説明

重合体とその製造方法、成形体、光学部品および化合物

【課題】屈折率が高くて熱安定性に優れた重合体を提供すること。
【解決手段】下記一般式で表される繰り返し単位を含む重合体。


(式中、R1,R2はヘテロアリール基、R3は水素原子、アルキル基もしくはアリール基、R4,R5は二価連結基または単結合、X1,X2,X3は酸素原子、硫黄原子もしくはN−R6、R6は水素原子またはアルキル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率で、透明性、加工性、耐熱性、色調などに優れる熱可塑性樹脂、および該樹脂を含んで構成される光学部品(例えば、眼鏡レンズ、光学機器用レンズ、オプトエレクトロニクス用レンズ、レーザー用レンズ、ピックアップ用レンズ、車載カメラ用レンズ、携帯カメラ用レンズ、デジタルカメラ用レンズ、OHP用レンズ、光学フィルム等)に関する。
【背景技術】
【0002】
光学部品の代表的な用途として、レンズが挙げられる。樹脂からなるレンズは、ガラスなどの無機材料に比べ軽量で割れにくく、様々な形状に加工できるため、眼鏡レンズのみならず近年では携帯カメラ用レンズやピックアップレンズ等の光学材料にも急速に普及しつつある。高屈折率プラスチックレンズ用樹脂の代表的なものとしてポリカーボネートが知られているが、レンズを薄肉化するための高屈折率化の要求に対して充分とは言えない。高屈折率プラスチックレンズ用樹脂としては、例えば、硫黄原子を重合体中に導入する技術(特許文献1、特許文献2参照)や、ハロゲン原子や芳香環を重合体中に導入する技術(特許文献3)等が活発に研究されており、屈折率1.7を越えるプラスチック材料が報告されているが、前記光学材料としての充分な特性は有していない。
【0003】
一方、ヘテロアリール構造を含有する重合体は種々知られており、2−メルカプトベンゾチアゾール構造を有する重合体が、高屈折率、無色透明であることが報告されている(特許文献4、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−131502号公報
【特許文献2】特開平10−298287号公報
【特許文献3】特開2004−244444号公報
【特許文献4】特開2005−133071号公報
【特許文献5】特開平2−29401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらで報告されている重合体には種々の問題があり、光学用途に使用するには解決しなければならない課題が存在する。例えば、特許文献4に記載される重合体は、成型コストの高い熱硬化性樹脂としてしか利用できず、安価な産業用レンズ用途には向かないものである。また、特許文献5に記載される重合体は、耐熱性が低く、熱成形による着色の問題があって、要求性能を満足しないものである。
これらの従来技術の問題を考慮して、本発明は、高い屈折率とレンズ用樹脂成型体として十分な耐熱性を有する重合体を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために高い屈折率と熱安定性を達成できる化合物を鋭意探索した結果、本発明者らは、芳香環にヘテロアリール基が結合した構造を一繰り返し単位あたりに2個以上有する化合物を見出し、以下の本発明を完成させた。
【0007】
[1] 下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする重合体。
【化1】

(式中、R1,R2はそれぞれ同一もしくは異なるヘテロアリール基を表し、R3は水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、R4,R5はそれぞれ同一もしくは異なる二価連結基または単結合を表し、X1,X2,X3はそれぞれ独立に酸素原子、硫黄原子もしくはN−R6を表す。R6は水素原子またはアルキル基を表す。)
[2] 前記一般式(1)で表される繰り返し単位を10質量%以上含むことを特徴とする[1]に記載の重合体。
[3] 熱可塑性樹脂であることを特徴とする[1]または[2]に記載の重合体。
[4] ガラス転移温度が80℃以上であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の重合体。
[5] 下記一般式(2)で表される化合物を重合する工程を含むことを特徴とする重合体の製造方法。
【化2】

(式中、R1,R2はそれぞれ同一もしくは異なるヘテロアリール基を表し、R3は水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、R4,R5はそれぞれ同一もしくは異なる二価連結基または単結合を表し、X1,X2,X3はそれぞれ独立に酸素原子もしくは硫黄原子を表す。)
[6]
[5]に記載の方法により製造された重合体。
【0008】
[7] [1]〜[4]および[6]のいずれか一項に記載の重合体を含むことを特徴とする成形体。
[8] [1]〜[4]および[6]のいずれか一項に記載の重合体を含むことを特徴とする光学部品。
[9] 波長589nmにおける屈折率が1.63以上であることを特徴とする[8]に記載の光学部品。
[10] レンズ基材であることを特徴とする[8]または[9]に記載の光学部品。
【0009】
[11] 下記一般式(2)で表される化合物。
【化3】

