様では、焼結膜は、下記の工程:
(a) 少なくとも一種の金属カチオンおよび有機化合物の溶液を形成し、および
(b) 溶液を加熱して温度20 - 300℃ にしてナノサイズの酸化物用前駆物質の重合された溶液を形成し、および
(c) 溶液の室温粘度が10〜500mPa・sになった時に、加熱を完了し,
(d) 重合された無機−有機前駆物質溶液を、セラミック酸化物粉末、溶媒および少なくとも一種の高分子化合物と混合して混合物を形成し、
(e) 混合物をボールミル粉砕して懸濁液を得,
(f) 懸濁液を成形し,
(g) 成形された懸濁液を焼結して焼結膜を得る
を含むプロセスによって得られる。
【0063】
本発明の実施態様では、懸濁液を基材上に成形しそして基材を、成形される懸濁液と同時に焼結する。
【0064】
本発明の別の実施態様では、基材は、燃料電池用膜または電極である。
【0065】
本発明の実施態様では、焼結膜は、酸素分離用に適した気密膜である。気密膜を陽極支持材上に付着させると、取り扱うためのおよび動作の間の必要な機械的に強度を備える。
【0066】
本発明の実施態様では、焼結膜は、水素分離用に適した気密膜である。
【0067】
本発明の別の実施態様では、焼結膜は、SOFC 中の電解質と陰極との間に付着させるために適したバリヤー層である。バリヤー層を付着させると、製造しおよび動作する間のジルコニアベースの電解質とCo-Feベースの陰極との間の反応を防ぐ。
【0068】
本発明の好適な実施態様では、SOFC 中の電解質と陰極との間に付着させるために適したバリヤー層膜は、下記の工程:
(a) 少なくとも一種の金属カチオンおよび有機化合物の溶液を形成し、および
(b) 溶液を加熱して温度20 - 300℃ にしてナノサイズの酸化物用前駆物質の重合された溶液を形成し、および
(c) 溶液の室温粘度が10〜500mPa・sになった時に、加熱を完了し,
(d) 重合された無機−有機前駆物質溶液を、セラミック酸化物粉末、溶媒および少なくとも一種の高分子化合物と混合して混合物を形成し、
(e) 混合物をボールミル粉砕して懸濁液を得,
(f) 懸濁液を成形し
(g) 成形された懸濁液を焼結してバリヤー膜層を得る
を含むプロセスによって得られる。
【0069】
本発明の別の実施態様では、焼結膜は、どちらの側にも陽極および陰極電極を有する陽極支持材上で製造されたSOFC中の電解質である。これより、懸濁液は電解懸濁液でありそして基材は陽極である。
【0070】
本発明の好適な実施態様では、焼結膜は、下記の工程:
(a) 少なくとも一種の金属カチオンおよび有機化合物の溶液を形成し、および
(b) 溶液を加熱して温度20 - 300℃ にしてナノサイズの酸化物用前駆物質の重合された溶液を形成し、および
(c) 溶液の室温粘度が10〜500mPa・sになった時に、加熱を完了し,
(d) 重合された無機−有機前駆物質溶液を、セラミック酸化物粉末、溶媒および少なくとも一種の高分子化合物と混合して混合物を形成し、
(e) 混合物をボールミル粉砕して懸濁液を得,
(f) 懸濁液を成形し
(g) 成形された懸濁液を焼結して電解質膜層を得る
を含むプロセスによって得られるSOFC中の電解質である。
【0071】
本発明の実施態様では、焼結膜は、可逆的固体酸化物型燃料電池/ 固体酸化物型電解槽セル(SOEC)において使用するために適している。
【0072】
少なくとも2つの固体酸化物型燃料電池を含むスタックは、動力発生用に特に有用である。
【0073】
本発明の他の実施態様では、焼結膜は、電気化学的煙道ガス用浄化電池における電解質である。
【0074】
本発明の他の実施態様では、アルミニウム(Al)をベースにした重合された無機−有機前駆物質溶液をSOFC電解質中の不純物シリカ用掃去剤として加える。
【0075】
従来、金属酸化物を焼結するには、1600℃までの温度を必要とする。しかし、重合された前駆物質溶液をセラミック酸化物に焼結助剤として加えると、一層低い温度、および高い焼結される密度で焼結することを可能にする。
【0076】
所定の温度で、本発明のプロセスによって得られた焼結膜は、慣用的に製造された膜に比べて高い密度を有する。
【0077】