(式中、R1,R2はそれぞれ同一もしくは異なるヘテロアリール基を表し、R3は水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、R4,R5はそれぞれ同一もしくは異なる二価連結基または単結合を表し、X1,X2,X3はそれぞれ独立に酸素原子もしくはN−R6を表し、R6は水素原子またはアルキル基を表す。)
[12] R1,R2がそれぞれ独立にフェニルベンゾチアゾール骨格もしくはフェニルベンゾオキサゾール骨格を有する基であることを特徴とする[11]に記載の化合物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の重合体は、屈折率が高くて、透明性に優れており、耐熱性も高い。本発明の化合物をモノマーとして用いれば、本発明の重合体を簡便に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明の重合体とその製造方法、本発明の重合体を含んで構成される成形体等について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
[重合体]
本発明の重合体は、一般式(1)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする。
【化4】

【0013】
一般式(1)中、R1,R2は、それぞれ同一もしくは異なるヘテロアリール基を示す。R1,R2がとりうるヘテロアリール基の具体例として、ベンゾチアゾール骨格、ベンズオキサゾール骨格、フラン骨格、ピロリン骨格、チアゾリン骨格、オキサゾリン骨格、インドリン骨格、チオベンゼン骨格、ピリジン骨格、を有する基を挙げることができ、なかでもベンゾチアゾール骨格もしくはベンズオキサゾール骨格を有する基が好ましく、ベンゾチアゾール骨格を有する基がより好ましい。R1,R2が結合するフェニレン基に向かう結合手は、ヘテロアリール基を構成するヘテロ環から延びていることが好ましく、該ヘテロ環を構成する炭素原子から延びていることがより好ましい。R1,R2は同じ骨格を有する基であることが好ましく、R1,R2は同一であることがより好ましい。
【0014】
1,R2がとりうるヘテロアリール基は、ヘテロアリール骨格に置換基を有してもよいし、置換基を有していなくてもよい。
置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜3、さらに好ましくは炭素数1のアルキル基であって、例えばメチル基、エチル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜10、より好ましくは炭素数6〜9、さらに好ましくは炭素数6のアリール基であって、例えばフェニル基、ナフチル基)、シアノ基、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜5、より好ましくは炭素数2〜3、さらに好ましくは炭素数2のアルコキシカルボニル基であって、例えばメトキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜10、より好ましくは炭素数7〜8、さらに好ましくは炭素数7のアリールオキシカルボニル基であって、例えばフェノキシカルボニル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1〜2、さらに好ましくは炭素数1のアルコキシ基であって、例えばメトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜10、より好ましくは炭素数6〜7、さらに好ましくは炭素数6のアリールオキシ基であって、例えばフェノキシ基)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1〜2、さらに好ましくは炭素数1のアルキルチオ基であって、例えばメチルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜10、より好ましくは炭素数6〜7、さらに好ましくは炭素数6のアリールチオ基であって、例えばフェニルチオ基)などを挙げることができる。置換基として好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基であり、より好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基である。これらの置換基は、さらに置換基により置換されていてもよい。また、複数の置換基で置換されていてもよく、その場合の各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0015】
一般式(1)中、R3は水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表す。R3がとりうるアルキル基の炭素数は1〜4が好ましく、1〜2がより好ましく、1がさらに好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基を挙げることができる。アルキル基は置換されていてもよいが、無置換であることが好ましい。R3がとりうるアリール基の炭素数は6〜10が好ましく、6〜7がより好ましく、6がさらに好ましい。アリール基としてはフェニル基を挙げることができる。アリール基は置換されていてもよいが、無置換であることが好ましい。R3は、水素原子もしくはメチル基であることが特に好ましい。
【0016】
一般式(1)中、R4,R5は、それぞれ同一もしくは異なる二価連結基または単結合を表す。R4,R5がとりうる二価連結基は、アルキレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−CO−、−NH−、およびこれらを組み合わせた連結基を挙げることができる。R4,R5がとりうるアルキレン基の炭素数は1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1がさらに好ましい。具体例として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基を挙げることができる。R4,R5がとりうるアリーレン基の炭素数は6〜10が好ましく、6〜7がより好ましく、6がさらに好ましい。具体例として、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−フェニレン基、1,5−ナフチレン基、1,8−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基を挙げることができる。アルキレン基やアリーレン基は、それぞれ置換されていてもよく、置換基の例と好ましい範囲については上記のヘテロアリール基の置換基の説明を参照することができる。
【0017】
4,R5がとりうる二価連結基は、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、−O−、もしくはこれらを組み合わせた連結基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数6のアリーレン基、−O−、もしくはこれらを組み合わせた連結基であることがより好ましく、炭素数1〜2のアルキレン基、炭素数6のアリーレン基、−O−、もしくはこれらを組み合わせた連結基であることがさらに好ましく、メチレン基、エチレン基もしくはフェニレン基であることがさらにより好ましく、メチレン基がもっとも好ましい。
【0018】
一般式(1)中、X1,X2,X3はそれぞれ独立に酸素原子、硫黄原子もしくはN−R6を表す。R6は水素原子またはアルキル基を表す。R6がとりうるアルキル基の炭素数は1〜4が好ましく、1〜2がより好ましく、1がさらに好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基を挙げることができる。アルキル基は置換されていてもよいが、無置換であることが好ましい。R6は、水素原子、メチル基またはエチル基であることが好ましく、水素原子またはメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
【0019】
1,X2,X3はそれぞれ独立に酸素原子または硫黄原子であることが好ましく、酸素原子であることがより好ましい。X1とX2は同一であることが好ましく、X1,X2,X3はすべてが同一であることがより好ましい。
【0020】
一般式(1)において、R1−C64−X1−R4−で表される構造と、R2−C64−X2−R5−で表される構造は、互いに同一であっても異なっていてもよい。好ましいのは同一である場合である。
【0021】
本発明の重合体は、好ましくは下記一般式(1a)で表される繰り返し単位を含む。
【化5】

【0022】
一般式(1a)中、R3は水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、R4,R5はそれぞれ同一もしくは異なる二価連結基または単結合を表し、X1,X2,X3はそれぞれ独立に酸素原子、硫黄原子もしくはN−R6を表す。R6は水素原子またはアルキル基を表す。
一般式(1a)におけるR3,R4,R5,R6,X1,X2,X3の説明と好ましい範囲については、上記一般式(1)におけるR3,R4,R5,R6,X1,X2,X3の説明と好ましい範囲を参照することができる。
【0023】
本発明の重合体は、一般式(1)で表される繰り返し単位のみからなるものであってもよいし、それ以外の繰り返し単位を含むものであってもよい。また、本発明の重合体には、一般式(1)で表される繰り返し単位が一種類のみ含まれていてもよいし、二種類以上含まれていてもよい。
本発明の重合体は、一般式(1)で表される繰り返し単位が10〜100質量%含まれていることが好ましく、20〜100質量%含まれていることがより好ましく、50〜100質量%含まれていることがさらに好ましい。
【0024】
以下に、本発明の重合体の好ましい具体例を挙げるが、本発明で用いることができる重合体はこれらに限定されるものではない。
【0025】
【化6】


【0026】
本発明の重合体の重量平均分子量は、1,000〜500,000であることが好ましく、3,000〜300,000であることがより好ましく、10,000〜100,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量を500,000以下とすることにより成形加工性が向上する傾向があり、1,000以上とすることにより力学強度が向上する傾向がある。
ここでいう重量平均分子量は、「TSKgel GMHxL」、「TSKgel G4000HxL」、「TSKgel G2000HxL」(何れも、東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒テトラハイドロフラン、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量である。
【0027】
本発明の重合体は熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂であれば成形が容易であり、取り扱いも簡便である。
【0028】
本発明の重合体のガラス転移温度は、90℃〜400℃であることが好ましく、110℃〜380℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が90℃以上であれば十分な耐熱性を有する光学部品が得られやすくなる傾向があり、また、ガラス転移温度が400℃以下であれば成形加工が行いやすくなる傾向がある。
【0029】
本発明の重合体の屈折率は、1.60以上であることが好ましく、1.63以上であることがより好ましく、1.65以上であることがさらに好ましく、1.68以上であることが特に好ましい。なお、これらの屈折率は22℃、波長589nmにおける値である。
【0030】
本発明の重合体を厚み1mmに成形したときの光線透過率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。ここでいう光線透過率は、波長589nmにおける光線透過率である。
【0031】
[重合体の製造方法]
本発明の重合体は、ビニルモノマーを重合することにより製造することができる。具体的には、下記一般式(2)で表される化合物を重合することにより製造することができる。
【化7】