焼結膜は、SOFCにおいて電解質、気密膜としてまたはバリヤー層膜として使用するために特に適している。
【0078】
本発明は、また、焼結膜を含む、固体酸化物型燃料電池、固体酸化物型電解槽セルまたは固体酸化物型膜電池も含む。
【0079】
固体酸化物型膜(SOM) 電池とは、固体酸化物タイプの電気化学的電池を意味し、かかる電気化学的電池では、イオンおよび電子共に、電池を横断して移送される
本発明は、更に、少なくとも2つの固体酸化物型燃料電池または少なくとも2つの固体酸化物型膜電池を含むスタックを含む。
【0080】
その上に、本発明は、固体酸化物型膜電池スタックの、酸素分離用への使用を含む。
【0081】
SOFC用の陽極、陰極および電解質を製造する際に使用するために適した材料は、下記の通りである:
陽極材料は、NiOおよび/またはドープされたジルコニアおよび/またはドープされたセリアを単独でまたはAl2O3、TiO2、Cr2O3、MgOを混合して含む組成物からなる群より選ぶのが好ましくあるいは陽極材料は、
MasTi1-xMbxO3-d
(式中、Ma = La, Ba, Sr, Ca; Mb = V, Nb, Ta, Mo, W, Th, U; および0≦s≦0.5); またはLnCr1-xMxO3-d,(式中、M = Ti, V, Mn, Nb, Mo, W, Th, UおよびLn=ランタニド)からなる群より選ぶ材料である。
【0082】
電解質材料は、ドープされたジルコニア、ドープされたセリア、ドープされたガレートおよびプロトン導電性電解質,(ここで、ドーパントは、Sc、Y、Ce、Ga、Sm、Gd、Caおよび/または任意のLn元素、またはそれらの組合せである)からなる群より選ぶのが好ましい。
【0083】
陰極材料は、
(La1-xSrx)sMnO3-d および (A1-xBx)sFe1-yCoyO3-d
(式中、A = La, Gd, Y, Sm, Lnまたはそれらの混合物そしてB = Ba, Sr, Caまたはそれらの混合物、およびLn=ランタニド)からなる群より選ぶのが好ましい。
【0084】
下記は、例において使用した成分の役割を掲記する:
-焼結助剤:
焼結を助成するためにセラミック酸化物に加える。焼結の改良は、セラミック酸化物の焼結温度が低下されまたは焼結された母酸化物の密度が増大されることを意味する。例えば、Al2O3用焼結助剤としてのMgO、CGO (セリウムおよびガドリニムの酸化物) 用焼結助剤としてのCo。セラミック酸化物の焼結は、また、同じセラミック酸化物のナノ粒子を加えることによって増進させるもことができる。
- 分散剤:
粒子を互いに近寄らせない、すなわち、粒子を凝集させないために懸濁液に加える。懸濁液のpHを制御することにより、それにより分散は、荷電すなわち、静電的安定化され、分散をもたらすことができる。
【0085】
PVPのような非イオン性ポリマーを粒子の表面に吸着させ、そしてそれにより、吸着されたポリマーの間の相互作用、すなわち、立体的安定化により、粒子を近寄らせないことによっても、分散をもたらすことができる。
【0086】
その上に、ポリエチレンイミン、PEIのような荷電されたポリマーを吸着させる、すなわち、静電的安定化により、静電的安定化および立体的安定化を共に組み合わせることによって、分散をもたらすことができる。懸濁液に加える量は、セラミック酸化物の重量%によって表す。
- バインダー系:
粒子を一緒に結合することによって、懸濁液に精確な粘度をおよび懸濁液を乾燥する際に可撓性を備えるために使用されるポリマー。PVAまたはPVBをバインダーとして使用するの普通である。
- 掃去剤:
セラミック酸化物中に存在する不純物と反応しそしてそれらを固定させるために(または代わりに、不純物を除去するように易動性を増大させるために) 加える。例えば、SiO2を固定するさせるために、Al2O3を加えることができる。
【0087】
下記の例は、重合された無機−有機前駆物質粒子および本発明の焼結膜の製造を例示する。
【実施例】
【0088】
例1
酸素透過用気密膜の製造
【0089】
工程1: 焼結助剤/分散剤の製造:
Ce およびGdの硝酸塩を、それらを加熱しそしてTGA(熱重量分析器計)で減量をモニターすることによって、カチオン収率について検量した。
【0090】
硝酸Gd、硝酸Ce、エチレングリコールおよび濃HNO3を水に溶解することによって、CGO用の重合された無機−有機CGO前駆物質溶液を製造した。溶液を80℃で加熱して金属カチオンを重合させた。溶液の室温粘度が50 mPa・sに達した時に、加熱を停止した。溶液を冷却して室温にした後に、粘度測定した。測定した後に、必要ならば、溶液を加熱して80℃にした。
【0091】
工程2: セラミック酸化物CGO懸濁液の製造:
中央粒度300nmを有するCGOセラミック酸化物粉末(Rhodiaから購入した) を、工程1からの重合された無機−有機CGO前駆物質溶液5重量%(CGO粉末を基準にして計算した)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)およびエタノールと混合しそして一晩ボールミル粉砕した。生成したセラミック酸化物CGO懸濁液の粒子サイズ分布および粘度を制御した。
【0092】
工程1からの重合された無機−有機CGO前駆物質溶液に、CGOセラミック酸化物粉末を混合した時に、無機−有機ポリマー前駆物質は、CGOセラミック酸化物粒子の方向に引き付けられそしてそれらの表面に吸着しおよび分散剤として作用した。吸着されたポリマーは、同様の電荷をCGO セラミック酸化物の表面に付与し、こうしてそれらを互いに忌避した。
【0093】
工程3: 膜製造:
NiOおよびYSZ粉末に有機バインダー系を混合しそしてテープキャストして陽極支持材を形成した。NiOおよびYSZからなる陽極層を陽極支持材の上面上にスプレーした。工程2で製造されたセラミック酸化物CGO懸濁液を、次いで、陽極表面上にスプレーしおよび膜全体を1200℃で12時間焼結した。
【0094】
工程1で製造された重合された無機−有機前駆物質溶液は、加熱した際に、ナノサイズのCGO粒子(中央サイズ20nm) をもたらし、該CGO粒子は、焼結助剤として作用した。焼結膜を試験しそして酸素について気密であることを見出した。
【0095】
気密膜は、電解質膜として適しておりそしてLSCF-CGO (La-Sr-Co-Fe およびCe-Gd)の混合物を含む陰極材料を膜上にスプレーして固体酸化物型燃料電池を供した。
【0096】
例 2
CGOを電解質として有するSOFCの製造
【0097】
工程 1: 焼結助剤/分散剤の製造:
硝酸コバルトを、それ加熱しそしてTGAで減量をモニターすることによって、カチオン収率について検量した。
【0098】
硝酸Co、エチレングリコールおよび濃HNO3を水に溶解することによって、重合された無機−有機Co3O4前駆物質溶液を製造した。溶液を80℃で加熱して金属カチオンを重合させた。溶液の室温粘度が50 mPa・sに達した時に、加熱を停止した。溶液を冷却して室温にした後に、粘度測定した。測定した後に、必要ならば、溶液を加熱して80℃にした。
【0099】
工程2: セラミック酸化物CGO懸濁液の製造:
中央粒度(median particle size)300nmを有するCGOセラミック酸化物粉末(Rhodiaから購入した) を、工程1からの重合された無機−有機Co3O4前駆物質溶液2重量%(CGO粉末を基準にして計算した)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)およびエタノールと混合しそして一晩ボールミル粉砕した。生成したセラミック酸化物CGO懸濁液の粒子サイズ分布および粘度を制御した。
【0100】
工程1からの重合された無機−有機CGO前駆物質溶液に、CGO粉末を混合した時に、前駆物質は、粒子の方向に引き付けられそしてCGO粉末の表面に吸着しおよび分散剤として作用した。吸着されたポリマーは、同様の電荷をCGO表面に付与し、こうしてそれらを互いに近寄らせなかった。加えて、このことは、CoがCGO粒子の表面上に存在しそしてそれにより、焼結する間に、焼結助剤として最も有効であることを確実にした。
【0101】
工程3: SOFC製造:
NiOおよびYSZ粉末に有機バインダー系を混合しそしてテープキャストして陽極支持材を形成した。NiOおよびCGOからなる陽極層を陽極支持材の上面上にスプレーした。工程2で製造されたセラミック酸化物CGO懸濁液を、次いで、陽極表面上にスプレーしおよび膜全体を1150℃で12時間焼結した。