【0032】
一般式(2)中、R1,R2はそれぞれ同一もしくは異なるヘテロアリール基を表し、R3は水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、R4,R5はそれぞれ同一もしくは異なる二価連結基または単結合を表し、X1,X2,X3はそれぞれ独立に酸素原子もしくはN−R6を表し、R6は水素原子またはアルキル基を表す。
一般式(2)におけるR1,R2,R3,R4,R5,R6,X1,X2,X3の説明と好ましい範囲については、上記一般式(1)におけるR1,R2,R3,R4,R5,R6,X1,X2,X3の説明と好ましい範囲を参照することができる。
【0033】
以下に一般式(2)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明に用いることができる化合物はこれらに限定されるものではない。
【0034】
【化8】


【0035】
本発明の重合体を製造する際には、一般式(2)で表される化合物とともに、他の重合性化合物を用いて共重合させてもよい。共重合可能な他の重合性化合物としては、Polymer Handbook 2nd ed.,J.Brandrup,Wiley lnterscience (1975) Chapter 2 Page 1〜483に記載のものを用いることができる。
【0036】
具体的には、例えば、スチレン誘導体、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、ビニルカルバゾール、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、イタコン酸ジアルキル類、前記フマール酸のジアルキルエステル類またはモノアルキルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
【0037】
前記スチレン誘導体としては、スチレン、4−クロロスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、2−フェニルスチレン等が挙げられる。
【0038】
前記アクリル酸エステル類としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−フェニル−フェニル、アクリル酸4−フェニル−フェニル、クロロクロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等が挙げられる。
【0039】
前記メタクリル酸エステル類としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸2−フェニル−フェニル、メタクリル酸4−フェニル−フェニル、クロロクロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等が挙げられる。
【0040】
前記アクリルアミド類としては、アクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜3のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基)、N,N−ジアルキルアクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜6のもの)、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0041】
前記メタクリルアミド類としては、メタクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜3のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基)、N,N−ジアルキルメタクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜6のもの)、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0042】
前記アリル化合物としては、アリルエステル類(例えば酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリルなど)、アリルオキシエタノール等が挙げられる。
【0043】
前記ビニルエーテル類としては、アルキルビニルエーテル(アルキル基としては炭素数1〜10のもの、例えば、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等が挙げられる。
【0044】
前記ビニルエステル類としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルジクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、ビニルシクロヘキシルカルボキシレート等が挙げられる。
【0045】
前記イタコン酸ジアルキル類としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等が挙げられ、前記フマール酸のジアルキルエステル類またはモノアルキルエステル類としては、ジブチルフマレート等が挙げられる。
【0046】
その他、クロトン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイロニトリルなど等も挙げることができる。
【0047】
本発明の重合体を製造する際に、一般式(2)で表される化合物とともに共重合させることができる重合性化合物の具体例を以下に例示する。ただし、本発明で採用することができる共重合可能な重合性化合物はこれらの具体例に限定されるものではない。なお、以下においてnは1以上の整数を表す。
【0048】
【化9】

【0049】
一般式(2)で表される化合物や上記の他の化合物をモノマーとして用いて重合反応を行う。重合反応については、例えば、新高分子実験学2、高分子の合成・反応(2)縮合系高分子の合成(高分子学会編)になどに記載の方法を参照することができる。最適な反応条件等は、当業者が適宜決定することができる。
【0050】
[本発明の重合体と組み合わせて用いることができる樹脂]
一般式(1)で表される繰り返し単位を有する本発明の重合体は、他の樹脂と組み合わせて用いることができる。そのような他の樹脂として、架橋樹脂などを挙げることができる。
【0051】
(架橋樹脂)
耐溶剤性、耐熱性などをさらに良好にするために、架橋樹脂を併用することができる。架橋樹脂の種類としては熱硬化性樹脂、放射線硬化樹脂があるが、そのいずれであっても特に制限なく用いることができる。
【0052】
熱硬化性樹脂の例としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネート樹脂などが挙げられる。架橋方法としては共有結合を形成する反応であれば特に制限なく用いることができ、ポリアルコール化合物とポリイソシアネート化合物を用いて、ウレタン結合を形成するような室温で反応が進行する系も特に制限なく使用できる。但し、このような系は製膜前のポットライフが問題となる場合が多く、通常、製膜直前にポリイソシアネート化合物を添加するような2液混合型として用いられる。
【0053】
一方、1液型で用いる場合、架橋反応に携わる官能基を保護しておくことが有効であり、ブロックタイプ硬化剤として市販もされている。市販されているブロックタイプ硬化剤として、三井武田ケミカル(株)製B−882N、日本ポリウレタン工業(株)製コロネート2513(以上ブロックポリイソシアネート)、三井サイテック(株)製サイメル303(メチル化メラミン樹脂)などが知られている。
【0054】
また、エポキシ樹脂の硬化剤として用いることのできるポリカルボン酸を保護した下記B−1のようなブロック化カルボン酸も知られている。
【0055】
【化10】