【0102】
工程1で製造された重合された無機−有機前駆物質溶液は、加熱した際に、ナノサイズのCo酸化物粒子(中央サイズ20nm) をもたらし、該Co酸化物粒子は、焼結助剤として作用した。焼結膜を試験しそして気密であることを見出した。
【0103】
気密膜は、電解質膜として適しておりそしてLSCF-CGO(La-Sr-Co-FeおよびCe-Gd)の混合物を含む陰極材料を膜上にスプレーして固体酸化物型燃料電池を供した。
【0104】
例3
CGOをバリヤー層として有するSOFCの製造
【0105】
工程1: 焼結助剤/分散剤の製造:
Ce およびGdの硝酸塩を、それらを加熱しそしてTGA、(熱重量分析器計)で減量をモニターすることによって、カチオン収率について検量した。
【0106】
硝酸Gd、硝酸Ce、エチレングリコールおよび濃HNO3を水に溶解することによって、重合された無機−有機CGO前駆物質溶液を製造した。溶液を80℃で加熱して金属カチオンを重合させた。溶液の室温粘度が50 mPa・sに達した時に、加熱を停止した。溶液を冷却して室温にした後に、粘度測定した。測定した後に、必要ならば、溶液を加熱して80℃にした。
【0107】
工程2: セラミック酸化物CGO懸濁液の製造:
中央粒度300nmを有するCGOセラミック酸化物粉末(Rhodiaから購入した) を、工程1からの重合された無機−有機CGO前駆物質溶液5重量%(CGO粉末を基準にして計算した)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)およびエタノールと混合しそして一晩ボールミル粉砕した。生成したセラミック酸化物CGO懸濁液の粒子サイズ分布および粘度を制御した。
【0108】
工程1からの重合された無機−有機CGO前駆物質溶液に、CGOセラミック酸化物粉末を混合した時に、無機−有機ポリマー前駆物質は、CGOセラミック酸化物粒子の方向に引き付けられそしてそれらの表面に吸着しおよび分散剤として作用した。吸着されたポリマーは、同様の電荷をCGO セラミック酸化物の表面に付与し、こうしてそれらを互いに忌避した。
【0109】
工程3: SOFC 製造:
NiOおよびYSZ粉末に有機バインダー系を混合しそしてテープキャストして陽極支持材を形成した。NiOおよびYSZからなる陽極層を陽極支持材の上面上にスプレーした。YSZからなる電解質層を陽極の上面上にスプレーした。工程2で製造されたセラミック酸化物CGO懸濁液を、次いで、電解質層上にバリヤー層としてスプレーしおよび膜全体を1315℃で12時間焼結した。
【0110】
工程1で製造された重合された無機−有機前駆物質溶液は、加熱した際に、ナノサイズのCGO粒子(中央サイズ20 nm) をもたらし、該CGO粒子は、焼結助剤として作用した。焼結体を機密性について試験しそしてLSCF-CGOの陰極混合物を気密電池上にスプレーした。
【0111】
このようにして製造されたセラミック酸化物CGOバリヤー層を有する本発明に従うSOFCを図1に示す。層AはNiO-YSZ陽極支持材であり、層BはNiO-YSZ陽極であり、層CはYSZ電解質でありおよび層DはCGO膜層 (焼結用添加剤) である。図1におけるCGO膜層Dは多孔度を全くほとんど有しないことを見ることができる。
【0112】
比較のために、図2は、重合された無機−有機前駆物質溶液を加えないでセラミック酸化物CGO懸濁液をスプレーすることによって製造しそして同じ様式で焼結したバリヤー層を有する比較のSOFCを示す。層BはNiO-YSZ陽極であり、層CはYSZ電解質であり、層DはCGO膜層(焼結用添加剤が無い)および層EはLSCF-CGO陰極である。
【0113】
図2に示すSOFC もまた、図1に示す通りのNiO-YSZ 陽極支持材層を有する。層A 〜Dを含むパッケージに、図1のSOFCと同じ熱処理を受けさせた。引き続いて、層Eを適用した。図2で観測される通りに、CGO層は多孔質でありそして従って、焼結して完全な密度にならなかった。このことは、焼結助剤を何ら用いないと、焼結温度が低すぎてCGO層は完全な密度を達成せずそして焼結助剤を加えると、同じ温度で一層低い多孔度および一層高い密度を生じることを示す。