【0056】
放射線硬化樹脂の例としては、ラジカル硬化性樹脂とカチオン硬化性樹脂が挙げられる。ラジカル硬化性樹脂の硬化性成分としては、分子内に複数個のラジカル重合性基を有する化合物が用いられ、代表的な例として分子内に2〜6個のアクリル酸エステル基を有する多官能アクリレートモノマーと称される化合物や、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートと称される分子内に複数個のアクリル酸エステル基を有する化合物が用いられる。ラジカル硬化性樹脂の代表的な硬化方法として、電子線を照射する方法、紫外線を照射する方法が挙げられる。通常、紫外線を照射する方法においては、紫外線照射によりラジカルを発生する重合開始剤を添加する。なお、加熱によりラジカルを発生する重合開始剤を添加すれば、熱硬化性樹脂として用いることもできる。
【0057】
カチオン硬化性樹脂の硬化性成分としては、分子内に複数個のカチオン重合性基を有する化合物が用いられ、代表的な硬化方法として紫外線の照射により酸を発生する光酸発生剤を添加し、紫外線を照射して硬化する方法が挙げられる。カチオン重合性化合物の例としては、エポキシ基などの開環重合性基を含む化合物やビニルエーテル基を含む化合物を挙げることができる。
【0058】
本発明の重合体には、上記の熱硬化性樹脂と放射線硬化樹脂のそれぞれ複数種を混合して用いてもよく、熱硬化性樹脂と放射線硬化樹脂とを併用してもよい。また、架橋性樹脂と架橋性基を有さない重合体と混合して用いてもよい。
【0059】
さらに本発明の重合体に上記の架橋性樹脂を混合して用いれば、耐溶剤性、耐熱性、光学特性および強靭性の向上を図りうる。なお、本発明の重合体には架橋性基を導入することも可能であり、主鎖の末端や側鎖、主鎖中のいずれの部位に架橋性基を導入してもよい。この場合、上記で挙げた汎用の架橋性樹脂を併用しなくてもよい。
【0060】
(その他の樹脂)
本発明の重合体には、本発明の効果を損なわない範囲で、架橋樹脂以外のその他の樹脂を混合することもできる。本発明の重合体に混合される樹脂材料は、熱可塑性樹脂および硬化性樹脂のいずれでもよい。
【0061】
熱可塑性樹脂としては、例えば、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、アクリロイル化合物などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、ガラス転移点温度(Tg)が100℃以上であることが好ましい。
【0062】
上記熱可塑性樹脂のうち、好ましい例としては(括弧内はTgを示す)、ポリカーボネート樹脂(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン樹脂(例えば日本ゼオン(株)製 ゼオノア1600:160℃、JSR(株)製 アートン:170℃)、ポリアリレート樹脂(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES:220℃)、ポリスルホン樹脂(PSF:190℃)、ポリエステル樹脂(例えば鐘紡(株)製 O−PET:125℃、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報の実施例1の化合物:162℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂(BCF−PC:特開2000−227603号公報の実施例−4の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート樹脂(IP−PC:特開2000−227603号公報の実施例−5の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の実施例−1の化合物:300℃以上)のものを挙げることができる。
【0063】
[添加剤]
本発明の重合体には、必要により本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤、染顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、無機微粒子、剥離促進剤、レベリング剤、および潤滑剤などの各種添加剤(樹脂改質剤)を添加することもできる。
これら添加剤の配合割合は目的に応じて異なるが、添加剤の添加量は、通常0〜50質量%であり、0〜30質量%であることが好ましく、0〜20質量%であることがより好ましい。
【0064】
[成形体]
本発明の重合体または本発明の重合体を含む樹脂を成形することにより、本発明の成形体を製造することができる。また、本発明の重合体は加工性も高いため、成形体の中でも、高精度が要求される成形体、例えば光学部品の製造に適する。
【0065】
[光学部品]
本発明の重合体は、高い屈折率と透明性を併せ持ち、光学特性に優れた光学部品となりうる。本発明の光学部品は、上記の本発明の重合体を含むものである。本発明の光学部品の種類は、特に制限されない。特に、本発明の重合体の優れた光学特性を利用した光学部品、特に光を透過する光学部品(いわゆるパッシブ光学部品)に好適に利用される。かかる光学部品を備えた機能装置としては、各種ディスプレイ装置(液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等)、各種プロジェクタ装置(OHP、液晶プロジェクタ等)、光ファイバー通信装置(光導波路、光増幅器等)、カメラやビデオ等の撮影装置等が例示される。
【0066】
かかる光学機能装置における上記パッシブ光学部品としては、レンズ、プリズム、パネル(板状成形体)、フィルム、光導波路(フィルム状やファイバー状等)、光ディスク等が例示される。これら例示の光学部品のうち、本発明の光学部品はレンズまたはフィルムとして特に好ましく用いることができる。かかるパッシブ光学部品には、必要に応じて任意の被覆層、例えば摩擦や摩耗による塗布面の機械的損傷を防止する保護層、無機粒子や基材等の劣化原因となる望ましくない波長の光線を吸収する光線吸収層、水分や酸素ガス等の反応性低分子の透過を抑制あるいは防止する透過遮蔽層、防眩層、反射防止層、低屈折率層等や、任意の付加機能層を設けて多層構造としてもよい。かかる任意の被覆層の具体例としては、無機酸化物コーティング層からなる透明導電膜やガスバリア膜、有機物コーティング層からなるガスバリア膜やハードコート等が挙げられ、そのコーティング法としては真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法、ディップコート法、スピンコート法等公知のコーティング法を用いることができる。光学部品の形成方法にも、特に限定はなく、射出成形、射出圧縮形成、圧縮成形等、公知のプラスチックの成形方法が全て利用可能である。なお、光学部品の形状およびサイズ(長さや直径および厚さ)も、特に限定はなく、上記光学部品の用途に応じて適宜選択すればよい。
【実施例】
【0067】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0068】
[分析および評価方法]
(1)屈折率測定
アッベ屈折計(アタゴ社製DR−M4)にて、波長589nmの光について行った。
(2)ガラス転移温度(Tg)
DSC(窒素中、昇温温度10℃/分)により測定した(セイコー(株)製、DSC6200)。
【0069】
〔実施例1〕 化合物M−2の合成
【化11】

【0070】
200mL三口フラスコのひとつの口に還流管を立てて窒素ラインにつなぎ、残り二つの口に平栓をした。このフラスコ中に2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノール20.0g(88mmol)、炭酸カリウム13.8g(100mmol)、2−ブタノン100mLを入れて攪拌した。さらに、クロロメチルオキシラン3.7g(40 mmol)を加え、窒素フロー下、110℃の油浴中で2日間還流した。反応液に酢酸エチルと水を加え、二回洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水後、ろ過、減圧乾燥し、粉末のままメタノールで洗浄し、白色粉末を吸引ろ過した。粉末を真空中にて60℃で乾燥し、13.84gの目的物を得た(収率69.2%)。
1H NMR (400MHz, CDCl3) ( 8.32 (d, 2H), 8.07 (d, 2H), 7.82 (d, 2H), 7.45 (dd, 2H), 7.35 (m, 4H), 7.10 (dd, 2H), 7.03 (dd, 2H), 5.22 (br, 1H), 4.77 (s, 1H), 4.51 (d, 4H).
【0071】
【化12】

【0072】
ナスフラスコに中間体1を13.0g(25.5mmol)、テトラヒドロフラン(THF)を60ml、 トリエチルアミンを4.25g(42mmol)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)を155mg(1.27mmol)加え、氷/メタノール浴中で攪拌した。塩化メタクリロイル4.0g(38.2mmol)を滴下し、18時間攪拌した。水1mlを加えて中和した後、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)1.25mgを添加し、さらに酢酸エチルを加え、水で3回洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで脱水した後に減圧乾燥し、粉末のままメタノールで洗浄して、吸引ろ過により白色固体を回収した。粉末を真空下、60℃で乾燥し、12.8gの化合物M−2を得た(収率87.1%)。
mp:156℃。
1H NMR (400MHz, CDCl3) ( 8.52 (d, 2H), 8.08 (d, 2H), 7.81 (d, 2H), 7.45 (dd, 2H), 7.35 (m, 4H), 7.15 (dd, 2H), 7.08 (dd, 2H), 6.28 (d, 1H), 5.91 (m, 1H), 5.60 (d, 1H), 4.71 (d, 4H), 1.98 (s, 3H).
【0073】
〔実施例2〕 重合体P−2の合成と成形
100mL三口フラスコの口に攪拌羽、窒素ラインにつないだ還流管、平栓をそれぞれ装着し、化合物M−2を5.0g(8.6 mmol)、酢酸ジメチルを5.0g、開始剤として和光純薬工業株式会社製V−601(商品名)を5.0mg入れ、窒素フロー下で攪拌した。80℃で3時間反応攪拌した後、V−601を5.0mg添加し、80℃でさらに3時間攪拌した。反応液をジメチル酢酸で希釈し、メタノールに再沈してモノマーを除去した。これを吸引ろ過して白色固体を回収し、真空乾燥後、塩化メチレンに溶解させ、酢酸エチルに再沈した。吸引ろ過を行って回収した白色固体を真空乾燥し、目的の重合体2.44gを得た(収率48.8g)。
数平均分子量54,000、重量平均分子量130,000、ガラス転移温度130℃。
【0074】
得られた重合体の粉末を加熱した金型に投入し、160℃で圧縮成形し、直径8mm、厚さ1mmのレンズ用成形体を作成した。重合体の溶融粘度が低い場合には溶融成形も可能であり、外形20mmの試験管に樹脂粉末を投入して加熱溶融後、冷却し、さらに切削、研磨してレンズ用成形体とすることもできる。
得られたレンズ用成形体の屈折率を測定した。結果は以下の表1に示す。
その後、レンズ用成形体をレンズの形状に成形して、光学部品であるレンズを得た。
【0075】
〔比較例1〕 比較用重合体X−1の合成と成形
【化13】

【0076】