【0114】
バリヤー層は、SOFCにおいて、YSZ電解質とフェライト-コバルタイト陰極との反応を防ぐのに必要とする。
【0115】
例4
硬質基板上にCGOの緻密層の製造
【0116】
工程1: 焼結助剤/分散剤の製造:
Ce およびGdの硝酸塩を、それらを加熱しそしてTGAで減量をモニターすることによって、カチオン収率について検量した。
【0117】
硝酸Gdおよび硝酸Ceをアセチルアセトン(CH3COCH2COCH3)に溶解することによって、重合された無機−有機前駆物質CGO溶液を製造しそして2時間還流した。エチレングリコールを加えることによって、溶液の濃度および粘度を調節した。
【0118】
工程2: セラミック酸化物CGO懸濁液の製造:
中央粒度300nmを有するCGOセラミック酸化物粉末(Rhodiaから購入した) を、工程1からの重合された無機−有機CGO前駆物質溶液5重量%(CGO粉末を基準にして計算した)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)およびエタノールと混合しそして一晩ボールミル粉砕した。生成したセラミック酸化物CGO懸濁液の粒子サイズ分布および粘度を制御した。
【0119】
工程1からの重合された無機−有機CGO前駆物質溶液に、CGOセラミック酸化物粉末を混合した時に、無機−有機ポリマー前駆物質は、CGOセラミック酸化物粒子の方向に引き付けられそしてそれらの表面に吸着しおよび分散剤として作用した。吸着されたポリマーは、同様の電荷をCGO セラミック酸化物の表面に付与し、こうしてそれらを互いに忌避した。
【0120】
工程3: CGO層製造:
工程2で製造されたセラミック酸化物CGO懸濁液を、次いで、焼結されたYSZ表面の上面上にスプレーすることによって、付着させた。次いで、層を 1000℃ で焼結し、95%を超える緻密なCGO層を生じた。
【0121】
工程1で製造された重合された無機−有機前駆物質溶液は、加熱した際に、ナノサイズのCGO粒子(中央サイズ10 nm) をもたらし、該CGO粒子は、焼結助剤として作用した。
【0122】
例 5
Siを除去するためのAl2O3掃去剤の、SOFC電解質、Sc0.04Y0.20Zr0.76O2(SYSZ)への添加
【0123】
工程 1: 焼結助剤/分散剤の製造:
硝酸アルミニウムを、それ加熱しそしてTGAで減量をモニターすることによって、カチオン収率について検量した。
【0124】
硝酸Alをクエン酸(CA)の水溶液に溶解することによって、重合された無機−有機Al2O3前駆物質溶液を製造した。引き続いて、エチレングリコール28重量% (CAに対して計算した)を溶液に加えた。溶液を90℃で2時間加熱した。
【0125】
工程 2: SYSZ懸濁液の製造:
中央粒度500nmを有するSc0.04Y0.20Zr0.76O2 (SYSZ)セラミック酸化物粉末を、工程1からの重合された無機−有機Al2O3前駆物質溶液1重量%およびエタノールと混合し、そして一晩ボールミル粉砕した。懸濁液の粒子サイズ分布および粘度を制御した。SYSZ懸濁液のゼータ電位、粒子サイズ分布および 流動学を制御した。
【0126】
工程1からの重合された無機−有機Al2O3溶液に、SYSZセラミック酸化物粉末を混合した時に、無機−有機ポリマー前駆物質は、粒子の方向に引き付けられそしてSYSZ粉末の表面に吸着しおよび分散剤として作用した。吸着されたポリマーは、同様の電荷をSYSZ表面に付与し、こうしてそれらを互いに近寄らせなかった。
【0127】
加えて、このことは、Alが、不純物が存在する粒子の表面上に存在しそしてそれにより、焼結する間に、掃去剤として一層有効であることを確実にした。
【0128】
工程3: SOFC 製造:
NiOおよびYSZ粉末に有機バインダー系を混合しそしてテープキャストして陽極支持材を形成した。NiOおよびYSZからなる陽極層を陽極支持材の上面上にスプレーした。工程2で製造されたSYSZ懸濁液を、次いで、陽極層の上面上にスプレーしおよび全体を1200℃で12時間焼結した。焼結体を機密性について試験しそしてLSM-SYSZの陰極混合物を気密電池上にスプレーした。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】焼結助剤を使用していた燃料電池の横断面を示す。
【図2】焼結助剤を用いないで製造した燃料電池の横断面を示す。
【符号の説明】
【0130】
A NiO-YSZ陽極支持材
B NiO-YSZ陽極
C YSZ電解質
D CGO膜層
E LSCF-CGO陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程:
(a) 少なくとも一種の金属カチオンおよび少なくとも一種の有機化合物の溶液を形成し、および
(b) 溶液を加熱して温度20 - 300℃ にしてナノサイズの金属酸化物用前駆物質の重合された無機−有機溶液を形成し、および
(c) 溶液の室温粘度が10〜500mPa・sになった時に、加熱を完了する
を含むプロセスに従って得られるナノサイズの金属酸化物用の重合された無機−有機前駆物質溶液。
【請求項2】
少なくとも一種の金属カチオンが、Ce、Gd、Co、Al、Sm、Fe、Mg、Ni、Y、Zr、La、Sr、Mn、Sc、Tiおよびそれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項1記載の重合された無機−有機前駆物質溶液。
【請求項3】
少なくとも一種の有機化合物が、カルボニル基を有するかまたはモノマー 化合物である、請求項1記載の重合された無機−有機前駆物質溶液。
【請求項4】
少なくとも一種の有機化合物がエチレングリコール、クエン酸またはアセチルアセトンである、請求項3記載の重合された無機−有機前駆物質溶液。
【請求項5】
下記の工程:
(a) 請求項1記載の重合された無機−有機前駆物質溶液を、セラミック酸化物粉末、溶媒および場合により少なくとも一種の高分子化合物と混合して混合物を形成し、
(b) 混合物をボールミル粉砕して懸濁液を得,
(c) 懸濁液を成形し,
(d) 成形された懸濁液を焼結して焼結膜を得る
を含むプロセスに従って得られる焼結膜。
【請求項6】
懸濁液が基材上に成形されそして基材が、成形される懸濁液と同時に焼結される、請求項5記載の焼結膜。
【請求項7】
基材が燃料電池用膜または電極である、請求項6記載の焼結膜。
【請求項8】
懸濁液が電解懸濁液でありそして基材が陽極である、請求項6記載の焼結膜。
【請求項9】
セラミック酸化物粉末が、Ce、Gd、Co、Al、Sm、Mn、Fe; Mg、Ni、La、Sr、Y、Zr、Sc、Tiおよびそれらの混合物からなる群より選ばれる金属を含む、請求項5記載の焼結膜。
【請求項10】
少なくとも一種の高分子化合物が、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールおよびそれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項5記載の焼結膜。
【請求項11】
溶媒が、エタノール、メチルエチルケトン、テルピネオールおよび水からなる群より選ばれる、請求項5記載の焼結膜。
【請求項12】
請求項5記載の焼結膜を含む固体酸化物型燃料、電池固体酸化物型電解槽セルまたは固体酸化物型膜電池。
【請求項13】
請求項12記載の少なくとも2つの固体酸化物型電解槽セルまたは少なくとも2つの固体酸化物型膜電池を含むスタック。
【請求項14】
請求項13記載のスタックの、ガス分離用への使用。
【請求項15】
請求項13記載の固体酸化物型燃料電池を少なくとも2つ含むスタックの、動力発生用への使用。
【請求項16】
請求項13記載の固体酸化物型膜電池を少なくとも2つ含むスタックの、酸素分離用への使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−91232(P2009−91232A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−219431(P2008−219431)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(507018838)テクニカル ユニヴァーシティー オブ デンマーク (11)
【Fターム(参考)】