ベンゾチアゾール基のみを含有し、フェニルベンゾチアゾール骨格を含まないmVMT(特開平2−29401号公報に記載の化合物)のホモポリマーを重合し、成形温度を100℃とした以外は、実施例2と同様にしてレンズ用成形体を得た。実施例2と同じ方法で諸物性を測定した結果を表1に示す。
フェニルベンゾチアゾール基を含有しない比較例1は、屈折率は高いが、ガラス転移温度が非常に低く、産業用レンズ用途に適さないことが確認された。
【0077】
【表1】

【0078】
〔実施例3〕 重合体P−4の合成と成形
【化14】

【0079】
100mL三口フラスコの口に攪拌羽、窒素ラインにつないだ還流管、平栓をそれぞれ装着し、化合物M−2を3.0g(5.2 mmol)、スチレン(St)を0.75g(7.2mmol)、 ジメチル酢酸を2.0g、開始剤として和光純薬工業株式会社製V−601(商品名)を3.75mg入れ、窒素フロー下で攪拌した。80℃で3時間反応攪拌した後、V−601を3.75mg添加し、80℃でさらに2時間攪拌した。その後、さらにV−601を3.75mg添加し、80℃で2時間攪拌した。反応液をジメチル酢酸で希釈し、メタノールに再沈してモノマーを除去した。これを吸引ろ過して白色固体を回収し、真空乾燥後、塩化メチレンに溶解させ、アセトンに再再沈した。吸引ろ過を行って回収した白色固体を真空乾燥し、重合体P−4を0.96g得た(収率48.8g)。
数平均分子量 28200、重量平均分子量72800、ガラス転移温度115℃。
【0080】
得られた重合体について、実施例2と同じ方法でレンズ用成形体を作製し、諸物性を測定した。結果を表2に示す。
【0081】
〔実施例4〕 重合体P−5の合成と成形
実施例3と同様にして、化合物M−2を3.0g(5.2mmol)、スチレンを3.0g(28.8mmol)、ジメチル酢酸を3.2g、開始剤として和光純薬工業株式会社製V−601(商品名)を3.75mg用いて共重合を行い、レンズ用成形体を作製して評価を行った。結果を表2に示す。
【0082】
〔実施例5〕 重合体P−6の合成と成形
実施例3と同様にして、化合物M−2を3.0g(5.2mmol)、アクリロニトリル(AN)を0.75g(14.2mmol)、ジメチル酢酸を2.0g、開始剤として和光純薬工業株式会社製V−601(商品名)を3.75mg用いて共重合を行い、レンズ用成形体を作製して評価を行った。結果を表2に示す。
【0083】
〔実施例6〕 重合体P−7の合成と成形
実施例3と同様にして、化合物M−2を3.0g(5.2mmol)、アクリロニトリル(AN)を1.3g(14.2mmol)、ジメチル酢酸を2.5g、開始剤として和光純薬工業株式会社製V−601(商品名)を3.75mg用いて共重合を行い、レンズ用成形体を作製して評価を行った。結果を表2に示す。
【0084】
〔実施例7〕 重合体P−8の合成と成形
実施例3と同様にして、化合物M−2を3.0g(5.2mmol)、メタクリル酸メチル(MMA)を0.75g(7.5mmol)、ジメチル酢酸を2.0g、開始剤として和光純薬工業株式会社製V−601(商品名)を3.75mg用いて共重合を行い、レンズ用成形体を作製して評価を行った。結果を表2に示す。
【0085】
〔実施例8〕 重合体P−9の合成と成形
実施例3と同様にして、化合物M−2を3.0g(5.2mmol)、メタクリル酸メチル(MMA)を1.3g(13.0mmol)、ジメチル酢酸を2.0g、開始剤として和光純薬工業株式会社製V−601(商品名)を3.75mg用いて共重合を行い、レンズ用成形体を作製して評価を行った。結果を表2に示す。
【0086】
〔比較例2〕 比較用重合体X−2の合成と成形
実施例3と同様にして、mVMTを3.0g(10.6mmol)、スチレン(St)を0.75g(7.2mmol)、ジメチル酢酸を2.0g、開始剤として和光純薬工業株式会社製V−601(商品名)を3.75mg用いて共重合を行い、レンズ用成形体を作製して評価を行った。結果を表2に示す。
【0087】
〔比較例3〕 比較用重合体X−3の合成と成形
実施例3と同様にして、mVMTを3.0g(10.6mmol)、スチレン(St)を7.0 g(67.2mmol)、ジメチル酢酸を2.0g、開始剤として和光純薬工業株式会社製V−601(商品名)を3.75mg用いて共重合を行い、レンズ用成形体を作製して評価を行った。結果を表2に示す。
【0088】
【表2】

【0089】
実施例の重合体は、それぞれ1.63を超える高い屈折率と、100℃を超える、熱成型に適度なガラス転移温度を持つ。一方、比較例では、共重合を行っても依然としてガラス転移温度が低く、単量体Bの比率を増やすほど屈折率も低下してしまう。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の樹脂は、屈折率が高くて、透明性に優れており、耐熱性も高い。このため、特に光学レンズ、光学フィルムなどの光学部品として使用することでより優れた効果を発揮し、産業上の利用可能性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする重合体。
【化1】

(式中、R1,R2はそれぞれ同一もしくは異なるヘテロアリール基を表し、R3は水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、R4,R5はそれぞれ同一もしくは異なる二価連結基または単結合を表し、X1,X2,X3はそれぞれ独立に酸素原子、硫黄原子もしくはN−R6を表す。R6は水素原子またはアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位を10質量%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の重合体。
【請求項4】
ガラス転移温度が80℃以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の重合体。
【請求項5】
下記一般式(2)で表される化合物を重合する工程を含むことを特徴とする重合体の製造方法。
【化2】

(式中、R1,R2はそれぞれ同一もしくは異なるヘテロアリール基を表し、R3は水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、R4,R5はそれぞれ同一もしくは異なる二価連結基または単結合を表し、X1,X2,X3はそれぞれ独立に酸素原子もしくは硫黄原子を表す。)
【請求項6】
請求項5に記載の方法により製造された重合体。
【請求項7】
請求項1〜4および6のいずれか一項に記載の重合体を含むことを特徴とする成形体。
【請求項8】
請求項1〜4および6のいずれか一項に記載の重合体を含むことを特徴とする光学部品。
【請求項9】
波長589nmにおける屈折率が1.63以上であることを特徴とする請求項8に記載の光学部品。
【請求項10】
レンズ基材であることを特徴とする請求項8または9に記載の光学部品。
【請求項11】
下記一般式(2)で表される化合物。
【化3】

(式中、R1,R2はそれぞれ同一もしくは異なるヘテロアリール基を表し、R3は水素原子、アルキル基もしくはアリール基を表し、R4,R5はそれぞれ同一もしくは異なる二価連結基または単結合を表し、X1,X2,X3はそれぞれ独立に酸素原子もしくはN−R6を表し、R6は水素原子またはアルキル基を表す。)
【請求項12】
1,R2がそれぞれ独立にフェニルベンゾチアゾール骨格もしくはフェニルベンゾオキサゾール骨格を有する基であることを特徴とする請求項11に記載の化合物。

【公開番号】特開2010−215693(P2010−215693A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60820(P2009−60820)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】